特許第6309052号(P6309052)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6309052
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】抗血管新生薬を含む化学塞栓療法組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/32 20060101AFI20180402BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20180402BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20180402BHJP
   A61K 31/404 20060101ALI20180402BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20180402BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20180402BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20180402BHJP
【FI】
   A61K47/32
   A61K47/26
   A61K45/00
   A61K31/404
   A61K31/506
   A61K47/36
   A61K9/14
【請求項の数】7
【外国語出願】
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-144568(P2016-144568)
(22)【出願日】2016年7月22日
(62)【分割の表示】特願2013-541458(P2013-541458)の分割
【原出願日】2011年11月29日
(65)【公開番号】特開2016-222695(P2016-222695A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2016年7月22日
(31)【優先権主張番号】01997/10
(32)【優先日】2010年11月29日
(33)【優先権主張国】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】513135026
【氏名又は名称】セントレ ホスピタリエ ユニヴェルシテール ヴォードワ
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】デニス アルバン
(72)【発明者】
【氏名】バイゼ ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ジョルダン オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】デルカー エリック
(72)【発明者】
【氏名】ブーレンズ ナタリー
【審査官】 高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−512370(JP,A)
【文献】 特表2009−526774(JP,A)
【文献】 J. Vasc. Interv. Radiol.,2010年 7月,Vol.21,p.1084-1090
【文献】 Oncology,2010年 7月,Vol.78, Suppl 1,p.154-166
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続液体のビヒクル中に懸濁され、膨張した薬剤溶出性ビーズと、抗血管新生薬の糖又はポリオール水溶液とを接触させる工程を含む抗血管新生薬デリバリー用化学塞栓療法組成物の調製方法であって、
前記薬剤溶出性ビーズがスルホン酸修飾ポリビニルアルコールヒドロゲルビーズ及びカルボキシル修飾ポリビニルアルコール−co−アクリル酸ナトリウムビーズよりなる群から選択され、
前記抗血管新生薬の糖又はポリオール溶液が2.5〜5のpHを有し、かつ
前記抗血管新生薬が18〜27℃で水に5mg/mL以下の溶解性を有する、方法。
【請求項2】
前記抗血管新生薬が、スニチニブ、アンジオスタチンKl−3、アレステン、DL−α−ジフルオロメチル−オルニチン、フマギリン、ゲニステイン、スタウロスポリン、(±)−サリドマイド、タムスタチン、アキシチニブ、ボルテゾミブ、ボスチニブ、ゲフィチニブ、パゾパニブ、セマクサニブ、ソラフェニブ、バンデタニブ、バタラニブ、カネルチニブ、ドビチニブ、ダサチニブ、エルロチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、マシチニブ(masutinib)、ムブリチニブ(mubitinib)、レスタウルチニブ、パゾパニブ、タンデュチニブ及びビスモデギブよりなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗血管新生薬がスニチニブである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗血管新生薬がイマチニブである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記糖またはポリオールが、グルコース、ショ糖、デキストラン、マンニトール、ソルビトール及びトレハロースよりなる群から選択される、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ビーズが37℃水中で平衡にあるとき1〜1000μmの直径を有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記連続液体のビヒクルが水又は生理食塩水である、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗血管新生薬デリバリー用化学塞栓療法組成物に関する。本発明は、さらに化学塞栓療法組成物の製造方法、および固形腫瘍癌の処置方法での化学塞栓療法組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤溶出性ビーズ(DEB)は、標的に化学療法剤を輸送する新たな手段および制御可能な方法として、近年発展してきている。化学塞栓療法治療(例えば、肝動脈化学塞栓術(TACE))で使用されるDEBは、化学療法剤と一緒に充填され得る塞栓形成ビーズであり、および低全身毒性および持続する局所的活性のメリットを有する腫瘍血管系中でその化学療法剤を徐放し得る。従って、TACEは、末梢動脈閉塞の治療効果と化学療法剤の局所投与とを結びつける。理想的なTACEスキームは、校正された腫瘍血管閉塞と結び付けられた最小限の全身暴露を伴った腫瘍内の最大限および維持される化学療法剤の濃度を可能とするだろう。
【0003】
近年、DEBは、活発に、溶液からドキソルビシン塩酸塩を捕捉する能力を有し、および制御され持続される方法で、ドキソルビシン塩酸塩を放出する能力を有することが報告されている。ドキソルビシン塩酸塩は、全身循環に到達し、このようにして薬物の局所的濃度および抗腫瘍性の有効性をかなり増加する化学療法剤の量を実質的最小限とすることがわかっている。肝臓の化学塞栓療法用に、例えば、ドキソルビシンを充填されたアルギン酸ビーズは、報告されており(非特許文献1)、またはドキソルビシンを充填されたスルホネート基で修飾されたポリビニルアルコールヒドロゲルビーズも報告され(非特許文献2)、およびインビボでの持続する輸送が示されている。薬物充填の比較ならびに異なるビーズによるドキソルビシンおよびイリノテカンの輸送も、近年報告されている(非特許文献3)。これらの系はビーズのポリマーのイオン交換特性を使用して、カチオン性に荷電した薬物(例えば、ドキソルビシン塩酸塩)を隔離し、そして、体内への特定に場所への動脈内の輸送後を制御かつ維持する方法を提供する。特許文献1および特許文献2で、不水溶性のポリマーを包み、全体としてアニオン電荷を有し、かつ、当該ポリマー(アントラサイクリンまたはカンプトテシン化合物)と静電的に関連しているビーズが開示されている。DEBは腫瘍(例えば、肝細胞癌)を塞栓するために使用されてよい。特許文献3は、ネモルビシン塩酸塩を充填されたビーズ(ミクロスフェア)も開示する。
