(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の技術では、簀の子が防振浮梁から連結部材で吊るされているため、地震時の水平振動を防振浮梁の位置で減衰させたとしても、振り子現象による簀の子(天井板)の振動(躯体と天井板の相対的横移動)を抑制することはできない。
【0007】
本発明は上記事実に鑑み、防振手段の上下振動絶縁機能を阻害せずに、支持部材を経由して、躯体と天井板の間を伝わる振動を減衰させると共に、躯体と天井板の相対的横移動を規制する天井構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明に係る天井構造は、躯体から吊り下げられ、上下振動を絶縁する防振手段を備えた吊り部材と、前記吊り部材で吊り下げられた天井板と、前記躯体に固定されて下方へ延出され、水平方向及び鉛直方向の拘束力を備えた支持部材と、前記支持部材に
水平方向へ一体移動可能に固定され、前記上下振動の方向に交差して張り出すと共に、曲げ剛性が、前記防振手段の上下振動絶縁機能を阻害しない大きさとされた張出部材と、前記張出部材と前記天井板を
水平方向へ一体移動可能に連結する連結部材と、を有することを特徴としている。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、天井板が、張出部材及び連結部材を介して支持部材に連結されている。ここに、支持部材は、水平方向と鉛直方向の両方向に拘束力を持ち、張出部材は、水平方向に架設され、防振手段の上下振動絶縁機能を阻害しない大きさの曲げ剛性を有している。また、張出部材には、張出部材軸方向(水平方向)への天井板の移動を拘束する軸剛性を持たせることができる。
これにより、吊り部材に備えられた防振手段の上下振動絶縁機能を阻害せずに、天井板と支持部材を、水平方向に一体移動可能に接合することができるため、天井板に、水平方向の耐震性を付与することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の天井構造において、前記張出部材は、弱軸方向を上下に向けていることを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、張出部材は弱軸方向を上下に向けている。これにより、張出部材が鉛直方向に振動して、防振手段の上下振動絶縁機能を阻害せずに、天井板に、鉛直方向の耐震性を付与することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の天井構造において、前記張出部材には、前記張出部材と前記連結部材の間に設けられ、前記張出部材と前記連結部材の間に伝達される上下振動を絶縁する弾性材料、又は、前記張出部材に材軸方向に沿って貼り付けられ、前記張出部材の上下振動を減衰させる弾性材料、の少なくとも一方が設けられていることを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、張出部材と連結部材の間に設けられた弾性材料により、又は、張出部材に材軸方向に沿って貼り付けられた弾性材料によって、張出部材と天井板の間に伝達される上下振動が、絶縁又は減衰される。
これにより、躯体と天井板との間の上下振動の伝達がさらに抑制される。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の天井構造において、前記張出部材は、平面視において、前記支持部材からV字状に開くよう張り出されていることを特徴としている。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、張出部材が、平面視において、支持部材からV字状に開くよう張り出されている。天井板が傾斜しているとき、張出部材を、支持部材から一方向と他方向に、上下に張り出した場合、それぞれの天井板との連結部に、高さの異なる高さ調整部材を用いる必要がある。しかし、張出部材を、支持部材からV字状に開くよう張り出すことで、天井板が傾斜していても、防振対象である上下振動の方向に交差させたまま、格別の高さ調整部材を用いることなく、同じ高さの天井板の2点と連結させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、上記構成としてあるので、防振手段の上下振動絶縁機能を阻害せずに、支持部材を経由して、躯体と天井板の間を伝わる振動を減衰させると共に、躯体と天井板の相対的横移動を規制する天井構造を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
