特許第6309239号(P6309239)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6309239ポリマーおよびブルー相液晶を含む複合体、複合体を調製する方法、ならびに複合体を含む液晶ディスプレイデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6309239
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】ポリマーおよびブルー相液晶を含む複合体、複合体を調製する方法、ならびに複合体を含む液晶ディスプレイデバイス
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1334 20060101AFI20180402BHJP
【FI】
   G02F1/1334
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-219945(P2013-219945)
(22)【出願日】2013年10月23日
(65)【公開番号】特開2014-85675(P2014-85675A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2016年7月13日
(31)【優先権主張番号】201210409249.9
(32)【優先日】2012年10月24日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510280589
【氏名又は名称】京東方科技集團股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BOE TECHNOLOGY GROUP CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ホアイ・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】リン・ワン
(72)【発明者】
【氏名】ワンリ・ホー
【審査官】 岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−008542(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0213285(US,A1)
【文献】 特開2008−303381(JP,A)
【文献】 特開2009−057459(JP,A)
【文献】 特開平07−159749(JP,A)
【文献】 特開平06−148603(JP,A)
【文献】 特開2006−348226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1334
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーおよびブルー相液晶を含む複合体であって、ポリマーが、架橋された非液晶ポリマーであり、ブルー相液晶が、前記ポリマー内に分散しており、ポリマーとブルー相液晶の重量比(Wp/Wl)が、以下の関係式:
20:80≦Wp/Wl≦30:70
(ここで、Wpはポリマーの重量であり、Wlはブルー相液晶の重量である)を満たすことを特徴とする、複合体。
【請求項2】
ポリマーとブルー相液晶の重量比(Wp/Wl)が、20:80であることを特徴とする、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
ポリマーが、少なくとも1つの光重合可能な多官能性(メチル)アクリレートおよび少なくとも1つの光重合可能な単官能性(メチル)アクリレートを含むモノマーから導出されることを特徴とする、請求項1に記載の複合体。
【請求項4】
多官能性(メチル)アクリレートが、ブタンジオールジアクリレート(BDDA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、4-[2-メチル-4-(4-アクリルオキシルプロポキシル)ベンゾイルオキシ]フェノキシカルボニル-フェノキシルプロピルアクリレートおよびその組合せからなる群から選択され、
単官能性(メチル)アクリレートが、(2,2,5-トリメチル)ヘキシルアクリレート(TMHA)、2-エチルヘキシルアクリレートおよびその組合せからなる群から選択されることを特徴とする、請求項3に記載の複合体。
【請求項5】
すべての単官能性(メチル)アクリレートとすべての多官能性(メチル)アクリレートのモル基準の比が、1:1〜1:9であることを特徴とする、請求項3に記載の複合体。
【請求項6】
すべての単官能性(メチル)アクリレートとすべての多官能性(メチル)アクリレートのモル基準の比が、1:4であることを特徴とする、請求項5に記載の複合体。
【請求項7】
光重合可能な官能基を有する非液晶化合物を、ブルー相液晶と比Wc/Wlでブレンドして、ブレンドを形成するステップであって、Wcは非液晶化合物の重量であり、Wlはブルー相液晶の重量であり、比Wc/Wlは、関係式20:80≦Wc/Wl≦30:70を満たすステップと、
光開始剤をブレンドに添加して、反応性混合物を形成するステップと、
反応性混合物中のブルー相液晶を、ブルー相に維持すると同時に、反応性混合物に光を放射することにより、光重合可能な官能基を有する非液晶化合物間の架橋反応を介してポリマーネットワークを形成し、それによって、ポリマーおよびブルー相液晶を含む複合体を形成するステップと
を含む、ポリマーおよびブルー相液晶を含む複合体を調製する方法。
【請求項8】
