特許第6309810号(P6309810)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6309810コンクリート振動付与時機判定装置、コンクリート振動付与時機判定方法、コンクリート振動付与装置およびコンクリート振動付与方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6309810
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】コンクリート振動付与時機判定装置、コンクリート振動付与時機判定方法、コンクリート振動付与装置およびコンクリート振動付与方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/06 20060101AFI20180402BHJP
   E04G 21/10 20060101ALI20180402BHJP
【FI】
   E04G21/06
   E04G21/10 Z
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-77745(P2014-77745)
(22)【出願日】2014年4月4日
(65)【公開番号】特開2015-200067(P2015-200067A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2016年10月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】509338994
【氏名又は名称】株式会社IHIインフラシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100122312
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 正優
(72)【発明者】
【氏名】中村 善彦
(72)【発明者】
【氏名】戸田 勝哉
【審査官】 西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−021341(JP,A)
【文献】 特開平01−047481(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01050625(EP,A2)
【文献】 特開2004−137744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/06
E04G 21/10
E01C 19/00
G01N 33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化前のコンクリートの表面に密着するコンクリート接触部材と、
前記コンクリート接触部材を前記表面に沿って振動させる振動機と、
前記コンクリート接触部材の振動状態を検出する振動検出部と、
前記振動検出部の検出結果に基づいて前記コンクリートに振動を付与する時機を判定する振動付与時機判定部と、
を備え
前記振動付与時機判定部は、前記コンクリート接触部材を前記表面から離間させて振動させたときの検出結果と前記コンクリート接触部材を前記表面に密着させて振動させたときの検出結果を比較する比較演算部を備えることを特徴とするコンクリート振動付与時機判定装置。
【請求項2】
前記振動付与時機判定部は、再振動開始時機、再振動終了時機、仕上げ振動開始時機または仕上げ振動終了時機を判定することを特徴とする請求項2に記載のコンクリート振動付与時機判定装置。
【請求項3】
前記振動付与時機判定部の判断結果を報知する報知部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の振動付与時機判定装置。
【請求項4】
前記コンクリート接触部材を前記表面に沿って滑動させる操作ハンドルを備えることを特徴とする請求項1からのうちいずれか一項に記載のコンクリート振動付与時機判定装置。
【請求項5】
硬化前のコンクリートの表面に密着するコンクリート接触部材を前記表面から離間させて振動させたときの振動状態を検出する予備工程と、
前記コンクリート接触部材を前記表面に密着させて振動させたときの振動状態を検出する振動検出工程と、
前記予備工程で得られた振動状態と前記振動検出工程で得られた振動状態を比較して前記コンクリートに振動を付与する時機を判定する判定工程と、
を有することを特徴とするコンクリート振動付与時機判定方法。
【請求項6】
前記振動検出工程は、前記コンクリート接触部材を前記表面に沿って滑動させながら、前記コンクリート接触部材を振動させることを特徴とする請求項に記載のコンクリート振動付与時機判定方法。
【請求項7】
前記判定工程は、再振動開始時機、再振動終了時機、仕上げ振動開始時機または仕上げ振動終了時機を判定することを特徴とする請求項5または6に記載のコンクリート振動付与時機判定方法。
【請求項8】
硬化前のコンクリートの表面を滑動する均し板を前記表面に沿って振動させて前記コンクリートに振動を付与するコンクリート振動付与装置であって、
請求項1からのうちいずれか一項に記載の振動付与時機判定装置を備えると共に、前記均し板が前記振動付与時機判定装置のコンクリート接触部材を兼ねることを特徴とするコンクリート振動付与装置。
