(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ボビンキャリア用の走行軌道が設けられた支持部材に対し、芯材を相対移動させた状態で、前記ボビンキャリアを前記走行軌道に沿って走行させることによって、前記ボビンキャリアと前記芯材との間に渡した組糸を前記芯材の外周面に巻き付けるブレイダーであって、
前記ボビンキャリアを前記走行軌道上から前記走行軌道外へ搬送することで、前記組糸の前記芯材への巻き付けを停止させ、前記ボビンキャリアを前記走行軌道外から前記走行軌道上へ搬送することで、前記組糸の前記芯材への巻き付けを開始させるボビンキャリア搬送機構を備え、
前記走行軌道には、欠落部が形成され、
前記ボビンキャリア搬送機構は、
外側補完軌道部及び内側補完軌道部が形成され、前記外側補完軌道部が前記走行軌道の前記欠落部を補完すると共に前記内側補完軌道部が前記走行軌道に含まれない状態になる供給位置、及び、前記内側補完軌道部が前記走行軌道の前記欠落部を補完すると共に前記外側補完軌道部が前記走行軌道に含まれない状態になる離脱位置、の間で移動可能な可動部材と、
前記可動部材を、前記供給位置及び前記離脱位置の間で移動させるアクチュエータと、を有することを特徴とする、
ブレイダー。
前記ボビンキャリア搬送機構は、前記ボビンキャリアを前記走行軌道に係合させることができ、かつ、前記ボビンキャリアと前記走行軌道との係合の解除を行うことが可能なピッキング機構を備えることを特徴とする、
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のブレイダー。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1及び
図2に示すように、ブレイダー1は、芯材(マンドレル)2の外周面に組糸Y1・Y2を巻き付けて、芯材2の外周面上に、組糸Y1・Y2で構成された筒状の組物である筒体3を製作する。
【0024】
ブレイダー1は、フレーム10と、支持部材20と、ボビンキャリア搬送機構と、を有する。
【0025】
フレーム10には支持部材20が固定されている。支持部材20は、平板状に形成されており、中央に孔20aを有する。支持部材20の孔20aに対しては、芯材2が対向配置されている。芯材2には、支持軸11を介して移動装置12が接続されている。移動装置12は、芯材2を軸M方向に移動させる。なお、本実施形態では、芯材2が軸M方向に移動するように構成するが、本発明はこれに限定されず、支持部材20が軸M方向に移動するように構成してもよい。
軸M方向は、芯材2の軸Mの延びる方向である。また、芯材2の軸Mは、筒体3の軸と一致する。
【0026】
支持部材20の盤面には走行軌道W1・W2が設けられている。走行軌道W1・W2は、ボビンキャリア40A・40Bの走行経路をそれぞれ構成する溝である。走行軌道W1・W2は、支持部材20の孔20aを囲むように環状に形成される。
これら一対の走行軌道W1・W2は、周期的に交差するように構成されており、その交差部Cが、芯材2の軸M回りの円周上に配置されている。また、互いに交差する走行軌道W1・W2の全体形状は、軸M回りに隣接して配置された複数の環Lを連結してなる形状となっている。本実施形態では、八つの環Lが軸M回りに22.5度ずつ間隔を空けて設けられている。
【0027】
図2に示すように、各環Lの内側には、羽車30がそれぞれ配置されている。複数の羽車30は、軸M回りに環状に並んで配置される。本実施形態では八つの羽車30が配置されている。羽車30は、環Lの周方向に回転可能に支持されている。
羽車30の縁部には、ボビンキャリア40A・40Bが係合可能な切欠部31が複数形成されている。本実施形態では、四つの切欠部31が環Lの周方向に90度ずつ間隔を空けて設けられている。
各羽車30には、ギヤ(不図示)がそれぞれ連結されており、隣接する羽車30の前記ギヤ同士が噛合している。一つの前記ギヤには駆動装置(モータ)が接続されており、前記駆動装置が作動されることで、すべての前記ギヤが回転し、これに伴って、すべての羽車30が同期して回転する。なお、隣接する羽車30は互いに反対方向に回転する(
図2参照)。
【0028】
図3に示すように、ボビンキャリア40A・40Bは、シャフト41と、ガイドローラー部42と、係合部43と、スライダ部44と、を有する。
