特許 6309266 プリンタ

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】6309266

(24)【登録日】2018年3月23日

(45)【発行日】2018年4月11日

(54)【発明の名称】プリンタ

(51)【国際特許分類】

   B41J 2/32 20060101AFI20180402BHJP

   B41J 25/304 20060101ALI20180402BHJP

   B41J 11/00 20060101ALI20180402BHJP

   B41J 3/36 20060101ALI20180402BHJP

【ＦＩ】

   B41J2/32 C

   B41J25/304 H

   B41J11/00

   B41J3/36 T

【請求項の数】4

【全頁数】14

(21)【出願番号】特願2013-268259(P2013-268259)

(22)【出願日】2013年12月26日

(65)【公開番号】特開2015-123624(P2015-123624A)

(43)【公開日】2015年7月6日

【審査請求日】2016年9月20日

(73)【特許権者】

【識別番号】000130581

【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社

(72)【発明者】

【氏名】小野寺 仁

【審査官】 大浜 登世子

(56)【参考文献】

【文献】 特開平０６−１５５８５６（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開平１１−０２０２１４（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２００９−２８６０００（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２００２−２００８１５（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】（Int.Cl.，ＤＢ名）

Ｂ４１Ｊ ２／３２

Ｂ４１Ｊ ３／３６

Ｂ４１Ｊ １１／００

Ｂ４１Ｊ ２５／３０４

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

印字媒体を供給する媒体供給部と、
前記媒体供給部から供給された前記印字媒体を媒体搬送路に沿って搬送するプラテンローラと、
前記プラテンローラと対向する位置において前記印字媒体に印字を行う印字ヘッドが装着され前記印字ヘッドよりも前記印字媒体の搬送方向上流側に前記プラテンローラと平行に設けられた揺動軸により揺動することにより前記プラテンローラに対して前記印字ヘッドが接離方向に開閉可能に設けられた印字ヘッド装着部と、
を備え、
前記印字ヘッドは、前記印字ヘッド装着部の開閉動作に連動して前記印字媒体の搬送方向下流側を支点にして揺動し、前記印字ヘッド装着部が開放位置にある状態では、前記印字媒体の搬送方向上流側が前記印字ヘッド装着部から離れる方向へと変位した姿勢となる、
プリンタ。

【請求項2】

請求項１に記載のプリンタであって、
前記印字ヘッド装着部が閉止位置にある状態で、前記印字ヘッドを発熱抵抗体が前記プラテンローラに対向する姿勢に規制する第１の規制部材をさらに備える、
プリンタ。

【請求項3】

請求項１又は２に記載のプリンタであって、
前記印字ヘッド装着部が開放位置にある状態で、前記印字ヘッドを前記印字媒体の搬送方向上流側が前記印字ヘッド装着部から離れる方向へと変位した姿勢に規制する第２の規制部材をさらに備える、
プリンタ。

【請求項4】

請求項１から３のいずれかに記載のプリンタであって、
前記印字ヘッド装着部の開閉動作に連動して揺動する変位部材をさらに備え、
前記印字ヘッドにおける前記印字媒体の搬送方向下流側端部が、前記印字ヘッド装着部に揺動自在に取り付けられ、
前記印字ヘッドにおける前記印字媒体の搬送方向上流側端部が、前記変位部材に揺動自在に取り付けられている、
プリンタ。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、プリンタに関し、例えば、文字、記号、図形またはバーコード等のような所望の情報をラベル等の印字媒体に印字する機能を有するプリンタに関するものである。

【背景技術】

【0002】

ラベルプリンタは、例えば、ロール状に巻かれた連続紙（印字媒体）をシート状に繰り出して搬送路（媒体搬送路）に沿って搬送する途中において、連続紙を構成する長尺状の台紙に仮着された複数枚のラベルの各々に所望の情報を印字する機能を有するプリンタである。

