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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6309240
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20180402BHJP
   A61B 8/12 20060101ALI20180402BHJP
【FI】
   A61B8/14
   A61B8/12
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-221360(P2013-221360)
(22)【出願日】2013年10月24日
(65)【公開番号】特開2014-100557(P2014-100557A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2016年10月17日
(31)【優先権主張番号】特願2012-236666(P2012-236666)
(32)【優先日】2012年10月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000866
【氏名又は名称】特許業務法人三澤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小作 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】四方 浩之
(72)【発明者】
【氏名】尾名 康裕
(72)【発明者】
【氏名】芝本 弘一
(72)【発明者】
【氏名】都築 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】久保田 隆司
【審査官】 樋熊 政一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−346477(JP,A)
【文献】 特開昭62−258645(JP,A)
【文献】 特開平09−122067(JP,A)
【文献】 特開平11−342131(JP,A)
【文献】 特開2004−313271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00−8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送受信する超音波プローブと、
前記超音波プローブに直接的あるいは間接的に設けられた、穿刺針を穿刺対象部位へ誘導される角度を所定範囲内で許容するよう規制するための壁部を有するガイド機構と、
前記超音波プローブで受信したエコー信号から超音波画像を生成する画像処理部と、
前記超音波画像を表示する表示部と、
前記ガイド機構の形状を模したマーカを、前記表示部に表示された前記超音波画像の上部に出力するマーカ出力部と、
を備えた超音波診断装置。
【請求項2】
前記マーカ出力部は、前記超音波プローブと前記超音波画像との位置関係から、前記ガイド機構の位置に対応する前記マーカの出力位置を特定し、特定した出力位置に前記マーカを出力する請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記ガイド機構の形状及び位置を含むガイド機構情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部が記憶している前記ガイド機構情報の中から、使用する前記ガイド機構に対応する前記ガイド機構情報を選択する選択部と、
前記選択部が選択したガイド機構情報に基づき前記マーカを作成するマーカ作成部と、
を備えた請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記画像処理部は、前記ガイド機構の少なくとも大半が被検体内に挿入された状態の超音波プローブにより受信されたエコー信号から超音波画像を生成する請求項1に記載の超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波プローブに内蔵された圧電振動子から被検体内に超音波パルスを照射する。そして、超音波診断装置は、被検体内で生じた反射波を圧電振動子で受信して各種処理を行なう。その結果、被検体内の断層画像や血流情報等の生体情報が得られる。