ブルー相液晶が、5.0℃を超えるブルー相の温度範囲を示し、粘度34〜45mPa・s、融点-20℃〜-15℃および透明点68〜88℃を有することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
比Wc/Wlが、20:80であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
光重合可能な官能基を有する非液晶化合物が、少なくとも1つの多官能性(メチル)アクリレートおよび少なくとも1つの単官能性(メチル)アクリレートを含むことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
多官能性(メチル)アクリレートが、ブタンジオールジアクリレート(BDDA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、4-[2-メチル-4-(4-アクリルオキシルプロポキシル)ベンゾイルオキシ]フェノキシカルボニル-フェノキシルプロピルアクリレートおよびその組合せからなる群から選択され、
単官能性(メチル)アクリレートが、(2,2,5-トリメチル)ヘキシルアクリレート(TMHA)、(2-エチル)ヘキシルアクリレートおよびその組合せからなる群から選択されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
光重合可能な官能基を有する非液晶化合物の中で、すべての単官能性(メチル)アクリレートと、すべての多官能性(メチル)アクリレートのモル基準の比が、1:1〜1:9であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
光重合可能な官能基を有する非液晶化合物の中で、すべての単官能性(メチル)アクリレートと、すべての多官能性(メチル)アクリレートのモル基準の比が、1:4であることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
光開始剤の量が、光重合可能な官能基を有する非液晶化合物の総量に対して0.5重量%〜1.5重量%であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
光開始剤がUV光開始剤であり、照射光がUV光であることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも一方の上に電極が形成された一対の基材と、
一対の基材の間に密封された、請求項1から6のいずれか一項に記載の複合体と
を含むことを特徴とする、液晶ディスプレイデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ(LCD)技術の分野に関する。より具体的には、本発明は、ポリマーおよびブルー相液晶(BPLC)を含む複合体、複合体を調製する方法、ならびに複合体を含むLCDデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、再生不能エネルギー資源の世界的な枯渇が、急速に進行している。エネルギー効率の改善方法は、世界的な問題になっている。中国では、省エネの問題はかなり深刻である。最近の統計によれば、中国で使用されているLCDテレビの総台数は1億台を超えており、今後58年で34億台に達すると思われる。それまでに、テレビによる年間電力消費は500億キロワット時(kWh)を超えることになり、その2/3はディスプレイによって消費される。LCDは、世界的に最も人気のあるディスプレイ媒体になっているため、LCDのエネルギー消費量を低減するという技術的な問題は、ディスプレイ技術分野において世界的に重要なテーマであり、課題になっている。
【0003】
LCDのエネルギー消費量は、主にバックライト、駆動モード、液晶材料およびその周辺部品から生じる。次世代LCD技術の中でも、最も魅力的なものが、ブルー相液晶ディスプレイ(BP-LCD)技術である。BP-LCDは、従来のLCD技術と比較して、以下の4つの傑出した利点を有する。第1に、ブルー相液晶は、電場にマイクロ秒レベルで急速に応答し、フィールドシーケンシャル方式の駆動モードに適用でき、カラーフィルターが不要である。第2に、ブルー相液晶は、巨視的に光学的等方性を示し、したがってディスプレイ基材の内表面の配列をもはや必要としない。第3に、BP-LCDは、相対的に広い視野性能を提供することができ、任意の視野角補償フィルムを必要としない。第4に、BP-LCDのバックライトからの光の透過率は、基材のギャップの影響を受けず、したがって製造過程中に基材のギャップを厳密に制御する必要がない。BP-LCDのこのような特徴は、製造過程を非常に簡素化することができ、大型LCDパネルの製造に有用である。
【0004】
BP-LCDは、従来のLCDと比較して、バックライト電力消費を約1/3低減することができ、その製造中のエネルギー消費量を約40%低減することができ、その原料コストを約19%低減することができる。BP-LCDを製造する技術および方法は、従来のLCDのものと類似しているため、BP-LCDは、同じ製造施設で製造することができる。したがって、BP-LCD技術の改善における重要な点は、ブルー相液晶(BPLC)材料の開発である。
【0005】
2002年、YANG HuaiおよびKikuchiらは、高分子安定化BPLC複合体を報告した。その複合体に基づき、Samsungは、最初の高分子安定化BP-LCDプロトタイプを世界的に製造した。このプロトタイプは、Display Week 2008に展示され、ディスプレイ分野で大きな反響を呼んだ。この高分子安定化BP-LCDは、240Hz以上の画像駆動速度を実現することができ、したがって自然な動画を提供することができる。したがって、高分子安定化BPLCの開発は、LCDの製造分野において注目を集めている。