【0003】

ラベルプリンタにおいては、連続紙を供給する用紙供給部（媒体供給部）と、用紙供給部から供給された連続紙を搬送路に沿って搬送するプラテンローラを備えた支持台と、連続紙のラベルに所望の情報を印字するサーマルヘッド（印字ヘッド）を備えた印字部とが設置されている。

【0004】

ここで、サーマルヘッドが設置されたプリンタには、例えば、サーマルヘッドとプラテンローラとでインクリボンと連続紙を挟持して、サーマルヘッドにより発生する熱でインクリボンのインクを溶融し、溶融したインクを印字用紙に転写固着させることによって所定の情報を印字する熱転写プリンタや、インクリボンを介さずにサーマルヘッドの熱を感熱型の連続紙に直接与えて所定の情報を印字する感熱プリンタなどがある。

【0005】

熱転写プリンタにおいて連続紙を供給する場合、連続紙に埃粉が付着したままプリンタ内部へ供給され、連続紙に埃粉が付着したままインクリボンを用いて印字動作を行うと、印字が欠ける等の印字不良を起こす原因となる。

【0006】

一方、インクリボンを用いない感熱プリンタにおいては、サーマルヘッドの発熱体付近にも埃粉が溜まり印字不良の原因となり、サーマルヘッドの使用寿命を短縮させる原因となる。

【0007】

そこで、印字部を開いてサーマルヘッドを露出させ、当該サーマルヘッドを定期的にクリーニングして付着した埃粉を除去することが必要になる。

【0008】

また、サーマルヘッドをクリーニングしても印字不良が改善されないときには、サーマルヘッドが寿命となってしまったことが考えられる。この場合には、サーマルヘッドを新品に交換することが必要になる。

【0009】

なお、このようなラベル印字機能を有するプリンタについては、例えば、特許文献１に開示がある。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0010】

【特許文献1】特開２００７−３０１８６９号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0011】

しかしながら、印字部が閉じた状態でサーマルヘッドがほぼ水平となっているために、サーマルヘッドのクリーニングや交換といったメンテナンスのために印字部を開いたときに、当該サーマルヘッドは俯いた（換言すれば、サーマルヘッドに設けられた発熱抵抗体が下方を向いた）姿勢になってしまう。

【0012】

そのため、作業者はサーマルヘッドを下からのぞき込むようにしてメンテナンスを行わなければならず、作業性が悪かった。

【0013】

本発明は、上述の技術的背景からなされたものであって、印字部の開放位置における印字ヘッドの俯いた姿勢を緩和することのできるプリンタを提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0014】

上記課題を解決するため、請求項１に記載の本発明のプリンタは、印字媒体を供給する媒体供給部と、前記媒体供給部から供給された前記印字媒体を媒体搬送路に沿って搬送するプラテンローラと、前記プラテンローラと対向する位置において前記印字媒体に印字を行う印字ヘッドが装着された印字ヘッド装着部を備え、当該印字ヘッド装着部が揺動軸により揺動することにより前記プラテンローラに対して前記印字ヘッドが接離方向に開閉可能に設けられた印字部と、前記印字部の開閉動作に連動して揺動し、前記印字部の開放位置で、前記印字ヘッドにおける前記印字媒体の搬送方向上流側端部を前記印字ヘッド装着部から離れる方向へと変位させる変位部材と、を有すること特徴とする。

【0015】

請求項２に記載の発明のプリンタは、上記請求項１記載の発明において、前記印字部は、前記印字ヘッドにおける前記印字媒体の搬送方向下流側端部が、前記印字ヘッド装着部に揺動自在に取り付けられ、前記印字ヘッドにおける前記印字媒体の搬送方向上流側端部が、前記変位部材に揺動自在に取り付けられている、ことを特徴とする。

