(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記方法が、連続プロセスであることにより、前記開始シラノール末端ブロック化オルガノシロキサンポリマー、界面活性剤、及び水が、粘稠な水中油型エマルションを形成するような割合で高せん断ミキサーに連続的に供給され、前記エマルションが前記ミキサーから連続的に抜き取られる、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
前記シロキサン開始ポリマー、界面活性剤、及び水が単一の供給ラインから高せん断ミキサー中に供給され、前記高せん断ミキサーへの入口における供給ライン内の圧力が監視され、予め設定された目標圧力の20%以内とされ、所望のエマルションの粒径を与える、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【背景技術】
【0002】
水中シリコーン型エマルションは、伝統的にシリコーンの機械的乳化又は乳化重合によって調製することが可能である。一般的には、比較的低粘度のシリコーンを乳化する必要がある場合には機械的乳化が用いられる。実際、特定の粘度(600Pa・s)以上では、シリコーンは粒径が大きくなりすぎることなく従来のミキサーによってそれ以上乳化させることはできない。
【0003】
したがって、高粘度のシリコーンのエマルションを調製するには重合反応が必要とされる。
【0004】
オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)及びデカメチルシクロペンタシロキサン(D5)を含む各種のシロキサン類は、コスト効率が高く、また大量に入手可能であることから広く用いられている。しかしながらシクロシロキサンの開環重合は完全ではなく、時として大量の残留オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)及びデカメチルシクロペンタシロキサン(D5)が最終生成物中に残留する(典型的には2〜10%)。水酸基を末端に有する短鎖の(ポリ)ジオルガノシロキサンが、高い内相粘度を有するシリコーンエマルションを生じる縮合反応を用いる際の開始物質としても使用される。この最後の方法では、約1%のオクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)及びデカメチルシクロペンタシロキサン(D5)が縮合反応の望ましくない副生成物として生成する。シリコーンエマルション中の溶媒、未反応のシロキサン類、触媒残渣、環状重合の副生成物、及び他の不純物の存在量を低減させることは当該技術分野における目下の課題である。とりわけ、こうした不純物の存在がエマルションの安定性を低下させるか又は法的規制によってこうした不純物の除去若しくは低減が求められる下流用途(例えば、医療、美容、及びパーソナルケア用途)とこうした不純物が適合性を有さない場合にこうした不純物を低減させる必要性が生じる。特に、シリコーンエマルション中の、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)及びデカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、並びに場合によりドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)などのシクロシロキサンの存在量を低減させることに対する一定の関心がある。
【0005】
特開平11−071522A号公報の要約書は、短鎖のヒドロキシルPDMSを使用した反応について述べているが、環状化合物の濃度が最大で3.5重量%とやや高い。米国特許第6235834B1号は、乳化重合について述べているがこれは異なる特定のアニオン性界面活性剤の使用をともなったものであり、粒径は1マイクロメートルよりも大きくなければならず、このためエマルションの安定性が制限されるために多くの用途において適当ではない。
【0006】
米国特許第6232396B1号は、エマルションの調製プロセスについて述べており、このプロセスでは縮合反応をある程度制御することで環状化合物の生成を1%未満に抑えているが、本発明者らは環状化合物の生成を更に抑制することが望ましいと考えるものである。
【0007】
