特許第6309285号(P6309285)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6309285ミント風味香料組成物及びミント風味の増強方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6309285
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】ミント風味香料組成物及びミント風味の増強方法
(51)【国際特許分類】
   C11B 9/00 20060101AFI20180402BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20180402BHJP
   A23G 3/00 20060101ALI20180402BHJP
   A23G 4/00 20060101ALI20180402BHJP
   A23L 27/12 20160101ALI20180402BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20180402BHJP
   A61K 8/97 20170101ALI20180402BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20180402BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20180402BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20180402BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20180402BHJP
【FI】
   C11B9/00 A
   A23L27/00 Z
   A23G3/00
   A23G4/00
   A23L27/12
   A61K8/92
   A61K8/97
   A61Q13/00 101
   A61K47/26
   A61Q11/00
   A61K47/46
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-13144(P2014-13144)
(22)【出願日】2014年1月28日
(65)【公開番号】特開2015-140381(P2015-140381A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2017年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175283
【氏名又は名称】三栄源エフ・エフ・アイ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】芳仲 幸治
(72)【発明者】
【氏名】坂井 茜
【審査官】 吉田 邦久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−034460(JP,A)
【文献】 特開2006−104229(JP,A)
【文献】 特開2007−246682(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0218178(US,A1)
【文献】 特開2013−107976(JP,A)
【文献】 特開2013−081451(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102550782(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B 9/00
A23G 3/00
A23G 4/00
A23L 27/00
A23L 27/12
A61K 8/92
A61K 8/97
A61K 47/26
A61K 47/46
A61Q 11/00
A61Q 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミント系香料にラカンカ抽出物を共存させることを特徴とする、ミント風味の増強方法であって、ミント系香料1質量部に対して、ラカンカ抽出物を0.005〜30質量部共存させる、ミント風味の増強方法
【請求項2】
