(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
  前記橋梁部と前記重錘体支持部は同一の板材から形成され、前記橋梁部と前記重錘体支持部の一方の面に圧電体材料層が積層され、他方の面に前記重錘体が積層され、前記橋梁部と前記重錘体支持部とから成る層と前記圧電体材料層、及び前記重錘体の前記積層方向での投影形状が同じである請求項1記載の発電装置。
                        
                          前記電極は、前記橋梁部の前記長手方向軸の両側であって、前記長手方向軸に沿って前記圧電素子の両端に積層されて4箇所に設けられている請求項1又は2記載の発電装置。
                        
                        
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
  一般に、発電素子が使用される環境にはいろいろな周波数の機械的振動が混在し、特定の周波数や特定な振動方向だけとは限らない。また、Siや金属による構造体の共振周波数(固有振動数)は、外部応力や温度変動によっても変わるという問題がある。従って、発電素子の共振周波数を使用環境の振動の周波数に合わせても、温度変動等で発電効率が低下したり、発電しなくなるという問題がある。
【0008】
  さらに、特許文献1に開示された発電素子の構造の場合、橋梁部に十分な携みを発生させ、発電効率を向上させるためには、橋梁部をできるだけ長く、薄くする必要性がある。しかし、橋梁部を長く且つ薄くすると、構造が大型化するとともに機械的強度が低下し、使用中に過度の振動が加わった場合に、橋梁部が損傷する可能性があり、圧電素子に形成する電極や重錘の配置にも制限があった。
【0009】
  特許文献2に開示された発電素子は、振動の方向が1軸方向に限られ、使用環境における種々の方向の振動を、効率よく電気エネルギーに変換できていないものである。
【0010】
  この発明は、上記背景技術に鑑みて成されたものであり、様々な方向成分を含んだ機械的振動エネルギーを効率よく電気エネルギーに変換し、高い発電効率を得ることが可能で、構造が簡単で強度が高く、小型化も容易な発電装置と発電素子を提供することを目的とする。
 
【課題を解決するための手段】
【0011】
  この発明は、機械的振動エネルギーを電気エネルギーに変換することにより発電を行う発電素子を備えた発電装置であって、前記発電素子は、長手方向軸を有して可撓性を有する橋梁部と、前記橋梁部の基端部が固定された支持枠部と、前記橋梁部の前記長手方向軸の先端部から連続するとともに、所定間隔を隔てて前記橋梁部の基端部側に屈曲して設けられた重錘体と、前記橋梁部の表面の伸縮変形が生じる所定位置に固定された圧電素子と、前記圧電素子に固定され前記圧電素子に発生した電荷を出力する複数の電極とを備え、前記支持枠部の中に複数の前記発電素子が固定され、各発電素子の振動系の固有振動数が各々異なる周波数で構成され、前記各発電素子の各電極が、前記圧電素子に発生した電荷を取り出して電力を出力する発電回路に接続されている発電装置である。
【0012】
  前記重錘体の重心は、前記橋梁部の投影範囲内であって、前記長手方向軸に対して所定の間隔を隔てて平行な軸線上に位置しているものである。さらに、前記重錘体は、前記橋梁部を中心としてその両側に対称な形状で屈曲して設けられていると良い。
【0013】
  前記各発電素子の振動系は、前記重錘体の質量が異なることにより異なる固有振動数に設定されている。または、前記各発電素子の振動系は、前記橋梁部の弾性係数や形状が異なることにより異なる固有振動数に設定されていても良い。
【0014】
  前記各発電素子の前記各振動系は、互いに物理的に接続されて、一方の振動が他方に伝達可能に設けられていると良い。前記各振動系は、各重錘体が互いに連結体により接続されているものである。
【0015】
  またこの発明は、機械的振動エネルギーを電気エネルギーに変換することにより発電を行う発電素子であって、長手方向軸を有して可撓性を有する橋梁部と、前記橋梁部の基端部が固定された支持枠部と、前記橋梁部の前記長手方向軸の先端部から連続するとともに、所定間隔を隔てて前記橋梁部の基端部側に屈曲して設けられた重錘体と、前記橋梁部の表面の伸縮変形が生じる所定位置に固定された圧電素子と、前記圧電素子に固定され前記圧電素子に発生した電荷を出力する複数の電極とを備え、前記重錘体の重心は、前記橋梁部の投影範囲内であって、前記長手方向軸に対して所定の間隔を隔てて平行な軸線上に位置している発電素子である。
【0016】
  前記重錘体は、前記橋梁部と所定間隔を空けて平行に位置した重錘体支持部に固定され、前記重錘体の重心位置が、前記橋梁部の中心から所定間隔を空けて位置しているものである。
【0017】
  前記橋梁部と前記重錘体支持部は同一の板材から形成され、前記橋梁部と前記重錘体支持部の一方の面に圧電体材料層が積層され、他方の面に前記重錘体が積層され、前記橋梁部と前記重錘体支持部とから成る層と前記圧電体材料層、及び前記重錘体の前記積層方向での投影形状が同じである。
 