【請求項9】
コンクリートを打設する打設工程と、
請求項8に記載のコンクリート振動付与装置を用いると共に、請求項5から7のいずれか一項に記載のコンクリート振動付与時機判定方法に基づいて前記コンクリートに振動を付与する時機を判定する振動付与時機判定工程と、
請求項に記載のコンクリート振動付与装置を用いて前記コンクリートに振動を付与する振動付与工程と、
を有することを特徴とするコンクリート振動付与方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート振動付与時機判定装置、コンクリート振動付与時機判定方法、コンクリート振動付与装置およびコンクリート振動付与方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは、打設が完了した後にバイブレータ等によって再振動が与えられると、コンクリート骨材の周りに集まったブリーディング水が分散し、セメントペーストが均一になる。つまり、コンクリートが締め固められて圧縮強度が向上する。
【0003】
コンクリートを再振動させる際には、最適なタイミング(時機)で再振動させることが重要である。コンクリートを再振動させるタイミングは、コンクリートの練り混ぜからの経過時間に基づいて判定されている。
しかし、コンクリートの硬化時間は、気温などによって変化する。このため、経過時間に基づいてコンクリートを再振動するタイミングを判定しようとしても、正確に判定することは困難である。
そこで、コンクリートを再振動させるタイミングを正確に判定するために、様々な判定装置が用いられている。
【0004】
特許文献1から5には、再振動時機判定装置が記載されている。
特許文献1の再振動時機判定装置は、プロクター貫入試験器をコンクリートに貫入するときの貫入抵抗値を高精度に測定する。再振動のタイミングは、この貫入抵抗値に基づいて判定される。
特許文献2の再振動時機判定装置は、高周波ハイブレータを貫入して仕事量を測定する。再振動のタイミングは、この仕事量に基づいて判定される。
特許文献3の再振動時機判定装置は、音叉型振動式粘度計を挿入してコンクリートの粘度を測定する。再振動のタイミングは、この粘度に基づいて判定される。
特許文献4,5の再振動時機判定装置は、棒状の計測センサーをコンクリートに埋め込んでコンクリートの電気伝導率を測定する。再振動のタイミングは、この電気伝導率に基づいて判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−101070号公報
【特許文献2】特公平01−23737号公報
【特許文献3】特開2013−036162号公報
【特許文献4】特許第5391457号公報
【特許文献5】特開平05−340938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1から5に記載された再振動時機判定装置には、以下に示す問題がある。
【0007】
特許文献1〜3の再振動時機判定装置は、プロクター貫入試験器等の器具を打設したコンクリートに貫入(挿入)する必要があるため、コンクリートの表面に穴が空いてしまうという問題がある。
打設したコンクリートとは別に、試験体コンクリートを用意して、この試験体コンクリートに対してプロクター貫入試験器等を貫入する場合がある。しかしながら、打設したコンクリートと試験体コンクリートは、周囲環境(特に温度)が異なるため、コンクリートの硬化速度が相違する。このため、試験体コンクリートを用いる場合には、打設したコンクリートを再振動させるタイミングを正確に判定することができないという問題がある。
【0008】
特許文献4,5の再振動時機判定装置では、計測センサーを打設したコンクリートに埋め込み、コンクリートの電気伝導率を測定した後に、計測センサーをそのままコンクリートに埋没させる。このため、コンクリートの内部に残留する計測センサーが異物となって、コンクリートの欠陥となるという問題がる。
また、計測センサーが消耗品となってしまうため、再振動時機判定装置のランニングコストが嵩むという問題がある。
【0009】
特許文献1〜5の再振動時機判定装置はいずれも、打設したコンクリートの全域に亘って、再振動のタイミングを判断するものではない。仮に、打設したコンクリートの全域に亘って貫入抵抗値や電気伝導率を測定すると、上述したように、コンクリートの表面に多数の穴が空いたり、多数の計測センサーがコンクリートの内部に残留したりするという問題がある。つまり、特許文献1〜5の再振動時機判定装置はいずれも、打設したコンクリートの一部分の貫入抵抗値等を測定するに過ぎない。したがって、打設したコンクリートの全域において、再振動を与えるタイミングを正確に判断することができないという問題がある。
また、特許文献1〜5では、コンクリートに再振動を与えるタイミングを判定する再振動時機判定装置と、コンクリートに再振動を与える再振動付与装置とは、別個の装置である。このため、再振動時機判定装置により最適なタイミングが判断されたとしても、再振動付与装置を稼働させるまでに多少の時間を要するため、即時にコンクリートに再振動を与えることができない。すなわち、作業効率が悪いという問題がある。
