特許第6309148号(P6309148)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6309148
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】防砂シート敷設構造
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/12 20060101AFI20180402BHJP
【FI】
   E02B3/12
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-183479(P2017-183479)
(22)【出願日】2017年9月25日
【審査請求日】2017年9月27日
(31)【優先権主張番号】特願2017-141633(P2017-141633)
(32)【優先日】2017年7月21日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596006787
【氏名又は名称】有限会社キシムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100098246
【弁理士】
【氏名又は名称】砂場 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】岸村 直登
【審査官】 田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−127036(JP,A)
【文献】 特開平09−165732(JP,A)
【文献】 特開2001−064940(JP,A)
【文献】 特開平08−027759(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/174029(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第01524371(EP,A2)
【文献】 特公昭59−031605(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/00−3/28
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
護岸ケーソンの捨て石マウンド上に敷設される防砂シート敷設構造であって、
前記護岸ケーソンに上端部が固定され、前記捨て石マウンドの天端から法面にかけて捨て石面を覆うように敷設される素線が所定の目合いで縦横形状をなす金網からなる網状体ベースと、
前記目合いにほぼ等しい間隔をあけて前記素線の縦横の交点位置に対応するシート表面位置に、先端部に所定荷重で外れる連結部を有する複数個の帯状布体が縫着された防砂シートと、
を備え、
前記網状体ベースと前記防砂シートとは、前記素線の交点位置で、前記防砂シートの帯状布体の連結部を面接着させて前記素線を保持して、前記防砂シートが前記網状体ベースに支持されるように面接触されてなり
前記網状体ベースの前記素線の引張強度が、前記防砂シートと連結された状態の前記網状体ベースの目合い寸法に対応するシート幅での前記防砂シートの引張強さより小さく設定され、
前記防砂シート敷設構造に局部的に作用した埋立荷重により過大な変形が生じて前記素線が前記防砂シートより先に前記引張強度あるいは伸び限界に達した箇所において、該箇所を囲んで位置する前記帯状布体の取付位置を境界として、該境界の内側領域では前記防砂シートのみが前記埋立荷重を負担するように伸長、変形し、前記境界の外側領域では前記網状体ベースと前記防砂シートとが前記埋立荷重を負担することで前記防砂シートの水底方向への引き込みが防止されることを特徴とする防砂シート敷設構造。
【請求項2】
護岸ケーソンの捨て石マウンド上に敷設される防砂シート敷設構造であって、
前記護岸ケーソンに上端部が固定され、前記捨て石マウンドの天端から法面にかけて捨て石面を覆うように敷設される素線が所定の目合いで縦横形状をなす金網からなる網状体ベースと、
前記目合いにほぼ等しい間隔をあけて前記素線の縦横の交点位置に対応するシート表面位置に、先端部に所定荷重で外れる連結部を有する複数個の帯状布体が縫着された防砂シートと、
を備え、
前記網状体ベースと前記防砂シートとは、前記素線の交点位置で、前記防砂シートの帯状布体の連結部を面接着させて前記素線を保持して、前記網状体ベースの下面に前記防砂シートが吊られるように面接触されてなり
前記防砂シートの各帯状布体の連結部の外れる限界強度が、前記網状体ベースの前記素線の引張強度及び前記網状体ベースの目合い寸法に対応するシート幅での前記防砂シートの引張強さより小さく設定され、
