特許第6309249号(P6309249)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6309249短期運転性向判定方法及び短期運転性向判定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6309249
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】短期運転性向判定方法及び短期運転性向判定装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 40/09 20120101AFI20180402BHJP
   F16H 59/66 20060101ALI20180402BHJP
   F16H 59/18 20060101ALI20180402BHJP
   F16H 59/44 20060101ALI20180402BHJP
   F16H 61/02 20060101ALI20180402BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20180402BHJP
   B60W 10/10 20120101ALI20180402BHJP
   G05B 13/02 20060101ALI20180402BHJP
【FI】
   B60W40/09
   F16H59/66
   F16H59/18
   F16H59/44
   F16H61/02
   B60W10/06
   B60W10/10
   G05B13/02 N
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-234173(P2013-234173)
(22)【出願日】2013年11月12日
(65)【公開番号】特開2015-67268(P2015-67268A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年9月16日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0114692
(32)【優先日】2013年9月26日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田 炳 ウク
(72)【発明者】
【氏名】チャン ジョセフ ディー
(72)【発明者】
【氏名】鄭 同 訓
【審査官】 塩澤 正和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−235026(JP,A)
【文献】 特開2000−127803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 − 10/30
B60W 30/00 − 50/16
F16H 59/18
F16H 59/44
F16H 59/66
F16H 61/02
G05B 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力変数を検出する段階と、
短期運転性向判断条件を満たすか否かを判断する段階と、
短期運転性向判断条件を満たせば、入力変数に基づいて複数のファジールールによる性向と出力メンバーシップ関数値を計算する段階と、
複数のファジールールによる性向と出力メンバーシップ関数値に基づいて短期運転性向指数を判断する段階と、
を含み、
入力変数に基づいて複数のファジールールによる性向と出力メンバーシップ関数値を計算する段階は各ファジールールによる性向と出力メンバーシップ関数値を計算する段階を含み、
各ファジールールによる性向と出力メンバーシップ関数値を計算する段階が、
入力変数が該当ファジールールを満たすか否かを判断する段階と、
該当ファジールールを満たせば、該当ファジールールによる性向および出力メンバーシップ関数を選択する段階と、 該当ファジールールに含まれている入力変数による入力メンバーシップ関数値を計算する段階と、
入力メンバーシップ関数値のうちの最小値を計算する段階と、
前記最小値を該当ファジールールによる出力メンバーシップ関数値として設定する段階と、
を含み、
入力変数が該当ファジールールを満たさなければ、該当ファジールールによる性向および出力メンバーシップ関数値をそれぞれ設定性向と設定値として設定する段階をさらに含むことを特徴とする短期運転性向判定方法。
【請求項2】
短期運転性向判断条件が、前の車との距離が設定距離以上であるか、前方道路の曲率半径が設定曲率半径以上であるか、道路の勾配度が設定勾配度以下であるか、道路の状態が滑りやすい路面、凍結路面、険路、非舗装道路でない場合に満たされることを特徴とする請求項1に記載の短期運転性向判定方法。
【請求項3】
前記入力変数が、加速ペダルの位置、加速ペダルの位置変化率、車速および道路の勾配度であることを特徴とする請求項1に記載の短期運転性向判定方法。