また、二つの装置を用意する必要があるため、コストが掛かるという問題がある。
【0010】
本発明は、打設したコンクリートに振動を付与する時機を容易かつ正確に判定することができるコンクリート振動付与時機判断装置およびコンクリート振動付与時機判断方法を提案することを目的とする。
また、本発明は、打設したコンクリートを振動を付与する時機を判定した直後に、コンクリートに振動を与えることができるコンクリート振動付与装置およびコンクリート振動付与方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述した課題を解決するために、以下の手段を採用した。
本発明の第一実施態様に係るコンクリート振動付与時機判定装置は、硬化前のコンクリートの表面に密着するコンクリート接触部材と、前記コンクリート接触部材を前記表面に沿って振動させる振動機と、前記コンクリート接触部材の振動状態を検出する振動検出部と、前記振動検出部の検出結果に基づいて前記コンクリートに振動を付与する時機を判定する振動付与時機判定部と、を備え、前記振動付与時機判定部は、前記コンクリート接触部材を前記表面から離間させて振動させたときの検出結果と前記コンクリート接触部材を前記表面に密着させて振動させたときの検出結果を比較する比較演算部を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の第二実施態様に係るコンクリート振動付与時機判定装置は、第一実施態様において、前記振動付与時機判定部は、再振動開始時機、再振動終了時機、仕上げ振動開始時機または仕上げ振動終了時機を判定することを特徴とする。
【0014】
本発明の第実施態様に係るコンクリート振動付与時機判定装置は、第一または第二実施態様において、前記振動付与時機判定部の判断結果を報知する報知部を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の第実施態様に係るコンクリート振動付与時機判定装置は、第一から第実施態様のいずれかにおいて、前記コンクリート接触部材を前記表面に沿って滑動させる操作ハンドルを備えることを特徴とする。
【0016】
本発明の第一実施態様に係るコンクリート振動付与時機判定方法は、硬化前のコンクリートの表面に密着するコンクリート接触部材を前記表面から離間させて振動させたときの振動状態を検出する予備工程と、前記コンクリート接触部材を前記表面に密着させて振動させたときの振動状態を検出する振動検出工程と、前記予備工程で得られた振動状態と前記振動検出工程で得られた振動状態を比較して前記コンクリートに振動を付与する時機を判定する判定工程と、を有することを特徴とする。
【0017】
本発明の第二実施態様に係るコンクリート振動付与時機判定方法は、第一実施態様において、前記振動検出工程は、前記コンクリート接触部材を前記表面に沿って滑動させながら、前記コンクリート接触部材を振動させることを特徴とする。
本発明の第三実施態様に係るコンクリート振動付与時機判定方法は、第一または第二実施態様において、前記判定工程は、再振動開始時機、再振動終了時機、仕上げ振動開始時機または仕上げ振動終了時機を判定することを特徴とする。
【0018】
本発明の第一実施態様に係るコンクリート振動付与装置は、硬化前のコンクリートの表面を滑動する均し板を前記表面に沿って振動させて前記コンクリートに振動を付与するコンクリート振動付与装置であって、第一から第実施態様のいずれかに係る振動付与時機判定装置を備えると共に、前記均し板が前記振動付与時機判定装置のコンクリート接触部材を兼ねることを特徴とする。
【0019】
本発明の第一実施態様に係るコンクリート振動付与方法は、コンクリートを打設する打設工程と、第一実施態様に係るコンクリート振動付与装置を用いると共に、第一から第三実施態様のいずれかに係るコンクリート振動付与時機判定方法に基づいて前記コンクリートに振動を付与する時機を判定する振動付与時機判定工程と、第一実施態様に係るコンクリート振動付与装置を用いて前記コンクリートに振動を付与する振動付与工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るコンクリート振動付与時機判定装置およびコンクリート振動付与時機判定方法は、打設したコンクリートに振動を付与する時機を容易に判定することができる。打設したコンクリートに器具等を貫入(挿入)したり埋没させたりする必要がないため、コンクリートの表面に穴が空いたり内部に異物が残ったりすることがない。試験体コンクリートを用いる必要がないので、打設したコンクリートを振動させるタイミングを正確に判定することができる。
【0021】
本発明に係るコンクリート振動付与装置およびコンクリート振動付与方法は、振動付与時機判断の直後に、時間を空けることなく、即時に振動付与を開始することができる。このため、作業効率を大幅に向上させることができる。また、コンクリート振動付与装置が二つの機能(コンクリート振動付与時機判断、コンクリート振動付与)を有するので、別々の装置を用意する必要がなく、コスト低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係るコンクリート振動付与装置1の概略構成を示す模式図である。