【0003】
この超音波診断装置を用いた治療法の1つに、超音波穿刺術と呼ばれるものがある。超音波穿刺術では、被検体の治療対象部位に対する超音波診断画像が参照され、オペレータにより、注射針などの穿刺針が被検体に刺入され、薬物の投与や、内容物の吸引・排出等が行われる。
【0004】
上記のような超音波穿刺術で使用される超音波診断装置の超音波プローブ部分には、穿刺針を穿刺対象部位へ誘導するためのガイド機構が設けられているものがある。オペレータは、ガイド機構を介して、安定的に穿刺対象部位に穿刺針を刺入することができる。なお、ガイド機構にはさまざまな種類があり、一例において超音波プローブに直接設けられる。また他の例におけるガイド機構はアタッチメントを介して間接的に設けられる。
【0005】
また穿刺針を被検体に刺入する際のオペレータの指標として、従来、ガイド機構の種類に応じて刺入の方向を示す直線経路(刺入経路)を超音波画像に重ねて表示していた。
【0006】
しかし、オペレータが生体組織の変位を見ながら穿刺針の刺入を行う場合、刺入経路が超音波画像に重ねて表示されると、生体組織の視認性が低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3472603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、穿刺針の刺入において、超音波画像の視認性を損なうことを防止することができる超音波診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、実施形態の超音波診断装置は、超音波プローブと、ガイド機構と、画像処理部と、表示部とを備える。画像処理部は、超音波プローブにより受信されたエコー信号に基づいて超音波画像を生成する。ガイド機構は、穿刺針を穿刺対象部位へ誘導される角度を所定範囲内で許容するよう規制するための壁部を有する。表示部は、超音波画像及びその上部にガイド機構の形状を模したマーカを、表示させる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1における超音波穿刺術式のモデル図。
図2】実施例1におけるシステム図。
図3】実施例1における超音波プローブ側面図。
図4】実施例1における超音波画像及びガイド機構マークの表示図。
図5】実施例1におけるフロー図。
図6】実施例1における穿刺針の刺入限界角度の概略図1
図7】実施例1における超音波画像及び穿刺針刺入範囲の表示図。
図8】実施例1における穿刺針の刺入限界角度の概略図2
図9】実施例2における、超音波プローブ平面図。
図10A】実施例2における超音波プローブ側面図。
図10B】実施例2における超音波プローブ側面図。
図11A】実施例2における超音波画像及びガイド機構マークの概略図。
図11B】実施例2における超音波画像及びガイド機構マークの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0012】
(実施例1)
図1は、超音波穿刺術式のモデル図である。図1に示すように、オペレータは、超音波プローブ1を被検接触面20に押し当てる。また、オペレータは、穿刺対象部位21に対して、ガイド機構11の壁部31に沿って穿刺針22を刺入する。なお、図1では、ガイド機構11の形状が溝状であるが、ガイド機構11はこれに限られない。例えばその形状は穴状でも良い。
【0013】
また、本実施例における超音波プローブ1は、一例として腹腔鏡を用いた手術において体腔内に挿入して超音波診断を行うことができる体腔内プローブについて記載する。ただし、本実施例は体腔内プローブに限定されず、他のプローブに適用することが可能である。
また、腹腔鏡を用いた手術においてラジオ波焼灼術(radiofrequency ablation:RFA)等の穿刺術が行われる場合がある。手術では、オペレータが腹腔内に体腔内プローブ(超音波プローブ1)を挿入し、さらに内視鏡を別の位置から挿入する。さらにオペレータは、体腔内プローブに直接的または間接的に設けられた穿刺針のガイド機構11により穿刺針がガイドされた状態で穿刺針22を腫瘍等の穿刺対象部位21に向かって刺入する。
