【実施例】
【0026】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0027】
図において、符号1は、自動車で例示される車両の走行用駆動装置である。
【0028】
上記駆動装置1は、エンジン側2と、このエンジン側2から出力される駆動力を入力して所望速度に変速した後、この駆動力を出力するトランスミッション3と、このトランスミッション3から出力される駆動力を不図示の車輪側に伝達するプロペラシャフト4とを備えている。そして、上記エンジン側2およびトランスミッション3は互いに組み付けられた状態で、不図示の弾性的なエンジンマウントを介し、それぞれ車体に着脱可能に支持される。
【0029】
具体的には、上記エンジン側2は、内燃機関であるエンジン6と、このエンジン6のクランクケースを含みエンジン側2の外殻を構成するエンジン側ケース7と、このエンジン側ケース7に内有されて支持される不図示のクランク軸と、このクランク軸の軸端部側に順次支持されるフライホイール8およびクラッチ9とを有している。このクラッチ9の従動側部材の軸心10上の部分が駆動力の出力部11とされ、この出力部11の上記軸心10上に内スプラインである出力スプライン12が形成される。
【0030】
前記トランスミッション3は、その外殻を構成するミッションケース13と、このミッションケース13内で互いに並設されると共にそれぞれこのミッションケース13に支持される複数の動力伝達軸14,15と、これら各軸14,15に支持されると共に互いに噛合可能とされて各軸14,15を互いに連動連結する不図示の歯車組と、上記ミッションケース13内に収容され、上記歯車組を油浴させて潤滑する潤滑油16とを有している。
【0031】
上記各軸14,15のうち、一つの軸14の軸心17方向の端部が上記エンジン側2からの駆動力を入力するミッション入力部18とされ、このミッション入力部18の軸心17上に外スプラインである入力スプライン19が形成される。上記出力スプライン12と入力スプライン19とは、互いに同軸とされた上記両軸心10,17上で、互いに嵌脱可能にスプライン嵌合可能とされる。なお、上記出、入力スプライン12,19の内、外スプラインの形状は逆であってもよい。
【0032】
また、上記各軸14,15のうち、他の軸15の軸心20方向の端部がこのトランスミッション3から駆動力を出力するミッション出力部21とされ、このミッション出力部21の軸心20上に外スプラインである出力スプライン22が形成される。
【0033】
上記トランスミッション3の外殻を形成するミッションケース13には貫通孔25が形成され、この貫通孔25の内周面にはオイルシール26が嵌着される。一方、上記ミッション出力部21からの駆動力を入力する前記プロペラシャフト4の入力部27の軸心28上には内スプラインである入力スプライン29が形成される。上記トランスミッション3のミッション出力部21の出力スプライン22とプロペラシャフト4の入力部27の入力スプライン29とは、互いに同軸とされた上記両軸心20,28上で、上記貫通孔25を通し互いに嵌脱可能にスプライン嵌合可能とされる。なお、上記出、入力スプライン22,29の内、外スプラインの形状は逆であってもよい。
【0034】
そして、上記エンジン側2、トランスミッション3、およびプロペラシャフト4が互いに組み付けられて上記駆動装置1が組み立てられた状態では、上記エンジン側2のエンジン側ケース7の上記出力部11側の開口縁部33と、上記トランスミッション3のミッションケース13の上記ミッション入力部18側に形成された外向きフランジである開口縁部34とが複数の締結具35により互いに結合され、かつ、上記出力部11の出力スプライン12とミッション入力部18の入力スプライン19とがその軸心10,17上で、互いにスプライン嵌合させられる。
【0035】
また、上記状態に加えて、上記トランスミッション3のミッション出力部21の出力スプライン22とプロペラシャフト4の入力部27の入力スプライン29とがその軸心20,28上で、上記貫通孔25を通し互いに軸方向に摺動可能となるようスプライン嵌合させられる(
図2中一点鎖線)。また、この場合、上記プロペラシャフト4の入力部27の外周面が上記オイルシール26の内周面の弾性リップ部に摺接して、この摺接部がシールされる。これにより、上記ミッションケース13内の潤滑油16が上記貫通孔25を通して外部に洩出することは防止される。
