【課題を解決するための手段】
【0017】
これらの目的および以下で明らかになる他の目的は、
− 前記処理すべき水を、一定量の少なくとも1種の吸着試薬と接触させて水と吸着試薬の混合物を製造する、吸着ステップと、
− 前記混合物を固液分離させ、処理水および汚泥(sludge)を製造する、固液分離ステップと
を含む、内分泌攪乱作用ならびに/または毒性および/もしくは遺伝毒性作用をもたらす可能性がある汚染物質の含量が減少するように、処理すべき水を処理する方法を用いることによって、達成される。
【0018】
本発明によれば、前記吸着ステップに先立っておよび/または前記固液分離のステップに続いて、前記処理すべき水および/または前記処理水をそれぞれ少なくとも1種の生存水生生物と接触させるステップを行い、前記生存生物の少なくとも1種の特性値が、前記処理すべき水および/または前記処理水の前記汚染物質の濃度と相関するとともに、
前記方法が、
− 前記特性値を連続的に評価する評価ステップと、
− 前記評価ステップで得られた前記値にしたがって、前記吸着ステップ中に水に混合する吸着試薬の量を調節するステップと
をさらに含む。
【0019】
このように、本発明は、毒性および/または遺伝毒性および/または内分泌攪乱作用を有する有機化合物の吸着ステップを、処理水または処理すべき水を生存生物と接触させることにより、これらの化合物を連続的およびリアルタイムで検出するステップと結びつけた、完全に新規で独創的なアプローチに依存している。内分泌攪乱および/または毒性および/または遺伝毒性作用を有する少なくとも1種の化合物の存在を検出するために生存生物を使用することにより、このような化合物を低濃度でさえ検出することが可能になる。これにより、現在の実験室的分析により行うことができない、種々の化合物の相乗効果から生じるような、任意の毒性または攪乱作用の可能性を明らかにすることも可能になる。最後に、これはまた、予測的方法で水の汚染の実態を反映する、有意な、信頼できる迅速な結果を提供する。
【0020】
生存生物により汚染を検出するこのステップは、特に吸着ステップの前(upstream、上流)に置く場合、内分泌攪乱および/または毒性および/または遺伝毒性作用の可能性を有する汚染物質化合物の存在を検出することを目的とする。これを使用して、特に処理すべき水中に主な汚染が発生している場合に、処理すべき水への吸着試薬の注入およびその量を制御し、それゆえこの量を自動的に調節することもできる。そのため、高用量の吸着試薬を処理すべき水に系統的に注入する必要はもはやない。これにより実質的な節約が可能になる。しかしながら、内分泌攪乱および/または毒性および/または遺伝毒性作用を有する化合物による水の汚染が重度である場合には、本発明の方法を使用して、適宜注入すべき試薬の量を増加させることができる。本発明の方法は、施設に入る水の量の変動に対する水を処理する方法の応答性を改善する。
【0021】
検出ステップを、水を処理する施設からの出口に置く場合、このステップを使用して水を処理する方法の効果、ならびに内分泌攪乱および/または毒性および/または遺伝毒性化合物を除去するまたは少なくともその濃度を減少させる能力を評価することができる。これにより、処理すべき水に注入する吸着試薬の量を調節するループを設定することも可能になる。実際、水の汚染が大きい場合、吸着試薬の量を過小評価する恐れがあり、内分泌攪乱および/または毒性および/または遺伝毒性作用を有する化合物の存在が持続し得る。この異常の検出により、処理水に注入すべき吸着試薬の量の自動的かつ迅速な補正が可能になる。これにより、汚染ピークが終わった場合に、再度いつ吸着試薬の用量を減少させることができるかを決定することも可能になる。
【0022】
そのため、本発明の方法は、廃水を処理するための解決策を提供する。一方では、この方法により、水を処理すること、ならびにヒトの健康および環境に有害な化合物を吸着するステップを通して、これらの化合物を排除するまたは少なくともこれらの化合物の水中の濃度を極めて減少させることが可能になる。他方で、この方法により、実施した方法の効率を評価し、処理すべき水に注入する吸着試薬の用量をより精密に調節することが可能になる。
【0023】
したがって、本発明の方法は、入水量の変動に対する応答性を高め、入水量にしたがって注入する吸着試薬の量を最適化する。
【0024】
本発明を実施するために適当な吸着試薬として挙げることができる例としては、粉末活性炭(PAC)、合成樹脂、ゼオライト等がある。好ましくは、吸着剤はPACである。
【0025】