シャフト41は、ボビン4を挿通可能な棒形状を有し、ボビン4を回転可能に支持する。シャフト41の先端部には、シャフト41からボビン4が抜け落ちることを防止する抜止ピン41aが装着される。ガイドローラー部42は、シャフト41の周囲に一つ設けられており、ボビン4に巻き付けられている組糸Y1(Y2)を引き出して案内する。係合部43は、二つのフランジ部43a・43bと、フランジ部43a・43bの間に介在する軸部43cを有する。ボビンキャリア40A・40Bは、フランジ部43a・43bにより羽車30の切欠部31を挟み込むことで切欠部31に係合する。スライダ部44は、走行軌道W1(W2)に挿入可能な形状を有する。また、スライダ部44は、移動方向が長手となる楕円形状を有する。これは、走行軌道W1(W2)の交差部Cにて、ボビンキャリア40A(40B)が、走行軌道W1(W2)から、隣接する環Lの走行軌道W1(W2)に乗り移れるようにするためである。
図2及び
図3に示すように、ボビンキャリア40A(40B)は、羽車30の切欠部31に係合され、かつ、スライダ部44を走行軌道W1(W2)に挿入された状態で、羽車30が回転されることによって、走行軌道W1(W2)に沿って走行する。
【0029】
ブレイダー1は、支持部材20に対し、芯材2を軸M方向に相対移動させた状態で、すべての羽車30を回転させて、各ボビンキャリア40A(40B)を走行軌道W1(W2)に沿って走行させることによって、各ボビンキャリア40A(40B)と芯材2との間に渡した組糸Y1(Y2)を芯材2の外周面に巻き付ける。その結果、芯材2の外周面上に筒体3が製作される(
図1参照)。
【0030】
本実施形態では、各ボビンキャリア40A・40Bの走行する走行軌道W1・W2の全体を含む軌道面は平面で形成され、この軌道面が、軸Mに対して垂直となっている。
この軌道面は、平面である必要はなく、軸M上の一点を中心とする球面の一部よりなる曲面で構成しても良い。前記一点は、組付けの中心位置となる点であり、この場合は、各ボビンキャリア40A・40Bが走行軌道W1・W2に沿って走行しても、組付けの中心位置に対する距離が変化せず、組糸のテンション変動が発生しにくいメリットがある。
【0031】
以下では、前記ボビンキャリア搬送機構の第一実施例であるボビンキャリア搬送機構50A・50Bについて説明する。
【0032】
図4に示すように、支持部材20には、第一走行軌道W1を分断する切欠部21と、第二走行軌道W2を分断する切欠部22が形成される。
走行軌道W1には、切欠部21により欠落部Waが形成され、走行軌道W2には、切欠部22により欠落部Wbが形成される。欠落部Wa・Wbは、少なくとも一つずつ形成される。
本実施形態では、切欠部21・22がそれぞれ複数(四つずつ)形成され、これに伴って、欠落部Wa・Wbがそれぞれ複数(四つずつ)形成される。欠落部Wa・Wbは、軸M回りに22.5度ずつ間隔を空けて交互に配置されている。
【0033】
ボビンキャリア搬送機構50A・50Bは、少なくとも一つずつ設けられる。ボビンキャリア搬送機構50A(50B)は、切欠部21(22)毎に設けられる。従って、本実施形態では、ボビンキャリア搬送機構50A・50Bが四つずつ設けられる。
各ボビンキャリア搬送機構50A(50B)は、可動部材51A(51B)と、アクチュエータ52A(52B)と、を有する。
【0034】
各可動部材51A(51B)は、各切欠部21(22)に嵌合可能な板形状を有している。
【0035】
第一可動部材51Aには、第一外側補完軌道部53A及び第一内側補完軌道部54Aが形成される。
第一可動部材51Aは、第一供給位置、及び、第一離脱位置、の間で移動可能に支持されている。
第一供給位置は、第一外側補完軌道部53Aが第一走行軌道W1の欠落部Waを補完すると共に、第一内側補完軌道部54Aが第一走行軌道W1に含まれない状態になる位置である(
図4及び
図5参照)。
第一離脱位置は、第一内側補完軌道部54Aが第一走行軌道W1の欠落部Waを補完すると共に、第一外側補完軌道部53Aが第一走行軌道W1に含まれない状態になる位置である(
図4及び
図7参照)。
【0036】
第二可動部材51Bには、第二外側補完軌道部53B及び第二内側補完軌道部54Bが形成される。第二可動部材51Bは、第二供給位置、及び、第二離脱位置、の間で移動可能に支持されている。
第二供給位置は、第二外側補完軌道部53Bが第二走行軌道W2の欠落部Wbを補完すると共に、第二内側補完軌道部54Bが第二走行軌道W2に含まれない状態になる位置である(
図4及び
図5参照)。
第二離脱位置は、第二内側補完軌道部54Bが第二走行軌道W2の欠落部Wbを補完すると共に、第二外側補完軌道部53Bが第二走行軌道W2に含まれない状態になる位置である(
図4及び
図10参照)。
【0037】
