特許第6309237号(P6309237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6309237生存生物を用いた内分泌攪乱作用を低減する水の処理方法および処理施設
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6309237
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】生存生物を用いた内分泌攪乱作用を低減する水の処理方法および処理施設
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/28 20060101AFI20180402BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20180402BHJP
   A01K 67/027 20060101ALI20180402BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20180402BHJP
   C02F 1/78 20060101ALI20180402BHJP
   C02F 1/32 20060101ALI20180402BHJP
   C02F 1/72 20060101ALI20180402BHJP
   G01N 33/18 20060101ALN20180402BHJP
【FI】
   C02F1/28 A
   C12N15/00 A
   A01K67/027
   C12Q1/02
   C02F1/78
   C02F1/32
   C02F1/72 101
   !G01N33/18 E
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-211599(P2013-211599)
(22)【出願日】2013年10月9日
(65)【公開番号】特開2014-97487(P2014-97487A)
(43)【公開日】2014年5月29日
【審査請求日】2016年7月25日
(31)【優先権主張番号】1259608
(32)【優先日】2012年10月9日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】503289595
【氏名又は名称】ヴェオリア・ウォーター・ソリューションズ・アンド・テクノロジーズ・サポート
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100154298
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(74)【代理人】
【識別番号】100179154
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 真衣
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100184424
【弁理士】
【氏名又は名称】増屋 徹
(72)【発明者】
【氏名】アブデルカデル・ゲド
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ソヴィニエ
【審査官】 岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−164343(JP,A)
【文献】 特表2010−509610(JP,A)
【文献】 特表2005−531303(JP,A)
【文献】 特開2010−046626(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0192795(US,A1)
【文献】 特開2002−166265(JP,A)
【文献】 特開2001−235464(JP,A)
【文献】 特開2000−028602(JP,A)
【文献】 国際公開第03/008633(WO,A1)
【文献】 特開2007−085828(JP,A)
【文献】 特開2008−008752(JP,A)
【文献】 特開2003−066029(JP,A)
【文献】 特開昭63−142259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/28
C02F 1/32
C02F 1/78
C02F 1/72
G01N 33/18
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内分泌攪乱作用ならびに/または毒性および/もしくは遺伝毒性作用をもたらす可能性がある汚染物質の含量が減少するように処理すべき水を処理する方法であって、
処理すべき水を、一定量の少なくとも1種の吸着試薬と接触させて、水と吸着試薬との混合物を製造する、吸着ステップと、
前記混合物を固液分離し、処理水および汚泥を製造する、固液分離ステップと
を含む、処理すべき水を処理する方法であり、
前記吸着ステップに先立っておよび/または前記固液分離ステップに続いて、前記処理すべき水および/または前記処理水それぞれを、少なくとも1種の生存水生生物と接触させるステップを行い、前記生存生物の少なくとも1種の特性値が、前記処理すべき水および/または前記処理水の前記汚染物質の濃度と相関することを特徴とするとともに、
前記特性値を連続的に評価する評価ステップと、
前記評価ステップで得られた前記特性値に応じて、前記吸着ステップ中に水に混合する吸着試薬の量を調節するステップとをさらに含むことを特徴とする方法であって、
前記少なくとも1種の特性値が、前記生存生物により発せられる視覚的シグナルの強度であり、前記強度は、定量化され、前記処理すべき水の前記汚染物質の濃度と関連付けることができることを特徴とする方法
