(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜10のいずれか一項に記載の防汚塗料組成物を基材に塗布する工程と、該工程により前記基材に塗布された前記防汚塗料組成物を硬化させる工程と、を備えることを特徴とする防汚基材の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
−防汚塗料組成物−
本願発明に係る防汚塗料組成物は、(A)1分子中に2以上のシラノール基を有するオルガノポリシロキサン、(B)架橋剤、(C)無機銅を含有する。以下、各成分について順に説明する。
<(A)1分子中に2以上のシラノール基を有するオルガノポリシロキサン>
1分子中に2以上のシラノール基を有するオルガノポリシロキサン(A)は、具体的には下記一般式[II]で表される化合物が好適である。
【0026】
上記一般式[II]中、R
2はそれぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基もしくはハロゲン化アルキル基である。
【0027】
アルキル基としては、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等が挙げられる。
【0028】
アルケニル基としては、たとえば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘプテニル基、ヘキセニル基およびシクロヘキセニル基等が挙げられる。
【0029】
アリール基としては、たとえば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0030】
アラルキル基としては、たとえば、ベンジル基、2−フェニルエチル基、2−ナフチルエチル基、ジフェニルメチル基等が挙げられる。
【0031】
アルコキシ基としては、たとえば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基等が挙げられる。
【0032】
ハロゲン化アルキル基としては、たとえば、前記アルキル基に含まれる水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子で置換して形成される基が挙げられる。
【0034】
上記一般式[II]中、rは1〜3の整数であり、好ましくは1である。
【0035】
上記一般式[II]中、sは10〜10,000の整数であり、好ましくは100〜1,000である。
【0036】
1分子中に2以上のシラノール基をもつオルガノポリシロキサン(A)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が好ましくは500〜1,000,000であり、より好ましくは5,000〜100,000、さらに好ましくは10,000〜50,000である。また、23℃における粘度が好ましくは20〜100,000mPa・sであり、より好ましくは100〜10,000mPa・s、さらに好ましくは500〜5,000mPa・sである。重量平均分子量および粘度がこの範囲にあると、塗料の製造作業性、スプレー霧化性、塗膜硬化性、形成された塗膜の強度に優れる点で好ましい。
【0037】
1分子中に2以上のシラノール基を有するオルガノポリシロキサン(A)は、防汚塗料組成物中に、通常20〜90重量%、好ましくは50〜70重量%の量で含まれる。また、オルガノポリシロキサン(A)は、防汚塗料組成物に含まれる固形分の重量に対して、通常30〜95重量%、好ましくは60〜90重量%の量で含まれる。オルガノポリシロキサン(A)の含有量がこの範囲にあると、良好な塗膜強度、ゴム弾性を発揮する塗膜を形成することができ、長期間防汚性を発揮する防汚塗膜を得ることができる。
【0038】
こうした1分子中に2以上のシラノール基を有するオルガノポリシロキサン(A)は、市販されているものを使用することができる。例えば、「DMS−S35」(GELEST社製品)などが挙げられる。
<(B)架橋剤>
架橋剤(B)は、下記一般式[III]で表される1分子中に2以上の加水分解性基を有するオルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物であることが好ましい。
【0040】
上記一般式[III]中、R
4は独立に炭素原子数1〜6の炭化水素基を示し、例えばメチル基、エチル基、プロピル基などの直鎖状、もしくは分枝状アルキル基、シクロヘキシル基などの環状アルキル基、ビニル基などのアルケニル基、またはフェニル基などのアリール基であり、好ましくはメチル基、エチル基である。
【0041】
上記一般式[III]において、Yは、独立に加水分解性基であり、例えば、アルコキシ基、ケトオキシム基、アシロキシ基、アルケニルオキシ基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基等が挙げられ、好ましくはアルコキシ基およびケトオキシム基である。
【0042】
