特許第6309364号(P6309364)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6309364-車両の駆動装置用分解、組立治具 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6309364
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】車両の駆動装置用分解、組立治具
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/023 20120101AFI20180402BHJP
   F16J 13/14 20060101ALI20180402BHJP
【FI】
   F16H57/023
   F16J13/14
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-132257(P2014-132257)
(22)【出願日】2014年6月27日
(65)【公開番号】特開2016-11678(P2016-11678A)
(43)【公開日】2016年1月21日
【審査請求日】2017年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐谷 健吾
(72)【発明者】
【氏名】原 卓嗣
【審査官】 岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−161467(JP,U)
【文献】 特開2007−146944(JP,A)
【文献】 特開2009−097604(JP,A)
【文献】 特開平07−103319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/023
F16J 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン側のエンジン側ケースとトランスミッションのミッションケースとが互いに着脱可能に連結されると共に、エンジン側の出力部とトランスミッションのミッション入力部とが嵌脱可能にスプライン嵌合し、上記ミッションケースに貫通孔が形成され、上記ミッションケース内で上記ミッション入力部と互いに連動するよう連結されたミッション出力部と上記ミッションケースの外部側に設けられるプロペラシャフトとが上記貫通孔を通し嵌脱可能にスプライン嵌合した車両の駆動装置用分解、組立治具であって、
上記ミッション出力部から上記プロペラシャフトを離脱させたとき、上記貫通孔を開閉可能とするキャップと、このキャップに形成され、このキャップにより上記貫通孔を閉じたとき、上記ミッション出力部に係脱可能に係合する係合部と、上記ミッションケースの外部から付与される外力により上記キャップを上記係合部と共に上記ミッション出力部の軸心回りに回動可能とさせるハンドル部とを備えたことを特徴とする車両の駆動装置用分解、組立治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン側、トランスミッション、およびプロペラシャフトが互いに連動連結された車両の駆動装置につき、分解、組立の作業時に用いられる治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の駆動装置には、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、駆動装置は、エンジン側と、このエンジン側から出力される駆動力を入力して所望速度に変速した後、この駆動力を出力するトランスミッションとを備えている。また、通常、車両の駆動装置は、上記トランスミッションから出力される駆動力を車輪側に伝達するプロペラシャフトを備えている。そして、上記エンジン側およびトランスミッションは互いに組み付けられた状態で、それぞれ車体に着脱可能に支持され、この駆動装置から出力される駆動力は主に車両の走行用に供される。
【0003】
具体的には、上記エンジン側は、内燃機関であるエンジンと、このエンジンのクランク軸の端部側に順次支持されるフライホイールおよびクラッチとを有している。このクラッチの従動側部材の軸心上の部分が駆動力の出力部とされ、この出力部にスプラインが形成される。
【0004】
また、上記トランスミッションは、その外殻を構成するミッションケースと、このミッションケースの内部において互いに並設される複数の動力伝達軸と、これら各軸に支持されると共に互いに噛合可能とされて各軸を互いに連動連結する歯車組とを有している。上記各軸のうち、一つの軸の端部が上記エンジン側からの駆動力を入力するミッション入力部とされ、このミッション入力部にスプラインが形成される。また、上記各軸のうち、他の軸の端部がこのトランスミッションから駆動力を出力するミッション出力部とされ、このミッション出力部にスプラインが形成される。また、前記プロペラシャフトの入力部にスプラインが形成される。