【請求項4】
前記短期運転性向指数を判断する段階が、
複数の出力メンバーシップ関数を一つの短期性向指数グラフに重畳する段階と、
前記短期性向指数グラフで複数の出力メンバーシップ関数値によって占められる面積の重心を計算する段階と、
前記重心を短期運転性向指数として設定する段階と
を含むことを特徴とする請求項1に記載の短期運転性向判定方法。
【請求項5】
4つのファジールールと“マイルド”、“普通”および“スポーティー”から構成された3つの性向および各性向による出力メンバーシップ関数が予め設定されていることを特徴とする請求項3に記載の短期運転性向判定方法。
【請求項6】
第1ファジールールが、‘車速が“低く”、加速ペダルの位置が“中間”であり、加速ペダルの位置変化率が“中間”であれば、性向は“普通”である’ことを特徴とする請求項5に記載の短期運転性向判定方法。
【請求項7】
第2ファジールールが、‘車速が“低く”、加速ペダルの位置が“中間”であり、加速ペダルの位置変化率が“高ければ”、性向は“スポーティー”である’ことを特徴とする請求項5に記載の短期運転性向判定方法。
【請求項8】
第3ファジールールが、‘車速が“高く”、加速ペダルの位置が“高く”、加速ペダルの位置変化率が“高ければ”、性向は“スポーティー”である’ことを特徴とする請求項5に記載の短期運転性向判定方法。
【請求項9】
第4ファジールールが、‘加速ペダルの位置が“中間”であり、道路の勾配度が“高ければ”、性向は“普通”である’ことを特徴とする請求項5に記載の短期運転性向判定方法。
【請求項10】
加速ペダルの位置を検出する加速ペダル位置センサーと、
車速を検出する車速センサーと、
道路の勾配度を含む道路の情報を提供するようになされたナビゲーション装置と、
前記加速ペダル位置センサー、車速センサーおよびナビゲーション装置から加速ペダルの位置、車速および道路の勾配度を含む入力変数に関する情報を受信し、前記情報に基づいて運転者の短期運転性向を判定し、前記短期運転性向によってエンジンまたは変速機を制御する制御ユニットと、
を含み、
前記制御ユニットが、入力変数に基づいて複数のファジールールによる性向と出力メンバーシップ関数値を計算し、複数のファジールールによる性向と出力メンバーシップ関数値に基づいて短期運転性向を判断し、
前記制御ユニットが、各ファジールールによる性向と出力メンバーシップ関数値を計算することによって入力変数に基づいて複数のファジールールによる性向と出力メンバーシップ関数値を計算し、
前記制御ユニットが、該当ファジールールによる性向および出力メンバーシップ関数を選択し、該当ファジールールに含まれている入力変数による入力メンバーシップ関数値を計算し、入力メンバーシップ関数値のうちの最小値を該当ファジールールによる出力メンバーシップ関数値として計算することによって各ファジールールによる性向と出力メンバーシップ関数値を計算し、
前記制御ユニットが、入力変数が該当ファジールールを満たすか否かを判断し、該当ファジールールを満たせば該当ファジールールによる性向および出力メンバーシップ関数を選択し、該当ファジールールを満たさなければ該当ファジールールによる性向および出力メンバーシップ関数値をそれぞれ設定性向と設定値として設定することを特徴とする短期運転性向判定装置
【請求項11】
前記制御ユニットが、前の車との距離が設定距離以上であるか、前方道路の曲率半径が設定曲率半径以上であるか、道路の勾配度が設定勾配度以下であるか、道路の状態が滑りやすい路面、凍結路面、険路、非舗装道路でない場合にのみ短期運転性向を判断することを特徴とする請求項10に記載の短期運転性向判定装置
【請求項12】
前記制御ユニットが、複数の出力メンバーシップ関数を一つの短期性向指数グラフに重畳し、前記短期性向指数グラフで複数の出力メンバーシップ関数値によって占められる面積の重心を計算することによって、短期運転性向を判断することを特徴とする請求項10に記載の短期運転性向判定装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は短期運転性向判定方法およびこれを用いた変速制御装置に係り、より詳しくは、運転者の短期運転性向をより正確に判断することによって運転者の意志をより正確に変速に反映することができる短期運転性向判定方法およびこれを用いた変速制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の走行性能に関連した顧客の満足度は、車両がどのくらい顧客の性向に合うように走行するかにかかっている。しかし、顧客の性向は多様である反面、同一の車種については車両の性能特性が一つの性能特性に定められているので、顧客の運転性向と車両の反応の間には差が発生することがある。これにより、顧客は時々車両の走行性能に対して不満を提起するようになる。つまり、顧客の運転性向を把握して顧客の運転性向に適するように車両が反応するように変速を制御すれば走行性能に関連した顧客の満足度を極大化することができる。例えば特許文献1参照方。