国際特許出願公開第2009/129175号は、シラノール官能ポリオルガノシロキサン、ホウ素化合物、乳化剤の混合物を形成した後、水を混合物と混合してエマルションを形成することによるエマルション組成物を調製するためのプロセスについて述べている。この混合工程は、一般的に周囲温度及び圧力において行われる。
【0008】
国際特許出願公開第2005/040250号は、(i)直鎖の水酸基末端ポリジオルガノシロキサン、(ii)シリコーンMQ樹脂、及び(iii)オルガノ官能ポリシロキサンを含有するエマルション組成物について述べている。
【0009】
欧州特許出願公開1069149号は、平均粒径が少なくとも1マイクロメートルであるオルガノポリシロキサンポリマーの粒子を含有するエマルションを調製するための方法について述べている。
【0010】
特開2000−053769公報の要約書は、10〜3000cStの粘度を有するシラノール基末端ポリジオルガノシロキサンを開始物質として得られるポリオルガノシロキサンエマルションについて述べている。ポロジオルガノシロキサンの密度が約1であるため、粘度は最大で3Pa・sである。重合の温度条件は、好ましくはエマルションの凝固点〜20℃である。
【0011】
特開2007297533号の要約書は、一般式H−[O−Si(R)
2n−OH]
n−OH(式中、Rは1価の炭化水素基であり、nは10〜200の整数である。)により表される末端水酸基ジオルガノポリシロキサンを開始物質とする、小さい中位径を有する官能基含有ジオルガノポリシロキサンエマルションを製造するための方法について述べている。
【0012】
欧州特許出願公開第1072629号は、アニオン性界面活性剤及び塩基を水に加える工程と、混合してpHが約7である均一な中性の水性界面活性剤を形成する工程とを含む、シリコーンエマルションを製造するためのプロセスについて述べている。使用される開始ポリシロキサンは、約15〜約1000センチストークスの粘度を有する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1の態様に基づけば、1μm未満の平均粒径を有するオルガノポリシロキサンポリマーの粒子を含有するエマルションを調製する方法であって、
(i)シラノール末端ブロック化オルガノシロキサン開始ポリマー、水、及び界面活性剤を混ぜ合わせる工程であって、前記開始ポリマーが少なくとも2Pa・s、好ましくは少なくとも2.5Pa・s、好ましくは少なくとも3.5Pa・s、かつ最大で150Pa・sの粘度を有する、工程と、
(ii)前記各成分を攪拌又はせん断することによって前記開始ポリマーを乳化する工程と、
(iii)前記開始ポリマーを重合させる工程であって、前記開始ポリマーを重合させることによって、より長鎖の、シラノール末端ブロック化オルガノポリシロキサンポリマーを形成する、工程と、を含み、
前記重合させる工程の少なくとも一部が、16℃以下、好ましくは15℃以下、好ましくは14℃以下の温度で行われる、方法が提供される。
【0016】
特定の実施形態では、粘度は、1マイクロメートル未満の粒径を生成する助けとなるように最大で100Pa・sとすればよい。
【0017】
特定の実施形態では、重合工程は、第1の温度で開始された後、15℃以下、場合により12℃未満の温度のより低い温度に低下させられる。
【0018】
通常、開始温度は25℃以下、場合により22℃以下である。通常、開始温度は18℃以上である。したがって、通常、重合は、18℃以上、場合により20℃以上の温度で開始され、15℃以下の前記より低い温度にまで低下させられる。特定の実施形態では、前記より低い温度は12℃以下でありうる。
【0019】
特定の実施形態では、重合工程の15℃以下で行われる部分はまた、2℃よりも高い、場合により5℃よりも高い、場合により10℃よりも高い温度で行われる。
【0020】
粘度はパスカル秒(Pa・s)で表され、開始オルガノポリシロキサンについてはBrookfield型の粘度計、すなわちコーン/プレートCP−52を25℃、1rpmで、最終生成物のオルガノポリシロキサンについてはコーン/プレートDVIII NO.52を25℃、0.3rpmで使用し、ASTM D4287にしたがって典型的に測定される。
【0021】