各可動部材51A(51B)には、アクチュエータ52A(52B)が接続されている(
図4参照)。各アクチュエータ52A(52B)は、各可動部材51A(51B)を、第一供給位置(第二供給位置)と、第一離脱位置(第二離脱位置)と、の間でそれぞれ移動させることが可能である。アクチュエータ52A(52B)は、例えば、油圧シリンダ、又はエアシリンダで構成される。
【0038】
以下では、ボビンキャリア搬送機構50A・50Bの動作について説明する。
【0039】
図5〜
図10、及び、
図13〜
図18は、ブレイダー1により、芯材2の外周面に組糸Y1・Y2が巻き付けているときのボビンキャリア40A・40Bの動きを示す図である。
図5に示すように、本実施形態では、八つの第一ボビンキャリア40Aが第一走行軌道W1に沿って走行していると共に、八つの第二ボビンキャリア40Bが第二走行軌道W2に沿って走行している。これにより、芯材2には、組糸Y1・Y2がそれぞれ八本ずつ巻き付けられている。
【0040】
図5〜
図7、
図11、及び
図12に示すように、各第一ボビンキャリア40Aが各第一可動部材51Aの第一外側補完軌道部53Aに到達したタイミングで、各アクチュエータ52Aにより各第一可動部材51Aが第一供給位置から第一離脱位置に移動される。これにより、各第一外側補完軌道部53A上の第一ボビンキャリア40Aが、各羽車30との係合を解除されると共に、走行軌道W1の外側に搬送されて停止される。その結果、当該各第一ボビンキャリア40Aと、芯材2との間に渡した各第一組糸Y1の、芯材2への巻き付けが停止される。このとき、当該各第一組糸Y1は、他の組糸Y1・Y2と接触不能な位置において、当該各第一ボビンキャリア40Aと、芯材2との間で張られた状態になる(
図12参照)。
本実施形態では、四つの第一ボビンキャリア40Aが第一走行軌道W1外へ搬送されるので、四本の第一組糸Y1が芯材2に巻き付けられない状態になる。そして、残りの四つの第一ボビンキャリア40Aが、第一走行軌道W1の走行を継続するので、四本の第一組糸Y1が芯材2に巻き付けられる状態になる。なお、当該残りの四つの第一ボビンキャリア40Aは、欠落部Waでは、第一内側補完軌道部54Aを走行する。
【0041】
図8〜
図11に示すように、各第二ボビンキャリア40Bが各第二可動部材51Bの第二外側補完軌道部53Bに到達したタイミングで、各アクチュエータ52Bにより各第二可動部材51Bが第二供給位置から第二離脱位置に移動される。これにより、各第二外側補完軌道部53B上の第二ボビンキャリア40Bが、各羽車30との係合を解除されると共に、走行軌道W2の外側に搬送されて停止される。その結果、当該各第二ボビンキャリア40Bと、芯材2との間に渡した各第二組糸Y2の、芯材2への巻き付けが停止される。このとき、当該各第二組糸Y2は、他の組糸Y1・Y2と接触不能な位置において、当該各第二ボビンキャリア40Bと、芯材2との間で張られた状態になる。
本実施形態では、四つの第二ボビンキャリア40Bが第二走行軌道W2外へ搬送されるので、四本の第二組糸Y2が芯材2に巻き付けられない状態になる。そして、残りの四つのボビンキャリア40Bが、第二走行軌道W2の走行を継続するので、四本の第二組糸Y2が芯材2に巻き付けられる状態になる。なお、当該残りの四つのボビンキャリア40Bは、欠落部Wbでは、第二内側補完軌道部54Bを走行する。
【0042】
以上のように、すべての第一可動部材51Aが、第一供給位置から第一離脱位置に移動されると共に、すべての第二可動部材51Bが、第二供給位置から第二離脱位置に移動されることによって、芯材2に巻き付けられる組糸Y1・Y2の合計本数が八本になる(
図10参照)。
【0043】
図13〜
図15、及び、
図19に示すように、各羽車30の切欠部31が各第一可動部材51Aの第一内側補完軌道部54Aに到達したタイミングで、各アクチュエータ52Aにより各第一可動部材51Aが第一離脱位置から第一供給位置に移動される。これにより、各第一外側補完軌道部53A上の第一ボビンキャリア40Aが、第一走行軌道W1上へ搬送されると共に、各羽車30の切欠部31に係合する。その結果、当該各第一ボビンキャリア40Aが、第一走行軌道W1に沿って走行しはじめて、当該各第一ボビンキャリア40Aと芯材2との間に渡した各第一組糸Y1の芯材2への巻き付けが開始される。
