(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に、鉄道車両が直線区間等を高速で走行する際には、車輪を支持する軸箱と台車枠とを高剛性で連結支持することによって、走行安定性を維持する必要がある。一方、鉄道車両が曲線区間等を走行する際には、車輪を支持する軸箱と台車枠とを柔らかめに連結支持することによって、快適な乗り心地を維持しつつ、軌道等に対する負荷を低減した状態で走行する必要がある。
【0003】
そのため、鉄道車両では、軸箱と台車枠とを連結支持する軸箱支持装置において、直線高速走行時と曲線走行時とで支持剛性の最適値が異なることを踏まえて、その支持剛性のレベルを切り替え可能にした軸箱支持装置が、例えば、特許文献1、2に開示されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、車体前後方向に延びる支持腕を有する軸箱の上部と台車枠のバネ帽との間にコイルバネを配置し、支持腕を円筒積層ゴムを介して台車枠に支持させた鉄道車両用の軸箱支持装置において、コイルバネ内に軸箱を支持する円筒積層ゴムを配設したこと、また、前記円筒積層ゴムの少なくとも一方が剛性切り換え可能であることを特徴とする軸箱支持装置が開示されている。
【0005】
具体的には、
図14〜
図16に示すように、特許文献1の軸箱支持装置100は、側梁101(又は台車枠)の端部に設けられるバネ帽102と、該バネ帽102と軸箱103との間に配置されるコイルバネ104と、該コイルバネ104内に配設される軸箱上部円筒積層ゴム105と、軸箱103の支持腕106と側梁101との間に配置される軸箱側部円筒積層ゴム107とを有している。軸箱103の支持腕106は、先端に軸箱側部円筒積層ゴム107の装着孔106aを形成している。この装着孔106aに装着される軸箱側部円筒積層ゴム107は、径寸法の異なる複数枚の積層板間にゴム板を積層するとともに、中央部に支持孔107aを形成し、さらに、積層板とゴム板を積層した部分に粘性流体の液室107b,107bを形成し、両液室107b,107bを絞り弁108と電磁弁109とを並列に備えた流路110で連通し、電磁弁109の作動で軸箱側部円筒積層ゴム107の剛性を切り換え可能としている。
【0006】
すなわち、
図15に示されるように、軸箱側部円筒積層ゴム107の電磁弁109を閉じた状態では、両液室107b,107bの粘性流体の移動が絞り弁108によって制限されるから、軸箱側部円筒積層ゴム107の動的な剛性が高くなり、超高速走行時の走行安定性を向上させることができる。さらに、
図16に示されるように、電磁弁109を励磁して開いた状態では、両液室107b,107bの粘性流体は、電磁弁109を介して連通するから、軸箱側部円筒積層ゴム107の剛性が低くなり、在来線のような曲線通過性能を向上させることができる。
【0007】
また、特許文献2には、軸箱と台車枠との間を支持する鉄道車両用軸箱支持装置において、軸箱と台車枠との間を、金属製スプリングからなる軸ばねを介して上下方向に弾性支持するとともに、軸箱に装着された軸ゴム収納部と、台車枠に対し、下方に延びる内筒との間に、上下方向に軸ゴムを配設して水平方向に弾性支持し、内筒の水平方向の移動を台車枠の側から規制する規制部材を有する切替軸箱支持装置を具備し、高速走行時に規制部材により内筒の水平方向の移動を規制し、水平支持剛性を剛支持状態にするとともに、曲線走行時に規制部材を解除して、水平支持剛性を柔支持状態に切り替える制御装置を設けたことを特徴とする鉄道車両用軸箱支持装置が開示されている。
【0008】
具体的には、
図17、
図18に示すように、特許文献2の軸箱支持装置200は、切替軸箱支持装置201と固定軸箱支持装置202から構成され、両支持装置201、202は、台車枠203の側梁204と、軸箱205の軸受け部下方から側梁204と平行に、鉄道車両の前後方向に延びる延出部との間に結合される。
【0009】
固定軸箱支持装置202は、軸ばね206、軸ゴム207、内筒208、下端側軸ばね座209により構成され、軸ばね206は、コイルばね等の金属製スプリングにより構成され、軸箱205と側梁204を連結し、主として上下方向の弾性支持を担うものである。軸ゴム207は、円筒積層ゴム等により構成され、内筒208に外嵌され、下端側軸ばね座209に一体に形成された軸ゴム収納部に収納されている。
【0010】
また、切替軸箱支持装置201は、軸ばね部210、切替装置211から構成され、軸ばね部210は、軸ばね212、軸ゴム213、内筒214、下端側軸ばね座215、上端側軸ばね座216、そして、規制部材としてのロッド217とから構成される。軸ばね212は、固定軸箱支持装置202の軸ばね206と同様、コイルばね等の金属製スプリングにより構成され、軸箱205と側梁204との間を、下端側軸ばね座215と上端側軸ばね座216を介して連結し、主として上下方向に弾性支持する。軸ゴム213は、固定軸箱支持装置202の軸ゴム207と同様、円筒積層ゴム等から構成され、内筒214に外嵌され、下端側軸ばね座215に一体に形成された軸ゴム収納部に収納されている。
【0011】
また、切替装置211は、アクチュエータ218、ロッド217、戻しばね219などから構成され、アクチュエータ218を作動させ、ロッド217が下降したとき、その下端が、軸ばね部210の内筒214の上端側に設けられた、テーパー孔220に進入して嵌合するように、テーパー状の形状をしている。アクチュエータ218は、制御装置(図示せず)に接続されており、制御装置からの指令により作動して、ロッド217を上方に引き上げるものである。アクチュエータ218が作動していない状態では、ロッド217は戻しばね219により下方に押圧されて、その下端がテーパー孔220に嵌合した状態で静止しており、アクチュエータ218を駆動した場合は、戻しばね219に抗して、ロッド217を上方に引き上げる構成としている。