アルコキシ基としては、総炭素数が1〜10のものが好ましく、また炭素原子間に1箇所以上酸素原子が介在していてもよく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基等が挙げられる。
【0043】
ケトオキシム基(ケトキシム基ともいう)としては、例えば、ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基、ジエチルケトオキシム基、メチルイソプロピルケトオキシム基、シクロペンタノキシム基、シクロヘキサノキシム基などが挙げられる。
【0044】
アシロキシ基としては、式:RCOO−(式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜12の芳香族基である)で示される脂肪族系または芳香族系のものが好ましく、例えば、アセトキシ基、プロピオノキシ基、ブチロキシ基、ベンゾイルオキシ基等が挙げられる。
【0045】
アルケニルオキシ基としては、炭素数3〜10のものが好ましく、例えば、イソプロペニルオキシ基、イソブテニルオキシ基、1−エチル−2−メチルビニルオキシ基等が挙げられる。
【0046】
アミノ基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、例えば、N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N−プロピルアミノ基、N−ブチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基等が挙げられる。
【0047】
アミド基としては、総炭素数2〜10のものが好ましく、例えば、N−メチルアセトアミド基、N−エチルアセトアミド基、N−メチルベンズアミド基等が挙げられる。
【0048】
アミノオキシ基としては、総炭素数2〜10のものが好ましく、例えば、N,N−ジメチルアミノオキシ基、N,N−ジエチルアミノオキシ基等が挙げられる。
【0049】
dは0〜2の整数であり、0が好ましい。
【0050】
こうしたオルガノシランは市販されたものを用いることができる。例えば、テトラエチルオルトシリケートとしては「エチルシリケート28」(コルコート社製)、「正珪酸エチル」(多摩化学工業製)、テトラエチルオルトシリケートの部分加水分解縮合物としては「シリケート40」(多摩化学工業製)、「TES40 WN」(旭化成ワッカーシリコーン製)、アルキルトリアルコキシシランとしては「KBM−13」(信越化学工業製)などが挙げられる。
【0051】
架橋剤(B)は、防汚塗料組成物中に、一般的に0.1〜50重量%の量で含有され、通常、1〜30重量%、好ましくは3〜15重量%の量で含有される。架橋剤(B)の含有量がこの範囲にあると、防汚塗料組成物の硬化速度を適度に保持することができ、硬化させて得られる塗膜が優れた塗膜強度、ゴム物性を発揮することができる。
<(C)無機銅>
無機銅(C)は、防汚塗料組成物のスプレーダスト飛散を抑制し、被塗物への塗着効率を向上させることができ、防汚塗膜の防汚性を向上させることができる。すなわち、無機銅は防汚塗料組成物に通常防汚性付与剤として使用されるものであるが、本発明者は無機銅にスプレーダスト飛散抑制効果があることを見出し、無機銅(C)の使用により防汚塗膜の防汚性向上とともにスプレーダスト飛散抑制、被塗物への塗着効率向上をも実現させた。
【0052】
無機銅(C)としては亜酸化銅、金属銅、酸化銅、チオシアン酸銅、塩化銅などが挙げられ、中でも亜酸化銅または金属銅であることが好ましい。これらの2種以上を併用して用いてもよい。
【0053】
亜酸化銅および金属銅は市販されているものを使用することができる。例えば、亜酸化銅としては「亜酸化銅NC−803」、「亜酸化銅NC−301」(日進ケムコ株式会社製)、「RED COPP 97N Premium」、「LOLO TINT LM」(アメリカンケメットコーポレーション)、金属銅としては「電解銅粉#6」(JX日鉱日石金属株式会社製)などが挙げられる。
【0054】
無機銅(C)の含有量は、防汚塗料組成物中に、通常0.5〜60重量%、好ましくは5〜40重量%、さらに好ましくは10〜35重量%である。無機銅(C)の含有量がこの範囲にあると高度なスプレーダスト飛散抑制効果および防汚塗膜に高度な防汚性を付与することができる。
<任意成分>
本発明に係る防汚塗料組成物は、2以上のシラノール基を有するオルガノポリシロキサン(A)、架橋剤(B)、無機銅(C)に加えて、銅ピリチオン、無機銅(C)および銅ピリチオン以外の防汚性付与剤(D)、オルガノポリシロキサン(A)以外のシリコーンオイル(E)、金属硬化触媒(F)、有機溶剤(G)、シリカ(H)、シリカ(H)以外の充填剤(I)、タレ止め,沈降防止剤(J)、シランカップリング剤(K)、その他の塗膜形成成分(L)、無機脱水剤(M)、難燃剤(N)、チクソトロピー性付与剤(O)、熱伝導改良剤(P)等を含有していてもよい。
〔銅ピリチオン、ならびに(D)無機銅(C)および銅ピリチオン以外の防汚性付与剤〕
無機銅(C)以外の防汚性付与剤は、有機系、無機系の何れであってもよい。
【0055】