【発明の効果】
【0018】
  この発明の発電装置によれば、発電装置が設けられた環境中において、幅広い周波数帯域の振動に対して、各発電素子の振動系が各々異なる周波数で共振し、外界の機械的振動を効率よく電気エネルギーに変換して取り出すことができる。
【0019】
  さらに、この発明の発電素子によれば、外界の機械的振動の方向も、XYZ直交座標系の全ての方向の振動を拾って安定に振動し、電気エネルギーに変更することができるので、さらに効率的な発電を行うことができる。また、この発明の発電装置及び発電素子は、構造も簡単で強度も高く、小型化も容易なものである。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0021】
  以下、この発明の発電装置の第一実施形態について、
図1〜
図8に基づいて説明する。この実施形態の発電装置10は、固有振動数(共振周波数)の異なる複数の振動系11,12,13を備えたもので、各振動系11,12,13は、各々単位発電素子21,22,23を構成し、各単位発電素子21,22,23の出力が発電回路14に接続されている。各振動系11,12,13は、同様の構成であり、各部の長さや質量の違いにより各々異なる固有振動数を有するものである。先ず、振動系11の単位発電素子21を基に、この実施形態の単位発電素子21の基本構造について、以下に説明する。ここで、本願発明における方向の説明は、互いに直交するXYZ軸方向の3次元直交座標系を基に説明し、XY平面が水平面、Z軸方向が垂直方向で上下方向として説明する。
 
【0022】
  単位発電素子21は、発電装置10の矩形枠状の中空の支持体部24の内壁面24aから一体にY軸方向に突出して設けられた橋梁部26を備えている。橋梁部26は、Z軸方向の厚さが一定に形成され、Y軸方向に長手方向軸を有した細長い長方形に形成されている。
 
【0023】
  橋梁部26の先端部26aには、先端部26aからX軸方向に所定距離だけ延びて、さらにY軸方向に橋梁部26の基端部26bに向かうL字状の重錘体支持部28が、互いに橋梁部26を挟んで、Y軸方向の長手方向軸を中心として対称に設けられている。各重錘体支持部28は、支持体部24とともに橋梁部26と同一の板材から一体に形成され、橋梁部26及び一対の重錘体支持部28は、XY平面上でほぼE字状に設けられている。従って、橋梁部26と、重錘体支持部28のY軸に平行な部分とは、一定の間隔sを空けて延びている。重錘体支持部28のY軸方向の長さは、橋梁部26よりも短く、重錘体支持部28の端部28aは、支持体部24の内壁面24aから離間して位置している。
 
【0024】
  支持体部24、橋梁部26及び重錘体支持部28の材料は問わないもので、後述する製造方法等に鑑みて、シリコンや、セラミックス等で形成することが好ましい。後述するように、橋梁部26及び重錘体支持部28の材料は、下層電極E0に対して絶縁性又は導電性のいずれの性質を有して形成されていても良い。
 