前記防砂シート敷設構造に局部的に作用した埋立荷重により過大な変形が生じて前記帯状布体の連結部が外れて前記網状体ベースと前記防砂シートとが分離した箇所において、該箇所を囲んで位置する、連結部が外れていない前記帯状布体の取付位置を境界として、該境界の内側領域では前記防砂シートのみが前記埋立荷重を負担するように伸長、変形し、前記境界の外側領域では前記網状体ベースと前記防砂シートとが前記埋立荷重を負担することで前記防砂シートの水底方向への引き込みが防止されることを特徴とする防砂シート敷設構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防砂シート敷設構造に係り、港湾護岸ケーソンが載置される捨て石マウンドの法面に敷設される防砂シートに作用する海底への引き込み力の分散を図るようにした防砂シート敷設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、港湾護岸ケーソンの捨て石マウンド(捨て石基礎)の法面には、捨て石マウンド部分からの砂の吸い出しや洗掘防止のために、法面全体を覆う防砂シートが敷設されている。防砂シートとしては、たとえばポリエステル長繊維不織布シートが用いられている。ポリエステル長繊維不織布は、土砂の流出を防ぎ、水だけを通過させるフィルター効果を有し、また比較的柔軟な素材であるため、積み上げられた捨て石の表面形状にほぼ追従して敷設できる。
【0003】
捨て石マウンドの法面への防砂シートの敷設は作業船等を利用した海洋工事となることが多いため、工事を安全かつ合理的に行えるようにするための敷設方法も提案されている(特許文献1)。特許文献1に開示された防砂シートは、防砂シートの表面に複数本のチェーンを、面ファスナを利用して取り付けた構成からなり、チェーン等のカウンターウエイトが表面に取り付けられた防砂シートは、カウンターウエイト重量によって水中を容易に沈降するため、対象の捨て石上に敷設することができる。
【0004】
また捨て石マウンド上への防砂シートの敷設効率を高め、敷設後の防砂シートが破断しないようにした防砂シートの提案もなされている(特許文献2)。特許文献2に開示された防砂シートは、不陸のある捨て石マウンド上に敷設された防砂シート上に積層された土砂の荷重によって破断するのを防止するために、高伸長度の防砂シートを使用し、さらに防砂シートの表面に格子状のウエイトチェーンが取り付けられている。このウエイトチェーンによって防砂シートの重量を増加させることで、防砂シートの捨て石マウンド表面への張り付きを向上させている。
【0005】
特許文献2に開示された防砂シートは、高伸長シートを使用し、さらにウエイトチェーンによってシート重量を増加させることで、防砂シートと不陸のある捨て石マウンドとの密着の向上を図っているが、これに対して金網部材とシート材とを一体化した複合材料としての防砂シートも提案されている(特許文献3)。
【0006】
特許文献3に開示された防砂シートは、シート部材16と金網部材15とを重ねて結束体17により一体化した構造からなり、土砂から受ける押圧力に対しては、金網部材15がその強度を負担し、シート部材16は透水部材としてのみ機能する。このとき金網部材15に多少の押圧力がかかって変形しても、シート部材は変形に追従して破断しないとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−38446号公報
【特許文献2】特開平9−165732号公報
【特許文献3】特開2001−64940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図8は、従来の防砂シート51を捨て石マウンド53の法面に敷設した状態を模式的に示した説明図である。防砂シート51は一般に、同図に示したように、上端51aがケーソン52の側壁に固定され、捨て石マウンド53の天端部から法面に沿って敷設される。このため、防砂シート51の自重により防砂シート51には、矢印で示したような、法面下方へ向く引張力が生じる。防砂シート51には通常、この引張力に対して十分に抵抗可能な引張強度を有する材料が使用されている。
【0009】
