(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る巻取り式フィルタ装置の一実施の形態を
図1〜
図11によって詳細に説明する。
図1に示す巻取り式フィルタ装置1は、フィルタ本体2の一端側に位置するフィルタケース3と、フィルタ本体2の他端側に位置する巻取りケース4とを備えている。フィルタ本体2は、不織布によって形成されており、ロール状に巻かれてロールフィルタ5を形成している。
【0017】
このロールフィルタ5の筒状部分5aは、
図2に示すように、フィルタケース3の中に収容されている。ロールフィルタ5から引き出されたフィルタ本体2の先端部には、フィルタ巻取り軸6が接着されている。このフィルタ巻取り軸6は、後述する巻取りケース4の中に収容されている。ロールフィルタ5は、交換式で、使い捨てされるものである。フィルタ本体2の目の粗さは、吸い込み風量が低下することがない程度の粗さである。このロールフィルタ5は、フィルタ本体2の目の粗さが異なるものが使用環境に応じて選択される。
【0018】
フィルタケース3と巻取りケース4は、
図1に示すように、それぞれ細長い箱状に形成されている。これらのフィルタケース3と巻取りケース4は、
図2に示すように、被取付部材7に取付けられる取付座8をそれぞれ有している。この取付座8は、図示していない磁石や取付用ねじなどによって被取付部材7に取付けられる。被取付部材7としては、例えば、換気扇や制御盤用通風装置、制御盤用クーラ、外扇型モータ、油・水冷却装置、スポットクーラ、エアコン室内機などが挙げられる。
【0019】
これらのフィルタケース3と巻取りケース4には、フィルタ本体2を視認できるように窓9が形成されている。巻取りケース4の窓9からフィルタ本体2を見ることによって、フィルタ巻取り軸6に巻取られたフィルタ本体2の巻取り量が判る。
フィルタケース3は、ロールフィルタ5の筒状部分5aを回転自在に支持している。フィルタケース3の一端部には、ロールフィルタ5を手動で回転させるための調整ビス10が設けられている。
【0020】
巻取りケース4は、フィルタ巻取り軸6を回転自在に支持している。この巻取りケース4の一端部には、フィルタ巻取り軸6を手動で回転させるための調整ビス11が設けられている。巻取りケース4の他端部には、後述する駆動装置用ケース12が着脱可能に取付けられている。この駆動装置用ケース12は、ミスト等の浮遊物が内部に浸入することを防ぐ機能を有している。
【0021】
駆動装置用ケース12の中には、
図3に示すように、後述する駆動装置13のモータ14と、フォトインタラプタ15と、一次電池16(
図5参照)および基板17などが収容されている。
モータ14は、いわゆる小型モータによって構成されている。このモータ14は、フィルタ巻取り軸6の回転トルクを高くするために、減速機18(
図3参照)を介して後述する円柱ブロック19に接続されている。円柱ブロック19は、モータ14の回転トルクをフィルタ巻取り軸6に伝達するためのもので、減速機18の出力軸18aに一体に回転するように接続されている。すなわち、この実施の形態によるモータ14は、減速機18と円柱ブロック19とを介してフィルタ巻取り軸6に接続されている。
【0022】
円柱ブロック19とフィルタ巻取り軸6は、着脱自在な係合構造21によって一体に回転するように連結されている。係合構造21は、円柱ブロック19に設けられたピン22と、このピン22に係合可能な形状にフィルタ巻取り軸6に形成された切り欠き23とによって構成されている。なお、フィルタ巻取り軸6は、円柱ブロック19と一体に形成してもよい。この場合は、フィルタ巻取り軸6にフィルタ本体2は接着されず、設置時にフィルタ本体2をフィルタ巻取り軸6に巻き付けたり、引っかけたりすることで取付ける。
【0023】
円柱ブロック19には、
図4に示すように、円盤カム24が設けられている。この円盤カム24は、円柱ブロック19の回転方向に並ぶ多数のスリット25を形成するためのものである。円柱ブロック19の近傍には、モータ14の回転数(フィルタ巻取り軸6の回転数)を検出するためのフォトインタラプタ15が設けられている。円盤カム24は、フォトインタラプタ15の光路を遮る位置に設けられている。このため、円柱ブロック19が回転することにより、フォトインタラプタ15がON、OFFを繰り返すようになる。このフォトインタラプタ15は、基板17に実装されて支持されている。この実施の形態においては、このフォトインタラプタ15が
請求項1記載の発明でいう「センサ」に相当する。
【0024】
駆動装置13は、
図5に示すように、電源部26と、モータ14と、基板17とによって構成されている。