このときオペレータは、内視鏡により、腹腔に挿入された体腔内プローブの像を参照しながら刺入する。オペレータにより穿刺針が被検体の体外にあるガイド機構にガイドされて刺入される場合と異なり、オペレータは、内視鏡による像を参照することによって穿刺針22を視認する。したがって、この場合は穿刺針22の視認性が低下しやすい。オペレータが穿刺針22を直接見る場合より、内視鏡等の像を介して穿刺針22を参照する場合の方が、例えば穿刺針22の刺入方向等の把握は難しい。この点、本実施例のように、超音波画像とともに穿刺針22のガイド範囲を示すことができれば、腹腔鏡を用いた手術において穿刺針の行き先の把握を容易にすることができる。
なおRFAにおいて、オペレータは超音波画像を観察しながら、穿刺針を体腔内の対象部位(腫瘍の中心等)に穿刺する。さらに穿刺針に電流を流して穿刺針の周囲に熱を発生させ、焼灼して腫瘍を壊死させる。
【0014】
図2は、実施例1における超音波診断装置のブロック図である。本超音波診断装置は、超音波プローブ1、送受信部2、Bモード処理部3、画像処理部4、ガイド機構データベース5、ガイド機構マーク設定部6、表示部7、操作部8、システム制御部9を備える。
【0015】
超音波プローブ1は、穿刺針を誘導するためのガイド機構11を有する。また、超音波プローブ1は、ガイド機構11を設けた図示しないアタッチメントを装着できる構成であっても良い。
【0016】
超音波プローブ1は、多数配列された振動子、整合層、バッキング材を有する。振動子は、送受信部2からの信号(駆動パルス)に基づき超音波を発生する。さらに振動子は被検体からの反射波を電気信号(エコー信号)に変換する。整合層は、振動子と被検体の間で音響インピーダンスを整合させる。バッキング材は、超音波の照射方向と反対側(後方)に放射される超音波を吸収し、各振動子の余分な振動を抑える。
【0017】
送受信部2は、送信部13と受信部14を有する。
【0018】
送信部13は、システム制御部9からの指示に従って、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。送信部13は、超音波ビームの指向性を決定するのに必要な遅延時間を各レートパルスに与え、駆動パルスを生成する。送信部13は、駆動パルスを各振動子に印加する。
【0019】
受信部14は、各振動子からのエコー信号を増幅する。また、受信部14は、増幅した各振動子からのエコー信号を足し合わせ、超音波エコー信号を作成する。
【0020】
Bモード処理部3は、受信部14から受け取った超音波エコー信号に対して包絡線検波処理を施すことにより、超音波エコーの振幅強度に対応したBモード信号を生成する。
【0021】
画像処理部4は、画像生成部、計測処理部、データ保管部を有する。
【0022】
画像生成部は、Bモード信号の所定断面に係る二次元分布を用いて、Bモードによる二次元超音波画像を生成する。また画像生成部は、所定領域に関する三次元分布を用いて、擬似三次元超音波画像を生成する。また、画像生成部は、ボリュームデータを用いて、所望の基準断面に対応するMPR(Multi Planar Reconstruction)位置を設定し、当該MPR位置に対応するMPR画像を生成する。
【0023】
計測処理部は、生成した画像やボリュームデータを用いて臓器の内径や容積等を計測する。また、計測処理部は、計測結果に基づいて、臓器の内径や容積等の画像付帯情報を生成する。
【0024】
データ保管部は、画像生成部により生成された画像、及び計測処理部により生成された画像付帯情報を保管する。
【0025】
画像処理部4は、システム制御部9からの指示に従って、画像あるいは画像付帯情報を表示部7に送信する。
【0026】
表示部7は、例えば図示しない表示制御部により表示され、画像処理部4から送られてきた画像や画像付帯情報を表示する。また、表示制御部に制御され、表示部7は、オペレータの操作に必要となる所定の操作画面を表示する。
【0027】
操作部8は、オペレータからの各種指示を行うための操作手段(マウスやトラックボール、キーボードなど)を有する。操作部8は、システム制御部9を介して、送受信部2及び画像処理部4へ指示を送る。
【0028】
本実施例において、超音波プローブ1及び図示しないアタッチメントは、各々の種類を特定するためのIDを有する。
【0029】
