特許第6309541号(P6309541)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6309541
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】自動鉱物識別を実行する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/2251 20180101AFI20180402BHJP
   G01N 23/2252 20180101ALI20180402BHJP
   G01N 23/203 20060101ALI20180402BHJP
   G01N 23/2208 20180101ALI20180402BHJP
【FI】
   G01N23/225 310
   G01N23/225 312
   G01N23/203
   G01N23/22 332
【請求項の数】17
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-550194(P2015-550194)
(86)(22)【出願日】2013年12月26日
(65)【公表番号】特表2016-505848(P2016-505848A)
(43)【公表日】2016年2月25日
(86)【国際出願番号】IB2013061349
(87)【国際公開番号】WO2014102733
(87)【国際公開日】20140703
【審査請求日】2016年12月20日
(31)【優先権主張番号】13/730,358
(32)【優先日】2012年12月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501419107
【氏名又は名称】エフ・イ−・アイ・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ディー・スミス
(72)【発明者】
【氏名】カート・メーラー
【審査官】 藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−109171(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/084860(WO,A1)
【文献】 特開2011−154919(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0129066(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/2251
G01N 23/2252
G01N 23/203
G01N 23/2208
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子顕微鏡を使用して試料の鉱物内容を決定する方法であって、
試料の第1の関心領域に向かって電子ビームを導くことであり、前記第1の関心領域が未知の鉱物組成物を含むこと、
前記電子顕微鏡の後方散乱電子検出器と前記試料の前記第1の関心領域との間の距離である第1の作動距離を決定すること、
前記第1の作動距離と、検出された後方散乱電子に対して所望のグレースケール値を与える作動距離である所定の作動距離との差を補償すること
前記試料の前記第1の関心領域からの後方散乱電子を検出すること
前記試料の第2の関心領域に向かって電子ビームを導くことであり、前記第2の関心領域が未知の鉱物組成物を含むこと、
前記後方散乱電子検出器と前記試料の前記第2の関心領域との間の距離である第2の作動距離を決定すること、
前記第2の作動距離と前記第1の作動距離との差を補償すること、および
前記試料の前記第2の関心領域からの後方散乱電子を検出すること
を含む方法。
【請求項2】
前記第1の作動距離を決定することが、前記第1の関心領域の焦点深度を決定することをさらに含み、前記焦点深度が、前記電子顕微鏡のオートフォーカス機能を使用して決定される、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の作動距離を決定することが、前記第2の関心領域の焦点深度を決定することをさらに含み、前記焦点深度が、前記電子顕微鏡のオートフォーカス機能を使用して決定される、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の作動距離と所定の作動距離との差を補償することが、試料ステージおよび/または前記後方散乱電子検出器のz軸位置を、前記第1の作動距離と前記所定の作動距離との差が実質的になくなるように調整することをさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の作動距離と所定の作動距離との差を補償することが、
検出された後方散乱電子グレースケール・レベルに対する複数の作動距離変動の影響をモデル化すること、
前記第1の作動距離と前記所定の作動距離との差に基づいて後方散乱電子グレースケール・レベル調整を計算すること、および
前記検出された後方散乱電子グレースケール・レベルのうちの1つまたは複数の後方散乱電子グレースケール・レベルを、計算された前記後方散乱電子グレースケール・レベル調整に基づいて調整すること
をさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記検出された後方散乱電子グレースケール・レベルに基づいて前記第1の関心領域の前記鉱物組成物を決定することをさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の関心領域からの前記検出された後方散乱電子グレースケール・レベルに基づいて前記第1の関心領域の前記鉱物組成物を決定すること、および
第2の関心領域からの前記検出された後方散乱電子グレースケール・レベルに基づいて前記第2の関心領域の前記鉱物組成物を決定すること
をさらに含む、請求項1または3に記載の方法。
【請求項8】
