(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
誘電体層を備えた弁作用金属からなる板状の多孔質体の主面の一部に、箔状または板状の金属片が前記主面に沿うように接続され、前記金属片を除く前記多孔質体の表面に、陰極めっき層を最外層とした陰極層が設けてなる陽極体と、前記金属片の接続される一方の主面に対向する他方の主面の一部に設けられた陽極めっき部と、前記陰極層と前記陽極めっき部とを絶縁するように設けられた絶縁分離部と、前記陽極体を覆う絶縁樹脂からなる外装部とを備える固体電解コンデンサであって、前記金属片の一方の主面の一部は、前記多孔質体に埋設されるとともに、前記金属片の端部は前記多孔質体の主面に直交する前記外装部が形成された一つの側面より突出し、前記陽極めっき部と前記陰極めっき層は同一主面に設けられ、前記陽極めっき部と前記陰極めっき層の一部は前記外装部から露出して外部電極端子となることを特徴とする固体電解コンデンサ。
前記外装部は、前記陽極めっき部と同一主面に設けられた前記陰極めっき層との間に形成されるとともに、前記同一主面における一方の辺から対向する他方の辺に達するように形成されることを特徴とする請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
前記陽極めっき部は、電解めっきおよび無電解めっきの少なくとも一方からなり、前記電解めっきおよび無電解めっきは、錫、金、銀、ニッケル、銅、白金の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1また2に記載の固体電解コンデンサ。
前記陰極めっき層は、電解めっきおよび無電解めっきの少なくとも一方からなり、前記電解めっきおよび無電解めっきは、錫、金、銀、ニッケル、銅、白金の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1また2に記載の固体電解コンデンサ。
弁作用金属の粉末と箔状または板状の金属片をプレス成型して、前記金属片の主面の一部が一つの面に沿って埋設されるとともに、前記金属片の主面の端部が前記一つの面に沿って導出するプレス体を得る工程と、前記プレス体を焼結し多孔質体を得る工程と、前記金属片と前記多孔質体との一部に絶縁分離部を設ける工程と、前記金属片を固定し吊り下げて前記多孔質体の表面に誘電体層を形成する工程と、前記金属片の一部および前記誘電体層の表面に陰極めっき層を最外層とした陰極層を備えた陽極体を得る工程と、前記金属片において前記陰極層の一部を除去して陽極実装部を形成する工程と、前記陽極実装部に陽極めっき部を形成し、前記陽極めっき部と前記陰極めっき層を同一主面に設ける工程と、前記陽極めっき部と前記陰極めっき層の一部が露出するように外装し外部電極端子を形成する工程と、前記導出した前記金属片の端部を切断し、突出する部分を形成する工程とを含む固体電解コンデンサの製造方法。
弁作用金属の粉末と箔状または板状の金属片をプレス成型して、前記金属片の主面の一部が一つの面に沿って埋設されるとともに前記金属片の端部を突出させてなるプレス体を得る工程と、前記プレス体を焼結し多孔質体を得る工程と、前記金属片と前記多孔質体との一部に絶縁分離部を設ける工程と、前記金属片を固定し吊り下げて前記多孔質体の表面に誘電体層を形成する工程と、前記金属片の一部および前記誘電体層の表面に陰極めっき層を最外層とした陰極層を備えた陽極体を得る工程と、前記金属片において前記陰極層の一部を除去して陽極実装部を形成する工程と、前記陽極実装部に陽極めっき部を形成し、前記陽極めっき部と前記陰極めっき層を同一主面に設ける工程と、前記陽極めっき部と前記陰極めっき層の一部が露出するように外装し外部電極端子を形成する工程とを含む固体電解コンデンサの製造方法。
弁作用金属の粉末と箔状または板状の金属片をプレス成型して、前記金属片の主面の一部が一つの面に沿って埋設されるとともに、前記金属片の主面の端部が前記一つの面に沿って導出するプレス体を得る工程と、前記プレス体を焼結し多孔質体を得る工程と、前記金属片の主面の一部に弁作用金属の素地を露出する開口部を設けるように前記多孔質体とを絶縁する絶縁分離部を形成する工程と、前記開口部と前記絶縁分離部の一部を熱可塑性樹脂で覆い、前記金属片を固定し吊り下げて前記多孔質体の表面に誘電体層を形成する工程と、前記金属片の一部および前記誘電体層の表面に陰極めっき層を最外層とした陰極層を備えた陽極体を得る工程と、前記開口部と前記絶縁分離部の一部において前記熱可塑性樹脂を剥離して陽極実装部を形成し前記絶縁分離部の一部を露出する工程と、前記陽極実装部に陽極めっき部を形成する工程と、前記陽極めっき部と前記陰極めっき層の一部が露出するように外装し外部電極端子を形成する工程と、前記導出した前記金属片の端部を切断し、突出する部分を形成する工程とを含む固体電解コンデンサの製造方法。