図1〜
図6を用いて、本発明の第1実施形態に係る天井構造について説明する。
図1、
図2に示すように、吊天井構造体10は、天井板12を有し、天井板12は、建物の躯体14から吊下げられた吊りボルト(吊り部材)16で、吊り下げられている。
【0019】
天井板12は、石膏ボードや木製板等の一般的な天井板材料で形成され、天井板12は、所定の間隔を開けて設けられた、鋼材製の野縁20に取付けられている。天井板12は、厚さ方向に1枚を配置した構成(単層構造)を図示しているが、厚さ方向に複数枚を配置する構成(複層構造)としてもよい。
野縁20は、野縁20と交差する方向へ、所定の間隔を開けて設けられた野縁受け22に固定されている。野縁受け22は、野縁20と同じ鋼材製とされ、吊りボルト16で躯体14から吊り下げられている。これにより、天井板12が、野縁20及び野縁受け22で支持される。
【0020】
吊りボルト16は、上端部が、図示しないアンカーボルト等で躯体14に固定されて下方へ延出され、下端部には、防振ハンガー(防振手段)18が取付けられている。吊りボルト16は、平面視で格子状の交点に、所定の間隔を開けて複数設けられ、天井板12を支持する。防振ハンガー18は、吊りボルト16と野縁受け22に取付けられた吊り金具50の間に設けられている。
【0021】
防振ハンガー18は、例えば、
図2の拡大図に示すように、中空ボックス部44を有し、中空ボックス部44の上面には、吊りボルト16の下端部が接合され、中空ボックス部44の下面には、吊り金具50と接合された吊りボルト16Dの上端部が挿入されている。中空ボックス部44の内部の下側には、縦方向の振動を遮断するゴム部材46が配置されている。ゴム部材46の内部には、図示しない貫通孔が設けられ、吊りボルト16Dの上端部が、下方から貫通され、ゴム部材46の上端部で、吊りボルト16Dの上端部がナット16Nで接合されている。
【0022】
これにより、防振ハンガー18の位置において、天井板12から躯体14へ伝達される上下振動、並びに躯体14から天井板12へ伝達される上下振動が、ゴム部材46により絶縁される。
【0023】
躯体14には、支持部材としての一対のブレース(斜材)24が固定されている。ブレース24は、鋼材(形鋼)で形成され、上端部が、離れた2点(
図2では、ブレース24を挟んで隣り合う2本の吊りボルト16の固定部と同じ部位)から、それぞれ斜め下方へ、先端を狭めながら延出されている。これにより、吊りボルト16との交錯を避けて、下方へ延出させることができる。
【0024】
ブレース24は、耐震部材であり、地震時の天井板12の横方向の移動を規制する剛性を備え、下端部には、防振耐震機構30が構築されている。ブレース24は、X軸方向へ設けられた野縁受け22に沿って、X軸方向へ配置され、地震時に、躯体14と防振耐震機構30を一体的に移動させる。ブレース24は、必要に応じてY軸方向や、これらと交差する方向にも配置される。
【0025】
防振耐震機構30は、ブレース24と接合される固定板26を有している。
固定板26は、2枚の鋼板を側面視がT字状に接合して形成され、上に向けて配置された突出部26Uと、水平方向に向けた水平板部26Dを有している。突出部26Uの両側面には、ブレース24の下端部が接合され、ブレース24と固定板26が一体化される。
水平板部26Dには、張出材(張出部材)28の一端がそれぞれ、間隔を開けて直線状に固定されている。固定板26の下端部は、野縁受け22と所定の隙間h1を開けて配置されている。
【0026】
張出材28は、形鋼で形成され、弱軸方向を上下に向けて配置されている。
張出材28は、固定板26の水平板部26Dに一端が固定され、水平板部26Dから水平方向へ、直線状に、一対がそれぞれ延出されている。張出材28の他端には、連結材(連結部材)32が取付けられている。連結材32は、野縁受け22と接合されている。