【0006】
ポリマーが分散した液晶は、ネマチック液晶液滴をポリマーマトリックスに均一に分散させることによって形成された複合体であることが公知である。ポリマーが分散した液晶は、優れた電気光学特性を有しており、大規模製造を容易に達成できるので、大型フレキシブルディスプレイデバイス、非線形光学材料、電子制御式スマートガラス、液晶格子等で広く使用されている。しかし、高分子安定化BPLCに基づくLCDの製造には、(1)広い温度範囲の高分子安定化BPLCを使用して、高い均一性の大型パネルを製造することが困難であること、および(2)ポリマーネットワークの微細構造を、正確に制御することが困難であることを含む、2つの主な障壁があり、高分子安定化BPLCに基づくLCDの寿命は、重合に使用されるモノマーの量が、通常は10wt%未満であり、こうして得られたポリマーネットワークが、印加される電場の作用によって変形する傾向があることから、著しく短くなる場合がある。
【0007】
したがって、LCDの分野では、温度範囲が広く、駆動電圧がより低く、より高い電場安定性を示し得る、有用なBPLCの開発が強く求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来技術の欠陥を克服するために、ポリマーおよびBPLCを含む新規な複合体、複合体を調製する方法、ならびに複合体を含むLCDデバイスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、ポリマーおよびブルー相液晶を含む複合体が提供される。該複合体は、そのポリマーが、架橋された非液晶ポリマーであり、ブルー相液晶が前記ポリマー内に分散しており、ポリマーとブルー相液晶の重量比(Wp/Wl)が、関係式12:88<Wp/Wl≦30:70(ここで、Wpはポリマーの重量であり、Wlはブルー相液晶の重量である)を満たすことを特徴とする。好ましくは、ポリマーとブルー相液晶の重量比(Wp/Wl)は、15:85≦Wp/Wl≦25:75を満たし、最も好ましくは比Wp/Wlは20:80である。
【0010】
本発明の別の態様によれば、ポリマーおよびブルー相液晶を含む複合体を調製するための方法が提供される。この方法は、
光重合可能な官能基を有する非液晶化合物を、ブルー相液晶と比Wc/Wlでブレンドして、ブレンドを形成するステップであって、Wcは非液晶化合物の重量であり、Wlはブルー相液晶の重量であり、比Wc/Wlは、関係式12:88<Wc/Wl≦30:70を満たすステップと、
光開始剤をブレンドに添加して、反応性混合物を形成するステップと、
反応性混合物中のブルー相液晶を、ブルー相に維持すると同時に、反応性混合物に光(好ましくはUV光)を放射し、したがって光重合可能な官能基を有する非液晶化合物間の架橋反応を介してポリマーネットワークを形成し、それによって、ポリマーおよびブルー相液晶を含む複合体を形成するステップと
を含む。
【0011】
本発明では、ブルー相液晶は、5.0℃を超えるブルー相の温度範囲を示し、粘度34〜45mPa・s、融点-20℃〜-15℃および透明点68〜88℃を有するブルー相液晶であることが好ましい。
【0012】
本発明では、比Wc/Wlが、15:85≦Wc/Wl≦25:75を満たすことが好ましく、より好ましくは、比Wc/Wlは20:80である。
【0013】
本発明では、前記光重合可能な官能基を有する非液晶化合物は、本発明の複合体に含有されるポリマーを形成するためのモノマーである。このモノマーは、好ましくは、少なくとも1つの多官能性(メチル)アクリレートおよび少なくとも1つの単官能性(メチル)アクリレートを含み、これらはそれぞれ、光重合可能な化合物である。
【0014】
本発明では、すべての単官能性(メチル)アクリレートとすべての多官能性(メチル)アクリレートのモル基準の比は、1:1〜1:9であり、好ましくは1:4である。
【0015】
本発明の方法では、光開始剤の量は、光重合可能な官能基を有する非液晶化合物の総量に対して、0.5重量%〜1.5重量%である。
【0016】
好ましくは、前記光開始剤は、UV光開始剤である。ポリマーネットワークを形成するためにUV光を照射することにより、光重合可能な化合物(モノマー)を重合かつ架橋させ、それによって本発明の複合体を得る。
【0017】
本発明の別の態様によれば、液晶ディスプレイデバイスが提供される。このデバイスは、一対の基材および本発明の複合体を含む。基材の少なくとも一方の上には、電極が形成されており、複合体は、その一対の基材の間に密封されている。
【0018】
本発明は、少なくとも以下の有利な技術的効果を提供する。
【0019】
本発明の複合体は、BPLCのブルー相の非常に広い温度範囲を有しており、ミリ秒レベルで電場に応答することもできる。他方では、広い視野角および低い駆動電圧も実現し得る。本発明の複合体は、安定性に優れており、粘度が低く、電場に急速な速度で応答する。本発明に従って複合体を調製する方法は、簡便かつ効率的である。したがって、本発明は、重要な理論的意義を有しており、新しい有用なBPLC複合体を設計し開発するのに実用的な価値を有している。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】光重合可能な官能基を有する非液晶化合物の構造式である。図1−1は、重合可能な単官能性モノマーである(2,2,5-トリメチル)ヘキシルアクリレート(TMHA)の式である。図1−2は、重合可能な二官能性モノマーであるブタンジオールジアクリレート(BDDA)の式である。図1−3は、重合可能な三官能性モノマーであるトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)の式である。