【0004】
しかしながら、とりわけ、水系媒体中、低溶解性の化学療法剤の充填された場合、薬物の充填されたビーズの調製は、直接的な手順ではない。この溶解性は、例えば、ソラフェニブトシレートを、有用な治療用量に到達させるのに不十分でありうる。見かけの溶解性が有用な治療用量に到達するのに十分である場合、いくらか遅延した沈殿が発生し、診断の設立で調製の利用を不可能にする。例えば、スニチニブベースまたはリンゴ酸塩は、アントラサイクリン薬物(例えば、ドキソルビシン)を充填するために使用される標準の媒体に溶解されうる。しかしながら、そのような標準溶液で、スニチニブをビーズに充填させ、かつ薬物の充填されたビーズで安定な溶液を得る短時間でスニチニブベースまたはリンゴ酸塩が沈殿し、とても問題である。加えて、任意のスニチニブ塩の液体の経口溶液または非経口溶液のないものは市販されており、DEBを充填するために使用されうる。酸性媒体中のスニチニブ懸濁液だけは、経口経路の文献(非特許文献4;非特許文献5)に提案されているが、これは、DEBの充填に好適ではない。特許文献4はさらに、有機溶媒を使用して、不水溶性の化学療法剤をビーズに充填する方法を開示している。しかしながら、このようなアプローチは、医療スタッフによる即時調整に適していない。
【0005】
それゆえ、低水溶性の化学療法剤(例えば、抗血管新生薬、さらに特に、例えばスニチニブ)を伴う薬物の充填されたビーズを提供する未対処の要求が残っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2004/071495号
【特許文献2】国際公開第2006/027567号
【特許文献3】国際公開第2008/138758号
【特許文献4】国際公開第2007/090897号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Yao Xue Xue Bao.、2006年、8月;41巻(8):p.778−83)
【非特許文献2】Clin Cancer Res.、2006年、4月15日;12巻(8):p.2563−7
【非特許文献3】Jordanら、J Vasc Int Radiol、2010年、21巻:p.1084−1090
【非特許文献4】Navid Fら、Ann Pharmacotherapy、2008年、42巻:p.962−966
【非特許文献5】Sistla Aら、Drug Dev Ind Pharm、2004年、30巻(1):p.19−25
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本出願人らは、低水溶性である抗血管新生薬(例えば、スニチニブ)を伴った薬剤溶出性ビーズを充填する新規方法を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このように、本発明は、アニオン性薬剤溶出性ビーズに充填された抗血管新生薬を含むことを特徴とする抗血管新生薬デリバリー用化学塞栓療法組成物を提供し、ここで、前記 抗血管新生薬は、スニチニブ、アンジオスタチンKl−3、アレステン、DL−α−ジフルオロメチルオルニチン、フマギリン、ゲニステイン、スタウロスポリン、(±)−サリドマイド、タムスタチン、アキシチニブ、ボルテゾミブ、ボスチニブゲフィチニブ、パゾパニブ、セマクサニブ、ソラフェニブ、バンデタニブ、バタラニブ、カネルチニブ、ドビチニブ、ダサチニブ、エルロチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、マシチニブ(masutinib)、ムブリチニブ(mubitinib)、レスタウルチニブ、パゾパニブ、タンデュチニブ、ビスモデギブを含む群から選択され、および前記アニオン性薬剤溶出性ビーズは、スルホン酸修飾ポリビニルアルコールヒドロゲルビーズおよびカルボキシル修飾ポリビニルアルコール−co−アクリル酸ナトリウムビーズを含む群から選択される。
【0010】
本発明は、以下の工程を含む上記方法であることを特徴とする抗血管新生薬デリバリー用化学塞栓療法組成物の調製方法をさらに提供する:
a)スルホン酸修飾ポリビニルアルコールヒドロゲルビーズまたはカルボキシル修飾ポリビニルアルコール−co−アクリル酸ナトリウムビーズを含む群から選択される薬剤溶出性ビーズを準備する工程、
b)5mg/mL未満の低水溶性でありかつ正に帯電している抗血管新生薬のpHが2.5〜5の水溶液を調製する工程、
c)工程b)の抗血管新生溶液に糖またはポリオール溶液を添加する工程、
d)工程c)の抗血管新生の溶液と工程a)の薬剤溶出性ビーズとを接触させる工程。
【0011】
本発明は、固形腫瘍癌の処置方法において使用するための本発明の化学塞栓療法組成物も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】スニチニブの初期濃度が10mg/mLである上澄み溶液2mL中の残留薬物の百分率を示す。ビーズのgあたり20mgのスニチニブの完全な吸収が90分後に既に観測される。
図2】DCビーズ1gのインキュベーションのために使用される、10mg/mlのスニチニブ溶液の異なる体積での残留薬物の百分率を示す。右の凡例は、DCビーズのgあたりmgでのインキュベーション媒体に初めに存在した薬物の初期量を示す。
図3】USP方法4(素通り画分)を使用して、NaCl(0.9%)30mL中の充填されたDCビーズよって放出されたスニチニブを示す。部分的な放出は、NaCl薬物のイオン交換メカニズムに起因する。1.3時間(75%のプラトー濃度に到達するのに必要な時間)は、NaCl薬物の徐放を示す。
図4】乾燥ミクロスフェアmgあたり25mgのスニチニブを充填しているクアドラスフェアの残留上清濃度の百分率を示す。
図5】ウサギモデルに一般的な肝動脈で6mgのスニチニブを充填されたDCビーズ2mlの動脈内投与後6時間および24時間の平均ALTレベル(UI/L)を示す。
図6】ウサギモデルに一般的な肝動脈で6mgのスニチニブを充填されたDCビーズ2mlの動脈内投与後6時間および24時間の平均ASTレベル(UI/L)を示す。
図7】ウサギ9匹に一般的な肝動脈で6mgのスニチニブを充填されたDCビーズ2mlの動脈内投与後の血漿スニチニブレベル(ng/ml)を示す。
図8】ウサギ3匹の6mgのスニチニブの経口投与後の血漿スニチニブレベル(ng/ml)を示す。
図9】一般的な肝動脈で6mgのスニチニブを充填されたDCビーズ2mlの投与後6時間(n=1)および24時間(n=3)の肝臓中のスニチニブレベル(ng/ml)の測定値を示す。
図10】それぞれ1.5mgのスニチニブを充填したDCビーズ(グループ1、n=6)、DCビーズのみ(グループ2、n=5)、およびNaClを直接肝左葉に供給する動脈枝に注入された3グループのウサギの生存曲線を示す。
図11】ウサギモデルの肝臓の左側葉に供給する動脈枝に、スニチニブ1.5mgを充填されたDCビーズ0.05mlの動脈内投与後の平均ALTレベル(UI/L)を示す(グループ1)。
図12】ウサギモデルの肝臓の左側葉に供給する動脈枝に、スニチニブ1.5mgを充填されたDCビーズ0.05mlの動脈内投与後の平均ASTレベル(UI/L)を示す(グループ1)。
図13】肝臓の左側葉に供給する動脈枝に、DCビーズ0.05mlの動脈内投与後の平均ALTレベル(UI/L)を示す(グループ2)。
図14】肝臓の左側葉に供給する動脈枝に、DCビーズ0.05mlの動脈内投与後の平均ASTレベル(UI/L)を示す(グループ2)。
図15】肝臓の左側葉に供給する動脈枝に、NaCl(0.9%)0.05mlの動脈内投与後の平均ALTレベル(UI/L)を示す(グループ3)。
図16】肝臓の左側葉に供給する動脈枝に、NaCl(0.9%)0.05mlの動脈内投与後の平均ASTレベル(UI/L)を示す(グループ3)。
