(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
対向する2辺を有する環状フレームと、前記環状フレームに固定されて物を載せる棚板部材を有する棚状部と、前記環状フレームに取り付けられた首振り走行輪と、前記環状フレームの内側において対向する2辺の中間部から水平方向に延びた車軸および該車軸にそれぞれ回転するように取付けられた前記首振り走行輪より大径の固定走行輪とを備えたことを特徴とするブックトラック。
前記固定走行輪は、前記環状フレームの下面から当該固定走行輪の接地点までの長さが、前記首振り走行輪の前記環状フレームの下面から首振り走行輪の接地点までの長さより長く形成されている請求項1〜7のいずれか1項に記載のブックトラック。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るブックトラックの実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1〜
図4に示すように、本実施形態の第1のブックトラック1は、床面上を移動可能な環状フレーム2と、環状フレーム2に固定されて物を載せる棚板部材32を有する棚状部3とを備えている。第1のブックトラック1は、図書館や書店等例えば図書館で利用されるものであり、片面式、両面式、傾斜式、フラット式など特に限定されず、本実施形態では、両面傾斜3段のものについて説明する。
【0014】
環状フレーム2は、対向する2辺を有する環状に形成され、対向する2辺以外の箇所は、直線、曲線、屈曲線等どのように形成してもよく、また、全体の環状の形状は、四角形状、その他の多角形状、長円形状等特に限定されず、例えば、本実施形態では、左右に長い略四角形状に形成されている場合について説明する。環状フレーム2には、環状フレーム2の長辺の両端(環状フレーム2の角部)からそれぞれ中央側にずれた位置に棚状部3が環状フレーム2から立設した状態で取り付けられている。すなわち、上面から見たとき、棚状部3の左右の側板31から環状フレーム2の左右すなわち2つの短辺2aが突出した状態で棚状部3が環状フレーム2に取り付けられている。
【0015】
棚状部3は、左右の側板31と、側板31間に架け渡された棚板部材32及び背当て(背板)33と、側板31の外面に取り付けられているハンドル34とから形成されている。側板31は、例えば、木製でパネル状に形成されている。側板31の幅は、環状フレーム2の長辺2bの外面間の長さより短い例えば若干短い寸法で形成されている。側板31の高さは、任意に設定され、例えば、棚を3段形成し得る寸法で形成されている。棚板部材32は、前後に間隔をあけて2枚設けられている。これら2枚の棚板部材32は、傾斜した状態で両端部が例えば低頭ボルト18等により側板31に取り付けられている。すなわち、左右の側板31は、棚板部材32によって連結されている。2枚の棚板部材32の間に2枚の棚板部材32を連結するように背板33が取り付けられている。これら棚板部材32及び背板33が上下に3段設けられている。一番下の棚板部材32の位置は、固定走行輪6の近くで固定走行輪6の回転に邪魔になることがない位置であることが好ましい。
【0016】
側板31の外面の上方には、把持して操作するハンドル34が取り付けられている。ハンドル34は、上面から見たとき、環状フレーム2の短辺2aより突出しないように(短辺2aより側板31側に)位置されている。ハンドル34は、例えば、直線棒状の把持部(ハンドル部)34aと、ハンドル部34aの両端に取り付けられ、ハンドル部34aを側板31の上方に例えば低頭ボルト19等により取り付けるための取付部材34bとから形成されている。なお、ハンドル部34aの形状は、直線状に限定されず、湾曲状等その他の形状であってもよい。また、ハンドル34は、図示例では、左右の側板31の両方に取り付けてあるが、一方の側板31のみに取り付けるようにしてもよい。
【0017】
