(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(メタ)アクリル系ポリマーにおける、前記水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、全構成単位に対して、5質量%以上35質量%以下である請求項1に記載の粘着剤。
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、さらに炭素数が5〜9の分岐鎖アルキル基を有するアルキルアクリレートに由来する構成単位を、全構成単位に対して、5質量%以上含む請求項1又は請求項2に記載の粘着剤。
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、環状基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、全構成単位に対して5質量%以下である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の粘着剤。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。
なお、本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
また、本明細書において、(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルの少なくとも一方を意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの少なくとも一方を意味する。
【0014】
<粘着剤>
本発明の粘着剤は、炭素数が5〜9の分岐鎖アルキル基を有するアルキルメタクリレートに由来する構成単位を全構成単位に対して35質量%以上と、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して0.1質量%以上35質量%以下と、を含み、かつ、ガラス転移温度が−55℃〜−10℃である(メタ)アクリル系ポリマーを含有する。
また、本発明の粘着剤は、(メタ)アクリル系ポリマーと架橋構造を形成できる架橋剤を含んでもよい。また、粘着剤が架橋剤を含む場合は、粘着剤はさらに架橋触媒、キレート剤を含んでもよい。
また、本発明の粘着剤は、必要に応じて、更に上記以外の他の成分を含んでもよい。
【0015】
本発明は、粘着剤を上記の構成とすることで、比誘電率が低く、粘着力が高く、かつ、加工性に優れる粘着剤層を形成できる。
本発明の効果が得られる理由としては、以下のように推測される。
本発明における(メタ)アクリル系ポリマーを製造する際に用いるアルキルメタクリレートは、アルキル基の炭素数が5以上と大きく、かつ、分岐した構造であるため、モル体積が大きく、双極子モーメントが小さい。このため、(メタ)アクリル系ポリマーのモル体積を大きく、双極子モーメントを小さくすることができ、前記(メタ)アクリル系ポリマーを含む粘着剤は、比誘電率の低い粘着剤層を形成できる。
また、アルキルメタクリレートのアルキル基の炭素数が9以下であることにより、アルキル基の炭素数が10以上のものに比べ、比誘電率の低い粘着剤層を形成できる。この理由は明確ではないが、アルキル基の炭素数が9以下のアルキルメタクリレートは、ポリマーとしたときの体積収縮率が、アルキル基の炭素数が10以上のものと比べて小さく、(メタ)アクリル系ポリマーのモル体積が大きくなるためと考えられる。
上記のように、本発明の粘着剤は、(メタ)アクリル系ポリマーを製造する際に用いるアルキルメタクリレートのモル体積が大きく、双極子モーメントが小さい。さらに、前記アルキルメタクリレートは、ポリマーとしたときの体積収縮率が小さいため(メタ)アクリル系ポリマーのモル体積が大きくなる。この結果、比誘電率の低い粘着剤層を形成できると考えられる。
また、本発明の粘着剤は、(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度の下限が−55℃であるため、粘着剤層は、凝集力が高く、加工性に優れる。また、(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度の上限が−10℃であるため、粘着剤層の粘着力が高いと考えられる。
【0016】
本発明の粘着剤の用途としては、例えば、タッチパネル構成部材を固定する用途が挙げられる。特に、本発明の粘着剤は、ガラス基板、透明導電性フィルム、意匠フィルムなどの複数のタッチパネル構成部材を貼合してタッチパネルを製造する際に好適に用いられる。また、透明導電性フィルムとそれ以外のタッチパネル構成部材とを貼合してタッチパネルを製造する際により好適に用いられる。
【0017】
本発明の粘着剤に含有される(メタ)アクリル系ポリマーは、炭素数が5〜9の分岐鎖アルキル基を有するアルキルメタクリレートに由来する構成単位を全構成単位に対して35質量%以上と、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して0.1質量%以上35質量%以下と、を含み、かつ、ガラス転移温度が−55℃〜−10℃である。この(メタ)アクリル系ポリマーは、さらに、アルキルアクリレートに由来する構成単位を含むことが好ましく、さらに、既述の構成単位以外の構成単位を含んでもよい。
【0018】
(メタ)アクリル系ポリマーを製造する際に用いるアルキルメタクリレートの有する分岐鎖アルキル基の炭素数が5未満であると、アルキルメタクリレートのモル体積が小さく、双極子モーメントが大きくなり、粘着剤は、比誘電率の低い粘着剤層を形成できない。
