【文献】
Dittmann K. et al.,EGFR cooperates with glucose transporter SGLT1 to enable chromatin remodeling in response to ionizing radiation,Radiotherapy and Oncology [online],ELSEVIER,2013年 4月17日,Vol.107, No.2,p.247-251,URL,http://dx.doi.org/10.1016/j.radonc.2013.03.016
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上皮増殖因子受容体(EGFR)タンパク質とナトリウム/グルコース共輸送体1(SGLT1)タンパク質の両方を不安定化させることが可能なペプチドを含む、がん細胞を処置するための組成物であって、
該ペプチドが、配列番号001および004〜007からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む;あるいは
該ペプチドが、配列番号001の6位がThrまたはTyrで置換されているか、配列番号001の8位がThrまたはTyrで置換されているか、配列番号001の9位がThrまたはTyrで置換されているか、配列番号001の11位がThrまたはTyrで置換されているか、配列番号001の12位がThrまたはTyrで置換されているか、あるいはこれらの組み合わせである、配列番号001のアミノ酸配列を含む;あるいは
該ペプチドが、配列番号001の10位がSerまたはTyrで置換されているか、配列番号001の13位がSerまたはTyrで置換されているか、あるいはこれらの組み合わせである、配列番号001のアミノ酸配列を含む;あるいは
該ペプチドが、配列番号001の7位がホモシステインで置換されている、配列番号001のアミノ酸配列を含む、
組成物。
前記組成物が、がん治療の標的を同定するためにさらに使用され、EGFR−SGLT1相互作用によって制御される下流の生存経路を同定するために前記ペプチドが使用されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
前記チロシンキナーゼインヒビターが、ゲフィチニブ、エルロチニブ、イコチニブ、ムブリチニブ、バンデタニブ、ラパチニブ、ペリチニブ、カネルチニブ、ネラチニブ、アファチニブおよびダコミチニブのうちの少なくとも1つである、請求項2に記載の組成物。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】
図1Aは、実施形態に従った、ヒトEGFRの様々な構築物の概略図である。
【
図1B】
図1Bは、実施形態に従った、変異したEGFRとSGLT1の間の相互作用の、免疫沈降と組み合わせたウェスタンブロットを示す図である。
【0011】
【
図2A】
図2Aは、実施形態に従った、WT−EGFR、KD−EGFRおよびΔ自己リン酸化−EGFRと共トランスフェクトされたHEK293細胞におけるSGTL1の発現レベルのウェスタンブロット分析を示す図である。
【
図2B】
図2Bは、実施形態に従った、
図2Aのウェスタンブロットのバンドの濃度測定による定量化を示す図である。
【
図2C】
図2Cは、実施形態に従った、Δ自己リン酸化−EGFRによるSGLT1の下方制御におけるプロテアソームインヒビターであるMG132の効果のウェスタンブロット分析を示す図である。
【
図2D】
図2Dは、実施形態に従った、
図2Cのウェスタンブロットのバンドの濃度測定による定量化を示す図である。
【0012】
【
図3A】
図3Aは、実施形態に従った、EGFまたはAEE788で処理されたHEK293細胞におけるEGFR−HAとSGLT1−flagの間の相互作用の、免疫沈降と組み合わせたウェスタンブロット分析を示す図である。
【
図3B】
図3Bは、実施形態に従った、EGFまたはAEE788で処理されたPC3細胞における内因性EGFRとSGLT1の間の相互作用の、免疫沈降と組み合わせたウェスタンブロット分析を示す図である。
【0013】
【
図4A】
図4Aは、実施形態に従った、前立腺がん組織アレイからの前立腺がん組織におけるSGLT1とEGFRの共局在を示す図である。
【
図4B】
図4Bは、実施形態に従った、PC3細胞およびLNCaP細胞における内因性EGFRとSGLT1の発現のウェスタンブロット分析を示す図である。
【
図4C】
図4Cは、実施形態に従った、PC3細胞におけるゲフィチニブおよびエルロチニブの増殖阻害効果における、SGLT1の阻害効果を示すMTTアッセイを示す図である。
【
図4D】
図4Dは、実施形態に従った、LNCaP細胞におけるゲフィチニブおよびエルロチニブの増殖阻害効果における、SGLT1の阻害効果を示すMTTアッセイを示す図である。
【0014】
【
図5A】
図5Aは、実施形態に従った、両方のタンパク質を不安定化するペプチドの小分子によるEGFR−SGLT1の相互作用の破壊を示す図である。
【
図5B】
図5Bは、実施形態に従った、EGFR−SGLT1を破壊するペプチド(MTG−01)を用いたPC3細胞の処理は、EGFRおよびSGLT1タンパク質を有意に下方制御することを示す図である。
【0015】
【
図6-1】
図6A〜Eは、実施形態に従った、がん性PC3、Du145、HCT116およびMDA−MB−231細胞の生存率、ならびにMTG−01で処理した際の非がん性HEK293細胞の処置を示す図である。
【
図6-2】
図6A〜Eは、実施形態に従った、がん性PC3、Du145、HCT116およびMDA−MB−231細胞の生存率、ならびにMTG−01で処理した際の非がん性HEK293細胞の処置を示す図である。
【
図6-3】