前記外装部は、前記陽極めっき部と同一主面に設けられた前記陰極めっき層との間に形成されるとともに、前記同一主面における一方の辺から対向する他方の辺に達するように形成する工程とを含む請求項9〜11のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
前記陽極めっき部は、電解めっきおよび無電解めっきの少なくとも一方からなり、前記電解めっきおよび無電解めっきは、錫、金、銀、ニッケル、銅、白金の少なくとも1種を含有することを含む請求項9〜12のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
前記陰極めっき層が、電解めっきおよび無電解めっきの少なくとも一方からなり、前記電解めっきおよび無電解めっきは、錫、金、銀、ニッケル、銅、白金の少なくとも1種を含有することを含む請求項9〜12のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の
図2や
図3に記載された固体電解コンデンサは、コンデンサ素子の製造工程において、誘電体層や陰極層を形成する場合に、吊り下げるリードを導電性接着剤を用いて金属片の表面に接続する必要が生じるため、製造工程が煩雑になり生産性が低下するという課題がある。
【0008】
また、はんだ電極端子により外部電極端子を形成しているため、体積効率の改善は不十分であるという課題がある。
【0009】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、生産性の低下を抑制し、体積効率をさらに向上することが可能な固体電解コンデンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明の固体電解コンデンサは、誘電体層を備えた弁作用金属からなる板状の多孔質体の主面の一部に、箔状または板状の金属片が前記主面に沿うように接続され、前記金属片を除く前記多孔質体の表面に、陰極めっき層を最外層とした陰極層が設けてなる陽極体と、前記金属片の接続される一方の主面に対向する他方の主面の一部に設けられた陽極めっき部と、前記陰極層と前記陽極めっき部とを絶縁するように設けられた絶縁分離部と、前記陽極体を覆う絶縁樹脂からなる外装部とを備える固体電解コンデンサであって、前記金属片の一方の主面の一部は、前記多孔質体に埋設されるとともに、前記金属片の端部は前記多孔質体の主面に直交する前記外装部が形成された一つの側面より突出し、前記陽極めっき部と前記陰極めっき層の一部は前記外装部から露出して外部電極端子となることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の固体電解コンデンサは、前記外装部が、前記陽極めっき部と同一主面に設けられた前記陰極めっき層との間に形成されるとともに、前記同一主面における一方の辺から対向する他方の辺に達するように形成されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の固体電解コンデンサは、前記金属片が、前記埋設される方向にL字状に延びた箔または板であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の固体電解コンデンサは、前記金属片が、弁作用金属であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の固体電解コンデンサは、前記陽極めっき部が、電解めっきおよび無電解めっきの少なくとも一方からなり、前記電解めっきおよび無電解めっきは、錫、金、銀、ニッケル、銅、白金の少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0015】