ガイド機構データベース5は、当該IDに対して一意的に決まるガイド機構11の形状情報及び位置情報を予め記憶している。なお、形状情報とは、ガイド機構の形状を表す情報である。位置情報は、例えば図3に示すような、超音波プローブ1におけるガイド機構11の位置を示す座標情報とすることができる。また、ガイド機構11が設けられたアタッチメントを超音波プローブ1に取り付ける構成の場合、位置情報を、アタッチメントにおけるガイド機構11の位置を示す座標情報として構成することができる。ガイド機構データベース5は、「記憶部」の一例に該当する。
【0030】
図3を参照して座標情報の一例について説明する。図3は、超音波プローブ1の側面図である。図3に示すように超音波プローブ1には、所定の長さL1を有する超音波送受波部10が設けられる。超音波送受波部10は、超音波プローブ1により超音波を送受信するときの、超音波プローブ1における被検接触面20と向かい合う部分である。なお図3の例において、x軸は超音波送受波部10の長手方向に対応する。またy軸は被検接触面20に対する垂直方向に対応する。また図3において、原点Oは、超音波送受波部10の長手方向の端部に対応する。また、超音波プローブ1により超音波を送受信するとき、x軸は、被検接触面20に接し、または被検接触面20に沿った位置にあるものとする。また、図3において、x軸とガイド機構11の下端との距離をhとする。「下端」とは、超音波プローブ1により超音波を送受信するときの、ガイド機構11における被検接触面20側の端部である。また、ガイド機構11の下端部中央の座標をx1とする。
【0031】
なお、このような座標の設定は、あくまで一例であり、ガイド機構11の位置を正確に表すことができるならば、どのような設定を用いても良い。
【0032】
ガイド機構マーク設定部6は、ガイド機構データベース5からガイド機構11の形状情報及び位置情報を読み出す。ガイド機構マーク設定部6は、当該形状情報に基づいて、ガイド機構11の形状を模したガイド機構マーク18を作成する。ガイド機構マーク設定部6は、作成したガイド機構マーク18のデータ及び当該位置情報を、表示部7へ送信する。なお、本実施例は、上記構成に限られない。例えば、形状情報がガイド機構11の形状を模したガイド機構マーク18そのものであれば、ガイド機構マーク設定部6は、ガイド機構マーク18を作成しない。
なお、ガイド機構マーク設定部6は「表示制御部」の一例に該当する。ガイド機構マーク設定部6は、「マーカ出力部」、「選択部」または「マーカ作成部」の一例に該当する。ガイド機構データベース5に記憶される情報は、「ガイド機構情報」の一例に該当する。ガイド機構マーク設定部6と表示部7との組み合わせは、「マーカ出力部」の一例に該当する。
【0033】
表示部7は、当該位置情報に基づいて、ガイド機構マーク18と超音波画像19とを表示する。表示部は、例えば図示しない表示制御部により制御されて表示を行う構成であってもよい。ガイド機構マーク18の表示位置は、例えば図4に示すように、図3で設定した座標を反映することで定まる。
【0034】
図4は、表示部7に表示された、ガイド機構マーク18と超音波画像19の配置を表す画面を示す。この画面は、図示しない表示制御部により表示される構成であってもよい。図3における原点Oと図4における原点Oとは対応する。図4に示す超音波診断の範囲L2は、図3における超音波送受波部10の長手方向の長さL1を、L2/L1倍に拡大あるいは縮小した範囲に対応する。図4における超音波画像19上部の境界線(X軸)とガイド機構マーク18の下端部との距離をHとする。Hは、図3におけるhをL2/L1倍に拡大あるいは縮小した距離に対応する。またガイド機構マーク18の下端部中央のX座標をX1とする。「下端」とは、超音波プローブ1により超音波を送受信するときの、ガイド機構11における被検接触面20側の端部である。X1は、x1をL2/L1倍に拡大あるいは縮小した座標である。なお、このような座標の設定は、あくまで一例であり、実際のガイド機構11の位置を正確に反映できるのであれば、どのような設定を用いても良い。
【0035】
図5は、本実施例におけるフローを示している。
【0036】