【請求項2】
前記吸着ステップの前にまたは前記吸着ステップ中に、化学的酸化剤の注入を行う化学的酸化ステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記吸着ステップ中に水と混合する吸着剤の量が、前記評価ステップで得られた前記特性値に比例することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記吸着試薬の前記処理すべき水への注入を、前記評価ステップで得られた前記特性値が所定の閾値を超える時もしくは同等に達した時に、作動させることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記吸着ステップ中に水と混合する吸着試薬の量を調節する前記ステップを、前記処理すべき水を前記生存生物と接触させることから生じる、前記評価ステップで得られた前記特性値に応じて、行うことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記製造される処理水汚染物質の濃度を制御する制御ステップを含み、前記制御ステップは、前記処理水を前記生存生物と接触させることから生じた、前記評価ステップで得られた前記特性値に応じて、前記処理水汚染物質の濃度を表す1つの情報を決定するサブステップを含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記視覚的シグナルが蛍光であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記評価ステップもしくは複数の前記評価ステップをインサイチューで実施することを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記生存生物が遺伝子組換え水生生物であることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記水生生物が、両生類の幼生および遺伝子組換え魚類の幼魚から選ばれることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記生存生物が魚類および両生類を含む群に属することを特徴とする、請求項または10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の方法を実施するための水を処理する施設であって、
少なくとも1種の吸着試薬を前記処理すべき水に注入する注入手段を含む、吸着処理区域と、
その入り口が前記吸着処理区域の出口と通じており、かつ処理水を排出する手段および汚泥を抽出する手段を含む、固液分離区域と、
前記処理すべき水および/または前記処理水を、少なくとも1種の生存水生生物と接触させる区域であって、前記生存水生生物の少なくとも1種の特性値が前記処理すべき水および/または前記処理水の前記汚染物質の濃度と相関する、区域と、
前記特性値を連続的に評価する評価手段と、
前記評価ステップで得られた前記特性値に応じて、前記注入手段により、前記処理すべき水に注入する吸着試薬の量を調節する調節手段と
を含むことを特徴とする、水を処理する施設。
【請求項13】
処理すべき水を化学的酸化する手段をさらに含み、この手段が、前記吸着処理区域の上流に位置するオゾン処理タンク、UVランプ、および吸着処理区域の上流または吸着処理区域中に化学的酸化剤を注入する注入手段から選択される、請求項12に記載の施設。
【請求項14】
前記調節手段が、前記処理すべき水を前記生存生物と接触させることから生じる、前記評価手段により得られた前記特性値に応じて、前記処理すべき水と混合する吸着試薬の量を調節することを特徴とする、請求項12または13に記載の施設。
【請求項15】
前記処理水汚染物質の濃度を制御する制御手段を含み、前記制御手段は、前記処理水を前記生存生物と接触させることから生じる、前記評価手段により得られた前記特性値に応じて、前記処理水汚染物質の濃度を表す1つの情報を決定する手段を含むことを特徴とする、請求項12または13に記載の施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、都市廃水および工業廃水の両方の処理の分野である。
【0002】
より具体的には、本発明は、内分泌攪乱作用ならびに/または毒性および/もしくは遺伝毒性作用をもたらし得る汚染物質の含量を減少させるための、水を処理する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
都市廃水および/または工業廃水を処理する方法は、これらの廃水が含む有機汚染の主要部分を分解する。しかしながら、現代の方法の大半は、この水中に含まれる種々の有機化合物の濃度を減少させることを目的としており、分解副産物の産生の可能性を考慮していない。残留有機化合物およびこのような分解副産物は、水中のその濃度の純然たる値には反映されない、追加の相乗的または拮抗的生物学的作用を有することがある。
【0004】
これらの有機化合物のあるものは、「内分泌攪乱物質」または「内分泌攪乱作用を有する物質」として知られており、これらに曝露した生存種、特に浄水場からの排水を受ける環境中の水生生物に対して毒性であることがわかっている。これらの化合物は、ホルモン様特性を有する天然または人工の分子からなる。これらは、天然ホルモン受容体と結合するので、例えば、行動、タンパク質合成、分泌、分子輸送、生殖を制御する1種または複数種のホルモンプロセス、および他の生命プロセスを妨害する。その毒性、またさらに遺伝毒性作用は、生物ならびに曝露した個体の子孫に影響を及ぼし得る。
【0005】