有機系防汚剤としては、例えば、下記一般式[IV]で表されるピリチオン塩化合物、テトラメチルチウラムジサルファイド、カーバメート系の化合物(例:ジンクジメチルジチオカーバメート、マンガン-2エチレンビスジチオカーバメート)、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、2−(p−クロロフェニル)−3―シアノー4−ブロモー5−トリフルオロメチルピロール、(RS)−4−[1−(2,3−ジメチルフェニル)エチル]−3H−イミダゾール、4,5−ジクロローN−オクチルー4−イソチアゾリンー3−オン、ピリジントリフェニルボラン、p−イソプロピルピリジンメチルジフェニルボラン等を挙げることができ、下記一般式[IV]で表されるピリチオン塩化合物を含むことが好ましい。
【0057】
上記一般式[IV]中、R
3はそれぞれ独立に水素、または炭素原子数1〜6のアルキル基、環状アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基もしくはハロゲン化アルキル基を示し、MはZn、Cu、Na、Mg、Ca、Ba、Fe、またはSrの金属原子を示し、nは金属Mの価数である。
【0058】
無機銅(C)以外の防汚性付与剤は、いずれか1種類を単独で用いてもよいし、複数の種類を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
防汚塗料組成物が無機銅(C)以外の防汚性付与剤を含有することによって、塗膜の水中防汚性をさらに向上させることができる。
【0060】
防汚性付与剤としてはピリチオン塩が好ましい。
【0061】
ピリチオン塩のうち、銅ピリチオンを防汚塗料組成物に含有させると、防汚性を高められるとともに、無機銅(C)によってもたらされるスプレーダスト飛散抑制効果をさらに高め、被塗物への塗着効率をさらに向上させることができる。銅ピリチオンの含有量としては、防汚塗料組成物中に、好ましくは0.1〜30重量%、より好ましくは0.5〜15重量%、さらに好ましくは1〜10重量%である。
【0062】
無機銅(C)および銅ピリチオン以外の防汚性付与剤(D)の含有量としては、防汚塗料組成物中に、0.1〜30重量%の量が好ましい。
【0063】
銅ピリチオンと無機銅(C)および銅ピリチオン以外の防汚性付与剤(D)とは併用されてもよい。
〔(E)オルガノポリシロキサン(A)以外のシリコーンオイル〕
オルガノポリシロキサン(A)以外のシリコーンオイル(E)としては下記一般式[I]で表されるオルガノポリシロキサンを用いることが好ましい。
【0065】
上記一般式[I]中、R
3はそれぞれ独立に、炭素原子数1〜10のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基;または末端が炭素数1〜10の炭化水素基、水酸基もしくは縮合反応性基をケイ素原子上にもつシリル基により封止されていてもよい炭素原子数2〜100のポリオキシアルキレン基であり、メチル基およびフェニル基、またはメチル基とポリオキシアルキレン基であることが好ましい。
【0066】
上記一般式[I]中、uは1〜10,000の整数である。
【0067】
上記一般式[I]中、R
3がメチル基とフェニル基であるシリコーンオイル(E)としては、例えば、「KF−54」、「KF−56」、「KF−50」(信越化学工業(株)製)、「SH510」、「SH550」(東レダウコーニング(株)製)、「TSF431」(東芝シリコーン(株)製)等の商品名で市販されているものが挙げられる。
【0068】
上記一般式[I]中、R
3がメチル基とポリオキシアルキレン基であるシリコーンオイル(E)としては、「X−22−6548」(アルキレングリコール変性シリコーンオイル、信越化学工業(株)製)、「FZ−2164」(アルキレングリコール変性シリコーンオイル、東レダウコーニング(株)製)、「X−22−4272」(末端水酸基封止/アルキレングリコール変性シリコーンオイル、信越化学工業(株)製)、「BY16−839」(脂環式エポキシ変性シリコーンオイル、東レダウコーニング(株)製)などの商品名で市販されているものが挙げられる。
【0069】
シリコーンオイル(E)の含有量は、防汚塗料組成物中に、通常0.01〜30重量%、好ましくは0.1〜15重量%である。シリコーンオイル(E)の含有量がこの範囲であることで、防汚塗料組成物のチクソ性を適度に向上させることでタレ止め性を改善し、厚膜塗装を可能にすることができ、さらに防汚塗膜の防汚性能を向上させることができる。
〔(F)金属硬化触媒〕
金属硬化触媒(F)は、1分子中に2以上のシラノール基を有するオルガノポリシロキサン(A)および架橋剤(B)のそれぞれの縮合反応または相互間の縮合反応を促進するための触媒であり、塗膜の硬化反応を促進して塗装後に硬化塗膜をより早く得られるようにする。
【0070】
金属硬化触媒(F)は、好ましくは含スズ硬化触媒である。
【0071】