ここで、本発明の発明者らは、当該技術分野における教示に反して、開始ポリマーの粘度を少なくとも2、好ましくは少なくとも2.5、好ましくは少なくとも3.5、好ましくは4Pa・sにまで高め、これにより必然的に粒径を増大させた。これは、安定的なエマルションを維持するために粒径を最小化する、当該技術分野において受け容れられている通念とはまったく異なるものである。実際、機械的エマルションよりも重合エマルションが優先的に使用されているのは、粒径の最小化を目的としているためであり、粒径の増大に必然的につながる工程を含めることは予想されていない。更に、このような高粘度の開始ポリマーでは、重合反応前に乳化することが極めて困難であると予測されうる。
【0022】
しかしながら、粒径の増大を軽減又は防止するためには、高せん断法を使用することが好ましい。高せん断法とはすなわち、シロキサン開始ポリマー、界面活性剤、及び水を単一の供給ラインから高せん断ミキサー中に供給し、高せん断ミキサーへの入口における供給ライン内の圧力を監視して、予め設定された目標圧力の20%以内とし、所望のエマルションの粒径を与える方法である。目標圧力は、0.05〜40barの範囲内とすることができる。
【0023】
典型的には、高せん断動的ミキサー(特殊機化工業株式会社より販売されるHomomicラインミキサー又はChemineer,Inc.より販売されるGreerco(登録商標))を使用し、その開示内容の全容を本明細書に援用するところの欧州特許出願公開第1352011号に述べられる方法にしたがって行う。
【0024】
高せん断動的ミキサーに代えて、チェンジカンミキサー(Charles Ross & Son Company)のような高せん断装置を使用することもできる。エマルションはこのように濃縮エマルションとして供給した後、これを希釈して槽又は反応器中で反応させる。
【0025】
すなわち、特定の実施形態の利点の1つは、粒径が適度に小さく、通常は1μm未満、好ましく0.8μm未満、場合により0.6μm未満又は0.5μm未満に保たれることである。これにより、より安定したエマルションが得られる。典型的には、Dv[0.5]は0.5μm未満である。小さい粒径を有することの利点は、反応時間が短縮され、クリーミングの際にエマルションの安定性が向上することである。
【0026】
平均粒径は、Malvern Mastersizer 2000又はMicrotrac UPA150を用いて測定される。Dv[0.5]は体積平均径であり、[0.5]は試料の体積の50%がこの値未満の粒径を有することを意味する。
【0027】
本発明の発明者らは、重合の少なくとも一部を16℃以下、好ましくは15℃以下、より好ましくは14℃以下で行うことにより温度プロファイルを管理すると、驚くべきことに、反応時間に大きく影響することなく環状化合物の濃度が低くなることを発見した。
【0028】
特定の実施形態では、反応を最低で18℃かつ最高で25℃で開始した後、15℃以下に下げると、15℃以下の一定の温度で反応を行った場合と比較して反応時間を少なくとも1時間短縮することができることから特に効果的である。
【0029】
反応は、例えば1〜24時間、好ましくは2〜16時間、例えば2〜10時間、場合により2〜8時間で完了しうる。しかしながら、添加される酸/界面活性剤触媒の量が少ない場合には、反応が完了するのに最大で24時間までのより長時間を要する。
【0030】
更に、好ましい実施形態の大規模な製造時には、エマルションが15℃以下に冷却するのを待たずに重合が開始される場合がある。この利点は、製造時間を場合により最大で4時間以上節約することができる点である。
【0031】
更に、大規模な製造では、特定の実施形態の開始ポリマーは重合を開始する前に15℃以下に冷却する必要がないことから必要とされるエネルギーが、より少ない。
【0032】
前記のより低い温度における時間は、全反応時間の少なくとも30%、場合により60%よりも長くなりうる。前記のより低い温度は、通常は2℃よりも高く、典型的には5℃よりも高く、好ましくは10℃よりも高い。
【0033】
典型的に、このプロセスは連続プロセスであることにより、開始シラノール末端ブロック化オルガノシロキサンポリマー、界面活性剤、及び水は、高せん断ミキサーに粘稠な水中油型エマルションを形成するような割合で連続的に供給され、このエマルションは典型的にミキサーから連続的に抜き取られる。
【0034】