環境保護のために、また結果として、ヒトの健康を保護するために、都市廃水および/または工業廃水中のこの内分泌攪乱および/または毒性および/または遺伝毒性作用を除去することが、この水を処理する方法の主要な目的となっている。
【0006】
そのため、これらの処理の目的の1つは、有機物を除去することである。ラインの最後の処理として一般的に適用される処理プロセスは、病原性微生物を除去することに加えて、これらの有機物質を最大限に除去することを強化してきた。
【0007】
従来の技術においては、塩素化化合物、オゾン、紫外線照射等を実施する、水を処理する種々の方法を提案している。特に、活性炭素としても知られる活性炭により、処理すべき水中に含まれる有機化合物を吸着するステップ、あるいは合成樹脂もしくはゼオライトなどの天然成分を使用して吸着および/または交換(イオン交換)するステップを実施する方法が知られている。これらの処理は時々、分解を促進するために、オゾン、過酸化水素または紫外線照射により有機化合物を酸化するステップと組み合わせられる。水中の内分泌攪乱物質を減少させるこれらの方法の効果は、複雑な、特に高価な実験室的測定により評価される。これらの分析の費用とは別に、その結果は、少なくとも1週間では入手不可能である。特にこの長い期間により、操作者による一連の水処理への迅速な応答が妨げられ、特に処理すべき水に注入する試薬の用量を、入水の品質に合わせて調節されることが妨げられる。結果として、また予防主義により、吸着試薬は高用量で注入され、これにより水を処理する方法の費用が大幅に上昇する。
【0008】
さらに、これらの分析は連続的に行うことができない。つまり、一定間隔で回収された試料のみが、これらの試験を受ける。そのため、得られる情報は、所与の時間の状況のみを反映するので、完全に信頼できるわけではない。すなわち、この情報は、決して連続的に真の水質を反映しない。
【0009】
この技術の別の欠点としては、いくつかの内分泌攪乱物質ならびに毒性および/または遺伝毒性化合物しか試験しないということである。現在、ヒトの健康および環境に影響を及ぼす恐れがある、これらの現象に関係する分子が数千あり、それらの全てがリストに挙げられているわけではない。さらに、特定の化合物は、それ自体は生物または環境に影響を及ぼさないが、他の化合物が存在すると健康および環境に特に悪影響を及ぼし得る。そのため、内分泌攪乱作用および/または毒性作用および/または遺伝毒性作用の存在および化合物毎の濃度を決定することを目的とする実験室的分析においては、この相乗効果を明らかにすることができない。
【0010】
これらの水中においては、生存動物を観察することに基づく代替方法を実施されているのは、このためである。これらの方法のいくつかは、このような観察から攪乱作用を推定するために、動物(ミジンコおよびマス幼魚など)の行動およびその変化を観察することに基づく。
【0011】
他の方法は、異常な死亡率を示す個体数を使用し、この観察と水中の毒性の可能性とを関連付けるものである。しかしながら、これらの方法は、種々のパラメータが関与し、全てが完全に制御されるわけではないので、完全にランダムなままである。そのため、これらの方法は、動物に行った観察を、水中の汚染物質化合物の存在の可能性と、明確に関連付けることはできない。さらに、これらのタイプの試験は、非常に高頻度の「偽陽性」の結果をもたらす。さらに、これらの観察の結果は、単純な用量−反応の関係にしたがって活用することはできない。さらに、これらの方法は、生物の一定のモニタリングを要するので、高価である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、特に、従来技術のこれらの欠点を克服することを目的とする。
【0013】
より具体的には、少なくとも一実施形態では、処理水中の内分泌攪乱ならびに/または毒性および/もしくは遺伝毒性作用を有する化合物の存在を、除去するまたは極めて少なく減少させることを可能にする、水を処理する方法を提供することが、本発明の目的である。
【0014】
少なくとも一実施形態では、数十分以内、またさらには瞬間的に、注入する試薬の用量を迅速に調節することが可能となる方法を実施することが、本発明の別の目的である。
【0015】
少なくとも一実施形態では、水の汚染の現実の状況を考慮した、水を処理する方法を実施することが、本発明のさらに別の目的である。
【0016】
少なくとも一実施形態では、実施するのが簡単な、水を処理する方法を実施することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
これらの目的および以下で明らかになる他の目的は、
− 前記処理すべき水を、一定量の少なくとも1種の吸着試薬と接触させて水と吸着試薬の混合物を製造する、吸着ステップと、
− 前記混合物を固液分離させ、処理水および汚泥(sludge)を製造する、固液分離ステップと
を含む、内分泌攪乱作用ならびに/または毒性および/もしくは遺伝毒性作用をもたらす可能性がある汚染物質の含量が減少するように、処理すべき水を処理する方法を用いることによって、達成される。
【0018】
本発明によれば、前記吸着ステップに先立っておよび/または前記固液分離のステップに続いて、前記処理すべき水および/または前記処理水をそれぞれ少なくとも1種の生存水生生物と接触させるステップを行い、前記生存生物の少なくとも1種の特性値が、前記処理すべき水および/または前記処理水の前記汚染物質の濃度と相関するとともに、
前記方法が、
− 前記特性値を連続的に評価する評価ステップと、
− 前記評価ステップで得られた前記値にしたがって、前記吸着ステップ中に水に混合する吸着試薬の量を調節するステップと
をさらに含む。
【0019】
