(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施の形態で用いられうる乗り物用シートの一例を示した斜視図である。
【
図2】
図2(a)は、本発明の第1の実施の形態で用いられうる乗り物用シートの別の例を示した概略正面図であり、
図2(b)は、本発明の第1の実施の形態で用いられうる乗り物用シートのさらに別の例を示した概略正面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施の形態で用いられうる、自動車の運転席や助手席に用いられる乗り物用シートの様々なバリエーションを示した図であり、
図3(a)はシートバック部の上端から下端まで上下方向に延びた凹部が形成されている態様を示した正面図と上方平面図であり、
図3(b)はシートバック部の上端近傍から下端まで上下方向に延びた凹部が形成されている態様を示した正面図と上方平面図であり、
図3(c)はシートバック部の上端から下端近傍まで上下方向に延びた凹部が形成されている態様を示した正面図と上方平面図であり、
図3(d)はシートバック部の上端近傍から下端近傍まで上下方向に延びた凹部が形成されていている態様を示した正面図と上方平面図である。
【
図4】
図4(a)はベンチシートのシートバック部の上端から下端まで上下方向に延びた凹部が形成されている態様を示した正面図であり、
図4(b)は
図4(a)の上方平面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第1の実施の形態で用いられうる乗り物用シートの変形例を示した斜視図である。
【
図6】
図6(a)は、自動車の運転席や助手席に用いられる乗り物用シートのシートバック部の上端から下端まで上下方向に延びた開口部が形成されている態様を示した斜視図であり、
図6(b)は
図6(a)の正面図であり、
図6(c)は
図6(a)の上方平面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第2の実施の形態で用いられうる乗り物用シート部材の一例を示した斜視図である。
【
図8】
図8は、本発明の第2の実施の形態で用いられうる、自動車の運転席や助手席に用いられる乗り物用シート部材の様々なバリエーションを示した図であり、
図8(a)は取付シート本体部の上端から下端まで上下方向に延びた開口部が形成されている態様を示した正面図と上方平面図であり、
図8(b)は取付シート本体部の上端近傍から下端まで上下方向に延びた開口部が形成されている態様を示した正面図と上方平面図であり、
図8(c)は取付シート本体部の上端から下端近傍まで上下方向に延びた開口部が形成されている態様を示した正面図と上方平面図であり、
図8(d)は取付シート本体部の上端近傍から下端近傍まで上下方向に延びた開口部が形成されていている態様を示した正面図と上方平面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第1の実施の形態で用いられうる乗り物用シートであって、腰支持部を有する乗り物用シートを示した斜視図である。
【
図10】
図10は、本発明の第1の実施の形態で用いられうる乗り物用シートであって、メッシュ部を有する乗り物用シートを示した斜視図である。
【
図11】
図11は、本発明の第1の実施の形態で用いられうる乗り物用シートの別の例を示した斜視図である。
【
図12】
図12は、本発明の第2の実施の形態で用いられうる乗り物用シート部材の別の例を示した斜視図である。
【
図13】
図13は、本発明の第1の実施の形態で用いられうるシートクッション部のさらに別の例を示した斜視図である。
【
図14】
図14は、本発明の第2の実施の形態で用いられうる乗り物用クッション部材のさらに別の例を示した斜視図である。
【
図15】
図15は、本発明の第1の実施の形態で用いられうる乗り物用シートにおいて、凸部の各々がエアクッションである例を示した上方平面図である。
【
図16】
図16は、本発明の第1の実施の形態で用いられうる乗り物用シートにおいて、シートバック部と凸部との間に間隙が形成された態様を示した上方平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
第1の実施の形態
《構成》
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0028】
本実施の形態による乗り物用シート1は、典型的には