図17】6匹のウサギの一般的な肝動脈に、スニチニブ1.5mgを充填されたDCビーズ0.05mlの動脈内投与後の血漿スニチニブレベル(ng/ml)を示す。
図18】DCビーズ+スニチニブを伴った塞栓形成がRTK活性を阻害し、および無菌性のDCビーズを伴った塞栓形成が24時間後のRTK活性の増加を示すウエスタンブロット解析を示す。
図19】スニチニブを充填されたDCビーズを伴った塞栓形成15日後の組織病理学検査を示す。HE染色の光学顕微鏡法の下で壊死腫瘍の様子である。当該腫瘍は、100%壊死に見える。
図20】スニチニブを充填されたDCビーズを伴った塞栓形成15日後の組織病理学検査を示す。タネル染色は100%壊死を確認する。
図21】腫瘍の周囲およびポータルスペースに配置されたDCビーズを示すスニチニブを充填されたDCビーズを伴った塞栓形成後の腫瘍の組織病理学検査を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書に記載されるものと同様または同等の方法および材料は、本発明の実施または試験に使用され得るが、好適な方法および材料は、以下に記載されている。本明細書で言及されている全刊行物、特許出願、特許、および他の参考資料は、参照によりその全体を援用したものとする。本明細書で論じられる刊行物および出願は、本願の出願日前にそれらの開示のためだけに提供される。本明細書のいずれも、本発明が、先行発明によりそのような刊行物よりも前に予期できたものではないと認めるものと解釈されることはない。加えて、本明細書の材料、方法、および実施例は、説明のためだけのものであり、限定することを意図していない。
【0014】
矛盾する場合、本明細書は、定義を含めて、調整される。特段の記載がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されている意味と同じである。本明細書で使用する場合、本発明の理解を容易にするために、以下の定義が提供される。
【0015】
用語「からなる」は、含む意味で通常使用され、つまり、一以上の特徴または構成要素の存在を容認することを意味する。
【0016】
本明細書および請求項で使用される場合、文脈と明らかに矛盾する場合を除いて、単数形は、複数の意味を含む。
【0017】
本明細書で使用する場合、用語「被験者」または「患者」は、当該技術分野でよく理解され、本明細書で使用され、哺乳動物および最も好ましくはヒトを言及する。いくつかの実施形態では、被験者は、処置の必要な被験者または固形腫瘍癌の被験者である。他の実施形態では、被験者は、腫瘍切除もしくは放射線療法および/または化学療法を経験している被験者でありうる。当該用語は、特定の年齢または性別を示さない。従って、大人および新生児は、男性であろうと女性であろうと、包含されることが意図される。
【0018】
塞栓形成により誘導される虚血は、VEGF活性および血管新生、特に腫瘍の周囲で増加する原因となるということが実証された。この血管新生は、おそらく、肝動脈化学塞栓術(TACE)による処置後、残った腫瘍細胞の再増殖を構成する。それゆえ、本出願人らは、TACEが抗VEGF療法(例えば、TACEと異なる抗血管新生薬との関係)に使われる時、より効率的であると見積もっている。
【0019】
本出願人らは、末梢動脈閉塞の治療効果を抗血管新生薬の局所投与と結びつける化学塞栓療法治療を発展させている。化学塞栓療法は、固形腫瘍癌を処置するため、化学療法と塞栓形成と言われる手順の局所的輸送の組み合わせである。化学塞栓療法により処置されてよい固形腫瘍癌は、肉腫、細胞腫およびリンパ腫である。固形腫瘍は、実質的に任意の組織または器官(例えば、肺、乳房、前立腺、皮膚、肝臓および大腸)で進行しうる。本発明の好ましい実施形態では、固形腫瘍癌は、悪性高血管新生腫瘍(malignant hypervascularised tumours)(例えば、肝細胞腫または肝細胞癌(原発性肝癌))であり、結腸癌、乳癌、カルチノイド腫瘍および他の神経内分泌腫瘍、膵臓の膵島腫瘍膵臓、眼メラノーマ、肉腫、体中の他の血管の原発腫瘍から肝臓へ転移(拡散)する。いくつかの成功は、癌が体の他の領域(例えば、胸部、腎臓、骨盤内臓器、または口腔)に広がった患者で実証されている。化学塞栓療法は、疾患が主に悪性高血管新生腫瘍(malignant hypervascularised tumours)(例えば、腫瘍が肝臓で発生し、または別の臓器から肝臓に広がった(転移した))である患者に最も有利である。
【0020】
化学塞栓療法で、抗癌剤は、癌性腫瘍を供給する血管に直接注射される。加えて、塞栓性薬剤と言われる合成材料(例えば、ビーズ)は、血液を腫瘍に供給する血管内に配置され、当該腫瘍で実際に化学療法を仕掛ける。
【0021】
本明細書で使用する場合、「癌性腫瘍を供給する血管に直接注射される」または「血液を腫瘍に供給する血管内に配置される」は、塞栓性薬剤(例えば、ビーズ)の標的腫瘍の十分に近い動脈への沈着を言及する。そのような沈着は、これらに限定されないが、カテーテルの使用および直接投与を含むいくつかの手段により実施されうる。患者の体の特定の場所への、塞栓性薬剤(例えば、ビーズ)のこれらの輸送方法の両方は当業者に周知である。
【0022】
腫瘍の数および種類に応じて、化学塞栓療法は、単一処置として使用されてよく、他の処置選択肢(例えば、外科手術(腫瘍切除)、標準化学療法および/または放射線療法)と組み合わされてよい。例えば、化学塞栓療法は、外科手術(腫瘍切除)、標準化学療法および/または放射線療法の前後に適用される。
【0023】
用語「標準化学療法」は、通常、特定の化学療法/化学薬剤を使用する癌の処置を言及する。化学療法剤は、通常、癌の処置に使用される医薬品を言及する。DNA合成を妨げる癌の処置用の化学療法剤は、例えば、シスプラチン、カルボプラチン、エトポシド、ビンクリスチン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、イホスファミド、パクリタキセル、ゲムシタビン、ドセタキセル、およびイリノテカンを含み、ならびにシをスプラチンおよびカルボプラチンを含む白金ベースの抗癌剤を含む。他の抗癌剤は、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、ゲフィチニブ、イマチニブ);ロナファーニブを含むファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤;哺乳類ラパマイシン標的阻害剤(mTOR)(例えば、エベロリムス(evereolimus));PKC;PI3KおよびAKTの阻害剤ならびにシグナル伝達分子への細胞受容体を標的としたモノクローナル抗体(例えば、ベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマバンドトラスツズマブ(panitumumaband trastazumab))を含む。
【0024】
用語「標準放射線療法」は、悪性細胞を支配するための癌の部分的な処置としての電離放射線の使用を言及する。好ましくは、電離放射線は、X線またはγ線である。放射線療法と外科手術、化学療法、ホルモン療法、またはこれらの組み合わせとの組み合わせることも一般的である。最も一般的な癌の種類は、普通、放射線療法で処理されうる。的確な治療の意図(キュラティブ、アジュバント、ネオアジュバントまたはパリアティブ)は、必要とする被験者の全般的な健康状態と腫瘍の種類、場所、および段階で決まる。
【0025】
標準化学療法および放射線療法は、併用化学放射線療法もあり得る。用語「併用化学放射線療法」は、これらの2つの処置(化学療法および放射線療法)が同時またはほとんど同時(例えば、他の1つ後または同日)のいずれかに与えられる時使用される。
【0026】