このように形成された棚状部3は、環状フレーム2上に側板31で長辺2bを掛け渡すように載置されて各側板31の両端の下端が例えば低頭ボルト17等により取付部材35を介して環状フレーム2に立設した状態で固定されている。このように、棚状部3と環状フレーム2とは、分解可能に取り付けられており、運搬時等に棚状部3と環状フレーム2とを切り離した状態で運搬することができるようになっている。また、上面から見たとき、棚状部3の左右の側板31から左右に突出する環状フレーム2の箇所は、バンパーとして機能するようになっている。さらに、ハンドル34もバンパーとして機能するようになっている。
【0018】
環状フレーム2は、例えば、断面縦長の長方形状の一方の長辺の中間部を切り欠いた中空状又は断面縦長の長方形状に板金や鋼板等により形成されている。このような断面形状を有する長尺フレーム部材を、切り欠いた箇所がある場合には切り欠いた箇所が内側となるように2箇所で折り曲げてコ字状のフレーム部材(コ字フレーム部材)を形成し、2つのコ字フレーム部材を互いの両側端を突き合わせた状態で連結して、長方形の環状フレーム2を形成してもよい。なお、上記の断面形状を有する1本の長尺フレーム部材を例えば4箇所で折り曲げ、両端を互いに溶接等で連結して、長方形の環状フレーム2を形成してもよい。
【0019】
2つのコ字フレーム部材で環状フレーム2を形成する場合、コ字フレーム部材としては、環状フレーム2の2つの長辺2bにおいて分割したものが好ましく、また、両側部の長さが同じものでもよいし、異なるもの、すなわち、一方の側部の長さが長く、他方の側部の長さが短いものを用いてもよい。側部の長さが異なるコ字フレーム部材を用いる場合、2つのコ字フレーム部材21の長さが長い側部(長側部)21aの端部内に、断面L字状の連結部材22を一部が露出した状態で差し込んで溶接する。この一方のコ字フレーム部材21の長側部21aから突出する連結部材22の先端を他方のコ字フレーム部材21の短い側部(短側部)21bの先端に付き合わせるとともに、他方のコ字フレーム部材21の連結部材22の先端を一方のコ字フレーム部材21の短側部21bの先端に付き合わせる。この状態から一方のコ字フレーム部材21の連結部材22を他方のコ字フレーム部材21の短側部21b内に挿入するとともに、他方のコ字フレーム部材21の連結部材22を一方のコ字フレーム部材21の短側部21b内に挿入して、2つのコ字フレーム部材21を連結する。連結後、一方のコ字フレーム部材21の連結部材22を他方のコ字フレーム部材21の短側部21bに例えば2つの低頭ボルト16を用いて固定するとともに、他方のコ字フレーム部材21の連結部材22を一方のコ字フレーム部材21の短側部21bに例えば2つの低頭ボルト16を用いて固定する。これにより、長方形状の環状フレーム2が形成される。このとき、2つのコ字フレーム部材21の両側部21a、21bを互いに連結した部分が長辺となるようにコ字フレーム部材21を形成することが好ましい。また、環状フレーム2を形成する2つのコ字フレーム部材21は向きが異なるだけで同一のものであるので、1種類のコ字フレーム部材21で環状フレーム2を形成することができる。
【0020】
連結部材22は、例えば、板金等により断面L字形状に形成されている。連結部材22は、断面L字形状の長辺22aの外面の長さが、環状フレーム2の断面長方形状の長辺の内面の長さより例えば若干短い寸法で形成され、短辺22bの外面の長さが、環状フレーム2の断面長方形状の短辺の内面の長さより例えば若干短い寸法で形成されていることが好ましい。また、連結部材22は、環状フレーム2の切り欠き部2cを閉塞するように断面L字の長辺の外面を環状フレーム2の断面縦長の長方形状の環状フレーム2の内側となる長辺の内面に接した状態でコ字フレーム部材21(環状フレーム2)内に挿入されて溶接されていることが好ましい。これにより、連結部材22は、環状フレーム2の長辺の撓み等を防止する補強部材としても機能する。
【0021】