図6A〜Eは、実施形態に従った、がん性PC3、Du145、HCT116およびMDA−MB−231細胞の生存率、ならびにMTG−01で処理した際の非がん性HEK293細胞の処置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本明細書に記載されている発明概念は、それらの応用において、以下の説明に記載されているまたは図面に例示されている構成詳細または成分配置に限定されないことを理解すべきである。さらに、本明細書で用いられる言い回しおよび用語は、記述的目的にすぎず、限定とみなすべきではないことを理解する必要がある。
【0017】
さらに、記載されている特徴のいずれか1つが、他の特徴とは別個にまたはそれと組み合わせて使用され得ることを理解すべきである。他の発明に係るシステム、方法、特徴および利点は、図面および本明細書における詳細な説明を考察することにより、当業者に明らかでありまたは明らかとなる。すべてのこのような追加のシステム、方法、特徴および利点は、添付の特許請求の範囲によって保護されることが意図される。
【0018】
本出願において引用されている全ての参考文献は、全体として参照により組み込まれる。
【0019】
上皮増殖因子受容体(EGFR)の過剰発現は、悪性腫瘍における予後不良と関連する。ナトリウム/グルコース共輸送体1(SGLT1)は、前立腺がんを含むがんにおいて過剰発現する活性なグルコース輸送体である。EGFRは、がん細胞においてSGLT1と相互作用し、それを安定化させることが見出されている。
【0020】
以下において非常に詳細に説明されるように、以下の実施態様は本出願において特定されている:
・SGLT1とのその十分な相互作用およびSGLT1との相互安定化に必要とされるEGFRの重要なマイクロドメイン;
・EGFR−SGLT1相互作用におけるEGFRの活性化/不活性化の効果;
・前立腺がんの組織および細胞株におけるEGFRおよびSGLT1の発現測定;
・EGFRチロシンインヒビターに対する前立腺がん細胞の感受性に対するSGLT1の阻害効果;
・合成されたペプチドであるESD−01のアミノ酸配列;
・がん細胞におけるEGFRおよびSGLT1タンパク質の安定性に対するESD−01の効果;および
・非がん細胞(HEK293)およびインビトロで培養された数種類のがん細胞の生存に対するESD−01の効果。
・L−アミノ酸またはD−アミノ酸のいずれかで作製されたESD−01ペプチドは、インビトロにおけるがん細胞の死滅に同等に有効である。
【0021】
一実施形態において、EGFRの自己リン酸化領域(978〜1210アミノ酸)は、SGLT1とのその十分な相互作用に必要とされる。この相互作用は、EGFRのチロシンキナーゼ活性に依存しない。最も重要なことは、別の実施形態において、EGFR−SGLT1相互作用は、EGFRチロシンキナーゼモジュレーター(EGFインヒビターおよびチロシンキナーゼインヒビター)に非応答性である。さらに別の実施形態において、EGFRおよびSGLT1は、前立腺がん組織に共局在する。さらに別の実施形態において、SGLT1インヒビター(フロリジン)によるSGLT1の阻害は、EGFRインヒビター(ゲフィチニブおよびエルロチニブ)に対して前立腺がん細胞(PC3およびLNCaP)を感作させる。さらなる実施形態において、ESD−01(配列番号001)は、EGFR−SGLT1相互作用を不安定化させる。このデータのすべては、がん細胞におけるEGFRが、2種の状態−チロシンキナーゼモジュレーター応答性状態および非応答性状態において外れ得ることを示唆する。したがって、ある実施形態において、SGLT1は、EGFRチロシンキナーゼインヒビターに非応答性であるEGFR機能に関与するタンパク質であり、EGFR−SGLT1相互作用は、前立腺がん治療の新規な標的であり得る。
【0022】
SGLT1との相互作用に必要とされるEGFRタンパク質領域
【0023】
一実施形態において、SGLT1とのその相互作用に必要とされるEGFRタンパク質領域を決定するために、様々な変異を有する、flagタグ付きSGLT1
23およびHAタグ付きEGFRを作り出し得る(Blessing Aら、Sodium/Glucose Co−transporter 1 Expression Increases in Human Diseased Prostate、J. Cancer Sci. Ther.4巻(9号):306〜312頁(2012年))。
図1Aは、ほんの一例として、SGLT1とのその相互作用に必要とされるEGFRタンパク質領域を決定するために使用され得る、ヒトEGFR構築物の概略図を示す。例えば、いくつかの実施形態において、以下の構築物を含んでもよい:野生型EGFR(「WT」);キナーゼ失活型EGFR(R817M)(「KD」)(配列番号012);膜貫通ドメイン欠失(645〜670aa)(「ΔTM」)(配列番号013);細胞外ドメイン欠失(1〜644aa)(「Δ細胞外」)(配列番号014);細胞内ドメイン欠失(671〜1210aa)(「Δ細胞内」)(配列番号015);チロシンキナーゼドメイン欠失(670〜977aa)(「ΔTK」)(配列番号016);または自己リン酸化ドメイン欠失(978〜1210aa)(「Δ自己リン酸化」)(配列番号017)。
【0024】
ある実施形態において、flag付きSGLT1および上記で同定されたHAタグ付きEGFRは、HEK293細胞に一過性に共トランスフェクトされ得る。別の実施形態において、SGLT1は、抗flag抗体を使用して免疫沈降させ得る。さらに別の実施形態において、ウェスタンブロット分析をHAタグ付きEGFRについて行ってもよい。
図1Bは、ほんの一例として、変異したEGFRとSGLT1の間の相互作用のウェスタンブロット分析を示す。この場合、IP=免疫沈降、IB=免疫ブロット、およびインプット=免疫沈降用に使用されるHEK293全細胞溶解物中に示された外因性タンパク質の発現レベルである。