本発明の興味深い変形では、本方法は、吸着ステップの前にまたは吸着ステップ中に化学的酸化剤の注入を行う化学的酸化ステップをさらに含み、注入すべき前記化学的酸化剤の量は、前記特性値を連続的に評価する前記評価ステップにより決定される。本発明を実施するのに適した化学的酸化剤として挙げることができる例としては、オゾン、空気および過酸化水素がある。好ましくは、使用する酸化剤は、単独または過酸化水素(H
2O
2)の添加と組み合わせたオゾンである。別の実施形態は、オゾン、過酸化水素または酸化チタン(TiO
2)の注入と組み合わせた紫外線照射による、処理すべき水の前処理を含む。
【0026】
オゾンおよび過酸化水素などの酸化剤は、生存生物に対して「有害」であることが知られている。しかしながら、本発明者らは、酸化−吸着の連結により、酸化剤残留物を含まない水を製造することが可能になることを見出した。結果として、この酸化ステップは、生存生物に危険ではない。したがって、酸化剤を、吸着タンクに直接またはスタティックミキサーを介してタンクの上流に注入することができる。
【0027】
1つの有利な実施形態では、前記吸着ステップ中に水と混合する吸着剤の量は、前記評価ステップで得られた前記値に比例する。この実施形態により、吸着試薬の量を、処理すべき水の質に生じる変動に対して非常に正確に調節することが可能になる。したがって、使用する試薬の量が実質的に節約される。
【0028】
別の有用な実施形態では、前記吸着試薬の前記処理すべき水への注入を、前記評価ステップで得られた前記値が所定の閾値を超える時もしくは同等に達した時に、作動させる。
【0029】
この実施形態により、注入すべき吸着試薬および/または化学的酸化剤の量を、処理すべき水の質に適合させることも可能になる。注入を作動させる閾値の設定は、許容される汚染閾値を定義する基準の存在と関連付けることができる。したがって、魚類の性的種分化(sexual speciation)または両生類の変態(metamorphosis)への確立した生理学的影響の閾値にしたがって、作動閾値を設定することが可能である。
【0030】
好ましくは、前記吸着ステップ中に水と混合する吸着試薬の量を調節する前記ステップを、前記処理すべき水を前記生存生物と接触させることから生じる、前記評価ステップで得られた前記値に応じて行う。
【0031】
この特性を使用して、水を処理する施設に入る水の質にしたがって、水に注入すべき吸着試薬および化学試薬の用量を調節することができる。そのため、この特性は、少なくとも1種の生存生物により内分泌攪乱および/または毒性および/または遺伝毒性作用を有する化合物を検出するステップを、これらの化合物を吸着するステップの前で行う場合に、特に重要である。
【0032】
有利には、本発明の方法は、製造する前記処理水の質を制御する制御ステップを含み、前記制御ステップは、前記処理水を前記生存生物と接触させることから生じた、前記評価ステップで得られた前記値に応じて、前記処理水の質を表す1つの情報を決定するサブステップを含む。
【0033】
本発明の方法により、処理水が施設から出る際の質および実施した方法の性能を評価するために、処理水を連続的に評価することも可能になる。質についてのデータのこれらの項目は、施設の質の定期的トラッキングおよび実施した方法の性能の評価に重要である。
【0034】
有利には、前記特性は、前記生存生物により発せられる視覚的シグナルであり、その強度は、定量化され、前記処理すべき水の前記汚染物質の濃度と関連付けることができる。
【0035】
視覚的シグナルの測定およびその強度の定量化は、特に信頼できる既存の装置により容易に実施することができる。したがって、本発明の方法により、明確に同定可能で定量可能なシグナルで、水の汚染を表すことが可能になる。
【0036】
好ましくは、前記視覚的シグナルは蛍光である。
【0037】
この実施形態では、蛍光は、少なくとも1種の水生生物により発せられ、この生物のゲノムは少なくとも1種の内分泌攪乱および/または毒性および/または遺伝毒性化合物の存在に反応するよう組み換えられたものである。蛍光の発光は、内分泌攪乱および/または毒性および/または遺伝毒性化合物の濃度に比例するか、あるいは水中のその現実の濃度を反映することなくこのような化合物の存在と互いに関連し得るかのいずれかであり得る。さらに、この蛍光を、魚類の性的種分化(OECD試験229+230)または両生類の変態(OECD試験231)のいずれかへの生理学的影響の閾値として知られている確立した閾値と関連付けることができる。
【0038】