電源部26は、モータ14と基板17とに給電するためのものである。電源部26は、発電機27と、二次電池28と、一次電池16と、外部電源29とのうち少なくともいずれか一つを用いて構成することができる。この実施の形態による巻取り式フィルタ装置1は、一次電池16のみを電源として構成されている。
【0025】
本発明に係る巻取り式フィルタ装置1の電源は、主に一次電池16(乾電池)や発電機27が発電した発電電力を使用する。発電電力とは、太陽光パネル(図示せず)を用いた太陽光発電と、ゼーベック・スターリングを利用した温度差発電と、風力を利用した風力発電とのいずれか、もしくは組み合わせたものによって得られた電力である。発電機27は、巻取りケース4とは別の場所に設置され、ケーブル(図示せず)によって後述する基板17に接続される。
【0026】
基板17は、複数の機能部を有している。この機能部とは、電力変換回路31と、充電回路32と、制御回路33と、設定部34と、表示部35と、フォトインタラプタ15を有する回転検出部36と、ワイヤレス通信部37などである。この実施の形態による駆動装置13は、基板17に実装される電子部品として省電力の部品が用いられており、待機時の消費電力を少なく抑えることが可能なものである。
【0027】
電力変換回路31は、発電機27から制御回路33に給電される電力の電圧・電流を制御する。充電回路32は、発電機27が発電した電力のうち、余剰の電力で二次電池28を充電する。また、充電回路32は、発電電力が不足したときに二次電池28から制御回路33に電力を供給する。
【0028】
制御回路33は、モータ14の動作を制御するためのものである。この実施の形態による制御回路33は、マイコンによって構成されている。この実施の形態においては、この制御回路33が本発明でいう「制御部」に相当する。なお、この制御部を構成するものは、マイコンに限定されることはなく、タイマーICやカウンタICを利用したアナログ回路でもよい。
【0029】
この実施の形態による制御回路33は、記憶部41と、演算部42と、2種類の駆動形態のうちいずれか一方の形態でモータ14を回転させるモータ駆動部43とを有している。2種類の駆動形態とは、フィルタ巻取り軸6が間欠的に回転する第1の巻取形態と、フィルタ巻取り軸6が回転し続ける第2の巻取形態である。
記憶部41は、後述する設定部34に入力されたデータを記憶する。設定部34は、詳細には図示してはいないが、ロータリスイッチや、液晶パネルを利用したタッチパネルなどを備えており、制御回路33に接続されている。
【0030】
モータ駆動部43が第1の駆動形態でモータ14を回転させる場合、設定部34には、フィルタ本体2を巻取るときの巻取り長さや、巻取り動作を行う巻取時期(巻取り間隔)などが操作者によって入力される。巻取り長さは、フィルタケース3と巻取りケース4との間隔に対応した長さに設定される。巻取時期は、日付を指定して行うことも可能である。これらの巻取り長さや巻取時間は、記憶部41に記憶される。
この場合、演算部42は、設定部34に入力された巻取り長さに相当するモータ14の目標回転数を演算によって求める。
また、この場合、モータ駆動部43は、フォトインタラプタ15によって検出されたモータ14の回転数が上述した目標回転数と一致するようにモータ14を回転させる。このモータ駆動部43がモータ14を回転させる時期は、設定部34に入力された巻取時期である。
【0031】
モータ駆動部43が第2の駆動形態でモータ14を回転させる場合、設定部34には、フィルタ本体2を巻取るときのフィルタ本体2の移動速度である巻取速度が操作者によって入力される。巻取速度は、例えば1mm/時間や、5mm/日などに設定することができる。この巻取速度は、記憶部41に記憶される。
この場合、演算部42は、設定部34に入力された巻取速度に相当するモータ14の目標回転速度を演算によって求める。
【0032】
また、この場合、モータ駆動部43は、フォトインタラプタ15によって検出されたモータ14の回転数を用いてモータ14の実際の回転速度を求め、この実際の回転速度が上述した目標回転速度と一致するようにモータ14を回転させる。すなわち、モータ駆動部43は、第2の巻取り形態が採られる場合は、フィルタ本体2が巻取速度で移動してフィルタ巻取り軸6に巻取られるようにモータ14を回転させる。このモータ駆動部43は、電源部26から給電された状態でスタートスイッチ(図示せず)がオン操作されることによって動作を開始し、スタートスイッチがオフ操作されることによって停止する構成を採ることができる。
【0033】
すなわち、制御回路33は、次の3つの機能を有している。
第1の機能は、設定部34によって入力されたフィルタ本体2の巻取り長さや巻取速度を記憶する機能である。
第2の機能は、設定部34によって入力された巻取時期を記憶する機能である。