金属硬化触媒(F)としては例えば、特開平4−106156号公報(特許第2522854号公報)に記載されているものを好適に使用できる。具体的には、ナフテン酸錫、オレイン酸錫等のカルボン酸錫類;ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫アセトアセトネート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫ジペントエート、ジブチル錫ジオクトエート、 ジブチル錫ジネオデカノエート、ジオクチル錫ジネオデカノエート、ビス(ジブチルスズラウレート)オキサイド、ジブチルビス(トリエトキシシロキシ)錫、ビス(ジブチルスズアセテート)オキサイド、ジブチル錫ビス(エチルマレート)およびジオクチル錫ビス(エチルマレート)等の錫化合物類;テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキソキシ)チタン、ジプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン、チタニウムイソプロポキシオクチルグリコール等のチタン酸エステル類あるいはチタンキレート化合物;ナフテン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、亜鉛−2−エチルオクトエート、鉄−2−エチルヘキソエート、コバルト−2−エチルヘキソエート、マンガン−2−エチルヘキソエート、ナフテン酸コバルト、アルコキシアルミニウム化合物等の有機金属化合物類;酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、シュウ酸リチウム等のアルカリ金属の低級脂肪酸塩類等が挙げられる。
【0072】
こうした金属硬化触媒(F)は市販されているものを使用することができる。例えば、「NEOSTAN U−100」(日東化成社製)などが挙げられる。
【0073】
金属硬化触媒(F)の含有量は、防汚塗料組成物中に、通常10重量%以下、好ましくは1重量%以下の量であり、該触媒を使用する場合の下限値は好ましくは0.001重量%、特により好ましくは0.01重量%である。金属硬化触媒(F)の含有量がこの範囲にあると、塗膜硬化速度と塗料調製後の可使時間とのバランスが良い塗料組成物となる。
〔(G)有機溶剤〕
有機溶剤(G)としては、芳香族炭化水素系、脂肪族炭化水素系、脂環族炭化水素系、アルコール系、ケトン系、エステル系のものを用いることができ、芳香族系炭化水素系とアルコール系を併用して用いることが好ましい。
【0074】
アルコールは、エーテル基が鎖中に含まれた直鎖、分岐鎖、環状のものを用いて良く、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノールなどが挙げられる。
【0075】
アルコールとしては、炭素数が5以下のアルコールが好ましく、さらにはn−ブタノールが好ましい。アルコールがこれらから選ばれる場合、塗料混合後の可使時間として長い時間が得られる。
【0076】
アルコールの含有量は、防汚塗料組成物中に、通常1〜20重量%、好ましくは3〜10重量%である。アルコールの含有量がこの範囲にあると塗料混合後の可使時間として長い時間が得られる。
【0077】
芳香族炭化水素系の有機溶剤としては例えば、トルエン、キシレン、スチレン、メシチレン、などが挙げられる。
【0078】
脂肪族炭化水素系の有機溶剤としては例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどが挙げられる。
【0079】
脂環族炭化水素系の有機溶剤としては例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどが挙げられる。
【0080】
ケトン系の有機溶剤としては例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、炭酸ジメチルなどが挙げられる。
【0081】
エステル系の有機溶剤としては例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
【0082】
防汚塗料組成物が有機溶剤(G)を含有することにより防汚塗料組成物の粘度を低減し、塗装作業性を向上させることができる。
【0083】
有機溶剤(G)の含有量は、防汚塗料組成物の粘度によって好ましい量が決定されるが、防汚塗料組成物中に、通常0〜50重量%である。含有量が多すぎる場合、タレ止め性の低下等の不具合が発生する。
〔(H)シリカ〕
シリカ(H)は前述の1分子中に2以上のシラノール基を有するオルガノポリシロキサン(A)またはシリコーンオイル(E)と使用前に、特に多液型の防汚塗料組成物におけるオルガノポリシロキサンを含有する各コンポーネントの調製前に、あらかじめオルガノポリシロキサンと混練されていてもよい。
【0084】
シリカ(H)は、湿式法シリカ(水和シリカ)、乾式法シリカ(フュームドシリカ、無水シリカ)等の親水性シリカ(表面未処理シリカ)、および、疎水性湿式シリカ、疎水性フュームドシリカ等の表面処理された疎水性シリカを用いることができる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0085】