また、前記分岐鎖アルキル基の炭素数が9を超えると、アルキルメタクリレートをポリマーとしたときの体積収縮率が大きく、(メタ)アクリル系ポリマーのモル体積は小さくなる傾向にある。さらに、前記分岐鎖アルキル基の炭素数が多くなるにつれて、重合性が悪くなるため、分子量の大きいポリマーを得にくくなり、結果としてポリマーの凝集力が低く加工性に劣る。このため、前記分岐鎖アルキル基の炭素数が9を超えると、粘着剤は、比誘電率が低く、かつ加工性に優れる粘着剤層を形成できない。
また、上記の比誘電率の観点及び加工性の観点から、アルキルメタクリレートの分岐鎖アルキル基の炭素数は、7〜9が好ましい。
【0019】
(メタ)アクリル系ポリマーにおける炭素数が5〜9の分岐鎖アルキル基を有するアルキルメタクリレートに由来する構成単位の含有率は、全構成単位に対して35質量%以上である。該含有率は、比誘電率の観点、加工性の観点、及び粘着力の観点から、全構成単位に対して、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がさらに好ましく、70質量%以上が最も好ましい。
該含有率が35質量%未満であると、粘着剤は、比誘電率の低い粘着剤層を形成できない。
【0020】
また、炭素数が5〜9の分岐鎖アルキル基を有するアルキルメタクリレートに由来する構成単位の含有率は、高温高湿環境下であっても白化しない性質(以下「耐湿熱白化性」ともいう)を調整する観点から、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましい。
【0021】
さらには、(メタ)アクリル系ポリマーは、炭素数が5〜9の分岐鎖アルキル基を有するアルキルメタクリレートに由来する構成単位の含有率が、50質量%以上であり、かつ、前記アルキルメタクリレートに由来する構成単位に対する水酸基を有する単量体に由来する構成単位の比率が、質量比で、1/2.5〜1/7.5であることが好ましい。上記範囲を満たしていることで、粘着剤は、比誘電率、加工性、耐湿熱白化性のバランスがより優れる粘着剤層を形成できる。
【0022】
本発明の粘着剤に含有される(メタ)アクリル系ポリマーは、水酸基を有する単量体に由来する構成単位を含む。水酸基を有する単量体を含むことで、後述する架橋剤と架橋反応できる。このため、粘着剤層は、凝集力が高く加工性に優れる。
【0023】
水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、全構成単位に対して、0.1質量%以上35質量%以下である。該含有率が0.1質量%未満であると、架橋剤と十分に反応できないため、粘着剤層としたときに凝集力が低く、粘着剤層の加工性に劣る。また、該含有率が35質量%を超えると、比誘電率の低い粘着剤層を形成できない。
【0024】
水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、全構成単位に対して、5質量%以上が好ましい。含有率が5質量%以上であると、粘着剤層としたときに、粘着剤層と水分の相溶性が高くなるため、粘着剤層がより白化しにくくなり、耐湿熱白化性をより向上させることができる。
また、上記の耐湿熱白化性を向上させる観点から、該含有率は、全構成単位に対して10質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。
【0025】
水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、全構成単位に対して、30質量%以下が好ましい。含有率が30質量%以下であると、粘着剤は、比誘電率の低い粘着剤層を形成できる。
また、上記の比誘電率を低くする観点から、該含有率は、全構成単位に対して、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。
【0026】
本発明の粘着剤に含有される(メタ)アクリル系ポリマーは、既述のアルキルメタクリレートに由来する構成単位、及び既述の水酸基を有する単量体に由来する構成単位に加え、さらに、アルキルアクリレートに由来する構成単位を含むことができる。アルキルアクリレートに由来する構成単位を含むことで、(メタ)アクリル系ポリマーの分子量を大きくしやすい。(メタ)アクリル系ポリマーの分子量が大きくなると、粘着剤層の凝集力が高くなり、加工性に優れる粘着剤層を形成できる。
【0027】
アルキルアクリレートに由来する構成単位としては、耐湿熱白化性の観点から、炭素数が5〜9のアルキル基を有するアルキルアクリレートに由来する構成単位であることが好ましい。
また、アルキルアクリレートに由来する構成単位としては、比誘電率の観点から、分岐鎖アルキル基を有するアルキルアクリレートに由来する構成単位であることが好ましい。
また、アルキルアクリレートに由来する構成単位としては、耐湿熱白化性の観点、及び比誘電率の観点から、炭素数が5〜9の分岐鎖アルキル基を有するアルキルアクリレートに由来する構成単位であることがより好ましい。
【0028】
本発明の粘着剤に含有される(メタ)アクリル系ポリマーが、炭素数が5〜9の分岐鎖アルキル基を有するアルキルアクリレートに由来する構成単位を含むことで、粘着剤が耐湿熱白化性及び比誘電率に優れる粘着剤層を形成できる理由は明確ではないが、以下のように考えられる。