なお、各第一外側補完軌道部53A上の第一ボビンキャリア40Aが、第一走行軌道W1上が供給されるよりも前に、当該各第一ボビンキャリア40Aと芯材2との間に張られている各第一組糸Y1を切断し、そして、当該各第一ボビンキャリア40Aが第一走行軌道W1上に供給される際に、切断した当該各第一ボビンキャリア40A側の第一組糸Y1の糸端を、芯材2上の現在の組糸Y1・Y2の巻き付け位置までもってくるように構成してもよい。これによると、芯材2上の現在の組糸Y1・Y2の巻き付け位置までもってこられた第一組糸Y1の糸端は、現在の組糸Y1・Y2の巻き付けに巻き込まれていく。その結果、当該各第一ボビンキャリア40Aが第一走行軌道W1上に供給されたとき、当該各第一ボビンキャリア40Aの第一組糸Y1が、現在の組糸Y1・Y2の巻き付け位置から巻き付けられる。
本実施形態では、四つの第一ボビンキャリア40Aが第一走行軌道W1上へ搬送される。これにより、合計八つの第一ボビンキャリア40Aが第一走行軌道W1上を走行している状態となり、合計八本の組糸Y1が芯材2に巻き付けられる状態になる。
【0044】
図16〜
図19に示すように、各羽車30の切欠部31が各第二可動部材51Bの第二内側補完軌道部54Bに到達したタイミングで、各アクチュエータ52Bにより各第二可動部材51Bが第二離脱位置から第二供給位置に移動される。これにより、各第二外側補完軌道部53B上の第二ボビンキャリア40Bが、第二走行軌道W2上へ搬送されると共に、各羽車30の切欠部31に係合する。その結果、当該各第二ボビンキャリア40Bが、第二走行軌道W2に沿って走行しはじめて、当該各第二ボビンキャリア40Bと芯材2との間に渡した各第二組糸Y2の芯材2への巻き付けが開始される。
なお、各第二外側補完軌道部53B上の第二ボビンキャリア40Bが、第二走行軌道W2上に供給されるよりも前に、当該各第二ボビンキャリア40Bと芯材2との間に張られている各第二組糸Y2を切断し、そして、当該各第二ボビンキャリア40Bが第二走行軌道W2上に供給される際に、切断した当該各第二ボビンキャリア40B側の第二組糸Y2の糸端を、芯材2上の現在の組糸Y1・Y2の巻き付け位置までもってくるように構成してもよい。これによると、芯材2上の現在の組糸Y1・Y2の巻き付け位置までもってこられた第二組糸Y2の糸端は、現在の組糸Y1・Y2の巻き付けに巻き込まれていく。その結果、当該各第二ボビンキャリア40Bが第二走行軌道W2上に供給されたとき、当該各第二ボビンキャリア40Bの第二組糸Y2が、現在の組糸Y1・Y2の巻き付け位置から巻き付けられる。
本実施形態では、四つの第二ボビンキャリア40Bが第二走行軌道W2上に搬送される。これにより、合計八つの第二ボビンキャリア40Bが第二走行軌道W2上を走行している状態となり、合計八本の組糸Y2が芯材2に巻き付けられる状態になる。
【0045】
以上のように、すべての第一可動部材51Aが、第一離脱位置から第一供給位置に移動されると共に、すべての第二可動部材51Bが、第二離脱位置から第二供給位置に移動されることによって、芯材2に巻き付けられる組糸Y1・Y2の合計本数が十六本になる(
図18参照)。
【0046】
なお、各アクチュエータ52A・52Bの操作は、制御装置が行うように構成してもよい。この場合、制御装置は、タッチセンサ、近接センサ、画像センサ等のセンサ類を用いてボビンキャリア40A・40Bの位置を検出して、各アクチュエータ52A・52Bを作動させるタイミングを計る。
また、作業者が適宜の操作具を操作して各アクチュエータ52A・52Bを操作するように構成してもよい。この場合、作業者は、ボビンキャリア40A・40Bの位置を目視で確認して、各アクチュエータ52A・52Bを作動させるタイミングを計る。
【0047】
ブレイダー1においては、各アクチュエータ52A・52Bにより各可動部材51A・51Bを操作することで、芯材2の径が不均一なときでも、芯材2の径に合わせて、芯材2に巻き付ける組糸Y1・Y2の合計本数を変更することが可能である。
【0048】
例えば、
図20(a)及び
図20(b)に示すように、組糸Y1・Y2が芯材2の領域α→β→γ→δ→εの順に巻き付けられることとする。領域αでは、芯材2の径が大きく、一定である。領域βでは、組糸Y1・Y2の巻き付けが進行するのに伴って芯材2の径が小さくなる。領域γでは、芯材2の径が小さく(領域αの半分)、一定である。領域βでは、組糸Y1・Y2の巻き付けが進行するのに伴って芯材2の径が大きくなる。領域αでは、芯材2の径が大きく(領域αと同一)、一定である。
芯材2に組糸Y1・Y2を巻き付ける場合において、領域αに対しては、すべての第一可動部材51Aを第一供給位置に配置すると共に、すべての第二可動部材51Bを第二供給位置に配置することで、合計十六本の組糸Y1・Y2を巻き付ける。