ラカンカ抽出物を有効成分とする、ミント風味増強剤であって、ミント風味を増強するために使用するラカンカ抽出物の量が、ミント系香料1質量部に対して0.005〜30質量部である、ミント風味増強剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミント風味香料組成物、より詳細には、ミント系香料及びラカンカ抽出物を含有するミント風味香料組成物、及びミント風味の増強方法、より詳細には、ミント系香料にラカンカ抽出物を共存させるミント風味の増強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペパーミントオイル、スペアミントオイル、ハッカ油、メントールなどのミント系香料は、清涼感を与える清涼剤として、チューインガムやキャンディーなどの菓子類などの飲食品や、歯磨、化粧品、医薬品などに広く用いられている。
特に飲食品においては、ミント系香料を添加することにより、スッキリとした風味に整えることができる。
しかしながら、ミント系香料は多量に使用すると、清涼感は増強されるが、それ自体に由来する苦味が強くなるという問題点があった。
【0003】
そのため、ミント系香料の風味を改良し増強するために、種々の提案がされている。
特許文献1には、ミント系香料にポリゴジアールもしくはポリゴジアールを含有する植物の抽出物を添加することにより、ミント系香料の香味を改善する方法が記載されている。
特許文献2には、ミント類に1,3,5,8−ウンデカテトラエン類を含有させることにより、強さやインパクトなどに優れたミント組成物が記載されている。
特許文献3には、6,8,10−ウンデカトリエン−3−オン、3−メチル−2,4−ノナンジオン又は4−エチルグアヤコールを、ミント系香料に配合することで、香気・香味の強さが増してインパクトが強くなる、ミント風味の増強されたミント風味香料組成物が記載されている。
【0004】
また、甘味料などを用いてミント系香料の苦味を抑制する方法も、種々の提案がされている。
特許文献4には、ステビア抽出物の成分である甘味配糖体のレバウディオサイドAを添加する方法が、特許文献5には、スクラロースやアスパルテームなどの高甘味度甘味料を配合する方法が、特許文献6には、ガムベース、甘味料(スクラロース、アスパルテーム、ステビアなど)、メントールおよびN−置換−p−メンタンカルボキシアミドからなるチューインガム組成物が記載されている。
【0005】
ラカンカ抽出物は、中国南部の高冷地で栽培されている「学名:Siraitia grosvenorii C.Jeffrey ex A.M.Lu & Zhi Y.Zhang(Momordica grosvenori Swingle)」というウリ科の果実の生又は乾燥したものから、水、メタノール、エタノールなどで抽出されるもので、モグロシドVを甘味の主成分(ショ糖の約300倍の甘味を有する)として含有するものである。
ラカンカ抽出物は、高甘味度甘味料として、飲料など種々の飲食品の甘味付け(特許文献7)だけでなく、麦芽を原料とする低カロリー醸造酒に添加して醸造酒の風味の付加(特許文献8)や、酸味料を含有するチューインガムの酸味の増強(特許文献9)などにも用いられている。
特許文献9には、チューインガムにミント系香料を使用することも記載されているが、これら特許文献のいずれにも、ミント系香料にラカンカ抽出物を共存させることで、ミント風味を増強できることは記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−145398号公報
【特許文献2】特開2007−246682公報
【特許文献3】特開2013−107976号公報
【特許文献4】特公昭61−6802号公報
【特許文献5】特開平2−177870号公報
【特許文献6】特開平3−53849号公報
【特許文献7】特開2012−147802号公報
【特許文献8】特開2003−47453号公報
【特許文献9】特開2013−81451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記のように、飲食品などにミント系香料を多量使用すると、ミント香料由来の苦味が出てくるという問題点があった。
そのため、苦味を抑えるために、ミント系香料の使用量を低減しても、ミント風味を増強できる手段が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記従来技術の問題点に鑑み、鋭意研究を重ねていたところ、高甘味度甘味料として飲食品などに使用されているラカンカ抽出物に、ミント系香料のミント風味を増強する効果があることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は下記に掲げるミント風味香料組成物、ミント風味の増強方法、ミント風味増強剤、及びミント風味飲食品に関するものである。
項1.ミント系香料及びラカンカ抽出物を含有することを特徴とする、ミント風味香料組成物。
項2.ミント系香料1質量部に対して、ラカンカ抽出物を0.005〜30質量部含有する、項1記載のミント風味香料組成物。
項3.ミント系香料にラカンカ抽出物を共存させることを特徴とする、ミント風味の増強方法。