図2】光開始剤の構造式である。
図3】比較例によって調製された複合体の電圧-透過率曲線を示すグラフである。
図4】実施例1によって調製された複合体の電圧-透過率曲線を示すグラフである。
図5】実施例2によって調製された複合体の電圧-透過率曲線を示すグラフである。
図6】実施例3によって調製された複合体の電圧-透過率曲線を示すグラフである。
図7】実施例4によって調製された複合体の電圧-透過率曲線を示すグラフである。
図8】実施例5によって調製された複合体の電圧-透過率曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、ポリマーおよびブルー相液晶を含む複合体に関する。該ポリマーは、架橋された非液晶ポリマーであり、該ブルー相液晶は、前記ポリマー内に分散している。
【0022】
複合体において、ポリマーとブルー相液晶の重量比(Wp/Wl)は、関係式12:88<Wp/Wl≦30:70(ここで、Wpはポリマーの重量であり、Wlはブルー相液晶の重量である)を満たすことが好ましい。より好ましくは、比Wp/Wlは、15:85≦Wp/Wl≦25:75を満たし、最も好ましくは、比Wp/Wlは20:80である。
【0023】
本発明はまた、ポリマーおよびブルー相液晶を含む複合体を調製する方法に関する。該方法は、
光重合可能な官能基を有する非液晶化合物を、ブルー相液晶と比Wc/Wlでブレンドして、ブレンドを形成するステップであって、Wcは非液晶化合物の重量であり、Wlはブルー相液晶の重量であり、比Wc/Wlは、関係式12:88<Wc/Wl≦30:70を満たすステップと、
光開始剤をブレンドに添加して、反応性混合物を形成するステップと、
反応性混合物中のブルー相液晶を、ブルー相に維持すると同時に、反応性混合物に光(好ましくはUV光)を放射し、したがって光重合可能な官能基を有する非液晶化合物間の架橋反応を介してポリマーネットワークを形成し、それによって、ポリマーおよびブルー相液晶を含む複合体を形成するステップと
を含む。
【0024】
本発明では、ブルー相液晶は、5.0℃を超えるブルー相の温度範囲を示し、粘度34〜45mPa・s、融点-20℃〜-15℃および透明点68〜88℃を有するブルー相液晶であることが好ましい。
【0025】
本発明では、比Wc/Wlが、15:85≦Wc/Wl≦25:75を満たすことが好ましく、より好ましくは、比Wc/Wlは20:80である。
【0026】
本発明では、前記光重合可能な官能基を有する非液晶化合物は、本発明の複合体に含有されるポリマーを形成するためのモノマーである。このモノマーは、好ましくは、少なくとも1つの多官能性(メチル)アクリレートおよび少なくとも1つの単官能性(メチル)アクリレートを含み、これらはそれぞれ、光重合可能な化合物である。
【0027】
本発明では、すべての単官能性(メチル)アクリレートとすべての多官能性(メチル)アクリレートのモル基準の比は、1:1〜1:9であり、好ましくは1:4である。
【0028】
本発明では、用語「光重合可能な」は、重合可能なモノマーが、光の照射によって、重合および架橋反応を受けることを意味し、通常は、紫外(UV)光の照射による重合を意味する。
【0029】
本発明では、用語「(メチル)アクリレート」は、(メチル)アクリル基、好ましくは(メチル)アクリレート基を有する光重合可能な化合物を指す。本明細書で、用語「(メチル)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの両方を意味する。(メチル)アクリレートは、単官能性または多官能性(メチル)アクリレートである。本発明において有用な多官能性(メチル)アクリレートには、それに限定されるものではないが、2個または3個の(メチル)アクリレート基を有する光重合可能な化合物が含まれ、例えば、ブタンジオールジアクリレート(BDDA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、4-[2-メチル-4-(4-アクリルオキシルプロポキシル)ベンゾイルオキシ]フェノキシカルボニル-フェノキシルプロピルアクリレートおよびその組合せからなる群から選択することができる。本発明において有用な単官能性(メチル)アクリレートには、それに限定されるものではないが、1個の(メチル)アクリレート基を有する光重合可能な化合物が含まれ、例えば、(2,2,5-トリメチル)ヘキシルアクリレート(TMHA)、(2-エチル)ヘキシルアクリレートおよびその組合せからなる群から選択することができる。
【0030】
本発明の方法では、光開始剤は、重合反応を開始するのに十分な量で使用される。通常、光開始剤の量は、光重合可能な官能基を有する非液晶化合物の総量に対して、0.5重量%〜1.5重量%である。
【0031】
好ましくは、前記光開始剤はUV光開始剤である。ポリマーネットワークを形成するためにUV光を照射することにより、光重合可能な化合物(モノマー)を重合および架橋反応させ、それによって本発明の複合体を得る。
【0032】
本発明の方法では、照射は、通常2〜10mW/cm2の線量で数分から数時間、通常0.5時間以上、例えば0.5〜5時間、0.5〜3時間または0.5〜1時間実施することができる。
【0033】
本発明はまた、一対の基材および本発明の複合体を含む液晶ディスプレイデバイスに関する。基材の少なくとも一方の上には、電極が形成されており、複合体は、その一対の基材の間に密封されている。