環状フレーム2の4つの角部は、例えば、R状に形成されている。これら4つの角部には、走行輪取付部材が固定されている。走行輪取付部材には、環状フレーム2の下面から下方に延びる回転軸41を軸に旋回する首振り走行輪4が取り付けられている。すなわち、環状フレーム2の4つの角部には、首振り走行輪4が取り付けられており、環状フレーム2が図書館等の床面上を移動し得るようになっている。
【0022】
首振り走行輪4としては、公知のブックトラックや台車等に使用されている自在キャスターやフリーキャスター等と称される周知のもの等を用いることができる。首振り走行輪4は、通常、100mmの径のものを用いることができるが、これに限定されず、例えば、75mm、125mmなど他の径のもの等を用いるようにしてもよい。なお、首振り走行輪4は、環状フレーム2の4つの角部に取り付けたが、これに限定されず、例えば、環状フレーム2の2つの短辺の中間部に取り付けるようにしてもよい。
【0023】
環状フレーム2の4つの角部には、角部の上方すなわち首振り走行輪4の上方を保護するためのカバー7が設けられている。カバー7は、合成樹脂等で、上面から見たとき、環状フレーム2の角部から円弧状に突出してバンパーとして形成されている。すなわち、カバー7は、上面から見たとき、一端が環状フレーム2の長辺より外側に突出するとともに、他端が環状フレーム2の短辺より外側に突出した円弧状のダンパー部を有している。
【0024】
環状フレーム2の2つの長辺2bの中間部には、それぞれ水平方向であって長辺2bに対して直交する方向に延びる車軸5が設けられている。車軸5は、環状フレーム2の内側にのみ延びていることが好ましい。また、車軸5
は、2つの長辺2bの中間部を連結するように1つの車軸で形成してもよいし、長辺2bから延びて先端がフリーである方持ち軸であってもよい。本実施形態では、車軸5が片持ち軸である場合、すなわち、車軸5が2つある場合について説明する。
【0025】
車軸5は、環状フレーム2に溶接等により固定されていてもよいが、環状フレーム2に取り外し可能に取り付けられていることが好ましい。車軸5の取付手段としては、例えば、車軸5を取り付けるための車軸受け部8を環状フレーム2の外部である外表面に溶接等により設けてもよいが、環状フレーム2の内部に溶接等により設けることが好ましい。車軸受け部8としては、車軸5を回転可能に支持する構造のものであってもよいし、車軸5を固定した状態で取り付けるもの例えばナット81等であってもよい。本実施形態では、車軸受け部8としてナット81を用いた場合について説明する。
【0026】
ナット81は、例えば、連結部材22の断面L字形状の長辺22aの内面の所定の箇所(環状フレーム2の長辺2bの中間部となる箇所)に溶接により固定されている。すなわち、ナット81は、環状フレーム2の内部に溶接により固定されている。連結部材22の長辺22aには、ナット81の穴と同軸であってナット81の穴と同じ径又は若干大きな径の穴23が設けられている。この穴23及びナット81の穴は、環状フレーム2の長辺2bの長手方向の中間部であって環状フレーム2の切り欠き部2cから露出する位置に形成されている。これにより、車軸5を環状フレーム2の長辺2bの中間部から環状フレーム2の内側の水平方向に延びた方持ち軸として固定することが可能となる。この車軸5には、首振り走行輪4より大径の固定走行輪6が回転可能に支持されている。
【0027】
固定走行輪6は、例えば、車軸5に回転可能に支持されるハブ部61と、タイヤ64が装着されるリム部63と、ハブ部61とリム部63を連結するスポーク部62とから形成されている。ハブ部61は、車軸5が挿入される略円筒状に形成されている。ハブ部61の車軸5が挿入される穴の内面には、例えば、ころがり軸受である軸受66が設けられている。タイヤ64は、図示例では中実タイヤであるが、空気入りタイヤでもよい。なお、軸受66は、ころがり軸受に限定されず、例えば、すべり軸受でもよい。
【0028】