【0025】
  橋梁部26のZ軸方向の上層には、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)やニオブ酸ナトリウムカリウム等の鉛フリー圧電性セラミックス、圧電性樹脂等の圧電材料で形成された圧電材料層30が設けられている。圧電材料層30は、層状に形成され、橋梁部26及び重錘体支持部28とZ軸方向に同形状のE字状に形成されている。橋梁部26及び重錘体支持部28と圧電材料層30の間には、下層電極E0が同形状で一体的に形成され、下層電極E0を介して橋梁部26及び重錘体支持部28が圧電材料層30と一体に設けられている。
 
【0026】
  橋梁部26に積層された部分の圧電材料層30は、圧電素子34として機能する部分であり、下層電極E0と反対側の圧電素子34の表面側には、4枚の上層電極E1,E2,E3,E4が設けられている。上層電極E1,E2,E3,E4は、圧電素子34のX軸方向の両端とY軸方向の両端の4箇所に積層され、下層電極E0とともに各々発電回路14に接続されている。下層電極E0が、圧電素子34の下面全面に形成された1枚の共通電極になっているのに対し、各上層電極E1〜E4は、圧電素子34の圧電効果が生じる領域である各圧電効果部に形成された電極として設けられている。これは、後述するように、単位発電素子21に作用する外力の方向によって、圧電素子34の各部に加わる応力の向き(圧縮方向、伸張方向)が異なり、圧電素子34の各圧電効果部内に発生する電界の極性が異なることにより、各上層電極E1〜E4に発生するプラス又はマイナスの電荷を効率よく取り込むためである。
 
【0027】
  なお、外力に対して重錘体支持部28にはほとんど撓みが生じず応力も生じないので、圧電材料層30は積層されていなくても良い。さらに、圧電材料層30による圧電素子34は、橋梁部26の全面に積層される他、上層電極E1,E2,E3,E4の配置された領域だけでも良い。ただし、この実施形態では、後述する製造上等の理由により、橋梁部26及び重錘体支持部28と同形状に積層されている。
 
【0028】
  重錘体支持部28のZ軸方向の下層には、重錘体32が一体に取り付けられている。重錘体32は、一対のL字状の重錘体支持部28に一体に取り付けられ、一対のL字状の重錘体支持部28が対称に対向したZ軸方向の投影形状と同形状で、門形に形成されている。重錘体32は、Z軸方向に一定厚みを有し、橋梁部26と平行な部分に多くの質量を有して、所定の質量に形成されている。重錘体32のY軸方向の長さは、橋梁部26よりも短く、重錘体32の端部32aは、重錘体支持部28の端部28aと同位置で、支持体部24の内壁面24aから僅かに離間して位置している。これにより、後述する発電動作において、重錘体32が揺動した場合も、重錘体32の端部32aが支持体部24の内壁面24aに衝突することがない。
 
【0029】
  重錘体32は、重錘体支持部28に沿って門形に形成されているので、橋梁部26のZ軸方向の下側部分には、空間35が形成されている。重錘体32の重心位置Gは、
図4,
図5に示すように、橋梁部26のX軸方向の中心であって、Z軸方向下方に橋梁部26から所定の距離を空けて下方にある。橋梁部26のY軸方向における重錘体32の重心位置Gは、橋梁部26の投影範囲内であって、中央部より僅かに先端部26a側に位置する。
 
【0030】
  重錘体32の材料は、できるだけ比重の大きな材料を用いるのが好ましい。例えば、SUS、鉄、銅、タングステンなどの金属、あるいはセラミックス、もしくはガラスを用いて構成すると良い。さらに、後述するように、単位発電素子21,22,23を、MEMS技術を用いて作る場合は、重錘体32をSiにより製造しても良い。
 
