(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、シャフト回転手段を構成する回転子(回転カム)を係止溝に係止するための圧縮コイルバネの付勢力(荷重)が、シャフトに直接作用する。このため、回転によりダイヤルカバーの溝に係脱するシャフトの拡径頭部に高荷重が作用する。この結果、ラッチ装置の耐久性が低下する。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、高荷重による耐久性の低下を防止できるラッチ装置を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明のラッチ装置は、第1部材に対向する第2部材側に固定される筒形のケースと、前記ケース内にスライド可能に保持され、前記ケース内から突出して前記第1部材を押し出す前進位置となるロッドと、前記ケースと前記ロッドとの間に位置し、前記ケース内で弾性変形により圧縮されて前記ロッドを前記ケース内から押し出す突出方向へ付勢するロッド付勢手段と、前記ロッドとともに前記突出方向へ移動するスライドカムと、前記スライドカムの前記突出方向の後方に設けられ前記ロッドの軸回りに前記スライドカムに対して相対回転可能な回転カムと、を備え、前記ケースと前記ロッドとの間に位置し、前記ロッド付勢手段の付勢力に抗して前記ロッドを押し込むことで、前記回転カムが前記スライドカムと係合し回転することで前記ロッドを前記ケースの後退位置にロックするロック手段と、前記ロッドと前記ケースとに設けられ、前記ロッドの進退時に前記ロッドを軸回り方向へ回転するためのガイド手段と、前記ロッドに設けられ、前記ロッドが軸回り方向へ回転することで前記第1部材の被結合部に係脱可能とされ、前記ロッドがロックした際に前記被結合部に係合する係合部と、を有する。
【0007】
請求項1に記載の本発明のラッチ装置では、ロッドとケースとに設けられたガイド手段によって、ロッドの進退時にロッドを軸回り方向へ回転する。そして、ロッドに設けられた係合部が、ロッドが軸回り方向へ回転することで第1部材の被結合部に係脱する。また、第1部材に対向する第2部材側に固定される筒形のケースと、ケース内にスライド可能に保持されケース内から突出して第1部材を押し出す前進位置となるロッドとの間に位置するロッド付勢手段が、ケース内で弾性変形により圧縮されてロッドをケース内から押し出す突出方向へ付勢する。また、ロッド付勢手段の付勢力に抗してロッドを押し込むと、回転カムがスライドカムと係合し回転することで、ケースとロッドとの間に位置するロック手段によりロッドが後退位置でロック状態となる。また、ロック状態では、ロッド付勢手段の付勢力が、係合部とガイド手段とに直接作用することがない。この結果、高荷重により耐久性が低下するのを防止できる。
【0008】
請求項2記載の本発明は請求項1に記載のラッチ装置において、前記ロック手段は、前記ロッドの軸方向の途中に位置し、半径方向に外向きに突出する突出部と、前記突出部を境にして前記突出方向の後方に位置する下側ロッド部に軸方向にスライド可能に支持された前記スライドカムと、前記スライドカムの前記突出方向の後方に前記下側ロッド部に回転可能で、且つ軸方向にスライド可能に支持され、前記スライドカムにかみ合うともに、前記ロッドのスライドにより係脱し、一方向の回転力を付与される前記回転カムと、前記スライドカムの外周面と前記ケースの内周面とのいずれか一方に位置し、前記ロッドのスライド方向に延びるスライド溝と、前記スライドカムの外周面と前記ケースの内周面とのいずれか他方に位置し、前記スライドカムのスライドにより前記スライド溝内を相対的にスライドすることで、前記ケースに対する前記スライドカムの回転を阻止するスライド突起と、前記回転カムの外周面と前記ケースの内周面とのいずれか一方から突出する係合突起と、前記回転カムの外周面と前記ケースの内周面とのいずれか他方に位置し、前記係合突起がはまり込むロック部を有し、前記回転カムが前記