このように、本発明は、毒性および/または遺伝毒性および/または内分泌攪乱作用を有する有機化合物の吸着ステップを、処理水または処理すべき水を生存生物と接触させることにより、これらの化合物を連続的およびリアルタイムで検出するステップと結びつけた、完全に新規で独創的なアプローチに依存している。内分泌攪乱および/または毒性および/または遺伝毒性作用を有する少なくとも1種の化合物の存在を検出するために生存生物を使用することにより、このような化合物を低濃度でさえ検出することが可能になる。これにより、現在の実験室的分析により行うことができない、種々の化合物の相乗効果から生じるような、任意の毒性または攪乱作用の可能性を明らかにすることも可能になる。最後に、これはまた、予測的方法で水の汚染の実態を反映する、有意な、信頼できる迅速な結果を提供する。
【0020】
生存生物により汚染を検出するこのステップは、特に吸着ステップの前(upstream、上流)に置く場合、内分泌攪乱および/または毒性および/または遺伝毒性作用の可能性を有する汚染物質化合物の存在を検出することを目的とする。これを使用して、特に処理すべき水中に主な汚染が発生している場合に、処理すべき水への吸着試薬の注入およびその量を制御し、それゆえこの量を自動的に調節することもできる。そのため、高用量の吸着試薬を処理すべき水に系統的に注入する必要はもはやない。これにより実質的な節約が可能になる。しかしながら、内分泌攪乱および/または毒性および/または遺伝毒性作用を有する化合物による水の汚染が重度である場合には、本発明の方法を使用して、適宜注入すべき試薬の量を増加させることができる。本発明の方法は、施設に入る水の量の変動に対する水を処理する方法の応答性を改善する。
【0021】
検出ステップを、水を処理する施設からの出口に置く場合、このステップを使用して水を処理する方法の効果、ならびに内分泌攪乱および/または毒性および/または遺伝毒性化合物を除去するまたは少なくともその濃度を減少させる能力を評価することができる。これにより、処理すべき水に注入する吸着試薬の量を調節するループを設定することも可能になる。実際、水の汚染が大きい場合、吸着試薬の量を過小評価する恐れがあり、内分泌攪乱および/または毒性および/または遺伝毒性作用を有する化合物の存在が持続し得る。この異常の検出により、処理水に注入すべき吸着試薬の量の自動的かつ迅速な補正が可能になる。これにより、汚染ピークが終わった場合に、再度いつ吸着試薬の用量を減少させることができるかを決定することも可能になる。
【0022】
そのため、本発明の方法は、廃水を処理するための解決策を提供する。一方では、この方法により、水を処理すること、ならびにヒトの健康および環境に有害な化合物を吸着するステップを通して、これらの化合物を排除するまたは少なくともこれらの化合物の水中の濃度を極めて減少させることが可能になる。他方で、この方法により、実施した方法の効率を評価し、処理すべき水に注入する吸着試薬の用量をより精密に調節することが可能になる。
【0023】
したがって、本発明の方法は、入水量の変動に対する応答性を高め、入水量にしたがって注入する吸着試薬の量を最適化する。
【0024】
本発明を実施するために適当な吸着試薬として挙げることができる例としては、粉末活性炭(PAC)、合成樹脂、ゼオライト等がある。好ましくは、吸着剤はPACである。
【0025】
本発明の興味深い変形では、本方法は、吸着ステップの前にまたは吸着ステップ中に化学的酸化剤の注入を行う化学的酸化ステップをさらに含み、注入すべき前記化学的酸化剤の量は、前記特性値を連続的に評価する前記評価ステップにより決定される。本発明を実施するのに適した化学的酸化剤として挙げることができる例としては、オゾン、空気および過酸化水素がある。好ましくは、使用する酸化剤は、単独または過酸化水素(H)の添加と組み合わせたオゾンである。別の実施形態は、オゾン、過酸化水素または酸化チタン(TiO)の注入と組み合わせた紫外線照射による、処理すべき水の前処理を含む。
【0026】
オゾンおよび過酸化水素などの酸化剤は、生存生物に対して「有害」であることが知られている。しかしながら、本発明者らは、酸化−吸着の連結により、酸化剤残留物を含まない水を製造することが可能になることを見出した。結果として、この酸化ステップは、生存生物に危険ではない。したがって、酸化剤を、吸着タンクに直接またはスタティックミキサーを介してタンクの上流に注入することができる。
【0027】
1つの有利な実施形態では、前記吸着ステップ中に水と混合する吸着剤の量は、前記評価ステップで得られた前記値に比例する。この実施形態により、吸着試薬の量を、処理すべき水の質に生じる変動に対して非常に正確に調節することが可能になる。したがって、使用する試薬の量が実質的に節約される。
【0028】
別の有用な実施形態では、前記吸着試薬の前記処理すべき水への注入を、前記評価ステップで得られた前記値が所定の閾値を超える時もしくは同等に達した時に、作動させる。
【0029】
この実施形態により、注入すべき吸着試薬および/または化学的酸化剤の量を、処理すべき水の質に適合させることも可能になる。注入を作動させる閾値の設定は、許容される汚染閾値を定義する基準の存在と関連付けることができる。したがって、魚類の性的種分化(sexual speciation)または両生類の変態(metamorphosis)への確立した生理学的影響の閾値にしたがって、作動閾値を設定することが可能である。
【0030】
好ましくは、前記吸着ステップ中に水と混合する吸着試薬の量を調節する前記ステップを、前記処理すべき水を前記生存生物と接触させることから生じる、前記評価ステップで得られた前記値に応じて行う。
【0031】