図1に示すような自動車用シートである。本実施の形態では、主に、乗り物用シート1が自動車用シートであることを前提として、以下、説明する。
【0029】
図1に示すように、乗り物用シート1は、乗員の臀部を支持するシートクッション部10と、シートクッション部10の後方側端部近辺から上方に延び、乗員の背部を支持するシートバック部20とを備えている。また、シートクッション部10は、前後方向に延在するガイドレール40を介して車体のフロアパネルに固定され、前後にスライド可能となっている。他方、シートバック部20は、ヒンジ部50を介してシートクッション部10に支持され、前後に傾斜可能となっている。シートバック部20の上部には、乗員の頭部を支持するヘッドレスト55が高さ調整可能に取り付けられている。ヘッドレスト55はこのように高さ調整可能になっている必要は特になく、ヘッドレスト55はシートバック部20の上部に固定されていてもよいし、シートバック部20と一体になっていてもよい。ヘッドレスト55にもカバーが設けられてもよい。なお、シートバック部20は前後に傾斜可能となっていなくてもよい。
【0030】
本実施の形態では、シートバック部20のうち、乗員の背部を支持する予定の箇所における幅方向の略中央位置に、上下方向に延びた凹部51又は開口部52が形成されている(
図1の点線は凹部51を採用した場合であり、この点線がない場合が開口部52となる。)。この点、運転席や助手席等のフロントシートにおいては一般的には各席に1人の乗員が座ることを想定しているので、フロントシートでは、シートバック部20の幅方向の略中央位置に上下方向に延びた凹部51又は開口部52が形成されることなる。他方、ベンチシート等のリアシートにおいては、数人の乗員が座ることを想定しているので(
図4参照)、乗員の背部を支持する予定の箇所(
図4では3箇所であるが、それ以外の個数でも当然よく、例えば2箇所であってもよい。)における幅方向の略中央位置に、上下方向に延びた凹部51又は開口部52が形成されることとなる。なお、本実施の形態において「開口部」とは、シートバック部20を貫通した態様のものを意味しており、
図4に示した態様は「凹部51」である。なお、本実施の形態では、上下方向に「直線で」延びた凹部51又は開口部52が形成されている態様を用いて説明しているが、これに限られることはなく、例えば、凹部51又は開口部52は多少のジグザグを持って上下方向に延びてもよい。また、凹部51に関しては均一の深さになっている必要はなく、例えば、高さ方向の中心部に向かって深さが深くなり、他方、上端及び/又は下端に向かって深さが浅くなってもよい。また、このような深さの変化は連続的であってもよいし、断続的であってもよい。
図1に示された内容を説明する際には、シートバック部20の一部が凹まされて凹部51が形成されたとも言えるし、シートバック部20の一部に凸部151を形成することで凹部51が形成されたとも言える(
図11も参照)。凸部151を形成する態様は、後述する第2の実施の形態において乗り物用シート部材80が乗り物用シート1から取り外しできない態様と同一の態様とも言える。この凸部151の素材は特に限定されず、例えば、弾力性のある部材から形成されてもよいし、凸部151の各々が革から形成されてもよい。また、凸部151の各々がエアクッションであってもよい(
図15も参照)。なお、シートバック部20の幅方向の「略中央位置」とは、(おおよそ左右対称のシートでは)シートバック部20の幅方向の「中央位置」からシートバック部20の幅方向(横方向)における全体の長さの±1/10以内の範囲にある位置のことを意味する。
【0031】
また、シートバック部20と凸部151との間に間隙が形成されてもよい(
図16)。
【0032】
そして、この凹部51又は開口部52は、シートバック部20を高さ方向で三等分したときの中央部を含んで上下方向で延びていてもよく(
図2(a)参照)、さらには、シートバック部20を高さ方向で四等分したときの2つの中央部(第一中央部及び第二中央部)を含んで上下方向で延びていてもよい(
図2(b)参照)。
【0033】
より具体的には、シートバック部20の幅方向の略中央位置には、シートバック部20の上端から下端まで上下方向に延びた凹部51又は開口部52が形成されていてもよい(
図3(a)参照)。また、シートバック部20の幅方向の略中央位置には、シートバック部20の上端近傍から下端まで上下方向に延びた凹部51又は開口部52が形成されていてもよい(
図3(b)参照)。また、シートバック部20の幅方向の略中央位置には、シートバック部20の上端から下端近傍まで上下方向に延びた凹部51又は開口部52が形成されていてもよい(