また、本発明の固体電解コンデンサは、前記陰極めっき層が、電解めっきおよび無電解めっきの少なくとも一方からなり、前記電解めっきおよび無電解めっきは、錫、金、銀、ニッケル、銅、白金の少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0016】
また、本発明の固体電解コンデンサは、前記絶縁分離部が、はんだをはじく絶縁性樹脂であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の固体電解コンデンサは、前記陰極層における最外層が銀ペースト層であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の固体電解コンデンサの製造方法は、弁作用金属の粉末と箔状または板状の金属片をプレス成型して、前記金属片の主面の一部が一つの面に沿って埋設されるとともに、前記金属片の主面の端部が前記一つの面に沿って導出するプレス体を得る工程と、前記プレス体を焼結し多孔質体を得る工程と、前記金属片と前記多孔質体との一部に絶縁分離部を設ける工程と、前記金属片を固定し吊り下げて前記多孔質体の表面に誘電体層を形成する工程と、前記金属片の一部および前記誘電体層の表面に陰極めっき層を最外層とした陰極層を備えた陽極体を得る工程と、前記金属片において前記陰極層の一部を除去して陽極実装部を形成する工程と、前記陽極実装部に陽極めっき部を形成する工程と、前記陽極めっき部と前記陰極めっき層の一部が露出するように外装し外部電極端子を形成する工程と、前記導出した前記金属片の端部を切断し、突出する部分を形成する工程とを含む。
【0019】
また、本発明の固体電解コンデンサの製造方法は、弁作用金属の粉末と箔状または板状の金属片をプレス成型して、前記金属片の主面の一部が一つの面に沿って埋設されるとともに前記金属片の端部を突出させてなるプレス体を得る工程と、前記プレス体を焼結し多孔質体を得る工程と、前記金属片と前記多孔質体との一部に絶縁分離部を設ける工程と、前記金属片を固定し吊り下げて前記多孔質体の表面に誘電体層を形成する工程と、前記金属片の一部および前記誘電体層の表面に陰極めっき層を最外層とした陰極層を備えた陽極体を得る工程と、前記金属片において前記陰極層の一部を除去して陽極実装部を形成する工程と、前記陽極実装部に陽極めっき部を形成する工程と、前記陽極めっき部と前記陰極めっき層の一部が露出するように外装し外部電極端子を形成する工程とを含む。
【0020】
また、本発明の固体電解コンデンサの製造方法は、弁作用金属の粉末と箔状または板状の金属片をプレス成型して、前記金属片の主面の一部が一つの面に沿って埋設されるとともに、前記金属片の主面の端部が前記一つの面に沿って導出するプレス体を得る工程と、前記プレス体を焼結し多孔質体を得る工程と、前記金属片の主面の一部に弁作用金属の素地を露出する開口部を設けるように前記多孔質体とを絶縁する絶縁分離部を形成する工程と、前記開口部と前記絶縁分離部の一部を熱可塑性樹脂で覆い、前記金属片を固定し吊り下げて前記多孔質体の表面に誘電体層を形成する工程と、前記金属片の一部および前記誘電体層の表面に陰極めっき層を最外層とした陰極層を備えた陽極体を得る工程と、前記開口部と前記絶縁分離部の一部において前記熱可塑性樹脂を剥離して陽極実装部を形成し前記絶縁分離部の一部を露出する工程と、前記陽極実装部に陽極めっき部を形成する工程と、前記陽極めっき部と前記陰極めっき層の一部が露出するように外装し外部電極端子を形成する工程と、前記導出した前記金属片の端部を切断し、突出する部分を形成する工程とを含む。
【0021】
また、本発明の固体電解コンデンサの製造方法は、前記外装部が、前記陽極めっき部と同一主面に設けられた前記陰極めっき層との間に形成されるとともに、前記同一主面における一方の辺から対向する他方の辺に達するように形成する工程とを含む。
【0022】
また、本発明の固体電解コンデンサの製造方法は、前記金属片が、前記埋設される方向にL字状に延びた箔または板であることを含む。
【0023】
また、本発明の固体電解コンデンサの製造方法は、前記金属片が、弁作用金属であることを含む。
【0024】
また、本発明の固体電解コンデンサの製造方法は、前記陽極めっき部が、電解めっきおよび無電解めっきの少なくとも一方からなり、前記電解めっきおよび無電解めっきは、錫、金、銀、ニッケル、銅、白金の少なくとも1種を含有することを含む。
【0025】