前記電子ビームに反応して放出されたX線のエネルギーを検出すること、および
前記検出された後方散乱電子グレースケール・レベルおよび検出された前記X線エネルギーに基づいて前記第1の関心領域の前記鉱物組成物を決定すること
をさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
電子顕微鏡を使用して試料の鉱物内容を決定する方法であって、
試料の第1の関心領域に向かって電子ビームを導くことであり、前記第1の関心領域が未知の鉱物組成物を含むこと、
前記第1の関心領域の第1の焦点深度を決定することであり、前記第1の焦点深度が前記電子顕微鏡のオートフォーカス機能を使用して決定されること、
前記電子顕微鏡の後方散乱電子検出器と前記試料の前記第1の関心領域との間の距離である第1の作動距離を前記第1の焦点深度に基づいて決定すること、
前記試料の前記第1の関心領域からの後方散乱電子を検出すること、
試料の第2の関心領域に向かって電子ビームを導くことであり、前記第2の関心領域が未知の鉱物組成物を含むこと、
前記第2の関心領域の第2の焦点深度を決定することであり、前記第2の焦点深度が前記電子顕微鏡のオートフォーカス機能を使用して決定されること、
前記電子顕微鏡の前記後方散乱電子検出器と前記試料の前記第2の関心領域との間の距離である第2の作動距離を前記第2の焦点深度に基づいて決定すること、
試料ステージおよび/または前記後方散乱電子検出器のz軸位置を、前記第2の作動距離と前記第1の作動距離との差が実質的になくなるように調整すること、ならびに
前記試料の前記第2の関心領域からの後方散乱電子を検出すること
を含む方法。
【請求項10】
走査電子顕微鏡を使用して試料の鉱物内容を決定するシステムであって、
走査電子顕微鏡と、
1つまたは複数のエネルギー分散型X線検出器と、
前記走査電子顕微鏡の後方散乱電子検出器と、
システム・コントローラと
を備え、前記システム・コントローラが、コンピュータ処理装置および非一時的コンピュータ可読媒体を備え、前記非一時的コンピュータ可読媒体が、コンピュータ命令によってコード化されており、前記コンピュータ命令が、前記コンピュータ処理装置によって実行されたときに、
試料の第1の関心領域に向かって電子ビームを導くステップであり、前記第1の関心領域が未知の鉱物組成物を含む、ステップと、
前記後方散乱電子検出器と前記試料の前記第1の関心領域との間の距離である第1の作動距離を決定するステップと、
前記第1の作動距離と、検出された後方散乱電子に対して所望のグレースケール値を与える作動距離である所定の作動距離との差を補償するステップと、
前記試料の前記第1の関心領域からの後方散乱電子を検出するステップと
前記試料の第2の関心領域に向かって電子ビームを導くステップであり、前記第2の関心領域が未知の鉱物組成物を含む、ステップと、
前記後方散乱電子検出器と前記試料の前記第2の関心領域との間の距離である第2の作動距離を決定するステップと、
前記第2の作動距離と前記第1の作動距離との差を補償するステップと、
前記試料の前記第2の関心領域からの後方散乱電子を検出するステップと
を前記システム・コントローラに実行させる
システム。
【請求項11】
前記第1の作動距離を決定する前記コンピュータ命令が、前記第1の関心領域の焦点深度を決定するコンピュータ命令をさらに含み、前記焦点深度が、前記走査電子顕微鏡のオートフォーカス機能を使用して決定される、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記第2の作動距離を決定する前記コンピュータ命令が、前記第2の関心領域の焦点深度を決定するコンピュータ命令をさらに含み、前記焦点深度が、前記走査電子顕微鏡のオートフォーカス機能を使用して決定される、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記第1の作動距離と所定の作動距離との差を補償する前記コンピュータ命令が、試料ステージおよび/または前記後方散乱電子検出器のz軸位置を、前記第1の作動距離と前記所定の作動距離との差が実質的になくなるように調整するコンピュータ命令をさらに含む、請求項10から12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1の作動距離と所定の作動距離との差を補償する前記コンピュータ命令が、
検出された後方散乱電子グレースケール・レベルに対する複数の作動距離変動の影響をモデル化するコンピュータ命令と、
前記第1の作動距離と前記所定の作動距離との差に基づいて後方散乱電子グレースケール・レベル調整を計算するコンピュータ命令と、
前記検出された後方散乱電子グレースケール・レベルのうちの1つまたは複数の後方散乱電子グレースケール・レベルを、計算された前記後方散乱電子グレースケール・レベル調整に基づいて調整するコンピュータ命令と
をさらに含む、請求項10から12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記検出された後方散乱電子に基づいて前記第1の関心領域の前記鉱物組成物を決定するコンピュータ命令をさらに含む、請求項10から14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記第1の関心領域からの前記検出された後方散乱電子に基づいて前記第1の関心領域の前記鉱物組成物を決定するコンピュータ命令と、
第2の関心領域からの前記検出された後方散乱電子に基づいて前記第2の関心領域の前記鉱物組成物を決定するコンピュータ命令と
をさらに含む、請求項10または12に記載のシステム。
【請求項17】
前記電子ビームに反応して放出されたX線のエネルギーを検出するコンピュータ命令と、
前記検出された後方散乱電子グレースケール・レベルおよび検出された前記X線エネルギーに基づいて前記第1の関心領域の前記鉱物組成物を決定するコンピュータ命令と