【0016】

請求項３に記載の発明のプリンタは、上記請求項１または２記載の発明において、前記印字部の閉止位置において前記変位部材が当接し、当該変位部材を介して前記印字ヘッドの発熱抵抗体が前記プラテンローラに対向する姿勢に規制する第１の規制部材と、前記印字部の開放位置において前記変位部材が当接し、当該変位部材を介して前記印字ヘッドにおける前記印字媒体の搬送方向上流側端部を前記印字ヘッド装着部から離れる方向へと変位させる第２の規制部材と、をさらに有することを特徴とする。

【発明の効果】

【0017】

本発明によれば、印字部の開放位置で、印字ヘッドにおける印字媒体の搬送方向上流側端部が印字ヘッド装着部から離れる方向へと変位するので、印字ヘッドの俯いた姿勢が緩和される。これにより、印字ヘッドのメンテナンスを容易に行うことが可能になる。

【図面の簡単な説明】

【0018】

【図1】本発明の一実施の形態に係るプリンタの外観の全体斜視図である。

【図2】図１のプリンタの内部を示した斜視図である。

【図3】図２のプリンタの側面図である。

【図4】図２のプリンタの印字処理部およびインクリボン部を抽出して示した斜視図である。

【図5】（ａ）は図３の印字部の閉止状態時の印字部を正面から見た拡大斜視図、（ｂ）は図３の印字部の開放状態時の印字部を正面から見た拡大斜視図である。

【図6】図１のプリンタにおける閉止位置での印字部の側面図である。

【図7】図１のプリンタにおける閉止位置での印字部の斜視図である。

【図8】図１のプリンタにおける開放位置での印字部の側面図である。

【図9】図１のプリンタにおける開放位置での印字部の斜視図である。

【発明を実施するための形態】

【0019】

以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。

【0020】

図１は本実施の形態に係るプリンタの外観の全体斜視図である。

【0021】

本実施の形態のプリンタ１は、例えば、台紙に仮着されたラベルに、文字、記号、図形またはバーコード等のような情報を印字するラベル印字機能を備えている。

【0022】

プリンタ１の正面のフロントカバー部２には、操作パネル部３と、電源スイッチ４と、発行口（媒体排出口）５とが設けられている。

【0023】

操作パネル部３には、メッセージ等を表示するＬＣＤ（Ｌｉｑｕｉｄ Ｃｒｙｓｔａｌ Ｄｉｓｐｌａｙ）と、プリンタ１の動作を操作する複数のキー（ラインキー、フィードキー、ファンクションキー、方向指示キーおよびキャンセルキー等）と、プリンタ１の状態を示す複数のＬＥＤ（Ｌｉｇｈｔ Ｅｍｉｔｔｉｎｇ Ｄｉｏｄｅ）とが配置されている。

【0024】

プリンタ１の片側側面には、オープンカバー部６が２箇所のヒンジ部７により上下方向に開閉自在の状態で装着されている。

【0025】

次に、プリンタ１の内部構造について図２、図３および図４を参照して説明する。図２は図１のプリンタの内部を示した斜視図、図３は図２のプリンタの側面図、図４は図２のプリンタの印字処理部およびインクリボン部を抽出して示した斜視図である。なお、以下の説明ではプリンタ１の正面側（フロントカバー部２側）を前方（連続紙の搬送方向下流側）、その向かい側の背面側（バックカバー部側）を後方（連続紙の搬送方向上流側）という。

【0026】

プリンタ１の内部には、その後方に配置された用紙供給部（媒体供給部）１０と、前方に配置された印字処理部１１と、その上方に配置されたインクリボン部１２とが設置されている。

【0027】

用紙供給部１０は、連続紙（印字媒体）Ｐを印字処理部１１に供給する構成部であり、支持軸１０ａと、その一端に設置されたロールガイド部１０ｂとを備えている。

【0028】

支持軸１０ａは、ロール状に巻き取られた連続紙Ｐを回転自在の状態で支持する構成部である。ロールガイド部１０ｂは、ロール状の連続紙Ｐの幅方向への蛇行を規制する構成部であり、連続紙Ｐの幅サイズに応じて位置を変えられるように支持軸１０ａの軸方向に沿って移動自在の状態で設置されている。