また、本発明の固体電解コンデンサの製造方法は、前記陰極めっき層が、電解めっきおよび無電解めっきの少なくとも一方からなり、前記電解めっきおよび無電解めっきは、錫、金、銀、ニッケル、銅、白金の少なくとも1種を含有することを含む。
【0026】
また、本発明の固体電解コンデンサの製造方法は、前記絶縁分離部が、はんだをはじく絶縁性樹脂であることを含む。
【0027】
また、本発明の固体電解コンデンサの製造方法は、前記陰極層における最外層が銀ペースト層であることを含む。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、金属片の一方の主面の一部が、多孔質体に埋設されるとともに、金属片の端部は、多孔質体の主面に直交する一つの外装部が形成された側面より突出し、陰極めっき層と陽極めっき部の少なくとも一部は外装部から露出して外部電極端子となることにより、生産性の低下を抑制し、体積効率をさらに向上する固体電解コンデンサを提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0031】
(実施の形態1)
図1は、本発明の固体電解コンデンサにおける実施の形態1を説明する図であり、
図1(a)は、固体電解コンデンサの概略断面図、
図1(b)は、B部の拡大図である。
【0032】
図1(a)に示すように、固体電解コンデンサ100は、タンタル等の弁作用金属からなる多孔質体1と、金属片5と、絶縁分離部4と、陽極めっき部10bと、陰極層2と、外装部3とから構成される。コンデンサ素子30は、多孔質体1の表面に誘電体層(図示せず)が形成され、さらにその表面に陰極層2が形成された部分、すなわち陽極体と、金属片5と、絶縁分離部4とで構成される。
【0033】
多孔質体1は、微細な弁作用金属の粉末を焼結したものからなる。多孔質体1に用いられる弁作用金属としては、タンタルの他に、アルミニウム、ニオブ、チタンまたはこれらの合金等が挙げられる。
【0034】
金属片5は、箔状または板状であり、陽極を引き出す為に金属片5における一方の主面と主面に接する側面の一部は多孔質体1に埋設され、電気的に接続される。また、金属片5の端部は、多孔質体1の主面に直交する外装部3を備えた一つの側面より突出する構造を有している。
【0035】
金属片5の外層部3から突出した部分は、コンデンサ素子の製造工程において、誘電体層や陰極層を形成する場合に、吊り下げるリードの役目を担う部分である。この構造により、従来技術の陽極リードを導出するための空間を無くし、コンデンサ素子の体積効率を向上させるとともに、従来技術において課題であった、導電性接着剤を用いて金属片の表面にリードを接続する工程が削減される。これにより、生産性の低下を抑制した固体電解コンデンサの提供が可能になる。
【0036】
また、多孔質体1との接続がさらに強固になることから金属片5が、埋設方向にL字状に延びた箔または板であってもよい。
【0037】
また、金属片5は、弁作用金属であることが好ましい。金属片5を弁作用金属とすることにより、多孔質体1との接続部分の結合が進み、等価直列抵抗(ESR)の増加が抑制される。
【0038】
金属片5を構成する弁作用金属は、タンタルの他にアルミニウム、ニオブ、チタンまたはこれらの合金等から適宜選定できる。
【0039】
絶縁分離部4は、絶縁性樹脂や絶縁性樹脂を含む塗料等からなり、金属片5の突出している部分及び金属片5の表面に設けられた陽極めっき部10bと陰極層2とを区分するように形成されている。これにより陽極部となる金属片5および陽極めっき部10bと、陰極層2とが電気的に短絡することが防止される。
【0040】
なお、絶縁分離部4は、はんだをはじく材料であることが好ましい。例えば、エポキシ系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。はんだをはじく材料を用いることによって、固体電解コンデンサを実装する場合に、はんだが外部電極端子となる陽極めっき部10bと陰極めっき層9の電気的短絡を防止する。
【0041】
次に、誘電体層、陰極層の構造を説明する。
図1(b)に示すように、誘電体層6は、多孔質体1の表面に形成され、陽極酸化法により酸化させた酸化皮膜である。誘電体層6の厚みは、陽極酸化法の印加電圧によって適宜調整できる。
【0042】
陰極層2は、誘電体層6の表面に順次形成された固体電解質層7、グラファイト層8、陰極めっき層9からなる。
【0043】