図3(c)参照)。また、シートバック部20の幅方向の略中央位置には、シートバック部20の上端近傍から下端近傍まで上下方向に延びた凹部51又は開口部52が形成されていてもよい(
図3(d)参照)。ここで上端「近傍」又は下端「近傍」とは、シートバック部20の高さ方向(縦方向)における全体の長さの1/10以下の長さのことを意味し、シートバック部20の上端近傍とは、シートバック部20の上端から、シートバック部20の全体の長さの1/10以下の距離にある領域を意味し、シートバック部20の下端近傍とは、シートバック部20の下端から、シートバック部20の全体の長さの1/10以下の距離にある領域を意味する。ちなみに、
図3(a)−(d)については、開口部52ではなく凹部51を採用した態様を図示したものである。もちろん、
図3(a)−(d)の凹部51を
図6(a)−(c)に示すような開口部52に置き換えることもできる。
【0034】
ところで、開口部52がシートバック部20の下端から上端にわたって設けられている場合には、
図6(a)−(c)に示すように、シートバック部20が乗員の背部を支持する予定の箇所における幅方向の略中央位置で分断されて、第一シートバック部21と第二シートバック部22とが形成されることになる。この場合には、シートバック部20が第一シートバック部21と第二シートバック部22とを有することになる。そして、
図6(a)に示すように、第一シートバック部21と第二シートバック部22とは、連結部材29によって連結されてもよい。
【0035】
なお、このようにシートバック部20が第一シートバック部21と第二シートバック部22とを有している場合には、第一シートバック部21と第二シートバック部22との間の間隔を適宜調整することができるようになっていてもよい。このような態様を採用した場合には、利用者は好みの間隔で第一シートバック部21と第二シートバック部22とを位置づけることができる。
【0036】
図6(a)に示す態様では、第一シートバック部21の上端近辺と第二シートバック部22の上端近辺とが、ベルト、リンク、フレームといった連結部材29によって連結されている。但し、このような態様に限られることはなく、第一シートバック部21の下端近辺と第二シートバック部22の下端近辺とが連結部材29によって連結されてもよいし、第一シートバック部21の高さ方向の中央部近辺と第二シートバック部22の高さ方向の中央部近辺とが連結部材29によって連結されてもよいし、第一シートバック部21の上端近辺と第二シートバック部22の上端近辺とが連結部材29によって連結され、かつ、第一シートバック部21の下端近辺と第二シートバック部22の下端近辺とが連結部材29によって連結されてもよい。また、連結部材29の位置を適宜選択することができ、第一シートバック部21及び第二シートバック部22の上端近辺、中央部近辺及び下端近辺のうちのいずれか1つ以上の位置に連結部材29を設置することができる。なお、この態様も運転席や助手席等のフロントシートだけではなくベンチシート等のリアシートにも適用できる。
【0037】
また、本実施の形態では、
図5に示すように、凹部51又は開口部52内には、シートバック部20よりも柔らかい素材からなる柔軟部材60が配置されてもよい。この柔軟部材60としては、エアクッションやスポンジ等のようなものを挙げることができる。
【0038】
ちなみに、乗り物用シート1の材質としては、従来の乗り物用シートで使用されているものをそのまま使うことができる。一例を挙げると、ウレタンと表皮材を利用して本実施の形態による乗り物用シート1を作ることも可能である。但し、これに限られることはなく、樹脂や木材等の固い材質を用いて乗り物用シート1を作ることも可能である。
【0039】
また、
図9に示すように、本実施の形態によるシートバック部20は、乗員の腰の部分を支持するランバーサポート等からなる腰支持部25を有していてもよい。このような腰支持部を有する場合には、凹部51又は開口部52で背骨へ振動が伝わることを防止しつつ、腰支持部25によって乗員の腰を支持することができ、安定性を高めることができる点で有益である。また、
図10に示すように、本実施の形態によるシートバック部20は、その表面にメッシュ部26を有していてもよい。腰支持部25にも凹部51又は開口部52が設けられてもよい。
【0040】
《効果》
次に、上述した構成からなる本実施の形態によって達成される効果であって、まだ述べていない効果又はとりわけ重要な効果について説明する。
【0041】