【0029】

連続紙Ｐは、例えば、長尺状の台紙と、その長手方向に沿って予め決められた間隔毎に仮着された複数枚のラベルとを有している。台紙においてラベルの粘着面が接触する面には、シリコーン等のような剥離剤がコーティングされており、ラベルを容易に剥離することが可能になっている。また、台紙においてラベルが貼られていない面には、長手方向に沿って予め決められた間隔毎にラベルの位置を示す位置検出マークが形成されている。ラベルは、感熱紙を使用する場合と普通紙を使用する場合とがある。感熱紙の場合は、その表面に、予め決められた温度領域に達すると特定の色（黒や赤等）に発色する感熱発色層が形成されている。

【0030】

また、連続紙Ｐには、表巻きラベルと裏巻きラベルとの２種類がある。表巻きラベルは、連続紙Ｐのラベルがロール状の連続紙Ｐの外周面に位置する状態で巻回されており、図３で示すように、連続紙Ｐｓ（Ｐ：破線）が用紙供給部１０の高さ方向中央あたりから印字処理部１１の底部に向けて繰り出されている。

【0031】

これに対して、裏巻きラベルは、連続紙Ｐのラベルがロール状の連続紙Ｐの内周面側に位置する状態で巻回されており、図３に示すように、連続紙Ｐｂ（Ｐ：実線）がプリンタ１の内部底面あたりから印字処理部１１の底部に向けて繰り出されている。

【0032】

なお、表巻きでも裏巻きでも印字処理部１１での連続紙Ｐ（Ｐｓ，Ｐｂ）の通紙ルートは同じである。また、表巻きラベルでも裏巻きラベルでも連続紙Ｐはラベルが仮着された面（被印字面）を上に向けた状態で搬送される。

【0033】

上記した印字処理部１１は、連続紙Ｐのラベル等に印字を行う構成部であり、印字部１３と、その下方に配置された支持台１４と、それらの後方（印字工程時の連続紙Ｐの搬送上流）に配置されたダンパ部１５とを備えている。

【0034】

印字部１３は、後述のように、支持台１４に対して開閉可能な状態でプリンタ１の内部に設置されている。印字部１３が閉止状態の場合に、印字部１３と支持台１４との間に通紙ルート（媒体搬送路）が形成される。そして、その通紙ルートは、上記した発行口５（図１参照）に繋がっている。

【0035】

支持台１４には、印字部１３の閉止状態を維持するヘッドロックレバー部１６が設置されている。このヘッドロックレバー部１６を操作すると印字部１３の閉止状態が解除され、印字部１３の前方部が持ち上がり印字部１３が開く（プラテンローラ２３に対して離間する）ようになっている。

【0036】

ダンパ部１５は、連続紙Ｐに張力を付与する構成部である。本実施の形態においては、ダンパ部１５が、アウターダンパ部１５ａとインナーダンパ部１５ｂとを備えているとともに、印字部１３の開閉に連動して上下に移動（開閉）するようになっている。ただし、印字部１３の閉止状態時において、アウターダンパ部１５ａおよびインナーダンパ部１５ｂは、それぞれ連続紙Ｐに張力を付与可能なように揺動自在の状態で設置されている。

【0037】

上記したインクリボン部１２は、印字用インクを塗布したインクリボンを供給し、巻き取る構成部であり、リボン供給部１２ａと、その前方横に配置されたリボン巻き取り部１２ｂとを備えている。リボン供給部１２ａは、ロール状に巻き取られたインクリボンを回転自在の状態で支持する構成部である。リボン巻き取り部１２ｂは、印字済みのインクリボンＲＢを巻き取り回収する構成部である。なお、インクリボンを使用する場合は、リボン供給部１２ａから引き出されたインクリボンを印字部１３の下に通して、リボン中継ローラ１２ｃを経由してリボン巻き取り部１２ｂで巻き取る。