【0031】
  次に、この実施形態の単位発電素子21,22,23を備えた発電装置10について説明する。発電装置10は、
図1に示すように、上述の単位発電素子21と同様の構成の単位発電素子22,23を支持体部24の中に各々設けたものである。支持体部24は、中空の矩形枠状に形成され、支持体部24の内側のXY平面上で、単位発電素子21,22,23がY軸方向に延出して各々位置している。各単位発電素子21,22,23を構成する振動系11,12,13は、各々の固有振動数が異なり、異なる周波数で共振する。この実施形態では、単位発電素子21,22,23の重錘体32の大きさが異なり、その質量が異なることにより、異なる固有振動数としている。
 
【0032】
  なお、各振動系11,12,13を異なる固有振動数とするために、橋梁部26の弾性係数が異なるように幅や長さを変えても良く、厚みや積層材、形状を変えても良い。さらに、振動系11,12,13の各質量と、各橋梁部32の弾性係数の両方を異なる値に設定しても良い。
 
【0033】
  次に、この実施形態の発電回路14について、
図6を基に説明する。ここでは、単位発電素子21に接続された例を基に説明するが、他の単位発電素子22,23も同様の回路構成で同じ発電回路14に接続される。橋梁部26に積層された圧電素子34のうち、上層電極E1,E2,E3,E4に対向する部分及びその周辺が、効率よく圧電効果が生じる部分であり、上層電極E1,E2,E3,E4に対面した各部を圧電効果部P1,P2,P3,P4とする。
 
【0034】
  圧電効果部P1に取り付けられた上層電極E1は、発電回路14の整流回路を形成するダイオードD11のアノードと、ダイオードD12のカソードに各々接続され、ダイオードD11のカソードが、発電回路14において電荷を溜めるコンデンサCfの一端に接続され、ダイオードD12のアノードがコンデンサCfの他端に接続されている。
 
【0035】
  同様に、圧電効果部P2に取り付けられた上層電極E2は、発電回路14の整流回路を形成するダイオードD21のアノードと、ダイオードD22のカソードに各々接続され、ダイオードD21のカソードが、電荷を溜めるコンデンサCfの一端に接続され、ダイオードD22のアノードがコンデンサCfの他端に接続されている。
 
【0036】
  同様に、圧電効果部P3に取り付けられた上層電極E3は、発電回路14の整流回路を形成するダイオードD31のアノードと、ダイオードD32のカソードに各々接続され、ダイオードD31のカソードが、電荷を溜めるコンデンサCfの一端に接続され、ダイオードD32のアノードがコンデンサCfの他端に接続されている。
 
【0037】
  同様に、圧電効果部P4に取り付けられた上層電極E4は、発電回路14の整流回路を形成するダイオードD41のアノードと、ダイオードD42のカソードに各々接続され、ダイオードD41のカソードが、電荷を溜めるコンデンサCfの一端に接続され、ダイオードD42のアノードがコンデンサCfの他端に接続されている。
 
【0038】
  さらに、下層電極E0は、ダイオードD01のアノードと、ダイオードD02のカソードに各々接続され、ダイオードD01のカソードが、電荷を溜めるコンデンサCfの一端に接続され、ダイオードD02のアノードがコンデンサCfの他端に接続されている。
 
【0039】
  これにより、各圧電効果部P1,P2,P3,P4により上層電極E1,E2,E3,E4に正負いずれの電荷が発生しても、コンデンサCfに同極性で溜めることができる。さらにこの実施形態では、3つの単位発電素子21,22,23の各下層電極E0及び上層電極E1,E2,E3,E4が同様にダイオードD11〜D42に接続され、コンデンサCfに接続されている。これにより、コンデンサCfには、3つの単位発電素子21,22,23により発生した電荷を溜めることができる。コンデンサCfは、使用状態において、種々の負荷ZLに接続される。
 