ところで、従来の防砂シート51の設置のための設計規準では、防砂シート51の強度、厚さは、図9に模式的に示したように、不陸が生じている捨て石(裏込め石)上に防砂シートが敷設された状態を想定した設計が行われている。すなわち、同図に示したように、捨て石56が凹状になった箇所では、防砂シート51の伸度を考慮し、弛んだ状態の防砂シート51を支持する2個の捨て石56間に吊持された状態、いわゆるハンモック状態を想定し、その支点間距離Lにおいてシート材料が破断しないように設計されている。すなわち設計においては、この設計条件に適合するような防砂シートの種類(強度・伸度)が選択されている。なお、防砂シート51が2個の捨て石56の間でハンモック状態になることを想定して設計されているが、実際の施工時には防砂シート51の下方と捨て石との間には堆積土砂が回り込み、最終的に吊られた状態ではなくなるため、安全側の設計であることが確認されている。
【0010】
ところで、実際の埋立工事では、護岸のケーソン52の背面側を一気に埋め立てることは不可能であるため、海底から順に埋立砂54が入る。そのため、特許文献2に示したような柔軟性の高い、高伸度の防砂シート51は、図9(b)、図10に示したように、不陸のある捨て石マウンドの表面に沿って敷設されるため、埋立砂54による荷重等が防砂シート51全体均一に掛からず、先に埋立砂54で覆われたシート部分へ偏ってしまい、埋設された範囲55の防砂シート51が凹凸のある捨て石56の表面に密着するように押しつけられる。この結果、捨て石マウンド53の法面を覆う防砂シート51全体にわたり下向きの大きな引張力が生じる。
【0011】
図10に示したように、法面に沿った大きな下向きの引張力が防砂シート51に作用した場合、防砂シート51を支持する支点が下方にずれ落ちると、先の設計前提がなり立たなくなるとともに、法面上部にある防砂シート部分は矢印で示したように下方へ大きく引き下ろされる。このため、天端位置で伸度が最大となった防砂シート51が、たとえば図10で示したような天端位置(破断箇所B)で破断した事例もある。
【0012】
このような状況に対して、特許文献1に開示された発明は、施工時の防砂シートの敷設作業の効率化を目的としているため、敷設後の防砂シートの状況を想定していない。
【0013】
特許文献2に開示された防砂シートは、ウエイトチェーンの重量によって捨て石マウンドの表面でのシート部材の安定性は保持されるが、防砂シートの敷設作業が大規模になり、工事コストが大幅に増加する。
【0014】
特許文献3に開示した防砂シートは、ラス網等の金網部材と不織布シート部材とを面合わせた一体的な複合材料として機能するが、その目的として、消波ブロックが設置される砂地盤の海底等に敷設され、消波ブロックの設置時にシートに加わる衝撃荷重等に対するシートの強度を高めるために用いられている。また海底の捨て石上に敷設されるような場合には金網に伸度、柔軟性があれば、捨て石間に生じた不陸形状に追従でき、金網と不織布等とが一体化されているため、引張抵抗力は高められるが、上述したような引張力が累加していくような状況では、金網と不織布の複合材料としての強度で金網の線材と不織布とが一体的に破断してしまうという問題がある。
【0015】
そこで、本発明の目的は上述した従来の技術が有する問題点を解消し、防砂シートに作用する短期的な衝撃荷重に耐え、また埋立工事等において埋設砂による作用荷重によって生じる防砂シートの下方への引き込みを、防砂シートと網状体ベースとで一体的に抵抗することにより、防砂シートの伸び方向の抵抗性を高め、さらに不陸等が生じた際に局部的な伸びで吸収して防砂シート全体の下方へのずり落ち、引き込みに対しての影響を遮断できるようにした防砂シート敷設構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明は、護岸ケーソンの捨て石マウンド上に敷設される防砂シート敷設構造であって、前記護岸ケーソンに上端部が固定され、前記捨て石マウンドの天端から法面にかけて捨て石面を覆うように敷設される素線が所定の目合いで縦横形状をなす金網からなる網状体ベースと、前記目合いにほぼ等しい間隔をあけて前記素線の縦横の交点位置に対応するシート表面位置に、先端部に所定荷重で外れる連結部を有する複数個の帯状布体が縫着された防砂シートとを備え、前記網状体ベースと前記防砂シートとは、前記素線の交点位置で、前記防砂シートの帯状布体の連結部を面接着させて前記素線を保持して、前記防砂シートが前記網状体ベースに支持されるように面接触されてなり、前記網状体ベースの前記素線の引張強度が、前記防砂シートと連結された状態の前記網状体ベースの目合い寸法に対応するシート幅での前記防砂シートの引張強さより小さく設定され、前記防砂シート敷設構造に局部的に作用した埋立荷重により過大な変形が生じて前記素線が前記防砂シートより先に前記引張強度あるいは伸び限界に達した箇所において、該箇所を囲んで位置する前記帯状布体の取付位置を境界として、該境界の内側領域では前記防砂シートのみが前記埋立荷重を負担するように伸長、変形し、前記境界の外側領域では前記網状体ベースと前記防砂シートとが前記埋立荷重を負担することで前記防砂シートの水底方向への引き込みが防止されることを特徴とする。
