(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記複数の部分のうち、前記過熱器管の腐食の程度が他の部分より大きい部分、又は腐食性粒子若しくは腐食性ガス又はその両方の濃度が他の部分より高い部分には、当該部分に供給される腐食抑制粒子の重量を他の部分と比較して大きくするように、前記粒子供給装置を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の腐食抑制装置付きボイラ。
前記複数の腐食センサは、前記複数の吹込み口よりも燃焼排ガスの流れの上流側に設けられている複数の第1腐食センサ、及び、前記複数の吹込み口よりも燃焼排ガスの流れの下流側に設けられている複数の第2腐食センサを含み、
前記複数の第1腐食センサは、前記複数の部分のそれぞれの腐食の程度と対応する腐食の程度を検出できる所定位置に設けられ、その対応する腐食の程度に応じた第1検出信号を生成し、
前記制御部は、前記複数の第1腐食センサが生成する前記第1検出信号に基づいて、前記複数の部分のそれぞれに対して、各部分での腐食の程度と対応する重量の腐食抑制粒子を供給することができるように、前記複数の吹込み口の腐食抑制粒子の第1吹込み重量を設定し、前記第2腐食センサが生成する第2検出信号に基づいて前記第1吹込み重量を調整し、前記複数の吹込み口から調整された前記第1吹込み重量の腐食抑制粒子が吹き込まれるように前記粒子供給装置を制御することを特徴とする請求項1に記載の腐食抑制装置付きボイラ。
前記複数の腐食センサは、前記複数の吹込み口よりも燃焼排ガスの流れの上流側に設けられている複数の第1腐食センサ、及び、前記複数の吹込み口よりも燃焼排ガスの流れの下流側に設けられている複数の第2腐食センサを含み、
前記複数の第1腐食センサは、前記複数の部分のそれぞれの燃焼排ガス中の腐食性粒子若しくは腐食性ガス又はその両方の濃度と対応する濃度を検出できる所定位置に設けられ、その対応する濃度に応じた第1検出信号を生成し、
前記制御部は、前記複数の第1腐食センサが生成する前記第1検出信号に基づいて、前記複数の部分のそれぞれに対して、各部分での腐食性粒子若しくは腐食性ガス又はその両方の濃度と対応する重量の腐食抑制粒子を供給することができるように、前記複数の吹込み口の腐食抑制粒子の第1吹込み重量を設定し、前記第2腐食センサが生成する第2検出信号に基づいて前記第1吹込み重量を調整し、前記複数の吹込み口から調整された前記第1吹込み重量の腐食抑制粒子が吹き込まれるように前記粒子供給装置を制御することを特徴とする請求項2に記載の腐食抑制装置付きボイラ。
【背景技術】
【0002】
従来のボイラとして、燃料を燃焼炉で燃焼させて、その燃焼により発生する燃焼熱や燃焼排ガスが有する熱によって過熱器内の蒸気を過熱して、高温・高圧の過熱蒸気を発生するものがある。この過熱蒸気は、発電に利用することができる。
【0003】
ここで、近年にあっては、CO
2削減や廃棄物の熱利用の観点から、例えば建設廃材系木質等のバイオマスや、廃タイヤ及び廃プラスチック等の廃棄物をボイラの燃料として活用することが進められている。
【0004】
このようなバイオマス燃料や廃棄物燃料にあっては、燃料中に、例えばNa、K、Cl等の塩類や、鉛及び亜鉛等の重金属を含んでいる。従って、燃焼炉での燃焼により、例えば、KCl、NaCl、ZnCl
2、K
2SO
4、Na
2SO
4等のうちのいくつかが合わさって、低融点(300°C程度)の溶融塩(共晶塩)が生成され、このような溶融塩は、燃焼灰と共に下流側の過熱器に流れていく。この過熱器は、上記発電に利用される高温・高圧の蒸気を生成するものであるから、そのガス温度は、上記溶融塩の融点より高い温度に設定されている。従って、KCl、NaCl、ZnCl
2、K
2SO
4、Na
2SO
4等のうちのいくつかが合わさって生成された溶融塩が、300°C以上の高温の過熱器を構成する過熱器管の表面に付着することによって、過熱器管が腐食するという問題を生じている。
【0005】
次に、このように過熱器管が腐食するという問題を解決するための従来のボイラの腐食防止方法の一例について説明する(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
このボイラの腐食防止方法は、所定量の所定の粒子(腐食防止粒子)を燃焼炉内に供給して、当該腐食防止粒子を、この燃焼炉内で生成される溶融塩の粒子(溶融塩粒子)に混合させるものである。この混合によって、溶融塩粒子は、良好に分散されて、この溶融塩粒子の表面が腐食防止粒子によって取り囲まれた状態となり、溶融塩粒子を腐食防止粒子によって希釈することができる。そして、この希釈された溶融塩粒子が、下流側の過熱器管の表面に付着することになるので、過熱器管の表面に付着する溶融塩粒子の濃度及び接触面積を、腐食防止粒子によって低減することができる。これによって、過熱器管の腐食を抑制しようとするものである。
【0007】
なお、腐食防止粒子は、その融点が燃焼炉の燃焼温度より高く、燃焼炉及び過熱器付近では溶融しないものであり、かつ、塩素分濃度、Na濃度、K濃度、重金属濃度が各々1000ppm以下であって、溶融塩成分を殆ど含まないものである。
【0008】
そして、腐食防止粒子の平均粒子径は、10〜20μmに規定されている。このように平均粒子径を規定したのは、平均粒子径が20μmを越えると、腐食防止粒子が大き過ぎて溶融塩粒子が腐食防止粒子に取り囲まれ難くなると共に、腐食防止粒子が過熱器管に付着し難くなる。また、腐食防止粒子の平均粒子径が10μmより小さいと、腐食防止粒子が小さ過ぎて燃焼排ガス流に乗って過熱器管を回り込み、腐食防止粒子が過熱器管に付着し難くなるためと考えられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記従来のボイラの腐食防止方法では、過熱器管の表面に付着する溶融塩粒子の濃度及び接触面積を、腐食防止粒子によって低減することによって、過熱器管の腐食を抑制しようとするものであるが、過熱器管の腐食を効果的に抑制するためには、どの程度の重量の腐食防止粒子を燃焼炉内に供給すればよいのか不明である。