炭素数が5〜9のアルキル基を有するアルキルアクリレートは、炭素数が5〜9のアルキル基を有するアルキルメタクリレートに比べ、単独重合体としたときのガラス転移温度が低いため、(メタ)アクリル系ポリマーを製造する際に用いるアルキルメタクリレートの一部をアルキルアクリレートに変えることで、(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度が低くなり、粘着剤の濡れ性を向上させることができる。そのため、粘着剤で粘着剤層を形成し、例えば、タッチパネル構成部材同士を貼合した際に、タッチパネル構成部材と粘着剤層との密着性が向上し、前記部材と粘着剤層との界面からの水分の浸入が抑制されると考えられる。さらに、アルキルアクリレートのアルキル基が、炭素数5以上であり疎水性が高いことで、粘着剤層と前記部材との界面以外からの粘着剤層内への水分の浸透が抑制されると考えられる。これらが相俟って水分による粘着剤層の白化が抑制される。これにより、前記(メタ)アクリル系ポリマーを含む粘着剤で形成される粘着剤層の耐湿熱白化性が向上すると考えられる。
また、アルキルアクリレートにおけるアルキル基が分岐鎖アルキル基であると、同炭素数の直鎖アルキル基を有するアルキルアクリレートと比べ、モル体積が大きい。そのため、粘着剤層の比誘電率が低くなると考えられる。
【0029】
上記のように、(メタ)アクリル系ポリマーを製造する際に用いるアルキルメタクリレートに変えてアルキルアクリレートを用いることができるが、アルキルアクリレートのモル体積は、アルキルメタクリレートのモル体積に比べて小さいため、全てのアルキルメタクリレートをアルキルアクリレートに変えた場合、粘着剤は比誘電率が低い粘着剤層を形成できない。
【0030】
(メタ)アクリル系ポリマーにおける炭素数が5〜9の分岐鎖アルキル基を有するアルキルアクリレートに由来する構成単位の含有率は、比誘電率の観点、及び耐湿熱白化性の観点から、全構成単位に対して5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。
【0031】
前記アルキルアクリレートに由来する構成単位の含有率は、全構成単位に対して64.9質量%以下が好ましい。含有率が64.9質量%以下であると、比誘電率と、耐湿熱白化性のバランスが良好な粘着剤層を形成できる。
また、上記の比誘電率と耐湿熱白化性のバランスの観点から、該含有率は、45質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。
【0032】
また、(メタ)アクリル系ポリマーは炭素数が5〜9の分岐鎖アルキル基を有するアルキルアクリレートに由来する構成単位の含有率が、全構成単位に対して、10質量%以上であり、かつ、水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、全構成単位に対して、10質量%以上であることが好ましい。
(メタ)アクリル系ポリマーが、水酸基を有する単量体に由来する構成単位と、炭素数が5〜9の分岐鎖アルキル基を有するアルキルアクリレートに由来する構成単位とを、ともに10質量%以上含むことで、粘着剤で形成した粘着剤層への水分の浸透が抑制されると共に、粘着剤層は水分との相溶性が高くなるため、耐湿熱白化性をより向上させることができる。
【0033】
炭素数が5〜9の分岐鎖アルキル基を有するアルキルメタクリレートとしては、例えば、イソペンチルメタクリレート、イソヘキシルメタクリレート、イソヘプチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、及びイソノニルメタクリレート等が挙げられる。これらの中でも、比誘電率の観点から、2−エチルヘキシルメタクリレートが好ましい。
炭素数が5〜9の分岐鎖アルキル基を有するアルキルメタクリレートは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0034】
水酸基を有する単量体としては、例えば、水酸基及びエチレン性不飽和結合基を有する単量体が挙げられる。水酸基を有する単量体の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,3−ジメチル−3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2,4−トリメチル−3−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−3−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート化合物や、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の水酸基を有する(メタ)アクリルアミド化合物や、アリルアルコール、メタリルアルコール等の不飽和アルコールなどが挙げられる。
【0035】
これらの中でも、炭素数が5〜9の分岐鎖アルキル基を有するアルキルメタクリレートとの相溶性及び共重合性が良好である点、並びに架橋剤との架橋反応が良好である点から、水酸基を有する単量体としては、炭素数が1〜5のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数が2〜4のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートまたは4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
水酸基を有する単量体は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0036】
アルキルアクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ノニルアクリレート、イソノニルアクリレート、n−デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、比誘電率の観点、及び耐湿熱白化性の観点から2−エチルヘキシルアクリレートが好ましい。