この特性を使用して、水を処理する施設に入る水の質にしたがって、水に注入すべき吸着試薬および化学試薬の用量を調節することができる。そのため、この特性は、少なくとも1種の生存生物により内分泌攪乱および/または毒性および/または遺伝毒性作用を有する化合物を検出するステップを、これらの化合物を吸着するステップの前で行う場合に、特に重要である。
【0032】
有利には、本発明の方法は、製造する前記処理水の質を制御する制御ステップを含み、前記制御ステップは、前記処理水を前記生存生物と接触させることから生じた、前記評価ステップで得られた前記値に応じて、前記処理水の質を表す1つの情報を決定するサブステップを含む。
【0033】
本発明の方法により、処理水が施設から出る際の質および実施した方法の性能を評価するために、処理水を連続的に評価することも可能になる。質についてのデータのこれらの項目は、施設の質の定期的トラッキングおよび実施した方法の性能の評価に重要である。
【0034】
有利には、前記特性は、前記生存生物により発せられる視覚的シグナルであり、その強度は、定量化され、前記処理すべき水の前記汚染物質の濃度と関連付けることができる。
【0035】
視覚的シグナルの測定およびその強度の定量化は、特に信頼できる既存の装置により容易に実施することができる。したがって、本発明の方法により、明確に同定可能で定量可能なシグナルで、水の汚染を表すことが可能になる。
【0036】
好ましくは、前記視覚的シグナルは蛍光である。
【0037】
この実施形態では、蛍光は、少なくとも1種の水生生物により発せられ、この生物のゲノムは少なくとも1種の内分泌攪乱および/または毒性および/または遺伝毒性化合物の存在に反応するよう組み換えられたものである。蛍光の発光は、内分泌攪乱および/または毒性および/または遺伝毒性化合物の濃度に比例するか、あるいは水中のその現実の濃度を反映することなくこのような化合物の存在と互いに関連し得るかのいずれかであり得る。さらに、この蛍光を、魚類の性的種分化(OECD試験229+230)または両生類の変態(OECD試験231)のいずれかへの生理学的影響の閾値として知られている確立した閾値と関連付けることができる。
【0038】
好ましい実施形態では、前記評価ステップまたは複数の前記評価ステップをインサイチューで実施する。したがって、本発明の方法を、既存の施設で容易に実施することができる。さらに、こうして遺伝子組換え水生生物を散在させる危険性が除去される。
【0039】
有利には、前記水生生物は遺伝子組換え水生生物である。
【0040】
好ましくは、前記水生生物は、胚性状態(embryonic state)にある。このような胚性の水生生物は、部分的に透明であるという利点を有する。これにより、蛍光が生じた場合に、それを読み取ることが容易になる。胚性の水生生物を使用することにより、特に胎児および胚にのみ有害作用をもたらす化合物を検出することが可能になる。これにより、これらの汚染物質に供された胚の発達を観察し、汚染レベルを生物への正確な作用と関連付けることも可能になる。好ましくは、胚性の水生生物は、任意の有害化合物の水中濃度がいかなるものであっても、この有害化合物の検出を可能にする。胚は皮質を有さず、それゆえ痛みを感じないので、それゆえ、これは動物実験の倫理的代替となる。少用量でさえ、生存生物の発達および機能に影響を及ぼす特定の特徴を有するこれらの化合物について内分泌攪乱物質の存在を検出しなければならない場合に、この態様は非常に重要である。さらに、この検出は、胚の生理学的発達についての知見を通して、将来の成体期での奇形の可能性を予測することを可能にするという特性を有する。
【0041】
より好ましい実施形態では、前記生存生物は、魚類および両生類を含む群に属する。実際、これらの生物は、内分泌攪乱物質に特に敏感であると考えられる。両生類幼生においては、性転換の現象が既に観察されている。
【0042】
本発明の別の態様はまた、
− 少なくとも1種の吸着試薬を処理すべき水に注入する注入手段を含む吸着処理区域と、
− 前記吸着処理区域の出口と通じる入口を有し、かつ処理水を排出する手段および汚泥を抽出する手段を含む、固液分離区域と、
− 前記処理すべき水および/または前記処理水を、前記処理すべき水および/または前記処理水の前記汚染物質の濃度と相関する少なくとも1種の特性値を有する、少なくとも1種の生存水生生物と接触させる区域と、
− 前記特性値を連続的に評価する評価手段と、
− 前記評価ステップで得られた前記値に応じて、前記注入手段により、前記処理すべき水に注入する吸着試薬の量を調節する調節手段と
を含むことを特徴とする、本発明の方法を実施するための水を処理する施設を含む。
【0043】
1つの変形では、本発明の施設はまた、処理すべき水を化学的酸化する手段を含み、これらの手段は、前記吸着処理区域の上流に位置するオゾン処理タンク、UVランプ、および吸着処理区域の上流または吸着処理区域中に化学的酸化剤を注入する手段から選択される。
【0044】
したがって、本発明の施設により、処理すべき水または処理水に注入すべき吸着試薬、またあるいは化学的酸化剤の量を、内分泌攪乱および/または毒性および/または遺伝毒性化合物による汚染のレベルに対して調節することが可能になる。この施設により、施設からの出口で、処理水に実施した方法の効果を評価することも可能になる。
【0045】
有利な実施形態では、前記調節手段は、前記処理すべき水を前記生存生物と接触させることから生じた、前記評価手段により得られた前記値に応じて、前記処理すべき水と混合する吸着試薬の量を調節する。
【0046】
この実施形態により、吸着試薬の量を入水中の汚染物質化合物の量に対して非常に正確に調節することが可能になる。このようにして、水の処理はより効率的になる。同時に、この実施形態は、水の汚染が低い場合に、予防主義により指示される試薬の無駄遣いを排除する。