S1において、ガイド機構マーク設定部6は、使用する超音波プローブ1、あるいは、アタッチメントのIDを読み取る。IDを読み取るタイミングは、超音波プローブ1あるいはアタッチメントの装着時か、あるいはオペレータの任意のタイミングである。オペレータの任意のタイミングでIDを読み取る場合、オペレータは、操作部8を介して、ガイド機構マーク設定部6により超音波プローブ1あるいはアタッチメントのIDを読み取る指示操作を行う。
【0037】
S2において、ガイド機構マーク設定部6は、自身が読み取ったIDに対応する形状情報及び位置情報を、ガイド機構データベース5から読み出す。
【0038】
S3において、ガイド機構マーク設定部6は、ガイド機構データベース5から読出した形状情報を基に、ガイド機構マーク18を作成する。
【0039】
S4において、オペレータは、超音波診断を開始する。
【0040】
S5において、オペレータは、ガイド機構マーク18を、表示部7に出力するか否かを選択する。
【0041】
オペレータが、ガイド機構マーク18を表示部7に出力すると選択した場合、ガイド機構マーク設定部6は、ガイド機構マーク18及び当該位置情報を、表示部7へ送信する。表示部7は、ガイド機構マーク設定部6から送られてきたガイド機構マーク18を、当該位置情報に基づいて設定した表示位置に表示する(S6)。
【0042】
一方、オペレータがガイド機構マーク18を表示部7に出力しないと選択した場合、ガイド機構マーク設定部6は、ガイド機構マーク18のデータ及び当該位置情報を、表示部7へ送信しない。したがって、表示部7は、超音波画像19のみを表示する(S7)。
【0043】
S8において、超音波診断を終了する。
【0044】
なお、オペレータは、穿刺針22の刺入をS4〜S8の間の任意のタイミングで行う。
【0045】
オペレータは穿刺針22の刺入を行う際、ガイド機構11の壁部31に沿って穿刺針22を刺入する。そのため、被検接触面20に対する壁部31の傾きをオペレータが把握することが、刺入角度や刺入位置の精度に大きく影響する。この点、本実施例は、ガイド機構11の形状を模したガイド機構マーク18を表示部7に表示させる。その結果、オペレータは、壁部31の傾きを容易に認識することができる。
【0046】
以上の結果、オペレータは、超音波画像19の視認性を損なうことなく穿刺針22を刺入する方向を認識できるようになる。したがって、スムーズな超音波穿刺術式を行うことが可能になる。
【0047】
なお、オペレータの任意の操作に基づいて、ガイド機構マーク18の表示/非表示が切り替わるような構成でも良い。
【0048】
本実施例の変形例の一つとして、図示しない表示制御部がガイド機構マーク18の表示に加え、ガイド機構マーク18の形状に基づく刺入角度の限界を超音波画像19に表示させることができる。
【0049】
図6は、オペレータがガイド機構11の壁部31に沿って、尚且つ、壁部31と平行に穿刺針22を刺入している場合の超音波プローブ1の側面図である。図6の座標については、図3と同様に、原点Oは、超音波送受波部10の端部に対応する。また、x軸は、超音波送受波部10の長手方向に対応する。また、y軸は、被検接触面20に対する垂直方向に対応する。また以下では、x軸は被検接触面20に沿った位置にあるものとして説明する。また、超音波送受波部10の長手方向の長さをL1、x軸とガイド機構11の下端との距離をhとする。図6においては、1種類のガイド機構11が設けられている場合を想定しており、ガイド機構11の下端部中央の座標をx1とする。
【0050】
ここで、ガイド機構11の壁部31は、x1を通ってy軸と平行な直線に対して、図右方向にθ1、図左方向にθ2傾いている。したがって、オペレータは、壁部31に沿って、尚且つ、壁部31と平行に穿刺針22を刺入する場合、図6のように、x1を通ってy軸と平行な直線に対して、穿刺針22を、図右方向にθ1、図左方向にθ2傾けることになる。
【0051】
図7は、図4と同様に、表示部7に表示された、ガイド機構マーク18と超音波画像19の配置を表す画面の一例である。この画面は、図示しない表示制御部により表示される構成であってもよい。図7における原点Oは、図6における原点Oに対応する。超音波診断の範囲L2は、図6における超音波送受波部10の長手方向の長さL1を、ある倍率(L2/L1倍)で拡大あるいは縮小した範囲に対応する。図6における超音波画像19の上部境界(X軸)とガイド機構マーク18の下端部との距離をHとする。Hは、図6におけるhをL2/L1倍に拡大あるいは縮小した距離に対応する。ガイド機構マーク18の下端部中央のX座標をX1とする。X1は、x1をL2/L1倍に拡大あるいは縮小した座標である。なお、このような座標の設定は、あくまで一例であり、実際のガイド機構11の位置を正確に反映できるのであれば、どのような設定を用いても良い。表示制御部は、「領域示唆部」または「境界線作成部」の一例に該当する。