本発明は、アニオン性薬剤溶出性ビーズに充填された抗血管新生薬を含むことを特徴とする抗血管新生薬デリバリー用化学塞栓療法組成物を提供し、ここで、前記抗血管新生薬は、スニチニブ、アンジオスタチンKl−3、アレステン、DL−α−ジフルオロメチルオルニチン、フマギリン、ゲニステイン、スタウロスポリン、(±)−サリドマイド、タムスタチン、アキシチニブ、ボルテゾミブ、ボスチニブゲフィチニブ、パゾパニブ、セマクサニブ、ソラフェニブ、バンデタニブ、バタラニブ、カネルチニブ、ドビチニブ、ダサチニブ、エルロチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、マシチニブ(masutinib)、ムブリチニブ(mubitinib)、レスタウルチニブ、パゾパニブ、タンデュチニブ、ビスモデギブを含む群から選択され、および前記アニオン性薬剤溶出性ビーズは、スルホン酸修飾ポリビニルアルコールヒドロゲルビーズおよびカルボキシル修飾ポリビニルアルコール−co−アクリル酸ナトリウムビーズを含む群から選択される。
【0027】
好ましくは、前記抗血管新生薬は、スニチニブまたはイマチニブである。好ましくは、前記アニオン性薬剤溶出性ビーズは、スルホン酸修飾ポリビニルアルコールヒドロゲルビーズまたはカルボキシル修飾ポリビニルアルコール−co−アクリル酸ナトリウムビーズでもある。最も好ましくは、前記アニオン性薬剤溶出性ビーズは、スルホン酸修飾ポリビニルアルコールヒドロゲルビーズである。
【0028】
さらなる実施形態では、本発明は、5mg/mL未満の低水溶性であり、かつ正に帯電し、アニオン性の薬剤溶出性ビーズに充填される、抗血管新生薬を包含することを特徴とする抗血管新生薬デリバリー用化学塞栓療法組成物にも関し、前記アニオン性薬剤溶出性ビーズは、スルホン酸修飾ポリビニルアルコールヒドロゲルビーズおよびカルボキシル修飾ポリビニルアルコール−co−アクリル酸ナトリウムビーズを含む群から選択される。
【0029】
用語「低水溶性」は、薬剤溶出性ビーズが、抗血管新生薬溶液と接触された時、薬剤溶出性ビーズ(ミクロスフェア)に組み込まれうる治療用量未満の無糖媒体中への溶解性を有する、本発明の抗血管新生薬(塩または酸性化遊離塩基)を言及する。典型的には、本願での低水溶性は、常温(すなわち、18〜27℃)で測定したとき、水(無糖)に、5 mg/mL以下の溶解性を有する化合物を言及する。
【0030】
用語「抗血管新生薬」および「血管新生阻害剤」、その遊離塩基の塩は本明細書でほとんど同義で使用され、血管形成を予防することまたは阻害することができる任意の薬物を含む。本発明に関しては、抗血管新生薬の具体例は、これらに限定されないが、スニチニブ、アンジオスタチンKl−3、アレステン、抗血管新生の抗トロンビン(aaAT)、カンスタチン、DL−α−ジフルオロメチル−オルニチン、エンドスタチン、フマギリン、ゲニステイン、ミノサイクリン、スタウロスポリン、(±)−サリドマイド、タムスタチン、アキシチニブ、ボルテゾミブ、ボスチニブゲフィチニブ、パゾパニブ、セマクサニブ、ソラフェニブ、バンデタニブ、バタラニブ、カネルチニブ、ドビチニブ、ダサチニブ、エルロチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、マシチニブ(masutinib)、ムブリチニブ(mubitinib)、ニロチニブ、レスタウルチニブ、パゾパニブ、タンデュチニブ、ビスモデギブを含む。
【0031】
好ましくは、抗血管新生薬は、スニチニブ、アンジオスタチンKl−3、アレステン、DL−α−ジフルオロメチル−オルニチン、フマギリン、ゲニステイン、スタウロスポリン、(±)−サリドマイド、タムスタチン、アキシチニブ、ボルテゾミブ、ボスチニブゲフィチニブ、パゾパニブ、セマクサニブ、ソラフェニブ、バンデタニブ、バタラニブ、カネルチニブ、ドビチニブ、ダサチニブ、エルロチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、マシチニブ(masutinib)、ムブリチニブ(mubitinib)、レスタウルチニブ、パゾパニブ、タンデュチニブ、ビスモデギブを含む群から選択される。
【0032】
より好ましくは、抗血管新生薬は、スニチニブおよびイマチニブである。
【0033】
本発明は、抗血管新生特性および低水溶性を有する化学療法剤を含有する化学塞栓療法組成物を形成するのに有利であることがわかっている。本発明は、特に、例えば、スニチニブに有利である。
【0034】
スニチニブは、多発性受容体チロシンキナーゼ(RTK)(例えば、血小板由来成長因子受容体(PDGF−Rs)および血管内皮増殖因子受容体(VEGFRs))を阻害し、腫瘍血管新生および腫瘍細胞増殖の両方においてある役割を果たす、小さな分子である。スニチニブは、変異により不適切に活性化されたとき、大多数の胃腸のストロマ細胞腫瘍を活発にする他のRTK(例えば、キット(CD117)も阻害する。これらの腫瘍で、スニチニブは、腫瘍がイマチニブに耐性を有する患者または、薬物を受け付けなくなっている患者の第二選択療法として推薦されている。加えて、スニチニブは、RET、CSF−1R、FLT3のような他のRTKも阻害する。これらの標的の同時阻害は、それゆえ、腫瘍血管新生の減少、および癌細胞死の増加をもたらし、最終的に、腫瘍収縮をもたらす。
【0035】
スニチニブは、2006年1月26日に、FDAにより、腎細胞癌(RCC)およびイマチニブ耐性、胃腸の間質性腫瘍(GIST)の処置が認可された。スニチニブは、結直腸癌(CRC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、黒色腫、腎細胞癌(RCC)および扁平上皮癌(SCC)のモデルで、前臨床試験で抗腫瘍活性を実証した。臨床活性は、第二フェーズ試験で、神経内分泌、結腸および乳癌で実証された。最近承認されたスニチニブの初期経口用量は、50mg/日であり、少なくとも50ng/mlの血漿中濃度(VEGFRおよびPDGFRを阻害する化学的および細胞ベーズの解析から予測される最小限の濃度)を作り出すのは十分である。
【0036】
スニチニブが多くの異なる受容体を標的とするという事実は、結果的に多くの副作用をもたらす。高血圧および無力症は、スニチニブでのもっとも一般的な副作用であることが明らかである。下痢、食欲不振、味覚異常、口内炎および手足症候群(HFS)は、他の臨床的に関連する副作用である。HFSは、数日間治療の中止、および/または用量の減少を必要とするかもしれない。疲労は、スニチニブ療法の間、甲状腺機能低下症の発展に関係するかもしれない。用量の減少は、この薬剤のかなりの毒性を扱うために、RCCを治療されている患者の50%に必要である。重大な(等級3または等級4)有害事象は、患者の10%以下で発生している。スニチニブ療法に関連している検査異常は、リパーゼおよびアミラーゼレベルの増加、好中球、リンパ球および血小板総数の減少を含む。それゆえ、DEBを介したスニチニブの投与は、全身毒性を減少し、局所的抗腫瘍の有効性を維持し得るが、ただし、スニチニブは薬剤溶出性ビーズ中の沈殿物とならない。
【0037】
薬剤溶出性ビーズ(DEB)は、球形または実質的に球形のビーズ(ミクロスフェア)であり、親水性であるにも関らず不水溶性の生体適合性高分子材料(例えば、修飾ポリビニルアルコール(PVA)またはアクリル酸−co−ポリマー)に基づく。これらのポリマーは、正に帯電した化学療法剤(例えば、抗血管新生薬)を保持するための負に帯電した基を有している。典型的には、ビーズ(ミクロスフェア)が、37℃で水と平衡にあるとき、1〜1000μmの範囲、より好ましくは50〜500μmの範囲、最も好ましくは100〜300μmの範囲の大きさを有する。ビーズの直径は、好ましくは、正に帯電した化学療法剤を充填される前のビーズの大きさを測定して決定される。
【0038】
本発明に係る薬剤溶出性ビーズの具体例は、これらに限定されないが、スルホン酸修飾ポリビニルアルコールヒドロゲルビーズおよびカルボキシル修飾ポリビニルアルコール−co−アクリル酸ナトリウムビーズを含む。
【0039】