【0027】
張出材28は、防振ハンガー18の、上下振動絶縁機能を阻害しない大きさの曲げ剛性と弾性を有すると共に、材軸方向(水平方向)への天井板12の移動を拘束する軸剛性を有している。また、張出材28と連結材32の間には、張出材28と連結材32の間の上下振動を減衰させるゴム板(弾性材料)34が設けられている。
【0028】
これにより、張出材28が上下振動を受けて鉛直方向に振動する。詳細は後述するが、防振ハンガー18の上下振動絶縁機能を阻害せずに、天井板12に、鉛直方向の防振性を付与し、水平方向の耐震性を付与することができる。
【0029】
図3〜
図6を用いて本実施形態の作用について説明する。
図3(A)の模式図に示すように、吊天井構造体82は、耐震化において耐震性を優先し、耐震用のブレース24を、天井板12に、滑りやズレが生じないように接合した構成である。これにより、地震力をブレース24を通じて躯体14に伝達することができる。
【0030】
しかし、音楽ホール、シネマコンプレックス等の天井板12は、要求される音響性能を実現するために、多くの場合、防振ハンガー18が吊りボルト16に直列して用いられている。この構成では、下記の理由で耐震化を図ることは困難である。
【0031】
即ち、ブレース24の剛性が鉛直方向の剛性にも影響を及ぼす。ブレース24による水平方向の周期は地震時に0.2〜0.33 秒(振動数表記では3.0〜5.0Hz)となることが期待される。しかし、振幅依存性があるため、音響性能が問題となる微小な振幅領域では、この数倍の振動数となっているものと考えられる。
【0032】
ブレース24の傾斜角度が45°程度であり、水平方向への剛性付加と鉛直方向への剛性付加が同程度であり、微小振幅時の振動数への寄与の程度が地震時の2倍程度であるとすれば、ブレース24による鉛直方向の振動数増加への寄与f
2は6〜10Hzとなる。
音響性能を実現するためには、防振ハンガー18で支持することにより、鉛直方向の振動数f
1を10Hz程度に設定し、およそ14Hz以上を防振域とすることが一般的である。ブレース24の、鉛直方向剛性の寄与が加わった場合の鉛直方向振動数f
sumは、下式(1)となる。
【0033】
【数1】
式(1)から、鉛直方向振動数f
sumは、およそ12〜14Hzとなり、防振域はおよそ17〜20Hz以上となる。このため、音響性能が低下することは避けられない。
また、ブレース24は、通常、鋼材で構成されるため、部材自体の振動モードは比較的高い固有振動数を有している。この振動が、天井板12の振動と連成して防振性能を阻害することがある(いわゆるサージング)。
【0034】
例えば、ブレース24による天井板12の鉛直方向の振動数増加の寄与が10Hz となる条件で、ブレース24の固有振動数を100Hzとし、防振ハンガー18の減衰定数を10%、ブレース24の減衰定数を1%として計算した。
結果は、詳細は後述するが、防振ハンガー18のみで支持されている天井の場合、100Hzにおける防振効果は、およそ−32bB(振動伝達率1/40)であった。一方、ブレース24を併用した場合には、100Hzにおける防振効果は、サージングの影響により、およそ−8bB(振動伝達率1/2.6)に低下する。
このように、音響性能が求められる天井板12を、ブレース24で、滑りやズレが生じないように接合する構成は、音響性能が損なわれ、好ましくないといえる。
【0035】
次に、
図3(B)の模式図に示す吊天井構造体83、及び、
図3(C)の模式図に示す吊天井構造体84のように、音響性能を優先するため、ブレース24と防振ハンガー18を直列に配置する構成が考えられる。この構成では、ブレース24が負担する水平方向の地震力を、防振ハンガー18が伝達しなくてはならない。
しかし、防振ハンガー18は、一般的に、水平力を伝達する機能は備えてない。このため、
図3(B)、
図3(C)の構成による耐震化は成立しない。
【0036】
次に、