【0012】
そして、高速走行時には、
図17に示すように、軸箱支持装置200の制御装置は、切替装置211のアクチュエータ218を非作動として、戻しばね219によりロッド217を下方に押圧し、内筒214のテーパー孔220にロッド217の先端を挿入する。この状態ではロッド217と内筒214は結合状態となり、切替軸箱支持装置201において、軸箱205から側梁204に作用する水平方向の力は、下端側軸ばね座215、軸ゴム213、内筒214、ロッド217を介して、軸箱205から側梁204へ伝達される。この状態では、内筒214の上端がロッド217により拘束されているため、切替軸箱支持装置201の軸ゴム213が、固定軸箱支持装置202の軸ゴム207と同様に水平支持剛性を発揮する。その結果、高速走行時は、固定軸箱支持装置202の水平支持剛性と切替軸箱支持装置201の水平支持剛性が合計されて、軸箱支持全体の水平支持剛性を形成するため、軸箱205と側梁204を水平方向に高剛性で支持する剛支持状態となり、高速走行安定性を高めることができる。
【0013】
一方、曲線走行時には、
図18に示すように、制御装置が切替装置211のアクチュエータ218を作動させ、ロッド217を上方に駆動し、内筒214のテーパー孔220から離隔した状態とする。この状態では、ロッド217と内筒214の間の拘束が解除され、軸箱205から側梁204に作用する水平方向の力が、軸ゴム213を介して伝達されない状態となる。この状態では、主として、固定軸箱支持装置202の軸ゴム207単独で軸箱支持の水平支持剛性が形成されるため、軸箱205と側梁204を水平方向に柔らかく支持する「柔支持状態」となる。これにより、軸箱205は台車枠203に対してヨー方向に円滑に変位するので、曲線走行時の横圧が効果的に低減され、車輪やレールの摩耗、車輪レール間のきしみ等による振動・騒音の発生を抑制することができる。つまり、高速走行時には剛支持状態とすることで走行安定性を向上させるとともに、曲線走行時には柔支持状態に切り替えることで、横圧を効果的に低減し、曲線通過性能を向上することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、特許文献1の軸箱支持装置100では、バネ帽102と軸箱103との間に配置されるコイルバネ104と、該コイルバネ104内に配設される軸箱上部円筒積層ゴム105とが、上部コイルバネ座111を介して直接的にバネ帽102に連結されているので、レール継ぎ目や分岐通過時等における衝撃が、車輪112を支持する軸箱103からコイルバネ104及び軸箱上部円筒積層ゴム105に伝わり、コイルバネ104及び軸箱上部円筒積層ゴム105の振動が、上部コイルバネ座111を介して直接的にバネ帽102に伝わることになる。そして、バネ帽102に伝わった振動は、側梁101から車体に伝達されて、乗り心地の低下に影響すると云う問題があった。
【0016】
また、特許文献1の軸箱支持装置100では、円筒積層ゴム(軸箱上部円筒積層ゴム105又は軸箱側部円筒積層ゴム107)において、電磁弁109の作動で円筒積層ゴムの剛性を切り換え可能とした構造であるため、円筒積層ゴムの剛性を低レベルに切り換えた場合、レール継ぎ目や分岐通過時等における衝撃を受けた時に、剛性を低レベルに切り換えた円筒積層ゴムが左右方向に大きく撓み、軸箱支持装置100が必要な支持剛性を確保しにくく、車輪に対するブレーキ装置やモータ継手等の過大変位等に繋がりやすいと云う問題があった。
【0017】
また、特許文献2の軸箱支持装置200は、特許文献1の軸箱支持装置100と同様に、レール継ぎ目や分岐通過時等における衝撃を受けた時に、剛性を低レベルに切り換えた切替軸箱支持装置201における軸ばね部210が左右方向に大きく撓み、軸箱支持装置200全体として必要な支持剛性を確保しにくく、車輪に対するブレーキ装置やモータ継手等の過大変位等に繋がりやすいと云う問題があった。
【0018】
また、特許文献2の軸箱支持装置200では、切替軸箱支持装置201は、軸ばね部210、切替装置211から構成され、また、切替装置211は、アクチュエータ218、ロッド217、戻しばね219などから構成され、アクチュエータ218を作動させ、ロッド217が下降したとき、その下端が、軸ばね部210の内筒214の上端側に設けられた、テーパー孔220に進入して嵌合する構造であるため、切替軸箱支持装置201における切替装置211の構造が複雑となり、軸箱支持装置全体の重量が増加するとともに、切替装置の耐久性が低下しやすいと云う問題があった。
【0019】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、簡単な構造であって、軸ばね部における必要な支持剛性を維持しつつ、レール継ぎ目や分岐通過時等における衝撃緩和に有効な構造を有する軸箱支持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するため、本発明に係る鉄道車両用軸箱支持装置は、以下の構成を備えている。
(1)車体前後方向に延びる支持腕を有する軸箱と台車枠のばね帽との間に軸ばねを配置し、前記支持腕を円筒積層ゴムを介して前記台車枠に支持させた鉄道車両用軸箱支持装置であって、
前記軸ばねの上部軸ばね座には、前記軸ばねの上端と当接する上部環状フランジ部と、前記上部環状フランジ部の内周側で軸ばね中心線と同軸状に前記ばね帽を挿通して上方へ延設された上部円筒部とを備え、