【0003】
これにより、顧客の運転性向を長期間学習し、学習された運転性向によって変速を制御する方法が開発された。学習された運転性向によって変速を制御する方法は顧客の運転性向は一定であるという仮定の下に遂行される。しかし、運転者の性向は常に一定であるのではなく、運転者の感情や瞬間的な運転意志の変化、道路条件などによって変わるので、学習された運転性向はある瞬間での実際運転者の性向とは差が大きくなる。これにより、学習された運転性向に合わせて変速制御を行う場合、運転者の実際意志を変速に反映せず、むしろ運転者の不満を招く問題があった。
【0004】
例えば、運転者が加速ペダルを多く踏んだ場合、従来の変速制御装置は車両が登坂路で運転するために運転者が加速ペダルを多く踏んだか、車両を加速するために運転者が加速ペダルを多く踏んだかを区別することができなかった。これにより、誤った変速制御を行って運転者の不満を招くようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−101272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記のような点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、短時間(例えば、現在の走行の間または現在の走行内設定された時間)の運転者の短期運転性向を正確に判断することによって運転者の意志をより正確に変速に反映することができる短期運転性向判定方法およびこれを用いた変速制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による短期運転性向判定方法は、入力変数を検出する段階と、短期運転性向判断条件を満たすか否かを判断する段階と、短期運転性向判断条件を満たせば、入力変数に基づいて複数のファジールールによる性向と出力メンバーシップ関数値を計算する段階と、複数のファジールールによる性向と出力メンバーシップ関数値に基づいて短期運転性向指数を判断する段階と、を含み、入力変数に基づいて複数のファジールールによる性向と出力メンバーシップ関数値を計算する段階は各ファジールールによる性向と出力メンバーシップ関数値を計算する段階を含み、各ファジールールによる性向と出力メンバーシップ関数値を計算する段階が、入力変数が該当ファジールールを満たすか否かを判断する段階と、該当ファジールールを満たせば、該当ファジールールによる性向および出力メンバーシップ関数を選択する段階と、該当ファジールールに含まれている入力変数による入力メンバーシップ関数値を計算する段階と、入力メンバーシップ関数値のうちの最小値を計算する段階と、前記最小値を該当ファジールールによる出力メンバーシップ関数値として設定する段階と、を含み、入力変数が該当ファジールールを満たさなければ、該当ファジールールによる性向および出力メンバーシップ関数値をそれぞれ設定性向と設定値として設定する段階をさらに含むことを特徴とする
【0008】
短期運転性向判断条件は、前の車との距離が設定距離以上であるか、前方道路の曲率半径が設定曲率半径以上であるか、道路の勾配度が設定勾配度以下であるか、道路の状態が滑りやすい路面、凍結路面、険路、非舗装道路でない場合に満たされるものであることを特徴とする。
【0009】
前記入力変数は、加速ペダルの位置、加速ペダルの位置変化率、車速および道路の勾配度であることを特徴とする。
【0012】
前記短期運転性向指数を判断する段階は、複数の出力メンバーシップ関数を一つの短期性向指数グラフに重畳する段階と、前記短期性向指数グラフで複数の出力メンバーシップ関数値によって占められる面積の重心を計算する段階と、前記重心を短期運転性向指数として設定する段階とを含むことを特徴とする。
【0013】
4つのファジールールと“マイルド”、“普通”および“スポーティー”から構成された3つの性向および各性向による出力メンバーシップ関数が予め設定されていることを特徴とする。
【0014】
第1ファジールールは、‘車速が“低く”、加速ペダルの位置が“中間”であり、加速ペダルの位置変化率が“中間”であれば、性向は“普通”である’ことを特徴とする。
【0015】
第2ファジールールは、‘車速が“低く”、加速ペダルの位置が“中間”であり、加速ペダルの位置変化率が“高ければ”、性向は“スポーティー”である’ことを特徴とする。
【0016】
第3ファジールールは、‘車速が“高く”、加速ペダルの位置が“高く”、加速ペダルの位置変化率が“高ければ”、性向は“スポーティー”である’ことを特徴とする。
【0017】
第4ファジールールは、‘加速ペダルの位置が“中間”であり、道路の勾配度が“高ければ”、性向は“普通”である’ことを特徴とする。