【0011】
従って、腐食防止粒子の燃焼炉内への供給量が過剰であると、腐食防止粒子のコストが嵩むと共に、この腐食防止粒子を含む燃焼灰の処理のためのコストも嵩む。そして、腐食防止粒子の燃焼炉内への供給量が不足すると、過熱器管の腐食を効果的に抑制することができない。
【0012】
また、腐食防止粒子を燃焼炉内に供給するにしても、腐食防止粒子と溶融塩粒子とが互いに十分に混合するように腐食防止粒子を燃焼炉内に供給する必要があるが、上記公報には、そのような供給方法についての開示はされてはいない。
【0013】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、過熱器管の腐食を効果的に抑制することができると共に、腐食抑制粒子の使用量を低減することができる腐食抑制装置付きボイラ及びボイラの腐食抑制方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様に係る腐食抑制装置付きボイラは、燃焼排ガスが通る排ガス通路と、前記排ガス通路内に設けられている過熱器管と、
溶融塩による前記過熱器管の腐食を抑制するための腐食抑制装置とを備える腐食抑制装置付きボイラにおいて、前記排ガス通路内の前記過熱器管が設置されている空間の
前記排ガス通路断面において分散した複数の部分又は前記過熱器管の
前記排ガス通路断面において分散した複数の部分のそれぞれの腐食の程度を検出して、その腐食の程度と対応する検出信号を生成する複数の腐食センサ
であって、前記複数の部分のそれぞれの近傍において燃焼排ガスの流れ方向の上流側位置に設けられた腐食センサを含む前記複数の腐食センサと、前記過熱器管よりも燃焼排ガスの流れの上流側に設けられている複数の吹込み口、及び、前記複数の吹込み口のそれぞれに設けられた、粒子径が0.1μm以上10μm未満であって前記過熱器管の表面に付着することにより前記過熱器管の腐食を抑制する腐食抑制粒子を供給する粒子供給部を有し、前記複数の吹込み口のうちの1又は2以上の所望の前記吹込み口から前記排ガス通路内に所望重量の腐食抑制粒子を吹き込むことができる粒子供給装置と、前記複数の腐食センサが生成する前記検出信号に基づいて、前記複数の部分に対して、各部分での腐食の程度と対応する重量の腐食抑制粒子を供給することができるように、前記粒子供給装置を制御する制御部とを備えることを特徴とするものである。
【0015】
この発明に係る腐食抑制装置付きボイラによると、複数の腐食センサは、過熱器管の複数のそれぞれの部分での腐食の程度を検出して、その腐食の程度と対応する検出信号を生成することができる。そして、粒子供給装置は、過熱器管よりも燃焼排ガスの流れの上流側に設けられている複数の吹込み口のうちの1又は2以上の吹込み口から排ガス通路内に腐食抑制粒子を吹き込むことができる。また、制御部は、複数の腐食センサが生成する複数のそれぞれの検出信号に基づいて、過熱器管の複数のそれぞれの部分に対して、各部分での腐食の程度と対応する重量の腐食抑制粒子を供給することができるように、粒子供給装置を制御することができる。
【0016】
よって、例えば排ガス通路内の腐食性粒子を含む燃焼排ガスの流れに偏流が生じたために、過熱器管の一部が局所的に腐食の程度が大きくなることがあっても、その部分に対して、その部分での腐食の程度と対応する大きい重量の腐食抑制粒子を供給することができる。そして、過熱器管の腐食の程度の小さい部分に対しては、その部分での腐食の程度と対応する小さい重量の腐食抑制粒子を供給することができる。
【0017】
本発明の別の一態様に係る腐食抑制装置付きボイラにおいて、燃焼排ガスが通る排ガス通路と、前記排ガス通路内に設けられている過熱器管と、
溶融塩による前記過熱器管の腐食を抑制するための腐食抑制装置とを備える腐食抑制装置付きボイラにおいて、
前記腐食抑制装置は、前記排ガス通路内の前記過熱器管が設置されている空間の
前記排ガス通路断面において分散した複数の部分又は前記過熱器管の
前記排ガス通路断面において分散した複数の部分のそれぞれの燃焼排ガス中の腐食性粒子若しくは腐食性ガス又はその両方の濃度を検出して、当該濃度と対応する検出信号を生成する複数の腐食センサ
であって、前記複数の部分のそれぞれの近傍において燃焼排ガスの流れ方向の上流側位置に設けられた腐食センサを含む前記複数の腐食センサと、前記過熱器管よりも燃焼排ガスの流れの上流側に設けられている複数の吹込み口、及び、前記複数の吹込み口のそれぞれに設けられた、粒子径が0.1μm以上10μm未満であって前記過熱器管の表面に付着することにより前記過熱器管の腐食を抑制する腐食抑制粒子を供給する粒子供給部を有し、前記複数の吹込み口のうちの1又は2以上の所望の前記吹込み口から前記排ガス通路内に所望重量の腐食抑制粒子を吹き込むことができる粒子供給装置と、前記複数の腐食センサが生成する前記検出信号に基づいて、前記複数の部分のそれぞれに対して、各部分での前記濃度と対応する重量の腐食抑制粒子を供給することができるように、前記粒子供給装置を制御する制御部とを備えることを特徴とするものである。
【0018】