前記上部環状フランジ部と前記ばね帽との間には、前記上部円筒部の外周面と内接又は離間する円環板状に形成されたゴム座が配置され、かつ、前記上部円筒部の外周面と前記ばね帽の挿通孔との間には、少なくとも左右方向に所定幅の隙間が形成されていることを特徴とする。
【0021】
本発明においては、軸ばねの上部軸ばね座には、軸ばねの上端と当接する上部環状フランジ部と、上部環状フランジ部の内周側で軸ばね中心線と同軸状に前記ばね帽を挿通して上方へ延設された上部円筒部とを備え、上部環状フランジ部とばね帽との間には、上部円筒部の外周面と内接又は離間する円環板状に形成されたゴム座が配置され、かつ、上部円筒部の外周面とばね帽の挿通孔との間には、少なくとも左右方向に所定幅の隙間が形成されているので、車輪を支持する軸箱から軸ばねを介して台車枠に伝達される振動を、軸ばねの上部軸ばね座に形成された上部環状フランジ部とばね帽との間に配置されたゴム座が、上下方向及び左右方向(枕木方向)に撓むことによって、効果的に吸収することができる。特に、曲線区間を走行しているとき、レール継ぎ目や分岐通過時等における衝撃的振動に対しても、ゴム座が主に左右方向(枕木方向)に撓みながら吸収し、その衝撃を緩和させることができる。また、上部円筒部の外周面とばね帽の挿通孔との間には、所定幅の隙間が形成されているので、軸ばねの上部軸ばね座の水平方向(少なくとも、左右方向)への変位量を、隙間の幅寸法以内に規制することによって、軸箱支持装置の軸ばね部における支持剛性を所定の範囲内に維持させることができる。そのため、軸箱支持装置の軸ばね部における過大な変位量を抑制できるので、車輪に対するブレーキ装置やモータ継手等の過大変位等も回避させることができる。
【0022】
また、上記構造を採ることによって、上部軸ばね座の質量体には、上下方向以外にも、左右方向、前後軸に対する回転方向(ロール方向)等の自由度が発生し、従来の軸箱支持装置の上下方向だけの自由度に比較して、サスペンションとしての機能が大幅に向上する。しかも、上部軸ばね座は、軸ばねの上下荷重が加わった状態のゴム座と軸ばねに挟まれているため、ロール方向の変位量等が過剰に大きくなることはない。さらに、上部軸ばね座における前後方向の変位量や左右方向の変位量についても、ばね帽の挿通孔の孔径を必要最小限とすることによって、それぞれ過剰な変位量になる心配もない。
【0023】
よって、本発明によれば、軸ばねの上部軸ばね座と台車枠のばね帽との間にゴム座を配置し、上部軸ばね座の水平方向への移動を上部軸ばね座と台車枠のばね帽との間に少なくとも左右方向に形成した所定幅の隙間によって規制するという新規かつ簡単な構造であって、軸ばね部における必要な支持剛性を維持しつつ、レール継ぎ目や分岐通過時等における衝撃緩和に有効な構造を有する軸箱支持装置を提供することができる。
【0024】
(2)(1)に記載された鉄道車両用軸箱支持装置において、
前記ゴム座は、板状体を介して複数のゴム板が垂直方向に積層された積層ゴム体からなることを特徴とする。
【0025】
本発明においては、ゴム座は、板状体を介して複数のゴム板が垂直方向に積層された積層ゴム体からなるので、ゴム座の水平方向の剛性を上下方向の剛性より低下させることができる。そのため、曲線区間走行時のレール継ぎ目や分岐通過時等における水平方向の衝撃的振動をより一層低減させることができる。その結果、車輪を支持する輪軸の自己操舵性能を向上させることもできる。
【0026】
(3)(1)又は(2)に記載された鉄道車両用軸箱支持装置において、
前記所定幅の隙間は、左右方向の隙間を左右略同一寸法に形成し、かつ、前後方向の隙間を前後共零若しくは零に近い微小寸法又は前後何れか一方を零若しくは零に近い微小寸法に形成したことを特徴とする。
【0027】
本発明においては、所定幅の隙間は、左右方向の隙間を左右略同一寸法に形成し、かつ、前後方向の隙間を前後共零若しくは零に近い微小寸法又は前後何れか一方を零若しくは零に近い微小寸法に形成したので、ゴム座の左右方向の撓み量を所定幅に維持しつつ、前後方向の撓み量を低下させることができる。そのため、曲線区間走行時のレール継ぎ目や分岐通過時等における左右方向への衝撃的振動を低減させつつ、車輪踏面を前後方向から押し付けるブレーキパッドに対して、車輪踏面とブレーキパッドとの隙間の変位を抑えることができる。その結果、ブレーキパッドの歪を抑制して、その耐久性を向上させ、長寿命化にも寄与できる。
【0028】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載された鉄道車両用軸箱支持装置において、
前記所定幅の隙間には、防塵・防水ゴムが嵌装されていることを特徴とする。
【0029】
本発明においては、所定幅の隙間には、防塵・防水ゴムが嵌装されているので、上部円筒部の外周面に内接する円環板状に形成されたゴム座に加えて、防塵・防水ゴムが撓むことによって、上部軸ばね座の水平方向への微小振動をより有効に吸収させることができる。また、防塵・防水ゴムが所定幅の隙間を塞ぐことによって、上部軸ばね座の上部円筒部の外周面とばね帽の挿通孔との隙間から、水やごみ等の侵入を回避することもできる。また、防塵・防水ゴムは、電気的絶縁効果を有するので、従来、コイルバネ(軸ばね)の下に配置した絶縁座と当金を廃止できる。
【0030】
(5)(4)に記載された鉄道車両用軸箱支持装置において、
前記防塵・防水ゴムは、前記上部円筒部の上端を覆う蓋体と一体に形成されていることを特徴とする。
【0031】
本発明においては、防塵・防水ゴムは、上部円筒部の上端を覆う蓋体と一体に形成されているので、蓋体を上部軸ばね座の上部円筒部に着脱すると同時に、防塵・防水ゴムの所定幅の隙間への着脱ができる。また、防塵・防水ゴムを所定幅の隙間へ嵌装させることによって、蓋体の位置決めを行うことができる。そのため、防塵・防水ゴムと蓋体の脱着性の簡便化を図ることができる。また、蓋体と一体に成形された防塵・防水ゴムが所定幅の隙間を塞ぐことによって、上部軸ばね座の上部円筒部の外周面とばね帽の挿通孔との隙間から、水やごみ等の侵入をより一層防止することもできる。