【0047】
好ましくは、本発明の施設は、前記処理水の質を点検する手段を含み、前記制御手段は、前記処理水を前記生存生物と接触させることから生じた、前記評価する手段により得られた前記値に応じて、前記処理水の質を表す1つの情報を決定する手段を含む。
【0048】
この特性により、第一に、処理水、すなわち、施設からの出口での水の質にしたがって、処理すべき水に注入すべき吸着試薬の量を調節および制御するループを設定することが可能になる。これにより、水中に存在する汚染物質ならびにその健康および環境への影響の理解に有用なデータを集めることや、実施した方法の効率を評価することも可能になる。これにより、出口の水が環境への分配、またあるいは再利用に許容される質のものであることを確かめることも可能になる。
【0049】
本発明の他の特徴および利点は、単純で例示的かつ非網羅的な例として提示される、好ましい実施形態についての以下の説明および添付の図面から、より明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】本発明の方法を実施する施設の一実施形態のブロック図である。
図2】本発明の方法を実施する施設の別の実施形態のブロック図である。
図3】エストロゲンホルモンの測定に基づく本発明の方法の検定試験の結果を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明の一般原則としては、水中の内分泌攪乱および/または毒性および/または遺伝毒性化合物の濃度がいかなるものであっても、その存在を検出することができる、水生の遺伝子組換え生存生物の使用による。この汚染の検出およびその定量化により、水を処理する方法の性能レベル、ならびに特に処理すべき水に注入する吸着試薬、またあるいは酸化剤の量を、施設に入る水の質に合わせて非常に迅速に調節することが可能になる。そのため、この方法により、第一段階で、使用する試薬の量を実質的に節約すること、および、より高品質の水を製造することが可能になる。この方法により、ヒト、動物の健康または環境に有害な化合物の存在を迅速に、正確にかつ信頼して検出することも可能になる。この方法はさらに、これらの化合物の生存生物への作用の機構のよりよい理解をもたらす。
【0052】
[1.本発明の第1の実施形態の説明]
ここで図1を参照しながら、本発明の方法を実施する施設の第1の実施形態を提示する。
【0053】
処理すべき水は、パイプ1に入る。処理すべき水の一部は、パイプ21により、上流の分析セル2に転送される。この分析セル2は、処理すべき水を含む槽を有し、ここでは市販の両生類の幼生または遺伝子組換え魚類の幼魚(GMOクラス1)などの水生生物22の胚(embryos of aquatic organism 22)が移動している。これらの胚22は、これらが位置している水中に存在する内分泌攪乱および/または毒性および/または遺伝毒性化合物と接触すると、蛍光を発する。これらの遺伝子組換え生物が外に逃げるのを防ぐために、上流の分析セル2を閉じ込め用チャンバー2a(図1中にダッシュ記号で示す)により隔離することができることに留意されたい。好ましくは、これらの水生生物により発せられる蛍光の強度は、内分泌攪乱および/または毒性および/または遺伝毒性化合物の量に比例する。
【0054】
セル2はまた、これらの胚22により発せられる蛍光を測定することができるセンサーを有する。得られた測定値を、制御システム(図示せず)により統合する。
【0055】
内分泌攪乱および/または毒性および/または遺伝毒性化合物の含量が減少するように水を処理するのに適した一定量の吸着試薬(本実施形態では粉末活性炭(PAC)である)を、処理すべき水に導入する。吸着試薬のこの注入は、ここに記載する実施形態では、撹拌手段(図示せず)を備える吸着タンク4の上流に仕組まれたパイプ3を用いて行う。他の実施形態では、この注入をタンク4に直接行うことができることに留意されたい。
【0056】
この吸着タンク4では、水を約10分間、吸着試薬と接触させる。この吸着ステップを、好ましくは酸化ステップと結合する。記載する実施形態の枠組みでは、結合した酸化は、タンク4の上流のオンライン注入によるか、またはパイプ4b(図1中にダッシュ記号で示す)およびスタティックミキサー(図示せず)によるかのいずれかを用いた、ディフューザー(図示せず)に接続したパイプ4aによりタンク4に直接行うことができるオゾンの注入によって得られる。
【0057】
この吸着ステップにより、吸着試薬の粒子上に、内分泌攪乱および/または毒性および/または遺伝毒性作用をおそらく有する有機化合物の大部分を固定することが可能になる。これにより、生命および胚発達に対して有害であり得る酸化剤の残留物を除去することもさらに可能になる。
【0058】
吸着ステップ後、水は、凝集剤(coagulant)51を注入するタンク5における凝集(coagulation)のステップを受ける。この後に、フロック形成剤(flocculent)61を注入するタンク6におけるフロック形成(flocculation)のステップが続く。これらのステップは、当業者に周知の任意の方法により行う。次いで、水を、沈殿汚泥10から清澄化した処理水9を分離することができる層状デカンターまたは分離装置7などの固体/液体分離システムに運ぶ。好ましくは粒状のまたは機械的な濾過システムなどの任意のタイプの固液分離システムを使用することが可能であることに留意されたい。
【0059】
吸着試薬を含む汚泥の大部分を、パイプ12によりタンク4に送還する。これにより、吸着試薬の大部分を再利用することが可能になる。これは、本方法の費用を減らすのに役立つ。その部分のためのパイプ10により抽出された汚泥の部分を、好ましくは水の生物学的処理のステップまたは汚泥処理のいずれかに送る。