好ましい実施形態では、前記評価ステップまたは複数の前記評価ステップをインサイチューで実施する。したがって、本発明の方法を、既存の施設で容易に実施することができる。さらに、こうして遺伝子組換え水生生物を散在させる危険性が除去される。
【0039】
有利には、前記水生生物は遺伝子組換え水生生物である。
【0040】
好ましくは、前記水生生物は、胚性状態(embryonic state)にある。このような胚性の水生生物は、部分的に透明であるという利点を有する。これにより、蛍光が生じた場合に、それを読み取ることが容易になる。胚性の水生生物を使用することにより、特に胎児および胚にのみ有害作用をもたらす化合物を検出することが可能になる。これにより、これらの汚染物質に供された胚の発達を観察し、汚染レベルを生物への正確な作用と関連付けることも可能になる。好ましくは、胚性の水生生物は、任意の有害化合物の水中濃度がいかなるものであっても、この有害化合物の検出を可能にする。胚は皮質を有さず、それゆえ痛みを感じないので、それゆえ、これは動物実験の倫理的代替となる。少用量でさえ、生存生物の発達および機能に影響を及ぼす特定の特徴を有するこれらの化合物について内分泌攪乱物質の存在を検出しなければならない場合に、この態様は非常に重要である。さらに、この検出は、胚の生理学的発達についての知見を通して、将来の成体期での奇形の可能性を予測することを可能にするという特性を有する。
【0041】
より好ましい実施形態では、前記生存生物は、魚類および両生類を含む群に属する。実際、これらの生物は、内分泌攪乱物質に特に敏感であると考えられる。両生類幼生においては、性転換の現象が既に観察されている。
【0042】
本発明の別の態様はまた、
− 少なくとも1種の吸着試薬を処理すべき水に注入する注入手段を含む吸着処理区域と、
− 前記吸着処理区域の出口と通じる入口を有し、かつ処理水を排出する手段および汚泥を抽出する手段を含む、固液分離区域と、
− 前記処理すべき水および/または前記処理水を、前記処理すべき水および/または前記処理水の前記汚染物質の濃度と相関する少なくとも1種の特性値を有する、少なくとも1種の生存水生生物と接触させる区域と、
− 前記特性値を連続的に評価する評価手段と、
− 前記評価ステップで得られた前記値に応じて、前記注入手段により、前記処理すべき水に注入する吸着試薬の量を調節する調節手段と
を含むことを特徴とする、本発明の方法を実施するための水を処理する施設を含む。
【0043】
1つの変形では、本発明の施設はまた、処理すべき水を化学的酸化する手段を含み、これらの手段は、前記吸着処理区域の上流に位置するオゾン処理タンク、UVランプ、および吸着処理区域の上流または吸着処理区域中に化学的酸化剤を注入する手段から選択される。
【0044】
したがって、本発明の施設により、処理すべき水または処理水に注入すべき吸着試薬、またあるいは化学的酸化剤の量を、内分泌攪乱および/または毒性および/または遺伝毒性化合物による汚染のレベルに対して調節することが可能になる。この施設により、施設からの出口で、処理水に実施した方法の効果を評価することも可能になる。
【0045】
有利な実施形態では、前記調節手段は、前記処理すべき水を前記生存生物と接触させることから生じた、前記評価手段により得られた前記値に応じて、前記処理すべき水と混合する吸着試薬の量を調節する。
【0046】
この実施形態により、吸着試薬の量を入水中の汚染物質化合物の量に対して非常に正確に調節することが可能になる。このようにして、水の処理はより効率的になる。同時に、この実施形態は、水の汚染が低い場合に、予防主義により指示される試薬の無駄遣いを排除する。
【0047】
好ましくは、本発明の施設は、前記処理水の質を点検する手段を含み、前記制御手段は、前記処理水を前記生存生物と接触させることから生じた、前記評価する手段により得られた前記値に応じて、前記処理水の質を表す1つの情報を決定する手段を含む。
【0048】
この特性により、第一に、処理水、すなわち、施設からの出口での水の質にしたがって、処理すべき水に注入すべき吸着試薬の量を調節および制御するループを設定することが可能になる。これにより、水中に存在する汚染物質ならびにその健康および環境への影響の理解に有用なデータを集めることや、実施した方法の効率を評価することも可能になる。これにより、出口の水が環境への分配、またあるいは再利用に許容される質のものであることを確かめることも可能になる。
【0049】
本発明の他の特徴および利点は、単純で例示的かつ非網羅的な例として提示される、好ましい実施形態についての以下の説明および添付の図面から、より明確になる。