固定走行輪6の環状フレーム2側には、ハブ部61に嵌合してスポーク部62を覆う例えば発泡ウレタン製の円板状の走行輪カバー9が装着されている。走行輪カバー9の外径は、スポーク部62を覆う範囲から任意に選定され、例えば、円周端がリム部63に接する寸法で形成されている。走行輪カバー9の厚さは、固定走行輪6に装着したとき、環状フレーム2の内側及び低頭ボルト16に近接し得る寸法で形成されていることが好ましい。このように、走行輪カバー9を装着することにより、指や手等が固定走行輪6と環状フレーム2との間に入って挟まれることが防止されるようになっている。なお、固定走行輪6の種類特にスポーク部62の種類によっては、指や手等が固定走行輪6と環状フレーム2との間に入って挟まれることがない場合には、走行輪カバー9を不要とすることができる。
【0029】
車軸5は、例えば、頭部51aを有するボルトによる軸体51と、軸体51の外周に被せられた円筒状のスリーブ52とを有している。車軸5を環状フレーム2に固定するには、軸体51の外周に、例えば、スプリングワッシャー53及び平ワッシャー54を順次通してからスリーブ52を通す。このスリーブ52の外周に、固定走行輪6のハブ部61を通す。このように、スプリングワッシャー53、平ワッシャー54、スリーブ52及び固定走行輪6のハブ部61を通した軸体51の先端を環状フレーム2のナット81に螺合させてスリーブ52を環状フレーム2と軸体51の頭部51aによって挟持した状態で環状フレーム2に固定する。これにより、車軸5が環状フレーム2に固定されるとともに、固定走行輪6が車軸5に回転可能に支持されるようになっている。
【0030】
また、固定走行輪6は、環状フレーム2の下面から当該固定走行輪6の接地点までの長さL1が、首振り走行輪4の環状フレーム2の下面から首振り走行輪4の接地点までの長さL2より長く、例えば、2〜5mm等の若干長い寸法で形成されていることが好ましい。
【0031】
次に、上記のように構成した第1のブックトラック1を用いて本や雑誌等を移動する場合について説明する。ブックトラック1の棚板部材32上に本や雑誌等を載せた状態で図書館等の職員等が手でハンドル34を把持して引き操作または押し操作をすることで、ブックトラック1を所望の位置に移動することができる。すなわち、本や雑誌等を目的の場所に移動させることができる。ブックトラック1は、4つの首振り走行輪4と環状フレーム2の2つの長辺2bの中間部に取り付けられた2つの固定走行輪6からなる合計6輪で移動を行うので、ブックトラック1を所望の位置にスムーズに移動することができる。
【0032】
このとき、固定走行輪6は、環状フレーム2から水平方向に延びた車軸5に回転可能に支持されているために、車軸5の位置が環状フレーム2の下面に固定された車輪取付板に車軸5が取り付けられている場合に比して高いため、環状フレーム2と首振り走行輪4との間に高さ調節部材を設けることなく固定走行輪6を大径に形成することができる。その結果、固定走行輪6の径が大きければ大きいほど、ブックトラック1の移動をよりスムーズに行うことができるので、ブックトラック1に多数の本や雑誌等が載っていたとしても、ブックトラック1を所望の位置によりスムーズに移動することができる。また、固定走行輪6の径が大きくなると、ブックトラック1の角度を変えるときや方向転換を行うときにブックトラック1をスムーズに動かせるので、書架の整理や本や雑誌等の移動を行い易くなる。
【0033】
車軸5を取り付ける車軸受け部8(ナット81)が環状フレーム2の内部に設けられていることで、固定走行輪6を環状フレーム2に近づけることができ、安定した状態でブックトラック1の移動を行えることになる。車軸5及び固定走行輪6は、環状フレーム2の外面から突出していないので、見栄えがよく、また、環状フレーム2の外側の外表面から車軸5が突出している場合に引っかかったりする心配がない。さらに、ブックトラック1を前後、左右又は前後左右に並べて置く場合には、ブックトラック1を近接させた状態で置くことができる。また、上面から見たとき、略長方形状の環状フレーム2の大きさが一番大きいので、ブックトラック1を前後、左右又は前後左右に規則正しくきれいに整列させることができる。