図3(D)の模式図に示す吊天井構造体10に示すように、ブレース24を、天井板12に直接、滑りやズレが生じないように接合するのではなく、張出材28を用いて接合する構成が考えられる。これは、本実施形態の構成である。張出材28は、軽量鉄骨等で形成され、ブレース24が負担する地震力を、原則として軸力として伝達する。張出材28は、破断や座屈を生じることなく、ブレース24が負担する地震力を強固に伝達することができる断面性能を有する。
【0037】
一方、張出材28は、天井板12が防振支持されている方向(原則として鉛直方向)に対し、概ね直交する向き(原則として水平方向)に配置され、防振支持方向の剛性(以下、鉛直剛性)が、防振ハンガー18による支持剛性に比べ、充分小さくなるよう断面形状と部材長さが決定されている。
【0038】
ここで、張出材28の一本当たりの鉛直剛性と比較するべき防振ハンガー18による支持剛性は、天井板12の総面積をブレース24に接続する張出材28の本数(水平方向の各方向全て)で除した面積に含まれる、防振ハンガー18による支持剛性である。ここに、十分小さい剛性とは、防振ハンガー18による防振特性(防振振動数)を殆ど変化させることのない剛性という意味であり、防振ハンガー18による支持剛性の、1/20程度以下が目安となる。
本構成とすることにより、防振(音響)性能を阻害せず、耐震性を付与することができる。
【0039】
次に、効果について説明する。
張出材28を軽量溝形鋼(例えば、C−40×20×2.3)で形成し、張出材28の長さ(一端をブレース24に、一端を天井等に接合した時の接合部分間の長さ)を1000mmとし、張出材28は、鉛直方向に断面の弱軸を向けて取付けられているとする。
水平力の伝達に関る張出材28の軸剛性K
jは、K
j=EA/Lで表され、軸剛性K
j=35.6kN/mmとなる。ここに、Eはヤング率、Aは断面積、Lは部材長さである。
【0040】
一方、防振性能に関わる張出材28の曲げ剛性K
Lは、K
L=12EI
y/L
3で表され、曲げ剛性K
L=0.0161kN/mmとなる。ここに、I
yは、弱軸の断面2次モーメントである。
軸剛性K
jに比べ、曲げ剛性K
Lは非常に小さく、水平方向の地震力に対して耐震性を付与することと、鉛直方向の振動に関わる防振性能への影響を非常に小さくすることが両立し得ることが分る。
【0041】
天井板12の防振支持剛性K
sは、防振支持剛性K
s=(2πfv)
2×mSで表され、fv=10Hz、m=50kg、S=10m
2とすると、防振支持剛性K
s=1.9kN/mmとなる。ここに、fvは防振支持振動数、mは単位面積質量、Sは対象とする天井面積である。
張出材28が、天井面積10m
2当たり4本配されているとすれば、張出材28による総鉛直剛性は4K
Lとなり、4K
L=0.0644kN/mm、比率は4K
L/K
s=0.0327となる。張出材28が、鉛直剛性に与える影響は3.3%(およそ1/30)、防振支持振動数に与える影響は1.6%となり、非常に小さいといえる。
【0042】
コイルばねのような金属系の材料で防振支持を行った時には、金属系材料自体が有する、局部的な固有振動数における振動が天井の振動と連成し、防振性能を阻害するサージングが発生することがある。
本実施形態における張出材28も金属系の材料であり、局部的な固有振動数を有する。張出材28は、端部を完全固定とみなせば、局部的な1次固有振動数はおよそ100Hz、2次はおよそ300Hz、3次はおよそ600Hzとなる。コイルばねで支持された防振架台のサージングは、120Hz、及びそれ以上の振動数で生じることが知られており、金属系の支持材料として、ほぼ同等の固有振動数を有していると言える。天井板12を防振ハンガー18ではなく、金属系の支持材料によって所定の防振振動数となるように吊支持した場合には、コイルばね等で支持された防振架台と同じ振動性状となる。
【0043】
金属系の支持材料で所定の防振振動数となるように、天井板12を吊支持した防振天井と、吊天井構造体10との違いは、防振天井が金属系の支持材料のみで所定の固有振動数となるように支持されているのに対し、吊天井構造体10は、防振ハンガー18によって吊支持された天井板12に、防振ハンガー18の防振支持剛性のおよそ1/30の鉛直剛性を有する張出材28で、天井板12と連結されたブレース24が付け加えられている点にある。
【0044】