まず、自動車が路面から受ける衝撃が、どのようにして乗り物用シートから乗員へ伝わり、それを乗員がどのように感じ取るかということを考察してみる。通常の構造の乗り物用シートであれば、路面からの衝撃はシートクッション部にもシートバック部にも同時に伝わる。乗員が乗り物用シートに腰掛けた場合には、シートクッション部は臀部と接触してそれを支え、シートバック部は背中と接触してそれを支える。路面からの衝撃は、タイヤ、サスペンション、車体及び乗り物用シートの順に伝わり、その乗り物用シートから乗員の受ける衝撃は、シートクッション部から臀部に、また同時にシートバック部から背中に伝わる。
【0042】
一般的には、乗員が乗り物用シートから受ける衝撃を和らげるためには、シートクッション部から臀部へ伝わる衝撃を和らげることが有効と考えられ、シートクッション部に様々な工夫がなされる。しかしながら、実際には、臀部には筋肉や脂肪が多くついているため、臀部は衝撃をそれ程敏感に感じ取る身体部位ではない。これに対して、背中の中央には衝撃を敏感に感じ取る中枢神経の集中した脊髄とそれを取り囲む背骨が走っており、その背骨の周囲の筋肉や脂肪の量は、臀部に比べてはるかに少ない。このために、乗員が臀部と背中にそれぞれ同じ大きさの衝撃を受けた場合、乗員が背中を通して感じ取る衝撃は、臀部を通して感じ取る衝撃よりはるかに大きい。
【0043】
このため、乗員の受ける衝撃を効率的に和らげるためには、シートバック部20から背骨(脊髄)に伝達される衝撃の低減策を講じることが、非常に有効であることが分かる。
【0044】
この点、本実施の形態によれば、
図1乃至
図6に示すように、シートバック部20のうち、乗員の背部を支持する予定の箇所における幅方向の略中央位置に、上下方向に延びた凹部51又は開口部52が形成されている。このため、乗員の背骨が位置するであろう位置に凹部51又は開口部52を位置づけることができ、自動車からの振動が背骨に直接伝わることを防止することができる。なお、背中から突出する背骨の幅は0.5cm〜1cm程度であることから、凹部51及び開口部52の幅は0.5cm〜1cm程あれば十分である。但し、乗員が座る位置が必ずしも一定ではないので、凹部51及び開口部52の幅は1cm〜3cmであってもよいし、3cm以上あってもよい。凹部51及び開口部52の幅が広い場合には、より確実に背中から突出する背骨を凹部51又は開口部52内に位置付けることができる。
【0045】
また、本実施の形態のシートバック部20によれば、上述したように乗員の背部を支持する予定の箇所における幅方向の略中央位置に、上下方向に延びた凹部51又は開口部52が形成されていることから、脊髄が衝撃を受けることを避けなくてはならない人であっても、安心して利用することができる。
【0046】
また、シートバック部20の幅方向の略中央位置に、シートバック部20の上端から下端まで上下方向に延びた凹部51又は開口部52が形成されている場合には(
図3(a)参照)、着座時に乗員の背骨が位置するであろう位置の全体に凹部51又は開口部52を位置づけることができ、自動車からの振動が背骨に伝わることをさらに効率よく防止することができる。また、シートバック部20の幅方向の略中央位置に、シートバック部20の上端近傍から下端まで上下方向に延びた凹部51又は開口部52が形成されている場合には(
図3(b)参照)、自動車からの振動が背骨に伝わることを防止しつつ、ヘッドレスト55を設ける位置に部材を設けることができるので、ヘッドレスト55を安定して取り付けることができる。また、シートバック部20の幅方向の略中央位置に、シートバック部20の上端から下端近傍まで上下方向に延びた凹部51又は開口部52が形成されている場合には(
図3(c)参照)、臀部が接触するであろう位置に部材を設けることができるので、自動車からの振動が背骨に伝わることを防止しつつ、凹部51や開口部52が乗り心地に与える影響を軽減することができる。また、シートバック部20の幅方向の略中央位置に、シートバック部20の上端近傍から下端近傍まで上下方向に延びた凹部51又は開口部52が形成されている場合には(
図3(d)参照)、自動車からの振動が背骨に伝わることを防止しつつ、ヘッドレスト55を安定して取り付け、また、凹部51や開口部52が乗り心地に与える影響を軽減することができる。
【0047】
なお、シートバック部20の幅方向の略中央位置に、シートバック部20の上端近傍から下端近傍まで上下方向に延びた凹部51又は開口部52が形成されている場合であって、