スライドカムから係脱することで前記回転カムが回転することにより、前記ロック部にはまり込んでいた前記係合突起が前記ロック部から係脱可能なロック溝と、前記回転カムの前記突出方向の後方に、前記下側ロッド部に回転可能で、且つ軸方向にスライド可能に支持され、前記回転カムに当接可能とされたスリーブと、前記スリーブの前記突出方向の後方に、前記下側ロッド部に挿通され、前記ロッドのスライド方向の移動を制限するためのグロメットと、を備える。
【0009】
請求項2記載の本発明のラッチ装置では、ロック手段が、突出部、スライドカム、回転カム、スライド溝、スライド突起、係合突起、ロック溝、スリーブ及びグロメットによって構成される
回転カム式ロック機構であり、ロッドの押し込みにより、
回転カムが作動しロックとロック解除が切り替わる。このため、ロックとロック解除との切り替わりが確実である。
【0010】
請求項3記載の本発明は請求項1又は請求項2に記載のラッチ装置において、前記係合部と前記ケースとの間に設けられ、前記ロッドを覆うブーツを有する。
【0011】
請求項3記載の本発明のラッチ装置では、係合部とケースとの間に設けたブーツでロッドを覆うため、ガイド手段への異物の付着を防止できる。
【0012】
請求項4記載の本発明は請求項
3に記載のラッチ装置において、前記ロッドと前記ブーツとの間に設けられ、前記ロッドと前記ブーツとの摺動抵抗を低減するための摺動抵抗低減部材を有する。
【0013】
請求項4記載の本発明のラッチ装置では、ロッドとブーツとの間に設けた摺動抵抗低減部材によって、ロッドとブーツとの摺動抵抗が低減される。この結果、ブーツに対するロッドの回転性能が向上する。
【0014】
請求項5記載の本発明は請求項1〜4の何れか1項に記載のラッチ装置において、前記第2部材が車体であり、前記第1部材が前記車体に開閉方向へ回転可能に取付けられたフューエルリッドである。
【0015】
請求項5記載の本発明のラッチ装置では、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載のラッチ装置け具を備えているため、車体に開閉方向へ回転可能に取付けられたフューエルリッドにおいて前述した如き作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の本発明のラッチ装置は、上記構成としたので、高荷重による耐久性の低下を防止できる。
【0017】
請求項2に記載の本発明のラッチ装置は、上記構成としたので、高荷重による耐久性の低下を防止できると共にロックとロック解除との切り替わりが確実である。
【0018】
請求項3に記載の本発明のラッチ装置は、上記構成としたので、ガイド手段への異物の付着を防止できる。
【0019】
請求項4に記載の本発明のラッチ装置は、上記構成としたので、ブーツに対するロッドの回転性能を向
上できる。
【0020】
請求項5に記載の本発明のラッチ装置は、上記構成としたので、車体に開閉方向へ回転可能に取付けられたフューエルリッドへの使用において高荷重による耐久性の低下を防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施形態)
次に、本発明のラッチ装置の一実施形態を
図1〜
図8に従って説明する。
図2に示すように、本実施形態のラッチ装置10は、例えば、自動車の車体において、第1部材としてのフューエルリッド12に対向する第2部材としての車体のインナーパネル14に設けられている。また、フューエルリッド12は、図示しないヒンジによってインナーパネル14に開閉方向へ回転可能に取付けられており、ラッチ装置10によって、
図2に示す閉位置に保持されると共に、開方向となる突出方向(
図2の矢印A方向)へ押し出されるようになっている。
【0023】
図1に示すように、ラッチ装置10は、ケース16、ロッド20、ロック手段としてのロッド20の突出部64、キャップ18、スライドカム21、回転カム22、スリーブ120、グロメット122、第1スプリング25、ロッド付勢手段としての第2スプリング26、ブーツ28を備えている。なお、ラッチ装置10のパーツは、上記したパーツに限定されない。また、第1スプリング25と第2スプリング26は一例としてコイルスプリングで構成されており、第2スプリング26の付勢力(荷重)に比べて第1スプリング25の付勢力(荷重)が小さく(軽く)設定されている。