【0005】
そして、上記エンジン側、トランスミッション、およびプロペラシャフトが互いに組み付けられて上記駆動装置が組み立てられ、この駆動装置が車体に支持された状態では、上記エンジン側の出力部とミッション入力部とがその軸心上で互いにスプライン嵌合させられた状態とされ、また、上記ミッション出力部とプロペラシャフトの入力部とは上記ミッションケースに形成された貫通孔を通し、その軸心上で互いにスプライン嵌合させられた状態とされる。
【0006】
ここで、上記駆動装置における例えばトランスミッションについて保守、点検をしようとしてこの駆動装置の分解作業をする場合には、通常、まず、上記貫通孔を通してミッション出力部にスプライン嵌合している上記プロペラシャフトを、上記ミッション出力部から離脱させる。次に、車体にエンジン側を支持させたまま、上記トランスミッションを、チェーンブロックなどで吊り上げると共に上記エンジン側から取り外して上記保守等の作業を行う。
【0007】
一方、上記駆動装置の組立作業をする場合には、上記とは逆の手順により、エンジン側にトランスミッションを組み付け、かつ、このトランスミッションのミッション出力部にプロペラシャフトを組み付ける作業を行えばよく、これにより上記駆動装置の組立作業を終えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−222133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記した駆動装置の分解作業時に、上記トランスミッションのミッション出力部からプロペラシャフトを離脱させると、上記貫通孔は開かれたままの状態となる。このため、上記ミッションケース内の歯車組用の潤滑油の一部が上記貫通孔を通して外部に無用に洩出するおそれを生じる。
【0010】
また、その一方、上記駆動装置の組立作業時に、エンジン側にトランスミッションを組み付けるときには、エンジン側の出力部とミッション入力部との両スプラインを、互いに同軸としたこれらの軸心上で互いに接近させてスプライン嵌合させるが、この場合、これら両スプラインのうちの一方のスプラインの歯と他方のスプラインの歯溝との上記軸心周りでの各位置はランダムである。このため、上記両スプラインをその軸心上で互いに接近させただけでは、これらの互いのスプライン嵌合はさせ難い。そこで、このスプライン嵌合が容易にできるようにするため、上記両スプラインのうち、少なくともいずれかのスプラインをその軸心回りにわずかながら回動させて、上記した一方のスプラインの歯と他方のスプラインの歯溝との上記軸心周りでの各位置を互いに合致させることが考えられる。
【0011】
しかし、上記したように両スプラインのうち、一方のスプラインの歯と他方のスプラインの歯溝とを合致させる作業は煩雑であり、よって、その分、上記駆動装置の組立作業は煩雑になるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、車両の駆動装置の分解作業をするとき、トランスミッションのミッションケース内の潤滑油が無用に洩出することを防止する一方、上記駆動装置の組立作業が容易にできるようにし、かつ、これら各作業が簡単な構成で達成できるようにすることである。
【0013】
請求項1の発明は、エンジン側2のエンジン側ケース7とトランスミッション3のミッションケース13とが互いに着脱可能に連結されると共に、エンジン側2の出力部11とトランスミッション2のミッション入力部18とが嵌脱可能にスプライン嵌合し、上記ミッションケース13に貫通孔25が形成され、上記ミッションケース13内で上記ミッション入力部18と互いに連動するよう連結されたミッション出力部21と上記ミッションケース13の外部側に設けられるプロペラシャフト4とが上記貫通孔25を通し嵌脱可能にスプライン嵌合した車両の駆動装置用分解、組立治具であって、
上記ミッション出力部21から上記プロペラシャフト4を離脱させたとき(図1,2中実線)、上記貫通孔25を開閉可能とするキャップ39と、このキャップ39に形成され、このキャップ39により上記貫通孔25を閉じたとき、上記ミッション出力部21に係脱可能に係合する係合部40と、上記ミッションケース13の外部から付与される外力により上記キャップ39を上記係合部40と共に上記ミッション出力部21の軸心20回りに回動A可能とさせるハンドル部41とを備えたことを特徴とする車両の駆動装置用分解、組立治具である。