をさらに含む、請求項10から16のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動鉱物識別(automated mineralogy)の分野に関し、詳細には、自動鉱物識別システム内での荷電粒子ビームの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
米オレゴン州HillsboroのFEI Companyから入手可能なQEMSCAN、MLAなどの鉱物分析システムは、鉱物試料を分析する目的に長年にわたって使用されている。鉱床中に存在する鉱物のタイプおよび相対量を決定するためには、エポキシ樹脂の中に小粒の形態の試料を固定し、真空室内に置く。試料に向かって電子ビームを導き、「エネルギー分散型X線分光法(energy dispersive x−ray spectroscopy)」または「EDS」と呼ばれるプロセスで、この電子ビームに反応した試料から到来したX線のエネルギーを測定し、それらのエネルギーをプロットしてヒストグラムを作成し、それによってスペクトルを形成する。測定されたスペクトルを、さまざまな元素の既知のスペクトルと比較して、どの元素および鉱物が、どんな割合で存在するのかを決定することができる。図1は、エポキシ樹脂に埋め込まれた小粒102を有する典型的な試料100を示す。
【0003】
X線スペクトルを集めるのにはかなりの時間がかかる。1次ビーム中の電子が試料に衝突すると、電子は、さまざまな機構によってエネルギーを失う。1つのエネルギー損失機構は、内殻電子に電子エネルギーを移すことを含む。その結果として、内殻電子がその原子から追い出されることがある。次いで、外殻電子が内殻に入り、特性X線が放出されることがある。特性X線のエネルギーは、内殻と外殻のエネルギーの差によって決定される。それらの殻のエネルギーはその元素の特性であるため、X線のエネルギーも、X線を放出した物質の特性である。異なるエネルギーにおけるX線の数をグラフ上にプロットすると、図2に示された黄鉄鉱のスペクトルなどの特性スペクトルが得られる。ピークは、X線のもととなった電子の対応する元の殻および最終的な殻によって命名される。図2は、硫黄のKαピーク、鉄のKαピークおよび鉄のKβピークを示している。
【0004】
電子ビームが試料表面に衝突したときには、特性X線に加えて他の放出が検出されうる。放出された背景または制動放射X線は、幅広い周波数範囲にわたって広がり、特性X線ピークを不明瞭にすることがある。1次電子ビームの衝突時に、2次電子、オージェ電子、弾性的および非弾性的に散乱した前方または後方散乱電子、ならびに光が表面から放出されることがあり、それらを使用して、表面の像を形成すること、または表面の他の特性を決定することができる。後方散乱電子は通常、固体検出器によって検出され、それぞれの後方散乱電子は、その後方散乱電子が半導体検出器内で多くの電子−正孔対を生み出すときに増幅される。この後方散乱電子検出器信号は、ビームが走査されたときに像を形成する目的に使用され、それぞれの像点の輝度は、1次ビームが試料を横切って移動したときに試料上の対応する点において検出された後方散乱電子の数によって決定される。
【0005】
電子の後方散乱は、表面の元素の原子番号と、表面、1次ビームおよび検出器間の幾何学的関係とに依存する。後方散乱電子像を得るためには、それぞれの点において、異なる特性を有する点間で合理的なコントラストを生み出すのに十分な数の電子だけを集めればよい。したがって、後方散乱電子像を得るのは、それぞれの点において完全なスペクトルを集めるのに十分な数のX線を得るよりもかなり短い時間ですむ。さらに、電子が後方散乱する確率は、電子が、特定の周波数の特性X線の放出を引き起こす確率よりも大きい。通常、後方散乱電子像を得るのは、単一のドエル点で分析可能なスペクトルを得るのに十分なX線を取得するよりも短時間ですむ。
【0006】
MLAシステムを操作する1つのモードでは、最初に、後方散乱電子検出器を使用して像を取得し、次いで、その像を処理して、そのコントラストから、同じ元素組成を有するように見える領域を識別する。次いで、そのビームを、識別されたそれぞれの領域の重心に、より長いドエル時間の間置いて、その領域を表わすX線スペクトルを集める。
【0007】
X線情報および後方散乱電子(BSE)情報を使用して異なる試料上で自動鉱物識別を実行するとき、類似の化学式を有する鉱物を識別するのに、BSEの正確さおよび再現性は決定的に重要である。例えば、鉄鉱石を分析するときには、赤鉄鉱(Fe2O3)および磁鉄鉱(Fe3O4)を正確に検出し、それらを識別することが重要である。磁鉄鉱と赤鉄鉱は光学顕微鏡法を使用することによって定性的に容易に区別することができるが、MLAなどの自動化された走査電子顕微鏡法/エネルギー分散型X線分光法(SEM−EDS)による定量的な特性評価は難しい。赤鉄鉱と磁鉄鉱は、化学組成およびBSE輝度が似ているためである。エネルギー範囲20eV、低X線カウントの標準ケイ素ドリフト検出器(silicon drift detector)(SDD)で集めたとき、これらの鉱物のX線スペクトルはほぼ同一である。図3は、磁鉄鉱(Fe3O4)の例示的なEDS X線スペクトル300を示す。図4は、赤鉄鉱(Fe2O3)の例示的なEDS X線スペクトル400を示す。磁鉄鉱スペクトル300と赤鉄鉱スペクトル400の比較は、2つのスペクトルが非常によく似ていることを示す。鉄特性302と鉄特性402はほぼ同一である。酸素特性304と酸素特性404もほぼ同一である。この類似性は、自動鉱物識別用途にとって赤鉄鉱と磁鉄鉱を識別することを難しくする。当技術分野で求められているのは、類似の化学式を有する鉱物を自動的に識別する改良された方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,084,618号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、試料材料中の未知の化合物を同定する改良された方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態は、電子顕微鏡を使用して試料の鉱物内容(mineral content)を決定する方法を対象とする。この方法は、試料の関心領域に向かって電子ビームを導くことを含み、関心領域は未知の鉱物組成物を含む。顕微鏡の後方散乱電子検出器と試料の関心領域との間の作動距離(working distance)を決定する。作動距離と、検出された後方散乱電子に対して所望のグレースケール値を与える作動距離である所定の作動距離との差を補償する。作動距離変動を補償する1つの方法は、顕微鏡のオートフォーカス機能を使用して作動距離を調整する方法である。次いで、試料の関心領域からの後方散乱電子を検出する。