図2】均し板10の裏面12を示す図であり、(a)全体図、(b)IIb部分拡大図、(c)IIc-IIc断面図である。
図3】制御部40を示すブロック図である。
図4】本発明の実施形態に係るコンクリート振動付与方法を示すフローチャート図である。
図5】コンクリート振動付与方法の変形例を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るコンクリート振動付与装置1の概略構成を示す模式図である。
【0024】
コンクリート振動付与装置(コンクリート振動付与時機判定装置)1は、地上等に打設されたフレッシュコンクリート(硬化前のコンクリートC)が硬化する前に、均し板10からコンクリートCに振動(再振動、仕上げ振動)を与える装置である。コンクリート振動付与装置1は、コンクリートCの表面CSを滑動しつつ、振動を与える。
【0025】
また、コンクリート振動付与装置1は、打設したコンクリートCの広範囲に亘って、再振動付与時機TAおよび仕上げ振動付与時機TBを判断する装置でもある。
再振動付与時機TAは、コンクリートCに再振動を付与するタイミングであって、再振動開始時機TA1から再振動終了時機TA2までの時間である。仕上げ振動付与時機TBは、コンクリートCに仕上げ振動を付与するタイミングであって、仕上げ振動開始時機TB1から仕上げ振動終了時機TB2までの時間である。
【0026】
コンクリートCの表面CSに対して直交する方向(鉛直方向)を上下方向という。
上下方向に直交する方向(水平方向)のうち、均し板10の長手方向に沿う方向を幅方向という。
水平方向のうち、上下方向および幅方向に直交する方向を前後方向という。前後方向は、コンクリート振動付与装置1の進退方向に一致する。
【0027】
コンクリート振動付与装置1は、均し板10、振動機20および操作ハンドル50を備える。
均し板(コンクリート接触部材)10は、コンクリートCの表面CSに密着して振動を与える部材である。均し板10は、硬化進行状態を検出するためにコンクリートCに振動を与える部材と、締め固めるためにコンクリートCに振動を与える部材を兼ねる。
均し板10は、平面視すると細長い矩形に形成された平板状の部材であり、例えば、幅方向の長さが約2m、前後方向の長さが約0.5m、上下方向の長さ(厚み)が約30mmである。
均し板10は、例えばアルミニウムなどの金属により形成される。アルミニウムの他、鉄鋼や硬質の合成樹脂材などを用いることができる。
【0028】
均し板10の上面11は、平坦に形成される。上面11の中央には、偏心回転体21が配置される。均し板10の裏面12は、コンクリートCの表面CSに接触(密着)する面である。
【0029】
均し板10の上面11は、加速度センサー61と表示ランプ62が配設される。
加速度センサー(振動検出部)61は、均し板10の振動状態(振幅、速度、加速度など)を検出可能なである。加速度センサー61は、二軸型の加速度センサーであり、前後方向および幅方向を含む水平方向の振動を検出する。
加速度センサー61は、機械的変位測定方式、共振周波数測定方式、光学方式または半導体方式(静電容量型、ピエゾ抵抗型、ガス温度分布型)等のいずれも方式であってもよい。
加速度センサー61の検出結果(振動データ)は、制御部40に出力される。
【0030】
表示ランプ(報知部)62は、均し板10の振動状態を表示するカラーランプである。
表示ランプ62は、制御部40に接続される。表示ランプ62は、制御部40からの指令に基づいて、青色、黄色および赤色の三色に、点灯または点滅する。
【0031】
図2は、均し板10の裏面12を示す図である。(a)全体図、(b)IIb部分拡大図、(c)IIc-IIc断面図である。
図2(a)に示すように、裏面12は、全体的に見ると、平坦に形成される。
図2(b)に示すように、裏面12は、拡大して見ると、複数の突部15が配設されて凹凸に形成される。つまり、均し板10の裏面12には、微細な突部15が全面に亘って点在する。
【0032】
図2(c)に示すように、突部15は、半球状に形成されて、裏面12から下方に突出する。突部15は、例えば直径が10mm程度であり、厚み(裏面12からの突出高)が2〜3mm程度である。
複数の突部15は、裏面12の面積のうち、例えば20〜50%程度の面積を占める。
【0033】
図1に戻り、振動機20は、均し板10を水平方向(コンクリートCの表面CS)に沿って均等に振動させるものである。
振動機20は、偏心回転体21および駆動部25を備える。駆動部25は、電動モータ部30および制御部40を備える。
【0034】
偏心回転体21は、均し板10に振動を与える部材である。偏心回転体21は、均し板10の上面11に配置される。偏心回転体21は、回転中心線Oが上下方向にほぼ平行になる姿勢で、均し板10に支持される。つまり、偏心回転体21は、回転中心線Oが上下方向に沿う姿勢で、均し板10の上面11に回転可能に支持される。
偏心回転体21は、平面視すると略円形に形成された平板状の部材であり、例えば鉄などの比重が大きい金属により形成される。
偏心回転体21は、回転中心線Oが重心に一致しないように設定される。このため、偏心回転体21が回転すると、回転中心線Oから重心に向かう方向に遠心力が作用する。したがって、偏心回転体21は、回転中心線Oに直交する方向に振動する。つまり、偏心回転体21は、水平方向の振動を発生する。