【0036】
上記の場合、ミッション出力部21から上記プロペラシャフト4を離脱させたときには(
図1,2中実線)、上記貫通孔25は開いた状態とされる。
【0037】
上記駆動装置1の分解、組立の作業時に用いられる治具38が設けられる。
【0038】
上記治具38は、上記ミッション出力部21の軸心20上に位置し、開いた状態の上記貫通孔25に嵌脱可能に嵌入されて(
図1,2中二点鎖線)、この貫通孔25を開閉可能に閉じる軸形状のキャップ39と、このキャップ39の軸心上でこのキャップ39に形成され、このキャップ39により上記貫通孔25を閉じたとき、上記ミッション出力部21に係脱可能に係合する係合孔である係合部40と、上記ミッションケース13の外部からの操作力を入力して、上記キャップ39と係合部40とを上記ミッション出力部21の軸心20回りに回動A可能とさせる円板形状のハンドル部41とを有している。
【0039】
上記キャップ39の外周面は、上記プロペラシャフト4の入力部27の外周面と同径とされ、上記オイルシール26の内周面に摺接して、この摺接部がシールされる。また、上記係合部40は、具体的には、上記ミッション出力部21の出力スプライン22にスプライン嵌合する内スプラインの複数歯のうち、強度的に必要とされる一部の歯(2〜4本)のみが残された形状とされる。
【0040】
上記構成によれば、治具38は、上記ミッション出力部21から上記プロペラシャフト4を離脱させたとき(
図1,2中実線)、上記貫通孔25を開閉可能とするキャップ39を有している。
【0041】
このため、上記エンジン側2のクラッチ9におけるクラッチディスクを交換しようとする場合など、上記駆動装置1の分解作業時に、上記エンジン側2からトランスミッション3を離脱させると共に、このトランスミッション3の上記ミッション出力部21からプロペラシャフト4を離脱させたとき、上記ミッションケース13の貫通孔25は開かれた状態にされるが、この場合、この貫通孔25を上記治具38のキャップ39で閉じれば、上記ミッションケース13内の潤滑油16が上記貫通孔25を通して無用に洩出することは防止される。
【0042】
一方、上記駆動装置1の組立作業は、次のようにすることができる。
【0043】
即ち、上記エンジン側2が、その出力部11の軸心10周りで所定姿勢を保持するよう、このエンジン側2を車体に支持させる。一方、上記トランスミッション3を例えばチェーンブロックで吊り上げて、このトランスミッション3がミッション入力部18の軸心17周りで所定姿勢を保持するよう支持させる。この状態で、上記各軸心10,17を互いに同軸上に位置させる。そして、この同軸の軸心10,17上で上記出、入力スプライン12,19を互いに接近させる。この際、これら出、入力スプライン12,19のうち、一方のスプラインの歯と他方のスプラインの歯溝との上記軸心10,17周りでの各位置はランダムであり、このままでは、上記出、入力スプライン12,19同士のスプライン嵌合はし難くなるおそれがある。
【0044】
そこで、上記キャップ39により貫通孔25を閉じている治具38のハンドル部41を操作して、このハンドル部41を上記ミッション出力部21の軸心20回りに回動Aさせる。すると、上記治具38の係合部40と係合している上記ミッション出力部21が回動Aとすると共にこのミッション出力部21に連動連結されている上記ミッション入力部18が回動Aする。そして、このミッション入力部18の回動Aにより、このミッション入力部18の入力スプライン19の歯(もしくは歯溝)を上記エンジン側2の出力部11の出力スプライン12の歯溝(もしくは歯)に合致させれば、その後の上記出、入力スプライン12,19同士のスプライン嵌合は容易にできる。よって、その分、駆動装置1の組立作業が容易にできる。
【0045】
そして、上記した駆動装置1の分解、組立作業には、上記したように一つの治具38が上記貫通孔25を閉じた状態のままで共用可能なことから、上記各作業は簡単な構成で達成できる。
【0046】
なお、上記治具38はポリエチレンなどの樹脂製であることが好ましい。また、上記ハンドル部41に付与される外力は、作業者が直接付与する把持力であってもよいが、工具などを介して間接的に付与するものであってもよい。