【0032】
(6)(1)乃至(5)のいずれか1つに記載された鉄道車両用軸箱支持装置において、
前記軸ばねの上部軸ばね座には、前記上部環状フランジ部の内周側で軸ばね中心線と同軸状に下方へ延設された下部円筒部を備え、
前記軸ばねの下部軸ばね座には、前記軸ばねの下端と当接する下部環状フランジ部と、前記下部環状フランジ部の内周側で軸ばね中心線と同軸状に上方へ延設された支持軸部とを備え、
前記下部円筒部の内周面と前記支持軸部の外周面との間には、第2の円筒積層ゴムが装着されていることを特徴とする。
【0033】
本発明においては、軸ばねの上部軸ばね座には、上部環状フランジ部の内周側で軸ばね中心線と同軸状に下方へ延設された下部円筒部を備え、軸ばねの下部軸ばね座には、軸ばねの下端と当接する下部環状フランジ部と、下部環状フランジ部の内周側で軸ばね中心線と同軸状に上方へ延設された支持軸部とを備え、下部円筒部の内周面と支持軸部の外周面との間には、第2の円筒積層ゴムが装着されているので、車輪を支持する軸箱から軸ばねを介して台車枠に伝達される振動を、軸ばねの上部軸ばね座に形成された上部環状フランジ部とばね帽との間に配置されたゴム座と、下部円筒部の内周面と支持軸部の外周面との間に装着された第2の円筒積層ゴムとが、それぞれ上下方向、左右方向(枕木方向)等に撓むことによって、吸収することができる。特に、曲線区間を走行しているとき、レール継ぎ目や分岐通過時等における衝撃的振動に対しては、ゴム座に加えて第2の円筒積層ゴムが主に左右方向に撓みながら吸収し、その衝撃をより一層緩和させることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、簡単な構造であって、軸ばね部における必要な支持剛性を維持しつつ、レール継ぎ目や分岐通過時等における衝撃緩和に有効な構造を有する軸箱支持装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
次に、本発明の実施形態に係る軸箱支持装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。はじめに、本実施形態に係る軸箱支持装置の構造を説明し、その後、本実施形態に係る軸箱支持装置と比較例との衝撃緩和に対する動作の違いを説明し、曲線区間を走行するときの乗り心地評価に対するシミュレーション結果について説明する。また、本実施形態におけるゴム座の変形例、及び所定の隙間の変形例について説明する。
【0037】
<本軸箱支持装置の構造>
まず、本実施形態に係る軸箱支持装置の構造について、
図1〜
図7を用いて説明する。
図1に、本発明の実施形態に係る軸箱支持装置を備えた台車枠の平面図を示す。
図2に、
図1に示す軸箱支持装置の一部断面図を含む正面図を示す。
図3に、
図2に示す軸箱支持装置の上部軸ばね座周辺の詳細断面図を示す。
図4に、
図2に示す軸箱支持装置の平面図を示す。
図5に、
図2に示す軸箱支持装置の左側面図を示す。
図6に、
図2に示すX−X断面図を示す。
図7に、
図2に示すY−Y断面を示す。
【0038】
図1に示すように、本実施形態に係る軸箱支持装置10は、左右方向(枕木方向)に延設された横梁11と、当該横梁11の左右両端部から前後方向(レール方向)にそれぞれ延設された左右の側梁12、12とから構成される台車枠1の、左右の側梁12、12における前端部及び後端部に、それぞれ装着されている。また、
図1、
図2に示すように、側梁12、12における前端部及び後端部には、側梁12の上梁12aと下梁12bとを縦板12cによって連結して筒状に形成されたばね帽13を備えている。
【0039】
また、
図2〜
図5に示すように、本軸箱支持装置10は、車体前後方向に延びる支持腕21を有する軸箱2と台車枠1のばね帽13との間に軸ばね3を配置し、支持腕21を円筒積層ゴム4を介して側梁12(台車枠1)に支持させた構造をとっている。円筒積層ゴム4は、下梁12bの下面から下方へ延設された支持台12dに締結された支持部材9の上下方向に延びる支持軸部91に、止め具92を介して固定されている。軸ばね3の軸ばね中心線J1は、軸箱2の車軸中心線J2と直交するように形成されている。円筒積層ゴム4の円筒中心線J3は、軸ばね中心線J1と平行に形成されている。
【0040】
また、
図2、
図4、
図7に示すように、円筒積層ゴム4は、内筒4aと外筒4bとの間に形成された一対の扇型ゴム部41、41と、当該扇型ゴム部41、41同士の間に形成される中空部42、42と、外筒4bを外周側から嵌め込み支持腕21の前後方向端部に嵌装される筒体43とを備えている。筒体43の上端及び下端は、支持腕21に固定されている。扇型ゴム部41、41は、円弧状に湾曲した複数の金属板4cとゴム板4dとを互い違いに積層して形成され、支持軸部91を中心に前後方向で対称に配置されている。そのため、主に前後方向に大きな衝撃力が作用したときに、円筒積層ゴム4の扇型ゴム部41、41が変形して、その衝撃を吸収する。
【0041】
また、
図2、
図3に示すように、軸ばね3の上部軸ばね座31には、軸ばね3の上端と当接する上部環状フランジ部311と、上部環状フランジ部311の内周側で軸ばね中心線J1と同軸状にばね帽13を挿通して上方へ延設された上部円筒部312とを備えている。上部環状フランジ部311とばね帽13との間には、上部円筒部312の外周面に内接する円環板状に形成されたゴム座5が配置されている。
【0042】