この発明に係る腐食抑制装置付きボイラによると、複数の腐食センサは、過熱器管の複数のそれぞれの部分での燃焼排ガス中の腐食性粒子若しくは腐食性ガス又はその両方の濃度を検出して、当該濃度と対応する検出信号を生成することができる。そして、粒子供給装置は、過熱器管よりも燃焼排ガスの流れの上流側に設けられている複数の吹込み口のうちの1又は2以上の所望の吹込み口から排ガス通路内に所望重量の腐食抑制粒子を吹き込むことができる。また、制御部は、複数の腐食センサが生成する複数のそれぞれの検出信号に基づいて、過熱器管の複数のそれぞれの部分に対して、各部分での腐食性粒子若しくは腐食性ガス又はその両方の濃度と対応する重量の腐食抑制粒子を供給することができるように、粒子供給装置を制御することができる。
【0019】
この発明に係る腐食抑制装置付きボイラにおいて、前記制御部は、前記複数の部分のうち、前記過熱器管の腐食の程度が他の部分より大きい部分、又は腐食性粒子若しくは腐食性ガス又はその両方の濃度が他の部分より高い部分には、当該部分に供給される腐食抑制粒子の重量を他の部分と比較して大きくするように、前記粒子供給装置を制御するものとするとよい。
【0020】
このようにすると、過熱器管の複数のそれぞれの部分での腐食を効果的に抑制することができる。
【0021】
上記の腐食抑制装置付きボイラにおいて、前記複数の腐食センサは、前記複数の吹込み口よりも燃焼排ガスの流れの上流側に設けられている複数の第1腐食センサ、及び、前記複数の吹込み口よりも燃焼排ガスの流れの下流側に設けられている複数の第2腐食センサを含み、前記複数の第1腐食センサは、前記過複数の部分のそれぞれの腐食の程度と対応する腐食の程度を検出できる所定位置に設けられ、その対応する腐食の程度に応じた第1検出信号を生成し、前記制御部は、前記複数の第1腐食センサが生成する複数のそれぞれの前記第1検出信号に基づいて、前記複数の部分のそれぞれに対して、各部分での腐食の程度と対応する重量の腐食抑制粒子を供給することができるように、前記複数の吹込み口の腐食抑制粒子の第1吹込み重量を設定し、前記第2腐食センサが生成する第2検出信号に基づいて前記第1吹込み重量を調整し、前記複数の吹込み口から調整された前記第1吹込み重量の腐食抑制粒子が吹き込まれるように前記粒子供給装置を制御するものとするとよい。
【0022】
このようにすると、複数の第1腐食センサは、過熱器管の複数のそれぞれの部分での腐食の程度と対応する腐食の程度を検出して、その対応する腐食の程度に応じた第1検出信号を生成することができる。制御部は、複数の第1腐食センサが生成する複数のそれぞれの第1検出信号に基づいて、過熱器管の複数のそれぞれの部分に対して、各部分での腐食の程度と対応する重量の腐食抑制粒子を供給することができるように、粒子供給装置を制御することができる。
【0023】
上記の腐食抑制装置付きボイラにおいて、前記複数の腐食センサは、前記複数の吹込み口よりも燃焼排ガスの流れの上流側に設けられている複数の第1腐食センサ、及び、前記複数の吹込み口よりも燃焼排ガスの流れの下流側に設けられている複数の第2腐食センサを含み、前記複数の第1腐食センサは、前記複数の部分のそれぞれの燃焼排ガス中の腐食性粒子若しくは腐食性ガス又はその両方の濃度と対応する濃度を検出できる所定位置に設けられ、その対応する濃度に応じた第1検出信号を生成し、前記制御部は、前記複数の第1腐食センサが生成する複数のそれぞれの前記第1検出信号に基づいて、前記複数の部分のそれぞれに対して、各部分での腐食性粒子若しくは腐食性ガス又はその両方の濃度と対応する重量の腐食抑制粒子を供給することができるように、前記複数の吹込み口の腐食抑制粒子の第1吹込み重量を設定し、前記第2腐食センサが生成する第2検出信号に基づいて前記第1吹込み重量を調整し、前記複数の吹込み口から調整された前記第1吹込み重量の腐食抑制粒子が吹き込まれるように前記粒子供給装置を制御するものとするとよい。
【0024】
このようにすると、複数の第1腐食センサは、過熱器管の複数のそれぞれの部分での燃焼排ガス中の腐食性粒子若しくは腐食性ガス又はその両方の濃度と対応する濃度を検出して、その対応する濃度に応じた第1検出信号を生成することができる。制御部は、複数の第1腐食センサが生成する複数のそれぞれの第1検出信号に基づいて、過熱器管の複数のそれぞれの部分に対して、各部分での腐食性粒子若しくは腐食性ガス又はその両方の濃度と対応する重量の腐食抑制粒子を供給することができるように、粒子供給装置を制御することができる。
【0025】
本発明の一態様に係るボイラの腐食抑制方法は、燃焼排ガスが通る排ガス通路と、前記排ガス通路内に設けられている過熱器管と、
溶融塩による前記過熱器管の腐食を抑制するための腐食抑制装置とを備え、前記腐食抑制装置が、腐食センサ、粒子供給装置、及び制御部を有するボイラの腐食抑制方法において、複数の腐食センサが、前記排ガス通路内の前記過熱器管が設置されている空間の
前記排ガス通路断面において分散した複数の部分又は前記過熱器管の
前記排ガス通路断面において分散した複数の部分のそれぞれの腐食の程度を検出して、その腐食の程度と対応する検出信号を生成し、前記粒子供給装置が、前記過熱器管よりも燃焼排ガスの流れの上流側に設けられている複数の吹込み口のうちの1又は2以上の所望の前記吹込み口から前記排ガス通路内に、粒子径が0.1μm以上10μm未満であって前記過熱器管の表面に付着することにより前記過熱器管の腐食を抑制する、所望重量の腐食抑制粒子を吹き込むことができ、前記制御部が、前記複数の腐食センサが生成する前記検出信号に基づいて、前記複数の部分のそれぞれに対して、各部分での腐食の程度と対応する重量の腐食抑制粒子を供給することができるように、前記粒子供給装置を制御することを特徴とするものである。
【0026】
本発明に係るボイラの腐食抑制方法によると、第1の本発明に係る腐食抑制装置付きボイラと同様の作用を奏することができる。
【0027】
本発明の別の一態様に係るボイラの腐食抑制方法は、燃焼排ガスが通る排ガス通路と、前記排ガス通路内に設けられている過熱器管と、