【0017】
他の発明として、護岸ケーソンの捨て石マウンド上に敷設される防砂シート敷設構造であって、前記護岸ケーソンに上端部が固定され、前記捨て石マウンドの天端から法面にかけて捨て石面を覆うように敷設される素線が所定の目合いで縦横形状をなす金網からなる網状体ベースと、前記目合いにほぼ等しい間隔をあけて前記素線の縦横の交点位置に対応するシート表面位置に、先端部に所定荷重で外れる連結部を有する複数個の帯状布体が縫着された防砂シートとを備え、前記網状体ベースと前記防砂シートとは、前記素線の交点位置で、前記防砂シートの帯状布体の連結部を面接着させて前記素線を保持して、前記網状体ベースの下面に前記防砂シートが吊られるように面接触されてなり、前記防砂シートの各帯状布体の連結部の外れる限界強度が、前記網状体ベースの前記素線の引張強度及び前記網状体ベースの目合い寸法に対応するシート幅での前記防砂シートの引張強さより小さく設定され、前記防砂シート敷設構造に局部的に作用した埋立荷重により過大な変形が生じて前記帯状布体の連結部が外れて前記網状体ベースと前記防砂シートとが分離した箇所において、該箇所を囲んで位置する、連結部が外れていない前記帯状布体の取付位置を境界として、該境界の内側領域では前記防砂シートのみが前記埋立荷重を負担するように伸長、変形し、前記境界の外側領域では前記網状体ベースと前記防砂シートとが前記埋立荷重を負担することで前記防砂シートの水底方向への引き込みが防止されることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の防砂シート敷設構造の一実施形態の構成を模式的に示した部分断面斜視図。
図2図1に示した防砂シート敷設構造を側方から示した断面図。
図3図1に示した防砂シート敷設構造のメッシュ敷設状態を示した部分断面斜視図。
図4】防砂シートに配置されたメッシュ連結構造の一例を示した部分拡大図。
図5】防砂シート敷設構造の他の実施形態の構成を模式的に示した部分断面斜視図。
図6図1に示した防砂シート敷設構造のシートの伸長挙動を示した部分断面斜視図。
図7】網状体ベースと防砂シートの伸長挙動を示した部分断面図((a):防砂シート上面、(b):防砂シート下面)。
図8】捨て石マウンドの法面における従来の防砂シートの敷設状態の一例を示した断面図。
図9】捨て石マウンドの法面の凹所における従来の防砂シートの伸長挙動の一例を示した拡大断面図。
図10図8に示した防砂シートの埋立て時における下方への引き込み状態を模式的に示した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の防砂シート敷設構造の構成について、添付図面を参照して説明する。図1,2は本発明の防砂シートを、護岸ケーソン構造1のケーソン2の埋立側の捨て石マウンド3に敷設した状態を示している。図1は、ケーソン2と捨て石マウンド3と埋立砂4を部分的に切欠いて示した断面斜視図である。図2は、同じく断面図である。両図に示したように、本発明の防砂シート敷設構造10は、捨て石マウンド3上に敷設された網状体ベース15と、網状体ベース15の各交点位置で網状体ベース15に全体が面接触するように連結された防砂シート11とから構成されている。
【0023】
網状体ベース15は、図1図2に示したように、その上端がケーソン2の側面にフラットバー等の固定手段5を介して固定され、さらに捨て石マウンド3の頂部3aから肩部、法面3bを覆うように敷設されている。網状体ベース15は、図2に示したように、捨て石マウンド3に積み上げられた捨て石6の凹凸ある表面の複数の凸状部分6aに支持されるように接触して敷設される。埋立砂4が積層された範囲における捨て石6の凸状部分6a間に作用する埋立砂4の荷重は、後述する防砂シート11と網状体ベース15によって一体的に変形挙動する両者によって分担、支持される。このため、従来技術において生じていた防砂シート11の下方への引き込み挙動が抑止される。
【0024】
本発明の防砂シート敷設構造10は、図3に示したように、あらかじめ捨て石マウンド3上に網状体ベース15を敷設し、その後防砂シート11(図示せず)を網状体ベース15に取り付けたり、あるいはあらかじめ網状体ベース15の上面に防砂シート11を一体的に取着しておいたシートを敷設することにより、図1図2に示したように、捨て石マウンド3の法面に埋立砂4が積層され、防砂シート11に埋立砂4の重量が作用しても、当初の作用荷重は防砂シート11と一体化された網状体ベース15とに分散して負担され、防砂シート11のみに過度の引張力が作用するのを確実に防止できる。