図2(a)に示すように、凹部51又は開口部52が、シートバック部20を高さ方向で三等分したときの中央部を含んで上下方向で延びている態様を採用した場合には、着座時に乗員の背骨が最も後方に飛び出ている箇所に凹部51又は開口部52を位置づけることができ、自動車からの振動が背骨に伝わることを効率よく防止することができる。
【0048】
さらに、
図2(b)に示すように、凹部51又は開口部52が、シートバック部20を高さ方向で四等分したときの2つの中央部(第一中央部及び第二中央部)を含んで上下方向で延びている態様を採用した場合には、さらに広い範囲で、着座時に乗員の背骨が最も後方に飛び出ている箇所に凹部51又は開口部52を位置づけることができ、自動車からの振動が背骨に伝わることをさらに効率よく防止することができる。
【0049】
また、
図5に示すように、本実施の形態において、凹部51内又は開口部52内に、シートバック部20よりも柔らかい素材からなる柔軟部材60が配置されていてもよい。このような態様では、乗員の背骨が位置するであろう位置に柔軟部材60が位置することになるが、このような柔軟部材60を介した自動車からの振動は、何ら加工を施していないシートバック部20を介した自動車からの振動に比べると弱いため、それなりの効果を奏することができる。
【0050】
また、本実施の形態では、シートバック部20自体に凹部51や開口部52を形成することから、固定した位置に凹部51や開口部52を位置づけることができ、より確実に、乗員の背骨の位置に凹部51や開口部52を位置づけることができる。
【0051】
以上のように、本実施の形態によれば、乗り心地と背反する操縦安定性を損なうことなく、あらゆる路面や走行条件下での自動車等の乗り物の乗り心地を簡易に低コストで向上することができる。
【0052】
また、本実施の形態によれば、乗り心地を向上させるために電子デバイスやポンプを使う必要がないので、余分なエネルギー消費が一切ない。
【0053】
なお、本実施の形態による乗り物用シート1は、あらゆる乗り物に対して利用することができ、不整路を走る四輪駆動車、操縦安定性能を高めるために固くセットされたサスペンションを搭載したスポーツカーやスポーティーカー、長距離運転を強いられるトラックやバス、商用車、乗り心地を重視する乗用車、様々なラリーへの参加車等の自動車だけではなく、市電や電車等の鉄道車両、シートバック付きの二輪車やサイドカー、ゴーカート、戦車を始めとする軍用車両全般、耕運機、ブルドーザー等の重機、馬車、ケーブルカー、ロープ−ウェイ、スキーリフト、旅客機や軍用機等の航空機、水面からの衝撃を受けやすいモーターボートやヨット、クルーザー等の船舶、車いす等に、利用することができる。
【0054】
第2の実施の形態
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0055】
第1の実施の形態では、乗り物用シート1に関する態様を用いて説明したが、第2の実施の形態では、乗り物用シート1に取り付けられる乗り物用シート部材(乗り物用シートアタッチメント)80に関する態様を用いて説明する。
【0056】
第2の実施の形態において、その他の構成は、第1の実施の形態と略同一の態様となっている。第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0057】
本実施の形態による乗り物用シート部材80は、
図7及び
図12に示すように、乗り物用シート1のシートバック部20に設置可能になっている。そして、乗り物用シート部材80は、乗員の背部を支持する予定の箇所における幅方向の略中央位置に、上下方向に延びた凹部51又は開口部52が形成された取付シート本体部81と、当該取付シート本体部81をシートバック部20に対して固定するためのベルト等の固定部材88と、を備えている。なお、このような固定部材88が設けられていなくてもよい。但し、固定部材88が設けられない場合には、取付シート本体部81の位置が固定されないことから、乗員の背骨への振動の伝達を防止する観点からはあまり好ましくはない。他方、固定部材88を用いない態様では、あらゆる場所で手軽に用いることができる点では有益である。
【0058】
設置された乗り物用シート部材80は乗り物用シート1から取り外しができないようになっていてもよい。このように乗り物用シート部材80が乗り物用シート1から取り外しできないようにすることで、取付シート本体部81の位置を確実に一定の位置に位置づけることができることから、乗員の背骨の位置する位置に凹部51又は開口部52をより確実に位置づけることができる点で有益である。
【0059】
図1、
図6(a)等に示されるシートバック部20の形状と