ゴム座5は、車輪を支持する軸箱2から軸ばね3等を介して台車枠1に伝達される振動を、上下方向、左右方向(枕木方向)、又は前後方向(レール方向)に撓むことによって、3次元的に吸収することができる。ゴム座5は、例えば、材質がSBR(スチレン・ブタジエンゴム)からなり、15〜25mm程度の均一な厚さに形成されている。ゴム座5の厚さを15〜25mm程度とすることによって、上下方向、左右方向(枕木方向)、又は前後方向(レール方向)からなる3次元方向に変位する振動の吸収性を高めることができる。なお、ばね帽13には、ゴム座5の上端及び外周端に当接する受け金133が装着され、ゴム座5の位置ずれを防止している。
【0043】
また、上部円筒部312の外周面とばね帽13の挿通孔131との間には、所定幅の隙間132が全周略均一に形成されている。隙間132の幅寸法は、2〜5mm程度が好ましい。隙間132の幅寸法が2mm未満では、軸ばね3の上部軸ばね座31の水平方向への自由度が過少となり、レール継ぎ目や分岐通過時等における衝撃緩和に有効に作用しないからであり、隙間132の幅寸法が5mm超では、軸ばね3の上部軸ばね座31の水平方向への自由度が過大となり、レール継ぎ目や分岐通過時等における衝撃がそのままブレーキ装置やモータ継手等に伝達され、当該装置等の過大変位に繋がる恐れがあるからである。
【0044】
また、隙間132には、上部円筒部312の外周面とばね帽13の挿通孔131との隙間を塞ぐように、円筒形状に形成された防塵・防水ゴム6を嵌装させてもよい。防塵・防水ゴム6は、円筒下端がゴム座5の上端と当接するように形成され、円筒上端が上部円筒部312の上端と同一高さに形成されている。この場合、車輪を支持する軸箱2から軸ばね3等を介して台車枠1に伝達される振動に対して、ゴム座5に加えて、防塵・防水ゴム6が撓むことによって、上部軸ばね座31の水平方向への微小振動をより有効に吸収させることができる。防塵・防水ゴム6は、例えば、材質がSBR(スチレン・ブタジエンゴム)からなり、ゴム座5のゴム硬度より低いゴム硬度とすることによって、微小振動に対する吸収性をより一層高めることができる。なお、上部軸ばね座31と台車枠1のばね帽13との間にゴム座5を装着し、上部円筒部312の外周面とばね帽13の挿通孔131との隙間132に防塵・防水ゴム6を嵌装させることによって、軸箱2と台車枠1との電気的絶縁性を高めることができる。
【0045】
また、防塵・防水ゴム6は、上部円筒部312の上端を覆う蓋体7と一体に形成してもよい。防塵・防水ゴム6と蓋体7とを一体に形成することによって、蓋体7を上部軸ばね座31の上部円筒部312に着脱すると同時に、防塵・防水ゴム6の所定幅の隙間132への着脱ができる。また、防塵・防水ゴム6を所定幅の隙間132へ嵌装させることによって、蓋体7の位置決めを行うことができる。
【0046】
また、軸ばね3の上部軸ばね座31には、上部環状フランジ部311の内周側で軸ばね中心線J1と同軸状に下方へ延設された下部円筒部313を備えている。また、軸ばね3の下部軸ばね座32には、軸ばね3の下端と当接する下部環状フランジ部321と、下部環状フランジ部321の内周側で軸ばね中心線J1と同軸状に上方へ延設された支持軸部322とを備えている。また、下部円筒部313の内周面と支持軸部322の外周面との間には、第2の円筒積層ゴム8が装着されている。
【0047】
また、
図2〜
図4、
図6に示すように、第2の円筒積層ゴム8は、内筒8aと外筒8bとの間に形成された一対の扇型ゴム部81、81と、当該扇型ゴム部81、81同士の間に形成される中空部82、82と、外筒8bを外周側から嵌め込み下部円筒部313の内周面と摺接する円筒摺接体83とを備えている。内筒8aは、上端及び下端を止め輪323、325で挟み込んだ状態で、下部軸ばね座32の支持軸部322に、ナット部324によって上方から締結されている。扇型ゴム部81、81は、円弧状に湾曲した複数の金属板8cとゴム板8dとを互い違いに積層して形成され、支持軸部322を中心に左右方向で対称に配置されている。そのため、主に左右方向に大きな衝撃力が作用したときに、第2の円筒積層ゴム8の扇型ゴム部81、81が変形して、その衝撃を吸収する。
【0048】
また、
図2、
図3に示すように、上部軸ばね座31の下部円筒部313には、第2の円筒積層ゴム8の円筒摺接体83が摺接する内周面の上端を区画する段付き部314が形成されている。段付き部314と円筒摺接体83の上端831との隙間SMは、空車状態と定員状態と満車状態とでは変化するが、定員状態の付近で、第2の円筒積層ゴム8の上下方向における撓み量が最小となるように形成されている。例えば、満車状態では、軸ばね3の上下方向の撓み量が増加するので、段付き部314と円筒摺接体83の上端831とが当接することによって、第2の円筒積層ゴム8は上下方向に撓むことができ、軸ばね3の過大な撓みを防止することができる。一方、空車状態では、軸ばね3の上下方向の撓み量が減少するので、段付き部314と円筒摺接体83の上端831とが当接することはないので、第2の円筒積層ゴム8は上下方向に撓むことがなく、第2の円筒積層ゴム8の寿命を延ばすことができる。また、軸ばね3のばね係数を小さく設定し、空車状態における振動吸収性を高めることができる。
【0049】
<衝撃緩和に対する動作説明>
次に、本実施形態に係る軸箱支持装置と比較例との衝撃緩和に対する動作の違いを、
図8、
図9を用いて説明する。
図8に、比較例に係る軸箱支持装置の上部軸ばね座の動作説明図を示す。
図9に、
図2に示す軸箱支持装置の上部軸ばね座の動作説明図を示す。
【0050】