溶融塩による前記過熱器管の腐食を抑制するための腐食抑制装置とを備え、前記腐食抑制装置が、腐食センサ、粒子供給装置、及び制御部を有するボイラの腐食抑制方法において、前記腐食センサが、前記排ガス通路内の前記過熱器管が設置されている空間の
前記排ガス通路断面において分散した複数の部分又は前記過熱器管の
前記排ガス通路断面において分散した複数の部分のそれぞれの燃焼排ガス中の腐食性粒子若しくは腐食性ガス又はその両方の濃度を検出して、当該濃度と対応する検出信号を生成し、前記粒子供給装置が、前記過熱器管よりも燃焼排ガスの流れの上流側に設けられている複数の吹込み口のうちの1又は2以上の所望の前記吹込み口から前記排ガス通路内に所望重量の腐食抑制粒子を吹き込むことができ、前記制御部が、前記複数の腐食センサが生成する前記検出信号に基づいて、前記複数の部分のそれぞれに対して、各部分での前記濃度と対応する重量の腐食抑制粒子を供給することができるように、前記粒子供給装置を制御することを特徴とするものである。
【0028】
本発明に係るボイラの腐食抑制方法によると、第2の本発明に係る腐食抑制装置付きボイラと同様の作用を奏することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る腐食抑制装置付きボイラ及びボイラの腐食抑制方法によると、過熱器管の
排ガス通路断面において分散した複数の
部分のそれぞれに対して、各部分での腐食の程度、又は腐食性粒子若しくは腐食性ガス又はその両方の濃度と対応する重量の腐食抑制粒子を供給することができる構成としたので、過熱器管の腐食を効果的に抑制することができると共に、腐食抑制粒子の使用量を低減することができる。これによって、腐食抑制粒子に掛かるコスト、及びこの腐食抑制粒子を含む燃焼灰の処理のためのコストを低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る腐食抑制装置付きボイラ19及びボイラの腐食抑制方法の第1実施形態を、
図1〜
図4を参照して説明する。
図1及び
図2に示す腐食抑制装置付きボイラ(以下、単に「ボイラ」と言うこともある。)19は、燃料を燃焼炉10で燃焼させて、その燃焼により発生する燃焼熱や燃焼排ガスが有する熱によって過熱器管27内の蒸気を過熱して、高温・高圧の過熱蒸気を発生することができるものである。
【0032】
そして、このボイラ19には、腐食抑制装置59が設けられており、この腐食抑制装置59が、腐食抑制粒子を第2煙道21内に吹き込むことによって、この下流側に設けられている過熱器管27の腐食を抑制することができるようになっている。また、このボイラ19は、燃焼炉10としての例えばごみ焼却炉を適用している排熱ボイラであり、更に、過熱器管27を通して得られる高温・高圧の過熱蒸気を利用して発電を行う発電機11を備えている。
【0033】
ごみ焼却炉(燃焼炉)10は、
図1及び
図2に示すように、ごみを供給するホッパ12を備えている。ホッパ12は、シュート13を介して主燃焼室14に繋がっており、ホッパ12から供給されたごみは、シュート13を通って主燃焼室14に送られる。主燃焼室14には、乾燥ストーカ15、燃焼ストーカ16及び後燃焼ストーカ17が設けられている。各ストーカ15、16、17の下方から一次空気が送られており、また主燃焼室14の天井14aから二次空気が送られている。
【0034】
図1に示す主燃焼室14のごみは、まず乾燥ストーカ15に送られ、一次空気及び主燃焼室14の輻射熱により乾燥され着火される。着火したごみは、燃焼ストーカ16に送られる。また着火したごみからは、熱分解により可燃性ガスを発生する。この可燃性のガスは、一次空気により主燃焼室14の上部のガス層に送られ、このガス層にて二次空気と共に炎燃焼する。この炎燃焼に伴う熱輻射によりごみは、更に昇温される。着火したごみの一部は、燃焼ストーカ16にて燃焼し、残りの未燃焼分は、後燃焼ストーカ17へと送られる。未燃焼分のごみは、後燃焼ストーカ17で燃焼させられ、燃焼後に残った焼却灰は、シュート18から外部へと排出される。
【0035】
また、主燃焼室14は、
図1に示すように、このボイラ19が備えている放射室20に接続されており、ごみの燃焼により生じた燃焼排ガスが、主燃焼室14から放射室20に送られてくる。この燃焼排ガスは、ボイラ19の第2煙道21を通って第3煙道22へと導かれ、その後、図示しない排ガス処理設備で無害化の処理が成されてから大気に放出される。
【0036】
この
図1に示すボイラ19には、放射室20及び第2煙道21を規定する壁の各々に、ボイラドラム24に接続された複数の水管23が設けられている。水管23は、例えば炭素鋼(例えば、STB340)で形成され、その中にボイラドラム24から送られてくる水が流れている。水管23内の水は、第1又は第2煙道20,21の廃熱を回収して、その一部が蒸発して汽水となりボイラドラム24へと戻される。ボイラドラム24に戻った汽水は、一部が気化して蒸気となっている。蒸気は、ボイラドラム24から第3煙道22に設けられた過熱器25へと送られて、過熱される。このように過熱されて高温高圧となった過熱蒸気は、タービン26へと送られ、発電機11を駆動する。
【0037】
上記のように構成されたボイラ19によると、燃焼時に蒸発した成分や焼却灰の一部が燃焼排ガスにより舞い上がったものが放射室20及び第2煙道21、並びに第3煙道22へと運ばれる、そして水管23及び過熱器25の過熱器管27に付着して堆積する。焼却灰は、高い腐食性を有している溶融塩を含むため、高温の過熱器25の過熱器管27を腐食させる要因となっている。
【0038】
次に、腐食抑制装置59について説明する。この腐食抑制装置59は、
図1に示す過熱器管27の腐食を抑制するための装置であり、複数の腐食センサ31(31a、31b、31c、31d)と、粒子供給装置60と、制御部100とを備えている。