領域βに対しては、組糸Y1・Y2の巻き付け位置が進行するのに伴って、第一離脱位置の第一可動部材51Aと、第二離脱位置の第二可動部材51Bを徐々に増やしていく。これにより、芯材2に巻き付ける組糸Y1・Y2の合計本数を十六本から徐々に減らしていく。
領域γに対しては、すべての第一可動部材51Aを第一離脱位置に配置すると共に、すべての第二可動部材51Bを第二離脱位置に配置することで、合計八本の組糸Y1・Y2を巻き付ける。
領域δに対しては、組糸Y1・Y2の巻き付け位置が進行するのに伴って、第一供給位置の第一可動部材51Aと、第二供給位置の第二可動部材51Bを徐々に増やしていく。これにより、芯材2に巻き付ける組糸Y1・Y2の合計本数を八本から徐々に増やしていく。
領域εに対しては、すべての第一可動部材51Aを第一供給位置に配置すると共に、すべての第二可動部材51Bを第二供給位置に配置することで、合計十六本の組糸Y1・Y2を巻き付ける。
【0049】
以上のように、芯材2の径に合わせて、各可動部材51A・51Bを操作して、芯材2に巻き付ける組糸Y1・Y2の合計本数を変更することで、芯材2の径が不均一なときでも、組糸Y1・Y2を芯材2の外周面上に接触させた状態で隙間無く配置することができ、組糸Y1・Y2を芯材2の外周面上に均質に配置することが可能となる(
図20(b)〜
図20(d)参照)。
【0050】
ブレイダー1は、芯材2の外周面に組糸Y1・Y2を巻き付けて、芯材2の外周面上に、組糸Y1・Y2で構成された筒状の組物である筒体3を製作する。
筒体3は、芯材2の外周に強化繊維層を形成する。強化繊維層を構成する組糸Y1・Y2としては、ガラス繊維、アラミド繊維、カーボン繊維等がある。なお、強化繊維層を樹脂で固めることにより、FRP(強化繊維プラスティック)層を構成してもよい。
図20(b)に示すように、筒体3は、軸M方向に螺旋状に配置されると共に軸Mに対して互いに反対方向に傾斜した組糸Y1・Y2が、互いに編組された構造を有する。すなわち、軸Mに対する第一組糸Y1の傾斜と、軸Mに対する第二組糸Y2の傾斜とは、傾斜方向が逆であると共に傾斜角度θの大きさ(絶対値)は等しくなっている。本実施形態では、第一組糸Y1は軸Mに対してN°傾斜しており、第二組糸Y2は軸Mに対して−N°傾斜している。
なお、各ボビンキャリア40A・40Bの走行速度と芯材2の移動速度との速度比を変更することで、筒体3の組糸Y1・Y2の傾斜角度θを変更することが可能である。
図20(b)〜
図20(d)に示すように、筒体3に関しては、軸M方向の第一位置P1における軸Mに垂直な断面上に存在する組糸Y1・Y2の合計本数と、軸M方向の第一位置P1とは異なる第二位置P2における軸に垂直な断面上に存在する組糸Y1・Y2の合計本数と、が互いに異なっている。
本実施形態では、第一位置P1は前記領域α内に存在しているので、第一位置P1には合計十六本の組糸Y1・Y2が巻き付けられている。従って、第一位置P1における軸Mに垂直な断面上には、合計十六本の組糸Y1・Y2が存在している(
図20(b)及び
図20(c)参照)。また、第二位置P2は領域δ内に存在しているので、第二位置P2には合計八本の組糸Y1・Y2が巻き付けられている。従って、第二位置P2における軸Mに垂直な断面上には、合計八本の組糸Y1・Y2が存在している(
図20(b)及び
図20(d)参照)。
このように、筒体3は、軸M方向に異なる位置では、軸Mに垂直な断面上に存在する組糸Y1・Y2の合計本数が異なる構造を有する。これにより、芯材2の径が不均一なときでも、組糸Y1・Y2を芯材2の外周面上に接触させた状態で隙間無く配置することができ、組糸Y1・Y2を芯材2の外周面上に均質に配置することが可能となる(
図20(b)〜
図20(d)参照)。
【0051】
また、ブレイダー1は、ボビンキャリア搬送機構50A(50B)により、ボビンキャリア40A(40B)を走行軌道W1(W2)外へ搬送することによって、ボビンキャリア40A(40B)と、芯材2との間に渡した組糸Y1(Y2)の、芯材2への巻き付けを停止させる。この状態を利用して、ボビン4の交換を行うことが可能である。
ボビン4の交換は、以下の(一)〜(五)の手順で行われる。
(一)ボビンキャリア搬送機構50A(50B)により、ボビンキャリア40A(40B)を走行軌道W1(W2)外へ搬送して、ボビンキャリア40A(40B)と、芯材2との間に渡した組糸Y1(Y2)の、芯材2への巻き付けを停止させる(
図7、
図10、及び
図12参照)。
(二)ボビンキャリア40A(40B)と、芯材2との間に張られている組糸Y1(Y2)を切断する。
(三)ボビンキャリア40A(40B)に装着されているボビン4を交換する。