【0060】
清澄化した水9の一部を回収し、セル2と同一の構造を有し、同様に閉じ込め用チャンバー8aにより保護され得るセル8に向けて連続的に運ぶ。このセルはまた、内分泌攪乱および/または毒性および/または遺伝毒性汚染物質と接触すると蛍光を発するように、遺伝子組換えした水生生物(OGMクラス1)82の胚を含む容器を含む。これらの胚82は、好ましくは胚22と同一種のものである。セル8もまた、これらの胚82により発せられる蛍光を測定することができるセンサーを含む。得られた測定値を、制御システム(図示せず)により統合する。
【0061】
制御システムは、恒久的または定期的に、セル2および8のセンサーにより作られた測定値に関して、蛍光の減少率を計算する。この率は、予測的方法で、毒性、遺伝毒性または内分泌攪乱作用を有する化合物の濃度の減少率を表す。
【0062】
制御システムは、セル8を用いて測定した蛍光と、それを超えると生理学的影響が観察され得る、このような化合物の濃度に対応する蛍光の基準閾値を比較する。制御システムは、セル8により測定した蛍光が基準閾値と同等もしくはそれ以上であることを検出すると、一定量の新規の吸着試薬の分配をほぼ即座に作動させて、処理すべき水中の吸着試薬の濃度を増加させる。
【0063】
セル2および8は、測定された蛍光の強度の結果をもたらす。これらの強度値は、図3に示すように、単純な用量−反応関係にしたがって、処理すべき水に注入すべき吸着試薬の量に関連する。水生生物の胚に行った観察に応じて、それを超えると生理学的状態または胚の発達への確立した有害作用が観察される、蛍光の閾値を決定することが可能である。これらの作用は、奇形、胚死亡率、性転換障害、成長遅延等に変化し得る。水中の化合物の毒性についてのこの理解の改善は、従来技術の方法では不可能であった。
【0064】
[2.本発明の第2の実施形態の説明]
図2を参照しながら、本発明による第2の実施形態を提示する。
【0065】
処理すべき水は、パイプ10に入る。処理すべき水の一部は、パイプ210によって上流の分析セル20に転送される。この分析セル20は、両生類の幼生または遺伝子組換え魚類の幼魚などの水生生物220の胚が移動する処理すべき水を含む槽を含む。このセルはまた、これらの胚220により発せられる蛍光を検出、測定および記録することができる、センサーなどの、蛍光を検出する手段を備える。これらの検出する手段を、制御システム(図示せず)に取り付ける。
【0066】
次いで、処理すべき水10は、主に使用された吸着試薬30であり、必要に応じて、新規の吸着試薬31によって補完される、この場合PACの吸着試薬と接触させるために、予備接触タンクとして知られる撹拌手段41を備える吸着タンク40に入る。
【0067】
この吸着ステップを、好ましくは酸化ステップと結合する。記載する実施形態の文脈では、結合した酸化は、パイプ42を通してタンク40に直接オゾンを注入することにより行う。別の実施形態では、酸化剤の注入を、タンク40の上流で注入することにより行うことができる。
【0068】
スタティックミキサー50(または撹拌タンク)を用いて行うことができ、凝集試薬51を注入する、凝集のステップを受ける前に、必要に応じて、混合タンク45中で、この予備接触ステップを継続することができる。予備接触タンク40とスタティックミキサー30との間の混合タンク45の存在は、任意であることに留意する。凝集した水を、フローガイド62を含む、フロック形成剤61を注入するフロック形成槽60に運ぶ。同時に、バラスト110を注入する。このバラストは、微細砂または他の任意のバラスト材料であり得る。この方法は、バラストフロックを用いたフロック形成/デカンテーションとして知られている。
【0069】
次いで、水を、汚泥100から清澄化した処理水90を分離するために使用する層状デカンター70に運ぶ。この汚泥100を、汚泥からバラストを分離する構造、この場合は液体サイクロン110に送り、次いで濃縮工程35を受ける。こうして濃縮された汚泥32を2つの部分に分離する。吸着試薬を含む大部分30を、予備接触タンク40の、施設の前部に戻す。抽出汚泥の部分30を、好ましくは水の生物学的処理のステップまたは汚泥処理手順のいずれかに送る。
【0070】
液体サイクロンからの出口で回収したバラストを、その一部について、フロック形成槽60中に存在するフローガイドに再度注入する。
【0071】
清澄化した水90の一部を採り上げ、その構造がセル20と同一である、セル80に連続的に運ぶ。
【0072】
制御システム(図示せず)は、処理すべき水および処理水で測定した蛍光を検出する手段により発せられるシグナルを統合し、蛍光の減少率を計算し、これを基準減少率と比較し、観察された減少率が基準率より小さい場合には、一定量の新規のPACの分配を作動させる。したがって、発せられるシグナルおよび本方法の検定により、制御システムは、特に新規の試薬31に関して、吸着試薬を不必要に浪費しないように、注入すべき吸着試薬の量を修正することができる。
【0073】
[3.検定試験]
処理水中の内分泌攪乱物質の許容される閾値を決定するために、本発明の方法を実施する施設の検定試験を行った。この検定試験により、水の自然蛍光および遺伝子の正常機能に関する遺伝子組換え水生生物の基底蛍光を、同生物が内分泌攪乱および/または毒性および/または遺伝毒性汚染物質の存在を検出した場合に発する蛍光と区別することも可能になる。水の蛍光および遺伝子組換え水生生物の基底蛍光は、汚染物質が存在する場合に測定されるシグナルからそれを控除するために、評価しなければならないバックグラウンドノイズに例えることができる。
【0074】