【0024】
(ケース)
図3に示すように、ケース16は筒形に形成されている。なお、
図2に示すように、インナーパネル14には、表裏面に貫通する取付け孔32が形成されており、この取付け孔32にケース16が固定されるようになっている。
【0025】
図3に示すように、ケース16は、上面が開口した円筒形に形成されており、底面が形成されている。また、ケース16の外径は、インナーパネル14の取付け孔32の内径以下に設定されている。ケース16の開口側端部には、半径方向の外向きに張り出すフランジ部34が形成されており、フランジ部34の上側には、環状の取付け部36が形成されている。また、フランジ部34の下側には、ケース16の外周から放射状に複数個の弾性変形可能に突出する弾性爪38が形成されており、これらの弾性爪38は、インナーパネル14の板厚の間隔を保ってフランジ部34の下面から離れている。
【0026】
図2に示すように、ケース16を取付け孔32に合わせてはめ込むと、弾性爪38が一旦引っ込み、その後、インナーパネル14の裏面側で弾性的に復帰し、フランジ部34の下面との間でインナーパネル14を挟持することで、取付け孔32にケース16が固定されるようになっている。
【0027】
(キャップ)
図1に示すように、キャップ18は、ケース16の開口上面に取り付けられており、ケース16の一部を構成している。
【0028】
図3に示すように、キャップ18は、ケース16の開口上面より一回り大きい蓋部40と、蓋部40の下面から一段細くなって円筒形に延びる円筒部42とを備えている。
【0029】
図7に示すように、キャップ18の蓋部40の内周部には、上下に貫通した円形の貫通孔44が形成されており、貫通孔44には、ロッド20が挿通されるようになっている。また、貫通孔44の内周部にはガイド手段としての凸部45が突出形成されている。なお、キャップ18の円筒部42は、外周がケース16の内径以下に設定されており、ケース16内に挿入されている。また、キャップ18の円筒部42の外周における蓋部40に隣接する部位には、放射状に複数個の弾性変形可能に突出する係止爪46が形成されている。
【0030】
図3に示すように、ケース16の取付け部36には、内外に貫通する複数個の係止孔48が形成されており、ケース16の係止孔48にキャップ18の係止爪46がはまり込むようになっている。
【0031】
従って、キャップ18の円筒部42をケース16の開口上面に合わせてはめ込むと、係止爪46が一旦、引っ込み、その後、係止孔48に弾性的にはまり込むことで、ケース16にキャップ18が固定されるようになっている。
【0032】
図7に示すように、キャップ18の円筒部42の内周面には、凹設されたスライド溝50が形成されている。スライド溝50は、スライドカム21をスライド可能に保持するようになっている。なお、スライド溝50は、複数個形成されており、上端部が行き止まり、下端部が開放している。スライド溝50の下側には、円筒部42の内周面に凹設されたロック溝52が形成されており、ロック溝52が回転カム22を回転不能にロックするようになっている。また、ロック溝52は、隣接したスライド溝50の間隔内に形成され、円筒部42の内周面の周方向に沿って鋸歯状に形成されている。
【0033】
図4〜
図6に示すように、ロック溝52は、1個のスライド溝50を基準として、スライド溝50から回転カム22の回転方向(
図4〜
図6中、矢印B方向)の前方に向かい、上方(ロッドの突出方向)に向かって上り傾斜した第1斜面部52Aと、第1斜面部52Aの傾斜上端部、すなわち、回転カム22の回転方向の前方に位置し、後述する回転カム22の係合突起56がはまり込むロック部52Bと、ロック部52Bから下方に向かって切り立った垂直部52Cと、垂直部52Cの下端部から上方に向かって上り傾斜し、傾斜上端部が回転カム22の回転方向の前方に位置する他の1個のスライド溝50に臨む第2斜面部52Dと、を備えている。