(四)交換後のボビン(満管ボビン)から組糸Y1(Y2)を引き出して、引き出した組糸Y1(Y2)の糸端と、上記(2)で切断した芯材2側の組糸Y1(Y2)の糸端とを接合する。
(五)ボビンキャリア搬送機構50A(50B)により、ボビンキャリア40A(40B)を走行軌道W1(W2)上へ搬送する(
図15及び
図18参照)。その結果、ボビンキャリア40A(40B)が、走行軌道W1(W2)に沿って走行し、前記満管ボビンの組糸Y1(Y2)が芯材2に巻き付けられていく。
【0052】
また、ブレイダー1は、ボビンキャリア搬送機構50A(50B)によりボビンキャリア40A(40B)を搬送することで、ボビンキャリア40A(40B)を走行軌道W1(W2)上に供給・離脱させる。すなわち、ブレイダー1は、ボビンキャリア40A(40B)を走行軌道W1(W2)上に供給・離脱させるときには、ボビンキャリア40A(40B)を走行させない。これにより、ボビンキャリア40A(40B)を走行軌道W1(W2)上に供給・離脱させるためのボビンキャリア40A(40B)用の走行軌道を増設する必要がない。従って、装置をコンパクトに構成することが可能となる。
また、ボビンキャリア40A(40B)を走行軌道W1(W2)上に供給・離脱させるためのボビンキャリア40A(40B)用の走行軌道を増設することなくボビン4の交換を行えるので、ボビン4の交換を行うための機構をコンパクトに構成することが可能になる。
【0053】
また、ブレイダー1においては、各ボビンキャリア搬送機構50A(50B)が、それぞれ走行軌道W1(W2)上における同一の位置で、ボビンキャリア40A(40B)を走行軌道W1(W2)上に供給・離脱させる(
図7、
図10、
図15、及び
図18参照)。これにより、ボビンキャリア40A(40B)を走行軌道W1(W2)上に供給する位置と離脱させる位置とを別々に設ける場合に比べて、装置をコンパクトに構成することが可能となる。
【0054】
また、ブレイダー1は、羽車30が糸巻き方向に回転している状態で、アクチュエータ52A(52B)により可動部材51A(51B)を第一供給位置(第二供給位置)と第一離脱位置(第二離脱位置)の間で移動させて、ボビンキャリア40A(40B)を走行軌道W1(W2)上に供給・離脱させることが可能である。
前記糸巻き方向は、ブレイダー1により組糸Y1・Y2が芯材2の外周面に巻き付けられて筒体3が製作されるときの、羽車30の回転方向である。
これにより、組糸Y1・Y2の芯材2への巻き付け作業を中断せずに、組糸Y1・Y2の芯材2への巻き付け本数を変更する作業、及びボビン4を交換する作業を行うことができ、作業効率を向上させることができる。
【0055】
以下では、ボビンキャリア搬送機構の第二実施例であるボビンキャリア搬送機構60A・60Bについて説明する。
【0056】
図21に示すように、支持部材20には、第一走行軌道W1を分断する切欠部23と、第二走行軌道W2を分断する切欠部24が形成される。
走行軌道W1には、切欠部23により欠落部Wcが形成される。走行軌道W2には、切欠部24により欠落部Wdが形成される。欠落部Wc・Wdは、少なくとも一つずつ形成される。
本実施形態では、切欠部23・24がそれぞれ複数(四つずつ)形成され、これに伴って、欠落部Wc・Wdがそれぞれ複数(四つずつ)形成される。欠落部Wc・Wdは、軸M回りに22.5度ずつ間隔を空けて交互に配置されている。
【0057】
図22に示すように、ボビンキャリア搬送機構60A・60Bは、少なくとも一つずつ設けられる。第一ボビンキャリア搬送機構60A(60B)は、切欠部23(24)毎に設けられる(
図21及び
図22参照)。従って、本実施形態では、ボビンキャリア搬送機構60A・60Bが四つずつ設けられる。
各ボビンキャリア搬送機構60A(60B)は、ピッキング機構61A(61B)を備える。
【0058】
図22〜
図23(b)に示すように、各ピッキング機構61A(61B)は、可動部材62A(62B)と、アクチュエータ63A(63B)と、搬送手段であるロボットハンド64A(64A)と、を有する。
【0059】
各可動部材62A(62B)は、各切欠部23(24)に嵌合可能な板形状を有している。
【0060】
第一可動部材62Aには、第一補完軌道部65Aが形成される。
第一可動部材62Aは、第一係合位置、及び、第一解除位置、の間で移動可能に支持されている。
第一係合位置は、第一補完軌道部65Aが第一走行軌道W1の欠落部Wcを補完する位置である(
図22及び
図23(a)参照)。