項4.ミント系香料1質量部に対して、ラカンカ抽出物を0.005〜30質量部共存させる、項3記載のミント風味の増強方法。
項5.ラカンカ抽出物を有効成分とする、ミント風味増強剤。
項6.ミント系香料とラカンカ抽出物を、ミント系香料1質量部に対して、ラカンカ抽出物0.005〜30質量部含有する、ミント風味製品。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、ミント系香料のミント風味を増強することのできるミント風味香料組成物を提供することができる。
ミント風味を増強することができるため、ミント系香料の使用量を少なくでき、それにより苦味を抑えることができる。
また、本発明により、ミント風味を増強することのできるミント風味増強剤、及びミント風味の増強方法を提供することができる。
さらに、本発明により、ミント風味の増強された飲食品などの製品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(ミント風味香料組成物)
本発明のミント風味香料組成物は、ミント系香料及びラカンカ抽出物を含有することを特徴とする。
本発明のミント風味香料組成物に用いるミント系香料としては、例えば、ハッカ油、ペパーミントオイル、スペアミントオイル、メントールなどが挙げられる。
【0012】
本発明のミント風味香料組成物に用いるラカンカ抽出物は、中国南部の高冷地で栽培されている「学名:Siraitia grosvenorii C.Jeffrey ex A.M.Lu & Zhi Y.Zhang(Momordica grosvenori Swingle)」というウリ科の果実の生又は乾燥したものから、水、メタノール、エタノールなどで抽出されるもので、モグロシドVを甘味の主成分(ショ糖の約300倍の甘味を有する)として含有するものである。
ラカンカ抽出物は、例えば、FD羅漢果濃縮エキスパウダー(三栄源エフ・エフ・アイ社製、モグロシドV15%及び7%含有品)などの市販品や、同社のモグロシドV50%含有品を使用することができる。
【0013】
本発明のミント風味香料組成物において、ミント系香料に含有させるラカンカ抽出物の量としては、ミント系香料1質量部に対して、ラカンカ抽出物は0.005〜30質量部、好ましくは0.01〜20質量部、さらに好ましくは0.1〜10質量部である。
ミント系香料に含有させるラカンカ抽出物の量が、ミント系香料1質量部に対して、0.005質量部より少ないと、ミント風味の増強効果が十分ではなく、また、30質量部より多いと、ラカンカ抽出物の甘味が強くなりすぎて好ましくない。
【0014】
本発明のミント風味香料組成物は、ミント系香料とラカンカ抽出物が含有されていればよく、粉末状、顆粒状、固形状、液状といった剤型を問わず、また、一剤であるか二剤であるかも問わない。
ミント系香料とラカンカ抽出物とを粉体混合したものでもよく、またミント系香料の溶液をラカンカ抽出物の粉末に噴霧したものでもよく、逆にミント系香料の粉末にラカンカ抽出物の溶液を噴霧して得られたものでもよい。
また、ミント系香料の溶液とラカンカ抽出物の溶液とを混合した後、乾燥させて得られたものでもよく、乾燥方法にも特に制限はなく、スプレードライ、凍結乾燥など種々の方法を使用できる。
このミント風味香料組成物には、本発明の効果を阻害しない限度において、その他の香料、色素、酸化防止剤、保存料、ビタミン類、カルシウム類、ミネラル類など、その他の食品・食品添加物類を含むこともできる。
このようにして得られたミント風味香料組成物を、例えば飲食品に0.01〜3質量%添加することにより、飲食品に強いミント様の香気・香味を付与することができる。
【0015】
(ミント風味の増強方法)
本発明のミント風味の増強方法は、ミント系香料にラカンカ抽出物を共存させることを特徴とする。
本発明のミント風味の増強方法では、上記のようにミント系香料とラカンカ抽出物を含有させて、ミント風味香料組成物としてこれを飲食品などに添加することによってミント風味を増強することができるが、例えば飲食品において、必ずしも1つの飲食品中にミント風味香料組成物が添加されている場合だけでなく、異なる食品にミント系香料とラカンカ抽出物がそれぞれ別々に含まれる場合であっても、食する時点においてミント系香料とラカンカ抽出物が共存していれば、ミント風味を増強することができる。
この例としては、ミント系香料を含有するヨーグルトに、別途ラカンカ抽出物を含有するソースをかけ、混ぜ合わせて食する場合などが挙げられる。
ミント風味を増強するために、ミント系香料と共存させるラカンカ抽出物の量としては、ミント系香料1質量部に対して、0.005〜30質量部、好ましくは0.01〜20質量部、さらに好ましくは0.1〜10質量部である。
【0016】
(ミント風味増強剤)
本発明のミント風味増強剤は、ラカンカ抽出物を有効成分とする。