【0018】
本発明による短期運転性向判定装置は、加速ペダルの位置を検出する加速ペダル位置センサーと、車速を検出する車速センサーと、道路の勾配度を含む道路の情報を提供するようになされたナビゲーション装置と、前記加速ペダル位置センサー、車速センサーおよびナビゲーション装置から加速ペダルの位置、車速および道路の勾配度を含む入力変数に関する情報を受信し、前記情報に基づいて運転者の短期運転性向を判定し、前記短期運転性向によってエンジンまたは変速機を制御する制御ユニットと、を含み、前記制御ユニットが、入力変数に基づいて複数のファジールールによる性向と出力メンバーシップ関数値を計算し、複数のファジールールによる性向と出力メンバーシップ関数値に基づいて短期運転性向を判断し、前記制御ユニットが、各ファジールールによる性向と出力メンバーシップ関数値を計算することによって入力変数に基づいて複数のファジールールによる性向と出力メンバーシップ関数値を計算し、前記制御ユニットが、該当ファジールールによる性向および出力メンバーシップ関数を選択し、該当ファジールールに含まれている入力変数による入力メンバーシップ関数値を計算し、入力メンバーシップ関数値のうちの最小値を該当ファジールールによる出力メンバーシップ関数値として計算することによって各ファジールールによる性向と出力メンバーシップ関数値を計算し、前記制御ユニットが、入力変数が該当ファジールールを満たすか否かを判断し、該当ファジールールを満たせば該当ファジールールによる性向および出力メンバーシップ関数を選択し、該当ファジールールを満たさなければ該当ファジールールによる性向および出力メンバーシップ関数値をそれぞれ設定性向と設定値として設定することを特徴とする。
【0019】
前記制御ユニットは、前の車との距離が設定距離以上であるか、前方道路の曲率半径が設定曲率半径以上であるか、道路の勾配度が設定勾配度以下であるか、道路の状態が滑りやすい路面、凍結路面、険路、非舗装道路でない場合にのみ短期運転性向を判断することを特徴とする。
【0023】
前記制御ユニットは、複数の出力メンバーシップ関数を一つの短期性向指数グラフに重畳し、前記短期性向指数グラフで複数の出力メンバーシップ関数値によって占められる面積の重心を計算することによって、短期運転性向を判断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明の実施形態によれば、運転者の短期運転性向をより正確に判断することによって運転者の意志をより正確に変速に反映できる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態による変速制御装置のブロック図である。
図2】本発明の実施形態による短期運転性向判定方法のフローチャートである。
図3】本発明の実施形態による短期運転性向判定方法におけるi番目ファジールールによるi番目性向およびi番目出力メンバーシップ関数値を計算する方法のフローチャートである。
図4】本発明の実施形態による短期運転性向判定方法における短期性向指数を判断する方法のフローチャートである。
図5】例示的なファジールールを示す表である。
図6】例示的な入力メンバーシップ関数を示すグラフである。
図7】例示的な出力メンバーシップ関数を示すグラフである。
図8】本発明の実施形態による短期運転性向指数を判断する方法を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付した図面に基づいて詳細に説明する。
【0027】
図1は本発明の実施形態による変速制御装置のブロック図である。
【0028】
図1に示しているように、本発明の実施形態による変速制御装置は、データ検出部10、制御ユニット20、エンジン40、そして変速機30を含む。
【0029】
データ検出部10は運転者の短期運転性向を判断するためのデータを検出し、データ検出部10で測定されたデータは制御ユニット20に伝達される。前記データ検出部10は加速ペダル位置センサー11、車速センサー12、ナビゲーション装置13および衛星航法装置(Global Positioning Systemystem;GPS)14を含む。
【0030】
加速ペダル位置センサー11は運転者が加速ペダルを押した程度を測定する。つまり、加速ペダル位置センサー11は運転者の加速意志に関するデータを測定する。
【0031】
車速センサー12は車両の速度を測定し、車両のホイールに装着されている。これとは異なり、前記GPS14で受信したGPS信号に基づいて車速を計算することができる。
【0032】
一方、前記加速ペダル位置センサー11の信号と前記車速センサー12の信号に基づいて変速パターンを用いて目標変速段が計算でき、目標変速段への変速が制御される。つまり、複数の遊星ギヤセットと複数の摩擦要素が備えられた自動変速機の場合には複数の摩擦要素に供給されるか複数の摩擦要素から解除される油圧が調節される。また、二重クラッチ変速機の場合には複数のシンクロナイザ機構およびアクチュエータに加えられる電流が制御される。