アルキルアクリレートは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0037】
本発明の粘着剤に含有される(メタ)アクリル系ポリマーが、既述の構成単位以外に含むことができる構成単位としては、例えば、エチルメタクリレート、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、n−デシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等の、炭素数が5〜9の分岐鎖アルキル基を有するアルキルメタクリレート以外のアルキルメタクリレートや、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、N−ビニル−ε−カプロラクタム、N−ビニル−2−ピロリドン、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の環状基を有する単量体や、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の酸性基を有する単量体や、飽和脂肪酸ビニルエステル、例えば、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、「バーサチック酸ビニル」(商品名、ネオデカン酸ビニル)等の脂肪族ビニル単量体や、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノビニル単量体などに由来する構成単位が挙げられる。
【0038】
(メタ)アクリル系ポリマーにおける環状基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、耐湿熱白化性及び粘着力の観点から、全構成単位に対して、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
【0039】
(メタ)アクリル系ポリマーにおける酸性基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、全構成単位に対して、0.5質量%以下であることが好ましい。
酸性基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が、上記範囲内であると、粘着剤層が、例えば、タッチパネルの透明電極などの金属と接触する場合に、金属の腐食を抑制できる。このため、前記(メタ)アクリル系ポリマーを含む粘着剤は、タッチパネル用途として、より好適に用いることができる。
また、上記の観点から、酸性基を有する単量体に由来する構成単位の含有率は、全構成単位に対して、0.2質量%以下であることがより好ましく、含まないことがさらに好ましい。
【0040】
本発明の粘着剤に含有される(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、−55℃〜−10℃である。(メタ)アクリル系ポリマーのTgが−55℃未満であると粘着剤層としたときに凝集力が低く、粘着剤層の加工性が劣る。また、(メタ)アクリル系ポリマーのTgが−10℃を超えると、粘着剤層としたときの粘着力が低い。
また、上記の観点から、(メタ)アクリル系ポリマーのTgは、−40℃〜−15℃が好ましく、−35℃〜−18℃がより好ましい。
【0041】
本明細書において、(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、以下の計算により求められるモル平均ガラス転移温度である。
下記式中のTg
1、Tg
2、・・・・・及びTg
nは、単量体1、単量体2、・・・・・及び単量体nそれぞれの単独重合体のガラス転移温度であり、絶対温度(K)に換算し算出される。m
1、m
2、・・・・・及びm
nは、それぞれの単量体のモル分率である。
なお、ガラス転移温度の算出には絶対温度(K)を用いるが、本明細書においてガラス転移温度を記載する際には、セルシウス度(℃)を用いることがある。
【0043】
なお、ここでいう「単独重合体のガラス転移温度(Tg)」は、その単量体の単独重合体を、示差走査熱量測定装置(DSC)(セイコーインスツルメンツ社製、EXSTAR6000)を用い、窒素気流中、測定試料10mg、昇温速度10℃/分の条件で測定を行い、得られたDSCカーブの変曲点を単独重合体のTgとしたものである。
【0044】
代表的な単量体の「単独重合体のガラス転移温度(Tg)」は、2−エチルヘキシルメタクリレート−10℃、2−エチルヘキシルアクリレート−76℃、イソブチルメタクリレート48℃、ノルマルブチルメタクリレート21℃、ラウリルメタクリレート−65℃、2−ヒドロキシエチルアクリレート−15℃、イソデシルメタクリレート−41℃、シクロヘキシルメタクリレート56℃である。
【0045】
本発明の粘着剤に含有される(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、特に制限されないが、粘着剤層の加工性の観点及び段差への追従のしやすさ(以下、「段差追従性」ともいう)の観点から、20万以上100万以下であることが好ましく、30万以上80万以下であることがより好ましく、40万以上60万以下であることがもっとも好ましい。
【0046】
また、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分散度(Mw/Mn)は、段差追従性の観点から、20以下であることが好ましく、3以上15以下の範囲であることがより好ましく、4.5以上8以下であることがもっとも好ましい。
【0047】
なお、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて下記(1)〜(3)に従って測定される値である。