図1Bに示すように、全体の細胞内ドメインまたはEGFRの自己リン酸化ドメインの欠失は、SGLT1との相互作用を実質的に減少させる。一実施形態において、EGFRの自己リン酸化ドメインはSGLT1とのその十分な相互作用に必要とされる。
【0025】
これまでに、EGFRの細胞外ドメイン、およびEGFR TMドメインを含有しない細胞内ドメインを使用して、EGFRの細胞外ドメインが、その細胞内ドメインよりも良好にSGLT1と相互作用することが発見された(Weihua Zら、Survival of cancer cells is maintained by EGFR independent of its kinase activity、Cancer Cell13巻(5号):385〜393頁(2008年))。ある実施形態において、原形質膜におけるEGFR−SGLT1相互作用をさらに特徴付けるために、TMドメインを切断型EGFRの構築物中に含ませてもよい。一実施形態において、EGFRの細胞内ドメイン、特に自己リン酸化ドメインを含有するTMは、細胞外ドメインよりSGLT1とより強く相互作用する。この実施形態と以前の報告に示されたデータの間の不一致は、以前の研究において使用された細胞内ドメイン構築物におけるTMドメインの欠落に起因している可能性が非常に高い。
【0026】
プロテアソーム媒介性SGLT1分解を防ぐために必要とされるEGFRの自己リン酸化ドメイン
【0027】
ある実施形態において、EGFRの自己リン酸化ドメインがSGLT1の安定性を持続するために必要とされるかどうかを決定するために、HEK293細胞にWT−EGFR、KD−EGFRおよびΔ自己リン酸化−EGFRと共トランスフェクトされたSGLT1の発現レベルを測定し得る。例えば、
図2Aは、ほんの一例として、WT−EGFR、KD−EGFRおよびΔ自己リン酸化−EGFRと共トランスフェクトされたHEK293細胞におけるSGTL1の発現レベルについてのウェスタンブロット分析を示す。SGLT1とEGFRの同量のDNAプラスミドを、各群の処理に使用することができる。さらに、対照細胞に空のベクターの同量のDNAをトランスフェクトし得る。アクチンを装填対照として使用することができる。
図2Bは、ほんの一例として、
図2Aのウェスタンブロットのバンドの濃度測定による定量化を示す。アスタリスク記号は、3重の実験からの連結された代表的な群間の統計的有意性を示す。
【0028】
図2A〜2Bに示されるように、一実施形態において、WT−EGFRとKD−EGFRがトランスフェクトされた細胞におけるSGLT1レベルは、対照ベクターまたはΔ自己リン酸化−EGFRがトランスフェクトされた細胞におけるレベルよりも非常に高い。別の実施形態において、EGFRの自己リン酸化ドメインは、SGLT1の発現レベルを維持することができる。さらに別の実施形態において、Δ自己リン酸化−EGFRがトランスフェクトされた細胞におけるSGLT1レベルは、対照細胞よりも有意に低い。さらに別の実施形態において、EGFRとのSGLT1相互作用の喪失は、SGLT1の下方制御を促進し得る。
【0029】
ある実施形態において、プロテアソームが、SGLT1の下方制御を誘導したEGFRとの相互作用の喪失に関与するかどうかを決定するために、SGLT1とΔ自己リン酸化−EGFRが共トランスフェクトされたHEK293細胞を、限定されないが、MG231などのプロテアソームインヒビターで処理することができる。例えば、
図2Cは、Δ自己リン酸化−EGFRによるSGLT1の下方制御に対するプロテアソームインヒビターであるMG132の効果についてのウェスタンブロット分析を示す。アクチンを装填対照として使用することができる。
図2Dは、ほんの一例として、
図2Cのウェスタンブロットにおけるバンドの濃度測定による定量化を示す。アスタリスク記号は、3重の実験からの連結された代表的な群間の統計的有意性を示す。
【0030】
図2C〜2Dに示されるように、ほんの一例として、一実施形態において、MG231は、Δ自己リン酸化−EGFRがトランスフェクトされた細胞におけるSGLT1の下方制御を阻害することができる。別の実施形態において、プロテアソーム機構は、SGLT1下方制御を誘導したEGFRとの相互作用の喪失に関与する。換言すると、プロテアソームは、EGFR−SLGT1相互作用が低下すると、SGLT1の最終的な分解を引き起し得る。さらに別の実施形態において、プロテアソーム機構は、単独でまたはEGFR−SLGT1相互作用と組み合わせて、潜在的な治療標的であり得る。
【0031】
一実施形態において、EGFRにおけるSGLT1相互作用ドメインの欠失は、プロテアソーム機構を介したSGTL1の下方制御を促進する。別の実施形態において、EGFR陽性がん細胞におけるEGFR−SGLT1相互作用のこの破壊は、SGLT1の下方制御をもたらし得る。さらに、以前のデータは、shRNAによるSGLT1のノックダウンが、前立腺がん細胞のオートファジー(autophagic)細胞死をもたらすことを示す(Weihua Zら、Survival of cancer cells is maintained by EGFR independent of its kinase activity、Cancer Cell13巻(5号):385〜393頁(2008年))。ある実施形態において、EGFR−SGLT1相互作用は、がんについてのEGFRに基づく治療を改善するための重要な標的であり得る。
【0032】
EGFR−SGLT1相互作用はEGFRチロシンキナーゼインヒビターに非応答性である
【0033】
ある実施形態において、SGLT1とのEGFR相互作用に対するEGFRチロシンキナーゼインヒビターの効果を決定することができる。ある実施形態において、WT−EGFRとSGLT1が共トランスフェクトされたHEK293細胞をEGFまたはEGFRチロシンキナーゼインヒビターであるAEE788のいずれかで処理し得る。SGLT1を免疫沈降し得、SGLT1と共免疫沈降されたEGFRレベルを測定することができる。例えば、