【0038】

印字処理部１１およびインクリボン部１２はヒンジ部７に沿って設置された前方側区画壁Ｗ１に取り付けられ（図４参照）、用紙供給部１０は、同じくヒンジ部７に沿って設置されるとともに前方側区画壁Ｗ１に対して直列配置された後方側区画壁Ｗ２に取り付けられている。

【0039】

このようなプリンタ１においては、用紙供給部１０からシート状に繰り出された連続紙Ｐ（Ｐｓ，Ｐｂ）がダンパ部１５を介して印字部１３と支持台１４との間の通紙ルートに搬送され、その途中において連続紙Ｐのラベル等に印字処理がなされた後、発行口５からプリンタ１の外部に排出されるようになっている。

【0040】

次に、上記した印字処理部１１の構成について、図４および図５を参照して説明する。図５（ａ）は図３の印字部の閉止状態時の印字部を正面から見た概略的な斜視図、図５（ｂ）は図３の印字部の開放状態時の印字部を正面から見た概略的な斜視図である。

【0041】

印字部１３は、支持台１４に回転可能に取り付けられたプラテンローラ２３と対向する位置で連続紙Ｐに印字を行うサーマルヘッド（印字ヘッド）１８を有している。このサーマルヘッド１８はブラケット（印字ヘッド装着部）１３ａに装着されている。そして、ブラケット１３ａの前方部が後方の揺動軸Ｓ１を支点にして揺動することにより支持台１４に対して上下方向に開閉可能な状態となっており、当該印字部１３の片側側面のヘッド支持板１７に支持されている。

【0042】

印字部１３の下面（通紙ルートを向く面）には、前述したサーマルヘッド１８がその印字面を通紙ルートに向けた状態で設置されている。サーマルヘッド１８は、その印字面に配置された印字ライン１８Ｌ（図９参照）の発熱抵抗体により連続紙Ｐのラベル等に印字を行う印字ヘッドである。この印字ライン１８Ｌには、通電により発熱する複数の発熱抵抗体（発熱素子）が連続紙Ｐの幅方向（連続紙Ｐの搬送方向に対して直交する方向）に沿って並んで配置されている。

【0043】

印字部１３の前方側の下面にはサーマルヘッド１８を挟むように凹状爪部１９，１９（図５（ｂ）参照）が設けられている。また、印字部１３の下面において凹状爪部１９の後方には、印字部１３の両側面から外方に突出するピン２０，２０が設けられている。

【0044】

このような印字部１３は、揺動軸Ｓ１（図４参照）に装着されたトーションバネ（図示せず）により開方向に付勢されているが、印字部１３の下部のピン２０，２０に、支持台１４のロック爪部２２，２２が引っ掛かることにより閉止状態が維持されている。ロック爪部２２は、上記ヘッドロックレバー部１６を後方に倒すと、それに連動して後方に移動し、ピン２０から外れるようになっている。ロック爪部２２がピン２０から外れると、図５（ｂ）に示すように、印字部１３は、トーションバネの付勢力により自動的に開くようになっている。

【0045】

また、印字部１３の閉止状態時には、サーマルヘッド１８の印字面が下方のプラテンローラ２３（図５（ａ），（ｂ）参照）に押し付けられるとともに、印字部１３の凹状爪部１９，１９（図５（ｂ）参照）がプラテンローラ２３の回転軸Ｓ２（図５参照）の両端部に嵌められるようになっている。

【0046】

プラテンローラ２３は、用紙供給部１０から繰り出された連続紙Ｐを通紙ルートに沿って前方の発行口５（図１参照）へ搬送する搬送手段であり、その表面は硬質ゴム等のような弾性材料により被覆されている。このプラテンローラ２３は、正逆方向に回転可能な状態で支持台１４の上部に設置されている。プラテンローラ２３の回転軸Ｓ２の軸方向一端には、ギアＧ１が接続されている。このギアＧ１は、例えば、タイミングベルト（図示せず）等を介してステッピングモータのような駆動体（図示せず）の回転軸に係合されている。