界面活性剤は、自然に又は酸性媒質中でポリシロキサンの縮合重合に対する一定の触媒活性を有するアルキルアリールスルホン酸及びその塩、アルキルスルホン酸及びその塩、スルホコハク酸のアルキルエステル及びその塩、アルキルアリールポリエチレングリコールエーテルサルフェート、アルキルポリエチレングリコールエーテルサルフェート、硫酸のアルキルエーテル及びその塩などの通常、アニオン性のものである。しかしながら、アニオン性界面活性剤は、その中和された形態で乳化に導入されることがより好ましく、例えばアルキルアリールスルホン酸及びアルキルスルホン酸は、通常、トリエタノールアミン(TEA)又は水酸化ナトリウムなどの塩基によって中和され、中和生成物が乳化に使用される。アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸塩及び硫酸塩の塩の形態も、それらがポリシロキサンの縮合重合に対していっさいの触媒活性を示さなければ、直接使用することができる。
【0035】
適切な(ただし網羅的ではない)界面活性剤の例としては、ヘキシルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、直鎖又は分枝鎖のドデシルベンゼンスルホン酸、直鎖又は分枝鎖のC10〜C14ベンゼンスルホン酸、直鎖又は分枝鎖のC10〜C14ベンゼンスルホン酸ナトリウム、直鎖又は分枝鎖のC10〜C14ベンゼンスルホン酸アンモニウム、直鎖又は分枝鎖のC10〜C14硫酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、及び上記に示したものの混合物がある。
【0036】
典型的に工程(iii)は、縮合に特異的な酸触媒を添加することによって行われる。これは、触媒活性を有するアニオン性界面活性剤の更なる添加でもよく、上記に述べたような又は任意の適当な強酸のような、一般的にはそれらの酸性の形態での更なる添加でもよい。特に適した酸の1つとして、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、硫酸、又は塩酸の混合物がある。
【0037】
エマルションを調製するために使用される水の量は、エマルションの全重量に対して10〜90重量%である。
【0038】
典型的に、エマルションを調製するために使用される開始シラノール末端ブロック化オルガノポリシロキサンは、エマルションの全重量に対して25〜80重量%であり、場合により35〜65重量%である。
【0039】
エマルションを調製するために使用されるアニオン性界面活性剤の量は、エマルションの全重量に対して0.5〜10重量%であり、場合により1.5〜8重量%である。
【0040】
触媒活性を有するアニオン性界面活性剤が使用される場合、触媒活性を有するアニオン性界面活性剤とこれを中和するための塩基との間のモル比は、通常は1〜1.5である。
【0041】
活性酸R
+のモル比は、(触媒活性を有するアニオン性界面活性剤のモル量+縮合触媒のモル量−塩基のモル量)/(触媒活性を有するアニオン性界面活性剤のモル量)の比として定義される。
【0042】
縮合触媒の量は、R
+が0.1〜5、場合により0.9〜1.5の間となるように計算される。
【0043】
典型的に重合工程(iii)は、得られるオルガノポリシロキサンポリマーが所望の粘度の増大を実現するまで継続される。重合を停止させるために通常は中和剤を加えることにより、6.5〜8、最も典型的には7〜7.5の範囲でありうる最終pHに到達させる。
【0044】
適切な中和剤は、通常はトリエタノールアミンであるアミン類、又は水酸化ナトリウムなどの水酸化物塩などの強塩基若しくは弱塩基である。
【0045】
開始ポリマーの粘度は、2Pa・sよりも高くてもよく、好ましくは3.5Pa・sよりも高く、より好ましくは4Pa・sよりも高くてもよい。
【0046】
シラノール末端ブロック化シロキサン開始ポリマーは、下式で表されうる。
【化1】
[式中、R
1〜R
6は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基又はアリール基であり、nは通常は300〜2000、好ましくは500〜2000の範囲であり、より通常は500〜1000の範囲である。]
【0047】
