(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6309246
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】複数の光源を備える自動車ヘッドライト用の照明モジュール
(51)【国際特許分類】
F21S 41/00 20180101AFI20180402BHJP
F21S 43/00 20180101ALI20180402BHJP
F21S 45/00 20180101ALI20180402BHJP
F21V 5/02 20060101ALI20180402BHJP
F21V 7/04 20060101ALI20180402BHJP
F21W 103/00 20180101ALN20180402BHJP
F21W 104/00 20180101ALN20180402BHJP
F21W 105/00 20180101ALN20180402BHJP
F21W 102/00 20180101ALN20180402BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20180402BHJP
【FI】
F21S8/12 120
F21S8/10 170
F21S8/10 180
F21S8/12 140
F21V5/02 350
F21V7/04 300
F21W101:10
F21Y115:10
【請求項の数】18
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-232705(P2013-232705)
(22)【出願日】2013年11月11日
(65)【公開番号】特開2014-96368(P2014-96368A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2016年7月19日
(31)【優先権主張番号】1260695
(32)【優先日】2012年11月12日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】391011607
【氏名又は名称】ヴァレオ ビジョン
【氏名又は名称原語表記】VALEO VISION
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100179338
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(72)【発明者】
【氏名】ピエール、アルボー
【審査官】
下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−190754(JP,A)
【文献】
特開2009−070679(JP,A)
【文献】
特開2007−265864(JP,A)
【文献】
特開2011−238497(JP,A)
【文献】
特開2011−146133(JP,A)
【文献】
特開2007−109493(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0246203(US,A1)
【文献】
仏国特許出願公開第2535014(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/00
F21S 43/00
F21S 45/00
F21V 5/02
F21V 7/04
F21W 103/00
F21W 104/00
F21W 105/00
F21W 102/00
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車ヘッドライト用の照明モジュール(2)であって、
連続的に配置された複数の光源(4)と、
柱面として形成された反射面を有するリフレクタ(8)と、
前記リフレクタで反射された前記各光源からの光を受けるレンズ(10)と、
を備え、
前記リフレクタは、前記各光源によって放射される光からそれぞれ一つの光スポットを形成するように配置され、
前記リフレクタは、前記柱面の母線に直角な平面内に断面を有し、この断面が、前記光源の幅と長さとの比に対して前記光スポットの幅と長さの比を変更するように、且つ、前記光源の前記長さ方向の光パワー分布に対して前記光スポットの前記長さ方向の光パワー分布を変更するように構成されており、
前記レンズは、前記レンズの少なくとも2つの焦点のうちの前記光源側にある焦点のところに前記レンズにより形成される前記光源の虚像が鮮明となるように配置される、ことを特徴とする照明モジュール。