【0047】

このような印字処理部１１において、印字工程時には、サーマルヘッド１８とプラテンローラ２３との間に連続紙Ｐを挟み込んだ状態でプラテンローラ２３を回転させることにより、連続紙Ｐはダンパ部１５により所定の張力が付与された状態で搬送される。そして、用紙位置検出センサ（図示せず）により検出された情報に基づいて印字タイミングを図り、サーマルヘッド１８に送信された印字信号により印字ライン１８Ｌの発熱抵抗体を選択的に発熱させる。これにより、連続紙Ｐのラベルに、文字、記号、図形またはバーコード等のような所望の情報が印字される。

【0048】

次に、印字部１３の開閉動作について、図６〜図９を参照して説明する。図６は閉止位置での印字部の側面図、図７は閉止位置での印字部の斜視図、図８は開放位置での印字部の側面図、図９は開放位置での印字部の斜視図である。なお、図６〜図９において、ヘッド支持板１７の裏面を透かして見せている。

【0049】

これらの図面に示すように、印字部１３に設けられたサーマルヘッド１８は、当該サーマルヘッド１８の前方（つまり、連続紙Ｐの搬送方向に対して下流側の端部）が、揺動軸Ｓ３を支点にして揺動自在となるようにブラケット１３ａに取り付けられている。また、ブラケット１３ａが取り付けられた揺動軸Ｓ１には支持板（変位部材）２５が取り付けられており、ブラケット１３ａの揺動支点である揺動軸Ｓ１と共通の支点で揺動するようになっている。さらに、前述したサーマルヘッド１８の後方（つまり、連続紙Ｐの搬送方向に対して上流側の端部）は、前述した支持板２５の揺動軸Ｓ１（揺動支点）とは反対側の端部に設けられた揺動軸Ｓ４を支点にして揺動自在に取り付けられている。したがって、支持板２５は、印字部１３の開閉動作に連動して揺動する。

【0050】

図６および図７に示すように、印字部１３を側方からみた場合において、印字部１３が閉止位置にあるときには、サーマルヘッド１８と支持板２５とは揺動軸Ｓ４を支点にして山形に屈曲した関係になるように取り付けられている。また、図８および図９に示すように、印字部１３が開放位置にあるときには、揺動軸Ｓ４を支点に揺動して、それとは逆向きに屈曲した関係になるように取り付けられている。

【0051】

なお、印字部１３の開閉で支持板２５が揺動して前述のように屈曲状態が変化できるようにするため、支持板２５に取り付けられた揺動軸Ｓ４は、サーマルヘッド１８に形成された係合孔（図示せず）に対して、屈曲状態が変化可能なだけの隙間が形成された状態で係合している。また、このように屈曲状態が変化する際における揺動軸Ｓ４の移動を許容するために、ヘッド支持板１７には、揺動軸Ｓ４の移動軌跡に沿った長孔１７ａが形成されている。

【0052】

したがって、印字部１３の閉止位置においては、前述のようにサーマルヘッド１８と支持板２５とは揺動軸Ｓ４を支点に山形に屈曲した関係となり、印字ヘッドが連続紙Ｐに印字を行う姿勢になる。また、印字部１３の開放位置においては、支持板２５の揺動により、サーマルヘッド１８と支持板２５とが揺動軸Ｓ４を支点に揺動して、閉止位置の時とは逆方向に屈曲した関係となる。

【0053】

そして、図８および図９に示すように、印字部１３が上方へと移動した開放位置では、このような支持板２５の揺動による揺動軸Ｓ４を支点にした揺動により、サーマルヘッド１８の下部側（印字部１３の閉止位置では後方にあたる部分）が前方へと変位する。