特に連続プロセスが用いられる場合、工程(ii)の後で、かつ工程(iii)の前に、シロキサン開始ポリマーを含む濃縮された水中油型エマルションを、例えば水を加えることによって更に希釈することができる。
【0048】
典型的に、重合粒子の粘度である内相粘度は、本発明の特定の実施形態では600Pa・s〜5000Pa・sである。
【0049】
特定の実施形態の利点の1つとして、反応が制御されるために反応において生成されるD4、D5及びD6の濃度としてD4、D5、及びD6の内の1以上、場合によりそれぞれについて0.1%未満が達成されることがある。
【0050】
乳化工程は、粒径Dv0.5が1μm以下、場合により0.5μm以下となるまで継続することができる。
【0051】
本発明の特定の実施形態では、エマルションは、乳化において粒径を減少させるために用いられるか又はエマルションを安定化させるために後で添加される非イオン性界面活性剤、微生物の増殖を防止するための殺生物剤、及び/又は、クリーミングに対するエマルションの安定性を高めるための有機若しくは無機増粘剤などの特定の添加剤を含みうる。特定の好ましい実施形態では、界面活性剤はアニオン性界面活性剤であり、場合により1以上の非イオン性界面活性剤をともなう。界面活性剤は、シラノール末端ブロック化オルガノシロキサン、水及び界面活性剤を含むエマルションの重量の最大で3重量%、好ましくは1重量%以下で使用することができる。
【0052】
非イオン性界面活性剤の例としては、ポリエチレングリコール長鎖(9〜22C、特に12〜14C)アルキルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンソルビタンエーテル、ポリオキシアルキレンアルコキシレートエステル、エチレンオキシドプロピレンオキシドコポリマー、ポリビニルアルコール、グリセリドエステル、及びアルキル多糖類が挙げられる。
【0053】
重合工程は、通常は、D4及びD5のそれぞれが0.1%生成する前に停止される。
【0054】
本発明は、1μm未満の平均粒径を有する、シラノール末端ブロック化オルガノポリシロキサンポリマーの粒子を含有するエマルションを含む組成物であって、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)の含有量が0.1重量%未満であり、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)の含有量が0.1重量%未満である組成物を提供する。
【0055】
本組成物は、ヘアシャンプー、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント中における使用、スキンケア製品、紙又は繊維製品の処理、皮革の処理、及び/又はホームケア用途に適している。
【0056】
本発明の実施形態をあくまで実例として以下に説明する。
【実施例】
【0057】
比較例
最初に、酸、塩基、及び開始末端ブロック化シロキサンポリマーを含む組成物を得るため、116.8gのMarlon AS 3(アルキルベンゼンスルホン酸)を5Lのプラスチック製円筒容器中で1572.6gの水に攪拌(250rpm)しながら加えた。次に、この界面活性剤溶液に99gのトリエタノールアミンLFG 85%を加えた。この水溶液が均一となった時点で、約100mPa・sの粘度及び約4,000の数平均分子量を有する、2200gのMe
2SiOH末端ジメチルポリシロキサンを攪拌(500rpm)しながら加えた。1時間の攪拌後、粗エマルションが得られ、これをRannieミキサーに700barで3回通した。このマスターバッチエマルションは0.169マイクロメートルの平均粒径を有していた。
【0058】
732gのこのマスターバッチエマルションを、1Lの二重壁ガラス反応器に注ぎ入れた。温度を21℃にまで下げ、乳化重合反応を開始するために5分間攪拌(500rpm)しながら55.06gの10%硫酸を加えた。5分後、攪拌速度を250rpmに減速した。反応の温度を10時間かけて10℃にまで徐々に下げた。10時間後、21.5gのトリエタノールアミンを加えることによって反応を停止させた。最終生成物である末端ブロック化シロキサンの粘度は1600Pa・sであった。生成したD4、D5及びD6の濃度は、それぞれ0.225、0.046及び0.031重量%である。この比較例では、D4の濃度が高すぎてこの用途で望ましいポリシロキサンの粘度(1000Pa・s)は得られなかった。