【0025】
本実施形態では、網状体ベース15の網状体として溶接金網が用いられている。溶接金網は縦方向の素線、横方向の素線がほぼ等間隔に配置された正方網目からなり、目合いは200〜300mm(対応線径5mm)となっている。金網の素線としては軟鋼線材(SWM−P材)が用いられている。この軟鋼線材は、機械的性質として伸び性が良好な材料であるため、防砂シート11と面接触して一体化して用いられた際に、防砂シート11の過度の伸びを抑止しながら、防砂シート11の引張伸び変形にある程度追従して防砂シート11と一体となって変形する。このときの線材(素線)の機械的性質は一例として、降伏点または0.2%耐力が450N/mm2で、引張強さ490N/mm2で、伸びが12%である。また、網状体が十分な耐食性を有するように、亜鉛メッキ鉄線が使用されている。網状体としては、溶接金網以外にラス網、平織金網、撚り線ワイヤーを所定の目合いで編み込んで製作されたネット等、所定の目合いを確保して防砂シート11と面接触して一体的な伸び挙動を示す網状体であれば、各種のものを使用できる。
【0026】
防砂シート11としては、公知のポリエステル長繊維不織布が使用されている。本実施の形態で使用されている防砂シート11のシート厚は一例として、5.0mm、伸び率60%、引張強さ約3,000N/5cm(JIS L1908 ジオテキスタイル試験方法(引張強さ試験による)試験片:幅5cm、厚さ0.5cm当たりの引張抵抗力(荷重)の最大値)である。シート厚は、求められているう引張耐力とともに設計仕様に合致したものを選択することができる。また、防砂シート素材は、ポリエステル以外の耐候性を有する各種の合成繊維、または所定の透水性を有する織布としてもよい。
【0027】
防砂シート11には網状体ベース15の目合いにほぼ等しい間隔で、両者を一体的に連結する連結手段としての連結テープ12が取り付けられている。連結テープ12は、部分的な模式図を図4に示したように、防砂シート11の表面に縫い付けられた、帯状布体としての細幅の布製テープで、その先端には面接着部材として機能し、所定荷重で剥がれる面テープ13(たとえば、:商品名ベルクロ(登録商標))が取り付けられた接着部すなわち連結部が構成されていて、同図に示したように、網状体ベース15の縦方向の素線と横方向の素線との交点位置14に防砂シート11を保持させるように、取り付けることができる。図1では、網状体ベース15のすべての交点位置14に連結テープ12が取り付けられたように示されているが、連結テープ12の取り付け箇所は、防砂シート11の強度を考慮して交点位置14以外の位置に設けたり、限られた交点位置のみ等に減らしたり、適宜設定することができる。なお、連結テープ12は面テープ13でなく、単に縛る等の結束によって連結してもよい。
【0028】
網状体として用いられる溶接金網の目合いと線径とは防砂シート11に作用する引張力の一部を負担して分散させるように決定される。その構成及び作用について、以下具体的な防砂シートの仕様を例に説明する。たとえば網状体の溶接金網として、目合い200mm、線径5mmの溶接金網が用いられ、防砂シートとしてシート厚5.0mmのポリエステル長繊維不織布が用いられたとき、溶接金網の線材の破断強さは、9,600N(=2.52×π×490)である。そのときの1本当たりの線材(ピッチ200mm)に対応する防砂シートの引張強さは12,000N(=3,000×20/5)である。よって、本発明の防砂シート敷設構造では、埋立が進み、埋立砂4の高さが増すと、防砂シートよりも伸度の小さい網状体としての溶接金網は防砂シートより先に破断するか最大伸度まで伸長するため、引張抵抗を負担しなくなる。その結果、破断した部分等では防砂シート11がハンモック状となり、限られた範囲の防砂シート11のみが部分的に伸長して埋立砂4の荷重を負担する状態となる。埋立て後は、その年月経過により捨て石6とハンモック状の防砂シート11との隙間は流動土砂等で満たされ防砂シート11は完全に埋立材と周辺土砂とで埋設され、安定状態になる。
【0029】
図5は、他の実施形態として防砂シート11を網状体ベース15の下面に取り付けて防砂シート11と網状体ベース15とを一体化させた変形例を示している。同図に示した場合、防砂シート11に荷重が作用して網状体ベース15と分離しないように、両者の連結を堅固にすることが必要となってくるが、各連結テープ12箇所での連結性能が十分であり、網状体ベース15のたわみ変形性能が大きいため、この場合にも防砂シート11と網状体ベース15の一体性は保持される。
【0030】