【0034】
固定走行輪6の環状フレーム2側には、ハブ部61に嵌合してスポーク部62を覆う円板状のカバー9が装着されていることで、指や手等が固定走行輪6と環状フレーム2との間に入って挟まれることを防止することが可能となる。また、固定走行輪6は、環状フレーム2の下面から当該固定走行輪6の接地点までの長さL1が、首振り走行輪4の環状フレーム2の下面から首振り走行輪4の接地点までの長さL2より長く、例えば、2〜5mm長く形成されていることで、ブックトラック1の移動をよりスムーズに行える。
【0035】
図5〜
図7は、第2のブックトラックを示す図である。
図5〜
図7に示すように、第2のブックトラック10は、基本的な構成は第1のブックトラック1とほぼ同じであり、環状フレーム2の構成と固定走行輪6を支持する車軸5の形状が異なるだけである。なお、第2のブックトラック10に用いられる部材については、第1のブックトラック1に用いられる部材と同じであるので、その説明を省略することがある。
【0036】
環状フレーム2を形成する2つのコ字フレーム部材25は、例えば、環状フレーム2の2つの長辺2bにおいて分割したものであり、それぞれ両側部25aの長さが同じに形成されている。コ字フレーム部材25は、例えば、鋼材等により断面縦長の長方形の管状に形成された直線状の長尺フレーム部材を2箇所でコ字状に折り曲げて形成されている。2つのコ字フレーム部材25の両側部25aをそれぞれ互いに突き合わせた状態で2つの連結部材12を用いて連結して、環状フレーム2が形成される。
【0037】
例えば、第1の連結部材12と第2の連結部材12を一方のコ字フレーム部材25の両側部25a内に、それぞれ先端から突出(例えば、半分突出)するように挿入して溶接等により固定する。この一方のコ字フレーム部材25の両側部25aから突出している第1の連結部材12と第2の連結部材12を他方のコ字フレーム部材25の両側部25a内に挿入する。この挿入は、2つのコ字フレーム部材25の両側部25aが互いに接触又は近接するように突き合わせるように行う。挿入後、第1の連結部材12と第2の連結部材12を他方のコ字フレーム部材25の両側部25aに溶接等により固定する。これにより、1種類のコ字フレーム部材25で環状フレーム2が形成される。
【0038】
連結部材12は、例えば、板金等により細長の板状に形成されている。すなわち、連結部材12は、環状フレーム2の長辺2bの内部をそれぞれ両端部に向けて延びる棒状に形成されている。連結部材12は、環状フレーム2の長辺2bの内側となる壁の内面に接した状態でコ字フレーム部材25(環状フレーム2)内に挿入されて溶接されていることが好ましい。なお、連結部材12の環状フレーム2の長辺2bへの固定は、溶接に限定されず、他の手段例えばビス止め等で行うようにしてもよい。このように、環状フレーム2の長辺2bに連結部材12が固定されることにより、連結部材12は、環状フレーム2の長辺2bの撓み等を防止して環状フレーム2の長辺2bを補強する補強部材としても機能する。すなわち、補強部材は、一端側が一方のコ字フレーム部材25の一方の側部内に挿入されて溶接等により固定されるとともに他端側がその一方の側部と突き合わされた他方のコ字フレーム部材25の一方の側部内に挿入されて溶接等により固定された第1の連結部材12と、一端側が一方のコ字フレーム部材25の他方の側部内に挿入されて溶接等により固定されるとともに他端側がその他方の側部と突き合わされた他方のコ字フレーム部材25の他方の側部内に挿入されて溶接等により固定された第2の連結部材12とで形成されて、2つのコ字フレーム部材25を連結して環状フレーム2を形成するとともに、環状フレーム2の長辺2bの撓み等を防止して環状フレーム2の長辺2bを補強するようになっている。なお、
図5及び