【0034】
また、第1斜面部
52Aの傾斜下端部、すなわち、回転カム22の回転方向の後方は、1個のスライド溝50に臨んでいる。なお、第1斜面部52Aと第2斜面部52Dとの傾斜角度は、一致している。
【0035】
(ロッド)
図1に示すように、ロッド20は、ケース16内にスライド可能に保持され、ケース16内から突出して前進位置となり、
図2に示すフューエルリッド12を押し出すようになっている。
【0036】
図3に示すように、ロッド20は、円柱棒状に形成され、軸方向の中間部に位置し、半径方向に外向きに円形板状に突出する突出部64と、突出部64の上側に位置し、ケース16内から突出してフューエルリッド12を押し出す上側ロッド部66と、突出部64の下側に位置し、第2スプリング26が挿通される下側ロッド部68とを備えている。なお、ロッド20の突出部64は、キャップ18の蓋部40における貫通孔44の下方周辺部に当接し、ロッド20の押し上げ方向への移動が阻止されるようになっている。
【0037】
突出部64のロッド20の突出方向の後方に位置となる下方側には、下側ロッド部68に挿通されたスライドカム21が配置されている。スライドカム21の下面には、後述する回転カム22の可動側カム部82とかみ合う固定側カム72が形成されている。固定側カム72は、スライドカム21の下面の円周方向に沿って連続的に形成されており、鈍角波歯状に形成されている。また、スライドカム21の外周には、放射状に複数個の突出するスライド突起74が形成されている。
【0038】
スライドカム21のスライド突起74は、キャップ18のスライド溝50にはまり合い、スライド溝50に沿って昇降することで、スライドカム21がキャップ18内にスライド可能で、且つ回転不能に保持されるようになっている。
【0039】
図3に示すように、ロッド20の上側ロッド部66の先端部となる上端には、係合部67が形成されている。また、ロッド20の上側ロッド部66の長手方向中間部には、ガイド手段としての螺旋状のガイド溝75が形成されており、このガイド溝75がキャップ18のガイド手段としての凸部45と摺動することで、ロッド20の進退時にロッド20が軸回り方向へ回転するようになっている。
【0040】
図2に示すように、ロッド20の係合部67は、ロッド20の軸方向と直交する方向に伸びる棒状とされている。従って、ロッド20の進退時にロッド20が軸回り方向へ回転することで、係合部67が軸回り方向へ回転し、フューエルリッド12の裏面に取付けられた被結合部としてのリテーナ69の係合孔69Aに、係合または係合解除されるようになっている。なお、係合孔69Aはリテーナ本体69Bの上壁部に形成された長孔となっている。
【0041】
図8に示すように、リテーナ69のリテーナ本体69Bはキャップ形状となっており、ブーツ28の上部を覆うようになっている。また、リテーナ本体69Bの上壁部からは、上方へ係合部69Cが延設されており、係合部69Cをフューエルリッド12の取付け孔13に係合させることで、リテーナ69をフューエルリッド12に取付けることができるようになっている。
【0042】
従って、ロッド20がロック状態にあるときには、
図2に二点鎖線で示すように、ロッド20の係合部67がリテーナ69の係合孔69Aに係合し、フューエルリッド12を閉状態に保持するようになっている。
【0043】
図3に示すように、ロッド20の上側ロッド部66の上端近傍には、ブーツ28を取り付ける環状の環状溝76が形成されている。また、ロッド20の下側ロッド部68の下端部には、後述するグロメット122の縮径部122Bがはまり込むように細くなった、くびれ部80が形成されている。
【0044】
なお、ロッド20のくびれ部80の高さは、グロメット122の縮径部122Bの上下方向の肉厚より高く設定されている。このため、くびれ部80に、縮径部122Bがはまり込んだ状態で、くびれ部80の高さ方向にクリアランスが発生するようになっている。この結果、グロメット122の縮径部122Bは、ロッド20のくびれ部80のクリアランス分だけ上下に昇降可能となっている。一方、ロッド20はグロメット122に対して前記クリアランス分だけ上下に昇降可能となっている。