図7に示される乗り物用シート部材80の形状とを比較すると明白であるが、シートバック部20の形状と乗り物用シート部材80の形状とは必ずしも合致するようには形成されていない。このため、
図7及び
図12に示すように、シートバック部20に乗り物用シート部材80を取り付けた場合には、シートバック部20と乗り物用シート部材80との間に間隙が形成されることになる。このような間隙が形成された場合には、乗り物用シート部材80と当該間隙によってクッション機能を果たすことができる。このため、自動車からの振動をより効率よく吸収することができる。また、シートバック部20と乗り物用シート部材80との間にあえて確実に間隙を形成できるように、乗り物用シート部材80を比較的固い(例えば革部材)から構成してもよい。なお、このように比較的固い部材を採用した場合であっても、背骨に対応する箇所には凹部51又は開口部52が形成されていることから、自動車からの振動が背骨に伝わることを防止する機能は維持できる。シートバック部20を構成する素材と乗り物用シート部材80を構成する素材が同程度の固さであってもよいし、シートバック部20を構成する素材と比較して乗り物用シート部材80を構成する素材が固くなっていてもよい。
【0060】
運転席や助手席等のフロントシートにおいては一般的には各席に1人の乗員が座ることを想定しているので、フロントシートに取り付けられる乗り物用シート部材80では、取付シート本体部81の幅方向の略中央位置に上下方向に延びた凹部51又は開口部52が形成されることなる。他方、ベンチシート等のリアシートに取り付けられる乗り物用シート部材80においては、数人の乗員が座ることを想定しているので(
図4参照)、乗員の背部を支持する予定の箇所(
図4では3箇所)における幅方向の略中央位置に、上下方向に延びた凹部51又は開口部52が形成されることとなる。
【0061】
そして、この凹部51又は開口部52は、取付シート本体部81を高さ方向で三等分したときの中央部を含んで上下方向で延びていてもよく(
図2(a)参照)、さらには、取付シート本体部81を高さ方向で四等分したときの2つの中央部(第一中央部及び第二中央部)を含んで上下方向で延びていてもよい(
図2(b)参照)。なお、本実施の形態の取付シート本体部81の高さはシートバック部20と略同一の高さとなっていてもよい。また、本実施の形態の取付シート本体部81の幅方向の中心は、シートバック部20に当該取付シート本体部81を設置した時に、シートバック部20の略中心に位置づけられるようになっていてもよい。
【0062】
取付シート本体部81の幅方向の略中央位置には、取付シート本体部81の上端から下端まで上下方向に延びた凹部51又は開口部52が形成されていてもよい(
図8(a)参照)。また、取付シート本体部81の幅方向の略中央位置には、取付シート本体部81の上端近傍から下端まで上下方向に延びた凹部51又は開口部52が形成されていてもよい(
図8(b)参照)。また、取付シート本体部81の幅方向の略中央位置には、取付シート本体部81の上端から下端近傍まで上下方向に延びた凹部51又は開口部52が形成されていてもよい(
図8(c)参照)。また、取付シート本体部81の幅方向の略中央位置には、取付シート本体部81の上端近傍から下端近傍まで上下方向に延びた凹部51又は開口部52が形成されていてもよい(
図8(d)参照)。ちなみに、
図8(a)−(d)については、凹部51ではなく開口部52を採用した態様を図示したものである。もちろん、
図8(a)−(d)の開口部52を凹部51に置き換えることもできる。
【0063】
なお、開口部52が取付シート本体部81の下端から上端にわたって設けられている場合には、取付シート本体部81が乗員の背部を支持する予定の箇所における幅方向の略中央位置で分断されて、第一取付シート本体部86と第二取付シート本体部87とが形成されることになる。この場合には、取付シート本体部81が第一取付シート本体部86と第二取付シート本体部87とを有することになる。この際、第一取付シート本体部86と第二取付シート本体部87とが
図7に示すような連結部材89によって連結されてもよい。当然、このような連結部材89は必ずしも設けられていなくてもよい。
図12に示す態様では、第一取付シート本体部86と第二取付シート本体部87とが、シートバック部20の背面で連結されて一体となっており、当該連結された箇所が、取付シート本体部81をシートバック部20に対して固定するための「固定部材」となる。これは