第3の機能は、巻取時期に、フィルタ本体2が巻取り長さだけ間欠的にフィルタ巻取り軸6に巻取られたり、フィルタ本体2が連続的にフィルタ巻取り軸6に巻取られるようにモータ14を回転させる機能である。
【0034】
表示部35は、詳細には図示してはいないが、LEDや液晶パネルを備えている。この表示部35は、モータ14の動作状態を表示する。
回転検出部36は、フォトインタラプタ15の信号を制御回路33に送る機能を有している。
ワイヤレス通信部37は、この巻取り式フィルタ装置1の情報をワイヤレス通信によって発信する機能と、設定信号を外部から受信する機能とを有している。
【0035】
この実施の形態による巻取り式フィルタ装置1のフィルタケース3と巻取りケース4は、互いに分離されている。このため、被取付部材7の大きさに合わせてフィルタケース3と巻取りケース4の間隔を変えることができる。このフィルタ装置1は、例えば
図6〜
図8に示すように被取付部材7に取付けられる。
【0036】
図6に示す被取付部材7は、通風装置の箱状の筐体44によって構成されている。この筐体44の一側面44aには、空気吸込口45が開口している。フィルタケース3と巻取りケース4は、空気吸込口45がフィルタ本体2によって覆われるように、筐体44の一側面44aに取付けられる。
【0037】
図7に示す通風装置の筐体44は、角部44bに空気吸込口45を有している。この空気吸込口45には、フィルタ本体2が吸い込まれることを防ぐためにガイド部材46が設けられている。この場合、フィルタケース3は、筐体44の角部44bを形成する第1の側面44cに取付けられる。巻取りケース4は、角部44bを形成する第2の側面44dに取付けられる。フィルタ本体2は、第1の側面44cと第2の側面44dとに沿うように屈曲させられ、折れ曲がりながら巻取られる。
【0038】
図8に示す通風装置の筐体44は、円柱状に形成されており、外周面44eに空気吸込口45を有している。この空気吸込口45には、フィルタ本体2が吸い込まれることを防ぐためにガイド部材46が設けられている。この場合、フィルタケース3と巻取りケース4は、外周面44eに取付られる。フィルタ本体2は、外周面44eに沿う形状に湾曲し、湾曲した状態で巻取られる。
【0039】
このように構成された巻取り式フィルタ装置1においては、フィルタ本体2が間欠的にあるいは連続して巻取られるようにモータ駆動部43がモータ14を回転させる。
したがって、この実施の形態によれば、フィルタ本体2の巻取りを電動で簡単に行うことが可能であり、しかも、取付場所の自由度が高い巻取り式フィルタ装置を提供することができる。
【0040】
この実施の形態による巻取り式フィルタ装置1は、フィルタ本体2を巻取る長さや巻取速度が入力される設定部34と、この設定部34に入力されたフィルタ本体2の巻取り長さや巻取速度を記憶する記憶部41とを備えている。モータ駆動部43は、フィルタ本体2が巻取り長さだけフィルタ巻取り軸6に巻取られたり、フィルタ本体2がフィルタ巻取り軸6に連続して巻取られるようにモータ14を回転させるものである。
この実施の形態においては、フィルタ本体2が自動で予め定めた長さあるいは連続して巻取られる。したがって、この実施の形態によれば、空気吸込口45の大きさに対応した巻取り長さでフィルタ本体2を巻取ることが可能になるから、使い勝手がよい巻取り式フィルタ装置を提供することができる。
【0041】
この実施の形態による設定部34は、フィルタ本体2を巻取る巻取時期が入力されるものである。また記憶部41は、設定部34によって入力された巻取時期を記憶するものである。モータ駆動部43は、巻取時期に、フィルタ本体2が巻取り長さだけフィルタ巻取り軸6に巻取られるようにモータ14を回転させるものである。
このため、この実施の形態によれば、フィルタ本体2を巻取る動作の自動化が図られた巻取り式フィルタ装置を提供することができる。
【0042】
モータ駆動部43が上述した第1の駆動形態でモータ14を回転させる場合は、フィルタ本体2が巻取時期に
図9(A),(B)または
図10(A),(B)に示すように移動する。
図9は、フィルタ本体2が巻取り長さL1ずつ間欠的に巻取られる場合を示し、
図10は、フィルタ本体が巻取り長さL2ずつ間欠的に巻取られる場合を示す。巻取り長さL1は、円形の空気吸込口45の穴径と略等しい。フィルタ本体2が巻取り長さL1ずつ巻取られることにより、フィルタ本体2に捕捉された油や埃などからなる汚れ部分51が一度に移動し、空気吸込口45がフィルタ本体2の未使用部分によって覆われる。
【0043】
図10に示す巻取り長さL2は、空気吸込口45の穴径より短く設定されている。
図10に示す場合は、フィルタ本体2が巻取り長さL2ずつ複数回にわたって巻取られることにより、フィルタ本体2における空気吸込口45の一端と対向する部位が空気吸込口45の他端と対向する位置に移動する。この場合、
