(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6309022
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】プッシュスタート機能を有する衝撃レンチ
(51)【国際特許分類】
B25B 21/02 20060101AFI20180402BHJP
【FI】
B25B21/02 Z
【請求項の数】6
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-548359(P2015-548359)
(86)(22)【出願日】2013年12月10日
(65)【公表番号】特表2016-500344(P2016-500344A)
(43)【公表日】2016年1月12日
(86)【国際出願番号】EP2013076009
(87)【国際公開番号】WO2014095472
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2016年10月31日
(31)【優先権主張番号】1251507-8
(32)【優先日】2012年12月21日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】502212604
【氏名又は名称】アトラス・コプコ・インダストリアル・テクニーク・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100064388
【弁理士】
【氏名又は名称】浜野 孝雄
(74)【代理人】
【識別番号】100194113
【弁理士】
【氏名又は名称】八木田 智
(72)【発明者】
【氏名】エイバリ,ハンス ニクラス
【審査官】
竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】
特開平5−162086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 21/00−21/02
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(10)、
ステーター(17)及びローター(18)を有するモータ(12)、
出力軸(14)を備えた衝撃ユニット(13)、
モータ(12)に接続される動力制御ユニット(32)及び
ハウジング(10)に支持され、かつ、動力制御ユニット(32)に接続され、さらに、動力制御ユニット(32)を起動する信号を選択的に送信するように構成されたトリガー信号発生手段
を備えた衝撃レンチにおいて、
出力軸(14)と共に衝撃ユニット(13)が、ハウジング(10)に対して軸線方向に移動可能にされ、
トリガー信号発生手段が、出力軸(14)を含む衝撃ユニット(13)のハウジング(10)に対する軸線方向の動きに応答して、検知して信号を送信するように構成されたセンサ(28)を有し、
動力制御ユニット(32)が、前記センサ(28)から受信した信号に応答して、モータの動作を制御するように構成されている
ことを特徴とする衝撃レンチ。
【請求項2】
動力制御ユニット(32)が、
出力軸(14)を含む衝撃ユニット(13)の後方への動きを示す信号を、前記センサ(28)から受信した時に、モータ(12)に動力を供給し、
出力軸(14)を含む衝撃ユニット(13)の前方への動きを示す信号を受信した時に、モータ(12)への動力供給を停止する
ように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の衝撃レンチ。
【請求項3】
スプリング(23)が、出力軸(14)を含む衝撃ユニット(13)に、ハウジング(10)に対して、前方へのバイアス力を加えるように設けられ、
前記スプリング(23)が、ハウジング(10)に加えられた軸線方向の押圧力による影響を受けるように設けられ、出力軸(14)を含む衝撃ユニット(13)の後方への移動を可能にし、従って、前記センサ(28)を介した動力供給開始信号の送信を可能にする
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の衝撃レンチ。
【請求項4】
ローター(18)と出力軸(14)を含むパルスユニット(13)とが相互の軸線方向に固定されてロータリーユニットを形成し、
前記ロータリーユニットが、ハウジング(10)に対して全体として軸線方向に移動可能であり、
前記センサ(28)が、モーター(12)への動力供給を開始するためにローター(18)によって作動されるように設けられている
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の衝撃レンチ。
【請求項5】
ローター(18)及びパルスユニット(13)が、摺動連結によって相互に連結され、
ローター(18)が軸線方向に移動不可能であるのに対して、出力軸(14)を含むパルスユニット(13)が軸線方向に移動可能であり、
前記センサー(28)が、モータ(12)への動力供給を開始するためにパルスユニット(13)によって作動されるように設けられている
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の衝撃ユニット。
【請求項6】
モータが電気モータであり、
ステーターがモータの中心部分にあり、
ローターが前記ステーターを囲む筒状である
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の衝撃レンチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃タイプの動力レンチに関し、ハウジング、ステーター及びローターを有する回転モータ、出力軸を有する衝撃ユニット、前記モータに接続された動力制御ユニット、並びにトリガー手段を備えている。前記トリガー手段はハウジングに支持され、動力制御ユニットに接続され、かつ、動力制御ユニットを始動する信号を選択的に送信するように構成されている。
【発明の概要】
【0002】
本発明によって解決するべき課題は、それによって、工具の動作効率が実質的に高められる、所謂、プッシュスタート機能を有する衝撃レンチを提供することにある。各締付対象物について、モータへの動力供給を制御するために、一つ又は複数のトリガーを手動で動作する代わりに、本発明は、オペレータが、単に、ネジ付締め具に対して工具を押し付けるだけで、モータが始動することを可能にする。これにより、多くの適用場面において、組立工程がスピードアップすることになる。
【0003】