【0054】

ここで、前述した前方側区画壁Ｗ１には、印字部１３の閉止位置において支持板２５が当接する第１の規制部材３１、および印字部１３の開放位置において支持板２５が当接する第２の規制部材３２が設けられている。

【0055】

したがって、印字部１３の閉止位置では、支持板２５が第１の規制部材３１に当接することにより、支持板２５を介してサーマルヘッド１８が連続紙Ｐに印字を行う姿勢（発熱抵抗体としての印字ライン１８Ｌがプラテンローラ２３に対向する姿勢）に規制される。また、印字部１３の開放位置では、支持板２５が第２の規制部材３２に当接することにより、支持板２５を介してサーマルヘッド１８の下部側が前方へと変位した姿勢に規制される。但し、印字部１３の開閉動作だけでサーマルヘッド１８の姿勢が規制されるようになっているのであれば、第１の規制部材３１および第２の規制部材３２は必須ではない。

【0056】

以上の構成を有する印字部１３によれば、図６および図７に示すように、支持板２５が第１の規制部材３１に当接して、サーマルヘッド１８が連続紙Ｐに印字を行う姿勢になる。このとき、印字部１３を横方向から見て、サーマルヘッド１８と支持板２５とは、揺動軸Ｓ４を支点にして山形に屈曲した関係になっている。

【0057】

そして、このような閉止位置から、ヘッドロックレバー部１６（図２〜５）を操作して印字部１３の閉止状態を解除すると、図８および図９に示すように、トーションバネの付勢力によって印字部１３の前方部が持ち上がって印字部１３が開き、支持板２５が第２の規制部材３２に当接して開放位置になる。

【0058】

すなわち、閉止位置から開放位置へと至る開放動作によりブラケット１３ａは反時計回り（図６および図８で示した方向から見た場合。以下同じ。）に揺動し、開放位置までの揺動過程で支持板２５の端部が第２の規制部材３２に当接し、更にブラケット１３ａが反時計回りに揺動することによって支持板２５の端部が前方に押し出され、支持板２５が時計回りに揺動する。このとき、押し出される支持板２５の端部に設けられた揺動軸Ｓ４は、長孔１７ａに沿って押し出され、揺動軸Ｓ４に支持されたサーマルヘッド１８の下部側が押し出され、反時計回りに揺動する。

【0059】

このように、印字部１３の開放動作に連動して支持板２５が揺動し、サーマルヘッド１８の下部側が前方へと変位する。すなわち、支持板２５が揺動軸Ｓ１で揺動し、サーマルヘッド１８の前方が揺動軸Ｓ３を支点にして揺動することにより、サーマルヘッド１８と支持板２５とが揺動軸Ｓ４を支点にして閉止位置の時とは逆方向に屈曲した関係になり、これによってサーマルヘッド１８の下部側が前方へと変位する。

【0060】

そして、このように印字部１３の開放位置でサーマルヘッド１８の下部側が前方へ変位することにより、つまり、サーマルヘッド１８における連続紙Ｐの搬送方向上流側の端部がブラケット１３ａから離れる方向へと変位することにより、図示するように、変位しない場合と比較してサーマルヘッド１８の俯いた姿勢が緩和される。

【0061】

したがって、印字不良を解消するためにサーマルヘッド１８をクリーニングする作業や、寿命に達したサーマルヘッド１８を交換する作業といったサーマルヘッド１８のメンテナンスを行う際に、作業者はサーマルヘッド１８を下からのぞき込むような姿勢をとらなくても、ほぼ正面からサーマルヘッド１８を視認することができる。これにより作業性が向上するので、サーマルヘッド１８のメンテナンスを容易に行うことが可能になる。

【0062】

なお、以上においては、印字部１３が開放位置になったときに、サーマルヘッド１８と支持板２５とが閉止位置の時とは逆方向に屈曲した関係になることでサーマルヘッド１８の下部側が前方（揺動軸Ｓ４がブラケット１３ａから離れる方向）へと変位しているが、印字部１３が開放位置なったときにサーマルヘッド１８の下部側が前方へと変位するようになっていれば足りる。