【0014】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0015】
本発明による効果は、次の如くである。
【0016】
請求項1の発明は、エンジン側のエンジン側ケースとトランスミッションのミッションケースとが互いに着脱可能に連結されると共に、エンジン側の出力部とトランスミッションのミッション入力部とが嵌脱可能にスプライン嵌合し、上記ミッションケースに貫通孔が形成され、上記ミッションケース内で上記ミッション入力部と互いに連動するよう連結されたミッション出力部と上記ミッションケースの外部側に設けられるプロペラシャフトとが上記貫通孔を通し嵌脱可能にスプライン嵌合した車両の駆動装置用分解、組立治具であって、
上記ミッション出力部から上記プロペラシャフトを離脱させたとき、上記貫通孔を開閉可能とするキャップを備えている。
【0017】
このため、上記駆動装置の分解作業時に、上記ミッション出力部からプロペラシャフトを離脱させたとき、上記貫通孔は開かれるが、この場合、この貫通孔を上記治具のキャップで閉じれば、上記ミッションケース内の潤滑油が上記貫通孔を通して無用に洩出することは防止される。
【0018】
また、上記治具は、キャップに形成され、このキャップにより上記貫通孔を閉じたとき、上記ミッション出力部に係脱可能に係合する係合部と、上記ミッションケースの外部から付与される外力により上記キャップを上記係合部と共に上記ミッション出力部の軸心回りに回動可能とさせるハンドル部とを備えており、次の効果が生じる。
【0019】
即ち、上記駆動装置の組立作業において、上記エンジン側の出力部とミッション入力部とを互いに同軸の軸心上でスプライン嵌合させるとき、これら両スプラインのうち一方のスプラインの歯と他方のスプラインの歯溝との上記軸心周りでの各位置はランダムであり、このままでは、上記両スプライン同士のスプライン嵌合はし難くなるおそれがある。
【0020】
そこで、上記キャップにより貫通孔を閉じている治具のハンドル部を操作して、このハンドル部を上記ミッション出力部の軸心回りに回動させる。すると、上記治具の係合部と係合している上記ミッション出力部が回動とすると共にこのミッション出力部に連動連結されている上記ミッション入力部が回動する。そして、このミッション入力部の回動により、このミッション入力部のスプラインの歯(もしくは歯溝)を上記エンジン側の出力部のスプラインの歯溝(もしくは歯)に合致させれば、その後の上記両スプライン同士のスプライン嵌合は容易にできる。よって、その分、駆動装置の組立作業が容易にできる。
【0021】
そして、上記した駆動装置の分解、組立作業には、上記したように一つの治具が上記貫通孔を閉じた状態のままで共用可能なことから、上記各作業は簡単な構成で達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】車両の駆動装置と治具との展開斜視図である。
図2図1で示したものの部分側面断面図である。
図3図2のIII−III線矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の車両の駆動装置用分解、組立治具に関し、この駆動装置の分解作業をするとき、トランスミッションのミッションケース内の潤滑油が無用に洩出することを防止する一方、上記駆動装置の組立作業が容易にできるようにし、かつ、これら各作業が簡単な構成で達成できるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための形態は、次の如くである。
【0024】
即ち、車両の駆動装置では、エンジン側のエンジン側ケースとトランスミッションのミッションケースとが互いに着脱可能に連結されると共に、エンジン側の出力部とトランスミッションのミッション入力部とが嵌脱可能にスプライン嵌合している。また、上記ミッションケースに貫通孔が形成され、上記ミッションケース内で上記ミッション入力部と互いに連動するよう連結されたミッション出力部と上記ミッションケースの外部側に設けられるプロペラシャフトとが上記貫通孔を通し嵌脱可能にスプライン嵌合している。
【0025】
そして、上記した車両の駆動装置用分解、組立治具は、上記ミッション出力部から上記プロペラシャフトを離脱させたとき、上記貫通孔を開閉可能とするキャップと、このキャップに形成され、このキャップにより上記貫通孔を閉じたとき、上記ミッション出力部に係脱可能に係合する係合部と、上記ミッションケースの外部から付与される外力により上記キャップを上記係合部と共に上記ミッション出力部の軸心回りに回動可能とさせるハンドル部とを備えている。