【0048】
(1)(メタ)アクリル系ポリマーの溶液を剥離紙に塗布し、100℃で2分間乾燥させ、フィルム状の(メタ)アクリル系ポリマーを得る。
(2)上記(1)で得られたフィルム状の(メタ)アクリル系ポリマーをテトラヒドロフランにて固形分0.2質量%になるように溶解させる。
(3)下記条件にて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、標準ポリスチレン換算値として、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を測定する。
【0049】
(条件)
GPC :HLC−8220 GPC(東ソー株式会社製)
カラム :TSK−GEL GMHXL 4本使用(東ソー株式会社製)
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流速 :0.6mL/分
カラム温度:40℃
【0050】
本発明の粘着剤に含有される(メタ)アクリル系ポリマーは、既述の構成単位を形成可能な単量体混合物を重合することで製造できる。(メタ)アクリル系ポリマーの重合方法は、特に制限されるものではなく、通常用いられる重合方法から適宜選択できる。重合方法としては、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法などが挙げられる。これらの中でも製造が比較的簡単に行えることから、溶液重合法が好ましい。
【0051】
溶液重合法は、一般に、重合槽内に所定の有機溶剤、単量体、重合開始剤、及び必要に応じて連鎖移動剤を仕込み、窒素気流中、有機溶剤の還流温度で、撹拌しながら数時間加熱反応させるなどの公知の方法を用いることができる。
【0052】
なお、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)、分散度(Mw/Mn)は、重合温度、時間、溶剤量、触媒の種類及び量、並びに重合開始剤の種類及び量により容易に調節できる。
【0053】
本発明における架橋剤は、(メタ)アクリル系ポリマーと反応して架橋構造を形成し得るものであれば特に限定されず、例えば、ポリイソシアネート化合物、ポリエポキシ化合物、ポリアジリジン化合物、メラミンホルムアルデヒド縮合物、金属キレート化合物等が挙げられる。これらの架橋剤は、それぞれ1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
これらの架橋剤のうち、架橋反応の反応性の観点及び架橋後の環境変化に対する安定性の観点から、ポリイソシアネート化合物が好ましい。
【0055】
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート化合物や、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート化合物の水素添加物等の脂肪族または脂環族ポリイソシアネート化合物が挙げられる。
また、上記ポリイソシアネート化合物の2量体又は3量体や、上記ポリイソシアネート化合物とトリメチロールプロパンなどのポリオール化合物とのアダクト体や、上記イソシアネート化合物のビウレット体も、ポリイソシアネート化合物として、用いることができる。
これらの中では、キシリレンジイソシアネートの2量体、3量体並びにアダクト体からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、キシリレンジイソシアネートアダクト体が特に好ましい。これらのポリイソシアネート化合物は、1種を単独でまたは2種類以上を混合して用いることができる。
【0056】
ポリイソシアネート化合物は、例えば、「コロネートHX」、「コロネートHL−S」、「コロネート2234」「アクアネート200」、「アクアネート210」〔以上、日本ポリウレタン株式会社製〕、「デスモジュールN3300」、「デスモジュールN3400」〔以上、住友バイエルウレタン株式会社製〕、「デュラネートE−405−80T」、「デュラネート24A−100」、「デュラネートTSE−100」〔以上、旭化成工業株式会社製〕、「タケネートD−110N」、「タケネートD−120N」、「タケネートM−631N」「MT−オレスターNP1200」〔以上、三井化学株式会社製〕などの商品名により市販されているものを好適に用いることができる。
【0057】
本発明の粘着剤における架橋剤の配合量は、粘着剤層の加工性及び段差追従性の観点から、(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.05質量部以上1.0質量部以下含まれることが好ましく、0.1質量部以上0.5質量部以下含まれることがより好ましく、0.15質量部以上0.3質量部以下含まれることがさらに好ましい。
【0058】
本発明の粘着剤は、架橋剤の他に、初期硬化速度を早くするために架橋触媒をさらに含んでもよい。架橋触媒としては、例えばジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート等の有機錫化合物や、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)等の有機ジルコニウム化合物などが挙げられる。
【0059】
本発明の粘着剤が架橋触媒を含む場合は、粘着剤はさらにキレート剤を含むことが好ましい。キレート剤としては、例えば、β−ジケトン類やβ−ケトエステル類等が挙げられる。β−ジケトン類やβ−ケトエステル類としては、例えば、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−n−プロピル、アセト酢酸イソプロピル等が挙げられる。これらのキレート剤のうち、粘着剤のポットライフと反応速度とのバランスが良好なことから、アセチルアセトンが好ましい。