【0059】
(実施例1)
最初に、酸、塩基、及び開始ポリマーを含む組成物を得るため、400gのトリエタノールアミンをチェンジカンミキサーに加えた後、400gのMarlon AS 3(アルキルベンゼンスルホン酸)を加えた。混合物をスクラッパーで30rpmで静かに混合した。次に150gの蒸留水を攪拌(60rpm)しながら加えた。次に、約50,000mPa・s(cP)の粘度及び約64,000の数平均分子量を有する、4400gのMe
2SiOH末端ジメチルポリシロキサンを加えた。混合物を3500rpmで20分間攪拌した。濃縮された水中油型エマルションを得た。次に2548gの希釈水をゆっくり注いだ。このマスターバッチエマルションは0.233マイクロメートルの平均粒径を有していた。
【0060】
545gのこのマスターバッチエマルションを1Lの二重壁ガラス反応器中で202gの水で更に希釈した。温度を21℃にまで下げ、乳化重合反応を開始するために5分間攪拌(500rpm)しながら92.8gの10%硫酸を加えた。5分後、攪拌速度を250rpmに減速した。反応の温度を2時間かけて14℃にまで徐々に下げた後、4時間かけて10℃にまで下げた。6時間後、35gのトリエタノールアミンを加えることによって反応を停止させた。エマルションから抽出されたポリマーは2600Pa・sの粘度を有していた。生成したD4、D5及びD6の濃度は、それぞれ0.068、0.011及び0重量%である。
【0061】
(実施例2)
最初に、酸、塩基、及び開始ポリマーを含む組成物を得るため、402gのトリエタノールアミンをチェンジカンミキサーに加えた後、464gのMarlon AS 3(アルキルベンゼンスルホン酸)を加えた。混合物をスクラッパーで30rpmで静かに混合した。次に150gの蒸留水を攪拌(60rpm)しながら加えた。次に、約14,000mPa・s(cP)の粘度及び約44,000の数平均分子量を有する、4400gのMe
2SiOH末端ジメチルポリシロキサンを加えた。混合物を3500rpmで20分間攪拌した。濃縮された水中油型エマルションを得た。次に2550gの希釈水をゆっくり注いだ。このマスターバッチエマルションは0.196マイクロメートルの平均粒径を有していた。
【0062】
652gのこのマスターバッチエマルションを1Lの二重壁ガラス反応器中で101.2gの水で更に希釈した。温度を21℃にまで下げ、乳化重合反応を開始するために5分間攪拌(500rpm)しながら99.8gの10%硫酸を加えた。5分後、攪拌速度を250rpmに減速した。反応の温度を4時間かけて10℃にまで徐々に下げた。6時間後、37.7gのトリエタノールアミンを加えることによって反応を停止させた。エマルションから抽出されたポリマーは2750Pa・sの粘度を有していた。生成したD4、D5及びD6の濃度は、それぞれ0.072、0.012及び0重量%である。
【0063】
(実施例3)
最初に、酸、塩基、及び開始ポリマーを含む組成物を得るため、400gのトリエタノールアミンをチェンジカンミキサーに加えた後、464gのMarlon AS 3(アルキルベンゼンスルホン酸)を加えた。混合物をスクラッパーで30rpmで静かに混合した。次に150gの蒸留水を攪拌(60rpm)しながら加えた。次に、約5,000mPa・s(cP)の粘度及び約33,000の数平均分子量を有する、4400gのMe
2SiOH末端ジメチルポリシロキサンを加えた。混合物を3500rpmで35分間攪拌した。濃縮された水中油型エマルションを得た。次に2550gの希釈水をゆっくり注いだ。このマスターバッチエマルションは0.200マイクロメートルの平均粒径を有していた。
【0064】
700.1gのこのマスターバッチエマルションを1Lの二重壁ガラス反応器中で100.2gの水で更に希釈した。温度を21℃にまで下げ、乳化重合反応を開始するために5分間攪拌(500rpm)しながら97.6gの10%硫酸を加えた。5分後、攪拌速度を250rpmに減速した。反応の温度を4時間かけて10℃にまで徐々に下げた。6時間後、36.3gのトリエタノールアミンを加えることによって反応を停止させた。エマルションから抽出されたポリマーは1300Pa・sの粘度を有していた。生成したD4、D5及びD6の濃度は、それぞれ0.083、0.016及び0.006重量%である。
【0065】