固体電解質層7は、導電性高分子層からなり、複数の層で構成されていてもよい。製法としては、化学酸化重合法や電解重合法、また、予め重合した導電性高分子懸濁溶液に浸漬し加熱乾燥する、いわゆる導電性高分子懸濁液法等が用いられる。
【0044】
固体電解質層7は、二酸化マンガンや、ポリピロール、3,4−エチレンジオキシチオフェン、ポリアニリン等の導電性高分子またはその誘導体で構成される。
【0045】
グラファイト層8は、黒鉛等の導電性の粉末を含有したペーストで構成され、陰極を引き出す層となるとともにESRの増加を抑制する。
【0046】
陰極めっき層9は、電解めっきおよび無電解めっきの少なくとも一方からなり、錫、金、銀、ニッケル、銅、白金の少なくとも1種を含有することが好ましい。これらの金属を用いためっきを施すことにより、はんだの濡れ性が良好となり、実装時の信頼性が向上する。
【0047】
また、陰極層2は、陰極めっき層9の代わりに、はんだとの接合が可能な銀ペーストを最外層として用いても構わない。銀ペーストを用いることによって、めっき層を形成するよりも工程が簡略化され、生産性が向上する。
【0048】
なお、
図1(a)の陽極めっき部10bは、電解めっきおよび無電解めっきの少なくとも一方からなり、錫、金、銀、ニッケル、銅、白金の少なくとも1種を含有することが好ましい。これらの金属を用いためっきを施すことにより、はんだの濡れ性が良好となり、実装時の信頼性が向上する。
【0049】
陽極めっき部10b、陰極めっき層9は、それぞれ本発明の固体電解コンデンサ100の外部基板に接続される実装面に設けられており、外部電極端子となる。この構造により、さらに体積効率が向上した、本発明の固体電解コンデンサを提供することが可能になる。
【0050】
また、陽極めっき部10b、陰極めっき層9が外部電極端子となり、はんだを介して直接外部基板の導体パターンに接続されるため、さらにESRの増加を抑制させることが可能になる。
【0051】
外装部3は、絶縁性樹脂や絶縁性樹脂を含む塗料等ならなり、金属片5の突出する部分と、固体電解コンデンサ100の基板への実装面となる面を除く部分に形成される。したがって、陽極めっき部10b、絶縁分離部4、陰極めっき層9の一部が露出するように形成されている。外装部3を形成する材料としては、耐環境性に優れる点からエポキシ系樹脂、フッ素系樹脂等を主成分とするものが用いられる。
【0052】
上述した、構成により本発明の実施の形態1の固体電解コンデンサが得られる。
【0053】
(製造方法)
次に本発明の固体電解コンデンサの製造方法を図を用いて説明する。
【0054】
図2は、本発明の固体電解コンデンサの製造方法における製造過程を説明する図であり、
図2(a)は、金属片と多孔質体が埋設された斜視図、
図2(b)は、絶縁分離部が設けられた斜視図である。
【0055】
図2(a)に示すように、まず、弁作用金属からなる粉末と、弁作用金属からなる板状もしくは箔状の金属片5をプレス成型して、金属片5が埋設されたプレス体15を得る。プレス体15において、金属片5の一方の主面と該主面に直交または接する側面の一部は、プレス体15の一方の主面に埋設される状態となる。
【0056】
プレス成型の方法としては、プレス金型に予め金属片を設置し、弁作用金属からなる粉末を充填して、同時にプレス成型する方法や、一度プレス体を得た後、金属片をタンタルの粉末を含有したペースト等で貼り付け、再度プレス成型する方法等が用いられる。
【0057】
これらの方法は、用いる弁作用金属の粉末の大きさや製造する多孔質体の大きさにより、適宜選択される。
【0058】
その後、金属片5が埋設されたプレス体15を1000℃〜1600℃の温度で真空焼結することによって、微細な空孔を備えた多孔質体(図示せず)を得る。
【0059】
続いて、
図2(b)に示すように、陽極と陰極との分離を行う為に、金属片5における埋設された主面と対向する主面の一部と、多孔質体1における金属片5が突出した面の一部に絶縁分離部4(ハッチング部)を形成する。
【0060】
絶縁分離部4の形成方法としては、ジェットディスペンサ、吹きつけ、スクリーン印刷等が用いられ、100℃〜150℃で1〜5時間乾燥する。なお、製造工程では、絶縁分離部4を形成する領域が限られるために専用のマスクを用いる場合もある。
【0061】
その後、直流電圧を印加して多孔質体1の表面に電気化学的に陽極酸化皮膜を形成し誘電体層(図示せず)を形成する。