【請求項2】
前記リフレクタ(8)の前記断面は、たった1つの変曲点(I)を有する湾曲断面である、請求項1に記載の照明モジュール。
【請求項3】
前記リフレクタ(8)により反射されたときに前記複数の光源(4)から形成される複数の像は、前記レンズ(10)の光軸(28)上にある中心像(26a)と、前記中心像の両側に設けられた2つの側方像(26b、26c)とを含み、前記各側方像(26b、26c)の前記中心像(26a)に隣接する垂直縁(30)が、その上に、前記複数の光源(4)から形成される全ての像の中で鮮明さが最大となる点を有している、請求項1または2に記載の照明モジュール。
【請求項4】
前記リフレクタ(8)により反射されたときに前記複数の光源(4)により形成される複数の像は、前記レンズ(10)の光軸(28)の両側に設けられるとともに互いに隣接する2つの像(26、26)を含み、前記2つの像(26、26)の各々の、前記光軸から遠い側の垂直縁(34)上に、前記複数の光源(4)から形成される全ての像の中で鮮明さが最大となる点を有している、請求項1または2に記載の照明モジュール。
【請求項5】
前記レンズ(10)の面(16)は波形を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の照明モジュール。
【請求項6】
波形を有する前記レンズ(10)の面は、前記光源(4)からの光のための出力面(16)である請求項5に記載の照明モジュール。
【請求項7】
前記各光源(4)は、当該光源による光の放射の主方向に対して直角を成す平面内に正方形形状を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の照明モジュール。
【請求項8】
前記光源(4)は、前記複数の光源の全てを通る直線が存在するように配置される請求項1から7のいずれか一項に記載の照明モジュール。
【請求項9】
前記直線は前記各光源にある複数の縁のうちの一つを通る、請求項8に記載の照明モジュール。
【請求項10】
前記光源(4)は、前記各光源の輪郭の頂点のうちの1つを通る曲線が存在するように配置される請求項1から7のいずれか一項に記載の照明モジュール。
【請求項11】
前記複数の光源(4)は、前記各光源の中心を通る曲線が存在するように配置される請求項1から7のいずれか一項に記載の照明モジュール。
【請求項12】
前記曲線が変曲点を有さない請求項11に記載の照明モジュール。
【請求項13】
前記光源(4)の輪郭が1つの同じ平面内に含まれる請求項1から12のいずれか一項に記載の照明モジュール。
【請求項14】
前記各光源(4)が2つの対向する縁を有し、前記光源の全ての対向する縁が互いに平行である請求項1から13のいずれか一項に記載の照明モジュール。
【請求項15】
前記対向する縁が前記レンズの光軸と平行である、請求項14に記載の照明モジュール。
【請求項16】
前記複数の光源(4)が個別に制御することができる、請求項1から15のいずれか一項に記載の照明モジュール。
【請求項17】
前記光源(4)から前記レンズ(10)への光の直接的な伝送に対する障害を形成するスクリーン(6)を備える、請求項1から16のいずれか一項に記載の照明モジュール。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載の前記照明モジュール(2)を少なくとも1つ備える、自動車ヘッドライト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用のヘッドライトなどの照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイビーム照明機能およびロービーム照明機能を自動車に設けることは既知の方法である。前者は、車両の前方の道路の幅全体にわたって照明を供給する。後者は、車両が位置される車線のための照明、および、側方に位置される車線であって車両が反対方向で走行している可能性が高い車線のための減少された照明を供給する。このことは、後者の搭乗者の眼をくらませないことを意味する。しかしながら、ロービーム機能は、その最も一般的な形態では、この隣接する車線を越えて位置される道路の脇のために十分遠い光を与えない。このとき、これは、危険な光源を成す。例えば、この道路脇に立っている歩行者が今にも道路を横切ろうとしている場合には、その歩行者をドライバーが十分早期に気付くことができない。
【0003】