【0052】
一方、図7における超音波画像19は、図4における超音波画像19と異なり、2本の破線aを有している。この2本の破線aは、X1を通ってY軸と平行な直線に対してθ1及びθ2傾いており、これらは、図6における穿刺針22に、それぞれ対応する。この2本の破線a、aに挟まれた範囲は、超音波画像19において、穿刺針22を示す像が現れ得る範囲である。以下では、この範囲を穿刺針刺入範囲23と記載する。穿刺針刺入範囲23は、「領域」の一例に該当する。
【0053】
例えば表示制御部により、超音波画像にこのような2本の破線a、aによって穿刺針刺入範囲23を示す制御が行われる。その結果、超音波画像19における穿刺対象部位21の視認性が損なわれることなく、穿刺針22の像が超音波画像19に現れる範囲を一見して判断可能である。したがって、本実施例により、診断の簡略化や診断時間の短縮化が可能である。
【0054】
更に、ガイド機構マーク18と同様に、オペレータの任意で穿刺針刺入範囲23の表示と非表示とを切り替える構成とすることができる。また、超音波画像19において、穿刺針刺入範囲23以外の部分の色を変えて表示する構成とすることができる。このような構成により、穿刺針刺入範囲23の視認性を損なわずに、穿刺針刺入範囲23を強調することができる。
【0055】
なお、穿刺針22の幅が、ガイド機構11の下端部の幅よりも小さい場合、図8のように、片方の壁部31の上端bと、もう片方の壁部31の下端cとに接触した状態のとき、穿刺針22の傾きは最大(θ3)となる。この場合、穿刺針刺入範囲23は、θ3を反映したものであっても良い。
【0056】
本実施例において、ガイド機構11の壁部31などに穿刺針22の通過を検知する部材を設けても良い。この部材は例えばフォトセンサである。この場合、フォトセンサは、穿刺針22がガイド機構11の通過を検知する。検知の結果、ガイド機構マーク18及び穿刺針刺入範囲23が自動的に表示される。なお、穿刺針22の通過を検知できる部材であれば、フォトセンサに限られない。
【0057】
(実施例2)
実施例2では、図9に示すように、超音波プローブ1の異なる側面にガイド機構11を有する場合について説明する。また、一つの側面に複数のガイド機構11を有する場合について説明する。なお上述の通り、超音波プローブ1の替わりに図示しないアタッチメントが用いられる場合もある。その場合、以下の説明における「超音波プローブ1」はアタッチメントと読み替えられる。
【0058】
図9は、本実施例における超音波プローブ1の平面図である。図9における左側の側面をAサイド、右側の側面をBサイドとする。図9における、AサイドおよびBサイドは、超音波プローブ1の長手方向に沿った側面である。また、BサイドはAサイドの反対側に位置する側面である。
【0059】
図10Aは、Aサイドにおける超音波プローブ1である。図10Bは、Bサイドにおける超音波プローブ1である。なお、図10A図10Bとは、座標が対応している。
【0060】
実施例2においても、図3と同様に座標を設定する。
【0061】
原点Oは、超音波送受波部10の端部に対応する。また、x軸は、超音波送受波部10の長手方向に対応する。また、y軸は、被検接触面20に対する垂直方向に対応する。ここでも、x軸は、被検接触面20に沿った位置にあるものとする。また、超音波送受波部10の長手方向の長さをL1、X軸とガイド機構11の下端との距離をhとする。「下端」とは、超音波プローブ1により超音波を送受信するときの、ガイド機構11における被検接触面20側の端部である。
【0062】
図10Aにおけるガイド機構11の下端部中央の座標を、図10A左側から順番にx2、x3とする。また、図10Bにおけるガイド機構11の下端部中央の座標をx4とする。
【0063】