【0039】
腐食センサ31は、
図3に示すように、ボイラ19の第3煙道22の側壁部であって、過熱器25よりも燃焼排ガスの流れ方向の上流側に設けられ、先端の検出部が第3煙道22内に位置している。この腐食センサ31は、図示しないが、第3煙道22内に設けられた一対の電極を有し、この一対の電極間の電気抵抗の変化に基づいて過熱器管27の腐食の程度を検出して、その腐食の程度と対応する腐食検出信号を生成するようになっている。
【0040】
なお、腐食センサ31は、過熱器25のうち最も腐食が激しい(最も蒸気温度が高い)過熱器管27群の近傍に設けるとよい。
【0041】
また、腐食センサ31a〜31dは、例えば
図3に示すように、断面が矩形の第3煙道22の4つの各隅角部に近い位置に、1つずつ合計4つ分散して設けられている。腐食センサ31a〜31dがこのように分散して配置されていることによって、過熱器管27が設置されている空間(腐食環境)の複数のそれぞれの部分A2、B2、C2、D2、E2、F2、・・・での腐食の程度を検出して、その腐食の程度と対応する腐食検出信号を生成することができるようになっている。
【0042】
つまり、例えば
図3に矢印61で示す燃焼排ガスに含まれる腐食性粒子及び腐食性ガス(以下、単に「腐食性粒子等」と言うこともある。)の流れが、第3煙道22内の部分A1、B1、C1、D1、E1、F1、・・・のうちの一部(例えば部分A1)に偏って流れているときは、腐食センサ31aが生成する腐食検出信号の値が大きく、腐食センサ31b、31c、31dが生成する腐食検出信号の値がそれよりも小さい値となっている。そして、このように腐食性粒子の流れが、第3煙道22内の部分A1に偏って流れているときは、その腐食性粒子の流れの下流に位置する過熱器管27の部分A2の腐食の進行速度が大きくなり、それ以外の部分での腐食の進行速度がそれよりも小さくなる。
【0043】
このように、腐食センサ31a〜31dは、過熱器管27が設置されている空間(腐食環境)の複数のそれぞれの部分A2、B2、C2、D2、E2、F2、・・・での腐食の程度を検出して、その腐食の程度と対応する腐食検出信号を生成することができるようになっている。
【0044】
ただし、4つの腐食センサ31a〜31dを設けた例を示したが、4つ以外の複数の腐食センサを設けてもよい。
【0045】
そして、腐食センサ31a〜31dは、過熱器管27が設置されている空間(腐食環境)の複数のそれぞれの部分A2、B2、C2、D2、E2、F2、・・・での腐食の程度を検出するものとしたが、これに代えて、過熱器管27自体の複数のそれぞれの部分での腐食の程度を直接に検出するものとしてもよい。
【0046】
粒子供給装置60は、例えば
図3に示すように、腐食抑制粒子を吹き込むことができる6つの吹込み口59a〜59fを備えている。この6つの吹込み口59a〜59fは、断面が矩形の第2煙道21を形成する互いに対向して設けられている側壁部に3つずつ設けられている。そして、粒子供給装置60は、この6つの吹込み口59a〜59fのうちの1又は2以上の所望の吹込み口から第2煙道21内に所望重量の腐食抑制粒子を吹き込むことができるように構成されている。そして、これら6つのそれぞれの吹込み口59a〜59fには、
図4に示す第1〜第6粒子供給部60a〜60fが設けられている。これら第1〜第6粒子供給部60a〜60fは、例えば粒子供給フィーダである。
【0047】
ただし、6つの吹込み口59a〜59fを設けた例を示したが、6つ以外の複数の吹込み口を設け、これらそれぞれの吹込み口に対して粒子供給部を設けてもよい。
【0048】
制御部100は、4つの腐食センサ31a〜31dが生成する4つのそれぞれの腐食検出信号に基づいて、過熱器管27の複数のそれぞれの部分A2、B2、C2、D2、E2、F2、・・・に対して、各部分での腐食の程度と対応する重量の腐食抑制粒子を供給することができるように、粒子供給装置60を制御するように構成されている。これら制御部100、腐食センサ31a〜31d、及び第1〜第6粒子供給部60a〜60f(粒子供給装置60)は、
図4のブロック図に示すように電気的に接続されている。
【0049】
つまり、上記のように、例えば
図3に矢印61で示す燃焼排ガスに含まれる腐食性粒子の流れが、第3煙道22内の一部(例えばA1部分)に偏って流れているときは、その流れと相関関係を有する流れが、第2煙道21内の6つの吹込み口59a〜59fが設けられている部分でも起こっている。従って、制御部100は、4つの腐食センサ31a〜31dが生成する4つのそれぞれの腐食検出信号に基づいて第1〜第6粒子供給部60a〜60f(粒子供給装置60)を制御して、6つの吹込み口59a〜59fのうちの1又は2以上の所定の吹込み口から第2煙道21内に所定重量の腐食抑制粒子を吹き込むことによって、過熱器管27の複数のそれぞれの部分A2、B2、C2、D2、E2、F2、・・・に対して、各部分での腐食の程度と対応する重量の腐食抑制粒子を供給することができる。
【0050】
ただし、4つの腐食センサ31a〜31dが生成する4つのそれぞれの腐食検出信号に基づいて第1〜第6粒子供給部60a〜60f(粒子供給装置60)を制御して、6つの吹込み口59a〜59fのうちの1又は2以上の所定の吹込み口から第2煙道21内に所定重量の腐食抑制粒子を吹き込むことは、予め実験やシミュレーションによって解明されており、その内容は、制御部100に設けられている記憶部に記録されている。よって、制御部100は、この記憶部に記憶されているプログラムに従って第1〜第6粒子供給部60a〜60f(粒子供給装置60)を制御するようになっている。
【0051】
次に、腐食抑制粒子について説明する。この腐食抑制粒子は、粒子径が0.1μm以上10μm未満の粒子であって、Ca、Si、Al、Mg及びFeのうち少なくとも1つの元素を主成分とする化合物であり、例えばCaO、SiO