図10(B)に示すように、フィルタ本体2は、少しずつ連続的に汚れるようになり、フィルタ本体2を無駄なく使用することが可能になる。
【0044】
モータ駆動部43が上述した第2の駆動形態でモータ14を回転させる場合は、フィルタ本体2が
図11(A),(B)に示すように連続して移動する。この場合、フィルタ本体2が少しずつ連続的に汚れ、汚れ部分51がフィルタ本体2の移動方向の下流側に延びるようになる。このため、この形態を採ることにより、フィルタ本体2を無駄なく使用することが可能になるとともに、絶えず新品の状態が少しずつ現れるために、安定した通風が得られる。
また、この形態を採ることにより、フィルタ本体2が停止しないため、フィルタ本体2に捕捉された油や埃など粘着性を有する物質によってフィルタ本体2が空気吸込口45の周辺に固着して貼り付いてしまうことがなくなる。
【0045】
このようにフィルタ本体2を巻取る動作が自動化されることにより、フィルタ本体2が汚れた状態で長期間にわたって使用されるようなことを防ぐことができる。すなわち、このフィルタ装置1が取付けられた通風装置の吸込負荷が常に低く抑えられる。このフィルタ装置1が例えば制御盤用クーラや油・水冷却装置、スポットクーラやエアコンの空気吸込口45に設けられる場合は、これらの装置の消費電力を低く抑えることが可能になるとともに、これらの装置が故障し難くなる。このフィルタ装置1が換気扇に設けられた場合は、換気扇が故障し難くなる。
【0046】
この実施の形態による巻取り式フィルタ装置1は、モータ14の回転数を検出するフォトインタラプタ15(センサ)を備えている。制御回路33は、フィルタ巻取り軸6に巻取られるフィルタ本体2の長さに相当するモータ14の目標回転数やフィルタ本体2の巻取速度に相当するモータ14の目標回転速度を演算によって求める演算部42を備えている。モータ駆動部43は、フォトインタラプタ15によって検出されたモータ14の回転数が目標回転数と一致するようにモータ14を回転させたり、モータ14の実際の回転速度が目標回転速度と一致するようにモータ14を回転させるものである。
【0047】
このため、この実施の形態によれば、巻取り長さや巻取速度の精度が高くなるから、フィルタ本体2を必要以上に巻取るような無駄を省くことができる。したがって、この実施の形態によれば、フィルタ本体2を無駄なく使用可能な巻取り式フィルタ装置を提供することができる。
【0048】
この実施の形態による電源部26は、巻取りケース4に装備された一次電池16を電源とするものである。
このため、この巻取り式フィルタ装置1を例えば通風装置に取付けるにあたって、この巻取り式フィルタ装置1に外部から給電するための電源ケーブルを配線する必要はない。したがって、この実施の形態によれば、コンパクトな巻取り式フィルタ装置を提供することができる。
【0049】
この実施の形態による電源部26は、電源としての発電機27と、発電機27の余剰電力を蓄える二次電池28とを備えることができるものである。電源が発電機27であると、電源が一次電池16である場合と較べて電池交換を行わなくてよい分、取り扱いが容易になる。したがって、このように電源として発電機27を使用する構成を採ることにより、交換する部品がフィルタ本体2のみとなるから、メンテナンスが容易な巻取り式フィルタ装置を提供することができる。
【0050】
駆動装置13のモータ14は、図示してはいないが、高精度の巻取り長さの算出が可能であるステッピングモータやサーボモータを使用することができる。また、フィルタ本体2を所定の長さだけ巻取るためには、等間隔にマーク(図示せず)が設けられたフィルタ本体を使用して行うことができる。この場合、マークが検出されたときにモータ14を停止させることにより、所定の長さだけフィルタ本体2を巻取ることが可能になる。マークを検出するためには、フォトインタラプタや、レーザー光を用いるセンサを使用したり、マークを撮像して画像処理により検出する構成を採ることができる。
【0051】
また、フィルタ本体2の巻取り動作を自動化するためには、フィルタ本体2の汚れによる変色を上記と同様の読み取り方法を用いて検出し、変色の度合いが閾値を越えたときに巻取り動作を行う構成を採ることができる。
【0052】
この実施の形態によるフィルタケース3と巻取りケース4は、形状が変わることがない箱状に形成されている。しかし、本発明は、このような限定にとらわれることはない。すなわち、フィルタケース3と巻取りケース4は、伸縮可能に形成することができる。この構成を採ることにより、幅が異なるフィルタ本体2を使用することができるから、空気吸込口45の縦と横の長さに制約を受け難い巻取り式フィルタ装置を提供することができる。