これを改善するため、車両の前方に位置される光景の特定の部分、特に隣接する車線を越えて位置される道路脇を、大きな距離を隔てて選択的に照らすことができるようにする適応ビーム機能が提案されてきた。この目的のため、観察装置が、光景を解析して、照らされるべき領域を選択する。
【0004】
このため、特に、この光景を、照明されるようになっている光景の部分にしたがって選択的に照らされる複数の垂直な長方形ストリップへと仮想的に分けることが既知の方法である。(選択的に照らされるべき光景の異なる領域の行列配置により、すなわち、縦列および横列の状態で、同じタイプの作用を実現できる)。また、ストリップの上部ではなく下部において照明を増大させることも望ましい。
【0005】
この作用を実現できるようにするヘッドライトが欧州特許第2278217号明細書で与えられる。このヘッドライトは、それぞれのストリップを形成するようになっている複数の隣接するモジュールを備える。各モジュールは、光源と、リフレクタと、ストリップのうちの1つを生成できるようにするレンズとを備える。リフレクタは、それが光源からの光の垂直方向の拡散を確保するとともにストリップの下部がストリップの上部よりも多く照らされるような形状を有する。
【0006】
しかしながら、ヘッドライトは、所望のストリップを並列させるべく数のモジュールが存在するため、大型である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の1つの目的は、この欠点を軽減すること、したがって、車両の前方に見える光景の異なる領域を選択的に照らすことができるようにする装置の体積を減らすことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のため、本発明によれば、
自動車ヘッドライト用の照明モジュールであって、連続的に配置された複数の光源と、柱面として形成された反射面を有するリフレクタと、前記リフレクタで反射された前記各光源からの光を受けるレンズと、を備え、前記リフレクタは、前記各光源によって放射される光からそれぞれ一つの光スポットを形成するように配置され、前記リフレクタは、前記柱面の母線に直角な平面内に断面を有し、この断面が、前記光源の幅と長さとの比に対して前記光スポットの幅と長さの比を変更するように、且つ、前記光源の前記長さ方向の光パワー分布に対して前記光スポットの前記長さ方向の光パワー分布を変更するように構成されており、前記レンズは、前記レンズの少なくとも2つの焦点のうちの前記光源側にある焦点のところに前記レンズにより形成される前記光源の虚像が鮮明となるように配置される、照明モジュールが提供される。
【0009】
したがって、光源は、同じリフレクタおよび同じレンズと関連付けられる。そのため、装置の体積がかなり減少される。
【0010】
光源は、本明細書中では、LEDなどの部材の発光面であるとして規定される。
【0011】
鮮明さに関して、レンズは、その焦点のうちの1つに配置される
光源の前記レンズにより形成される像がその全長にわたって鮮明な輪郭を有するように配置される。鮮明な輪郭は以下のように規定される。
【0012】
I(h,v)は、2つの角度h,vに応じた強度であるとする(例えば、log(25mでのスクリーン上の照明)に等しい)。
【0013】
このとき、コントラストは||grad(I)||に等しい。
【0014】
輪郭は、各点でコントラストが所定の閾値(欧州規格によれば例えば0.13)よりも大きい場合に鮮明であると言われる。
【0015】
特に、リフレクタが、
柱面の母線に対して直角
な平面内に、リフレクタによって各光源の像の寸法を増大させるように且つレンズにより投影される各光源の像の上半分における光束の平均値が像の下半分における光束の平均値よりも小さいように構成される断面を有するようにすることができる。
【0016】
したがって、供給される光パワーは、スポットの上部におけるよりも下部において大きい。
【0017】
リフレクタは、好ましくはたった1つの変曲点を有する湾曲断面を有することが好ましい。
【0018】
そのような形状は、垂直方向でスポットのそれぞれにおいて光の良好な分配を得るのに有利に作用する。
【0019】
レンズは、該レンズによって供給される光源の全体像の鮮明さがこの像の少なくとも2つの所定の点で像の他の領域と比べて最大となるように配置されるのが好ましい。
【0020】
そのため、レンズは、生み出される照明が過度の光パワーに対応する不連続性またはホットスポットを何ら与えないようにするため、複数の光源を考慮に入れるように、したがって、スポットの垂直縁で良好な鮮明さを得るように光学的に最適化される。したがって、装置は、車両のドライバーにとって快適で且つ車両の前方に位置される光景の取り得る最良の認識をドライバーに対して与える照明をもたらす。