図8に示すように、比較例に係る軸箱支持装置10Bでは、軸ばね3の上部軸ばね座31には、軸ばね3の上端と当接する上部環状フランジ部311と、上部環状フランジ部311の内周側で軸ばね中心線J1と同軸状にばね帽13を挿通して上方へ延設された上部円筒部312とを備え、上部環状フランジ部311とばね帽13との間には、上部円筒部312の外周面に内接する円環板状に形成されたゴム座5が配置されている。この構成は、本実施形態に係る軸箱支持装置10と同様である。
【0051】
しかし、比較例に係る軸箱支持装置10Bでは、ばね帽13Bの挿通孔131Bと上部円筒部312の外周面とが隙間なく全周当接している。したがって、上部軸ばね座31の上下方向の振動は、ゴム座5で吸収された後に、台車枠1のばね帽13Bに伝達され、上下方向における衝撃緩和の効果を奏するが、上部軸ばね座31の水平方向(左右方向又は前後方向)の振動は、上部軸ばね座31から直接に台車枠1のばね帽13Bに伝達されるので、水平方向における衝撃緩和の効果を奏しない。
【0052】
これに対して、
図9に示すように、本実施形態に係る軸箱支持装置10では、軸ばね3の上部軸ばね座31には、軸ばね3の上端と当接する上部環状フランジ部311と、上部環状フランジ部311の内周側で軸ばね中心線J1と同軸状にばね帽13を挿通して上方へ延設された上部円筒部312とを備え、上部環状フランジ部311とばね帽13との間には、上部円筒部312の外周面に内接する円環板状に形成されたゴム座5が配置されるとともに、上部円筒部312の外周面とばね帽13の挿通孔131との間には、所定幅の隙間132が全周略均一に形成されている。
【0053】
上部円筒部312の外周面とばね帽13の挿通孔131との間には、所定幅の隙間132が全周略均一に形成されているので、ゴム座5は、上下方向のみならず、左右方向(枕木方向)、又は前後方向(レール方向)にも撓むことができる。隙間132の幅寸法Sは、レール継ぎ目や分岐通過時等における衝撃に対して有効に作用できるように、2〜5mm程度である。
【0054】
その結果、車輪を支持する軸箱2から軸ばね3を介して台車枠1に伝達される振動を、軸ばね3の上部軸ばね座31に形成された上部環状フランジ部311とばね帽13との間に配置されたゴム座5が、上下方向、左右方向(枕木方向)、又は前後方向(レール方向)に撓むことによって、3次元方向で吸収することができる。特に、曲線区間を走行しているとき、レール継ぎ目や分岐通過時等における衝撃的振動に対しても、ゴム座5が主に左右方向に撓みながら吸収し、その衝撃を有効に緩和させることができる。
【0055】
また、上部円筒部312の外周面とばね帽13の挿通孔131との間には、所定幅の隙間132が形成されているので、軸ばね3の上部軸ばね座31の水平方向(左右方向、又は前後方向)への変位量を、所定幅の隙間132の幅寸法(S)以内に規制することによって、軸箱支持装置10の軸ばね部(軸ばね3及び第2の円筒積層ゴム8)における支持剛性を所定の範囲内に維持させることができる。そのため、軸箱支持装置10の軸ばね部における過大な変位量を抑制できるので、車輪に対するブレーキ装置やモータ継手等の過大変位等も回避させることができる。
【0056】
<曲線区間を走行するときの乗り心地評価>
次に、本実施形態に係る軸箱支持装置において、曲線区間を走行するときの乗り心地評価に対するシミュレーション結果について、
図10を用いて説明する。
図10に、
図8に示す比較例に係る軸箱支持装置と
図9に示す本軸箱支持装置との曲線区間でのレール継ぎ目に対する加速度グラフを示す。
【0057】
図10は、縦軸が
図8、
図9に示す軸箱支持装置10、10Bを搭載した台車モデルを途中にレール継ぎ目を有する半径800mの曲線区間を走行させたときの左右方向の加速度(m/s
2)におけるシミュレーション結果を表し、横軸はその時刻t(s)を表す。
図10において、実線で表す加速度曲線Z1は、
図9に示す本軸箱支持装置10を搭載した台車モデルの加速度曲線を示し、破線で表す加速度曲線Z2は、
図8に示す比較例に係る軸箱支持装置10Bを搭載した台車モデルの加速度曲線を示す。
【0058】
図10に示すように、台車モデルは、時刻t=1(s)程度から加速して時刻t=5(s)程度で定速走行の状態に到達し、そのまま定速走行した後、時刻t=12(s)程度から減速して時刻t=15(s)程度で停止する。定速走行の状態である時刻t=5(s)程度から時刻t=12(s)程度までの間は、左右方向の加速度は、加速度曲線Z1、Z2とも略一定(0.9〜1.0(m/s
2)程度)であるが、時刻t=9(s)程度で台車モデルがレール継ぎ目を通過したとき、その衝撃を受けて左右方向の加速度が瞬間的に増加する。
【0059】
レール継ぎ目を通過したときにおける加速度曲線Z1の加速度増加量Gは、0.4(m/s
2)程度であり、加速度曲線Z2の加速度増加量G+ΔGは、0.6(m/s
2)程度である。加速度曲線Z1の加速度増加量Gは、加速度曲線Z2の加速度増加量G+ΔGに対して約3割程度減少した。このように、
図9に示す本軸箱支持装置10を搭載した台車モデルでは、
図8に示す比較例に係る軸箱支持装置10Bを搭載した台車モデルに比較して、レール継ぎ目を有する曲線区間を走行させたとき、レール継ぎ目から受ける左右方向の衝撃力を大幅に低減させることが明らかとなった。これは、上部軸ばね座31の上部円筒部312の外周面とばね帽13の挿通孔131との間には、所定幅の隙間132が形成されているので、ゴム座5は、上下方向のみならず、左右方向(枕木方向)、又は前後方向(レール方向)にも一定の範囲で撓むことができるからである。
【0060】
<ゴム座及び所定幅の隙間の変形例>
次に、本実施形態におけるゴム座の変形例、及び所定の隙間の変形例について、
図11〜
図13を用いて説明する。
図11に、
図3に示す軸箱支持装置のゴム座の変形例(積層ゴム体)に関する詳細断面図を示す。