【0033】
ナビゲーション装置13は目的地までの経路を運転者に知らせる装置である。前記ナビゲーション装置13にはルート案内に関する情報を入出力する入出力部、車両の現在位置に関する情報を検出する現在位置検出部、ルート計算に必要な地図データと案内に必要なデータが保存されたメモリ、ルート探索やルート案内を実行するための制御部などを含む。しかし、本発明の実施形態では、前記ナビゲーション装置13は制御ユニット20に道路の勾配度や道路の曲率半径など道路の形状に関する情報を提供することができれば十分である。したがって、本明細書および特許請求の範囲でナビゲーション装置13には制御ユニット20に道路の形状に関する情報を提供できるあらゆる装置が含まれる。
【0034】
GPS14はGPS衛星から送信される電波を受信し、これに対する信号を前記ナビゲーション装置13に伝達する。
【0035】
制御ユニット20は前記データ検出部10で検出されたデータに基づいて比較的短時間の間の運転者の短期運転性向を判断する。つまり、制御ユニット20は、例えば現在走行している間または現在の走行内に設定された時間の間の運転者の運転性向を判断することができる。運転者の短期運転性向は運転者の性向に関連する複数のファジールールをどのくらいよく満たすかに基づいて決定され、運転者の短期運転性向を判断するためにファジー制御理論(fuzzy control theory)を用いることができる。このような目的のために、前記制御ユニット20は、設定されたプログラムによって動作する一つ以上のプロセッサーで実現され、前記設定されたプログラムは本発明の実施形態による短期運転性向判定方法の各段階を遂行するようにプログラミングされたものである。
【0036】
また、前記制御ユニット20は前記短期運転性向によって変速機30またはエンジン40を制御する。つまり、制御ユニット20は前記短期運転性向によって変速パターン、目標変速段への締結感、エンジントルクマップおよび/またはエンジントルクフィルターを変更することができる。
【0037】
以下、図2乃至図4を参照して、本発明の実施形態による短期運転性向判定方法を具体的に説明する。
【0038】
図2は本発明の実施形態による短期運転性向判定方法のフローチャートであり、図3は本発明の実施形態による短期運転性向判定方法におけるi番目ファジールールによるi番目性向およびi番目出力メンバーシップ関数値を計算する方法のフローチャートであり、図4は本発明の実施形態による短期運転性向判定方法における短期性向指数を判断する方法のフローチャートである。
【0039】
図2に示しているように、本発明の実施形態による短期運転性向判定方法は入力変数を検出することによって開始する(S100)。
【0040】
データ検出部10がデータを検出して制御ユニット20に伝達すれば、制御ユニット20は短期運転性向判断条件を満たすか否かを判断する(S110)。
例えば、短期運転性向判断条件は、これに限定されるのではないが、前の車との距離が設定距離以上であるか、前方道路の曲率半径が設定曲率半径以上であるか、道路の勾配度が設定勾配度以下であるか、道路の状態が滑りやすい路面、凍結路面、険路、非舗装道路でない場合に満たされるものとする。
【0041】
S110段階で短期運転性向判断条件を満たさなければ、制御ユニット20は本発明の実施形態による短期運転性向判定方法を終了する。
【0042】
S110段階で短期運転性向判断条件を満たせば、制御ユニット20は第1ファジールールによる第1性向および第1出力メンバーシップ関数値を計算し(S120)、第2ファジールールによる第2性向および第2出力メンバーシップ関数値を計算する(S130)。性向および出力メンバーシップ関数値の計算は定められたファジールールの個数(l)だけ繰り返される。
【0043】
制御ユニット20がl番目ファジールールによるl番目性向およびl番目出力メンバーシップ関数値を計算すれば(S140)、制御ユニット20は計算された性向および出力メンバーシップ関数値に基づいて短期運転性向指数を判断する(S150)。その後、制御ユニット20は本発明の実施形態による短期運転性向判定方法を終了し、前記短期運転性向指数に基づいて変速機30またはエンジン40を制御する。
【0044】
以下、i番目ファジールールによるi番目性向およびi番目出力メンバーシップ関数値を計算する方法を詳しく説明する。
【0045】
まず、図3に示しているように、制御ユニット20は入力変数がi番目ファジールールを満たすか否かを判断する(S210)。i番目ファジールールは当業者が運転者の短期運転性向を判断するに適切であると考える仮定で予め定められる。
【0046】