DCビーズ(登録商標)(Biocompatibles社製)として公知のビーズを調製するために使用されるスルホネート−修飾ポリビニルアルコールヒドロゲルは、血管過多の腫瘍および動静脈奇形の処置のためにFDAが認可した微小球の柔らかい変形しやすい塞栓形成材料である。それは、スルホン酸含有成分(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)の添加により修飾され、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム塩と共重合したPVA(N−アクリロイル−アミノアセトアルデヒドジメチルアセタールを伴い)として公知であり、および50〜1200μmの変更し得る大きさを有するビーズに逆懸濁液重合によって形成されたポリビニルアルコール(PVA)ポリマーヒドロゲルからなる。負電荷部分の存在は、ビーズを逆帯電した化学療法剤と接触させることができる。スルホン酸修飾ポリビニルアルコールヒドロゲルビーズは普通、リン酸塩パッキング溶液に貯蔵されている。
【0040】
欧州でヘパスフィア(登録商標)または米国でクアドラスフェア(登録商標)(Biosphere Medical社製)として公知のカルボキシル修飾ポリビニルアルコール−co−アクリル酸ナトリウムビーズは、正確に調整された、球形、親水性、細孔性のビーズである。これらのビーズは、使用前に再び水和されうる乾燥製品として提供される。これらのビーズの弾性特性は、小さい送達システムの通過を促進する球形の一時的な変形を可能とする。その変形は、血管過多の腫瘍または動静脈奇形の完全閉塞を可能とする。ポリマーは、カルボキシル基で修飾され、カチオン性薬物充填を促進する。
【0041】
本発明で、ビーズブロック(登録商標)ビーズ(Biocompatibles社製)も使用されうる。これらのビーズは、スルホン酸修飾ポリビニルアルコールヒドロゲルビーズでもあるが、上記のDCビーズ(登録商標)より少ないスルホネート基を含有する。
【0042】
本発明で、正に(カチオン性に)荷電した抗血管新生薬は、好ましくは期間を越えて抗血管新生薬の制御放出を可能とするためにアニオン性ビーズと関連する。この期間は数分間〜数週間、好ましくは、少なくとも最大2、3日、好ましくは最大72時間であってよい。抗血管新生薬は、静電的にビーズのポリマーに結合している。ビーズ中のアニオン性基の存在は、正に(カチオン性に)荷電した抗血管新生薬の放出の制御を可能とする。抗血管新生薬はポリマーマトリクスに共有結合で結合していないことが重要である。
【0043】
本発明は、以下の工程を含む上記の方法であることを特徴とする抗血管新生薬デリバリー用化学塞栓療法組成物の調製方法をさらに提供する:
a)スルホン酸修飾ポリビニルアルコールヒドロゲルビーズまたはカルボキシル修飾ポリビニルアルコール−co−アクリル酸ナトリウムビーズを含む群から選択される薬剤溶出性ビーズを準備する工程、
b)5mg/mL未満の低水溶性でありかつ正に帯電している抗血管新生薬のpHが2.5〜5の水溶液を調製する工程、
c)工程b)の前記抗血管新生溶液に糖またはポリオール溶液を添加する工程、
d)工程c)の抗血管新生の溶液と工程a)の薬剤溶出性ビーズとを接触させる工程。
【0044】
任意に生理食塩水溶液は、工程a)のアニオン性の薬剤溶出性ビーズから除去される。
【0045】
普通、工程d)は、工程c)の抗血管新生の溶液中、薬剤溶出性ビーズを懸濁することにより実施される。典型的には、薬剤溶出性ビーズは、抗血管新生の溶液と1〜5時間、好ましくは1時間30分〜3時間30分の間、より好ましくは2時間の間接触して残されている。
【0046】
好ましくは、前記抗血管新生薬は、スニチニブ、アンジオスタチンKl−3、アレステン、抗血管新生の抗トロンビン(aaAT)、カンスタチン、DL−α−ジフルオロメチル−オルニチン、エンドスタチン、フマギリン、ゲニステイン、ミノサイクリン、スタウロスポリン、(±)−サリドマイド、タムスタチン、アキシチニブ、ボルテゾミブ、ボスチニブゲフィチニブ、パゾパニブ、セマクサニブ、ソラフェニブ、バンデタニブ、バタラニブ、カネルチニブ、ドビチニブ、ダサチニブ、エルロチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、マシチニブ(masutinib)、ムブリチニブ(mubitinib)、ニロチニブ、レスタウルチニブ、パゾパニブ、タンデュチニブ、ビスモデギブを含むから選択される。
【0047】
より好ましくは、前記抗血管新生薬は、スニチニブ、アンジオスタチンKl−3、アレステン、DL−α−ジフルオロメチル−オルニチン、フマギリン、ゲニステイン、スタウロスポリン、(±)−サリドマイド、タムスタチン、アキシチニブ、ボルテゾミブ、ボスチニブゲフィチニブ、パゾパニブ、セマクサニブ、ソラフェニブ、バンデタニブ、バタラニブ、カネルチニブ、ドビチニブ、ダサチニブ、エルロチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、マシチニブ(masutinib)、ムブリチニブ(mubitinib)、レスタウルチニブ、パゾパニブ、タンデュチニブ、ビスモデギブを含む群から選択される。
【0048】
最も好ましくは、前記抗血管新生薬は、スニチニブまたはイマチニブである。
【0049】
本出願人らは、5mg/mL未満の低水溶性を有する抗血管新生薬を、薬剤溶出性ビーズに充填する有利な方法を開発した。この方法で、抗血管新生薬は、抗血管新生薬の糖水またはポリオールを含む連続液体のビヒクル(例えば、水)に懸濁された、膨張したビーズを、典型的には、薬物がビーズのボディーに吸収される2時間の時間を越えて接触されて薬剤溶出性ビーズに組み込まれてよい。
【0050】
本発明で、抗血管新生薬の糖水溶液は、典型的には、必要に応じて、pH2.5〜5、好ましくはpH3〜4.5である水溶液を得るために、任意の好適な酸で酸性化して、水に抗血管新生薬を溶解して調製される。典型的には、抗血管新生薬の濃度は、0〜25mg/mL、好ましくは1〜25mg/mL、または1〜15mg/mL、より好ましくは 2〜25mg/mLまたは2〜15mg/mL、最も好ましくは5〜15mg/mLの範囲である。高濃度(例えば、抗血管新生薬の15〜5mg/mL)も、本発明に包含される。当該溶液は、抗血管新生薬の完全な溶解まで、穏やかに振られる。その後、糖またはポリオールは、好適な浸透圧を有する溶液を達成するために添加される。
【0051】
好適な酸は、任意の鉱酸(例えば、塩酸、硫酸または硝酸)または任意の有機酸(例えば、乳酸、酢酸またはギ酸)であり得る。好ましくは、酸は塩酸である。例えば、スニチニブの場合、典型的にはHCl0.1Nの溶液が、等モル量の量またはスニチニブよりわずかに多い量(例えば、1molのスニチニブにつき1〜1.05molのHCl)が使用される。
【0052】
本発明で、糖またはポリオールは、グルコース、ショ糖、デキストラン、マンニトール、ソルビトールまたはトレハロースを含む群から選択される。典型的には糖またはポリオール溶液が2〜15%、好ましくは3〜7%、より好ましくは5%である。好ましくは糖溶液が5%グルコース溶液である。
【0053】
本出願人らは、驚くべきことに、糖の存在、好ましくは5%のグルコースの存在で、スニチニブ溶液は安定になることが示され、いかなる沈殿もなく、生理食塩水または塩酸溶液と対照的であることを見出した。有利なことに、この溶液は、ヒト血漿に等張性であり、かつ非経口利用で安全である。注目すべき糖は、グルコースに限定されない。他の糖またはポリオールは、ショ糖、デキストラン、マンニトール、ソルビトールまたはトレハロースのように使用され得る。
【0054】
膨潤ビヒクルは、その後除去されてよく、または都合よく、生成物の部分としてビーズと一緒に維持される。
【0055】
膨張したビーズは、スラリーの状態、すなわち膨張したビーズの周辺にいかなるまたはさらなる液体のない状態で膨張した形態で使用されてよい。実際、充填効率を増すために、膨張したビーズと抗血管新生薬の糖水溶液とが接触する前に、ビーズ溶液から生理食塩水溶液、典型的にはリン酸ナトリウム溶液を除去してスラリーを残すのが好ましいことがわかった。従って、任意に、生理食塩水溶液が、工程a)のアニオン性の薬剤溶出性ビーズから除去される。