【0063】

すなわち、サーマルヘッド１８と支持板２５との屈曲関係が印字部１３の閉止位置と開放位置とで逆になる必要はなく、印字部１３の閉止位置ではサーマルヘッド１８と支持板２５とが真っ直ぐな関係となっており、印字部１３の開放位置ではサーマルヘッド１８の下部側が前方へと変位して両者が屈曲した関係になってもよい。あるいは、印字部１３の閉止位置ではサーマルヘッド１８と支持板２５とが屈曲した関係となっており、印字部１３の開放位置ではサーマルヘッド１８の下部側が前方へと変位して両者が真っ直ぐな関係になってもよい。

【0064】

なお、開放位置から閉止位置へと至る閉止動作によりブラケット１３ａは時計回り（図６および図８で示した方向から見た場合。以下同じ。）に揺動し、閉止位置までの揺動過程で支持板２５の端部が第１の規制部材３１に当接し、更にブラケット１３ａが時計回りに揺動することによって支持板２５の端部が後方に押し戻され、支持板２５が反時計回りに揺動する。このとき、押し戻される支持板２５の端部に設けられた揺動軸Ｓ４は、長孔１７ａに沿って押し戻され、揺動軸Ｓ４に支持されたサーマルヘッド１８の下部側が押し戻され、時計回りに揺動する。

【0065】

以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではないと考えるべきである。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。

【0066】

例えば先述した実施の形態においては、印字媒体として複数枚のラベルを台紙に仮着した連続紙を用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、一方面に粘着面を有する連続状のラベル（台紙無しラベル）、粘着面を有しない連続状のシート（連続シート）あるいは紙類に限らずサーマルヘッドにより印字可能なフィルム等を印字媒体として使用することもできる。台紙無しラベル、連続シートまたはフィルムは位置検出マークを有することができる。また、粘着剤が露出する台紙無しラベルなどを搬送する場合には、搬送路を非粘着コーティングするとともにシリコーンを含有したローラを設けることができる。

【0067】

また、前述した実施の形態においては、印字部がプリンタの前方に向けて開閉する前方開きタイプの印字部が用いられたプリンタに本発明を適用した場合が説明されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、印字部がプリンタの側方に向けて開閉する側面開きタイプの印字部が用いられたプリンタなどに本発明を適用してもよい。

【0068】

さらに、前述した実施の形態においては、インクリボンを用いた熱転写プリンタについて説明したが、本発明は、インクリボンを用いない感熱プリンタなど、様々な形態のプリンタに適用することができる。

【産業上の利用可能性】

【0069】

以上の説明では、本発明を、プリンタへの入力操作がパーソナルコンピュータを介さずに行われるスタンドアロン型のプリンタに適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、プリンタへの入力操作がパーソナルコンピュータを介して行われるオンライン型のプリンタにも適用してもよい。

【符号の説明】

【0070】

１ プリンタ
１０ 用紙供給部
１０ａ 支持軸
１０ｂ ロールガイド部
１１ 印字処理部
１２ インクリボン部
１３ 印字部
１３ａ ブラケット
１４ 支持台
１５ ダンパ部
１６ ヘッドロックレバー部
１７ ヘッド支持板
１７ａ 長孔
１８ サーマルヘッド
１８Ｌ 印字ライン
１９ 凹状爪部
２０ ピン
２２ ロック爪部
２３ プラテンローラ
２５ 支持板
３１ 第１の規制部材
３２ 第２の規制部材
Ｐ，Ｐｓ，Ｐｂ 連続紙
ＲＢ インクリボン
Ｓ１、Ｓ３、Ｓ４ 揺動軸
Ｓ２ 回転軸
Ｇ１ ギア
Ｗ１ 前方側区画壁
Ｗ２ 後方側区画壁

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】