【0011】
本発明の他の実施形態は、電子顕微鏡を使用して試料の鉱物内容を決定するシステムを対象とする。このシステムは、走査電子顕微鏡と、1つまたは複数のエネルギー分散型X線検出器と、1つまたは複数の後方散乱電子検出器と、システム・コントローラとを含む。システム・コントローラは、コンピュータ処理装置および非一時的コンピュータ可読媒体を含む。非一時的コンピュータ可読媒体は、コンピュータ命令によってコード化されており、コンピュータ命令は、コンピュータ処理装置によって実行されたときに、試料の未知の鉱物組成物を含む関心領域に向かって電子ビームを導くことを、システム・コントローラに実行させる。顕微鏡の後方散乱電子検出器と試料の関心領域との間の作動距離を決定する。作動距離と、検出された後方散乱電子に対して所望のグレースケール値を与える作動距離である所定の作動距離との差を補償する。作動距離変動を補償する1つの方法は、顕微鏡のオートフォーカス機能を使用して作動距離を調整する方法である。次いで、試料の関心領域からの後方散乱電子を検出する。
【0012】
以上では、以下の本発明の詳細な説明をより十分に理解できるように、本発明の特徴および技術上の利点をかなり大まかに概説した。以下では、本発明の追加の特徴および利点を説明する。開示される着想および特定の実施形態を、本発明の目的と同じ目的を達成するために他の構造体を変更しまたは設計するためのベースとして容易に利用することができることを当業者は理解すべきである。さらに、このような等価の構造体は、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨および範囲を逸脱しないことを当業者は理解すべきである。
【0013】
次に、本発明および本発明の利点のより完全な理解のため、添付図面に関して書かれた以下の説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】EDS分析システムで見るための典型的な試料片(plug)100を示す図である。
図2】鉄および硫黄を含む黄鉄鉱の例示的なEDS X線スペクトルを示す図である。
図3】磁鉄鉱(Fe)の例示的なEDS X線スペクトル300を示す図である。
図4】赤鉄鉱(Fe)の例示的なEDS X線スペクトル400を示す図である。
図5】本発明の実施形態を実施するのに適したX線検出器540および後方散乱電子検出器542を備える走査電子ビーム・システム500を示す図である。
図6】自動鉱物識別システムを操作する本発明の1つまたは複数の実施形態に基づく方法の流れ図である。
図7】自動鉱物識別システムを操作する本発明の1つまたは複数の実施形態に基づく代替方法の流れ図である。
図8】標準BSE較正を反映した区分化BSEヒストグラム(segmented BSE histogram)を示す図である。
図9】拡張された(enhanced)または延伸された(stretched)BSE較正を反映した区分化BSEヒストグラムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態は、走査電子顕微鏡(SEM)を自動的に構成する方法を含む。
【0016】
MLA法では、最初に、オンライン区分化動作中の鉱物相のBSEグレースケール・レベルによって鉱物相を区別し、次いで、鉱物相のエネルギー分散型X線(EDX)スペクトルによって鉱物相を区別する。類似のBSE値に関連づけられた鉱物は単一の相に区分される。BSE鉱物分析の結果は、試料中の鉱物相および境界を決定する。この像区分化法は、BSE検出器が、試料中のさまざまな化合物の領域の輪郭を描くことを可能にし、これによって、化合物を分離し、試料の全体的な内容を決定する容易な手段が提供される。
【0017】
図8は、標準BSE較正を反映した区分化BSEヒストグラムを示す。標準BSE較正は、封入剤(樹脂)の後方散乱輝度値が15未満に維持され、金の後方散乱輝度値が250に維持されるように設定される。この設定は、一般的な全ての鉱物のBSE範囲をカバーする。酸化鉄のBSEグレースケール・レベルは通常115から120の範囲にある。磁鉄鉱(Fe3O4)と赤鉄鉱(Fe2O3)を判別することは難しい。これらの鉱物はともに、115から120の間のおよそ4つまたは5つのBSEグレースケール・レベルからなる狭い帯域内に現れるためである。拡張されたまたは延伸されたBSE較正は、これらの酸化鉄を判別するのに役立つ。
【0018】
図9は、拡張されたまたは延伸されたBSE較正を反映した区分化BSEヒストグラムを示す。コントラストおよび輝度を増大させて、封入剤の後方散乱輝度を0付近まで延ばし、黄銅鉱の後方散乱輝度を250まで延ばすと、195から215の範囲に酸化鉄の双峰ピークが出現する。この双峰ピークが、赤鉄鉱(200)および磁鉄鉱(208)を表す2つの峰に分けられることがある。
【0019】