第一解除位置は、第一可動部材62Aが支持部材20に対して陥没した位置である(
図21及び
図24(a)参照)。なお、このときの第一可動部材62Aの陥没量d1は、第一ボビンキャリア40Aのスライダ部44の突出量d2よりも大きい(d1>d2)。
【0061】
第二可動部材62Bには、第二補完軌道部65Bが形成される。
第二可動部材62Bは、第二係合位置、及び、第二解除位置、の間で移動可能に支持されている。
第二係合位置は、第二補完軌道部65Bが第二走行軌道W2の欠落部Wdを補完する位置である(
図22及び
図23(a)参照)。
第二解除位置は、第二可動部材62Bが支持部材20に対して陥没した位置である(
図21及び
図24(a)参照)。なお、このときの第二可動部材62Bの陥没量d1は、第二ボビンキャリア40Bのスライダ部44の突出量d2よりも大きい(d1>d2)。
【0062】
各可動部材62A(62B)には、アクチュエータ63A(63B)が接続されている(
図23(a)参照)。各アクチュエータ63A(63B)は、各可動部材62A(62B)を、第一係合位置(第二係合位置)と、第一解除位置(第二解除位置)と、の間でそれぞれ移動させることが可能である。アクチュエータ63A(63B)は、例えば、油圧シリンダ、又はエアシリンダで構成される。
【0063】
各ロボットハンド64A(64A)は、各ボビンキャリア40A(40B)を把持して搬送することが可能である。
【0064】
以下では、ピッキング機構61A(61B)の動作について説明する。
【0065】
図23(a)〜
図25(b)に示すように、ボビンキャリア40A(40B)が補完軌道部65A(65B)に到達したタイミングで、ロボットハンド64A(64A)により当該ボビンキャリア40A(40B)が把持されて、アクチュエータ63A(63B)により可動部材62A(62B)が第一係合位置(第二係合位置)から第一解除位置(第二解除位置)に移動される。これにより、当該ボビンキャリア40A(40B)のスライダ部44が補完軌道部65A(65B)から抜けて、当該ボビンキャリア40A(40B)が、走行軌道W1(W2)との係合を解除される。そして、当該ボビンキャリア40A(40B)が、ロボットハンド64A(64A)により、走行軌道W1・W2の外側に搬送されて停止される。その結果、ロボットハンド64A(64A)により搬送された当該ボビンキャリア40A(40B)と、芯材2との間に渡した各組糸Y1(Y2)の、芯材2への巻き付けが停止される。このとき、当該各組糸Y1(Y2)は、他の組糸Y1・Y2と接触不能な位置において、当該各ボビンキャリア40A(40B)と、芯材2との間で張られた状態になる。
なお、ロボットハンド64A(64A)によりボビンキャリア40A(40B)が走行軌道W1・W2の外側へ搬送された後は、すぐに、アクチュエータ63A(63B)により可動部材62A(62B)が第一係合位置(第二係合位置)に戻される。これは、走行軌道W1(W2)を走行している他のボビンキャリア40A(40B)が、脱線することを防止するためである。
【0066】
図26(a)〜
図27(b)に示すように、羽車30の切欠部31が可動部材62A(62B)の補完軌道部65A(65B)に到達したタイミングで、アクチュエータ63A(63B)により可動部材62A(62B)が第一係合位置(第二係合位置)から第一解除位置(第二解除位置)に移動される。そして、ロボットハンド64A(64A)によりボビンキャリア40A(40B)が羽車30の切欠部31と係合する位置まで搬送される。そして、アクチュエータ63A(63Bにより可動部材62A(62B)が第一解除位置(第二解除位置)から第一係合位置(第二係合位置)に戻される。これにより、当該ボビンキャリア40A(40B)のスライダ部44が、補完軌道部65A(65B)に挿入されて、当該ボビンキャリア40A(40B)が走行軌道W1(W2)に係合する。その結果、当該ボビンキャリア40A(40B)が、走行軌道W1(W2)に沿って走行し始めて、当該ボビンキャリア40A(40B)と芯材2との間に渡した組糸Y1(Y2)の芯材2への巻き付けが開始される。
【0067】
ピッキング機構61A・61Bは、第一実施形態のボビンキャリア搬送機構50A・50Bと同様の作用効果を奏する。従って、ピッキング機構61A・61Bの作用効果についての説明は省略する。
【0068】
以下では、ピッキング機構61A・61Bの変形例であるピッキング機構71A・71Bについて説明する。
【0069】
なお、ピッキング機構71A・71Bが採用される場合は、支持部材20に切欠部が形成されず、走行軌道W1・W2が分断されない。