図12に、
図3に示すA矢視図を示し、(a)は上部円筒部の外周面とばね帽の挿通孔との間に形成された所定幅の隙間が全周略均一寸法である場合を示し、(b)は所定幅の隙間は、左右方向の隙間を左右略同一寸法に形成し、かつ、前後方向の隙間を前後共零若しくは零に近い微小寸法に形成した場合を示し、(c)は所定幅の隙間は、左右方向の隙間を左右略同一寸法に形成し、かつ、前後何れか一方を零若しくは零に近い微小寸法に形成した場合を示す。
図13に、
図3に示すA矢視図を示し、上部円筒部の外周面とばね帽の挿通孔との間に形成された所定幅の隙間に詰め物を挿入した場合を示す。
【0061】
図11に示すように、本実施形態にかかる軸箱支持装置10のゴム座5Aは、板状体51Aを介して複数のゴム板52Aが垂直方向に積層された積層ゴム体からなるものでもよい。この積層ゴム体の場合、ゴム板52Aの硬度を比較的下げることができるので、ゴム座5Aの水平方向の剛性を上下方向の剛性より低下させることができる。そのため、曲線区間走行時のレール継ぎ目や分岐通過時等における水平方向の衝撃的振動をより一層低減させることができる。その結果、車輪を支持する輪軸の自己操舵性能を向上させることもできる。なお、ゴム座5Aは、上部円筒部312の外周面と離間し、両者の間には所定幅の隙間132が形成されている。
【0062】
また、本実施形態にかかる軸箱支持装置10では、
図12(a)に示すように、上部円筒部312の外周面とばね帽13の挿通孔131との間に形成された所定幅の隙間132が全周略均一寸法(S、S)である場合に限らず、
図12(b)に示すように、ばね帽13Aに長円の挿通孔131Aを形成するとともに、左右方向の隙間132Aを左右略同一寸法(S、S)に形成し、かつ、前後方向の隙間を前後共零若しくは零に近い微小寸法に形成してもよい。又は、
図12(c)に示すように、ばね帽13Bに長円の挿通孔131Bを形成するとともに、左右方向の隙間132Bを左右略同一寸法(S、S)に形成し、かつ、前後何れか一方を零若しくは零に近い微小寸法(T1)に形成し、前後何れか他方をそれより大きい寸法(T2)に形成してもよい。ここで、零に近い微小寸法(T1)には、例えば、1〜2mm程度の寸法が該当する。また、それより大きい寸法(T2)には、例えば、3〜5mm程度の寸法が該当する。
図12(b)又は
図12(c)のようにすれば、ゴム座の左右方向(枕木方向)の撓み量を所定幅に維持しつつ、前後方向(レール方向)の撓み量を微小量に低下させることができる。そのため、曲線区間走行時のレール継ぎ目や分岐通過時等における左右方向への衝撃的振動を緩和させつつ、車輪踏面を前後方向から押し付けるブレーキパッドに対して、車輪踏面とブレーキパッドとの隙間の変位を抑えることができる。その結果、ブレーキパッドの歪を抑制して、その耐久性を向上させ、長寿命化にも寄与できる。
【0063】
また、
図12(b)又は
図12(c)に示すように、前後方向の隙間を詰めつつ、左右方向の隙間132A、132Bを左右略同一寸法(S、S)に形成する方法として、
図13に示すように、上部円筒部312の外周面とばね帽13の挿通孔131との間に三日月状の詰め物134、135を、前後方向の隙間に挿入してもよい。この方法であれば、ばね帽13の挿通孔131を円形状に形成し、長円状に形成する手間が省けるメリットがある。
【0064】
<作用効果>
以上、詳細に説明した本実施形態に係る鉄道車両用軸箱支持装置10によれば、軸ばね3の上部軸ばね座31には、軸ばね3の上端と当接する上部環状フランジ部311と、上部環状フランジ部311の内周側で軸ばね中心線J1と同軸状にばね帽13を挿通して上方へ延設された上部円筒部312とを備え、上部環状フランジ部311とばね帽13との間には、上部円筒部312の外周面と内接又は離間する円環板状に形成されたゴム座5、5Aが配置され、かつ、上部円筒部312の外周面とばね帽13の挿通孔131との間には、少なくとも左右方向に所定幅の隙間132、132A、132Bが形成されているので、車輪を支持する軸箱2から軸ばね3を介して台車枠1に伝達される振動を、軸ばね3の上部軸ばね座31に形成された上部環状フランジ部311とばね帽13との間に配置されたゴム座5、5Aが、上下方向及び左右方向(枕木方向)に撓むことによって、効果的に吸収することができる。特に、曲線区間を走行しているとき、レール継ぎ目や分岐通過時等における衝撃的振動に対しても、ゴム座5、5Aが主に左右方向(枕木方向)に撓みながら吸収し、その衝撃を緩和させることができる。また、上部円筒部312の外周面とばね帽13の挿通孔131との間には、所定幅の隙間132、132A、132Bが形成されているので、軸ばね3の上部軸ばね座31の水平方向(少なくとも、左右方向)への変位量を、隙間132、132A、132Bの幅寸法以内に規制することによって、鉄道車両用軸箱支持装置10の軸ばね部における支持剛性を所定の範囲内に維持させることができる。そのため、鉄道車両用軸箱支持装置10の軸ばね部における過大な変位量を抑制できるので、車輪に対するブレーキ装置やモータ継手等の過大変位等も回避させることができる。
【0065】
また、上記構造を採ることによって、上部軸ばね座31の質量体には、上下方向以外にも、左右方向、前後軸に対する回転方向(ロール方向)等の自由度が発生し、従来の鉄道車両用軸箱支持装置の上下方向だけの自由度に比較して、サスペンションとしての機能が大幅に向上する。しかも、上部軸ばね座31は、軸ばね3の上下荷重が加わった状態のゴム座5、5Aと軸ばね3に挟まれているため、ロール方向の変位量等が過剰に大きくなることはない。さらに、上部軸ばね座31における前後方向の変位量や左右方向の変位量についても、ばね帽13の挿通孔131の孔径を必要最小限とすることによって、それぞれ過剰な変位量になる心配もない。