【実施例】
【0026】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0027】
図において、符号1は、自動車で例示される車両の走行用駆動装置である。
【0028】
上記駆動装置1は、エンジン側2と、このエンジン側2から出力される駆動力を入力して所望速度に変速した後、この駆動力を出力するトランスミッション3と、このトランスミッション3から出力される駆動力を不図示の車輪側に伝達するプロペラシャフト4とを備えている。そして、上記エンジン側2およびトランスミッション3は互いに組み付けられた状態で、不図示の弾性的なエンジンマウントを介し、それぞれ車体に着脱可能に支持される。
【0029】
具体的には、上記エンジン側2は、内燃機関であるエンジン6と、このエンジン6のクランクケースを含みエンジン側2の外殻を構成するエンジン側ケース7と、このエンジン側ケース7に内有されて支持される不図示のクランク軸と、このクランク軸の軸端部側に順次支持されるフライホイール8およびクラッチ9とを有している。このクラッチ9の従動側部材の軸心10上の部分が駆動力の出力部11とされ、この出力部11の上記軸心10上に内スプラインである出力スプライン12が形成される。
【0030】
前記トランスミッション3は、その外殻を構成するミッションケース13と、このミッションケース13内で互いに並設されると共にそれぞれこのミッションケース13に支持される複数の動力伝達軸14,15と、これら各軸14,15に支持されると共に互いに噛合可能とされて各軸14,15を互いに連動連結する不図示の歯車組と、上記ミッションケース13内に収容され、上記歯車組を油浴させて潤滑する潤滑油16とを有している。
【0031】
上記各軸14,15のうち、一つの軸14の軸心17方向の端部が上記エンジン側2からの駆動力を入力するミッション入力部18とされ、このミッション入力部18の軸心17上に外スプラインである入力スプライン19が形成される。上記出力スプライン12と入力スプライン19とは、互いに同軸とされた上記両軸心10,17上で、互いに嵌脱可能にスプライン嵌合可能とされる。なお、上記出、入力スプライン12,19の内、外スプラインの形状は逆であってもよい。
【0032】
また、上記各軸14,15のうち、他の軸15の軸心20方向の端部がこのトランスミッション3から駆動力を出力するミッション出力部21とされ、このミッション出力部21の軸心20上に外スプラインである出力スプライン22が形成される。
【0033】
上記トランスミッション3の外殻を形成するミッションケース13には貫通孔25が形成され、この貫通孔25の内周面にはオイルシール26が嵌着される。一方、上記ミッション出力部21からの駆動力を入力する前記プロペラシャフト4の入力部27の軸心28上には内スプラインである入力スプライン29が形成される。上記トランスミッション3のミッション出力部21の出力スプライン22とプロペラシャフト4の入力部27の入力スプライン29とは、互いに同軸とされた上記両軸心20,28上で、上記貫通孔25を通し互いに嵌脱可能にスプライン嵌合可能とされる。なお、上記出、入力スプライン22,29の内、外スプラインの形状は逆であってもよい。
【0034】
そして、上記エンジン側2、トランスミッション3、およびプロペラシャフト4が互いに組み付けられて上記駆動装置1が組み立てられた状態では、上記エンジン側2のエンジン側ケース7の上記出力部11側の開口縁部33と、上記トランスミッション3のミッションケース13の上記ミッション入力部18側に形成された外向きフランジである開口縁部34とが複数の締結具35により互いに結合され、かつ、上記出力部11の出力スプライン12とミッション入力部18の入力スプライン19とがその軸心10,17上で、互いにスプライン嵌合させられる。
【0035】
また、上記状態に加えて、上記トランスミッション3のミッション出力部21の出力スプライン22とプロペラシャフト4の入力部27の入力スプライン29とがその軸心20,28上で、上記貫通孔25を通し互いに軸方向に摺動可能となるようスプライン嵌合させられる(図2中一点鎖線)。また、この場合、上記プロペラシャフト4の入力部27の外周面が上記オイルシール26の内周面の弾性リップ部に摺接して、この摺接部がシールされる。これにより、上記ミッションケース13内の潤滑油16が上記貫通孔25を通して外部に洩出することは防止される。
【0036】
上記の場合、ミッション出力部21から上記プロペラシャフト4を離脱させたときには(図1,2中実線)、上記貫通孔25は開いた状態とされる。
【0037】