【0021】
1つの実施形態では、前記点が2つの光源の像の縁に位置され、これらの像が1つの同じ光源の像に直接に隣接し、これらの縁がその像と並んで位置される。
【0022】
他の実施形態では、前記点が2つの光源の像の縁に位置され、これらの像が互いに直接に隣接し、各像の縁が他の像と対向する側に位置される。
【0023】
これらの2つの実施形態のそれぞれは、レンズを最適化することおよび満足な照明を得ることに関して良好なトレードオフを示す。
【0024】
好適には、レンズの面が波形を有する。
【0025】
この特徴により、スポットの水平な上縁を僅かにぼかして、スポットと一般に夜間の環境との間に過度に鋭い光強度破壊を有することを回避でき、それにより、ドライバーの快適さおよび認定が向上する。
【0026】
好適には、波形を有するレンズの面は、光源からの光のための出力面である。
【0027】
光源による光の放射の主方向に対して直角を成す平面内に各光源が正方形形状を有するようにすることができる。
【0028】
そのような光源は、特にそれらが発光ダイオードから成るときに、長方形形状の光源の原価よりも低い原価を有し、それにより、それらの光源の使用が有利になる。また、本発明に係るモジュールは、正方形光源から垂直方向で大きな広がりを得ることができるようにする。
【0029】
モジュールは、以下の特徴のうちの少なくともいずれか1つを与えることもできる。すなわち、
−光源は、全ての光源を通る、特に各光源の縁のうちの1つを通る直線が存在するように配置される、
−光源は、各光源の輪郭の頂点のうちの1つを通る曲線が存在するように配置される、
−光源は、各光源の中心を通る曲線が存在するように配置される、
−曲線が変曲点を有さない、
−光源の輪郭が1つの同じ平面内に含まれる、
−各光源が2つの対向する縁を有し、光源の全ての対向する縁が互いに平行である、
−縁が光軸と平行である。
【0030】
好適には、モジュールは、光源が互いに対して個別に制御され得るように配置される。
【0031】
好適には、モジュールは、光源からレンズへの光の直接的な伝送に対する障害を形成するスクリーンを備える。
【0032】
さもなければ、レンズへ直接に伝送されるこの光は、実際には、ストリップ状の疑似光線を形成する。
【0033】
本発明によれば、本発明に係る少なくとも1つのモジュールを備える、好ましくは複数の前記モジュールを備える自動車ヘッドライトも提供される。
【0034】
このヘッドライトは、信号装置を構成することもできる。
【0035】
本発明に係る他の対象は、本発明に係る少なくとも1つの照明モジュールまたは装置を備える自動車である。
【0036】
ここで、以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は、本発明に係るモジュールの概略斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1のモジュールのリフレクタの断面の形状を示す。
【
図4】
図4は、
図1のモジュールのリフレクタを計算する際に使用される特定の量を表す。
【
図5】
図5は、
図1のモジュールのリフレクタを計算する際に使用される特定の量を表す。
【
図6】
図6は、リフレクタのそれぞれの点によって戻される正規化された照明の傾向を、車両の軸と平行な軸に沿うその点の座標の関数として示す曲線である。
【
図7】
図7は、直線断面を有するリフレクタに対するリフレクタの点の位置の微分垂直オフセットを、この点により戻される照明の関数として表す曲線である。
【
図8】
図8は、2つのそれぞれの実施形態における、リフレクタにより生成されて
図1のモジュール内のレンズの光学的最適化のために使用される光源の像の2つの図である。
【
図9】
図9は、2つのそれぞれの実施形態における、リフレクタにより生成されて
図1のモジュール内のレンズの光学的最適化のために使用される光源の像の2つの図である。
【
図10】
図10は、
図1のモジュールにより生成される光ストリップを、それらが道路上の車両の前方に配置されるスクリーン上に現れるように示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1〜
図3は、本発明に係る自動車ヘッドライト用の照明モジュール2を示す。
【0039】
モジュール2は、光源4、カバーまたはスクリーン6、ミラーまたはリフレクタ8、および、レンズ10を備える。
【0040】
以下では、