プッシュスタート機能は、従来技術において、本質的によく知られており、連続トルク伝達式パワーナットランナーやネジ及びスクリュードライバーにおいて既に使用されている。この機能では、ネジ継手締付行程を開始する時に、オペレータが、モータに動力供給を開始するためにトリガーを押す必要がなく、同じ機能が、単に、締め付けられるべきネジ継手に対して軸方向にレンチを押し付けることによって成し遂げられる。それにより、出力軸及び結合された部材が、レンジハウジングに関して、軸方向に動かされ、モータへの動力供給が開始される。また、締付行程が完了した時に、レンチハウジングにおける軸方向の力が止められ、出力軸及び結合した部材がその初期位置に戻されるので、モータへの動力供給が遮断される。
【0004】
本発明の目的は、衝撃タイプの動力レンチにプッシュスタート機能を設け、それにより、この種の動力工具の取り扱いを容易にすることにある。
【0005】
本発明の別の目的及び利点は、以下の説明及び特許請求の範囲から明らかになる。
【0006】
本発明の好ましい実施例が、添付図面を参照しながら、以下に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明による衝撃レンチの長手方向断面図を示しており、この図面において、駆動ユニットは、その最前方位置に位置している。
【
図2】
図1と同じ図面であるが、この図では、駆動ユニットは、その後方位置にある。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面に示された衝撃レンチは、手持ち式工具であり、ハンドル11を備えたハウジング10と、電気モータ12と、出力軸14を備えた油圧パルスユニット13とを有している。モータ12は、モータ巻線16を有するステーター17と、ローター18とを有し、前記ステーター17は、ローター18によって囲まれ、ハウジング10に堅く連結されている。ローター18及びパルスユニット13は、ハウジング10に関して軸方向に移動可能である二つのベアリング20及び21によって、ハウジング10に回転可能に支持されている。
【0009】
ローター18と、パルスユニット13と出力軸14とは、相互に堅く連結され、一緒にロータリーユニットを形成する。二つのベアリング20,21が軸線方向に移動可能であるため、ロータリーユニット全体が、ハウジング10に関して、前方停止位置(
図1)と後方動作位置(
図2)との間で、軸線方向に移動可能である。スプリング23が後方ベアリング21とハウジング10の肩部25との間に配置され、パルスユニット13に前方へ向けたバイアス力を及ぼし、それにより、ロータリーユニット全体に前方へ向けたバイアス力が及ぼされる。別の弱いスプリング26が、前方ベアリング20と肩部29との間に配置されている。このスプリング26は、スプリング23と共に、軸線方向のバイアス力をベアリング20及び21に及ぼし、ベアリングにおける軸線方向の遊びを排除する。両方のスプリング23及び26は、皿バネ、即ち、二枚又はそれ以上の円錐スプリングワッシャーを積み重ねたスプリングから成る。
【0010】
ハウジング10の後部には、センサ28が設けられている。このセンサ28は、ローター12の後端部を検知することによって、ロータリーユニットの軸線方向位置を表示するために配置されている。センサ28は、ロータリーユニットがその後方動作位置まで移動された時に、モータ12への動力供給を開始するためのトリガーの機能を有する。センサ28は、誘導型であり、合致位置(
図2参照)まで移動されたローター12に反応する。CPU27がセンサ28に接続されており、このCPU27は、センサ28からの信号を受信した時にモータ12への動力供給を開始するように構成されている。この目的のために、CPU27は、電源とモータ巻線16との両方につながっている駆動ユニット30に接続されている。モータ巻線16には、モータ12を動作させるために三相電圧が印加される。CPU27及び駆動ユニット30は、一緒に動力制御ユニット32を形成する。
【0011】
レンチの動作中、駆動ユニットは、スプリング23の作用により、最初は、その前方停止位置にあり(
図1)、この位置では、ローター12はセンサ28に検知されない。これは、動力供給開始信号がCPU27に送信されていないことを意味し、モータ12は停止したままである。レンチを、締め付けるべきネジ付締め具で動作させる時、オペレータは、軸方向の押圧力をハウジングハンドル11に加え、それにより、出力軸14におけるネジ付締め具からの反力が、スプリング23のバイアス力を超えることになると、出力軸14だけでなく、ロータリーユニット全体が、ハウジング10に対して、後方へ移動する。この結果、モータのローター18がセンサ28の検知位置まで動かされることになり(
図2)、動力供給信号がセンサ28からCPU27へ送られ、駆動ユニット30を動作させて、モータ12へ動力を供給する。ここで、モータ12は、パルスユニット13及び出力軸14を介して締め具にトルクを送り始める。これは、締め具において設定目標トルクレベルに達するまで続けられ、目標トルクレベルに達すると、CPU27は、動力ユニット30からモータ12への動力供給の停止させることになる。締付行程が完了した時、オペレータは、レンチを締め具から引き離し、その結果、ハウジング10における軸方向力がなくなり、スプリング23によってロータリーユニット24を、ローター18がセンサ28に検知されない前方停止位置(
図1)に戻すことが可能になる。これにより、CPU27への動力供給信号の停止と、モータ12への動力供給の停止が達成される。プッシュスタート動力レンチの動作は完了する。
【0012】
図面には、センサ28の別の場所、即ち、パルスユニット13に近いハウジング10の前方部分が示されており、出力軸14を含むパルスユニット13の軸線方向の動きによって、センサ28がCPU27への動力制御信号を発生するように構成されている。
【0013】
本発明は、また、上記した実施例とは異なる実施例も含むことに注意するべきである。このような異なる実施例の一つは、出力軸14を含むパルスユニット13が、軸線方向に移動可能であるが、モータのローター18はそうでないロータリーユニット24の構成から成る。これは、モータのローター18とパルスユニット13との間に配置されたスプライン連結部に起因する。これは、ロータリーユニットが二つの部材に分割され、その一方が軸線方向に移動可能であり、他方がそうでないことを意味する。この場合、変位センサ28は、上述したようにハウジング10の前方部分に配置され、パルスユニット13及び出力軸14が軸線方向に動く時にパルスユニット13を検知するように構成されている。
【0014】
図面には示されていないが、動力レンチに動力供給するために用いられるべき動力源は、実際のレンチの設計に対して好ましく又は適当であるコンセント接続でもよく、又は、バッテリーでもよい。