【0034】
本発明の複合体、複合体を調製する方法およびLCDデバイスを、以下の実施例によって詳細に例示する。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【実施例1】
【0035】
ステップ1:広い温度範囲を示すBPLCの調製
この実施例で使用したBPLCは、82.0wt%のSLC-X(YongshengHuatsing Liquid Crystal Co., Ltd.の製品である混晶、298KにおいてΔn=0.235、Δε=29.6)、10.0wt%のR811および8.0wt%のIso-(6OBA)2からなる。BPLCは、約10.0℃のブルー相の温度範囲を示す。キラル化合物であるR811およびIso-(6OBA)2(ドイツのMerk GmbHから市販)は、以下の構造式によって表される。
【0036】
【化1】
【0037】
BPLCは、粘度35mPa・s、融点-15℃および透明点86℃を有する。
【0038】
BPLCを以下の手順によって調製した。
【0039】
82.0wt%のSLC-X、10.0wt%のR811および8.0wt%のIso-(6OBA)2を、一緒に混合し、次に透明点を超える温度(透明点よりも約5〜10℃高い)まで加熱し、磁気撹拌機によって十分に撹拌しながら約30分間維持した。こうして所望のBPLC材料が得られた。
【0040】
ステップ2:反応混合物の調製
TMHAおよびBDDA(それらの構造は図1に示されている)を、ポリマー単量体(すなわち、光重合可能な官能基を有する非液晶化合物)として使用し、TMHA/BDDAのモル基準の比は1:4であった。ポリマー単量体を、BPLC材料と、重量30:70の混合比で室温においてブレンドすることによって、ブレンドを調製した。次に、光重合可能な官能基を有する非液晶化合物の総量に対して約1重量%の比で、光開始剤(その構造は図2に示されている)をブレンドに添加した。十分に撹拌すると、均質な反応性混合物が得られた。
【0041】
ステップ3:複合体の調製
ステップ2で得られた均質な反応性混合物を、サイフォン作用を用いて液晶セルに注入して、試料を調製した。液晶セルはIPSセルであり、電極幅は5.0マイクロメータであり、電極間距離は5.0マイクロメータであり、セルギャップは、スペーサによって10.0マイクロメータに維持した。試料を加熱ステージ(Linkam LK-600PM)上に維持し、その温度を0.1℃の精度で正確に制御し、したがってBPLCをブルー相に維持した。試料に、UV光を線量5mW/cm2で40分間照射した。光重合可能な官能基を有する非液晶化合物の架橋反応が進行してポリマーネットワークが形成され、こうして実施例1の複合体が得られた。
【0042】
ステップ4:複合体の特性の測定
複合体のBPLCのテクスチャを、加熱ステージを備えた偏光顕微鏡を用いて観察し、相転移温度を測定した。複合体の電気光学特性を、Liquid Crystal Parameters Tester(LCT-5016C、Changchun Liancheng Instrument Co.Ltd.)によって決定した。
【0043】
本発明に従って調製した複合体の電気光学特性を、下記の方法によって試験した。電気光学特性の試験を実施して、主に複合体のそれぞれの電気的に誘発された複屈折Δn誘発を測定した。
【0044】
本発明の複合体は、外部電場(E)が印加されないときは巨視的に光学的等方性を示す。印加電場が増大すると、複合体は電場の方向に沿って異方性を示すようになる。このように電気的に誘発された複屈折現象は、Kerr効果に従い、すなわちある特定の範囲の電場強度においては、材料の、電場によって誘発された複屈折Δn誘発、ならびに電場強度E、検出波長λおよびKerr定数Kは、以下の関係式を満たす。
Δn誘発=λKE2 (1)
【0045】
本発明の複合体のΔn誘発を測定するために、ステップ2によって調製した反応性混合物を、サイフォン作用を用いて、面内電極を備えた液晶セルに注入した(IPSセル、電極幅は5.0マイクロメータであり、電極間距離は5.0マイクロメータであり、セルギャップは、スペーサによって10.0マイクロメータに維持した)。得られた試料を、入射光の方向に対して45°の角度に向けた。温度を、加熱ステージ(Linkam LK-600PM)によって正確に(0.1℃の精度で)制御した。電気的に誘発された複屈折Δn誘発を測定するために、電力増幅器および関数発生器によって供給される周波数60Hzの矩形交流を、IPSセルの2つの電極間に印加した。試料液晶セルを、2つの交差偏光子の間に置き、液晶セルを透過した光の強度を、フォトダイオードによって検出した。出力強度Ioutは、等式(2)によって表される。
Iout=Iinsin2(φ/2) (2)
ここで、Iinは入射光の強度であり、Ioutは出力光の強度であり、φは光学的遅延角度である。誘発された複屈折Δn誘発は、等式(3)によって算出することができる。
φ=2πΔn誘発d/λ (3)
ここで、dは光路長であり、すなわち液晶セルの最上基材と最下基材の間のギャップである。
【0046】
複合体を偏光顕微鏡で観察し、この複合体がBPLCのテクスチャを有することを確認した。相転移温度も、偏光顕微鏡を用いて測定した。実施例1の複合体は、60℃を超えるブルー相の温度範囲(約10℃〜70℃)を有することが見出された。複合体の電気光学特性を、Liquid Crystal Parameters Testerで測定した。図4は、複合体の電圧-透過率曲線を示す。図に示した透過率は、100%の空気透過率で正規化したものである。複合体試料の駆動電圧を、電圧-透過率曲線の透過率ピークに対応する電圧として測定する。応答速度を、ON状態とOFF状態の間の応答時間の合計として測定する。結果として、複合体試料は、約110Vの駆動電圧および1ms未満の応答速度を示した。