(実施例4)
最初に、酸、塩基、及び開始ポリマーを含む組成物を得るため、198gのトリエタノールアミンをチェンジカンミキサーに加えた後、234gのMarlon AS 3(アルキルベンゼンスルホン酸)を加えた。混合物をスクラッパーで30rpmで静かに混合した。次に176gの蒸留水を攪拌(60rpm)しながら加えた。次に、約5,000mPa・s(cP)の粘度及び約33,000の数平均分子量を有する、4400gのMe
2SiOH末端ジメチルポリシロキサンを加えた。混合物を3500rpmで25分間攪拌した。濃縮された水中油型エマルションを得た。次に2922gの希釈水をゆっくり注いだ。このマスターバッチエマルションは0.297マイクロメートルの平均粒径を有していた。
【0066】
821.3gのこのマスターバッチエマルションを、1Lの二重壁ガラス反応器に注ぎ入れた。温度を21℃にまで下げ、乳化重合反応を開始するために5分間攪拌(500rpm)しながら62.09gの10%硫酸を加えた。5分後、攪拌速度を250rpmに減速した。反応の温度を4時間かけて10℃にまで徐々に下げた。10時間後、24.5gのトリエタノールアミンを加えることによって反応を停止させた。エマルションから抽出されたポリマーは1500Pa・sの粘度を有していた。生成したD4、D5及びD6の濃度は、それぞれ0.087、0.017及び0.008重量%である。
【0067】
(実施例5)
最初に、酸、塩基、及び開始ポリマーを含む組成物を得るため、400gのトリエタノールアミンをチェンジカンミキサーに加えた後、464gのMarlon AS 3(アルキルベンゼンスルホン酸)を加えた。混合物をスクラッパーで30rpmで静かに混合した。次に180gの蒸留水を攪拌(60rpm)しながら加えた。約2,500mPa・s(cP)の粘度を有する、4400gのMe
2SiOH末端ジメチルポリシロキサンを加えた。混合物を3500rpmで25分間攪拌した。濃縮された水中油型エマルションを得た。次に2521gの希釈水をゆっくり注いだ。このマスターバッチエマルションは0.186マイクロメートルの平均粒径を有していた。
【0068】
650.1gのこのマスターバッチエマルションを、1Lの二重壁ガラス反応器に注ぎ入れた。温度を21℃にまで下げ、乳化重合反応を開始するために5分間攪拌(500rpm)しながら99.04gの10%硫酸を加えた。5分後、攪拌速度を250rpmに減速した。反応の温度を4時間かけて10℃にまで徐々に下げた。10時間後、25.99gのトリエタノールアミンTEAを加えることによって反応を停止させた。エマルションから抽出されたポリマーは1700Pa・sの粘度を有していた。生成したD4、D5及びD6の濃度は、それぞれ0.088、0.017及び0.008重量%である。
【表1】
要約表:開始ポリマーの濃度は、表に記載したすべての実施例についてシリコーン45重量%に設定されている。
【0069】
実施例6のマスターバッチ
最初に、酸、塩基、及び開始ポリマーを含む組成物を得るため、313gのトリエタノールアミンをチェンジカンミキサーに加えた後、369gのMarlon AS 3(アルキルベンゼンスルホン酸)を加えた。混合物をスクラッパーで30rpmで静かに混合した。次に251gの蒸留水を攪拌(60rpm)しながら加えた。約80,000mPa・s(cP)の粘度を有する、5700gのMe
2SiOH末端ジメチルポリシロキサンを加えた。混合物を3500rpmで25分間攪拌した。濃縮された水中油型エマルションを得た。次に1368gの希釈水をゆっくり注いだ。このマスターバッチエマルションは0.396マイクロメートルの平均粒径を有していた。
【0070】
実施例7のマスターバッチ
末端ジメチルポリシロキサンが約60,000mPa・s(cP)の粘度を有する点以外は実施例6と同様とした。このマスターバッチエマルションは0.41マイクロメートルの平均粒径を有していた。
【0071】
実施例8及び9のマスターバッチ
最初に、酸、塩基、及び開始ポリマーを含む組成物を得るため、259gのトリエタノールアミンをチェンジカンミキサーに加えた後、305gのMarlon AS 3(アルキルベンゼンスルホン酸)を加えた。混合物をスクラッパーで30rpmで静かに混合した。次に270gの蒸留水を攪拌(60rpm)しながら加えた。約5,000mPa・s(cP)の粘度を有する、5779gのMe