【0066】
よって、本実施形態によれば、軸ばね3の上部軸ばね座31と台車枠1のばね帽13との間にゴム座5、5Aを配置し、上部軸ばね座31の水平方向への移動を上部軸ばね座31と台車枠1のばね帽13との間に少なくとも左右方向に形成した所定幅の隙間132、132A、132Bによって規制するという新規かつ簡単な構造であって、軸ばね部における必要な支持剛性を維持しつつ、レール継ぎ目や分岐通過時等における衝撃緩和に有効な構造を有する鉄道車両用軸箱支持装置10を提供することができる。
【0067】
また、本実施形態によれば、ゴム座5Aは、板状体51Aを介して複数のゴム板52Aが垂直方向に積層された積層ゴム体からなるので、ゴム座5Aの水平方向の剛性を上下方向の剛性より低下させることができる。そのため、曲線区間走行時のレール継ぎ目や分岐通過時等における水平方向の衝撃的振動をより一層低減させることができる。その結果、車輪を支持する輪軸の自己操舵性能を向上させることもできる。
【0068】
また、本実施形態によれば、所定幅の隙間132A、132Bは、左右方向の隙間を左右略同一寸法(S、S)に形成し、かつ、前後方向の隙間を前後共零若しくは零に近い微小寸法又は前後何れか一方を零若しくは零に近い微小寸法(T1)に形成したので、ゴム座5、5Aの左右方向の撓み量を所定幅に維持しつつ、前後方向の撓み量を低下させることができる。そのため、曲線区間走行時のレール継ぎ目や分岐通過時等における左右方向への衝撃的振動を低減させつつ、車輪踏面を前後方向から押し付けるブレーキパッドに対して、車輪踏面とブレーキパッドとの隙間の変位を抑えることができる。その結果、ブレーキパッドの歪を抑制して、その耐久性を向上させ、長寿命化にも寄与できる。
【0069】
また、本実施形態によれば、所定幅の隙間132、132A、132Bには、防塵・防水ゴム6が嵌装されているので、上部円筒部312の外周面に内接する円環板状に形成されたゴム座5、5Aに加えて、防塵・防水ゴムが撓むことによって、上部軸ばね座31の水平方向への微小振動をより有効に吸収させることができる。また、防塵・防水ゴム6が所定幅の隙間を塞ぐことによって、上部軸ばね座31の上部円筒部312の外周面とばね帽13の挿通孔131との隙間から、水やごみ等の侵入を回避することもできる。また、防塵・防水ゴム6は、電気的絶縁効果を有するので、従来、コイルバネ(軸ばね)の下に配置した絶縁座と当金を廃止できる。
【0070】
また、本実施形態によれば、防塵・防水ゴム6は、上部円筒部312の上端を覆う蓋体7と一体に形成されているので、蓋体7を上部軸ばね座31の上部円筒部312に着脱すると同時に、防塵・防水ゴム6の所定幅の隙間132、132A、132Bへの着脱ができる。また、防塵・防水ゴム6を所定幅の隙間132、132A、132Bへ嵌装させることによって、蓋体7の位置決めを行うことができる。そのため、防塵・防水ゴム6と蓋体7の脱着性の簡便化を図ることができる。また、蓋体7と一体に成形された防塵・防水ゴム6が所定幅の隙間132、132A、132Bを塞ぐことによって、上部軸ばね座31の上部円筒部312の外周面とばね帽13の挿通孔131との隙間から、水やごみ等の侵入をより一層防止することもできる。
【0071】
また、本実施形態によれば、軸ばね3の上部軸ばね座31には、上部環状フランジ部311の内周側で軸ばね中心線J1と同軸状に下方へ延設された下部円筒部313を備え、軸ばね3の下部軸ばね座32には、軸ばね3の下端と当接する下部環状フランジ部321と、下部環状フランジ部321の内周側で軸ばね中心線J1と同軸状に上方へ延設された支持軸部322とを備え、下部円筒部313の内周面と支持軸部322の外周面との間には、第2の円筒積層ゴム8が装着されているので、車輪を支持する軸箱2から軸ばね3を介して台車枠1に伝達される振動を、軸ばね3の上部軸ばね座31に形成された上部環状フランジ部311とばね帽13との間に配置されたゴム座5、5Aと、下部円筒部313の内周面と支持軸部322の外周面との間に装着された第2の円筒積層ゴム8とが、それぞれ上下方向、左右方向(枕木方向)等に撓むことによって、吸収することができる。特に、曲線区間を走行しているとき、レール継ぎ目や分岐通過時等における衝撃的振動に対しては、ゴム座5、5Aに加えて第2の円筒積層ゴム8が主に左右方向に撓みながら吸収し、その衝撃をより一層緩和させることができる。
【0072】
<変形例>
以上、本実施形態の鉄道車両用軸箱支持装置10を詳細に説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0073】
例えば、本実施形態では、軸ばね3の上部軸ばね座31に形成された下部円筒部313の内周面と、軸ばね3の下部軸ばね座32に形成された支持軸部322の外周面との間には、第2の円筒積層ゴム8が装着されているが、必ずしも、第2の円筒積層ゴム8が装着されている必要はない。また、例えば、軸ばね3の内周側に上下方向に伸縮する第2の軸ばねを装着してもよい。
【解決手段】車体前後方向に延びる支持腕21を有する軸箱2と台車枠1のばね帽13との間に軸ばね3を配置し、支持腕を円筒積層ゴム4を介して台車枠に支持させた鉄道車両用軸箱支持装置10である。軸ばねの上部軸ばね座31には、軸ばねの上端と当接する上部環状フランジ部311と、上部環状フランジ部の内周側で軸ばね中心線J1と同軸状にばね帽を挿通して上方へ延設された上部円筒部312とを備え、上部環状フランジ部とばね帽との間には、上部円筒部の外周面に内接する円環板状に形成されたゴム座5が配置され、かつ、上部円筒部の外周面とばね帽の挿通孔131との間には、少なくとも左右方向に所定幅の隙間132、132A、132Bが形成されている。