上記駆動装置1の分解、組立の作業時に用いられる治具38が設けられる。
【0038】
上記治具38は、上記ミッション出力部21の軸心20上に位置し、開いた状態の上記貫通孔25に嵌脱可能に嵌入されて(図1,2中二点鎖線)、この貫通孔25を開閉可能に閉じる軸形状のキャップ39と、このキャップ39の軸心上でこのキャップ39に形成され、このキャップ39により上記貫通孔25を閉じたとき、上記ミッション出力部21に係脱可能に係合する係合孔である係合部40と、上記ミッションケース13の外部からの操作力を入力して、上記キャップ39と係合部40とを上記ミッション出力部21の軸心20回りに回動A可能とさせる円板形状のハンドル部41とを有している。
【0039】
上記キャップ39の外周面は、上記プロペラシャフト4の入力部27の外周面と同径とされ、上記オイルシール26の内周面に摺接して、この摺接部がシールされる。また、上記係合部40は、具体的には、上記ミッション出力部21の出力スプライン22にスプライン嵌合する内スプラインの複数歯のうち、強度的に必要とされる一部の歯(2〜4本)のみが残された形状とされる。
【0040】
上記構成によれば、治具38は、上記ミッション出力部21から上記プロペラシャフト4を離脱させたとき(図1,2中実線)、上記貫通孔25を開閉可能とするキャップ39を有している。
【0041】
このため、上記エンジン側2のクラッチ9におけるクラッチディスクを交換しようとする場合など、上記駆動装置1の分解作業時に、上記エンジン側2からトランスミッション3を離脱させると共に、このトランスミッション3の上記ミッション出力部21からプロペラシャフト4を離脱させたとき、上記ミッションケース13の貫通孔25は開かれた状態にされるが、この場合、この貫通孔25を上記治具38のキャップ39で閉じれば、上記ミッションケース13内の潤滑油16が上記貫通孔25を通して無用に洩出することは防止される。
【0042】
一方、上記駆動装置1の組立作業は、次のようにすることができる。
【0043】
即ち、上記エンジン側2が、その出力部11の軸心10周りで所定姿勢を保持するよう、このエンジン側2を車体に支持させる。一方、上記トランスミッション3を例えばチェーンブロックで吊り上げて、このトランスミッション3がミッション入力部18の軸心17周りで所定姿勢を保持するよう支持させる。この状態で、上記各軸心10,17を互いに同軸上に位置させる。そして、この同軸の軸心10,17上で上記出、入力スプライン12,19を互いに接近させる。この際、これら出、入力スプライン12,19のうち、一方のスプラインの歯と他方のスプラインの歯溝との上記軸心10,17周りでの各位置はランダムであり、このままでは、上記出、入力スプライン12,19同士のスプライン嵌合はし難くなるおそれがある。
【0044】
そこで、上記キャップ39により貫通孔25を閉じている治具38のハンドル部41を操作して、このハンドル部41を上記ミッション出力部21の軸心20回りに回動Aさせる。すると、上記治具38の係合部40と係合している上記ミッション出力部21が回動Aとすると共にこのミッション出力部21に連動連結されている上記ミッション入力部18が回動Aする。そして、このミッション入力部18の回動Aにより、このミッション入力部18の入力スプライン19の歯(もしくは歯溝)を上記エンジン側2の出力部11の出力スプライン12の歯溝(もしくは歯)に合致させれば、その後の上記出、入力スプライン12,19同士のスプライン嵌合は容易にできる。よって、その分、駆動装置1の組立作業が容易にできる。
【0045】
そして、上記した駆動装置1の分解、組立作業には、上記したように一つの治具38が上記貫通孔25を閉じた状態のままで共用可能なことから、上記各作業は簡単な構成で達成できる。
【0046】
なお、上記治具38はポリエチレンなどの樹脂製であることが好ましい。また、上記ハンドル部41に付与される外力は、作業者が直接付与する把持力であってもよいが、工具などを介して間接的に付与するものであってもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 駆動装置
2 エンジン側
3 トランスミッション
4 プロペラシャフト
6 エンジン
7 エンジン側ケース
10 軸心
11 出力部
12 出力スプライン
13 ミッションケース
14 動力伝達軸
15 動力伝達軸
16 潤滑油
17 軸心
18 ミッション入力部
19 入力スプライン
20 軸心
21 ミッション出力部
22 出力スプライン
25 貫通孔
27 入力部
28 軸心
29 入力スプライン
38 治具
39 キャップ
40 係合部
41 ハンドル部
A 回動
図1
図2
図3