2SiOH末端ジメチルポリシロキサンを加えた。混合物を3500rpmで25分間攪拌した。濃縮された水中油型エマルションを得た。次に1387gの希釈水をゆっくり注いだ。このマスターバッチエマルションは0.303マイクロメートルの平均粒径を有していた。
【0072】
実施例10のマスターバッチ
Marlon AS3の後に非界面活性剤として57gのポリオキシエチレン(12)トリデシルエーテルを加え、末端ジメチルポリシロキサンが約60,000mPa・s(cP)の粘度を有する点以外は実施例6と同様とした。このマスターバッチエマルションは0.31マイクロメートルの平均粒径を有していた。
【0073】
実施例6〜11の反応条件
要約表に示した実施例6〜11では、450〜900gの上記に述べたマスターバッチエマルションを1Lの二重壁ガラス反応器に注いだ。温度を「開始温度」にまで下げ、乳化重合を開始するため、適正なR+に達するような所定量の10%硫酸を5分間攪拌(500rpm)しながら加えた。5分後、攪拌速度を250rpmに減速した。反応の温度を4時間かけて「最終温度」にまで徐々に下げた。所望の最終粘度に達した時点でpH 7〜7.5に達するのに充分なトリエタノールアミンを加えることによって反応を停止させた。
【0074】
実施例6a、b及びcは、R+の大きな範囲を用いることができることを示している。それでもなお、環状化合物の生成率は低く、最終粘度は反応速度を大きく損なうことなく適度に高い。
【0075】
実施例7a及び7bは、一定の温度と比較して、反応時に温度傾斜を用いる効果の影響を示している。実施例7aは10℃で行い、実施例7bは21℃で開始した後、反応の4時間後に温度を10℃まで下げた。5時間の反応後、一定温度の代わりに温度傾斜プロファイルを用いた場合にはより高い内相粘度が得られ、D4及びD5の生成率は0.1%以下に抑えられていることが分かる。
【0076】
実施例8は、開始点においてより粘度の低い水酸基末端オルガノポリシロキサンを使用したにも関わらず同じ結果を示している。7.5時間の反応後に最終粘度が得られ、D4及びD5の生成率は0.1%以下に抑えられている。
【0077】
反応の低下以外に、10℃ではなく20℃で開始することの利点は、全体の製造バッチ時間が短縮されることである。実際、反応器全体を10℃にまで冷却するために要する時間は短くなっている。
【0078】
実施例9は高い最終粘度を示しており、開始温度を18℃とし、4時間後に15℃にまで低下させる別の温度傾斜によってD4及びD5の低い生成率(%)が得られている。
【0079】
実施例10は、実施例7aと比較する必要がある。実施例10では非イオン性界面活性剤の添加によって、粒径が0.4〜0.3μmに低減している。重合は他の実施例と同様にして行った。非イオン性界面活性剤の存在にもかかわらず、1110Pa・sの最終粘度に10時間で達しており、依然、環状化合物の生成率は0.1%よりも低くなっている。
【0080】
(実施例11)
トリエタノールアミン、Marlon AS 3(アルキルベンゼンスルホン酸)、約20,000mPa・s(cP)の粘度を有するMe
2SiOH末端ジメチルポリシロキサン、及び水を、500rpmで動作する予備混合ミキサーに、次いで3000rpmで動作する高せん断動的ミキサー(Homomic Line Mill)に供給した。詳細なプロセスについては、欧州特許第1352011号の実施例1及び2に述べられている。トリエタノールアミン、Marlon AS 3(アルキルベンゼンスルホン酸)、Me
2SiOH末端ジメチルポリシロキサン、及び水の供給速度は、それぞれ15kg/時間、16.5kg/時間、325kg/時間及び7kg/時間であり、これによりそれぞれ、4.2重量%、4.5重量%、89.4重量%、1.9重量%の組成が与えられた。
【0081】
したがって、上記の異なる非限定的な実施例は、本発明の範囲に含まれない比較例と比較して低い環状化合物の生成濃度を示している。
【0082】
本発明の各実施形態は、ヘアシャンプー、ヘアコンディショナー、皮革の処理、又はスキンケア製品の送達配合物などの様々な用途で使用することができる。本発明の各実施形態は、紙又は繊維製品のコポリマー、及びホームケア用途で使用することもできる。
【0083】
本発明の範囲から逸脱することなく改良及び変更を行うことが可能である。