【0062】
図3は、本発明の固体電解コンデンサの製造方法における製造過程を説明する図であり、
図3(a)は、陰極めっき層が設けられた斜視図、
図3(b)は、金属片の一部の金属素地が露出した斜視図である。
【0063】
図3(a)に示すように、
図2(b)で説明した多孔質体に形成した誘電体層の表面に、固体電解質層として導電性高分子層(図示せず)、グラファイト層(図示せず)、陰極めっき層9(ハッチング部)を順次形成してコンデンサ素子30を製作する。
【0064】
固体電解質層は、化学酸化重合法、電解重合法、導電性高分子懸濁液法等の公知の方法が用いられる。グラファイト層の形成もグラファイトペーストの槽に含浸し乾燥させる等の公知の方法を用いて実施される。
【0065】
陰極めっき層9は、グラファイト層まで形成した陽極体における金属片5に電源の陰極端子を接続し、錫めっき合金浴に浸漬するとともに、錫めっき合金浴を電源の陽極側に接続し、電圧を印加して行う。
【0066】
この場合、陰極めっき層9等からなる陰極層は、金属片5において突出する方向に形成されている絶縁分離部4の領域よりはみ出ない様にすることが必要である。これにより、陽極部となる金属片5と陰極部となる陰極めっき層9の電気的短絡を防止することが出来る。
【0067】
次に
図3(b)に示すように、金属片5の埋設されていない主面の一部に陽極電極端子となる陽極実装部10aを形成する。陽極実装部10aは、金属片5の金属素地が露出した部分であり、金属片5に設けられた誘電体層、絶縁分離部4、陰極層をレーザ等を用いて除去し形成される。レーザとしてはCO
2レーザ等の気体レーザやYAGレーザ等の固体レーザが用いられる。
【0068】
また、同時に、金属片5における陽極実装部10aを形成した部分の周囲において、陰極めっき層9を含む陰極層を除去して、絶縁分離部4を露出させる。この作業は、レーザの出力を制御し、切削する深さを調整することで可能になる。
【0069】
図4は、本発明の固体電解コンデンサの製造方法における製造過程を説明する図であり、
図4は、金属片の一部の金属素地に陽極めっき部が設けられた斜視図である。
【0070】
図4に示すように、金属片5の金属素地が露出した陽極実装部(
図3(b)の10a)に、はんだ付着可能なめっきからなる陽極めっき部10bを形成する。前述したように、陽極めっき部10bの周囲には、絶縁分離部4が露出している。
【0071】
陽極めっき部10bを形成する方法として、例えば筆めっき法がある。筆めっき法とは、めっきしたい金属を含んだ電解液を含浸した筆で、めっき対象の物体の一部または全体にめっきを実施する方法である。通常、電極本体にはステンレス鋼を用い、電解液を含むための繊維性の素材を電極本体に巻きつけて実施する。
【0072】
図5は、本発明の固体電解コンデンサの製造方法における製造過程を説明する図であり、
図5は、陽極めっき部と陰極めっき層の一部が露出して外装部が設けられた斜視図である。
【0073】
図5に示すように、絶縁性樹脂や絶縁性樹脂を含む塗料等により被覆し外装部3を設ける。その際、固体電解コンデンサの実装面となる主面に設けられた陽極めっき部10bと陰極めっき層9の一部は、外装部3で被覆せず、露出させて、それぞれ外部電極端子とする。
【0074】
外装部3を形成する方法としては、絶縁分離部4と同様の方法が用いられ、ジェットディスペンサ、吹きつけ、スクリーン印刷等がある。さらに、外装部3は、加熱して乾燥させる工程を経て硬化される。
【0075】
このように本発明の固体電解コンデンサは、従来技術のように陽極および陰極実装部に、はんだ端子を形成しないため、体積効率がさらに向上する。
【0076】
図6は、本発明の固体電解コンデンサの製造方法における製造過程を説明する図であり、
図6は、金属片が切断されて金属片の端部が突出する斜視図(完成図)である。
【0077】
図6に示すように、外装部3を形成した後、金属片5の突出する部分を残して、金属片5における吊り下げに用いた部分を切断する。切断方法としては、レーザや切断金型等を用いて行うことが出来る。なお、作業は、切断する部分が小さい為、専用の冶具を用いて固定し切断することが必要である。また、不要な箇所にレーザ光が照射されないようにすることも必要である。
【0078】
これらの工程を経て、本発明における、生産性の低下を抑制し、体積効率をさらに向上することが可能な固体電解コンデンサ100が完成する。