図6中、符号12aは、連結部材12は、環状フレーム2の長辺2bに溶接により固定するための溶接穴を示す。つまり、連結部材12は、4箇所で長辺2bに溶接により固定されている。連結部材12の溶接個所は、4箇所に限定されず、2箇所、3箇所、5箇所以上でもよい。
【0039】
連結部材12の幅は、環状フレーム2の断面長方形状の長辺2bの内面の長さより短い例えば若干短い寸法で形成されている。連結部材12の厚さ(板厚)は、連結部材12に取り付けられた車軸5に固定走行輪6が支持された状態で図書館や本屋等で利用されたときに十分に耐えうる寸法、例えば、連結部材12の材質や幅等で異なるが、略6mm以上であることが好ましい。連結部材12の長さは、板厚と同様に図書館や本屋等で利用されたときに十分に耐えうる寸法から任意に設定されるが、環状フレームの内面に接する面積が大きい方が連結部材12(補強部材)としての機能を発揮するので、長い方が好ましい。
【0040】
連結部材12の長さ方向及び幅方向の中央部には、車軸受け部8としての内面にネジ溝が形成された車軸取付穴82が設けられている。また、2つのコ字フレーム部材25の両側部25aの内側の壁部の先端には、車軸取付穴82を露出させるための車軸取付穴82より例えば径が若干大きな径の半円状の切欠き部25bが設けられている。これにより、2つのコ字フレーム部材25の両側部25aを互いに突き合わせて環状フレーム2を形成したとき、2つのコ字フレーム部材25の両側部25aの切欠き部25bで円状の穴が形成され、この穴から車軸取付穴82が露出されて、その車軸取付穴82に車軸5が固定された状態で取り付けられるようになっている。
【0041】
車軸5は、例えば、頭部55aを有するボルトによる軸体55と、軸体55の外周に被せられた円筒状のスリーブ56とを有している。スリーブ56は、車軸取付穴82側の端部側に外径が大きな大径部が設けられており、外形が2段に形成されている。スリーブ56の大径部以外の箇所は、固定走行輪6を回転可能に支持する箇所である。大径部は、スリーブ56が通る固定走行輪6(ハブ部)の径より大きな径に形成されて隙間形成部14として形成されている。隙間形成部14は、環状フレーム2と固定走行輪6との間に指詰めを防止する隙間13を設けるために形成されており、その隙間13の間隔(隙間形成部14の軸方向の長さ)は、環状フレーム2と固定走行輪6との間に指詰めを防止し得る範囲から任意に設定されるが、その範囲の中でも短い寸法であることが好ましい。なお、隙間13は、スリーブ56に一体に設けた隙間形成部14により形成したが、スリーブとは別部材、例えば、スリーブの外周にスリーブとは別部材である円筒状の隙間形成部材を設けて形成するようにしてもよい。
【0042】
車軸5を環状フレーム2に固定するには、軸体55の外周に、例えば、スプリングワッシャー57及び平ワッシャー58を順次通す。固定走行輪6のハブ部61に軸体を通す方向とは反対側からスリーブ56を通し、このスリーブ56の隙間形成部14とは反対側の端部からスリーブ56内に軸体55を通して軸体55の先端を隙間形成部14から露出させる。この露出させた軸体55の先端を環状フレーム2の車軸取付穴82に螺合させてスリーブ56を環状フレーム2と軸体55の頭部55aによって挟持した状態で環状フレーム2に固定する。これにより、車軸5が環状フレーム2に固定されて固定走行輪6が車軸5に回転可能に支持されるとともに、環状フレーム2と固定走行輪6との間に指詰めを防止する隙間13が形成されるようになっている。
【0043】
固定走行輪6は、例えば、車軸5に回転可能に支持されるハブ部161と、タイヤ164が装着されるリム部163と、ハブ部161とリム部163を連結するスポーク部162とから形成されている。ハブ部161は、車軸5が挿入される略円筒状に形成されている。ハブ部161の車軸5が挿入される穴の内面には、例えば、ころがり軸受である軸受166が設けられている。タイヤ164は、図示例では中実タイヤであるが、空気入りタイヤでもよい。なお、軸受166は、ころがり軸受に限定されず、例えば、すべり軸受でもよい。また、固定走行輪6は、環状フレーム2の下面から当該固定走行輪6の接地点までの長さL1が、首振り走行輪4の環状フレーム2の下面から首振り走行輪4の接地点までの長さL2より長く、例えば、2〜5mm等の若干長い寸法で形成されていることが好ましい。