【0056】
あるいは、薬物の充填されたビーズは、いかなる残留薬物充填用溶液から除去され、そして、当該当該ビーズは、医薬品ベース生成物を乾燥するために用いられる任意の標準的な技術により乾燥される。これは、限定されないが、室温もしくは高温または減圧下または真空での空気乾燥;標準フリーズドライ;大気圧フリーズドライ;超臨界流体による溶液増大分散法(SEDS)を含む。あるいは、薬物の充填されたビーズは、有機溶媒を使用して水を置換して、より揮発性の有機溶媒のエバポレーションによる連続工程で脱水してよい。薬物に不溶媒である溶媒が選択される。
【0057】
代表的な標準フリーズドライプロセスは以下のとおり進められるかもしれない:サンプルが部分的に共栓式のガラスバイアルに等分され、冷却された場所に置かれ、温度制御は凍結乾燥機中に段差をもたらす。当該段差温度は減少し、かつ、サンプルは均一な規定温度で凍結される。完全な凍結後、乾燥機中の圧力は、初期乾燥を開始する規定圧力より低い。当該初期乾燥の間、水蒸気は、段差温度が一定の低温で制御されている一方で、昇華により凍結された塊から徐々に除去される。残留水分含量が所望のレベルに減少するまで、半乾燥塊まで吸収される水が除去され得るために、第2の乾燥は、さらに段差温度を増加させることおよびチャンバー圧力を低下させることにより開始される。バイアルは、もし必要であれば、保護雰囲気下、その場(インシトゥ)で封じられうる。
【0058】
大気圧フリーズドライは、凍結生成物上に非常に乾燥した空気をすばやく循環させることにより行われる。標準フリーズドライプロセスとの比較で、真空でないフリーズドライはいくつかの利点がある。循環乾燥ガスは、凍結サンプルから向上した熱および塊の移動を提供する。大気スプレー乾燥プロセスを使用することにより、ケーキの代わりに、微小な流動性粉末が得られるという事実は特に興味深い。粒子は、サブミクロン直径(つまり、フライス加工により一般的に得られる粒子より10倍小さい)を有するものが得られ得る。当該微粒子(高い表面積を有する)の性質は、結果的に簡単に再び水和した生成物となる。
【0059】
本発明の化学塞栓療法組成物は、投与の直線にビーズおよびカチオン性に荷電した化学療法剤から作製されてよいけれども、化学塞栓療法組成物は、薬物を前もって充填されたものを提供されることも可能である。後半の場合、乾燥した薬物の充填されたビーズは、使用する直線に水和されてよい。あるいは、提供される化学塞栓療法組成物は、完全に化合物とされ、および好ましくは吸収された薬剤溶出性ビーズまたは吸収された抗血管新生薬および摂取アルコール糖水溶液を含んでよい。
【0060】
投与される本発明の化学塞栓療法組成物中の抗血管新生薬の量は、好ましくはml組成物につき0.1〜500mgの範囲、好ましくは、mlにつき10〜100mgの範囲である。好ましくは、処置は1回〜5回繰り返され、および投与された抗血管新生薬の量の各用量は、mlにつき0.1〜500mgの範囲、好ましくは、mlにつき10〜100 mgの範囲である。正常な処置で投与される化学塞栓療法組成物の量は、1〜6mlである。用量につき投与される抗血管新生薬の全量は、好ましくは10〜1000mgの範囲、より好ましくは25〜250mgである。以下の実施例に示されている放出データに基づき、本出願人らは、この処置は、腫瘍に治療上有効な濃度を与えおよび細胞内輸送のかなりの量は治療効果が成し遂げられるところで行われると確信する。抗血管新生薬投与の反対の全身性副作用は避けられる。
【0061】
本発明は、固形腫瘍癌の処置方法で使用するための本発明の化学塞栓療法組成物をさらに提供する。
【0062】
本発明の好ましい実施形態では、固形腫瘍癌は、悪性高血管新生腫瘍(malignant hypervascularised tumours)(例えば、肝細胞腫または肝細胞癌(原発性肝癌))であり、結腸癌、乳癌、GIST(肝転移および腎癌)、カルチノイド腫瘍および他の神経内分泌腫瘍、膵臓の膵島腫瘍膵臓、眼メラノーマ、肉腫、体中の他の血管の原発腫瘍から肝臓へ転移(拡散)する。
【0063】
従って、好ましくは、前記悪性高血管新生腫瘍(malignant hypervascularised tumours)は、肝細胞癌(HCC)、肝転移、胆管腫、神経内分泌腫瘍、GIST肝転移および腎癌を含む群から選択される。
【0064】
本発明は、本発明の化学塞栓療法組成物の治療上有効量を投与することを含むことに苦しむ患者の固形腫瘍癌の処置方法も提供する。好ましくは、前記固形腫瘍癌は、悪性高血管新生腫瘍(malignant hypervascularised tumours)である。より好ましくは、前記悪性高血管新生腫瘍(malignant hypervascularised tumours)は、肝細胞癌(HCC)、肝転移、胆管腫、神経内分泌腫瘍、GIST肝転移および腎癌を含む群から選択される。
【0065】
本発明の方法は、血液が動脈(例えば、腎臓、肝臓、肺および心臓の動脈)にひたすら、比較的到達しうる、任意の固形腫瘍癌を処置するために使用することができる。本発明の態様で、固体腫瘍癌は、肝細胞癌である。
【0066】
「処置」は、治療的処置および予防対策または予防措置の両方を言及する。処置を必要としている者は、既に障害(例えば、固形腫瘍癌)である者や障害(例えば、固形腫瘍癌)を予防する者を含む。従って、本発明で処置される哺乳動物(好ましくはヒト)は、障害(例えば、固形腫瘍癌)であると診断されていてよく、または、障害(例えば、固形腫瘍癌)の可能性があるもしくは疑いがあってよい。処置のための「哺乳動物」は、ヒト、飼育動物および家畜またはペットを含む哺乳動物に分類される任意の動物(例えば、犬、馬、猫、牛、サルなど)を言及する。好ましくは、哺乳動物は、ヒトである。
【0067】
用語「治療上有効量」は、哺乳動物の疾患または障害を処置するために効果的な化学塞栓療法組成物の量を言及する。固形腫瘍癌の場合、化学塞栓療法組成物の治療上有効量は、腫瘍の大きさを小さくしてよく;末梢器官へのがん細胞の侵入を阻害(すなわち、ある程度ゆっくり、および好ましくは停止);腫瘍転移の阻害(すなわち、ある程度ゆっくり、および好ましくは停止);ある程度は、腫瘍成長の阻害;および/またはある程度は、固形腫瘍癌と関連する症状の1つ以上を軽減してよい。本発明の化学塞栓療法組成物の範囲で、存在する癌細胞の成長を防止しおよび/または殺してもよく、それは、細胞増殖抑制性および/または細胞毒性であってよい。表現「治療上有効量」は、標的の細胞の塊、癌細胞の群または病理学の他の特徴の成長もしくは進行または有糸分裂活性を、臨床的にかなり変化を防止するのに十分な量を意味し、または好ましくは、少なくとも約30%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%を減少するのに十分な量を意図するために本明細書で使用される。
【0068】
本発明の化学塞栓療法組成物の1日用量は、処置される宿主、特定の投与経路、および処置される疾病の重症度および種類に依存して変化する。従って、最適の投薬量はある特定の患者を処置する医師により決定さてよい。さらに、臨床医または処置する医師が、個々の患者の応答と一緒に治療をどのようにおよびいつ開始し、中断し、調整しまたは終了するか知っていることが知られている。本発明の方法で使用されている任意の化学塞栓療法組成物によって、治療上有効な用量は、細胞培養液分析、動物モデル、またはヒト患者のマイクロドージングから初めに見積もられ得る。
【0069】
当業者は、本明細書に記載される本発明は、詳細に記載されているもの以外に変化および修正をされるということはわかるであろう。本発明は、本発明の精神および本質的な特徴から逸脱せずに、すべてのそのような変化および修正を含むということを理解されたい。本発明は、本明細書に言及されまたは示唆されている個々に、またはまとめて、および任意にならびにすべての組み合わせまたは前記工程または特徴の任意の2以上のすべての工程、特徴、組成物および化合物も含む。本開示は、それゆえ、本明細書に説明されているすべての態様として考えられ、および添付の請求項に示されている本発明の範囲に限定されることなく、ならびに本発明の意味に入るすべての変化および等価の範囲は、本明細書に包含されていることを意図される。