所与の一組のビーム試料電流設定、コントラスト設定および輝度設定について、BSEグレースケール値は、試料表面とBSE検出器の間の距離(「作動距離」)の変化によって最も影響を受ける。したがって、図9に示された双峰ピークを得るためには、測定の全体にわたって作動距離が終始一貫した値に維持されなければならない。本発明の実施形態は、SEMの「オート・フォーカス」機能をそれぞれの試料ブロックにおいて利用して、焦点深度、したがって試料の表面とBSE検出器の間のその時点の物理的な作動距離を決定し、構成された物理的な作動距離に試料を置くようにz軸を調整し、焦点深度をその同じ距離に設定する。電子顕微鏡用の例示的なオートフォーカス・システムは例えば米国特許第5,084,618号明細書に記載されている。オートフォーカスを使用して作動距離を決定し作動距離を調整することによって、物理的な作動距離は、測定の全体にわたって終始一貫した値に保たれる。この先行技術では、オートフォーカスを使用して、電子顕微鏡像を焦点が合った状態に保つ。本発明の実施形態では、オートフォーカスが、作動距離を許容範囲内に保つ目的に使用される。すなわち、作動距離が許容範囲内にない場合には、電子顕微鏡像の焦点はもはや合ってはいないが、作動距離が許容範囲内にあるように、試料を移動させる。作動距離が許容範囲内に入った後に像の焦点を合わせることができる。
【0020】
代替実施形態では、レーザ干渉計、静電容量センサなど、作動距離を決定する他の手段を使用することができる。他の代替実施形態では、結果として生じるBSEレベルに対する物理的な作動距離変動の影響をモデル化し、オートフォーカス手段または他の手段を使用してその時点の物理的な作動距離を決定し、次いでBSE調整を計算する。この実施形態は、z軸調整能力を持たないシステムに対して有用である。
【0021】
例えば、試料ホルダは、14個以上の「ホッケー・パック」型の試料を有することができる。それぞれの試料の中心を測定して試料の高さを決定し、試料の表面とBSE検出器の間の作動距離を決定する。6インチのステージでは、これらの測定値が、試料間で500マイクロメートル以上異なることがある。わずか50マイクロメートルの作動距離または焦点距離が、BSE分析の結果に1グレイ・レベルの影響を及ぼすことがあるため、試料表面と後方散乱電子検出器の間の作動距離を一定に維持することは非常に重要になる。試料のこの測定値は、試料の欠陥のため潜在的に500マイクロメートル以上離れているため、オート・フォーカス機能は、開示された装置および方法にとって決定的であることが分かる。このオート・フォーカス機能は、あらゆる試料点が有するz軸上の正確な高さを決定し、ステージまたは試料の高さを調整して、終始一貫した作動距離および焦点距離を保証する。
【0022】
図5は、本発明の実施形態を実施するのに適したX線検出器540および後方散乱電子検出器542を備える走査電子ビーム・システム500を示す。走査電子顕微鏡541および電源および制御ユニット545がシステム500に備わっている。陰極553と陽極554の間に電圧を印加することによって、陰極553から電子ビーム532が放出される。電子ビーム532は、集光レンズ556および対物レンズ558によって微小なスポットに集束する。電子ビーム532は、偏向コイル560によって試験体上で2次元的に走査される。集光レンズ556、対物レンズ558および偏向コイル560の動作は電源および制御ユニット545によって制御される。走査電子ビーム・システム500はさらにオート・フォーカス・システム560を含む。オート・フォーカス・システム560は、電子ビーム532の焦点深度を決定し、上記レンズおよび偏向コイルを、電子ビームが所望の焦点を結ぶように調整する。
【0023】
システム・コントローラ533が、走査電子ビーム・システム500のさまざまな部分の動作を制御する。真空室510は、真空コントローラ532の制御の下、イオン・ポンプ568および機械式ポンピング・システム569によって排気される。
【0024】
電子ビーム532を、下真空室510内の可動式X−Yステージ504上にある試料502上に焦束させることができる。電子ビーム中の電子が試料502に当たると試料はX線を放出する。このX線のエネルギーは試料中の元素に相関した。電子ビームの入射領域の近くで、試料の元素組成に固有のエネルギーを有するX線572が生み出される。放出されたX線は、X線検出器540、好ましくはケイ素ドリフト検出器型のエネルギー分散型検出器によって集められるが、検出されたX線のエネルギーに比例した振幅を有する信号を生成する他のタイプの検出器を使用することもできる。後方散乱電子は、後方散乱電子検出器542、好ましくは区分化BSE検出器によって検出される。
【0025】
検出器540からの出力は、処理装置520によって増幅され、分類される。処理装置520は、指定された時間中に検出されたX線の総数をカウントし、それらを、選択されたエネルギーおよびエネルギー分解能ならびに好ましくは1チャンネル当たり10〜20eVの間のチャンネル幅(エネルギー範囲)で分類する。処理装置520は、コンピュータ処理装置、オペレータ・インタフェース手段(キーボード、コンピュータ・マウスなど)、データおよび実行可能命令を記憶するプログラム記憶装置522、データの入出力用のインタフェース手段、実行可能なコンピュータ・プログラム・コードとして具体化された実行可能なソフトウェア命令、ならびに多変量スペクトル解析の結果をビデオ回路592を経由して表示する表示装置544を備えることができる。
【0026】
処理装置520は、標準的な研究室パーソナル・コンピュータの一部とすることができ、通常は、少なくともいくつかの形態のコンピュータ可読媒体に結合される。揮発性と不揮発性の両方の媒体および取外し可能な媒体と取外し不能の媒体の両方の媒体を含むコンピュータ可読媒体は、処理装置520がアクセスすることができる使用可能な任意の媒体とすることができる。例として、コンピュータ可読媒体は、限定はされないが、コンピュータ記憶媒体および通信媒体を含む。コンピュータ記憶媒体には、コンピュータ可読の命令、データ構造、プログラム・モジュール、他のデータなどの情報を記憶する任意の方法または技術で実現された揮発性および不揮発性ならびに取外し可能および取外し不能の媒体が含まれる。コンピュータ記憶媒体には例えば、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュ・メモリもしくは他の記憶装置技術、CD−ROM、ディジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)もしくは他の光ディスク記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置もしくは他の磁気記憶デバイス、または所望の情報を記憶する目的に使用することができ、処理装置520がアクセスすることができる他の媒体が含まれる。