図3Aは、ほんの一例として、EGFまたはAEE788で処理されたHEK293細胞におけるEGFR−HAとSGLT1−Flagの間の相互作用の、免疫沈降と組み合わせたウェスタンブロット分析を示す。この場合、EGFR=総EGFR、pEGFR=リン酸化EGFR、IP=免疫沈降、IB=免疫ブロットおよびインプット=免疫沈降用に使用されたHEK293全細胞溶解物中の示された外因性タンパク質の発現レベルである。
図3Aに示されるように、一実施形態において、EGFとAEE788はいずれもEGFR−SGLT1相互作用に有意に影響を与えない。さらに別の実施形態において、SGLT1と共沈されたEGFRはリン酸化されない。
【0034】
一実施形態において、内因性EGFR−SGLT1相互作用に対するEGFおよびAEE788の効果、ならびにSGLT1と相互作用する内因性EGFRのリン酸化状態を決定するために、EGFまたはAEE788で処理されたPC3細胞の内因性SGLT1を免疫沈降することができる。別の実施形態において、SGLT1と共沈したEGFRのリン酸化状態を測定することができる。ほんの一例として、
図3Bは、EGFまたはAEE788で処理されたPC3細胞における内因性EGFRと内因性SGLT1の間の相互作用の、免疫沈降と組み合わせたウェスタンブロット分析を示す。ある実施形態において、EGFとAEE788はいずれもEGFR−SGLT1相互作用に影響を与えない。さらに別の実施形態において、EGFRと相互作用する内因性SGLT1はリン酸化されない。さらに別の実施形態において、EGFR−SGLT1相互作用は、EGFRのチロシンキナーゼ活性のモジュレーターに非応答性である。なおさらなる実施形態において、EGFRは、その非キナーゼ機能性におけるがん治療を標的とすることができ、例えば、限定されないが、SGLT1とのその相互作用が挙げられる。
【0035】
EGFRの自己リン酸化ドメイン内のチロシンがリン酸化されると、自己リン酸化ドメインは、下流のシグナル伝達を転写活性化するアダプター/エフェクタータンパク質を動員するための主要なドッキング部位として機能することは十分に実証されている(Bazley LAら、The epidermal growth factor receptor family、Endocrine−Related Cancer、12巻、補遺1:S17〜27頁(2005年))。
図3Aの結果に基づいて、ある実施形態において、EGFR−SGLT1相互作用は、EGFR活性化/不活性化とは独立している。EGFRの自己リン酸化ドメインは、EGFRのチロシンキナーゼ活性とは独立して、タンパク質間相互作用ドメインとして機能する。一実施形態において、EGFRは、そのチロシンキナーゼ活性とは独立して、生存促進機能を有する。例えば、EGFRは、2種類の状態−チロシンキナーゼ応答性状態とチロシンキナーゼ非応答性状態で存在することができる。EGFRのリガンドによる活性化の際に、キナーゼ応答性EGFRの自己リン酸化ドメインはリン酸化され得、下流シグナルを誘発するためにエフェクターを動員することができる。あるいは、キナーゼ非応答性EGFRは、EGFRリガンドの存在にかかわらず、およびそのチロシンキナーゼの活性化または不活性化にかかわらず、タンパク質と常に相互作用し得る。さらに別の実施形態において、SGLT1は、キナーゼ非応答性状態にあるEGFRに結合し、それを保つこのようなタンパク質の1つであり得る。さらに別の実施形態において、EGFRのリン酸化されていない自己リン酸化ドメインは、治療標的を同定するためのツールとして使用することができる。
【0036】
SGLT1インヒビターによるSGLT1の阻害はEGFRインヒビターに対して前立腺がん細胞を感作させる
【0037】
ある実施形態において、EGFR−SGLT1相互作用の臨床的関連性を決定するために、前立腺がんの組織マイクロアレイ(n=44)におけるEGFRとSGLT1の免疫蛍光共染色を行ってもよい。例えば、
図4Aは、ほんの一例として、前立腺がん組織アレイからの3つの代表的な前立腺がん組織の結果を示す。ある実施形態において、SGLT1(緑色)およびEGFR(赤色)は、前立腺組織において共局在し得る(例えば、矢印で示すように、オレンジ色または黄色)。別の実施形態において、間質細胞は、SGLT1について陽性であり得るが、しかし、EGFRについては陰性であり得る(例えば、矢頭によって示される)。さらに別の実施形態において、EGFR陽性のがん試料(n=41)では、SGLT1はがん細胞においてEGFRと共局在するが、間質細胞においては共局在しない。
【0038】
さらに別の実施形態において、EGFR−SGLT1相互作用は、前立腺がんの病態形成に寄与し得る。例えば、ある実施形態において、前立腺がん組織におけるSGLT1とのEGFRの共局在は、EGFR−SGLT1相互作用ががんに関連することを示し得る。現在、病院においては、EGFRチロシンキナーゼインヒビターは、前立腺がんに対して満足のいく治療効果をいまだに示されていない(Canil CMら、Randomized phase II study of two doses of gefitinib in hormone−refractory prostate cancer:a trial of the National Cancer Institute of Canada−Clinical Trials Group、J. Clinical Oncology、23巻(3号):455〜460頁(2005年);Gross Mら、A phase II trial of docetaxel and erlotinib as first−line therapy for elderly patients with androgen−independent prostate cancer、BMC Cancer7巻:142頁(2007年))。一実施形態において、EGFR発現が前立腺がんの疾患進行およびEGFRチロシンキナーゼインヒビターへの前立腺がんの臨床的非応答性と相関するという事実を考慮すると、EGFRは、そのチロシンキナーゼ活性とは独立して、前立腺がんの疾患進行に寄与する可能性がある。さらに、以前の知見によれば、(1)前立腺がん組織はSGLT1の発現を増大させた