【0047】
比較例
ステップ1:広い温度範囲を示すBPLCの調製
この実施例で使用したBPLCは、82.0wt%のSLC-X(YongshengHuatsing Liquid Crystal Co., Ltd.の製品である混晶、298KにおいてΔn=0.235、Δε=29.6)、10.0wt%のR811および8.0wt%のIso-(6OBA)2からなる。BPLCは、約10.0℃のブルー相の温度範囲を示す。キラル化合物であるR811およびIso-(6OBA)2(ドイツのMerk GmbHから市販)は、以下の構造式によって表される。
【0048】
【化2】
【0049】
BPLCは、粘度35mPa・s、融点-15℃および透明点86℃を有する。
【0050】
BPLCを以下の手順によって調製した。
【0051】
82.0wt%のSLC-X、10.0wt%のR811および8.0wt%のIso-(6OBA)2を、一緒に混合し、次に透明点を超える温度(透明点よりも約5〜10℃高い)まで加熱し、磁気撹拌機によって十分に撹拌しながら約30分間維持した。こうして所望のBPLC材料が得られた。
【0052】
ステップ2:反応混合物の調製
TMHAおよびBDDA(それらの構造は図1に示されている)を、ポリマー単量体(すなわち、光重合可能な官能基を有する非液晶化合物)として使用し、TMHA/BDDAのモル基準の比は1:4であった。ポリマー単量体を、BPLC材料と、重量10:90の混合比で室温においてブレンドすることによって、ブレンドを調製した。次に、光重合可能な官能基を有する非液晶化合物の総量に対して約1重量%の比で、光開始剤(その構造は図2に示されている)をブレンドに添加した。十分に撹拌すると、均質な反応性混合物が得られた。
【0053】
ステップ3:複合体の調製
ステップ2で得られた均質な反応性混合物を、サイフォン作用を用いて液晶セルに注入して、試料を調製した。液晶セルはIPSセルであり、電極幅は5.0マイクロメータであり、電極間距離は5.0マイクロメータであり、セルギャップは、スペーサによって10.0マイクロメータに維持した。試料を加熱ステージ(Linkam LK-600PM)上に維持し、その温度を0.1℃の精度で正確に制御し、したがってBPLCをブルー相に維持した。試料に、UV光を線量5mW/cm2で30分間照射した。光重合可能な官能基を有する非液晶化合物の架橋反応が進行してポリマーネットワークが形成され、こうして比較例の複合体が得られた。
【0054】
ステップ4:複合体の特性の測定
得られた複合体を、実施例1に記載の方法と同じ方法に従って、加熱ステージを備えた偏光顕微鏡を用いて観察した。複合体がBPLCのテクスチャを有することが確認され、相転移温度を測定した。この比較例の複合体は、30℃を超えるブルー相の温度範囲(約20℃〜50℃)を有することが見出された。複合体の電気光学特性を、実施例1に記載の方法と同じ方法に従って、Liquid Crystal Parameters Testerによって測定した。図3は、複合体の電圧-透過率曲線を示す。結果として、複合体試料は、約100Vの駆動電圧および1ms未満の応答速度を示した。
【実施例2】
【0055】
ステップ1:広い温度範囲を示すBPLCの調製
この実施例で使用したBPLCは、60.0wt%のSLC-1717(YongshengHuatsing Liquid Crystal Co., Ltd.の製品である混晶、298KにおいてΔn=0.22、Δε=12.2)および40.0wt%のR811からなる。BPLCは、約8.0℃のブルー相の温度範囲を示す。キラル化合物であるR811は、以下の構造式によって表される。
【0056】
【化3】
【0057】
BPLCは、粘度45mPa・s、融点-20℃および透明点68℃を有する。
【0058】
BPLCを以下の手順によって調製した。
【0059】
60.0wt%のSLC-1717および40.0wt%のR811を、一緒に混合し、次に透明点を超える温度(透明点よりも約5〜10℃高い)まで加熱し、磁気撹拌機によって十分に撹拌しながら約30分間維持した。こうして所望のBPLC材料が得られた。
【0060】
ステップ2:反応混合物の調製
TMHAおよびTMPTA(それらの構造は図1に示されている)を、ポリマー単量体(すなわち、光重合可能な官能基を有する非液晶化合物)として使用し、TMHA/TMPTAのモル基準の比は1:4であった。ポリマー単量体を、BPLC材料と、重量30:70の混合比で室温においてブレンドすることによって、ブレンドを調製した。次に、光重合可能な官能基を有する非液晶化合物の総量に対して約1重量%の比で、光開始剤(その構造は図2に示されている)をブレンドに添加した。十分に撹拌すると、均質な反応性混合物が得られた。
【0061】
ステップ3:複合体の調製
ステップ2で得られた均質な反応性混合物を、サイフォン作用を用いて液晶セルに注入して、試料を調製した。液晶セルはIPSセルであり、電極幅は5.0マイクロメータであり、電極間距離は5.0マイクロメータであり、セルギャップは、スペーサによって10.0マイクロメータに維持した。試料を加熱ステージ(Linkam LK-600PM)上に維持し、その温度を0.1℃の精度で正確に制御し、したがってBPLCをブルー相に維持した。試料に、UV光を線量5mW/cm2で30分間照射した。光重合可能な官能基を有する非液晶化合物の架橋反応が進行してポリマーネットワークが形成され、こうして実施例2の複合体が得られた。