2である。更に、腐食抑制粒子の具体例として、例えばけい砂、珪藻土、ドロマイト、ゼオライトがある。
【0052】
そして、この腐食抑制粒子は、融点が800℃以上である。粒子供給装置60がこの腐食抑制粒子を吹き込む領域は、この腐食抑制粒子が吹き込まれた領域の燃焼排ガスによって、腐食抑制粒子が溶融しないガス温度の領域である。つまり、この実施形態では、腐食抑制粒子を第2煙道21内に吹き込むようにしてあり、この第2煙道21は、その内側を流れる燃焼排ガスのガス温度が800℃よりも低い領域である。
【0053】
更に、この実施形態では、水に腐食抑制粒子を混合して得られたスラリー状の混合物質、又は腐食抑制粒子よりも粒子径が大きい粉体(例えば焼却灰)に腐食抑制粒子を混合して得られた粉状の混合物質を、粒子供給装置60を使用して第2煙道21内に吹き込むようにしている。
【0054】
次に、上記のように構成された腐食抑制装置付きボイラ19の作用について説明する。この実施形態に係る腐食抑制装置付きボイラ19によると、
図3に示す例えば4つの腐食センサ31a〜31dは、過熱器管27が設置されている空間(腐食環境)の複数のそれぞれの部分A2、B2、C2、D2、E2、F2、・・・での腐食の程度を検出して、その腐食の程度と対応する腐食検出信号を生成することができる。
【0055】
そして、粒子供給装置60は、過熱器管27よりも燃焼排ガスの流れの上流側に設けられている例えば6つの吹込み口59a〜59fのうちの1又は2以上の吹込み口から第2煙道21内に腐食抑制粒子を吹き込むことができる。
【0056】
また、制御部100は、4つの腐食センサ31a〜31dが生成する4つのそれぞれの腐食検出信号に基づいて、過熱器管27の複数のそれぞれの部分A2、B2、C2、D2、E2、F2、・・・に対して、各部分での腐食の程度と対応する重量の腐食抑制粒子を供給することができるように、粒子供給装置60を制御することができる。
【0057】
よって、例えば第2及び第3煙道21、22(排ガス通路)内の腐食性粒子を含む燃焼排ガスの流れに偏流が生じたために、過熱器管27の一部(部分A2、B2、C2、D2、E2、F2、・・・のうちの一部)が局所的に腐食の程度が大きくなることがあっても、その部分に対して、その部分での腐食の程度と対応する大きい重量の腐食抑制粒子を供給することができる。そして、過熱器管27の腐食の程度の小さい部分に対しては、その部分での腐食の程度と対応する小さい重量の腐食抑制粒子を供給することができる。
【0058】
そして、このように、過熱器管27の各部分A2、B2、C2、D2、E2、F2、・・・に対して、その部分での腐食の程度と対応する重量の腐食抑制粒子を供給することができるので、その後流側に設けられている過熱器管27の他の部分の腐食も抑制することができる。
【0059】
従って、過熱器管27の腐食を効果的に抑制することができると共に、腐食抑制粒子の使用量を低減することができる。これによって、腐食抑制粒子に掛かるコスト、及びこの腐食抑制粒子を含む燃焼灰の処理のためのコストを低減することができる。
【0060】
そして、
図3に示すように、4つの腐食センサ31a〜31dは、過熱器管27の複数のそれぞれの部分A2、B2、C2、D2の近傍であってその上流側位置に設けられているので、過熱器管27の複数のそれぞれの部分A2、B2、C2、D2、E2、F2、・・・での腐食の程度を腐食センサ31a〜31dにより正確に検出することができる。
【0061】
次に、本発明に係る腐食抑制装置付きボイラ及びボイラの腐食抑制方法の第2実施形態を、
図3及び
図5を参照して説明する。この腐食抑制装置付きボイラは、
図3に示すように、腐食センサ31として、吹込み口59a〜59fよりも燃焼排ガスの流れの上流側の放射室20に設けられている1又は2以上の例えば4つの第1腐食センサ31e〜31hと、吹込み口59a〜59fよりも燃焼排ガスの流れの下流側の第3煙道22に設けられている複数の第2腐食センサ31a〜31dとを有している。これら第1及び第2腐食センサ31e〜31h、31a〜31dは、第1実施形態のものと同等のものである。
【0062】
制御部100は、第1腐食センサ31e〜31hが生成する第1腐食検出信号に基づいて粒子供給装置60を制御して、1又は2以上の吹込み口59a〜59fから吹き込まれる腐食抑制粒子の第1吹込み重量を設定し、かつ、第2腐食センサ31a〜31dが生成する第2腐食検出信号に基づいて粒子供給装置60を制御して、腐食抑制粒子の第1吹込み重量を調整(補正)することができるものである。
【0063】
これ以外は、第1実施形態と同等であり、同等部分の詳細な説明を省略する。
【0064】
このようにすると、制御部100は、第1腐食センサ31e〜31hが生成する第1腐食検出信号に基づいて粒子供給装置60を制御して、腐食抑制粒子の第1吹込み重量を設定することができる。
【0065】
つまり、腐食性粒子及び腐食性ガスが含まれる燃焼排ガス中に腐食抑制粒子を混合させる前の状態で、腐食性粒子及び腐食性ガスに基づく腐食の程度を検出することができて、吹込み口59a〜59fから吹き込むことが必要とされる腐食抑制粒子のそれぞれの絶対重量(第1吹込み重量)を得ることが可能であり、過熱器管27の腐食を効果的に抑制することができる。
【0066】
そして、制御部100は、第1実施形態で説明したように、第2腐食センサ31a〜31dが生成する第2腐食検出信号に基づいて、過熱器管27の各部分A2、B2、C2、D2、E2、F2、・・・での腐食が実際に効果的に抑制されるように、例えば過熱器管27の各部分A2、B2、C2、D2、E2、F2、・・・での腐食が目標腐食進行速度に抑えることができるように、1又は2以上の吹込み口59a〜59fから吹き込まれる腐食抑制粒子のそれぞれの第1吹込み重量を調整(補正)することができる。