【0045】
また、クリアランスの量は、後述する回転カム22の可動側カム部82がスライドカム21の固定側カム72にかみ合った第1の高さ位置と、固定側カム72から係脱する第2の高さ位置との間において昇降する回転カム22の昇降量に応じて設定されている。
【0046】
(スリーブ)
図3に示すように、スリーブ120は、スリーブ本体120A、鍔部120Bを備えており、グロメット122は、グロメット本体122A、縮径部122B、スリット122Cを備えている。
【0047】
図1に示すように、スリーブ120は、ロッド20の下側ロッド部68に挿通され、回転カム22と第2スプリング26との間に位置し、グロメット122は、ロッド20の下側ロッド部68に挿通され、スリーブ120の下側に位置している。
【0048】
図3に示すように、スリーブ120のスリーブ本体120Aと、グロメット122のグロメット本体122Aは筒形に形成されており、下側ロッド部68に挿通されている。また、スリーブ120の鍔部120Bは、回転カム22と当接するスリーブ本体120Aの上端部に位置しており、
図1に示すように、半径方向に外向きと内向きの双方に張り出している。
【0049】
図1に示すように、グロメット122の縮径部122Bは、上端部と反対側のグロメット本体122Aの下端部に位置しており、半径方向に内向きに突出している。
【0050】
また、スリット122Cはグロメット本体122Aの下端部を複数に切り割っており、スリット122Cはグロメット本体122Aの直径方向に二対形成され、グロメット本体122Aの下側の端面から上方に向かって途中まで形成されている。
【0051】
図1に示すように、第1スプリング25は、グロメット122とスリーブ120との間に位置し、グロメット122のグロメット本体122Aと、スリーブ120の鍔部120Bの内周部との間で圧縮されるようになっており、スリーブ120とグロメット122とを互いに離間する方向へ付勢している。
【0052】
(ロッド付勢手段)
図1に示すように、第2スプリング26は、ケース16とスリーブ120との間に位置し、スリーブ120の鍔部120Bの外周部とケース16の底との間で圧縮されるようになっており、回転カム22、スライドカム21を介してロッド20をケース16内から押し出す突出方向に向かって付勢している。
【0053】
(ロック手段)
図3に示すように、ロック手段はスライドカム21と回転カム22を備えた回転カム式となっており、ケース16とロッド20との間に位置し、第2スプリング26の付勢力に抗してロッド20をケース16の後退位置にロックするようになっている。また、回転カム22は、ロッド20の下側ロッド部68に回転可能で、且つ軸方向にスライド可能に支持されている。また、回転カム22は、スライドカム21の固定側カム72にかみ合うと共に、ロッド20のスライドにより係脱し、一方向の回転力を付与される可動側カム部82を有している。
【0054】
回転カム22はドーナツ形に形成されており、中心に上下に貫通し、ロッド20の下側ロッド部68に挿通される中心孔86と、上面に形成され、スライドカム21の固定側カム72にかみ合うと共に、ロッド20のスライドにより係脱し、一方向の回転力を付与される可動側カム部82とを備えている。可動側カム部82は、スライドカム21の固定側カム72と相補的な形状を成しており、回転カム22の上面の円周方向に沿って連続的、且つ鈍角波歯状に形成されている。また、回転カム22の外周には、放射状に複数個の係合突起56が形成されている。
【0055】
図4〜
図6に示すように、回転カム22の係合突起56は、上面に斜面を有する平面台形形に形成されており、キャップ18のロック溝52のロック部52Bにはまり込むようになっている。また、回転カム22の係合突起56の台形形の斜面は、ロック溝
52の第1斜面部52Aと第2斜面部52Dの傾斜角度に一致している。
【0056】