図4(A)に、防振ハンガー52のみで吊支持された吊天井構造体66の鉛直方向震動モデルを示し、
図4(B)に、金属系の支持材料(ブレース)54によって吊支持された吊天井構造体68の震動モデルを示し、
図4(C)に、本実施形態の吊天井構造体70の鉛直方向振動モデルを示す。
【0045】
簡単のためサージングに関わる振動数として最も低次の振動数(100Hz)のみを考慮した。また、本実施形態は、張出材56と耐震用のブレース54が直列に配置されているので、より詳細に耐震用のブレース24の鉛直方向の揺れの影響を考慮できるように振動モデルを修正すると
図5(A)に示す吊天井構造体72となる。
また、防振ハンガー52によって吊支持された天井板12に、ブレース54を、張出材を介さず直接接合した吊天井構造体74の鉛直方向振動モデルは
図5(B)となる。
【0046】
図6に、4種類の吊天井構造体66、68、72、74の鉛直方向振動モデルを用いて、天井板12における振動伝達率を求めた結果を示す。
図6の横軸は周波数(Hz)で、縦軸は振動伝達率(dB)である。なお、鉛直方向振動モデル66、68、72、74を用いた振動伝達率の計算においては、張出材28と連結材32の間に貼り付けるゴム板34は省略した。そのため、ゴム板34による上下振動の減衰効果は反映されていない。
【0047】
図6において、点鎖線で示す特性Aが、
図4(A)に示す吊天井構造体66の特性であり、破線で示す特性Bが、
図4(B)に示す吊天井構造体68の特性であり、実線で示す特性Cが本実施形態構成(
図5(A))に示す吊天井構造体72の特性であり、一点鎖線で示す特性Dが、
図5(B)に示す吊天井構造体74特性である。
【0048】
特性Dに示すように、ブレース54を直接接合した場合の防振支持振動数は、他の3種類において10Hzであるのに対し、14Hz程度となる。その結果として可聴域の下限である20Hzにおいて、震動伝達率が0dB(1倍)を下回らない。震動伝達率が−20dB(1/10倍)を下回るのは、およそ55Hzであり、防振(音響)性能が他の3種類の天井に比べ明らかに劣る結果であった。
【0049】
ブレース54を直接接合した構成の特性Dと、金属系材料によって吊支持した構成の特性Bは、いずれも、100Hz近傍にサージングの影響がみられ、100Hz近傍の震動伝達率が、防振材によって吊支持された防振天井では、およそ−32dB(1/40倍)であるのに対し、およそ−8dB(1/2.6倍)程度に悪化している。この振動数領域において、充分な防振(音響)性能を有するとは言えない。
【0050】
特性Cに示すように、吊天井構造体72においては、金属材料である張出材28及び耐震用のブレース24によるサージングの影響が70Hz近傍、及び100Hz近傍に表れている。しかし、その程度は充分小さく、防振材によって吊支持された防振天井に比べ、振動伝達率の増加は、3〜4dB(1.4〜1.6倍)程度である。
【0051】
即ち、70Hz近傍、及び100Hz近傍の震動伝達率は、それぞれおよそ−24.5dB(1/17倍)、及びおよそ−29.5dB(1/30倍)であり、充分な防振(音響)性能を有しているといえる。つまり、吊天井構造体72は、防振(音響)性能を阻害せず、地震時の人命被害回避に必要な耐震性を付与することができるといえる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態によれば、防振ハンガー18を備えた吊りボルト16により、躯体14と天井板12の間の上下振動が減衰される。また、防振耐震機構30により、防振ハンガー18の上下振動減衰機能を阻害せずに、一対のブレース54を経由して、躯体14と天井板12の間を伝わる振動を減衰させると共に、躯体14と天井板12の相対的横移動を規制する天井構造を提供することができる。
【0053】
なお、本実施形態では、張出材28と連結材32の間にゴム板(弾性材料)34を設ける構成を記載した。しかし、これに限定されることはなく、張出材28と連結材32の間に伝達される震動によっては、張出材28の材軸方向に沿って、ゴム板34を貼り付けてもよい。更には、張出材28と連結材32の間にゴム板34を設け、張出材28の材軸方向に沿って、ゴム板34を貼り付けてもよい。