【0040】
  この実施形態の発電装置10は、MEMS技術で作られたセンサの電源等に適しており、微小な構造が要求されるので、支持体部24及び単位発電素子21,22,23の各橋梁部26及び重錘体支持部28の材料はSiを用いて、半導体回路の形成工程を利用して製造することができる。この場合、例えば、橋梁部26及び重錘体支持部28のZ軸方向の厚みは200μm程度でありであり、圧電体層30の同厚みは2μm、重錘体32のZ軸方向の厚みの厚みが1000μm、下層電極E0及び上層電極E1〜E4の厚みは0.01μm程度に設定し、外形を5mm×5mm程度の大きさで製造することができる。製造工程では、Z軸方向にエッチング及び蒸着等の積層工程を繰り返して製造する。その他、印刷やスパッタリング等の工程を用いることもできる。この場合、Si基板としてSOI基板を用いると良い。SOI基板の活性層Siに下層電極E0、圧電体34,上層電極E1〜E4を形成し、ベースSiを重錘体32とすれば良い。
 
【0041】
  その他、支持体部24及び単位発電素子21,22,23の各橋梁部26に金属板を利用することも可能である。その場合は、金属板をエッチング等により所定形状に形成し、金属板の上面が下層電極E0として機能し、この金属板の上にスバッタ法やゾルゲノレ法によって圧電体の薄膜を成膜すると良い。また、上層電極は、金属材料を印刷、蒸着、スバッタ等の方法で形成することができる。
 
【0042】
  次に、この実施形態の単位発電素子21の発電動作について説明する。ここでは、支持体部24がXY平面上に置かれ、Z軸方向に中空部が貫通している。先ず、
図3〜
図5に示す単位発電素子21の重錘体32に、振動等により加速度が作用し力がかかる場合について説明する。
 
【0043】
  先ず、X軸正方向の力+Fxが作用した場合について説明する。重錘体32の重心Gが橋梁部26のほぼ中央部でZ軸方向下方に位置しているので、外力+Fxが作用すると橋梁部26の圧電素子34には、
図7(a)に示すように、次のように力が作用する。上層電極E1に対向する圧電効果部P1には、圧縮方向の力が作用し、上層電極E2に対向する圧電効果部P2には、伸張方向の力が作用し、上層電極E3に対向する圧電効果部P3には、伸張方向の力が作用し、上層電極E4に対向する圧電効果部P4には、圧縮方向の力が作用する。これにより、圧電効果部P1,P2には互いに逆極性の電界が発生し、圧電効果部P3,P4にも、互いに逆極性の電界であって圧電効果部P1,P3が逆極性となる電界が発生する。そして、上層電極E1,E4に同極性の電荷、上層電極E2,E3には互いに同極性であって上層電極E1,E4とは逆極性の電荷が発生し、各々電荷が溜められる。各電極E0〜E4に溜められた電荷は、上層電極E1,E4と、上層電極E2,E3とでは逆極性であるが、
図6に示す回路により整流されて、コンデンサCfに同極性で電荷が溜められる。同様に、X軸負方向にマイナスの力−Fxが作用した場合は、上記と逆極性で、各々の電極に電荷が発生するが、
図6に示す回路により、コンデンサCfには同極性で電荷が溜められる。
 
【0044】
  次に、単位発電素子21の重錘体32にY軸正方向の力+Fyが作用した場合について説明する。重錘体32の重心Gは、橋梁部26のほぼ中央部のZ軸方向下方に位置しているので、Y軸正方向の力+Fyが作用した場合、橋梁部26には、
図5において時計方向のモーメントが作用する。これにより、
図7(b)に示すように、各上層電極E1,E2,E3,E4に対向する圧電効果部P1,P2,P3,P4には、各々同様に圧縮方向の力が作用し、各々同極性の電界が発生する。これにより、各上層電極E1,E2,E3,E4には各々同極性で電荷が発生し、
図6に示す回路により整流されて、コンデンサCfに電荷が溜められる。同様に、Y軸負方向にマイナスの力−Fyが作用した場合は、上記と逆極性で、電荷が発生するが、
図6に示す回路により、コンデンサCfには同極性で電荷が溜められる。
 