【0027】
プログラム記憶装置522は、取外し可能および/または取外し不能で揮発性および/または不揮発性の記憶装置の形態のコンピュータ記憶媒体を含むことができ、コンピュータ可読の命令、データ構造、プログラム・モジュールおよび他のデータの記憶を提供することができる。一般に、処理装置520は、コンピュータのさまざまなコンピュータ可読記憶媒体にさまざまな時点で記憶された命令によってプログラムされる。プログラムおよびオペレーティング・システムは通常、例えばフロッピー(登録商標)・ディスクまたはCD−ROMに格納されて配布される。プログラムおよびオペレーティング・システムは、それらの媒体から、コンピュータの補助記憶装置にインストールまたはロードされる。実行時に、それらのプログラムおよびオペレーティング・システムは、コンピュータの電子的な主記憶装置に少なくとも部分的にロードされる。本明細書に記載された発明は、マイクロプロセッサまたは他のデータ処理装置と連携して後述する諸ステップを実行する命令またはプログラムを含む、これらのタイプのコンピュータ可読記憶媒体およびその他のさまざまなタイプのコンピュータ可読記憶媒体を含む。本発明はさらに、本明細書に記載された方法および技法に従ってプログラムされたコンピュータそれ自体を含む。
【0028】
上述の通り得たX線スペクトルを、測定スペクトル記憶部523などの記憶装置522の一部分に記憶することができる。データ・テンプレート記憶部524は、元素の既知のスペクトルなどのデータ・テンプレート、いくつかの実施形態では材料の既知の回折パターンなどのデータ・テンプレートを記憶する。重み付け係数記憶部525は、それぞれのデータ・テンプレートに対する重み付け係数を記憶する。重み付け係数は、そのデータ・テンプレートと結合して、測定されたスペクトルに近い計算されたスペクトルを生成する。重み付け係数は、そのデータ・テンプレートに対応する元素の試料中の存在度(abundance)に相関する。処理装置520は、前述の方法を使用して、データ・テンプレートと重み付け係数の結合と測定されたパターンとの間の差を表す誤差値を最小化する。
【0029】
図6は、自動鉱物識別システムを操作する本発明の1つまたは複数の実施形態に基づく方法の流れ図を示す。図6に示された方法は、試料502と後方散乱電子検出器542の間の作動距離を調整する手段を有するシステムに対して特に適する。例えば、試料ステージ504を、後方散乱電子検出器542に近づく方向または後方散乱電子検出器542から遠ざかる方向に試料ステージ504を平行移動させるようにz軸に沿って調整可能な試料ステージとすることができる。この方法は開始ブロック602から始まる。試料表面の関心領域に向かって電子ビーム532を導く(ステップ604)。システム・コントローラ533は、電子ビーム532の試料ビーム電流を設定および測定し、コントラスト・レベルおよび輝度レベルを2種類の標準材料を使用して自動的に設定することによって、SEM541を自動的に構成することができる。例えば、鉄鉱石を分析するときには、黄銅鉱および石英を標準材料として使用することができる。
【0030】
次いで、オート・フォーカス・システム560を使用して、試料502と後方散乱電子検出器542の間の作動距離を決定する(ステップ606)。このシステムは次いで、その作動距離が所定の許容範囲内にあるかどうかを判定する(ステップ608)。この所定の許容範囲は、所与の一組のビーム試料電流設定、コントラスト設定および輝度設定が、同定中の元素または化合物を最もよく判別するBSEグレースケール値を生み出す、狭い作動距離範囲である。作動距離が所定の許容範囲内にある場合、システムは、後方散乱電子検出を続ける(ステップ610)。作動距離が所定の許容範囲内にない場合、システムは、試料502と後方散乱電子検出器542の間の作動距離を、作動距離が所定の許容範囲内に入るように調整する(ステップ612)。一実施形態では、試料ステージ504をz軸に沿って平行移動させて、試料502を、後方散乱電子検出器542に近づく方向または後方散乱電子検出器542から遠ざかる方向に移動させる。作動距離が所定の許容範囲よりも短い場合には、試料ステージ504を、後方散乱電子検出器542から遠ざかる方向にz軸に沿って平行移動させ、それによって作動距離が所定の許容範囲内に入るまで作動距離を増大させる。作動距離が所定の許容範囲よりも長い場合には、試料ステージ504を、後方散乱電子検出器542に向かってz軸に沿って平行移動させ、それによって作動距離が所定の許容範囲内に入るまで作動距離を低減させる。代替実施形態では、後方散乱電子検出器542をz軸に沿って平行移動させて、作動距離が所定の許容範囲内に入るようにする。作動距離が所定の許容範囲内に入った後、システムは、後方散乱電子検出を続ける(ステップ610)。このプロセスは停止ブロック614で終了となる。
【0031】
図7は、自動鉱物識別システムを操作する本発明の1つまたは複数の実施形態に基づく代替方法の流れ図を示す。図7に示された方法は、試料502と後方散乱電子検出器542の間の作動距離を調整する手段を持たないシステムに対して特に適する。例えば、試料ステージ504は、xおよびy方向にだけ平行移動し、z軸方向には固定され、後方散乱電子検出器542に近づく方向または後方散乱電子検出器542から遠ざかる方向に試料ステージ504を平行移動させることはできない。この方法は開始ブロック702から始まる。試料表面の関心領域に向かって電子ビーム532を導く(ステップ704)。システム・コントローラ533は、電子ビーム532の試料ビーム電流を設定および測定し、コントラスト・レベルおよび輝度レベルを2種類の標準材料を使用して自動的に設定することによって、SEM541を自動的に構成することができる。例えば、鉄鉱石を分析するときには、黄銅鉱および石英を標準材料として使用することができる。