【0060】
本発明の粘着剤を粘着剤層としたときのゲル分率は、加工性の観点、粘着力の観点、及び段差追従性の観点から、40質量%〜90質量%が好ましく、45質量%〜80質量%がより好ましく、50質量%〜65質量%がさらに好ましい。
本明細書において、粘着剤層のゲル分率は、酢酸エチルを抽出溶媒に用いて測定される、溶媒不溶分の割合である。測定方法の詳細は、以下のとおりである。
【0061】
−ゲル分率の測定方法−
ゲル分率は、下記(1)〜(4)に示す方法により測定するものである。
(1)精密天秤にて質量を正確に測定した250メッシュの金網(100mm×100mm)に粘着剤層を約0.25g貼付し、ゲル分が漏れないように包む。その後、精密天秤にて質量を正確に測定して試料を作製する。
(2)得られた試料を酢酸エチル80mlに3日間浸漬する。
(3)試料を取り出して少量の酢酸エチルにて洗浄し、120℃で24時間乾燥させる。その後、精密天秤にて質量を正確に測定する。
(4)下式によりゲル分率を算出する。
ゲル分率(質量%)=(Z−X)/(Y−X)×100
但し、Xは金網の質量(g)、Yは粘着剤層を貼付した金網の浸漬前の質量(g)、Zは浸漬後、乾燥させた、粘着剤層を貼付した金網の質量(g)である。
【0062】
本発明の粘着剤が含んでもよいその他の成分としては、紫外線吸収剤、タッキファイヤー、可塑剤、軟化剤、剥離助剤、染料、顔料、無機充填剤、界面活性剤、酸化防止剤、金属腐食防止剤、シランカップリング剤、等が挙げられる。その他の成分は、本発明の効果が損なわれない範囲内の量で、粘着剤に配合される。
【0063】
<粘着シート>
本発明の粘着シートは、既述の本発明の粘着剤で形成された粘着剤層を有する。該粘着剤層は、既述の本発明における(メタ)アクリル系ポリマーと、架橋剤との間で形成された架橋構造を含む。該粘着剤層は、比誘電率が低く、粘着力が高く、加工性に優れる。
【0064】
本発明の粘着シートとしては、基材を有しないタイプ(無基材タイプ)でも、基材を有するタイプ(有基材タイプ)でもよい。
基材としては、樹脂フィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステルフィルム)が挙げられる。基材は、透明であることが好ましい。基材の厚さは、特に限定されないが、耐久性の観点から5μm〜100μmが好ましい。
本発明の粘着シートとしては、透明性の観点から無基材タイプが好ましい。
【0065】
本発明の粘着シートの粘着剤層は、露出した面が剥離フィルムによって保護されていてもよい。
剥離フィルムとしては、粘着剤層からの剥離が容易に行なえるものであれば特に限定されず、例えば、剥離処理剤を用いて少なくとも片面に易剥離処理が施された樹脂フィルム(例えばPETなどのポリエステルフィルム)が挙げられる。剥離処理剤として、例えば、フッ素系樹脂、パラフィンワックス、シリコーン、長鎖アルキル基化合物などが挙げられる。
剥離フィルムは、粘着シートを実用に供するまでの間、粘着剤層の表面を保護し、使用時に剥離される。
【0066】
本発明の粘着シートにおいて、粘着剤層の厚さは、特に制限されるものではなく、用途や要求性能により適宜選択できる。粘着剤層の厚さは、段差追従性の観点、及び粘着シートの生産性の観点から、例えば20μm〜300μmの範囲が挙げられる。
【0067】
粘着剤層は、タッチパネルとしたときの視認性の観点から、透明性が高いことが好ましく、具体的には、例えば可視光波長領域における全光線透過率(JIS K 7361(1997年))が85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
粘着剤層のヘイズ(JIS K 7136(2000年))は、タッチパネルとしたときの視認性の観点から、2.0%未満が好ましく、1.0%未満がより好ましく、0.5%以下がさらに好ましい。
【0068】
本発明の粘着シートは、例えば、本発明の粘着剤を剥離フィルムなどに塗布し、乾燥させ、架橋反応を起こすことによって粘着剤層を形成し作製できる。
【0069】
無基材タイプの粘着シートは、例えば、剥離フィルムの剥離処理面に粘着剤を塗布し、架橋反応を起こして粘着剤層を形成し、その後、この粘着剤層上に別の剥離フィルムを剥離処理面が接するように重ねることで作製できる。
【0070】
有基材タイプの粘着シートは、例えば、基材の両面に粘着剤を塗布し、架橋反応を起こして粘着剤層を形成し、その後、この両面に塗布された粘着剤層上に、それぞれ剥離フィルムを剥離処理面が接するように重ねることで作製できる。また、剥離フィルムの剥離処理面に粘着剤層を形成し、この剥離フィルム付きの粘着剤層を基材の両面に重ねる方法によっても作製できる。
【0071】
剥離フィルムや基材に粘着剤を塗布する方法としては、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等を用いた公知の方法が挙げられる。
【0072】
本発明の粘着シートの用途としては、例えば、タッチパネル用が挙げられる。特に、本発明の粘着シートは、ガラス基板、透明導電性フィルム、意匠フィルムなどの複数の部材を貼合してタッチパネルを構成する際に好適に用いられる。また、透明導電性フィルムとその他の部材を貼合してタッチパネルを構成する際により好適に用いられる。
【0073】
<タッチパネル>
本発明の粘着剤又は粘着シートを用いたタッチパネルは、既述の本発明の粘着剤で形成された粘着剤層を有する。該粘着剤層は、比誘電率が低いため、粘着剤層の厚みが薄くとも、タッチパネルの動作時にタッチパネル内部の静電容量が適切な値に保たれ、静電容量に起因する誤作動を抑制できる。