【0045】
  次に、単位発電素子21の重錘体32にZ軸正方向の力+Fzが作用した場合について説明する。重錘体32の重心Gは、橋梁部26のほぼ中央部のZ軸方向下方に位置しているので、
図7(c)に示すように、各上層電極E1,E2に対向する圧電効果部P1,P2には、伸張方向の力が作用し各々同極性の電界が発生して、各上層電極E1,E2には各々同極性で電荷が発生する。一方、各上層電極E3,E4に対向する圧電効果部P3,P4には圧縮方向の力が作用し、圧電効果部P1,P2とは逆極性の電界が発生して、各上層電極E3,E4には上層電極E1,E2とは逆極性の電荷が発生するが、
図6に示す回路により整流されて、コンデンサCfに電荷が溜められる。同様に、Z軸負方向にマイナスの力−Fzが作用した場合は、上記と逆極性で、電荷が発生するが、
図6に示す回路により、コンデンサCfには同極性で電荷が溜められる。
 
【0046】
  この実施形態の説明では、伸張方向の力と圧縮方向の力で発生する電荷が逆極性としたが、圧電材料層を圧電セラミックスにし、分極処理を制御することにより、伸張と圧縮で同じ極性の電荷を発生させることも可能である。この場合でも、
図6に示す発電回路14は有効なものである。
 
【0047】
  次に、この実施形態の単位発電素子21,22,23を備えた発電装置10による発電動作について説明する。発電装置10は、上述のように各々異なる固有振動数の振動系11,12,13から成るので、外界の振動に対する共振周波数が異なる。
図8(a),(b),(c)に示すように、振動系11のX軸方向の共振周波数をfx1とし、Y軸方向の共振周波数をfy1とし、Z軸方向の共振周波数をfz1とする。振動系12のX軸方向の共振周波数をfx2とし、Y軸方向の共振周波数をfy2とし、Z軸方向の共振周波数をfz2とする。振動系13のX軸方向の共振周波数をfx3とし、Y軸方向の共振周波数をfy3とし、Z軸方向の共振周波数をfz3とする。これらの振動系11、振動系12、振動系13の周波数特性をまとめると、XYZ軸方向に各々の共振周波数と振幅は、
図8に示すように表される。これにより、XYZ軸方向の各力に対して、異なる周波数の幅広い帯域の機械的振動に対して、単位発電素子21,22,23の振動系11,12,13が各々異なる周波数で共振可能であり、幅広い周波数の振動が発電動作に寄与し、効果的に発電を行うことができる。
 
【0048】
  この実施形態の発電装置10と単位発電素子21,22,23によれば、発電装置10が設けられた環境の幅広い機械的振動に対応して、単位発電素子21,22,23の振動系11,12,13が各々異なる周波数で共振し、外界の振動を効率よく電気エネルギーに変換して取り出すことができる。しかも、外界の機械的振動の方向も、XYZ直交座標系の全ての方向の振動を拾って共振し、電気エネルギーに変更することができるので、この点からも効率的な発電を行うことができる。また、XY平面上でY軸方向の軸を中心に対称な形状に形成されているので、効率よく振動し、構造も簡単で強度も高いものである。さらに、重錘体支持部28及び重錘体32が橋梁部26の先端部26aから屈曲して基端部26bに伸びる構造に形成され、小型化も容易なものである。
 
【0049】
  次にこの発明の第二実施形態の発電装置36について
図9を基にして説明する。ここで、上記実施形態と同様の部材は同一の符号を付して説明を省略する。この実施形態の発電素子36は、単位発電素子21,22,23の配置を工夫して、全体の体積を縮小したものである。
図9に示すように、単位発電素子21,22と単位発電素子23のY軸方向の向きを逆にして、X軸方向の重錘体32の幅分だけX軸方向の寸法を短くして、スペース効率を上げたものである。
 
【0050】
  この実施形態の発電装置36と単位発電素子21,22,23によよっても、上記実施形態と同様の効果が得られ、さらに小型で効率の良い発電装置を提供することができる。
 