【0079】
なお、本実施の形態では、金属片の突出する部分から連続する吊り下げ代を長めに設定しているため、切断する工程を含んだ製造方法を説明した。吊り下げる方法や金属片を挟持する方法を検討することにより、切断する工程を必要とせず、プレス時の突出させた状態のままで固体電解コンデンサを得ることも可能になる。
【0080】
次に、本発明の固体電解コンデンサにおける他の製造方法を説明する。この製造方法は、絶縁分離部を形成する工程と、陽極実装部を形成する工程が前述した製造方法と違うものである。
【0081】
図7(a)は、本発明の固体電解コンデンサの他の製造方法における製造過程を説明する図であり、
図7(a)は、開口部を設けて絶縁分離部が形成された斜視図、
図7(b)は、開口部および絶縁分離部の一部を熱可塑性樹脂で覆った斜視図である。
【0082】
図7(a)に示すように、本製造方法では、まず、絶縁分離部4を形成する工程において、金属片5の主面の一部に弁作用金属の素地を露出する開口部11を設けるように絶縁分離部4を形成する。
【0083】
開口部11を設けるように絶縁分離部4を形成する方法としては、ジェットディスペンサ、吹きつけ、スクリーン印刷等が用いられる。
【0084】
さらに
図7(b)に示すように、開口部11および絶縁分離部4の一部を熱可塑性樹脂20で覆う工程をとる。なお、熱可塑性樹脂20で覆う範囲としては、除去が可能であれば絶縁分離部4の全体を覆うことが望ましい。熱可塑性樹脂20を付着させる方法としては、ジェットディスペンサ、吹きつけ、スクリーン印刷等が用いられる。
【0085】
次に、前述した製造方法と同様の工程を用いて、誘電体層と陰極層を形成する。その後、コンデンサ素子を加熱し、熱可塑性樹脂を軟化させて除去する。なお、熱可塑性樹脂の除去は、溶剤等を用いても構わない。これにより弁作用金属の素地が露出する陽極実装部を得る。なお、陽極実装部の周囲には絶縁分離部が露出している。
【0086】
熱可塑性樹脂20としては、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル等が用いられる。また、加熱することで剥離可能な解体性樹脂等も用いることができる。
【0087】
本製造方法では、絶縁分離部に開口部を設け、さらに熱可塑性樹脂で予め開口部を覆うことを説明した。これにより、レーザで陰極層と絶縁分離部を除去する工程を用いずに陽極実装部を得ることが可能になり、製造工程の簡略化に寄与できる。
【0088】
以降の工程は、前述した製造方法と同様の工程を用いて、本発明の固体電解コンデンサを得ることができる。
【0089】
(実施の形態2)
図8は、本発明の固体電解コンデンサにおける実施の形態2を説明する図であり、
図8(a)は、固体電解コンデンサの概略断面図、
図8(b)は、固体電解コンデンサの概略斜視図である。
【0090】
図8(a)、(b)に示すように、実施の形態2では、外装部3が固体電解コンデンサ100の実装面にある陰極めっき層9と陽極めっき部10bを電気的に絶縁する様に、それぞれの間に形成されるとともに、同一主面における陰極めっき層9と陽極めっき部10bが接する辺と直交する一方の辺から対向する他方の辺に達するように形成されている。外装部3が陰極めっき層9と陽極めっき部10bの間に形成されことによって、実装時における、はんだのはみ出しがさらに防止でき、信頼性が向上する。
【実施例】
【0091】
以下に本発明の実施例を説明する。
【0092】
(実施例1)
弁作用金属であるタンタル粉末をプレス成型して、形状が長さ4.5mm×幅3.6mm×厚さ0.9mmのプレス体を得た。この時、プレス体の一方の主面(4.5mm×幅3.6mmの面)に、タンタルの金属片を埋設させた。金属片の形状は、長さ3.5mm×幅2.8mm×厚さ0.2mmとした。金属片は、プレス体の主面の長手方向の端面から内側に向かって約40%まで埋設した。
【0093】
その後、プレス体を多孔質体とするために、1300℃で20分間、真空焼結した。
【0094】
さらに、陽極側の金属片と陰極側の多孔質体との分離を行う為に、金属片の埋設された主面に対向する主面の一部と、金属片が突出した多孔質体の面の一部に主成分がエポキシ系樹脂である絶縁樹脂を塗布し、150℃で1時間、熱乾燥して絶縁分離部を設けた。
【0095】