23、(2)EGFRタンパク質の喪失は、そのチロシンキナーゼ活性ではなく、化学療法剤に対して前立腺がん細胞を感作させた
29、および(3)EGFR誘導によるオートファジー細胞死の喪失はSGLT1タンパク質の下方制御によって媒介された、と結論付けられる(Blessing Aら、Sodium/Glucose Co−transporter 1 Expression Increases in Human Diseased Prostate、J. Cancer Sci. Ther.4巻(9号):306〜312頁(2012年);Xu Sら、Loss of EGFR induced autophagy sensitizes hormone refractory prostate cancer cells to adriamycin、The Prostate.17巻:1216〜1224頁(2011年);Weihua Zら、Survival of cancer cells is maintained by EGFR independent of its kinase activity、Cancer Cell、13巻(5号):385〜393頁(2008年))。さらに別の実施形態において、EGFRは、後期がん細胞のグルコースの高需要を持続するために、SGLT1の安定化を介して前立腺がんの進行を促進することができる。この実施形態は、本明細書に記載される全ての実施形態によって裏付けられているだけでなく、SGLT1の過剰発現が、腎上皮細胞および腸上皮細胞をアポトーシスから防ぐという過去のデータによっても裏付けられている(Ikari Aら、Sodium−dependent glucose transporter reduces peroxynitrite and cell injury caused by cisplatin in renal tubular epithelial cells、 Biochimica et Biophysica Acta1717巻(2号):109〜117頁(2005年);Yu LCら、SGLT−1−mediated glucose uptake protects human intestinal epithelial cells against Giardia duodenalis−induced apoptosis、International journal for parasitology38巻(8〜9号):923〜934頁(2008年))。
【0039】
グルコースレベルの増加がEGFRを活性化すること、SGLT1が前立腺がん組織において過剰発現すること、および前立腺がんがEGFRインヒビターに抵抗性であることは周知である。(Han Lら、High glucose promotes pancreatic cancer cell proliferation via the induction of EGF expression and transactivation of EGFR、PloS One6巻(11号):e27074頁(2011年);Blessing Aら、 Sodium/Glucose Co−transporter 1 Expression Increases in Human Diseased Prostate、J. Cancer Sci. Ther.4巻(9号):306〜312頁(2012年);Canil CMら、Randomized phase II study of two doses of gefitinib in hormone−refractory prostate cancer:a trial of the National Cancer Institute of Canada−Clinical Trials Group、J. Clinical Oncology、23巻(3号):455〜460頁(2005年);Gross Mら、A phase II trial of docetaxel and erlotinib as first−line therapy for elderly patients with androgen−independent prostate cancer、BMC Cancer7巻:142頁(2007年))。ある実施形態において、SGLT1およびEGFRは、前立腺がんの増殖を相乗的に促進することができる。一実施形態において、SGLT1の阻害が、EGFRインヒビターに対して前立腺がん細胞を感作させることができるかどうかを試験するために、前立腺がん細胞株(例えば、PC3およびLNCaP(ともにEGFRとSGLT1に対して陽性))をSGLT1インヒビター(例えば、フロリジンおよびフロリジン誘導体、例えばカナグリフロジンおよびダパグリフロジン)の存在/非存在下でEGFRチロシンキナーゼインヒビター(例えば、ゲフィチニブ、エルロチニブ、イコチニブ、ムブリチニブ、バンデタニブ(Vandertanib)、ラパチニブ、ペリチニブ、カネルチニブ、ネラチニブ、アファチニブおよびダコミチニブ)を用いて処理され得る(Ehrenkranz JRら、Phlorizin:a review、Diabetes/Metabolism Research and Reviews21巻(1号):31〜38頁(2005年))。一実施形態において、処置の増殖阻害効果を決定することができる。例えば、ある実施形態において、MTTアッセイに供する前に、EGFRインヒビター(ゲフィチニブ、10μM;エルロチニブ、10μM)の有無でSGLT1インヒビターであるフロリジン(50μM)を用いて、48時間細胞を処理することができる。対照細胞のOD値を人為的に1に設定することができる。全ての実験は、少なくとも3回繰り返されてもよい。アスタリスク記号は、連結された群間の統計的有意性を示す。