図7において紐状の参照番号「88」の部材が「固定部材」となったのと同様である。また、取付シート本体部81が乗り物用シート部材80に対して直接的に又は間接的に取り付けられており、取付シート本体部81が乗り物用シート部材80から取り外しできないようになっていてもよい。このように取付シート本体部81が取り外しできない場合には、取付シート本体部81を乗り物用シート部材80に対して固定している箇所が「固定部材」に含まれることになる。
【0064】
図7に示す態様では、第一取付シート本体部86の上端近辺と第二取付シート本体部87の上端近辺とがベルト等からなる連結部材89によって連結され、かつ、第一取付シート本体部81の下端近辺と第二取付シート本体部87の下端近辺とがベルト等からなる連結部材89によって連結されている。但し、このような態様に限られることはなく、第一取付シート本体部86の上端近辺と第二取付シート本体部87の上端近辺とが、リンクやフレームといった連結部材89によって連結されてもよい。また、連結部材89の位置は適宜選択することができ、第一取付シート本体部86及び第二取付シート本体部87の上端近辺、中央部近辺及び下端近辺のうちのいずれか1つ以上の位置に連結部材89を設置することができる。なお、この態様も運転席や助手席等のフロントシートだけではなくベンチシート等のリアシートにも適用できる。
【0065】
上述したように本実施の形態による連結部材89が長さを調整できる調整ベルトからなる場合には、第一取付シート本体部86と第二取付シート本体部87との間の間隔を適宜調整することができる。このため、利用者は好みの間隔で第一取付シート本体部86と第二取付シート本体部87とを位置づけることができる。
【0066】
また、本実施の形態では、凹部51又は開口部52内には、取付シート本体部81よりも柔らかい素材からなる柔軟部材60(
図5参照)が配置されてもよい。この柔軟部材60としては、エアクッションやスポンジ等のようなものを挙げることができる。
【0067】
第一取付シート本体部86及び第二取付シート本体部87はエアクッションであってもよい。第一取付シート本体部86及び第二取付シート本体部87の素材は特に限定されず、例えば、弾力性のある部材から形成されてもよいし、第一取付シート本体部86及び第二取付シート本体部87の各々が革から形成されてもよい。
【0068】
本実施の形態でも、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。第1の実施の形態で詳細に説明したことから、本実施の形態における効果については適宜省略しながら説明する。
【0069】
本実施の形態によれば、取付シート本体部81のうち、乗員の背部を支持する予定の箇所における幅方向の略中央位置に、上下方向に延びた凹部51又は開口部52が形成されている。このため、シートバック部20に本実施の形態の乗り物用シート部材80を設置した時において、乗員の背骨が位置するであろう位置に凹部51又は開口部52を位置づけることができ、自動車からの振動が背骨に伝わることを防止することができる。
【0070】
また、取付シート本体部81の幅方向の略中央位置に、取付シート本体部81の上端から下端まで上下方向に延びた凹部51又は開口部52が形成されている場合には(
図8(a)参照)、着座時に乗員の背骨が位置するであろう位置の全体に凹部51又は開口部52を位置づけることができ、自動車からの振動が背骨に伝わることをさらに効率よく防止することができる。また、取付シート本体部81の幅方向の略中央位置に、取付シート本体部81の上端近傍から下端まで上下方向に延びた凹部51又は開口部52が形成されている場合には(
図8(b)参照)、頸のあたりの安定性を維持しつつ、自動車からの振動が背骨に伝わることを防止することができる。また、取付シート本体部81の幅方向の略中央位置に、取付シート本体部81の上端から下端近傍まで上下方向に延びた凹部51又は開口部52が形成されている場合には(
図8(c)参照)、臀部が接触するであろう位置に部材を設けることができるので、自動車からの振動が背骨に伝わることを防止しつつ、凹部51や開口部52が乗り心地に与える影響を軽減することができる。また、取付シート本体部81の幅方向の略中央位置に、取付シート本体部81の上端近傍から下端近傍まで上下方向に延びた凹部51又は開口部52が形成されている場合には(
図8(d)参照)、自動車からの振動が背骨に伝わることを防止しつつ、頸のあたりの安定性を維持し、また、凹部51や開口部52が乗り心地に与える影響を軽減することができる。
【0071】