【0062】
ステップ4:複合体の特性の測定
得られた複合体を、実施例1に記載の方法と同じ方法に従って、加熱ステージを備えた偏光顕微鏡を用いて観察した。複合体がBPLCのテクスチャを有することが確認され、相転移温度を測定した。この実施例の複合体は、70℃を超えるブルー相の温度範囲(約5℃〜75℃)を有することが見出された。複合体の電気光学特性を、実施例1に記載の方法と同じ方法に従って、Liquid Crystal Parameters Testerによって測定した。図5は、複合体の電圧-透過率曲線を示す。結果として、複合体試料は、約120Vの駆動電圧および1ms未満の応答速度を示した。
【実施例3】
【0063】
ステップ1:広い温度範囲を示すBPLCの調製
この実施例で使用したBPLCは、92.0wt%のSLC-X(YongshengHuatsing Liquid Crystal Co., Ltd.の製品である混晶、298KにおいてΔn=0.235、Δε=29.6)および8.0wt%のIso-(6OBA)2からなる。BPLCは、約5.0℃のブルー相の温度範囲を示す。
【0064】
BPLCは、粘度34mPa・s、融点-16℃および透明点88℃を有する。
【0065】
BPLCを以下の手順によって調製した。
【0066】
92.0wt%のSLC-Xおよび8.0wt%のIso-(6OBA)2を、一緒に混合し、次に透明点を超える温度(透明点よりも約5〜10℃高い)まで加熱し、磁気撹拌機によって十分に撹拌しながら約30分間維持した。こうして所望のBPLC材料が得られた。
【0067】
ステップ2:反応混合物の調製
TMHA、BDDAおよびTMPTA(それらの構造は図1に示されている)を、ポリマー単量体(すなわち、光重合可能な官能基を有する非液晶化合物)として使用し、TMHA/BDDA/TMPTAのモル基準の比は1:2:3であった。ポリマー単量体を、BPLC材料と、重量20:80の混合比で室温においてブレンドすることによって、ブレンドを調製した。次に、光重合可能な官能基を有する非液晶化合物の総量に対して約1重量%の比で、光開始剤(その構造は図2に示されている)をブレンドに添加した。十分に撹拌すると、均質な反応性混合物が得られた。
【0068】
ステップ3:複合体の調製
ステップ2で得られた均質な反応性混合物を、サイフォン作用を用いて液晶セルに注入して、試料を調製した。液晶セルはIPSセルであり、電極幅は5.0マイクロメータであり、電極間距離は5.0マイクロメータであり、セルギャップは、スペーサによって10.0マイクロメータに維持した。試料を加熱ステージ(Linkam LK-600PM)上に維持し、その温度を0.1℃の精度で正確に制御し、したがってBPLCをブルー相に維持した。試料に、UV光を線量5mW/cm2で30分間照射した。光重合可能な官能基を有する非液晶化合物の架橋反応が進行してポリマーネットワークが形成され、こうして実施例3の複合体が得られた。
【0069】
ステップ4:複合体の特性の測定
得られた複合体を、実施例1に記載の方法と同じ方法に従って、加熱ステージを備えた偏光顕微鏡を用いて観察した。複合体がBPLCのテクスチャを有することが確認され、相転移温度を測定した。この実施例の複合体は、60℃を超えるブルー相の温度範囲(約10℃〜70℃)を有することが見出された。複合体の電気光学特性を、実施例1に記載の方法と同じ方法に従って、Liquid Crystal Parameters Testerによって測定した。図6は、複合体の電圧-透過率曲線を示す。結果として、複合体試料は、約105Vの駆動電圧および1ms未満の応答速度を示した。
【実施例4】
【0070】
ステップ1:広い温度範囲を示すBPLCの調製
この実施例で使用したBPLCは、92.0wt%のSLC-X(YongshengHuatsing Liquid Crystal Co., Ltd.の製品である混晶、298KにおいてΔn=0.235、Δε=29.6)および8.0wt%のIso-(6OBA)2からなる。BPLCは、約5.0℃のブルー相の温度範囲を示す。
【0071】
BPLCは、粘度34mPa.s、融点-16℃および透明点88℃を有する。
【0072】
BPLCを以下の手順によって調製した。
【0073】
92.0wt%のSLC-Xおよび8.0wt%のIso-(6OBA)2を、一緒に混合し、次に透明点を超える温度(透明点よりも約5〜10℃高い)まで加熱し、磁気撹拌機によって十分に撹拌しながら約30分間維持した。こうして所望のBPLC材料が得られた。
【0074】
ステップ2:反応混合物の調製
TMHA、BDDAおよびTMPTA(それらの構造は図1に示されている)を、ポリマー単量体(すなわち、光重合可能な官能基を有する非液晶化合物)として使用し、TMHA/BDDA/TMPTAのモル基準の比は2:1:1であった。ポリマー単量体を、BPLC材料と、重量20:80の混合比で室温においてブレンドすることによって、ブレンドを調製した。次に、光重合可能な官能基を有する非液晶化合物の総量に対して約1重量%の比で、光開始剤(その構造は図2に示されている)をブレンドに添加した。十分に撹拌すると、均質な反応性混合物が得られた。
【0075】
ステップ3:複合体の調製
ステップ2で得られた均質な反応性混合物を、サイフォン作用を用いて液晶セルに注入して、試料を調製した。液晶セルはIPSセルであり、電極幅は5.0マイクロメータであり、電極間距離は5.0マイクロメータであり、セルギャップは、スペーサによって10.0マイクロメータに維持した。試料を加熱ステージ(Linkam LK-600PM)上に維持し、その温度を0.1℃の精度で正確に制御し、したがってBPLCをブルー相に維持した。試料に、UV光を線量5mW/cm2で30分間照射した。光重合可能な官能基を有する非液晶化合物の架橋反応が進行してポリマーネットワークが形成され、こうして実施例4の複合体が得られた。