S210段階で入力変数がi番目ファジールールを満たさなければ、制御ユニット20はi番目出力メンバーシップ関数値を設定値として設定し、i番目性向を設定性向として設定し(S260)、i番目ファジールールによるi番目性向およびi番目出力メンバーシップ関数値を計算する方法を抜け出す。
【0047】
S210段階で入力変数がi番目ファジールールを満たせば、制御ユニット20はi番目性向およびi番目出力メンバーシップ関数を選択する(S220)。i番目出力メンバーシップ関数はi番目性向によって定められる。
【0048】
その後、制御ユニット20はi番目ファジールールに含まれている入力変数による入力メンバーシップ関数値を計算する(S230)。
【0049】
S230段階で複数の入力変数による入力メンバーシップ関数値が計算されると、制御ユニット20は入力メンバーシップ関数値のうちの最小値を計算する(S240)。
【0050】
その後、制御ユニット20は前記最小値をi番目出力メンバーシップ関数値として設定し、i番目ファジールールによるi番目性向およびi番目出力メンバーシップ関数値を計算する方法を抜け出す。
【0051】
以下、短期性向指数を判断する方法を詳しく説明する。
【0052】
図4に示しているように、制御ユニット20は予め設定されたn個の出力メンバーシップ関数を一つの短期性向指数グラフに重畳する(S310)。多様な実施形態で、前記出力メンバーシップ関数の個数は、図7に示しているように、3個であり得る。しかし、これに限定されない。
【0053】
その後、制御ユニット20は前で計算したl個の出力メンバーシップ関数値によって占められる面積の重心を計算し(S320)、前記重心を短期運転性向指数として設定する(S330)。
【0054】
以下、前述した本発明の実施形態による短期運転性向判定方法を、図5乃至図8を参照して、さらに詳しく説明する。以下の説明は一つの例を説明したもので、本発明の範囲はここの説明に限定されるものではない。
【0055】
図5は例示的なファジールールを示す表であり、図6は例示的な入力メンバーシップ関数を示すグラフであり、図7は例示的な出力メンバーシップ関数を示すグラフであり、図8は本発明の実施形態による短期運転性向指数を判断する方法を説明するためのグラフである。
【0056】
図5に示しているように、短期運転性向指数を判断する方法を説明するための一つの例では4個のファジールールが使用され、4個のファジールールに使用される入力変数は加速ペダルの位置、加速ペダルの位置変化率、車速および道路の勾配度である。
【0057】
また、図6に示しているように、各入力変数に対して少なくとも一つ以上の入力メンバーシップ関数が予め設定されている。例えば、車速に対しては二つの入力メンバーシップ関数、即ち、車速が低い場合の入力メンバーシップ関数(MF1−L)と車速が高い場合の入力メンバーシップ関数(MF1−H)が予め設定されている。
【0058】
ここで、ファジー制御の特性上、入力変数は“低い”状態、“中間”状態および“高い”状態と表示されるが、これに限定されない。
【0059】
また、図7に示しているように、出力メンバーシップ関数も予め設定されている。短期運転性向指数を判断する方法を説明するための一つの例では3個の出力メンバーシップ関数(“マイルド”である場合の出力メンバーシップ関数、“普通”である場合の出力メンバーシップ関数、“スポーティー”である場合の出力メンバーシップ関数)が使用されるが、これに限定されない。
【0060】
前記出力メンバーシップ関数は性向によって定められる。つまり、あるファジールールを満たして性向が“マイルド”であると決定されれば、“マイルド”である場合の出力メンバーシップ関数を使用する。
【0061】
図5を再び参照すれば、第1ファジールールは、‘車速が“低く”、加速ペダルの位置が“中間”であり、加速ペダルの位置変化率が“中間”であれば性向は“普通”である’とする。
【0062】
第2ファジールールは、‘車速が“低く”、加速ペダルの位置が“中間”であり、加速ペダルの位置変化率が“高ければ”性向は“スポーティー”である’とする。
【0063】
第3ファジールールは、‘車速が“高く”、加速ペダルの位置が“高く”、加速ペダルの位置変化率が“高ければ”性向は“スポーティー”である’とする。
【0064】
第4ファジールールは、‘加速ペダルの位置が“中間”であり、道路の勾配度が“高ければ”性向は“普通”である’とする。
【0065】
車速が20km/hであり、加速ペダルの位置が50%(加速ペダルを踏まなければ0%であり、加速ペダルを完全に踏んだら100%である場合)であり、加速ペダルの位置変化率が50%/sである場合を仮定しよう。
【0066】
車速が20km/hであれば、制御ユニット20は車速が“低い”または車速が“中間”であると判断する。
【0067】
加速ペダルの位置が50%であれば、制御ユニット20は加速ペダルの位置が“低い”、“中間”である、または“高い”と判断する。
【0068】