【0051】
  次にこの発明の第三実施形態の発電装置38について
図10〜
図14を基にして説明する。ここで、上記実施形態と同様の部材は同一の符号を付して説明を省略する。この実施形態の発電素子38は、
図10に示すように、単位発電素子21,23の互いに対向する重錘体32の端部同士、及び単位発電素子22,23の互いに対向する重錘体32の端部同士を連結体40で物理的に連結したものである。
 
【0052】
  以下に、重錘体32の端部同士を連結することによる作用について説明する。先ず、単純化のため
図11に示す片持ち梁による基本的振動系41,42を想定する。基本的振動系41に重錘体m1が設けられ、基本的振動系42には重錘体m2が設けられ、基本的振動系41,42の各固有振動数は異なる。基本的振動系41,42の各橋梁部44には、図示しない下層電極E0、及び圧電体46を介して上層電極E1が設けられているとする。
 
【0053】
  基本的振動系41の周波数特性を
図12(a)に示し、基本的振動系42の周波数特性を
図12(b)に示す。基本的振動系41の共振周波数をf1、共振時の振幅のピークをQlとし、基本的振動系42の共振周波数をf2、共振時の振幅のピークをQ2とする。基本的振動系41がその共振周波数で振動した時、共振時のピークはQlとなり、電極E1に大きな電荷が発生する。この電荷は、自分の電荷で振動を妨げることになる。また、共振時に発生する大量の電荷や応力で、圧電体46の薄膜や発電素子の機構部にダメージを与える可能性がある。
 
【0054】
  同様に、基本的振動系42が共振周波数で振動した時、共振時のピークはQ2となり、電極E2に大きな電荷が発生し、この電荷により自分の振動を妨げることになる。また、共振時に発生する大量の電荷や応力で、圧電体46の薄膜や発電素子の機構部にダメージを与える可能性がある。
 
【0055】
  上記のような過剰な振動や加速度を抑えるために、
図13に示すように、重錘体m1,m2を連結体40で物理的に連結し、基本的振動系41が共振周波数f1で振動した時、その振動を基本的振動系42に逃がし、基本的振動系41の共振時のピークを下げ、基本的振動系42でも発電するようにすればよい。同様に、基本的振動系42が共振周波数f2で振動した時、その振動を基本的振動系41に逃がし、基本的振動系42の共振時のピークを下げ、基本的振動系41でも発電するようにすればよい。これにより、一つの共振周波数f1により上層電極E1,E2の両方で電荷が発生し、発生した電荷を発電回路47に出力し、電力として取り出すことができる。しかも、大きな外力が作用した場合にも、基本的振動系42に力を分散して、破損を防止することができる。同様に、他の共振周波数f2によっても、上層電極E1,E2の両方で電荷が発生し、発生した電荷を発電回路14に出力し、電力として取り出すことができる。しかも、大きな外力が作用した場合にも、基本的振動系41に力を分散して、破損を防止することができる。
 
【0056】
  連結体40で重錘体m1,m2を連結することにより、基本的振動系41,42では、連結体40がない場合と比較して上層電極E1の周波数f1での発生電荷の量である発電量が低下するが、
図14(a)で、示すように、上層電極E2でも発電する。同様に、周波数f2では、上層電極E2での発電量が低下するが、上層電極E1も発電する。そして、発電回路47で電極E4lとE42に発生する両者の電荷を集めて発電すれば、効率的な発電が可能となる。しかも、周波数f1、周波数f2で振幅が抑えられるので橋梁部44の破損の可能性も抑えられる。なお、重錘体m1,m2の振幅が小さい時は、連結体40による結合はさほど機能しないが、重錘体m1,m2の振幅が大きくなると、連結体40は振動系41,42の振幅を制限するようになる。
 