【0067】
次に、本発明に係る腐食抑制装置付きボイラ及びボイラの腐食抑制方法の第3実施形態を、
図3及び
図5を参照して説明する。この腐食抑制装置付きボイラは、
図3に示すように、例えば4つの第1腐食センサ31e〜31hが、過熱器管27が設置されている空間(腐食環境)の複数のそれぞれの部分A2、B2、C2、D2、E2、F2、・・・での腐食の程度と対応する腐食の程度を検出できる所定位置に設けられ、その対応する腐食の程度に応じた腐食検出信号を生成することができるように設けられている。
【0068】
つまり、例えば
図3に矢印61で示す燃焼排ガスに含まれる腐食性粒子及び腐食性ガスの流れが、第3煙道22内の一部(例えば部分A1)に偏って流れているときは、その流れと相関関係を有する流れが、放射室20内の4つの第1腐食センサ31e〜31hが設けられている部分でも起こっている。
【0069】
制御部100は、4つの第1腐食センサ31e〜31hが生成する4つのそれぞれの第1腐食検出信号に基づいて第1〜第6粒子供給部60a〜60f(粒子供給装置60)を制御して、6つの吹込み口59a〜59fのうちの1又は2以上の所定の吹込み口から第2煙道21内に所定重量(第1吹込み重量)の腐食抑制粒子を吹き込むことによって、過熱器管27の複数のそれぞれの部分A2、B2、C2、D2、E2、F2、・・・に対して、各部分での腐食の程度と対応する重量の腐食抑制粒子を供給することができる。
【0070】
これ以外は、第2実施形態と同等であり、同等部分の詳細な説明を省略する。
【0071】
この腐食抑制装置付きボイラ等によると、4つの第1腐食センサ31e〜31hは、過熱器管27が設置されている空間(腐食環境)の複数のそれぞれの部分A2、B2、C2、D2、E2、F2、・・・での腐食の程度と対応する腐食の程度を検出して、その対応する腐食の程度に応じた第1腐食検出信号を生成することができる。
【0072】
そして、制御部100は、4つの第1腐食センサ31e〜31hが生成する4つのそれぞれの第1腐食検出信号に基づいて、過熱器管27の複数のそれぞれの部分A2、B2、C2、D2、E2、F2、・・・に対して、各部分での腐食の程度と対応する重量の腐食抑制粒子を供給することができるように、粒子供給装置60を制御することができる。
【0073】
次に、腐食抑制粒子の作用について説明する。腐食抑制粒子は、粒子径が0.1μm以上10μm未満であるものを使用している。
【0074】
このように、粒子径が0.1μm以上10μm未満の腐食抑制粒子を、例えば第2煙道21内に吹き込むことによって、この吹き込んだ腐食抑制粒子を過熱器管27の金属界面等に対して熱泳動や慣性衝突によって付着させることができる。これによって、排ガス通路内で飛散する粒子径が0.1〜10μmの腐食性粒子が、過熱器管27の金属界面等に付着する付着重量及び付着面積を減少させることができ、過熱器管27の腐食の進行を抑制することができる。
【0075】
以下に、粒子径が0.1μm以上10μm未満の腐食抑制粒子を、例えば第2煙道21内に吹き込むことによって、過熱器管27の腐食の進行を抑制することができるメカニズムについて説明する。
【0076】
本願の発明者は、
図1に示すボイラ19の第3煙道22内に飛散する粒子径が0.1〜10μmであり、かつ、NaやKの塩化物(例えばNaCl、KCl)を含む腐食性粒子(酸化剤としての溶融塩粒子)が、第3煙道22内に設けられている過熱器管27の表面に付着することによって、過熱器管27の腐食が進行することを究明した。
【0077】
そこで、当該腐食性粒子と同程度の粒子径(0.1μm以上10μm未満)の腐食抑制粒子を、例えば第2煙道21内に吹き込んで過熱器管27の表面に付着させることによって、燃焼灰に含まれている粒子径が0.1〜10μmの腐食性粒子が過熱器管27の表面に付着する付着重量及び付着面積を小さくして、過熱器管27の腐食の進行を抑制するようにした。
【0078】
更に、この腐食抑制粒子による腐食抑制メカニズムについて詳しく説明する。
(1)粒子径が0.1〜2μmの腐食性粒子について
粒子径が0.1〜2μmの腐食性粒子は、主として熱泳動によって前記過熱器管27の金属界面等に付着する。そして、第3煙道22内を飛散する粒子のうち、粒子径が0.1〜2μmの粒子は、NaやKの塩化物を含む当該腐食性粒子が中心となって多く存在しており、当該腐食性粒子は、高い腐食力を有している。
【0079】
従って、これらの腐食性粒子が、過熱器管27の金属界面等に付着することによって腐食が生じる。
【0080】
そこで、この実施形態の腐食抑制装置付きボイラ19によると、腐食抑制装置59(
図1には、腐食抑制装置59の吹込み口59a〜59fのうちの吹込み口59aを示している。)を使用して、粒子径が0.1μm以上10μm未満の腐食抑制粒子を、第2煙道21内に吹き込むことによって、この吹き込んだ腐食抑制粒子を、第3煙道22内に設けられている過熱器管27の金属界面等に対して熱泳動によって付着させることができる。これによって、第3煙道22内の粒子径が0.1〜2μmの腐食性粒子が、過熱器管27の金属界面等に付着する付着重量及び付着面積を減少させることができ、過熱器管27の腐食の進行を抑制することができる。
(2)粒子径が2〜10μmの腐食性粒子について
粒子径が2〜10μmの腐食性粒子は、過熱器管27の金属界面等に対して熱泳動によって付着するものもあるが、それよりも慣性衝突によって過熱器管27の金属界面等に付着するものが中心となって多く存在している。
【0081】
そして、第3煙道22内に飛散する粒子(燃焼灰)のうち、粒子径が2〜10μmの粒子には、NaやKの塩化物を含む当該腐食性粒子よりも腐食抑制粒子を多く含んでいるために、過熱器管27に対する腐食力は、前記(1)の場合よりも小さいと言える。