その後、金属片を固定し多孔質体を吊り下げて濃度0.2mass%のリン酸水溶液に含浸し、直流電圧を15V印加して陽極酸化皮膜からなる誘電体層を形成した。直流電圧は、金属片を通して印加した。
【0096】
誘電体層を形成した多孔質体をp−トルエンスルホン酸第二鉄メタノール溶液に1分間浸漬した後、引き上げ、さらに、60分間室温で乾燥した。この工程以降も金属片を固定し多孔質体を吊り下げた。
【0097】
多孔質体にp−トルエンスルホン酸が付着したことを確認後、さらに、モノマーである3,4−エチレンジオキシチオフェンに1分間浸漬した。しかる後、60分間放置することで多孔質体に形成されている誘電体層の上に、導電性高分子層である導電性高分子膜を形成した。この作業を20回繰り返すことにより、固体電解質層を形成した。
【0098】
その後、グラファイトを含有したペースト液に固体電解質層を形成した多孔質体を浸漬して、150℃で30分間乾燥することにより、固体電解質層の上にグラファイト層を形成した。
【0099】
次に、金属片を陰極側に接続し、グラファイト層を形成した多孔質体を陽極側に接続した。そして錫めっき合金浴にグラファイト層を形成した多孔質体を浸漬した。電流密度を10mA/cm
2として電解めっきを施し、グラファイト層の表面に陰極めっき層を形成した多孔質体を得た。陰極めっき層の厚さは、10〜30μmとした。これにより、本発明のコンデンサ素子を完成させた。
【0100】
次いで、金属片の埋設していない主面の一部において、陽極実装部を形成するためにCO
2レーザを用いて陰極層、誘電体層及び絶縁分離部を除去して下地であるタンタルの金属素地を露出させた。陽極実装部の範囲は、長さ2.4mm、幅1.3mmとした。また、同様にCO
2レーザを用いて、金属素地を露出させた部分の周辺においても陰極層を除去して絶縁分離部を露出させた。
【0101】
続いて、陽極実装部に、筆めっきを用いて、はんだと接続可能な陽極めっき部となる、錫−ニッケルの合金めっきを形成した。陽極めっき部を形成した範囲は、陽極実装部の範囲と同等であった。なお、陽極めっき部の厚さは30〜50μmであった。
【0102】
その後、エポキシ系樹脂を主成分とする絶縁樹脂で被覆し、外装部を設けた。その際、固体電解コンデンサの実装面となる主面に設けられた陽極めっき部と陰極めっき層は、外装部で被覆せずに露出させて、それぞれ外部電極端子とした。外装部は、150℃で1時間乾燥させ硬化させた。
【0103】
被覆後、金属片における吊り下げに用いた部分をCO
2レーザを用いて切断した。なお、作業時は、切断が必要な箇所以外にレーザ光が照射されないように専用の冶具で遮断した。その結果、金属片は外装部より約0.1mm突出した。固体電解コンデンサの作製した数量は300個とした。
【0104】
(実施例2)
実施例2は、陰極層の最外層である陰極めっき層の代わりに、はんだとの接続が可能な銀ペーストを用いて固体電解コンデンサを作製した。その他の条件は、実施例1と同様とした。
【0105】
(実施例3)
実施例3は、
図8の構造と同様し、外装部を固体電解コンデンサの実装面にある陰極めっき層と陽極めっき部の間にも形成させた以外は、実施例1と同様とした。
【0106】
(比較例)
比較例は、特許文献1の
図3の構造で固体電解コンデンサを作製した。陽極はんだ端子および陰極はんだ端子の厚さは約100μmとした。作製数は300個とした。
【0107】
なお、実施例および比較例の固体電解コンデンサは、定格電圧が2.5V、静電容量が470μFとなるように製作した。
【0108】
それぞれの実施例、比較例で作製した固体電解コンデンサの100個について、体積効率を求めた。また、電気特性としてESR、漏れ電流(LC)を測定した。
【0109】
ESRは、周波数100KHzにてDCバイアス1.5Vで実効値0.5Vの正弦波を重畳して測定した。LCは、DC2.5Vを30SEC印加して測定した。
【0110】
これらの体積効率、ESR、LCの値を表1に示す。
【0111】
【表1】
【0112】
表1に示すように、本発明の実施例1〜3では、比較例と比べて、LCが同等であるとともに、体積効率、ESRが改善されていることが確認された。
【0113】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても本発明に含まれる。すなわち、当業者であれば、当然なしえるであろう各種変形、修正もまた本発明に含まれる。