【0040】
図4Bは、ほんの一例として、PC3細胞およびLNCaP細胞における内因性EGFRおよび内因性SGLT1発現のウェスタンブロット分析を示す。一実施形態において、乳がん細胞および結腸がん細胞は、EGFRおよびSGLT1を発現する。
図4Cは、PC3細胞に対するゲフィチニブおよびエルロチニブの増殖阻害効果に対する、SGLT1の阻害効果のMTTアッセイを示す。
図4Dは、LNCaP細胞に対するゲフィチニブおよびエルロチニブの増殖阻害効果に対する、SGLT1の阻害効果のMTTアッセイを示す。これらの結果に基づいて、一実施形態において、SGLT1およびEGFRの機能の同時阻害は、より効果的にがん細胞増殖を阻害することができる。さらに別の実施形態において、フロリジンは、ゲフィチニブおよびエルロチニブの増殖阻害効果に対して前立腺がん細胞を顕著に感作させることができる。ある実施形態において、がんを処置するために静脈内、腫瘍内または全身的にフロリジンまたはフロリジン様化合物を患者に投与することができる。さらに別の実施形態において、がんを処置するためにチロシンキナーゼインヒビターを併用して、フロリジンまたはフロリジン様化合物を患者に投与することができる。
【0041】
別の実施形態において、ペプチドは、がん細胞のEGFRタンパク質およびSGLT1タンパク質を不安定化することができる。
図5Aは、ほんの一例として、がん細胞のEGFRタンパク質およびSGLT1タンパク質を不安定化することができるESD−01(配列番号001)と呼ばれるペプチドの実施形態を示す。一実施形態において、ESD−01ペプチドは、EGFRのSGLT1相互作用ドメインから選択され得る。別の実施形態において、ESD−01は、ヒトEGFRタンパク質(GenBank:AAH94761.1)のアミノ酸1049〜1062を含む。さらに別の実施形態において、培養細胞(例えば、PC3、MDA−MB−231およびHCT116細胞)におけるEGFRおよびSGLT1の安定性に対するESD−01の効果は、ウェスタンブロット分析によって決定することができる。
図5Bは、ほんの一例として、ESD−01処理(200μM、6時間)が、プロテアソームインヒビターであるMG132によって阻害される、PC3細胞におけるEGFRレベルおよびSGLT1レベルを有意に下方制御することを示す。ある実施形態において、ESD−01によるSGLT1およびEGFRの下方制御のMG132による阻害は、MTG−01がタンパク質分解を介してEGFRおよびSGLT1を不安定化させることを示唆する。さらに別の実施形態において、培養されたがん細胞(例えば、PC3、MDA−MB−231およびHCT116細胞)の生存性に対するESD−01の効果は、トリパンブルー取り込みアッセイによって決定することができる。
図6A〜Eは、ほんの一例として、ESD−01処理(100μM、24時間)が、前立腺がんPC3およびDu145細胞、乳がんMDA−MB−231細胞ならびに結腸がんHCT116細胞を含む種々のがん細胞の生存性を有意に低下させることを示す。さらに別の実施形態において、ESD−01処理は、非がん性HEK293細胞の生存性を減少させることはできない。
【0042】
類似した化学的特性を有する別のアミノ酸を用いた、タンパク質/ペプチドにおけるアミノ酸の置換は、同一機能を有するタンパク質/ペプチドを生成し得ることは周知である。ある実施形態において、ESD−01(配列番号001)は、類似した化学的特性を有するアミノ酸またはがん細胞のEGFRおよびSGLT1タンパク質を不安定化する任意の他の変異を有するアミノ酸で置換することができる。例えば、一実施形態において、アミノ酸は、L体またはD体のキラル異性体のいずれかであり得る。別の実施形態において、ESD−01におけるセリン(S)をスレオニン(T)、チロシン(Y)または任意の他の非天然ヒドロキシル含有アミノ酸で置換することができる(例えば、配列番号002)。さらに別の実施形態において、ESD−01におけるスレオニン(T)をセリン(S)、チロシン(Y)または任意の他の非天然ヒドロキシル含有アミノ酸で置換することができる(例えば、配列番号003)。さらに別の実施形態において、ESD−01におけるリジン(K)をスレオニン(T)で置換することができる(例えば、配列番号004)。ある実施形態において、ESD−01におけるグルタミン(Q)をヒスチジン(H)で置換することができる(例えば、配列番号005)。別の実施形態において、ESD−01の10位のスレオニン(T)をアラニン(A)で置換することができる(例えば、配列番号006)。さらに別の実施形態において、ESD−01の12位のセリン(S)をロイシン(L)で置換することができる(例えば、配列番号007)。さらに別の実施形態において、ESD−01における正に荷電した極性アミノ酸であるリジン(K)およびヒスチジン(H)は、任意の他の天然および非天然の正に荷電したアミノ酸であり得る(例えば、配列番号008)。一実施形態において、ESD−01における極性アミノ酸であるグルタミン(Q)およびシステイン(C)は、任意の他の天然および非天然の極性アミノ酸であり得る(例えば、配列番号009)。別の実施形態において、ESD−01におけるシステイン(C)は、任意の他の天然および非天然のチオール側鎖(−SH)を含有するアミノ酸であり得る(例えば、配列番号010)。さらに別の実施形態において、ESD−01における非極性アミノ酸であるロイシン(L)、バリン(V)およびトリプトファン(W)は、任意の他の天然および非天然の非極性アミノ酸であり得る(例えば、配列番号011)。