【0032】
次いで、オート・フォーカス・システム560を使用して、試料502と後方散乱電子検出器542の間の作動距離を決定する(ステップ706)。このシステムは次いで、その作動距離が所定の許容範囲内にあるかどうかを判定する(ステップ708)。この所定の許容範囲は、同定中の元素または化合物を最もよく判別するBSEグレースケール値を生み出す狭い作動距離範囲である。作動距離が所定の許容範囲内にある場合、システムは、後方散乱電子検出を続ける(ステップ710)。作動距離が所定の許容範囲内にない場合、システムは、モデル化された作動距離変動および測定された作動距離に基づいてBSE調整レベルを計算する(ステップ712)。システムは、後方散乱電子検出を続け(ステップ710)、計算されたBSE調整レベルを使用して、検出されたBSEレベルを調整する(ステップ714)。このプロセスは停止ブロック716で終了となる。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態によれば、電子顕微鏡を使用して試料の鉱物内容を決定する方法は、試料の第1の関心領域に向かって電子ビームを導くことであり、第1の関心領域が未知の鉱物組成物を含むこと、顕微鏡の後方散乱電子検出器と試料の第1の関心領域との間の距離である第1の作動距離を決定すること、第1の作動距離と、検出された後方散乱電子に対して所望のグレースケール値を与える作動距離である所定の作動距離との差を補償すること、および試料の第1の関心領域からの後方散乱電子を検出することを含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、この方法が、試料の第2の関心領域に向かって電子ビームを導くことであり、第2の関心領域が未知の鉱物組成物を含むこと、後方散乱電子検出器と試料の第2の関心領域との間の距離である第2の作動距離を決定すること、第2の作動距離と第1の作動距離との差を補償すること、および試料の第2の関心領域からの後方散乱電子を検出することをさらに含む。いくつかの実施形態では、第2の作動距離と第1の作動距離との差を補償することが、検出された後方散乱電子レベルに対する複数の作動距離変動の影響をモデル化すること、第2の作動距離と第1の作動距離との差に基づいて後方散乱電子レベル調整を計算すること、および検出された後方散乱電子レベルのうちの1つまたは複数の後方散乱電子レベルを、計算された後方散乱電子レベル調整に基づいて調整することをさらに含む。いくつかの実施形態では、この方法が、第1の関心領域からの検出された後方散乱電子レベルに基づいて第1の関心領域の鉱物組成物を決定すること、および第2の関心領域からの検出された後方散乱電子レベルに基づいて第2の関心領域の鉱物組成物を決定することを含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、第1の作動距離を決定することが、第1の関心領域の焦点深度を決定することをさらに含み、この焦点深度が、顕微鏡のオートフォーカス機能を使用して決定される。いくつかの実施形態では、第2の作動距離を決定することが、第2の関心領域の焦点深度を決定することをさらに含み、この焦点深度が、顕微鏡のオートフォーカス機能を使用して決定される。
【0036】
いくつかの実施形態では、第1の作動距離と所定の作動距離との差を補償することが、試料ステージおよび/または後方散乱電子検出器のz軸位置を、第1の作動距離と所定の作動距離との差が実質的になくなるように調整することをさらに含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、第1の作動距離と所定の作動距離との差を補償することが、検出された後方散乱電子レベルに対する複数の作動距離変動の影響をモデル化すること、第1の作動距離と所定の作動距離との差に基づいて後方散乱電子レベル調整を計算すること、および検出された後方散乱電子レベルのうちの1つまたは複数の後方散乱電子レベルを、計算された後方散乱電子レベル調整に基づいて調整することをさらに含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、この方法が、検出された後方散乱電子レベルに基づいて第1の関心領域の鉱物組成物を決定することをさらに含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、この方法が、電子ビームに反応して放出されたX線のエネルギーを検出すること、および検出された後方散乱電子レベルおよび検出されたX線エネルギーに基づいて第1の関心領域の鉱物組成物を決定することをさらに含む。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態によれば、電子顕微鏡を使用して試料の鉱物内容を決定する方法は、試料の第1の関心領域に向かって電子ビームを導くことであり、第1の関心領域が未知の鉱物組成物を含むこと、第1の関心領域の第1の焦点深度を決定することであり、第1の焦点深度が顕微鏡のオートフォーカス機能を使用して決定されること、顕微鏡の後方散乱電子検出器と試料の第1の関心領域との間の距離である第1の作動距離を第1の焦点深度に基づいて決定すること、試料の第1の関心領域からの後方散乱電子を検出すること、試料の第2の関心領域に向かって電子ビームを導くことであり、第2の関心領域が未知の鉱物組成物を含むこと、第2の関心領域の第2の焦点深度を決定することであり、第2の焦点深度が顕微鏡のオートフォーカス機能を使用して決定されること、顕微鏡の後方散乱電子検出器と試料の第2の関心領域との間の距離である第2の作動距離を第2の焦点深度に基づいて決定すること、試料ステージおよび/または後方散乱電子検出器のz軸位置を、第2の作動距離と第1の作動距離との差が実質的になくなるように調整すること、ならびに試料の第2の関心領域からの後方散乱電子を検出することを含む。