オペレータは、操作部8及びシステム制御部9を介して、Aサイドのガイド機構マーク18と、Bサイドのガイド機構マーク18のどちらを表示するか、選択する。例えば、操作部8に、スイッチ等を設けても良いし、表示部7に表示された画面に選択肢を表示させても良い。選択肢は、図示しない表示制御部により表示される構成であってもよい。
【0064】
図11A及び図11Bは、表示部7に表示された、超音波画像19とガイド機構マーク18を表す画面の一例である。この画面は、図示しない表示制御部により表示される構成であってもよい。
【0065】
オペレータがAサイドのガイド機構マーク18の表示を選択した場合、図10Aに対応する図11Aが表示部7に表示される。図11Aにおける原点Oは、図10Aにおける原点Oに対応する。超音波診断の範囲L2は、図10Aにおける超音波送受波部10の長手方向の長さL1を、ある倍率(L2/L1倍)で拡大あるいは縮小した範囲に対応する。図11Aにおける超音波画像19の上部境界(X軸)とガイド機構マーク18の下端部との距離をHとする。Hは、図10AにおけるhをL2/L1倍に拡大あるいは縮小した距離に対応する。
【0066】
図11Aにおけるガイド機構マーク18の下端部中央のX座標を図11A左側から順番に、X2、X3とする。X2及びX3は、x2及びx3をそれぞれL2/L1倍に拡大あるいは縮小した座標である。
【0067】
一方、オペレータがBサイドのガイド機構マーク18の表示を選択した場合、図10Bに対応する図11Bが表示部7に表示される。図11Bにおける原点Oは、図10Bにおける原点Oと一致する。超音波診断の範囲L2は、図10Bにおける超音波送受波部10の長手方向の長さL1を、ある倍率(L2/L1倍)で拡大あるいは縮小したものである。図11Bにおける超音波画像19の上部境界(X軸)とガイド機構マーク18の下端部との距離をHとする。Hは、図10BにおけるhをL2/L1倍に拡大あるいは縮小した距離に対応する。
【0068】
図11Bにおけるガイド機構マーク18の下端部中央のX座標をX4とする。X4は、x4をそれぞれL2/L1倍に拡大あるいは縮小した座標である。
【0069】
また、上記のように側面ごとに表示を分けずに、Aサイド及びBサイドのガイド機構マーク18を、同時に表示するような構成でも良い。その場合、Aサイドのガイド機構マーク18とBサイドのガイド機構マーク18とで、色を変えても良い。
【0070】
更に、実施例2においても、実施例1と同様に、穿刺針刺入範囲23を表示するような構成でも良い。
【0071】
以上の結果、オペレータは、超音波画像19の視認性を損なうことなく穿刺針22を刺入する方向を認識できる。その結果、スムーズな超音波穿刺術式を行うことが可能である。
【0072】
また、変形例として、超音波プローブ1にジャイロセンサなどを設けることで、超音波プローブ1の傾きを検知するような構成としても良い。例えば、図10におけるAサイドが上を向いている場合、表示部7にはAサイドのガイド機構マーク18、あるいは穿刺針刺入範囲23が自動的に表示される。
【0073】
なお、オペレータが超音波プローブ1を傾けた状態で穿刺針22の刺入を行う場合、ガイド機構11の下端が被検接触面20に接触する場合がある。この場合は、図3におけるhは実質的に0となり、それに伴い図5におけるHも0となる。また、本実施形態では、超音波送受波部10の全体に対応する超音波画像19を表示する前提で説明したが、超音波送受波部10の一部に対応する超音波画像19を表示した場合においても、本実施形態を適用することが可能である。すなわち、このような場合においても、実際のガイド機構11の位置に対応してガイド機構マーク18を表示することができる。
【0074】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0075】
1 超音波プローブ
2 送受信部
3 Bモード処理部
4 画像処理部
5 ガイド機構データベース
6 ガイド機構マーク設定部
7 表示部
8 操作部
9 システム制御部
10 超音波送受波部
11 ガイド機構
13 送信部
14 受信部
18 ガイド機構マーク
19 超音波画像
20 被検接触面
21 穿刺対象部位
22 穿刺針
23 穿刺針刺入範囲
31 壁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B