回転カム22の係合突起56の左右方向の横幅は、キャップ18のスライド溝50の左右の溝幅以下に設定されており、スライド溝50をスライド可能としている。
【0057】
(ブーツ)
図3に示すように、ブーツ28は、ケース16から突出する上側ロッド部66を覆う伸縮可能なものであり、ロッド20の係合部67とケース16との間に設けられている。ブーツ28は上面と下面が開口した中空の蛇腹状に形成されている。
図1に示すように、ブーツ28の開口下面の内周面には、半径方向に内向きに環状に突出した環状凹部96が形成されており、環状凹部96は、ケース16のフランジ部34にはめ込まれている。
【0058】
一方、ブーツ28の開口上面の内周面には、半径方向に内向きに環状に突出した環状凹凸97が形成されている。また、ロッド20の進退時にロッド20がブーツ28に対して軸回り方向へ円滑に回転するように、ブーツ28の環状凹凸97は、ブーツ28に設けられた摺動抵抗低減部材としての筒状のカラー100と、ロッド20に設けられた摺動抵抗低減部材としての筒状のシール102を挟んで、ロッド20の環状溝76にはめ込まれている。
【0059】
従って、ロッド20の係合部67とケース16との間に設けたブーツ28でロッド20の上側ロッド部66を覆うため、ガイド溝75と凸部45への異物の付着を防止できるようになっている。また、ロッド20とブーツ28との間に設けたカラー100とシール102とによって、ロッド20とブーツ28との摺動抵抗が低減されるようになっている。
【0060】
(作用・効果)
次に、本実施形態のラッチ装置10の作用効果について説明する。
図2に示すように、ラッチ装置10は、組み立てた状態で、ケース16を、インナーパネル14の取付け孔32に合わせてはめ込むことで、インナーパネル14に固定される。また、フューエルリッド12が閉じた状態では、ラッチ装置10はロッド20が短縮したロック状態にロックされている。
【0061】
また、閉じた状態のフューエルリッド12を押し込むと、ラッチ装置10のロッド20がケース16内に押し込まれ、ロック状態が解除される。この結果、第2スプリング26の圧縮復元力により、ロッド20がケース16内から突出し、フューエルリッド12を押し開くと共に、ロッド20の係合部67とリテーナ69の係合孔69Aとの係合が解除される。このため、押し開かれたフューエルリッド12を手で容易に開くことができる。
【0062】
より具体的に説明すると、ロッド20が短縮したロック状態では、
図6に示すように、回転カム22の係合突起56とキャップ18のロック溝52とが係合し、ロック部52Bにはまり込んでいる。この状態で、ロッド20がケース16内に押し込まれると、ロッド20の突出部64に押されて、スライドカム21とともに回転カム22が下降する。このため、
図5に示すように、回転カム22の係合突起56が、キャップ18のロック部52Bから係脱する。このとき、スライドカム21の固定側カム72と、回転カム22の可動側カム部82とのかみ合いが係脱し、矢印Bの方向に、回転カム22が回転する。次いで、ロッド20を押し込む力が解放されると、回転カム22が、第2スプリング26の圧縮復元力により押し上げられる。このとき、回転カム22の係合突起56が、キャップ18の第2斜面部52Dに当接する。このため、係合突起56は、第2斜面部52Dに摺接しながら上昇し、
図4に示すように、第2斜面部52Dの斜面上端部からスライド溝50にはまり込む。
【0063】
図4に示すように、係合突起56が、スライド溝50にはまり込むと、係合突起56はスライド溝50に沿って上昇可能となる。このため、第2スプリング26の圧縮復元力により、グロメット122を介してロッド20の突出部64が押し上げられ、ロッド20がケース16から突出して伸張する。
【0064】
一方、開いたフューエルリッド12を手で閉じると、伸張したラッチ装置10のロッド20が、第2スプリング26の付勢力に抗して、ケース16に向かって押し込まれ、回転カム22の係合突起56が、スライド溝50に沿って下降する。
【0065】