【0070】
上記の記載は、さらに完全に、以下の実施例を参照して理解される。しかしながら、そのような実施例は、本発明の実施方法の例であり、本発明の範囲を限定することを意図されない。
【実施例】
【0071】
実施例1:DEBへのスニチニブ充填
DCビーズ(登録商標)(100〜300ミクロン直径、英国Biocompatibles社製)のバイアルを、当該バイアルから可能な限り多くの生理食塩水上清(約6mL)を除去した後使用した。およそ2mLのビーズが当該バイアルの底に残った。スニチニブベースの溶液(10mg/ml)の4mLを以下のとおり調製した:1.4mLのHCl(0.1N)(すなわち、スニチニブに対してモル比1.05)を40mgのスニチニブベース(すなわち、1.3×10−4mol)に添加した。このスニチニブが完全に溶解するまで、穏やかに振った。その後、10mg/mLのスニチニブの濃度に対応して、最終体積4mLになるように、グルコース溶液(5%重量/重量)を加えた。
【0072】
上記溶液を、上記DCビーズ(登録商標)バイアルに加え、1回緩やかに振り、および室温で2時間放置した。430nmでの分光光度法の滴定のため、異なる時間点で、一定分量を抜き取った。残留上清濃度の百分率を図1に示す。薬物のほとんどすべて(>98%)が上清からなくなっており、ビーズへの充填が進行していることを示す。最後に、DCビーズ(登録商標)のgあたりスニチニブ20mgの量の薬物を得た。今後、(ビーズのgあたりスニチニブをmgで)充填したビーズを企画する。
【0073】
実施例2:薬物充填プロトコルのバリエーション
実施例1の充填プロトコルを繰返し、種々の量のスニチニブ溶液を10mg/mLで、DCビーズ(登録商標)バイアルに添加して、それゆえ、DCビーズ(登録商標)gあたり20mg〜85mg、充填した異なる名前のビーズを得た。上清濃度の時間展開を、図2に説明している。2時間のインキュベーション後、ビーズに組み込まれている薬物の百分率は、当該溶液に含まれている薬物と比較して、スニチニブ溶液の体積の増加とともに減少した。これらの結果は、高い薬物のペイロードが2時間の充填期間で成し遂げられ得ることを示す。
【0074】
実施例3:薬物放出特性
DCビーズを実施例1に記載されるように充填した。放出実験を、パレットにn=6の細胞を伴って、NaCl0.9%で、一定流量(CY7ポンプ(5ml/min))の下、37℃で、Sotax CE 6装置を用いて、USP方法4(素通り画分)を使用して実施した。430nmでの分光光度定量を使用して、薬物濃度を測定した。6時間超の徐放を説明する結果を図3に示す。溶出された薬物の量は、輸送のイオン交換メカニズムで予測されるように、受槽のすべての塩の含有量の関数であった。
【0075】
実施例4:クアドラスフェア(Quadrasphere)(登録商標)にスニチニブの充填
乾燥クアドラスフェア(登録商標)50〜100ミクロン(Biosphere Medical社製)25mgのバイアルを使用した。ビーズの完全な湿潤を可能とするため、溶液の十分に大きな体積(10mL)を使用しなければならず、以下のとおり調製した:スニチニブベース(25mg)に0.88gのHCl(0.1N)(すなわち、スニチニブに対してモル比1.05)を添加した。バイアルを完全に溶解するまで、穏やかに振った。その後、2.5mg/mLのスニチニブの濃度に対応して、最終体積10mLになるように、グルコース溶液(5%重量/重量)を加えた。その後、当該スニチニブ溶液10mLを、乾燥ミクロスフェアを25mg含有するクアドラスフェア(登録商標)バイアルに注いだ。
【0076】
上清10μLを430nmで測定された所定の時間点および吸光度で回収した。15分後、1%未満の薬物を当該上清中で発見し得た。2時間後、当該薬物の99.6%をクアドラスフェアに充填し得た。これは、クアドラスフェア(登録商標)ミクロスフェアによりスニチニブの完全な吸着を説明する。
【0077】
実施例5:ウサギ中のスニチニブ溶出ビーズの薬物動態および毒性の評価
材料および方法
動物モデル
体重3.2〜3.8kgの大人の健康なオスのニュージーランド白ウサギ(n=12)を使用した。
スニチニブ充填DEBの調製
100〜300mの寸法のDCビーズ(Biocompatibles社製)を使用した。ウサギの肝臓に投与されうるDCビーズの最大体積をおよそ0.2mlと推定した。DCビーズをスニチニブ30mg/mlで充填した。DCビーズをスニチニブ溶液中、2時間、懸濁液によりスニチニブを充填し、ビーズのmlあたりのスニチニブの必要な濃度を達成した。6mgのスニチニブを含有する0.2mlの少ない一定分量を全肝臓の塞栓形成のために個々のシリンジの中で調製した。薬物の安定性を、前もってHPLC分析で確認した。インビトロの実験は、充填された薬物は、生理食塩水媒体に数時間(T75%=1.3時間)で放出され得ることを示した。的確な反応速度論および放出の程度は、生理食塩水の濃度および体積によって、イオン交換メカニズムに予想されるように決まる。
【0078】
実験プロトコル
動物を3つのグループに分けた。初めの2つのグループ(グループ1(n=4)およびグループ2(n=4))は、肝動脈中の動脈内に投与された0.2mLのDEB+スニチニブ(6mg)を受けた。4匹の動物(グループ1)を塞栓形成後6時間で犠牲とし、4匹の動物(グループ2)を塞栓形成後24時間で犠牲とした。3つめのグループ(グループ3(n=4))は、スニチニブを経口につき特有の用量(6mg)で受け、以前の薬理学的な研究(FDAドラッグオンライン スニチニブ p78)によると、治療血漿濃度(Cmax)45〜55ng/mLを生成する。グループ3の動物は、2匹は6時間、2匹は24時間で犠牲とした。
【0079】
投与後の肝臓酵素の投薬量
肝臓酵素を、上記薬物の塞栓形成または経口投与の直前および6時間に、ウサギの耳の静脈に配置されたカテーテルによって得られる血液サンプルから測定した。追加の血液サンプルを、グループ2の24時間、およびグループ3で24時間で犠牲になった動物で得た。
【0080】
投与後のスニチニブの投薬量
血漿スニチニブレベルを、塞栓形成手順の直前および手順後、投与の1、2、3、4、5、6時間後に測定した。追加の血液サンプルを、グループ2の24時間の動物、およびグループ3の24時間で犠牲になった動物で得た。すべての血液サンプルをEDTA−Kチューブに集め、遠心分離した。血漿サンプルを光から保護し、そしてLC MS/MSタンデム質量分析[16]により分析するまで冷凍貯蔵した。肝臓中のスニチニブ濃度の決定は、グループ3の動物の犠牲後、同じ質量分析方法を使用して行った。
【0081】
結果
この研究は、DEBの手段により投与されたスニチニブのインビボ薬物動態に焦点を当てた。肝臓酵素の一連の投薬量は、この投与様式の潜在毒性を評価することを可能とし、そして、処置の後の血漿スニチニブレベルは、最小であると予想される薬物の全身の通過を評価することを可能とした。
【0082】
肝機能の評価:
スニチニブ/DCビーズの投与は、肝臓中でTACE後通常のままで、細胞溶解と相性のよいALT、ASTのかなりの上昇の原因となる。ビリルビン血漿レベルは全測定での検出閾値以下にある処置により影響を受けなかった。スニチニブp.o.の投与は、肝臓酵素の任意の変質の原因とはならなかった。
【0083】
血漿スニチニブレベル:
肝動脈にDCビーズ+スニチニブの投与後、血漿スニチニブは、<50ng/mlで残留した。(最小の濃度は、化学的および細胞ベーズ解析からVEGFRおよびPDGFRを阻害することが予測される)
【0084】
肝組織でのスニチニブレベル
肝組織中のスニチニブレベルは、一般的な肝動脈中、6mgのスニチニブを充填された2mlのDCビーズの投与後、6時間(n=1)および24時間(n=3)で測定された。4つのサンプルは、投与中肝臓の不均質な灌流のせいによる違いを避けるため、各肝臓から得た。平均の量は6時間で3870ng/mlであり、24時間で4741.7ng/mlであり、化学的および細胞ベーズ解析から、VEGFRおよびPDGFRを阻害することが予測される最小濃度を越える方法であった。