【0076】
ステップ4:複合体の特性の測定
得られた複合体を、実施例1に記載の方法と同じ方法に従って、加熱ステージを備えた偏光顕微鏡を用いて観察した。複合体がBPLCのテクスチャを有することが確認され、相転移温度を測定した。この実施例の複合体は、60℃を超えるブルー相の温度範囲(約10℃〜70℃)を有することが見出された。複合体の電気光学特性を、実施例1に記載の方法と同じ方法に従って、Liquid Crystal Parameters Testerによって測定した。図7は、複合体の電圧-透過率曲線を示す。結果として、複合体試料は、約100Vの駆動電圧および1ms未満の応答速度を示した。
【実施例5】
【0077】
ステップ1:広い温度範囲を示すBPLCの調製
この実施例で使用したBPLCは、92.0wt%のSLC-X(YongshengHuatsing Liquid Crystal Co., Ltd.の製品である混晶、298KにおいてΔn=0.235、Δε=29.6)および8.0wt%のIso-(6OBA)2からなる。BPLCは、約5.0℃のブルー相の温度範囲を示す。
【0078】
BPLCは、粘度34mPa.s、融点-16℃および透明点88℃を有する。
【0079】
BPLCを以下の手順によって調製した。
【0080】
92.0wt%のSLC-Xおよび8.0wt%のIso-(6OBA)2を、一緒に混合し、次に透明点を超える温度(透明点よりも約5〜10℃高い)まで加熱し、磁気撹拌機によって十分に撹拌しながら約30分間維持した。こうして所望のBPLC材料が得られた。
【0081】
ステップ2:反応混合物の調製
TMHA、BDDAおよびTMPTA(それらの構造は図1に示されている)を、ポリマー単量体(すなわち、光重合可能な官能基を有する非液晶化合物)として使用し、TMHA/BDDA/TMPTAのモル基準の比は1:4:5であった。ポリマー単量体を、BPLC材料と、重量20:80の混合比で室温においてブレンドすることによって、ブレンドを調製した。次に、光重合可能な官能基を有する非液晶化合物の総量に対して約1重量%の比で、光開始剤(その構造は図2に示されている)をブレンドに添加した。十分に撹拌すると、均質な反応性混合物が得られた。
【0082】
ステップ3:複合体の調製
ステップ2で得られた均質な反応性混合物を、サイフォン作用を用いて液晶セルに注入して、試料を調製した。液晶セルはIPSセルであり、電極幅は5.0マイクロメータであり、電極間距離は5.0マイクロメータであり、セルギャップは、スペーサによって10.0マイクロメータに維持した。試料を加熱ステージ(Linkam LK-600PM)上に維持し、その温度を0.1℃の精度で正確に制御し、したがってBPLCをブルー相に維持した。試料に、UV光を線量5mW/cm2で30分間照射した。光重合可能な官能基を有する非液晶化合物の架橋反応が進行してポリマーネットワークが形成され、こうして実施例5の複合体が得られた。
【0083】
ステップ4:複合体の特性の測定
得られた複合体を、実施例1に記載の方法と同じ方法に従って、加熱ステージを備えた偏光顕微鏡を用いて観察した。複合体がBPLCのテクスチャを有することが確認され、相転移温度を測定した。この実施例の複合体は、70℃を超えるブルー相の温度範囲(約5℃〜75℃)を有することが見出された。複合体の電気光学特性を、実施例1に記載の方法と同じ方法に従って、Liquid Crystal Parameters Testerによって測定した。図8は、複合体の電圧-透過率曲線を示す。結果として、複合体試料は、約130Vの駆動電圧および1ms未満の応答速度を示した。
【0084】
前述の実施例は、本発明の方法が、ブルー相の非常に広い温度範囲を示し、電場に急速な速度で応答し(ミリ秒以下のレベル)、駆動電圧がより低く、広い温度範囲において良好な安定性を有する、ポリマーおよびBPLCを含む複合体を提供し得ることを明らかにしている。混晶の粘度が低いので、BPLCは、ポリマーネットワーク内に容易に分散することができる。したがって、本発明の方法に基づくと、大型で高い均質性を有する液晶製品を開発することが可能となる。さらに、本発明によって調製された複合体は、公知の高分子安定化BPLC複合体材料と比較して、より多量のポリマー含量を有することができる。したがって、電場におけるポリマーネットワークの変形を有効に防止することができ、ポリマーネットワークの微細構造は、ポリマーのモノマーを調節することによって正確に制御することができる。
【0085】
本発明はさらに、少なくとも一方の上に電極が形成された一対の基材を含み、かつその一対の基材の間に複合体が密封されている液晶ディスプレイデバイスを提供する。ディスプレイデバイスは、液晶パネル、またはディスプレイ機能を有する任意の製品もしくはその部品、例えば携帯電話、タブレット型PC、テレビ、ディスプレイ、ノート型パソコン、デジタル画像フレーム、ナビゲーター等であり得る。
【0086】
当業者であれば、本発明の精神および範囲から逸脱せずに本発明に様々な変更および改変を加え得ることが明らかである。したがって、これらの変更および改変が、本発明の特許請求の範囲またはその等価物に含まれる場合、本発明はまた、これらの変更および改変を包含するものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8