湿式法シリカは、特に限定されないが、例えば、吸着水分含量4〜8%程度、嵩密度200〜300g/L、1次粒子径10〜30μm、比表面積(BET表面積)10m
2/g以上のものを使用できる。
【0086】
乾式法シリカは、特に限定されないが、例えば、水分含量が1.5%以下、嵩密度50〜100g/L、1次粒子径8〜20μm、比表面積10m
2/g以上のものを使用できる。
【0087】
疎水性フュームドシリカは、乾式法シリカをメチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等の有機珪素化合物で表面処理したものである。疎水性フュームドシリカの経時的な水分吸着は少なく、水分含量は通常0.3%以下、多くの場合0.1〜0.2%である。このような疎水性フュームドシリカとしては、特に限定されないが、例えば、1次粒子径5〜50μm、嵩密度50〜100g/L、比表面積10m
2/g以上のものを使用できる。
【0088】
なお、以下に述べるように、前述のオルガノポリシロキサンと共に熱処理することにより、シリカの表面に吸着している水分は物理的に低減、除去される。その結果、熱処理疎水性ヒュームドシリカの水分含量は通常0.2%以下、好ましくは0.1%以下、さらに好ましくは0.05〜0.1%である。嵩密度等のその他の物性値は、熱処理前の上記疎水性シリカと同様である。
【0089】
このようなシリカは市販されているものを用いることができる。例えば、日本アエロジル製「R974」、「RX200」などが挙げられる。
【0090】
シリカ(H)を前述のオルガノポリシロキサンと混練して使用する場合、オルガノポリシロキサンとシリカとを予め加熱処理することにより形成される熱処理物、または、この熱処理物および加熱処理していないオルガノポリシロキサンの混合物を用いることが好ましい。シリカを、オルガノポリシロキサンの一部または全部と共にあらかじめ加熱処理することにより、両成分の親和性を向上させ、シリカの凝集を抑制するなどの効果が得られるからである。この加熱処理は、例えば、常圧下または減圧下に、100℃以上で配合成分の分解温度以下、好ましくは100〜300℃、さらに好ましくは140〜200℃の温度で、通常3〜30時間程度加熱すればよい。
【0091】
シリカは、オルガノポリシロキサン(A)中に、通常1〜100重量%、好ましくは2〜50重量%、更に好ましくは5〜30重量%の割合で含有される。シリカの含有量が上記の範囲内にあれば、防汚塗料組成物が好適なチクソトロピー性を示すことで、1回の塗装、特にスプレー塗装で所望の膜厚を得ることができ、高い強度、硬度の塗膜が得られる。
【0092】
以上、上記のようなシリカを用いることにより、得られる防汚塗料組成物の調製または保管時の安定性が増し、流動性、チクソトロピー性が良好になり、垂直塗装面などに対しても充分な厚みの塗膜を少ない塗装回数で形成でき、さらに得られる塗膜の硬さ、引張強さ、伸び等の物性にバランス良く優れるなどの効果が得られる。
〔(I)シリカ(H)以外の充填剤〕
シリカ(H)以外の充填剤(I)は、従来公知の有機系、無機系の各種顔料やその他充填剤を用いることができる。
【0093】
有機系顔料としては、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、紺青等が挙げられる。
【0094】
無機系顔料としては、チタン白(酸化チタン)、ベンガラ、バライト粉、タルク、白亜、酸化鉄粉等のように中性で非反応性のもの;鉛白、鉛丹、亜鉛末、亜酸化鉛粉等のように塩基性で塗料中の酸性物質と反応性のもの(活性顔料)等が挙げられる。その他の充填剤は、けいそう土、アルミナ等の金属酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛等の金属炭酸塩;その他、アスベスト、ガラス繊維、石英粉、水酸化アルミニウム、金粉、銀粉、表面処理炭酸カルシウム、ガラスバルーン等が挙げられる。また、これらの表面をシラン化合物で表面処理したものを用いてもよい。これらの充填剤は、いずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、これらの充填剤は染料等の各種着色剤を含むこともできる。
【0095】
防汚塗料組成物が充填剤(I)を含有することによって塗膜の強度を向上させることができ、さらに下塗り塗膜を隠蔽することで、下塗り塗膜の紫外光による劣化を防止することができる。充填剤(I)の含有量は、防汚塗料組成物中に、0.1〜30重量%の量が好ましい。
〔(J)タレ止め、沈降防止剤〕
タレ止め、沈降防止剤(J)としては、有機粘土系ワックス(Al、Ca、Znのステアレート塩、レシチン塩、アルキルスルホン酸塩等)、有機系ワックス(ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、アマイドワックス、ポリアマイドワックス、水添ヒマシ油ワックス等)、有機粘土系ワックスと有機系ワックスの混合物、合成微粉シリカ等が挙げられる。
【0096】
タレ止め、沈降防止剤(J)は一般に市販されているものを用いることができる。例えば、楠本化成(株)製の「ディスパロン305」、「ディスパロン4200-20」等の他、「ディスパロンA630-20X」等の商品名で市販されているものを用いることができる。