ここで、本発明の防砂シート敷設構造10における網状体ベース15と防砂シート11の伸長挙動について、図6図7各図を参照して説明する。図6に示した防砂シート敷設構造において、防砂シート敷設構造が平らに敷設された状態から、その一部の下面のヘドロ等が堆積していた捨て石6の窪んだ不陸部分が埋立砂の荷重で陥没し、網状体ベース15の一部が所定長さ以上に伸長すると、図7(a)に陥没箇所D(破断箇所B)を拡大して示したように、網状体ベース15の一部の線材が破断してしまう。同図に示したように、網状体ベース15の一部の線材が破断すると、陥没箇所D(破断箇所B)を囲む周囲の連結テープ12が取り付けられた線材の交点位置14より内側の網状体ベース15の線材が荷重を負担しなくなるため、防砂シート11のみが伸長するが、この防砂シート11の引き込みは、陥没箇所を囲む近傍の複数の連結テープ12が取り付けられた線材の交点位置14の箇所で止まり、連結テープ12の交点位置aの周囲の防砂シート11への引き込みの影響はほとんどなくなる。このように、当初の荷重作用時では防砂シート11と網状体ベース15とが協働して伸長するが、網状体ベース5の線材の伸び限界、強度限界を超えるような伸長状態では、網状体ベース15は機能せず、防砂シート11のみが伸びて対応する。しかし、その伸びによる引き込み現象は防砂シート11と網状体ベース15の線材との連結点(線材の交点位置14)で止まるため、その周囲の防砂シートに過度の引張力が累加するのを防止することができる。このとき網状体ベース15に用いられる溶接網等の引張強度は、上述のように目合い等を考慮した状態で、防砂シート11の対応する強度より小さく設定されている。
【0031】
一方、図5に示したような、防砂シート11を網状体ベース15の下面に取り付けてなる防砂シート敷設構造10の場合には、図7(b)に示したように、陥没箇所Dにおいて防砂シート11と網状体ベース15とを結ぶ連結テープ12が破断するか、連結テープ12の先端の面接着された箇所が剥がれる、すなわち面接着された連結部が外れることにより防砂シート11と網状体ベース15とが分離して防砂シート11のみで土圧を負担することができる。このときも陥没箇所の発生による防砂シート敷設構造10の引き込み現象は、陥没箇所Dの周囲にある防砂シート11と網状体ベース15の線材との連結点(縦方向の素線と横方向の素線との交点位置14)で止まるため、さらにその周囲の防砂シートに過度の引張力が累加するのが防止される。この変形例においても、網状体ベース15に用いられる溶接網等の引張強度は、防砂シート11の対応する強度より小さく設定されている。

【0032】
各図に示したように、本発明の防砂シート敷設構造10は、捨て石マウンド3の天端位置で、網状体ベース15の端部が固定手段5を介してケーソン2の側面に固定されている。その際、防砂シート11は水面下のみで網状体ベース15に吊る状態で取り付けてもよく、これにより、水面下に位置させることで、長期間にわたる曝露による紫外線による劣化を防止することができる。また、埋め立て直前に捨て石マウンドの天端のみ防砂シートを張って土砂を投入することができるので、裏込め工と水面下の防砂シート展張工とを同時に進めることができる。
【0033】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に示した範囲内での種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲内で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0034】
1 護岸ケーソン構造
2 ケーソン
3 捨て石マウンド
4 埋立砂
6 捨て石
10 防砂シート敷設構造
11 防砂シート
12 連結テープ
14 線材の交点位置
15 網状体ベース
【要約】
【課題】 港湾護岸ケーソンが載置される捨て石マウンドの法面に敷設される防砂シートに作用する引張力の分散を図る。
【解決手段】 護岸ケーソン2に上端部が固定され、捨て石マウンド3の天端から法面にかけて捨て石面を覆うように敷設される金網からなる網状体ベース15と、網状体ベース15に面接触して連結される防砂シート11とを備える。網状体ベース15と防砂シート11とは、防砂シート11の表面に縦横に取り付けられた複数の連結手段12を介して一体的に伸び変形可能に連結される。防砂シート敷設構造10に埋立荷重が作用し、金網の一部の箇所の線材が強度限界あるいは伸び限界に達した際、一部の箇所の線材の近傍が線材と連結されていた防砂シート11のみで埋立荷重が負担される。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10