ラカンカ抽出物は、ミント系香料のミント風味を増強する効果を奏する。
本発明のミント風味増強剤において、ミント風味を増強するために使用するラカンカ抽出物の量としては、ミント系香料1質量部に対して、ラカンカ抽出物は0.005〜30質量部、好ましくは0.01〜20質量部、さらに好ましくは0.1〜10質量部である。
【0017】
(ミント風味製品)
本発明のミント風味製品は、上記のミント風味香料組成物あるいはミント風味増強剤によって、ミント風味が増強された製品であり、ミント系香料とラカンカ抽出物を、ミント系香料1質量部に対して、ラカンカ抽出物0.005〜30質量部含有するもので、その例としては、飲食品、歯磨、化粧品、医薬品などが挙げられる。
具体的には、飲食品の例として、チューインガム、チョコレート、キャンディー、ケーキ、錠菓などの菓子類;果汁飲料、果実酒、炭酸飲料、清涼飲料、乳飲料などの飲料類;アイスクリーム、シャーベット、アイスキャンディーなどの冷菓や氷菓類;ゼリー、プリンなどのデザート類などが挙げられる。
化粧品としては、クリーム、乳液、化粧水、口紅、リップクリームなどが挙げられ、医薬品としては、ハップ剤、軟膏剤、内服剤などが挙げられる。
【実施例】
【0018】
以下、本発明の内容を以下の実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
なお、以下の記載において、「部」は質量部を示す。
【0019】
実施例1
下記表1の処方配合に従い、少し加温して軟化させたガムベースに、それ以外の原料を加えて60℃、30rpmで撹拌混合して、チューインガムボディを製造した。
次いで、表2の処方配合に従い、チューインガムボディにラカンカ抽出物とペパーミントオイルを練り込み、成型してチューインガムを製造した。
ラカンカ抽出物無添加のコントロールと比べて、次の基準でミント風味の増強効果を評価し、結果を表3に示した。
◎:ミント風味が強く増強された ○:ミント風味が増強された
△:ミント風味がやや増強された ×:増強効果なし
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
*1:三栄源エフ・エフ・アイ社製、モグロシドV50%含有品
【0022】
【表3】
【0023】
ペパーミントオイル0.08部に対して、ラカンカ抽出物添加量0.0005〜2部、さらには0.001〜0.8部、特には0.01〜0.5部の範囲で、ミント風味の増強効果が認められた。
【0024】
実施例2
表2の処方において、ラカンカ抽出物と、それに代えて各種高甘味度甘味料を表4のように、ラカンカ抽出物0.34部添加と同じ甘味になるような量を添加して、実施例1と同様にしてチューインガムを製造した。
実施例1と同一の基準でミント風味の増強効果を評価して、結果を表4に示した。
【0025】
【表4】
*2:ミラスィー200(DSP五協フード&ケミカル株式会社)
*3:レバウディオJ-100(守田化学工業株式会社、レバウディオサイドA95%含有製剤)
【0026】
使用した高甘味度甘味料の中で、ラカンカ抽出物が最もミント風味の増強効果が強かった。
その他の高甘味度甘味料では、スクラロース、ネオテーム2%含有製剤及びソーマチンにミント風味の増強効果が認められ、アスパルテームとアセスルファムKにミント風味の増強効果がやや認められたが、ステビア抽出物やサッカリンNaではミント風味の増強効果が認められなかった。
【0027】
実施例3
下記表5の処方配合に従い、各原料を粉体混合し、直径7mmで打錠して、錠菓を製造した(1錠約0.15g)。
実施例1と同一の基準でミント風味の増強効果を評価して、結果を表6に示した。
【0028】
【表5】
【0029】
【表6】
【0030】
使用した高甘味度甘味料の中で、ラカンカ抽出物が最もミント風味の増強効果が強かった。
その他の高甘味度甘味料では、スクラロースにミント風味の増強効果が認められ、アスパルテームにミント感の増強効果がやや認められたが、ステビア抽出物ではミント風味の増強効果が認められなかった。
【0031】
実施例4
水に表7の甘味料及びミントフレーバー(ナチュラルクーリングフレーバーNo.4166FG、三栄源エフ・エフ・アイ社製)0.15部を加えて撹拌溶解し、100部とした。
各甘味料は、砂糖6部添加と同じ甘味になるような量を添加した。
各水溶液のミント風味の増強効果を評価し、結果を表7に示した。
【0032】
【表7】
【0033】
水溶液においても、ラカンカ抽出物ではミントフレーバーのミント風味の増強効果が認められたが、その他の甘味料では、ミント風味の増強効果は十分に認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明により、ミント系香料のミント風味を増強することができるので、チューインガムなどの飲食品分野において特に有用である。