【0057】
  この実施形態の発電装置38は、この作用を利用したもので、
図10に示すように、単位発電素子21,22の互いに対向する重錘体32の端部同士、及び単位発電素子22,23の互いに対向する重錘体32の端部同士を連結体40で物理的に連結し、発電効率を向上させ、外力に対する強度も高めたものである。ただし、互いの振動系を強く結合しすぎると、上記のかえって発電能力が抑えられて発電効率が落ちるので、適切な強度の連結が必要になる。
 
【0058】
  この実施形態の発電装置38と単位発電素子21,22,23によれば、振動系11,12,13の単位発電素子21,22,23互いの機械的振動が、連結体40により他方の振動系に伝搬され、一つの振動系が共振による大きな加速度を生じたとしても、互いに他の振動系に機械的振動を分散させ、振幅のピーク値を低減させ、橋梁部26の破損を防止する。
 
【0059】
  次にこの発明の第四実施形態の発電装置について
図15を基にして説明する。ここで、上記実施形態と同様の部材は同一の符号を付して説明を省略する。この実施形態の発電装置は、単位発電素子51の形状が上記実施形態とは異なるもので、さらに全体の体積を小さくすることができるものである。
 
【0060】
  この実施形態の単位発電素子51は、重錘体52が橋梁部26の先端部26aからZ軸方向下方に連続し、橋梁部26と所定間隔を空けてさらにY軸方向に橋梁部26の基端部26b側に延びてL字状で、一つの重錘体52が形成されたものである。従って、重錘体52は、橋梁部26のZ軸方向の下方に位置しているものである。
 
【0061】
  この実施形態の重錘体52は、上記実施形態の重錘体32と異なり、橋梁部26とZ軸方向に重なって設けられているため、橋梁部26とは別に形成した後、L字状に形成した重錘体52の一端部52aを橋梁部26の先端部26aに接合して形成する。
 
【0062】
  この実施形態の発電装置も、上記実施形態と同様に支持枠部の内側に、単位発電素子51と同様の構造であって、固有振動数の異なる複数の単位発電素子が設けられている。固有振動数を異なる値にする方法は、上記実施形態と同様である。
 
【0063】
  この実施形態の発電装置と単位発電素子51によっても、上記実施形態と同様の効果が得られ、さらに小型で効率の良い発電装置を提供することができる。
 
【0064】
  なお、この発明の発電素子は、上記実施形態に限定されるものではない。重錘体は上記第一実施形態の一対の重錘体のうちの一方のみを備えた形状でも良く、これにより、橋梁部はY軸方向の長手方向軸に対して非対称な形状になるが、発電装置の形状をより小型化することが可能である。重錘体の重心位置は、橋梁部のほぼ中央からZ軸方向に所定距離離間している他、橋梁部の投影範囲内であって、長手方向軸に対して所定の間隔を隔てて平行位置して良いが、重錘体が非対称な場合は橋梁部の投影範囲から僅かに外れていても良い。
 
【0065】
  また、支持枠部や単位発電素子の橋梁部や重錘体支持部は、上述の素材意外に置き換えてもよい。単位発電素子は、橋梁部が可撓性を有していれば良く、橋梁部の領域毎に弾性係数を変えて、固有振動数を設定しても良く、固有振動数を設定する方法は問わない。
 
 
  様々な方向成分を含んだ機械的振動エネルギーを効率よく電気エネルギーに変換し、高い発電効率を得ることが可能で、構造が簡単で強度が高く、小型化も容易な発電装置と発電素子である。長手方向軸を有して可撓性を有する橋梁部26と、橋梁部26の基端部26bが固定された支持枠部24を備える。橋梁部26の長手方向軸の先端部26aから連続するとともに、所定間隔を隔てて橋梁部26の基端部26b側に屈曲して設けられた重錘体32を備える。橋梁部26の表面の伸縮変形が生じる所定位置に、圧電素子34を有する。圧電素子34は、複数の電極E0,E1,E2,E3,E4を備える。支持枠部24の中に、複数の発電素子21,22,23が固定されている。発電素子21,22,23の振動系の固有振動数が、各々異なる周波数である。