【0082】
また、腐食が進行するには、腐食性粒子が過熱器管27の金属界面等に連続的に付着することが必要であるが、粒子供給装置60を使用して、粒子径が0.1μm以上10μm未満の腐食抑制粒子を、第2煙道21内に吹き込んで、この吹き込んだ腐食抑制粒子が過熱器管27の金属界面等に対して慣性衝突や熱泳動によって付着すると、この過熱器管27の金属界面等に慣性衝突等によって付着する腐食性粒子が、過熱器管27の金属界面にまで拡散して付着することを抑制することができる。これによって、過熱器管27の腐食の進行を抑制することができる。
(3)粒子径が10μm以上の腐食抑制粒子について(この実施形態から除外される腐食抑制粒子)
粒子供給装置60を使用して、粒子径が10μm以上の腐食抑制粒子を、第2煙道21内に吹き込むことによって、この吹き込んだ腐食抑制粒子を過熱器管27の金属界面等に付着させた場合は、粒子径が10μm以上の腐食抑制粒子どうしの隙間から粒子径が0.1〜10μmの腐食性粒子が入り込んで、過熱器管27の金属界面等に付着してしまう可能性が大きい。よって、粒子径が10μm以上の腐食抑制粒子を使用すると、過熱器管27の腐食を殆ど抑制することはできない。
【0083】
従って、この実施形態では、粒子径が0.1〜10μmの腐食性粒子と同程度の粒子径(0.1μm以上10μm未満)の腐食抑制粒子を、第2煙道21内に吹き込んで過熱器管27の表面に付着させることによって、0.1〜10μmの腐食性粒子が過熱器管27の表面に付着する付着重量及び付着面積を小さくして、過熱器管27の腐食の進行を抑制するようにした。
【0084】
ただし、上記各実施形態では、
図3に示す複数の各第1及び第2腐食センサ31は、過熱器管27が設置されている空間(腐食環境)の複数のそれぞれの部分A2、B2、C2、D2、E2、F2、・・・での腐食の程度(又は腐食の程度と対応する腐食の程度)を検出して、その腐食の程度と対応する(又はその腐食の程度と対応する腐食の程度に応じた)腐食検出信号を生成するものとし、制御部100は、複数の腐食センサ31が生成する複数のそれぞれの腐食検出信号に基づいて、過熱器管27の複数のそれぞれの部分A2、B2、C2、D2、E2、F2、・・・に対して、各部分での腐食の程度と対応する(又は腐食の程度と対応する腐食の程度に応じた)重量の腐食抑制粒子を供給することができるように、粒子供給装置60を制御する構成としたが、これに代えて、以下の構成としてもよい。
【0085】
つまり、
図3に示す第1及び第2腐食センサ31は、過熱器管27の複数のそれぞれの部分A2、B2、C2、D2、E2、F2、・・・での燃焼排ガス中の腐食性粒子若しくは腐食性ガス又はその両方の濃度(又は濃度と対応する濃度)を検出して、当該濃度と対応する(又は濃度と対応する濃度に応じた)濃度検出信号を生成するものとし、制御部100は、複数の腐食センサ31が生成する複数のそれぞれの濃度検出信号に基づいて、過熱器管27の複数のそれぞれの部分A2、B2、C2、D2、E2、F2、・・・に対して、各部分での前記濃度と対応する(又は濃度と対応する濃度に応じた)重量の腐食抑制粒子を供給することができるように、粒子供給装置60を制御する構成である。
【0086】
なお、上記腐食センサ31は、例えば粒子濃度センサ、ガス濃度センサ、又はガス粒子濃度センサである。このガス粒子濃度センサは、腐食性粒子及び腐食性ガスの両方の濃度を検出するセンサである。
【0087】
このようにすると、濃度検出用の複数の第1及び第2腐食センサ31は、過熱器管27の複数のそれぞれの部分A2、B2、C2、D2、E2、F2、・・・での燃焼排ガス中の腐食性粒子等の前記濃度(又は濃度と対応する濃度)を検出して、当該腐食性粒子等の前記濃度と対応する(又は濃度と対応する濃度に応じた)濃度検出信号を生成することができる。そして、粒子供給装置60は、過熱器管27よりも燃焼排ガスの流れの上流側に設けられている複数の例えば6つの吹込み口59a〜59fのうちの1又は2以上の所望の吹込み口から第2煙道21内に所望重量の腐食抑制粒子を吹き込むことができる。また、制御部100は、複数の腐食センサ31が生成する複数のそれぞれの濃度検出信号に基づいて、過熱器管27の複数のそれぞれの部分A2、B2、C2、D2、E2、F2、・・・に対して、各部分での腐食性粒子等の前記濃度と対応する(又は濃度と対応する濃度に応じた)重量の腐食抑制粒子を供給することができるように、粒子供給装置60を制御することができる。
【0088】
そして、上記実施形態と同様に、
図3に示すように、4つの濃度測定用の腐食センサ31a〜31dを、例えば過熱器管27の複数のそれぞれの部分A2、B2、C2、D2の近傍であってその上流側位置に設けることによって、過熱器管27の複数のそれぞれの部分A2、B2、C2、D2、E2、F2、・・・での燃焼排ガス中の腐食性粒子等の前記濃度を濃度測定用の腐食センサ31a〜31dにより正確に検出することができる。
【0089】
また、4つの濃度測定用の第2腐食センサ31a〜31dを、例えば過熱器管27の複数のそれぞれの部分A2、B2、C2、D2の近傍であってその上流側位置に設けることによって、4つの腐食測定用の第2腐食センサ31a〜31dを設けた場合と同様に、制御部100は、第2腐食センサ31a〜31dが生成する第2濃度検出信号に基づいて、過熱器管27の各部分A2、B2、C2、D2、E2、F2、・・・での腐食が実際に効果的に抑制されるように、つまり例えば過熱器管27の各部分A2、B2、C2、D2、E2、F2、・・・での腐食が目標腐食進行速度に抑えることができるように、1又は2以上の吹込み口59a〜59fから吹き込まれる腐食抑制粒子のそれぞれの吹込み重量を調整することができる。