図1に示される直交基準座標系XYZが使用され、この場合、水平軸X,Yはそれぞれ、直角を成すとともに、車両の走行方向と平行であり、また、軸Zは垂直である。
【0041】
光源4は、この場合、発光ダイオードの形態を成して形成される。これらの光源は、それらの光軸が垂直の状態で上方へ向けられる照明をもたらすように配置される。これらの光源は、この光軸に対して直角を成す平面内で見たときに正方形形状を有する。各光源は、平坦なときには、例えば1mm
2に等しい表面積を有する。光源は、軸Xに対して平行な方向で一列に並べられる。光源は、例えば、全ての光源に共通のプリント回路12によって支持される。任意の数の光源が存在し得る。数は、3つ以上であって、可能な限り多く、各光源は、照明を形成するストリップのうちの1つをもたらす。
【0042】
したがって、全ての光源を通過する、特に各光源の縁のうちの1つを通過する直線が存在するように光源が配置されるのが分かる。光源の輪郭は、1つの同じ平面内に含まれる。各光源は2つの対向する縁を有し、また、全ての光源の対向する縁は互いに平行である。縁は光軸と平行である。
【0043】
スクリーン6は、光源からの光がレンズ10に直接に到達しないように配置される。
【0044】
レンズは後面14および前面16を有し、これらの面は、光源からの光の経路に関連して車両の走行方向でこのように名付けられる。
図2に示されるように、各光源4からの光の少なくとも一部は、リフレクタ8によって面14へ向けて反射された後、互いに対しておよび軸Yに対して平行な光線の形態を成して面16を通じてレンズから出る。
【0045】
図10は、車両の前方の道路22を横切る軸X,Zと平行な平面内に配置される垂直スクリーン上にモジュールにより形成される全体像20を示す。この全体像は、光源4が存在する数と同じ数の垂直な長方形のストリップ24へと分割される。各ストリップの高さは、ストリップの幅よりも大きい。ストリップは、それらの垂直縁同士が隣り合って並ぶ。ストリップの一部は、道路全体、この場合には道路の2つの車線を照らすように車両の前方で延び、また、他のストリップは、道路の脇を照らすように、先の車線を越えて軸Xの方向に延びる。
【0046】
この例では、ストリップ24が互いに同一である。しかしながら、これらのストリップの幅および/またはこれらのストリップの長さを異ならせるようにすることができる。同様に、ここでは、ストリップの上下の水平な縁がそれぞれ一致する。しかしながら、これは必須ではない。また、ここでは、ストリップの単一の水平な列が与えられる。しかしながら、モジュールは、上下に延びるストリップの少なくとも2つの水平な列を形成することができる。
【0047】
光源からの光に晒されるリフレクタ8の面
(反射面)は
幾何学用語としての柱面に該当し、この柱面の(無数ある全ての)母線は軸Xと平行である
。リフレクタ
8は、図3に表される軸Y,Zと平行な平面内に
図3において実線で示された断面を有し、
この実線は上記(無数の)母線と上記軸Y,Zと平行な平面との交点の集合体である。
【0048】
レンズ10が全ての光源4から生じる光を受けるため、レンズは、光源の像を形成するストリップ24が可能な限り鮮明な垂直縁を有するように光学的に最適化される。この最適化を達成する方法については後に分かる。
【0049】
また、レンズが全ての光源に共通であり、これらの光源が好ましくは小さい寸法を有することを知って、リフレクタ8をアナモルフィックレンズの形態で形成しても、良好な結果を簡単に得ることはできない。これは、ここでは、リフレクタが満足な或いは更には最適な結果を与えるように、リフレクタの形状を計算することが選択されるからである。特に、
図3に示されるリフレクタの断面形状は、直線セグメントおよび円錐セグメントとは異なる。
【0050】
この形状は、多くの機能を果たすように計算される。
【0051】
第1の機能は、リフレクタが正方形の光源から長方形の像24を形成するように各光源4の像の垂直方向の広がりを生み出すことである。
【0052】
第2の機能は、ストリップ24の下部に上部よりも大きい光パワーを与えるように光源から生じる光パワーを分配することにある。より具体的には、単位表面積当たりのストリップにおける光パワーがストリップの下縁から大きく離れて位置されるほど低くなるようにするべく努力がなされる。
【0053】
リフレクタの断面の形状を計算するために、第1のステップは、リフレクタのそれぞれの点によって戻される正規化された照明の傾向を、車両の軸と平行な軸に沿うその点の座標の関数として決定することである。
【0054】
開始点は、