【0097】
タレ止め、沈降防止剤(J)の含有量は、防汚塗料組成物中に、通常0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜3重量%である。
〔(K)シランカップリング剤〕
シランカップリング剤(K)は、アルコキシシリル基、アミノ基、イミノ基、エポキシ基、ヒドロシリル基、メルカプト基、イソシアネート基、(メタ)アクリル基等の基を1種または2種以上含有するシランカップリング剤が好ましく、特にアミノ基を有するものが好ましい。アミノ基を有するシランカップリング剤としては例えば、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−(2−アミノエチル)アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。また、他のシランカップリング剤として、例えば、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N−フェニルプロピルトリメトキシシラン、N−フェニルプロピルトリエトキシシラン等を挙げることもできる。また、シランカップリング剤としては、これらの複数のものの混合物を用いてもよい。
【0098】
防汚塗料組成物がシランカップリング剤(K)を含有することによって、下塗り塗膜または基材との付着をより強固にする、あるいは防汚塗料組成物の塗膜の強度を向上させることができる。シランカップリング剤(K)の含有量は、防汚塗料組成物中に、0.01〜1重量%の量が好ましい。
〔(L)その他の塗膜形成成分〕
その他の塗膜形成成分(L)としては、主たる樹脂成分であるオルガノポリシロキサン以外の塗膜形成成分を、本発明の目的に反しない範囲内で用いることができる。
【0099】
その他の塗膜形成成分(L)としては、例えば、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、ポリブテン樹脂、シリコーンゴム、ウレタン樹脂(ゴム)、ポリアミド樹脂、塩化ビニル系共重合樹脂、塩化ゴム(樹脂)、塩素化オレフィン樹脂、スチレン・ブタジエン共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル樹脂、アルキッド樹脂、クマロン樹脂、トリアルキルシリルアクリレート(共)重合体(シリル系樹脂)、石油樹脂等の難水溶性あるいは非水溶性樹脂 が挙げられる。
〔無機脱水剤(M)〕
無機脱水剤(M)としては、無水石膏(CaSO
4)、合成ゼオライト系吸着剤(商品名:モレキュラーシーブ等)、シリケート類等が挙げられ、無水石膏、モレキュラーシーブが好ましく用いられる。このような無機脱水剤は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0100】
無機脱水剤(M)は安定剤としても機能し、防汚塗料組成物がこの成分を含有することで、防汚塗料組成物中の水分による劣化を防止し、貯蔵安定性を一層向上させることができる。無機脱水剤(M)の含有量は、防汚塗料組成物中に、0.1〜10重量%の量が好ましい。
〔(N)難燃剤〕
難燃剤(N)としては、酸化アンチモン、酸化パラフィンなどが挙げられる。
〔(O)チクソトロピー性付与剤〕
チクソトロピー性付与剤(O)としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びこれらの誘導体等が挙げられる。
〔(P)熱伝導性改良剤〕
熱伝導改良剤(P)としては、窒化ホウ素、酸化アルミニウム等が挙げられる。
−防汚塗料組成物の調製方法−
本発明の防汚塗料組成物は、上記成分を混合することにより調製することができる。
(防汚塗料組成物のコンポーネント)
本発明に係る防汚塗料組成物は、1のコンポーネントからなる1液型の塗料として提供されても、2以上のコンポーネントからなる多液型の塗料として提供されてもよい。2以上のコンポーネントからなる多液型である場合、各コンポーネントを混合することにより本発明に係る防汚塗料組成物が調製される。
(多液型防汚塗料組成物/防汚塗料組成物調製用のキット)
本発明に係る防汚塗料組成物が2以上のコンポーネントからなる多液型の塗料として提供される場合、これらの各コンポーネント(各液)は、それぞれ1または複数の成分を含有しており、別個に包装された後、缶などの容器に入れられた状態で貯蔵保管される。塗装時にそれらのコンポーネントの内容物を混合、攪拌して防汚塗料組成物を調製する。すなわち、本発明は一側面において、本発明に係る防汚塗料組成物を調製するための、上記のようなコンポーネントからなるキットを提供する。
【0101】