次いで、ロッド20が、第2スプリング26の付勢力に抗して、ケース16に向かってさらに押し込まれ、回転カム22の係合突起56が、スライド溝50に沿って下降し、係合突起56がスライド溝50の開口下端から抜け出ると、回転カム22の回転が可能となる。このため、固定側カム72と可動側カム部82とのかみ合いの係脱により、
図5の矢印Bの方向に、回転カム22が回転し、スライド溝50の下側からロック溝52の第1斜面部52Aに向かって移動する。
【0066】
次いで、ロッド20を押し込む力が解放されると、回転カム22が、第1スプリング25と第2スプリング26の圧縮復元力により押し上げられる。このとき、係合突起56が第1斜面部52Aに当接する。このため、係合突起56は、第1斜面部52Aに摺接しながら上昇し、
図6に示すように、ロック部52Bにはまり込み、再度、ロック状態に復帰する。
【0067】
また、ロッド20に設けられたガイド溝75と、キャップ18に設けられた凸部45により、ロッド20の進退時にロッド20が軸回り方向へ回転する。そして、ロック状態では、ロッド20の先端部に設けられた係合部67が、フューエルリッド12の裏面に取付けられた被結合部としてのリテーナ69の係合孔69Aに、
図2に二点鎖線で示すように係合し、フューエルリッド12を閉状態に保持する。
【0068】
従って、本実施形態のラッチ装置10では、第2スプリング26が、ケース16内とスリーブ120との間で弾縮され、スリーブ120を介しロッド20を突出方向に向かって付勢する。また
、ロック状態では、第2スプリング26の付勢力(高荷重)が、ロッド20の係合部67、ガイド溝75及びキャップ18の凸部45に直接作用することがない。この結果、高荷重によりラッチ装置10の耐久性が低下するのを防止できる。
【0069】
また、本実施形態では、ロック手段が上記構成の
回転カム式ロック機構であり、ロッド20の押し込みにより、
回転カムが作動しロックとロック解除が切り替わる。このため、ロックとロック解除との切り替わりが確実である。
【0070】
また、本実施形態では、係合部67とケース16との間に設けたブーツ28でロッド20の上側ロッド部66を覆うため、ガイド溝75や凸部45への異物の付着を防止できる。
【0071】
また、本実施形態では、ロッド20とブーツ28との間に設けたカラー100とシール102とによって、ロッド20とブーツ28との摺動抵抗が低減される。この結果、ブーツ28に対するロッド20の回転性能が向上する。
【0072】
(その他の実施形態)
以上に於いては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、ロッド付勢手段、ロック手段は上記各実施形態の構成に限定されない。
【0073】
また、上記各実施形態では、ロッド20の上端に形成した係合部67が、フューエルリッド12の裏面に取付けられた被結合部としてのリテーナ69の係合孔69Aに係合する構成としたが、これに代えて、被結合部の係合孔をフューエルリッド12の裏面に形成した構成としてもよい。また、被結合部は係合孔に限定されず他の構成でもよい。
【0074】
また、上記各実施形態では、ケース16のキャップ18にガイド手段としての凸部45を設け、ロッド20にガイド手段としての螺旋状のガイド溝75を形成したが、これに代えて、キャップ18にガイド手段としてのガイド溝75を形成し、ロッド20にガイド手段としての凸部45を設けた構成としてもよい。また、ガイド手段は凸部45と螺旋状のガイド溝75に限定されず、他の構成としてもよい。
【0075】
また、上記各実施形態では、摺動抵抗低減部材として筒状のカラー100と筒状のシール102を使用したが、摺動抵抗低減部材は筒状のカラー100と筒状のシール102に限定されず他の構成としてもよい。
【0076】
また、上記各実施形態では本発明のラッチ装置10を、第1部材としてのフューエルリッド12に対向する第2部材としての車体のインナーパネル14に取付けたが、本発明のラッチ装置は、フューエルリッド以外の他の第1部材に対向する、車体のインナーパネル以外の他の第2部材に取付けてもよい。