【0070】
図28(a)〜
図29(c)に示すように、ピッキング機構71A・71Bは、テーパ部72と、付勢部材73と、付勢機構74と、搬送手段であるロボットハンド75A(75B)と、を有する。
【0071】
テーパ部72は、ボビンキャリア40A(40B)の係合部43の第二フランジ部43bに形成され、第二フランジ部43bの外周面を先細りさせる斜面形状を有する。
【0072】
係合部43の先端面には穴79が形成されており、穴79内には付勢部材73が配置されている。
付勢部材73は、その先端部がスライダ部44に連結されており、スライダ部44を穴79から突出する方向に付勢している。
【0073】
付勢機構74は、羽車30の切欠部31の縁部に形成される。
付勢機構74は、ボビンキャリア40A(40B)の第一フランジ部43aに接触する第一接触部74aと、第二フランジ部43bに接触する第二接触部74bと、接触部74a・74bを互いに離間する方向に付勢する付勢部74cと、を有する。
第一接触部74aは、羽車30に固定されており、羽車30と一体化されている。第二接触部74bは、羽車30とは別体であり、第一接触部74aに近接離間可能に支持されている。羽車30には、第二接触部74bが第一接触部74aから離間しすぎることを規制する規制部74dが設けられている。
第二接触部74bが規制部74dに接触しているときの、第二接触部74bと支持部材20との間隔d3は、第二フランジ部43bの厚みd4と略一致している(d3≒d4)。また、第二接触部74bの移動可能な最大距離d5は、スライダ部44の最大突出量d6よりも大きい(d5>d6)。
【0074】
図29(b)に示すように、ロボットハンド75A(75B)は、一対の把持部76A(76B)を有している。各把持部76A(76B)には、テーパ面77A(77B)が形成される。一対のテーパ面77A(77B)は、先端に向かうに従って互いに近接しており、ボビンキャリア40A(40B)の第二フランジ部43bのテーパ部72に係合可能な形状を有している。また、各把持部76A(76B)には、ボビンキャリア40A(40B)を押し付けるための押付部78A(78B)が形成されている。
【0075】
以下では、ピッキング機構A・Aの動作について説明する。
【0076】
図29(a)〜
図32(c)に示すように、ボビンキャリア40A(40B)が走行軌道W1(W2)に沿って走行している状態で、ロボットハンド75A(75B)の把持部76A(76B)により、当該ボビンキャリア40A(40B)が把持されて持ち上げられる。これにより、付勢部74cが収縮して、当該ボビンキャリア40A(40B)のスライダ部44が走行軌道W1(W2)から抜ける。これにより、当該ボビンキャリア40A(40B)と、走行軌道W1(W2)との係合が解除される。そして、当該ボビンキャリア40A(40B)が、ロボットハンド75A(75B)により、走行軌道W1・W2の外側に搬送されて停止される。その結果、ロボットハンド75A(75B)により搬送された当該ボビンキャリア40A(40B)と、芯材2との間に渡した各組糸Y1(Y2)の、芯材2への巻き付けが停止される。このとき、当該各組糸Y1(Y2)は、他の組糸Y1・Y2と接触不能な位置において、当該各ボビンキャリア40A(40B)と、芯材2との間で張られた状態になる。
【0077】
図32(a)〜
図34(c)に示すように、ロボットハンド75A(75B)の押付部78A(78B)により、ボビンキャリア40A(40B)のスライダ部44が、支持部材20に押し付けられる。これにより、付勢部材73が収縮して、スライダ部44が係合部43の穴79に没入する。そして、スライダ部44が係合部43の穴79に没入した状態で、ロボットハンド75A(75B)により、当該ボビンキャリア40A(40B)が羽車30の切欠部31に係合する位置まで搬送される。そして、当該ボビンキャリア40A(40B)が羽車30の切欠部31に係合したとき、付勢部材73の付勢力により、スライダ部44が穴79から突出して走行軌道W1(W2)内に進入する。これにより、当該ボビンキャリア40A(40B)が、走行軌道W1(W2)に係合する。その結果、当該ボビンキャリア40A(40B)が、走行軌道W1(W2)に沿って走行し始めて、当該ボビンキャリア40A(40B)と芯材2との間に渡した組糸Y1(Y2)の芯材2への巻き付けが開始される。
【0078】
ピッキング機構71A・71Bは、第一実施形態のボビンキャリア搬送機構50A・50Bと同様の作用効果を奏する。従って、ピッキング機構71A・71Bの作用効果についての説明は省略する。