また、本発明のタッチパネルは、既述の本発明の粘着剤を用いているため、粘着シートとした場合の加工性に優れ、タッチパネル構成部材から粘着剤がはみ出るなどの製造上の不具合が生じにくい。
【0074】
本発明の粘着剤又は粘着シートを用いた静電容量方式のタッチパネルは、例えば、意匠フィルムと、粘着剤層と、透明導電性フィルムと、粘着剤層と、透明導電性フィルムとをこの順番に積層した構成とすることができる。
【実施例】
【0075】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例1は、本発明の参考例である。
【0076】
(実施例1)
[(メタ)アクリル系ポリマーの製造]
攪拌機、還流冷却器、逐次滴下装置、温度計を備えた反応装置に、酢酸エチル147質量部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.05質量部を仕込んだ。次いで、別の容器に2−エチルヘキシルメタクリレート(2EHMA)210質量部(全構成単位に対して35質量%)、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)330質量部(全構成単位に対して55質量%)、2ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)60質量部(全構成単位に対して10質量%)からなる単量体混合液600質量部を準備し、このうち150質量部を反応装置に仕込み、加熱し、還流温度で20分間還流を行った。次いで、還流温度条件下で単量体混合液の残り450質量部と酢酸エチル33質量部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.03質量部を90分間にわたって逐次滴下し、滴下終了後更に90分間の重合反応を行った。その後、酢酸エチル15質量部とt−ブチルパーオキシピバレート0.13質量部の混合液を30分にわたって逐次滴下し、更に150分間重合反応を行った。
反応終了後、酢酸エチルにて固形分45質量%に希釈し、(メタ)アクリル系ポリマー1の溶液を得た。
【0077】
得られた(メタ)アクリル系ポリマー1は、重量平均分子量(Mw)が49万、分散度(Mw/Mn)が6.2、ガラス転移温度(Tg)が−50℃であった。なお、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及びガラス転移温度(Tg)は、既述の方法により測定又は算出した。
【0078】
[粘着剤溶液の調製]
(メタ)アクリル系ポリマー1の溶液222.2質量部(固形分として100質量部)に対して、架橋剤としてD−110N(三井化学株式会社製)を固形分として0.2質量部加えて混合し、粘着剤溶液を調製した。
【0079】
[試験用サンプルの作製]
調製した粘着剤溶液を、シリコーン系剥離処理剤で易剥離処理された剥離フィルム(商品名:フィルムバイナ100E、藤森工業株式会社製)の剥離処理面に、乾燥後の粘着剤層の厚みが50μmとなるように塗布し、塗布層を形成した。その後、得られた塗布層を有する剥離フィルムを100℃、2分間の乾燥条件で乾燥し、剥離フィルム上に粘着剤層を形成した。粘着剤層が露出した面を別途用意した剥離フィルム(商品名:フィルムバイナ100E、藤森工業株式会社製)に貼り合せ、無基材タイプの粘着シートを作製した。その後、温度23℃、50%RHの環境下で4日間養生して架橋反応を進行させ、架橋構造を含む粘着剤層を有する試験用サンプルを得た。作製した試験用サンプルのゲル分率は、58.0質量%であった。なお、ゲル分率は既述の方法により測定した。
【0080】
[評価]
以下に従って、試験用サンプルにおける粘着剤層の比誘電率、加工性、粘着力、及び耐湿熱白化性を評価した。結果は表1に示す。
【0081】
(比誘電率)
作製した試験用サンプルの一方の剥離フィルムを剥がし、電解銅箔(古河電気工業株式会社製、10μm、NC−WC処理品)に貼り合せた。その後、試験用サンプルの他方の剥離フィルムを剥がし、粘着剤層が露出した面に、さらに別の、一方の剥離フィルムを剥がした試験サンプルの粘着剤層が露出した面を貼り合せた。この試験用サンプルを貼り合せる手順を、粘着剤層が200μmの厚みになるまで繰り返した。粘着剤層が200μmの厚みとなったところで、最後に貼り合せた試験用サンプルの剥離フィルムを剥がし、粘着剤層が露出した面に、電解銅箔を貼り合せた。このようにして得られた2枚の電解銅箔の間に200μmの厚みの粘着剤層が積層されたサンプルを、50mm×50mmのサイズにカットして比誘電率測定サンプルとした。
【0082】
比誘電率の測定は、Agilent Technologies製マテリアル・アナライザ 4291Bを用いて以下の条件で行った。次いで、粘着剤層の比誘電率を以下の基準で評価した。下記評価基準のA及びBは、実用上の問題無いレベルであり、Cは実用上問題のあるレベルである。
【0083】
−測定条件−
測定治具:Agilent Technologies製Dielectric Test Fixture 16453A
測定周波数:100kHz
【0084】
−評価基準−
A:比誘電率が3.5以下である。
B:比誘電率が3.5を超えて4.0以下である。
C:比誘電率が4.0を超える。
【0085】
(加工性)
粘着剤層の加工性は、JIS Z 0237(2009年)の保持力に従って評価した。すなわち、以下に記載する試験にて評価した。