図3に示される軸Y,Zに対して45°に方向付けられる軸Xと平行な直線状の断面である。この断面と一直線を成して位置される単一の光源4が考慮される。軸Yは光源の平面を通り抜け、また、軸Zは光源の前端を通り、したがって、この前端が基準座標系の原点Oを形成する。
図4を参照すると、断面のそれぞれの点で、フラックスδΦ=I.δΩが計算される。この場合、
−Iは、考慮されるリフレクタの点の方向で光源により放射される強度、および、
−δΩは、考慮される点から光源が見られる無限小立体角である。
【0055】
δΦの値は、最低から最高まで、アフィン変換により0〜1まで減少される。
【0056】
この計算を行うために、以下の方法が実施される。
【0057】
図5を参照すると、
−E
rは、リフレクタの点(0,y
r,z
r)における光源により生み出される照明である。これは、リフレクタの面素ごとのフラックスである。
−E
sは、ランバートであると仮定される光源のエミッタンスであり、
−αは、光源の現在の点とリフレクタの考慮される点とを通る直線によって軸Zに対して形成される角度であり、
−θは、この点でこの直線とリフレクタの法線とにより形成される角度であり、
−rは、光源の現在の点からリフレクタ上の考慮される点までの距離であり、
−hは、軸X上の光源の幅を示し、
−L
sは、軸Y上の光源の長さであり、
−x
sおよびy
sは、光源の現在の点の座標であり、
−dz(E
r)は、リフレクタの点によって反射される光源の像に対して軸Zの方向で与えられるようになっているオフセットを示す。
【0058】
したがって、以下のように書き表すことができる。
【数1】
積分が光源に関してとられる。すなわち、
【数2】
積分が
【数3】
に関してとられる。
【0059】
また、
【数4】
この場合、n
yおよびn
zは、考慮される点でのリフレクタに対して垂直な単位ベクトルのゼロ以外の座標である。
【0061】
平坦なリフレクタの場合、リフレクタの任意の点で形成される虚像は同じサイズを有し、したがって、E
rは点(0,y
r,z
r)の虚像のエミッタンスである。
【0062】
なお、y
r=f
y(u)およびz
r=f
z(u)である場合には、
【数6】
であり、
また、45°の平坦なリフレクタの場合には、f
y=u+y
0およびf
z=u+z
0である。y
0およびz
0は、定数であり、リフレクタの1つの点の座標である。
【0063】
点(y
0,z
0)を通る45°の平面に対する基準座標系の原点の対称点は、(y
0−z
0,y
0+z
0)点に位置される。虚像の上端(したがって、投影像の下端)がこの点を通る。したがって、この点から、dz(E
r)が軸−Z上で測定される。
【0064】
f
y(u)=uとして、リフレクタの点(x
r,y
r)を考慮すると、
それにより、以下が適用される。すなわち、
【数7】
【0065】
がOから生じる考慮される点での入射光線であるとすると、
【数8】
【0067】
仮想光線は、点Iにおいて45°のリフレクタの虚像の平面に直面し、その場合、
【数10】
となり、また、
λ
r−λr
y=u−λr
y=y
0−z
0となり、
それにより、
【数11】
となる。
【0068】
また、以下の場合には、リフレクタが望み通りに像をシフトさせる。
【数12】
【0069】
これは、u,f
zおよびf’
zに関する方程式である。f
zに関するこの微分方程式は、f
z(y
0)=z
0を初期条件として用いるとともに、y
0,z
0およびdzE
rをパラメータとして用いて、数値的に解くことができる。
【0070】
以上から、
図6は、光源によりもたらされる照明E
rの傾向を、リフレクタの考慮される点の軸Yに沿う座標の関数として示している。
【0071】
この場合、光源に対応するストリップにおいて、目的は、リフレクタの異なる部分によりもたらされる光源の像を、それらの部分が伝える光束に応じてシフトさせることである。より具体的には、目的は、低い光強度を伝える像を上げるとともに、強い強度を伝える像を下げることである。このため、この場合、照明の値に応じてリフレクタによりもたらされる光源の像に与えられるべき垂直方向のオフセットdzが任意に決定される。
図7は、このオフセットdzに関して適用されるべくここで選択される傾向を照明E
rの値の関数として示している。
【0072】
このとき、リフレクタの考慮されるそれぞれの点で、リフレクタの法線が所望のオフセットをもたらすために有するべき方向が計算される。この方向がリフレクタの全ての点に関して決定されると、45°で方向付けられる平坦なリフレクタに共通のリフレクタの下縁から始めるという基準に基づいて、各点の位置が決定される。したがって、リフレクタを段階的に構成することができる。方向のこの計算およびこの構成は、コンピュータプログラムによって困難を伴わずに行うことができる。