これにより、張出材28と天井板12の間に伝達される上下振動が、絶縁又は減衰される。
【0054】
また、本実施形態では、防振耐震機構30を固定する一対のブレース24は、躯体14から斜めに突出する構成とした。しかし、これに限定されることはなく、ブレース24は、天井板12の横方向の移動を規制する剛性を有し、躯体14と防振耐震機構30を一体的に移動させる構成であれば、部材方向は鉛直方向でもよいし、部材形状が曲がっていてもよい。
【0055】
また、本実施形態では、一対のブレース24は、躯体14に設けられた吊り部材16と同じ固定位置から、斜めに突出す構成とした。しかし、これに限定されることはなく、吊り部材16と異なる固定位置に固定してもよい。
【0056】
(第2実施形態)
図7を用いて、本発明の第2実施形態に係る天井構造について説明する。
図7の平面図に示すように、吊天井構造体40は、一対のブレース42、及び張出材48の方向が、野縁20及び野縁受け22と交差して配置されている点において、第1実施形態と相違する。相違点を中心に説明する。
【0057】
吊天井構造体40の天井裏空間には、設備機器、ダクト及び配管類が配置されているため、第1実施形態のごとく、例えば野縁受け22に沿ってX軸方向へ、張出材28やブレース24を設けることが出来ない場合がある。
この場合には、ブレース42、及び張出材48の方向を、野縁20及び野縁受け22と交差させて配置すればよい。但し、この場合には、吊りボルト16の位置と重ならないように注意する必要がある。
【0058】
適切に、ブレース42及び張出材48を配置することにより、X軸方向、及びY軸方向の躯体14と天井板12の相対的横移動を規制することができる。
なお、
図7の配置は一例であり、天井裏空間のダクトや配管類の状況や、吊りボルト16の位置等により配置を決定すればよい。
これにより、防振ハンガー18の上下振動減衰機能を阻害せずに、一対のブレース42を経由して、躯体14と天井板12の間を伝わる振動を減衰させると共に、躯体14と天井板12の相対的横移動を規制する天井構造を提供することができる。
他の構成は、第1実施形態と同じであり説明は省略する。
【0059】
(第3実施形態)
図8を用いて、本発明の第3実施形態に係る天井構造について説明する。
図8(A)の正面図、(B)の平面図に示すように、吊天井構造体60は、天井板76が水平面Hに対して角度θで傾斜している点において、第1実施形態と相違する。相違点を中心に説明する。
【0060】
吊天井構造体60は、天井板76が、X軸方向へ、水平面Hに対して角度θで傾斜している。また、一対のブレース62はX軸方向へ配置され、上端部が、X軸方向へ所定の距離を開けて、躯体14と接合されている。
ブレース62の下端部に構築される防振耐震部58は、天井板76と高さh2開けて設けられている。防振耐震部58から水平方向へ延
出される張出材64は、一端が固定された固定板26から、天井板76の高さの高い方向へV字状に開くよう張り出されている。
【0061】
張出材64の他端は、連結プレート80を介して、一対の連結材32と連結されている。連結材32は、野縁受け22と固定され、野縁受け22は、天井板76が取付けられた野縁20と固定されている。
また、一対の連結材32は、野縁20の方向に設けられた補助部材78で固定され、補助部材78と張出材64で三角形が形成されている。
【0062】
本構成とすることにより、高さの異なる高さ調整部材を用いることなく、張出材64を固定板26からV字状に開くよう張り出すことで、ブレース62に働く面外方向の力を最小化して水平方向の地震力を伝達できるので、天井板76が傾斜していても、防振対象である上下振動の方向に交差させたまま、格別の高さ調整部材を用いることなく、同じ高さの天井板76の2点と連結させることができる。
【0063】
これにより、張出材64と天井板12の間に伝達される上下振動を、絶縁又は減衰させることができる。なお、本実施形態では、張出材64を固定板26からV字状に開くよう張り出させたが、これに限定されることはなく、躯体14と天井板76の相対的横移動が小さい場合には、固定板26から片持ち状態で張り出してもよい。
他の構成は、第1実施形態と同じであり説明は省略する。