作製した試験用サンプルの一方の剥離フィルムを剥がし、易接着処理されたPETフィルム(A−4100(東洋紡株式会社製)、厚み100μm)の易接着処理された面に貼り合せた。その後、25mm×50mmのサイズにカットし、カット後、他方の剥離フィルムを剥離し、試験用サンプルの端から10mmまでがステンレス(SUS)板に接するように圧着して貼合し(貼合面積25mm×10mm)、加工性評価用サンプルとした。この加工性評価用サンプルを、23℃、50%RHの環境下において、SUS板が地面と法線方向、かつ、粘着シートの未貼合部分が下となるように保持し、粘着シートに1.0kgの荷重が加わるようにおもりをつるした。荷重を掛けてから、1時間後の粘着シートの移動距離を測定し、下記の評価基準に従って加工性を評価した。なお、加工性は、移動距離が短いほど優れ、下記評価基準のA及びBは、実用上問題無いレベルであり、Cは実用上問題のあるレベルである。
【0086】
−評価基準−
A:移動距離が0.4mm未満である。
B:移動距離が0.4mm以上0.8mm未満である。
C:移動距離が0.8mm以上である。
【0087】
(粘着力)
作製した試験用サンプルの一方の剥離フィルムを剥がし、粘着剤層が露出した面を、易接着処理されたPETフィルム(A−4100(東洋紡株式会社製)、厚み100μm)の易接着処理された面に貼り合わせた。この試験用サンプルを25mm×150mmにカット後、もう一方の剥離フィルムを剥がし、ガラス板表面に重さ2kgのゴムローラーを用いて粘着剤層がガラス板に接するように圧着して粘着力評価用サンプルとした。
この粘着力評価用サンプルを23℃、50%RHの条件下で24時間放置した後、180゜剥離における粘着力(N/25mm)を剥離速度300mm/minで測定し、下記評価基準に従って評価した。下記評価基準のA、B及びCは、実用上問題の無いレベルであり、Dは実用上問題のあるレベルである。
【0088】
−評価基準−
A:粘着力が20N/25mm以上である。
B:粘着力が15N/25mm以上20N/25mm未満である。
C:粘着力が10N/25mm以上15N/25mm未満である。
D:粘着力が10N/25mm未満である。
【0089】
(耐湿熱白化性)
作製した試験用サンプルを幅80mm×長さ60mmのサイズにカットした。試験用サンプルの一方の剥離フィルムを剥がし、粘着剤層が露出した面を厚さ1.8mmのガラス板(松浪硝子工業株式会社製、光学ソーダガラス、幅250mm×長さ200mm)に重ね、卓上ラミネート機を用いて圧着し、耐湿熱白化性試験用サンプルとしヘイズ(試験投入前ヘイズ)を測定した。その後、85℃、90%RHの環境下で250時間放置し、23℃、50%RHの環境下にて10分間冷却した後、ヘイズ(試験投入後ヘイズ)を測定した。なお、ヘイズは日本電色株式会社製のNDH 5000SPを用いて測定した。試験投入後ヘイズより試験投入前ヘイズを引いた値(ΔH)を求め、下記評価基準に従って耐湿熱白化性を評価した。なお、ΔHが小さいほど、耐湿熱白化性が優れている。
【0090】
−評価基準−
A:ΔHが1.0未満である。
B:ΔHが1.0以上1.5未満である。
C:ΔHが1.5以上2.0未満である。
D:ΔHが2.0以上4.0未満である。
E:ΔHが4.0以上である。
【0091】
(実施例2〜実施例9、比較例1〜比較例8)
実施例2〜実施例9、比較例1〜比較例8は、表1に示すように、粘着剤における(メタ)アクリル系ポリマーの組成を変更した以外は実施例1と同様にして、(メタ)アクリル系ポリマーの製造、粘着剤の調製、及び試験用サンプルの作製を行ない、試験用サンプルにおける粘着剤層の比誘電率、加工性、粘着力、及び耐湿熱白化性を評価した。結果は表1又は表2に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
なお、表1及び表2に示す略語は以下の通りである。
・2EHMA:2−エチルヘキシルメタクリレート(炭素数が8の分岐鎖アルキル基を有するアルキルメタクリレート)
・2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート(炭素数が8の分岐鎖アルキル基を有するアルキルアクリレート)
・iBMA:イソブチルメタクリレート(炭素数が4の分岐鎖アルキル基を有するアルキルメタクリレート)
・nBMA:ノルマルブチルメタクリレート(炭素数が4の直鎖アルキル基を有するアルキルメタクリレート)
・IDMA:イソデシルメタクリレート(炭素数が10の分岐鎖アルキル基を有するアルキルメタクリレート)
・LMA:ラウリルメタクリレート(炭素数が12の直鎖アルキル基を有するアルキルメタクリレート)
・CHMA:シクロヘキシルメタクリレート(環状基を有する単量体)
・2HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート(水酸基を有する単量体)
・D−110N:イソシアネート系架橋剤(商品名タケネートD−110N)
【0095】
表1より、実施例1〜実施例9は、比誘電率、加工性、及び粘着力のいずれも優れていることがわかる。
表2より、比較例1のように、水酸基を有する単量体に由来する構成単位の含有率が35質量%を超えると比誘電率が高いことがわかる。
比較例2のように、炭素数が5〜9の分岐鎖アルキル基を有するアルキルメタクリレートに由来する構成単位の含有率が35質量%未満であると、比誘電率が高いことがわかる。
比較例3〜比較例7のように、炭素数が5〜9の分岐鎖アルキル基を有するアルキルメタクリレートに由来する構成単位に代えて、アルキルアクリレートに由来する構成単位、又は炭素数が9を超える分岐鎖アルキル基若しくは直鎖アルキル基を有するメタクリレートに由来する構成単位を含むと、比誘電率と加工性が両立できないことがわかる。
比較例8のように、(メタ)アクリル系ポリマーのTgが−10℃を超えると粘着力が低く、粘着剤として機能しないことがわかる。