また、加速ペダルの位置変化率が50%/sであれば、制御ユニットは加速ペダルの位置変化率が“低い”、“中間”である、または“高い”と判断する。
【0069】
制御ユニット20は前記入力変数が満たすファジールールを判断する。入力変数に対する上記の判断結果に基づいて、制御ユニット20は入力変数が第1ファジールールと第2ファジールールは満たし、第3ファジールールと第4ファジールールは満たさないと判断する。
【0070】
一方、前記で言及したように、入力変数がi番目ファジールールを満たさなければ、制御ユニット20はi番目出力メンバーシップ関数値を設定値として設定し、i番目性向を設定性向として設定する。短期運転性向指数を判断する方法を説明するための一つの例では前記設定性向は“マイルド”であり、設定値は1である。
【0071】
結局、制御ユニット20は、第1ファジールールによる性向は“普通”と判断し、第2ファジールールによる性向は“スポーティー”と判断し、第3ファジールールによる性向は“マイルド”と判断し、第4ファジールールによる性向は“マイルド”と判断する。
【0072】
図6を再び参照すれば、車速が低い場合の入力メンバーシップ関数(MF1−L)で車速が20km/hであれば、入力メンバーシップ関数値は0.6である。
【0073】
加速ペダルの位置が中間である場合の入力メンバーシップ関数(MF2−M)で加速ペダルの位置が50%であれば、入力メンバーシップ関数値は1である。
【0074】
加速ペダルの位置変化率が中間である場合の入力メンバーシップ関数(MF3−M)で加速ペダルの位置変化率が50%/sであれば、入力メンバーシップ関数値は1である。
【0075】
加速ペダルの位置変化率が高い場合の入力メンバーシップ関数(MF3−H)で加速ペダルの位置変化率が50%/sであれば、入力メンバーシップ関数値は0.1である。
【0076】
前記のように、制御ユニット20が第1ファジールールに含まれている入力変数による入力メンバーシップ関数値と、第2ファジールールに含まれている入力変数による入力メンバーシップ関数値を計算すれば、制御ユニット20は該当ファジールールによる入力メンバーシップ関数値のうちの最小値を該当ファジールールによる出力メンバーシップ関数値として計算する。
【0077】
結局、制御ユニット20は第1ファジールールによる出力メンバーシップ関数値は0.6として計算し、第2ファジールールによる出力メンバーシップ関数値は0.1として計算し、第3ファジールールによる出力メンバーシップ関数値と第4ファジールールによる出力メンバーシップ関数値は1として計算する。
【0078】
その後、制御ユニット20は図7に示された出力メンバーシップ関数を一つの短期性向指数グラフに重畳する(図8参照)。図8でy軸は出力メンバーシップ関数値を示し、x軸は短期運転性向指数を示す。
【0079】
その後、制御ユニット20は各ファジールールによる出力メンバーシップ関数値を該当出力メンバーシップ関数に表示する。即ち、第1ファジールールによる出力メンバーシップ関数値である0.6を“普通”性向の出力メンバーシップ関数に表示し、第2ファジールールによる出力メンバーシップ関数値である0.1を“スポーティー”性向の出力メンバーシップ関数に表示し、第3ファジールールによる出力メンバーシップ関数値である1を“マイルド”性向の出力メンバーシップ関数に表示し、第4ファジールールによる出力メンバーシップ関数値である1を“マイルド”性向の出力メンバーシップ関数に表示する(図8の斜線部分参照)。
【0080】
その後、制御ユニット20は前記4個の出力メンバーシップ関数値によって占められる面積の重心を計算し(図8では短期運転性向指数をx軸に置いたので、重心のx値を計算する)、前記重心を短期運転性向指数として設定する。つまり、図8では35が短期運転性向指数として設定される。
【0081】
短期運転性向指数が設定されると、制御ユニット20は前記短期運転性向指数によって変速を制御する。
【0082】
以上、本発明に関する好ましい実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、当該発明が属する技術分野における当業者は、本発明の実施形態から技術的範囲内において容易に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、運転者の短期運転性向をより正確に判断することによって運転者の意志をより正確に変速に反映することができる短期運転性向判定方法およびこれを用いた変速制御装置の分野に適用できる。
【符号の説明】
【0084】
10 データ検出部
11 加速ペダル位置センサー
12 車速センサー
13 ナビゲーション装置
14 衛星航法装置(Global Positioning Systemystem;GPS)
20 制御ユニット
30 変速機
40 エンジン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8