なお、取付シート本体部81の幅方向の略中央位置に、取付シート本体部81の上端近傍から下端近傍まで上下方向に延びた凹部51又は開口部52が形成されている場合であって、凹部51又は開口部52が、取付シート本体部81を高さ方向で三等分したときの中央部を含んで上下方向で延びている態様を採用した場合には、着座時に乗員の背骨が最も後方に飛び出ている箇所に凹部51又は開口部52を位置づけることができ、自動車からの振動が背骨に伝わることを効率よく防止することができる。
【0072】
さらに、凹部51又は開口部52が、取付シート本体部81を高さ方向で四等分したときの2つの中央部(第一中央部及び第二中央部)を含んで上下方向で延びている態様を採用した場合には、さらに広い範囲で、着座時に乗員の背骨が最も後方に飛び出ている箇所に凹部51又は開口部52を位置づけることができ、自動車からの振動が背骨に伝わることをさらに効率よく防止することができる。
【0073】
本実施の形態において、凹部51内又は開口部52内に、取付シート本体部81よりも柔らかい素材からなる柔軟部材60が配置されていてもよい。このような態様では、乗員の背骨が位置するであろう位置に柔軟部材60が位置することになるが、このような柔軟部材60を介した自動車からの振動は、何ら加工を施していないシートバック部20を介した自動車からの振動に比べると弱いため、それなりの効果を奏することができる。
【0074】
また、本実施の形態では、シートバック部20に着脱自在となった乗り物用シート部材80に凹部51や開口部52を形成することから、一つの乗り物用シート部材80で複数の乗り物に対して利用することができる。このため、自動車等の乗り物の乗り心地を(相対的に)さらに安価なコストで改善することができる。
【0075】
また、本実施の形態による乗り物用シート部材80は、乗員の腰の部分を支持するランバーサポート等からなる腰支持部を有していてもよい。このような腰支持部を有する場合には、凹部51又は開口部52で背骨へ振動が伝わることを防止しつつ、腰支持部によって乗員の腰を支持することができ、安定性を高めることができる点で有益である。また、本実施の形態による乗り物用シート部材80は、その表面にメッシュ部を有していてもよい。腰支持部にも凹部51又は開口部52が設けられてもよい。
【0076】
乗り物用シート部材80は、その長手方向を2〜3箇所又はそれ以上の箇所で折り曲げることができるようになっていてもよい。また、短手方向でも折り曲げることができるようになっていてもよい。これらの場合には、予め折り畳める位置が決まっていてもよいし、そうではなく任意の場所で折り畳めるようになっていてもよい。なお、取付シート本体部81がエアクッションである場合には、空気を抜くことで小型化することができるので、予め折り畳める位置が決まっていなくてもよい。
【0077】
なお、本実施の形態による乗り物用シート部材80も、不整路を走る四輪駆動車、操縦安定性能を高めるために固くセットされたサスペンションを搭載したスポーツカーやスポーティーカー、長距離運転を強いられるトラックやバス、商用車、乗り心地を重視する乗用車、様々なラリーへの参加車等の自動車だけではなく、市電や電車等の鉄道車両、シートバック付きの二輪車やサイドカー、ゴーカート、戦車を始めとする軍用車両全般、耕運機、ブルドーザー等の重機、馬車、ケーブルカー、ロープ−ウェイ、スキーリフト、旅客機や軍用機等の航空機、水面からの衝撃を受けやすいモーターボートやヨット、クルーザー等の船舶、車いす等に対して、利用することができる。
【0078】
最後になったが、上述した各実施の形態の記載及び図面の開示は、特許請求の範囲に記載された発明を説明するための一例に過ぎず、上述した実施の形態の記載又は図面の開示によって特許請求の範囲に記載された発明が限定されることはない。
【0079】
一例としては、シートクッション部10に(凸部161が形成されて)凹部162が形成されてもよいし(
図13参照)、開口部が形成されてもよい。また、シートクッション部10に取り付け自在となった乗り物用クッション部材170が設けられてもよい(
図14参照)。
図14に示す態様では、乗り物用クッション部材170の間に開口部171が形成されている。
【0080】
なお、路面の状態等により乗り心地を向上させる必要のある時には、凹部51又は開口部52を利用するが、路面の状態が良好で、別段乗り心地を良くする必要のない時には、凹部51又は開口部52は塞いでしまってもよい。その塞ぎ方は、凹部51又は開口部52の形状に合った挿入部材を凹部51又は開口部52に挿入してもよいし、凹部51又は開口部52を塞ぐ構成部品(挿入部材)を機械的にあるいは電気的に移動させて塞いでもよい。