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態によれば、電子顕微鏡を使用して試料の鉱物内容を決定するシステムは、走査電子顕微鏡と、1つまたは複数のエネルギー分散型X線検出器と、1つまたは複数の後方散乱電子検出器と、システム・コントローラとを備え、システム・コントローラは、コンピュータ処理装置および非一時的コンピュータ可読媒体を備え、非一時的コンピュータ可読媒体は、コンピュータ命令によってコード化されており、コンピュータ命令は、コンピュータ処理装置によって実行されたときに、試料の第1の関心領域に向かって電子ビームを導くステップであり、第1の関心領域が未知の鉱物組成物を含む、ステップと、顕微鏡の後方散乱電子検出器と試料の第1の関心領域との間の距離である第1の作動距離を決定するステップと、第1の作動距離と、検出された後方散乱電子に対して所望のグレースケール値を与える作動距離である所定の作動距離との差を補償するステップと、試料の第1の関心領域からの後方散乱電子を検出するステップとをシステム・コントローラに実行させる。
【0042】
いくつかの実施形態では、このシステムが、試料の第2の関心領域に向かって電子ビームを導くコンピュータ命令であり、第2の関心領域が未知の鉱物組成物を含む、コンピュータ命令と、後方散乱電子検出器と試料の第2の関心領域との間の距離である第2の作動距離を決定するコンピュータ命令と、第2の作動距離と第1の作動距離との差を補償するコンピュータ命令と、試料の第2の関心領域からの後方散乱電子を検出するコンピュータ命令とをさらに含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、第2の作動距離を決定するコンピュータ命令が、第2の関心領域の焦点深度を決定するコンピュータ命令をさらに含み、焦点深度が、顕微鏡のオートフォーカス機能を使用して決定される。いくつかの実施形態では、第2の作動距離と第1の作動距離との差を補償するコンピュータ命令が、検出された後方散乱電子レベルに対する複数の作動距離変動の影響をモデル化するコンピュータ命令と、第2の作動距離と第1の作動距離との差に基づいて後方散乱電子レベル調整を計算するコンピュータ命令と、検出された後方散乱電子レベルのうちの1つまたは複数の後方散乱電子レベルを、計算された後方散乱電子レベル調整に基づいて調整するコンピュータ命令とをさらに含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、このシステムが、第1の関心領域からの検出された後方散乱電子に基づいて第1の関心領域の鉱物組成物を決定するコンピュータ命令と、第2の関心領域からの検出された後方散乱電子に基づいて第2の関心領域の鉱物組成物を決定するコンピュータ命令とをさらに含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、第1の作動距離を決定するコンピュータ命令が、第1の関心領域の焦点深度を決定するコンピュータ命令をさらに含み、焦点深度が、顕微鏡のオートフォーカス機能を使用して決定される。いくつかの実施形態では、第1の作動距離と所定の作動距離との差を補償するコンピュータ命令が、試料ステージおよび/または後方散乱電子検出器のz軸位置を、第1の作動距離と所定の作動距離との差が実質的になくなるように調整するコンピュータ命令をさらに含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、第1の作動距離と所定の作動距離との差を補償するコンピュータ命令が、検出された後方散乱電子レベルに対する複数の作動距離変動の影響をモデル化するコンピュータ命令と、第1の作動距離と所定の作動距離との差に基づいて後方散乱電子レベル調整を計算するコンピュータ命令と、検出された後方散乱電子レベルのうちの1つまたは複数の後方散乱電子レベルを、計算された後方散乱電子レベル調整に基づいて調整するコンピュータ命令とをさらに含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、このシステムが、検出された後方散乱電子に基づいて第1の関心領域の鉱物組成物を決定するコンピュータ命令をさらに含む。いくつかの実施形態では、このシステムが、電子ビームに反応して放出されたX線のエネルギーを検出するコンピュータ命令と、検出された後方散乱電子レベルおよび検出されたX線エネルギーに基づいて第1の関心領域の鉱物組成物を決定するコンピュータ命令とをさらに含む。
【0048】
本発明および本発明の利点を詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲によって定義された本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に、さまざまな変更、置換および改変を加えることができることを理解すべきである。さらに、本出願の範囲が、本明細書に記載されたプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法およびステップの特定の実施形態に限定されることは意図されていない。当業者なら本発明の開示から容易に理解するように、本明細書に記載された対応する実施形態と実質的に同じ機能を実行し、または実質的に同じ結果を達成する既存のまたは今後開発されるプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法またはステップを、本発明に従って利用することができる。したがって、添付の特許請求の範囲は、その範囲内に、このようなプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法またはステップを含むことが意図されている。
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