【0073】
得られる断面は、
図3に示される形状を有する。断面は、リフレクタの下側4分の1に位置される変曲点Iを有しつつ十分に湾曲される。この点よりも下側において、リフレクタの曲率中心は、この点よりも上側で適用されるのとは異なり、リフレクタの前方に位置される。
【0074】
したがって、歪像を伴うことなく、光源からのビームの垂直な拡散がもたらされる。また、レンズによって投影される各光源の像24の上半分における光束の平均値は、像の下半分における光束の平均値よりも小さい。
【0075】
更に、レンズ10は、不利な収差を最小にするためにその2つのジオプターが最適化される。このため、レンズの光軸に最も近い2つ或いは3つのLEDが考慮に入れられる。
図8および
図9は、この最適化の2つの実施を示す。これらの図は、リフレクタによって反射される際の光源の像26を示す。これらの像は、最大寸法が垂直方向で測定される一列に並べられたストリップである。ストリップは隣接していない。
【0076】
図8において、奇数の光源が存在するときに特に適用できる実施形態では、軸Yと平行なレンズの光軸28が、配列の中心に位置される光源の像26aの垂直な対称面を通るようにされる。2つの隣り合う光源の像26b,26cが中心像26aに最も近い。レンズは、最大の鮮明さの利益を享受するべく、以下の2つの縁、すなわち、像26aに最も近い像26cの垂直縁30、および、像26aに最も近い像26bの垂直縁30に関して最適化される。したがって、この場合、レンズは、側方の像26b,26cの像の光軸に最も近い垂直縁の鮮明さに有利に作用するように最適化される。中心像26aの縁の像は、像26b,26cの像の外側縁においてそうであるように、少しぼやけている。このとき、3つのかなり鮮明なストリップを得ることができるが、以下で説明される
図9の場合には、ストリップが更に劣った鮮明さを有する。本実施形態は、車両ヘッドライトが本発明にしたがって設計されるときに左右の車両ヘッドライトからのビームの大きな重なりを有することが目的である場合に適用される。
【0077】
図9は他の実施形態を示す。レンズの光軸28は、画像26のうちの2つの間で、配列の中心に位置される隙間32の垂直な対称面を通る。したがって、それらは互いに隣り合う2つの像である。レンズは、最大の鮮明さの利益を享受するために隙間から最も遠く離れるこれらの2つの像26のそれぞれの縁35に関して最適化される。このケースは、モジュールからのビームが車両の内部へ向けて弱く延びるときに適用できる。この場合には、光軸に最も近い像の縁の像が少しぼやける。このケースは、2つの非常に鮮明なストリップを得ることができるようにするとともに、車両ヘッドライトが本発明にしたがって設計されるときに左右の車両ヘッドライトからのビームの弱い重なりを得ることが目的である場合に適用される。
【0078】
本発明に係るモジュールは、特に、適切に鮮明な垂直縁を有するストリップを得ることができるようにする。本発明に係るモジュールは、画像20上のストリップ24間に黒色ストリップを呈さないビームをもたらすことができるようにする。したがって、審美的に良くない櫛効果が回避される。
【0079】
この場合には、レンズの出力面16が数ミクロンの深さを伴う波形を有するようにする。これらの波形は、ストリップとその環境との間のその垂直端での光移行が可能な限り緩やかとなるように各ストリップの小さい上辺および下辺を僅かにぼかせるという効果を有する。
【0080】
光源は、各光ストリップの互いに対して個別な生成をモジュールに適した制御手段によって制御できるように扱われ得る。
【0081】
例えば、レンズとリフレクタとの間の軸Yに沿って測定される最大全長が約40mmとなるようにすることができる。
【0082】
このモジュールが、場合によりそれ自体で或いは1つ以上の他の装置に加えて、ハイビーム機能および/またはロービーム機能も確保するようにし得る。
【0083】
そのようなモジュールを備えるヘッドライトには、1つ以上の信号灯を設けることもできる。
【0084】
無論、本発明の枠組みから逸脱することなく、本発明に対して多くの変更を成すことができる。
【0085】
特に、ストリップの下部で相補的なビームが重ね合わされることにより緩やかな移行を確保するため、特に、低い光強度を有する光源の像の一部がストリップの下端付近に伝えられるようにすることができる。