【0043】
上記の説明は例示であって限定的でないことを意図していることは理解される。材料は、当業者が、本明細書に記載されている発明概念を作製し、使用することができるように提示され、特定の実施形態の文脈において提供され、それらの変形は、当業者に容易に明らかとなる(例えば、開示された実施形態のいくつかは互いに組み合わせて使用され得る)。多数の他の実施形態は、上記の説明を検討することにより当業者には明らかとなる。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲、ならびにこのような特許請求の範囲が権利を受ける同等物の全範囲を参照して決定されるべきである。添付の特許請求の範囲において、用語「含むこと(including)」および「ここで(in which)」は、それぞれの用語「含むこと(comprising)」および「ここで(wherein)」の平易な英語の同等物として使用される。
【実施例】
【0044】
細胞および試薬。HEK293細胞株、前立腺がん細胞株PC3、LNCaP、Du145、MDA−MB−231およびHCT116細胞は、元々はアメリカン・タイプ・オブ・カルチャー・コレクション(ATCC)から入手し、10%ウシ胎児血清および1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補足したDMEM中で5%CO
2下、37℃で維持された。マウス抗Flagタグ抗体(F1804)、プロテアソームインヒビターMG231およびフロリジン二水和物をSigma−Aldrich(St.Louis、MO)から入手した。AEE788、ゲフィチニブおよびエルロチニブをSelleckchem(Houston、TX)から入手した。pEGFRに対する抗体(Y1173)(カタログ番号2434L)をCell Signaling(Danvers、MA)から入手した。C225に対するモノクローナル抗体をLee Elis博士(M.D.アンダーソンがんセンター)から入手した。ウサギ抗アクチン(カタログ番号sc−7210)、ウサギ抗HAタグ抗体(sc−805)、西洋ワサビペルオキシダーゼで標識したウサギおよびマウスに対する二次抗体、ならびにプロテインA/Gコンジュゲート化アガロースビーズ(カタログ番号sc−2003)をSanta Cruz Biotechnology(Santa Cruz、CA)から入手した。MTTキット(カタログ番号30−1010K)をATCCから入手した。flagタグ付きヒトSGLT1を発現するプラスミド、ならびに免疫組織化学分析(SGLT1−IHC)およびウェスタンブロッティング分析(SGLT1−WB)用のウサギ抗ヒトSGLT1ポリクローナル抗体は、これまでに記載されている(Blessing Aら、Sodium/Glucose Co−transporter 1 Expression Increases in Human Diseased Prostate、J. Cancer Sci. Ther.4巻(9号):306〜312頁(2012年))。
【0045】
プラスミド構築。ヒト野生型EGFRは、他のすべてのEGFR構築物を生成するために親ベクターとして使用されたpcDNA3.1ベクター(Clontech、CA)にクローニングした。C末端のHAタグを含むpRK5発現プラスミド(Clontech、CA)をすべてのHAタグ付きEGFRを構築するために使用した。全長ヒトEGFRをフォワードプライマーEGFR−F(ATTCTCGAGCGGGGAGCAGCGATG)およびリバースプライマーEGFR−R(CCTAAGCTTTGCTCCAATAAATTCACTG)を用いて増幅した。DNA断片をXho IおよびHind IIIによって消化し、pRK5ベクターの対応部位にクローニングした。細胞外ドメイン欠失のあるEGFR(Δ細胞外、1〜644aa)をクローニングするためのプライマーは、Δ細胞外−F:ATTCTCGAGATGTCC ATCGCCACTGGGATGおよびΔ細胞外−R:CCTAAGCTTTGCTCCAATAAATTCACTGCであり;細胞内欠失(Δ細胞内、671〜1210aa)用のプライマーは、Δ細胞内−F:TATCTCGAGATGCGACCCTCCGGGACGGCおよびΔ細胞内−R:CCTAAGCTTCC TTCGCATGAAGAGGCCであり;自己リン酸化ドメイン欠失(Δ自己リン酸化、978〜1210aa)用のプライマーは、Δ自己リン酸化−F:ATTCTCGAGATGTCCATCGCCACTGGGATGおよびΔ自己リン酸化−R:CCTAAGCTTGTAGCGCTGGGGGTCTCGGであり;細胞内ドメイン欠失(645〜1210aa)用プライマーは、Δ細胞内a−F:TATCTCGAGATGCGACCCTCCGGGACGGCおよびΔ細胞内−R:CCTAAGCTTCCTTCGCATGAAGAGGCである。EGFRのキナーゼ失活型変異体(KD−EGFR、R817M)、膜貫通ドメイン欠失(ΔTM、645〜670aa)およびチロシンキナーゼドメイン欠失(ΔTK、670〜977aa)プラスミドは、製造業者のプロトコールに従って、QuikChange Lightning部位特異的突然変異誘発キット(Agilent、CA)を使用した部位特異的突然変異誘発法によってpRK5−WT−EGFR−HAから構築された。プライマーは、KD−EGFR−F:GCACCGCGACCTGGCAGCC ATGAACGTACTGGTGAAAACACCおよびKD−EGFR−R:GGTGTTTTCACCAGTACGTTCATGGCTGCCA GGTCGCGGTGC;ΔTM−F:CGAGACCCCCAGCGCTACCGGACTCCCCTCCTGAGCおよびΔTM−R:CGAGACCCCCAGCGCTACCGGACTCCCCTCCTGAGC;ΔTK−F:CGCTGCGGAGGCTGCTGCAGTAC CTTGTCATTCAGGGGGおよびΔTK−R:CCCCCTGAATGCAAGGTACTGCAGCAGCCTCCGCAGCGであった。構築物のすべては、C末端HAタグを有する融合タンパク質を生じさせた。すべてのプラスミドを配列決定によって確認した。