【0044】
上記のように構成した第2のブックトラック10は、第1のブックトラック1と同様な作用効果を奏する。すなわち、ブックトラック10の棚板部材32上に本や雑誌等を載せた状態で図書館等の職員等が手でハンドル34を把持して引き操作または押し操作をすることで、ブックトラック10を所望の位置に移動することができる。すなわち、本や雑誌等を目的の場所に移動させることができる。ブックトラック10は、4つの首振り走行輪4と環状フレーム2の2つの長辺2bの中間部に取り付けられた2つの固定走行輪6からなる合計6輪で移動を行うので、ブックトラック10を所望の位置にスムーズに移動することができる。
【0045】
このとき、固定走行輪6は、環状フレーム2から水平方向に延びた車軸5に回転可能に支持されているために、車軸5の位置が環状フレーム2の下面に固定された車輪取付板に車軸5が取り付けられている場合に比して高いため、環状フレーム2と首振り走行輪4との間に高さ調節部材を設けることなく固定走行輪6を大径に形成することができる。その結果、固定走行輪6の径が大きければ大きいほど、ブックトラック10の移動をよりスムーズに行うことができるので、ブックトラック10に多数の本や雑誌等が載っていたとしても、ブックトラック10を所望の位置によりスムーズに移動することができる。また、固定走行輪6の径が大きくなると、ブックトラック10の角度を変えるときや方向転換を行うときにブックトラック10をスムーズに動かせるので、書架の整理や本や雑誌等の移動を行い易くなる。
【0046】
車軸5を取り付ける車軸受け部8(車軸取付穴82)が環状フレーム2の内部に設けられていることで、環状フレーム2と固定走行輪6との間に指詰めを防止する隙間13を設けても固定走行輪6を環状フレーム2に近づけることができ、安定した状態でブックトラック10の移動を行えることになる。車軸5及び固定走行輪6は、環状フレーム2の外面から突出していないので、見栄えがよく、また、環状フレーム2の外側の外表面から車軸5が突出している場合に引っかかったりする心配がない。さらに、ブックトラック10を前後、左右又は前後左右に並べて置く場合には、ブックトラック10を近接させた状態で置くことができる。また、上面から見たとき、略長方形状の環状フレーム2の大きさが一番大きいので、ブックトラック10を前後、左右又は前後左右に規則正しくきれいに整列させることができる。
【0047】
環状フレーム2と固定走行輪6との間に指詰めを防止する隙間13を設けたことで、指や手等が固定走行輪6と環状フレーム2との間に入って挟まれることを防止することが可能となる。また、固定走行輪6は、環状フレーム2の下面から当該固定走行輪6の接地点までの長さL1が、首振り走行輪4の環状フレーム2の下面から首振り走行輪4の接地点までの長さL2より長く、例えば、2〜5mm長く形成されていることで、ブックトラック10の移動をよりスムーズに行える。
【0048】
環状フレーム2内の長辺2bに、当該環状フレーム2の撓み等を防止する補強部材(連結部材12)が設けられていることで、長辺2bが撓むことなどなく安定してブックトラック10を使用することができる。補強部材(連結部材12)は、長辺2bの内部をそれぞれ両端部に向けて延びる棒状に形成されていることで、より長辺2bが撓むことなどなく安定してブックトラック10を使用することができる。2つのコ字フレーム部材25の側部25aに連結部材12を挿入して固定し2つのコ字フレーム部材25を連結することで、連結部材12が外部から目視し難いとともに、連結部材12が環状フレーム2の長辺2bの補強部材として機能するので、環状フレーム2を、見栄えよく、かつ、長辺2bが撓むことなく形成することができる。