オルガノポリシロキサン系の防汚塗料組成物については、一般的に、当該防汚塗料組成物のバインダー樹脂の主体をなすオルガノポリシロキサンを含有するコンポーネントを「主剤」と称し、このオルガノポリシロキサンと反応して架橋構造の構築に用いられる化合物を含有するコンポーネントを「硬化剤」と称する。さらに、主剤コンポーネントおよび硬化剤コンポーネントに含まれる化合物のいずれとも反応して変質等が発生するために共存下での貯蔵が好ましくない化合物がある場合、「添加剤」等と称した追加コンポーネントとする。本発明に係る防汚塗料組成物(その調製用のキット)は、そのような主剤成分(X)および硬化剤成分(Y)からなる2液型の形態で製造される場合もあるし、主剤成分(X)、硬化剤成分(Y)および添加剤成分(Z)からなる3液型の形態で製造される場合もある。
【0102】
−防汚塗膜および防汚基材−
防汚塗膜は、前記防汚塗料組成物を硬化させて得られる。
【0103】
前記防汚塗料組成物を硬化させて得られる防汚塗膜は、マクロ生物汚損への耐性を更に向上させることに加えて、スライムなどのミクロ汚損の付着も抑制できるため、水流摩擦抵抗低減が強く要求される船舶などの高い防汚性が要求される用途に対して高い効果が得られる。
【0104】
防汚基材は、基材を前記防汚塗膜で被覆して得られる。防汚基材の製造は、例えば、防汚塗料組成物を基材に塗布する工程と、該工程により基材に塗布された防汚塗料組成物を硬化させる工程とを備えた方法や、防汚塗料組成物を硬化させて得られた防汚膜を基材に貼付ける工程を備えた方法によって行うことができる。
【0105】
防汚塗料組成物を基材に塗布する方法として、具体的には、防汚塗料組成物を十分に攪拌した後、基材にスプレーまたは他の手段により塗布する方法が挙げられ、基材に塗布した防汚塗料組成物を硬化させる方法として、具体的には、常温の大気中で0.5〜3日間程度放置ないし加熱下に強制送風して硬化させる方法が挙げられる。この方法により、基材が防汚塗膜で被覆されてなる防汚基材を作製することができる。
【0106】
防汚塗料組成物を硬化させて得られた防汚塗膜を基材に貼付ける方法として、例えば特開2013−129724号等に記載の公知の技術を用いて、防汚塗料組成物を硬化させて得られた防汚塗膜を含むフィルムを基材に貼付ける方法が挙げられる。この方法により、基材が防汚塗膜で被覆されてなる防汚基材を作製することができる。
【0107】
防汚塗膜の膜厚は、用途などに応じて所望の厚さで形成してよいが、防汚塗料組成物を、通常30〜400μm、好ましくは50〜300μm/回で、1回から複数回、塗布した後に硬化させ、硬化後の膜厚が例えば100〜1000μmとなるようにすれば、塗膜強度および防汚性能に優れた防汚塗膜となる。
【0108】
防汚塗料組成物の塗装の際には、刷毛、ロール、スプレー、ディップコーター等、従来公知の塗装手段を広く用いることが可能であるが、本発明に係るオルガノポリシロキサン系防汚塗料組成物は、前述のとおりスプレー塗装する上で好適な特性を有している。すなわち、本発明に係る防汚塗料組成物をスプレー塗装すると、防汚塗膜の防汚性向上とともにスプレーダスト飛散抑制、被塗物への塗着効率向上を実現することができる。
【0109】
本発明に係る防汚塗料組成物は、発電、港湾・土木建設、船舶(造船ないし修理)などの広範な産業分野において、海水または真水と接触する基材の表面を海生生物の付着から保護し、その基材の本来の機能を長期間に亘って維持するために利用することができる。そのような基材としては、例えば、船舶(船舶外板等)、漁業資材(ロープ、漁網、漁具、浮き子、ブイ等)、火力・原子力発電所の給排水口等の水中構造物、海水利用機器類(海水ポンプ等)、メガフロート、湾岸道路、海底トンネル、港湾設備、運河・水路等の各種海洋土木工事の汚泥拡散防止膜などが挙げられる。
【0110】
本発明に係る防汚塗料組成物は、基材に直接、塗布または含浸してもよい。原子力発電所の給排水口、メガフロート、船舶などの、素材が繊維強化プラスチック(FRP)、鋼鉄、木、アルミニウム合金などである基材に直接塗布する場合にも、本発明に係る防汚塗料組成物はこれらの基材(素材)表面への付着性が良好となるよう調製することができる。
【0111】
また、本発明に係る防汚塗料組成物を塗布する対象の基材は、表面にすでに塗膜が形成されているものであってもよい。すなわち、本発明に係る防汚塗料組成物は、予め防錆剤、プライマーなどの下地材(下塗り)が塗布された船舶または水中構造物等の基材の表面に塗布してもよい。さらには、既に従来の防汚塗料による塗装が行われている、あるいは本発明の防汚塗料組成物による塗装が行われている船舶、特にFRP船あるいは水中構造物等の基材の表面に、補修用として本発明の防汚塗料組成物を上塗りしてもよい。本発明に係る防汚塗料組成物が直接接する塗膜の種類は特に限定されるものではないが、一般的なオルガノポリシロキサン系防汚塗料を塗布する場合と同様、たとえば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などを主成分とする塗料から形成されている塗膜が挙げられる。本発明に係る防汚塗料組成物は、そのような塗膜の表面への付着性が良好となるよう調製することができる。
【実施例】
【0112】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明はその趣旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