選択する攪乱物質は、例えば、都市廃水中に見られるエストロゲンである。より具体的には、処理水中の許容される、幼生に生理学的作用をもたらさない最大濃度を決定するために、遺伝子組換え両生類の幼生を、既知の増加する濃度のエストロゲンの存在下に置く。これらの濃度は、測定される蛍光強度に関連していた。これらの結果を図3に示す。
【0075】
当然、攪乱物質としてエストロゲンの代わりに、エストロゲンホルモン中枢に影響を及ぼす他の任意の分子を使用することも可能である。同様に、甲状腺への影響を有する他の任意の分子を使用することが可能である。
【0076】
このグラフを読むと、両生類幼生は、非常に低用量のエチニルエストラジオール(EE2)(2.5×10−10mol/L)などのエストロゲンに敏感であり、検出可能で定量化可能な強度の蛍光を発することが観察され得る。エストロゲン濃度が2×10−9mol/L以後に生理学的反転をもたらすことが観察される。この濃度は、測定される蛍光強度と関連する。そのため、対応する蛍光強度は、処理すべき水に注入する吸着試薬の量の調節を作動させる所定の閾値として、記録することができる。
【0077】
[4.オゾンを注入しない本発明の方法の性能]
本発明の方法の性能を、6ヵ月の期間にわたって、施設からの出口の処理水の試料を定期的に回収することにより、都市廃水の処理に関して評価した。吸着ステップで用いられる吸着試薬は、10ppmの濃度のNorit(登録商標)による粉末タイプの粉末活性炭である。使用する凝集剤は、Feで表される4〜5mg/Lの濃度の塩化鉄FeClである。
【0078】
ここで水を処理する方法の性能特性を、以下の表1に要約する。
【表1】
【0079】
表1によると、本発明の方法により、ここで上に言及した水生生物の胚に適した清澄な高品質の水を得ることが可能になる。
【0080】
内分泌攪乱物質を除去するための、本発明の方法の性能も評価した。アテノロール、ベンゾトリアゾール、ヒドロクロロチアジド、ベンザフィブラート(benzafibrate)、カルバマゼピン、クラリスロマイシン、ジクロフェナク、トリメトプリム、ベンラファキシン、メトプロロール、メチル−ベンゾトリアゾール、メフェナム酸およびプリミドンなどの健康への有害作用で知られているいくつかの分子を、処理すべき水および処理水中で探索し、測定した。概して腐食性であるベンゾトリアゾールを除いて、他の物質は、実験室的分析で一般的に探索される既知の内分泌攪乱物質である。
【0081】
除去性能は、アテノロール、ベンゾトリアゾール(bentriazole)およびヒドロクロロチアゾール(hydrochlorothiazole)については75%超であり、他の分子については80%超である。これらの結果により、水から内分泌攪乱および/または毒性および/または遺伝毒性汚染物質を除去する本発明の方法の効果が証明される。
【0082】
図1および図2に示す施設で、同様の結果が得られたことに留意されたい。
【0083】
[5.オゾンを注入する本発明の方法の性能]
オゾンを注入する本発明の方法の性能を、6ヵ月の期間(6月〜12月)にわたって、施設からの出口の処理水の65個の試料を定期的に回収することにより、都市廃水の処理に関して評価した。吸着ステップで用いられる吸着試薬は、10ppmの濃度のNorit(登録商標)による粉末活性炭である。使用する凝集剤は、Feで表すと4〜5mg/Lの濃度の塩化鉄FeClである。この場合、使用する酸化剤はオゾンであり、これを1〜2mg/lの用量で接触タンクに注入する。
【0084】
内分泌攪乱物質を除去するためにオゾンを注入する本発明の方法の性能レベルを評価した。健康における有害な役割で知られている7つの分子を、処理すべき水および処理水中で探索し、測定した。腐食剤であるベンゾトリアゾールを除いて、他の物質は、実験室的分析で一般的に探索される既知の内分泌攪乱物質である。これらの分析の結果を、以下の表2に要約する。
【表2】
【0085】
図1および図2に示す施設で、同様の結果が得られた。
【0086】
これらの試験の結果によれば、これらの物質の除去率は概して80%の値を超えるので、本発明の方法は、特に効率的に内分泌攪乱および/または毒性および/または遺伝毒性化合物の含量を減少させる。
【0087】
したがって、本発明の方法により、環境的危険をもたらさず、その後の処理を受けることが可能な水を製造することが可能になる。
【0088】
[変形]
本発明の施設の1つの変形では、セル8のみ実装される。そのため、吸着試薬の量の制御は、処理すべき水に注入する吸着試薬および酸化剤の量を、出口で分析した水の質に合わせて調節することを可能にする調節および制御ループにより行う。この代替により、施設の故障の可能性を検出および軽減することが可能になる。
【0089】
別の変形では、セル2のみ実装される。そのため、吸着試薬の量を、入水量によってのみ制御するので、この水を処理する方法は、処理すべき水の質の変動に適合させることができる。
【符号の説明】
【0090】
1 パイプ
2 分析セル
2a 閉じ込め用チャンバー
3 パイプ
4 吸着タンク
4a パイプ
4b パイプ
5 タンク
6 タンク
7 分離装置
8 セル
8a 閉じ込め用チャンバー
9 処理水
10 パイプ
12 パイプ
20 分析セル
21 パイプ
22 水生生物
30 使用された吸着試薬
31 新規の吸着試薬
32 濃縮された汚泥
35 濃縮工程
40 吸着タンク
41 撹拌手段
42 パイプ
45 混合タンク
50 スタティックミキサー
51 凝集剤
60 フロック形成槽
61 フロック形成剤
62 フローガイド
70 層状デカンター
80 セル
81 パイプ
82 遺伝子組換えした水生生物
90 処理水
100 汚泥
110 液体サイクロン
210 パイプ
220 水生生物
810 パイプ
820 遺伝子組換えした水生生物
図1
図2
図3