【0046】
一過性トランスフェクションおよび免疫沈降。flag付きSGLT1単独を発現するプラスミドまたは示されるHAタグ付きEGFR構築物をHEK293細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、細胞を1×リン酸緩衝液中で洗浄し、プロテアーゼインヒビターカクテルを補足したRIPA緩衝液(50mMのTris−HCl、pH8.0、150mM塩化ナトリウム、1.0%のIgepal CA−630(NP−40)、0.5%デオキシコール酸ナトリウムおよび0.1%ドデシル硫酸ナトリウム)を用いて6時間、4℃にて振とう機上で溶解した。次に、細胞溶解物を2分間、12000×rpmで遠心分離した。その後、抗flag抗体または抗SGLT1抗体とコンジュゲートしたセファロースプロテインA/Gビーズとともに上清を4℃で一晩インキュベートした。続いて、試料を遠心分離し、RIPA緩衝液で3回洗浄し、その後、レムリ緩衝液(Laemmle buffer)(Biorad、CA)中で煮沸し、ウェスタンブロット分析に供した。EGFR−SGLT1相互作用におけるEGFRのチロシンキナーゼの役割を決定するために、SGLT1および野生型EGFRをHEK293細胞にトランスフェクトした。18時間後、細胞を無血清培地中で6時間、飢餓状態にし、その後、30〜60分間、EGF(10ng/ml)またはEGF+AEE788(5μM)で処理した。対照細胞を等体積のビヒクルのジメチルスルホキシド(DMSO)で処理した。次に、上記のように、細胞溶解物を免疫沈降に供した。
【0047】
ウェスタンブロット分析。ウェスタンブロット(WB)分析に関して、細胞をRIPA緩衝液(H
2O中の150mMのNaCl、50mMのトリス−HCl、pH7.4、0.1%SDS、1%TritonX−100、1mMのEDTA、1mMのPMSF、20μg/mlのアプロチニン、20μg/mlのロイペプチン、20μg/mlのペプスタチン、1%デオキシコール酸ナトリウム、1mMのNaF、1mMのNa
3VO
4)で溶解した。8%SDS−PAGEによって分離されたタンパク質をPVDF膜に転写し、続いて、5%脱脂粉乳でブロッキングし、次に、最適化濃度の一次抗体とともに4℃で一晩インキュベートした。膜を0.1%TBS/T(1×TBS、0.1%Tween−20)を用いて各回5分間、3回洗浄し、その後、二次抗体とともに室温で1時間インキュベーションを行った。シグナルを増強化学発光によって可視化した。
【0048】
免疫蛍光共染色。SGLT1とEGFRの免疫蛍光共染色に関して、前立腺がん組織アレイのスライドを脱パラフィン化および再水和し、その後、抗原を煮沸クエン酸緩衝液中で10分間回復させた。次に、冷却した組織スライドをブロッキング溶液(PBS中の5%ロバ血清)中で1時間室温にてインキュベートし、その後、10%ロバ血清を含有するPBS中でSGLT1(SGLT1−IHC)(1:200希釈)およびC225(1:200)に対するウサギポリクローナル抗体とともに4℃で一晩インキュベートした(Blessing Aら、Sodium/Glucose Co−transporter 1 Expression Increases in Human Diseased Prostate、J. Cancer Sci. Ther.、4巻(9号):306〜312頁(2012年))。PBSで3回洗浄後、組織を、10%ロバ血清を含有するPBSに溶解させた、Alexa Fluor488コンジュゲート化ロバ抗ウサギIgGとAlexa Fluor 594コンジュゲート化ロバ抗マウスIgGの混合物とともに室温で30分間インキュベートした。次に、染色した試料を室温にてPBSで3回(洗浄1回あたり5分間)洗浄した。蛍光画像を共焦点顕微鏡(Olympus)で撮像し、分析した。細胞核を4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)で染色した。
【0049】
細胞増殖アッセイ。細胞増殖は、製造業者によって提供されたプロトコールに従って、96ウェルプレート中で3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)アッセイによって決定された。簡単に言えば、100μLの培地に懸濁させた5000個の細胞を96ウェルプレートの各ウェルに播種した。2日目に、フロリジン(Phlozidin)(50μM)とEGFRインヒビター(イレッサ:20μM;エルロチニブ:20μM)を含有する培地で培地を交換した。薬物とともに24時間または48時間のインキュベーション後、10μLのMTT試薬を各ウェルに添加し、4時間インキュベートした。培地を除去後、細胞内のホルマザン沈殿物を100μLのDMSOに溶解した。吸光度を570nmにてMultiSkanプレートリーダー(Thermo Fisher Scientific、NC)で測定した。各群内の試料の3点を使用した。細胞生存率をトリパンブルー取り込みアッセイによって決定した。生細胞の割合を3点の10×倍率下でランダムに選択されたエリア(各サンプルについてn=3)において計数した。
【0050】
統計分析。ステューデントt検定を使用して、SGLT1インヒビターの存在/非存在下でのEGFRインヒビターで処理された細胞の増殖の差異を評価した。0.05未満であるP値を統計的有意性を有するものとして定義した。