<防汚塗料組成物の調製>
表1に、本実施例および比較例に用いた防汚塗料組成物の各成分の一般名称、化学式等を示す。表1中に記載された重量平均分子量Mwは、GPCによって標準ポリスチレンの検量線を用いて測定した。
【0113】
【表1】
【0114】
表2に示した主剤コンポーネント(X)の各成分および硬化剤コンポーネント(Y)の各成分を、それぞれ表2に示した配合量で、ディスパーサーを用いて均一になるよう充分に混合することにより主剤コンポーネント(X)および硬化剤コンポーネント(Y)を調製し、主剤コンポーネント(X)と硬化剤コンポーネント(Y)とを混合することにより実施例1〜10および比較例1〜2の防汚塗料組成物を調製した。表2における主剤コンポーネント(X)および硬化剤コンポーネント(Y)の各成分に関する数値は重量部を表わす。
【0115】
上記のように調製された実施例1〜10および比較例1〜2の防汚塗料組成物を用いたスプレー塗装時のダスト飛散率の測定試験およびそれらの防汚塗料組成物から形成された防汚塗膜の防汚試験を行った。これらの結果は、表2に記載されたとおりである。
〔スプレー塗装時のダスト飛散率〕
スプレー塗装時のダスト飛散率の評価のため
図1に示す測定装置にて試験を実施した。この測定装置は、吸気口、塗装面F、下面BおよびスプレーガンGを備える。
【0116】
幅900mm、高850mmの長方形状に開放された吸気口から風速約2m/sとなるように吸気した。
【0117】
高850mm、幅700mmの塗装面Fを有する板材を、塗装面Fの一辺が上記吸気口の一辺と接し、塗装面Fと吸気口とが垂直となるよう設置し、塗装面Fの全面にあらかじめ重量を計量したポリエチレンシートを貼り付けた。
【0118】
幅450mm、幅700mmの下面Bを有する板材を、下面Bの二辺がそれぞれ上記吸気口および塗装面Fの一辺と接するように設置し、下面Bの全面にあらかじめ重量を計量したポリエチレンシートを貼り付けた。
【0119】
防汚塗料組成物をスプレーガンGに装入し、ガン先(吐出点S)を塗装面Fから700mmの距離、塗装面Fの下端から450mmの高さに設置して、塗装面Fに対して直角をなす方向に、塗装面Fの中央部に向けて、スプレーガンから吐出圧5kgf/cm
2にて実施例1〜10および比較例1〜2の防汚塗料組成物を10秒間吐出した。
【0120】
各塗装の前と後において、防汚塗料組成物が充填されたスプレーガンの重量(スプレーガンの重量と、充填されている防汚塗料組成物の重量との合計)を測定して、塗装前の重量から塗装後の重量を差し引いて、各塗装時に吐出された防汚塗料組成物の重量を計算した。この吐出重量に各防汚塗料組成物の固形分率を乗じて、塗装された防汚塗料組成物の吐出塗料固形分重量とした。
【0121】
塗装後に、塗装面Fに貼付された、各防汚塗料組成物が塗着したポリエチレンシートを24時間乾燥した後に重量(ポリエチレンシートの重量と、塗着している防汚塗料組成物の重量との合計)を測定し、その重量から塗装前のポリエチレンシートの重量を差し引いて、塗着塗料重量とした。
【0122】
塗装後に、下面Bに貼付された、各防汚塗料組成物が塗着したポリエチレンシートを24時間乾燥した後に重量(ポリエチレンシートの重量と、塗着している防汚塗料組成物の重量との合計)を測定し、その重量から塗装前のポリエチレンシートの重量を差し引いて、落下塗料重量とした。
【0123】
吐出塗料固形分重量から塗装面に塗着および下面に落下した塗料の重量を除いたものが飛散スプレーダストの重量であるとして、以下の式によりダスト飛散率を計算した。
【0124】
【数1】
【0125】
各防汚塗料組成物につき2回上記塗装を行い、得られたダスト飛散率の平均値および標準偏差を表2に示した。
【0126】
ダスト飛散率が低い値であるほど、スプレー塗装作業時にスプレーダストの飛散が少なく、塗着効率が高いと評価される。
〔防汚試験〕
(試験板調製)
サンドブラスト板にエポキシ系防食塗料(商品名:バンノー500、中国塗料株式会社製)およびシリコーン系バインダー塗料(商品名:CMPバイオクリンタイコート、中国塗料株式会社製)をこの順にそれぞれ膜厚100μmとなるように積層塗装して得られた板材に、実施例1〜10および比較例1〜2の各組成物を乾燥膜厚で200μmとなるよう塗装して硬化させ、試験板を得た。
【0127】
(動的防汚性試験方法)
上記試験板を室温7日乾燥後、広島県呉沖にて海水に浸漬し、回転ローターを用いて毎時15ノット程度となるよう水流を発生させ、その水流を試験板の防汚塗膜面に当て、3ヶ月毎に試験板の防汚塗膜表面に占める水生生物が付着した領域の面積の比率を目視観察にて評価した。以下に示した評価点にて動的防汚性を評価した。
【0128】
(静置防汚性の試験方法)
上記試験板を室温7日乾燥後、広島県宮島湾にて海水に浸漬した状態で静置し、3ヶ月毎に試験板の防汚膜表面に占める付着生物が付着した領域の面積の比率を目視観察にて評価した。以下に示した評価点にて静置防汚性を評価した。
【0129】
(防汚性試験 評価点)
0 : 水生生物の付着なし
1 : 水生生物が部分的に付着
2 : 水生生物が全面に付着
【0130】
【表2】