【0085】
結論
肝動脈に直接注射された、充填されたDCビーズの手段によりスニチニブの投与は、予想外の毒性を誘発しなかった。処置後の肝組織中でスニチニブの決定は、当該薬物が肝組織の高い濃度の獲得した細胞中、DCビーズにより効果的に溶出される。一連の血漿測定は、体循環中に低い放出(インフラ治療(infra therapeutic))を示した。
【0086】
実施例6:VX2ウサギ腫瘍モデルのスニチニブ溶出ビーズの抗腫瘍性効果の評価
材料および方法
動物モデル
3.0〜3.8kgsの重さの大人のニュージーランド白ウサギ(n=15)を使用した。
【0087】
実験プロトコル
腫瘍は、Leeら[17]に開示された技術に従って、全身麻酔の下、開腹手術によりウサギの左肝葉に移植された。ウサギは3つのグループに分けられた:グループ1(n=7)は、DEB+スニチニブの肝動注を受け、グループ2(n=6)は、DEB(薬物なし)の肝動注を受け、グループ3(n=6)は蒸留水を伴った模造塞栓形成を受けた。選択的な肝動脈造影は全身麻酔の下、腫瘍生着後2週間行われた。動脈組織、腫瘍染色、血管分布、大きさおよび配置を、一般的な肝動脈造影により最初の評価をした。その後に続く、血管を成長させる腫瘍のカテーテル法を行い、そして処置(DEB+スニチニブ)を投与した。各グループの1つの動物を24時間で犠牲にし、そして他の動物を15日まで生かしておいた。
【0088】
スニチニブ充填DEBの調製
100〜300mの寸法である、同じDCビーズ(Biocompatibles社製)をこの実験で使用した。DCビーズをスニチニブ溶液中2時間懸濁液としてスニチニブを充填し、30mg/mlの濃度を達成した。1.5mgのスニチニブを含むDCビーズ0.05mlの少量の一定分量を、〆腫瘍の上記の選択的な塞栓形成で調製した。
【0089】
投与後の血漿肝臓酵素の測定
肝臓酵素を、投与直前、および投与直後、ならびに7日まで毎日、ウサギの耳の静脈に配置されたカテーテルにより得られる血液サンプルから測定した。1つの追加の血液サンプルを、15日にまだ生きている動物から得た。
【0090】
投与後の血漿スニチニブレベルの測定
血液サンプルを集め、スニチニブの循環濃度(すなわち、「全身暴露」)を決定した。サンプルを、投与直前、および投与直後、ならびに7日まで毎日、ウサギの耳の静脈に配置されたカテーテルにより集めた。1つの追加の血液サンプルを、15日にまだ生きている動物から得た。すべての血液サンプルをEDTA−Kチューブに集め、遠心分離した。血漿サンプルを光から保護し、そしてLC MS/MS方法により分析するまで冷凍貯蔵した。毒物動態学の計算を非コンパートメントアプローチを使用して行った。
【0091】
解剖病理学的評価
〆動物を犠牲にした後、その動物の肝臓を摘出した。腫瘍組織中のスニチニブレベルを薬物動態研究でLC MS/MSにより測定した。当該腫瘍の残りを病理組織学的調製用のホルムアルデヒドに入れた。壊死およびMVDの百分率をTUNEL方法およびCD−31ラベリングを使用した病理組織学的分析により見積もった。我々は、リン酸化VEGFR−2をVEGF活性から間接的な除名として腫瘍ホモジネートのウエスタンブロット解析により評価した。
【0092】
結果
この研究は、VX2を保有するウサギにDEBにより動脈内に投与した時、スニチニブの局所的な抗腫瘍性の有効性を確かめることを目的とした。
【0093】
肝臓の左側葉に供給する動脈枝のカテーテルおよび計画的な処置の投与はすべての動物で成功した。
【0094】
生存:
グループ1で、経過観察の間、動物は死ななかった。グループ2は2匹、グループ3は3匹の動物が、ぞれぞれ、経過観察の間、死んだ。グループ2で、1匹は胃穿孔により3日目に死亡し、および1匹は広範囲の肺転移のため呼吸不全により14日目に死んだ。グループ3で、1匹は胃穿孔により3日目に死亡し、1匹は処置の間、おそらく脊椎骨折のため、7日目に対麻痺であったため犠牲にし、および1匹は広範な肺転移のため9日目に死んだ。我々は、グループ1で動物にエクローシス(necropsis)でいかなる肺転位を見なかった。
【0095】
肝機能:
グループ1で、スニチニブ/DCビーズの投与は、処置後2、3日で発生するALT、ASTのかなりの向上の原因であった。ビリルビン血漿レベルは影響されなかった。PALおよびLDHレベルは処置後かなりの方法で変化したように思えなかった。
【0096】
グループ2で、左側葉に供給する動脈枝への、スニチニブを有さないDCビーズの投与はASTおよびALTの両方の向上の原因となった。ビリルビン血漿レベルは影響されなかった。PALおよびLDHレベルは、処置後かなりの方法で変化したように思えなかった。
【0097】
グループ3で、グループ3の肝臓の左側葉に供給する動脈枝へのNaClの投与は、血漿肝臓酵素レベルの処置のかなりの効果の原因とならなかった。
【0098】
血漿スニチニブレベル:
グループ1で、グループ1で行われた血漿スニチニブレベルの連続測定は、濃度のピークは動注投与直後に起こり、3日目から4日目までゆっくり減少することを示した。
【0099】
スニチニブの血漿濃度は、<50ng/mlのままであった(化学的および細胞ベーズ解析から予測される最小濃度は、VEGFRおよびPDGFRを阻害する)。
【0100】
ウエスタンブロットによるリン酸化されたRTKの評価:
グループ1で、スニチニブが充填されたDECビーズで塞栓形成後24時間、TKのリン酸化の明らかな不足があった。グループ2で、無菌正のDCビーズで塞栓形成後24時間、RTKのリン酸化の増加があった。処置後15日間有意差は見られなかった。
【0101】
病理組織学的な抗腫瘍性の効果の評価:
組織病理学的評価で、我々は、15日で摘出した腫瘍のほとんどが、高い割合で壊死していることを見出した。処置により誘導された壊死とVX2腫瘍モデルの自然漸進的変化の壊死を差別化するのは不可能であった。しかしながら、興味深いことに、スニチニブを充填されたビーズによって処置されたグループ1で遠隔転移の場合がないことを見出した。
【0102】
結論
以前の研究のように、腫瘍を供給する肝動脈枝に直接注射され充填されたDCビーズによりスニチニブの投与は、十分に許容された。この処置は、VX2保有ウサギで生存優位性を提供するように思われ、かつ、興味深いことにスニチニブを充填されたDCビーズで処置された動物は剖検で遠隔転移は存在しなかった。我々は、スニチニブを伴わないDCビーズで処置された腫瘍中のRTK活性の向上があるけれども、スニチニブを充填されたDCビーズを伴った塞栓形成後の腫瘍サンプル中ウエスタンブロットによりRTKの阻害を示すことができた。この知見は、抗血管新生薬を充填した粒子での塞栓形成は、種々の血管過多された腫瘍の処置で有用であり得るコンセプトを支援する。さらなる研究は、動物とインビトロモデルでのこの組み合わせの抗腫瘍性効果のさらなる評価を、現在強調する(undercousre)。
【0103】
実施例7:DCビーズへのイマチニブの実行可能性
グルコース溶液(5%)に希釈したイマチニブを、HClを使用してpH4.5で溶解した。当該薬物を溶液のmLにつき0.5mgの濃度で使用した。DCビーズ(スルホン化ポリビニルアルコールビーズ、100〜300ミクロンの直径、1mL)をこの溶液5mLに懸濁させ、2時間接触させたままにした。生理食塩水(NaCl0.9%)中への溶出を高圧液体クロマトグラフィー(移動相:水/メタノール/トリエチルアミン(64/35/1 v/v/v)、pH4.8、UV検出(268nm))でモニターした。4時間後、〆初期充填溶液中に存在する薬物の量の約40%は、溶出媒体に回収され、HPLCピークの下、〆領域に示されたように、ヒドロゲルビーズへのイマチニブの充填の実行可能性を示す。
図1
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