【0035】
偏心回転体21の外周側には、回転体カバー23が配置される。回転体カバー23は、偏心回転体21の外周を覆う円筒形の部材であって、均し板10の上面11に固定される。回転体カバー23は、アルミニウムや鉄鋼などの金属により形成される。
偏心回転体21と回転体カバー23は、滑り接触する。つまり、回転体カバー23は、偏心回転体21を回転可能に支持する。
したがって、偏心回転体21は、回転体カバー23を介して均し板10に対して水平方向の振動を与える。
【0036】
電動モータ部(回転モータ)30は、偏心回転体21を回転駆動する駆動源である。電動モータ部30は、いわゆるブラシレスDCモータである。
電動モータ部30は、有底筒状のモータハウジング31を備える。電動モータ部30は、モータハウジング31の内部に、ロータ32およびステータ34等を備える。
【0037】
モータハウジング31は、アルミニウムや鉄鋼などの金属により形成された部材であって、例えば深絞りによるプレス加工等により成型される。
【0038】
電動モータ部30は、インナーロータ型のブラシレスDCモータである。電動モータ部30は、ロータ32が内側に配置され、ステータ34がロータ32の外周を覆うように外側に配置される。
【0039】
ロータ32は、鉄等の金属からなる丸棒状のモータシャフト33等を有する。モータシャフトの上端側の外周面には、複数の永久磁石(不図示)が貼り付けられる。
モータシャフト33は、軸受(不図示)を介してモータハウジング31に対して回転可能に支持される。
モータシャフト33の先端(下端)は、モータハウジング31の下端(開口)よりも下方に延在する。そして、モータシャフト33の先端には、偏心回転体21が直結される。
【0040】
ステータ34は、モータハウジング31の内周面に沿って配置される。ステータ34は、複数の巻線35等を備える。巻線35は、ステータコア(不図示)に回巻される。
巻線35に通電することにより、ステータコアに磁力が発生する。
【0041】
モータハウジング31の下端には、緩衝部28が取り付けられる。緩衝部28は、ゴムなどの柔軟な材料からなる円筒形の部材であり、モータシャフト33が挿通される。緩衝部28の下端は、回転体カバー23の上端(開口)に取り付けられる。つまり、モータハウジング31と回転体カバー23は、緩衝部28を介して連結される。
緩衝部28は、柔軟な材料により形成されているので、水平方向などに柔軟に撓むことができる。このため、回転体カバー23は、モータハウジング31に対して水平方向などに微小移動(振動)できるように連結される。
【0042】
図3は、制御部40を示すブロック図である。
制御部40は、電動モータ部30を制御して、任意の回転速度で回転(可変速運転)させる。
制御部40は、インバータ制御部42と操作指令部45を備える。制御部40には、電源部41と操作指令部45が接続される。
【0043】
電源部41は、AC電源であり、例えば100Vや200Vの交流を供給する。
インバータ制御部42は、コンバータ43およびインバータ44を有する。インバータ制御部42は、モータハウジング31の側面などに配置される。コンバータ43は、電源部41から供給された交流を直流に変換する。インバータ44は、コンバータ43から出力された直流を再び交流に変化する。
【0044】
操作指令部45は、操作ハンドル50に配置される。操作指令部45では、振動モードを選択可能である。振動モードには、予備振動モードM1、振動検出モードM2、再振動モードM3および仕上げ(敷き均し)振動モードM4の四つがある。これら四つの振動モードM1〜M4は、作業者が操作指令部45を操作することにより切り替えられる。
操作指令部45は、作業者の操作(振動モードM1〜M4の選択)に基づいて、インバータ制御部42のインバータ44に指令を与える。これにより、インバータ制御部42(インバータ44)から出力される交流の周波数を、各振動モードM1〜M4に適した周波数に変更する。
インバータ制御部42(インバータ44)から出力された交流は、電動モータ部30に供給される。電動モータ部30は、供給電流(交流)の周波数に応じて回転する。つまり、電動モータ部30の回転数は、供給電流の周波数に応じて変化する。
このように、制御部40は、電動モータ部30に供給される交流の周波数を変更することにより、電動モータ部30を所望の回転数で回転させることができる。
【0045】
また、制御部40は、コンクリートCに振動を与えるタイミングを判定するタイミング判定部46を備える。タイミング判定部(振動付与時機判定部)46は、不揮発性メモリー47と比較演算部48を有する。
不揮発性メモリー47は、加速度センサー61により検出された振動データを記憶する。不揮発性メモリー47には、予備振動モードM1における均し板10の振動データ等が記憶される。
【0046】
比較演算部48は、加速度センサー61により検出された振動データと不揮発性メモリー47に記憶された振動データを比較する。比較演算部48には、加速度センサー61から振動検出モードM2、再振動モードM3および仕上げ振動モードM4の振動データがそれぞれ入力される。つまり、比較演算部48は、振動検出モードM2、再振動モードM3および仕上げ振動モードM4における均し板10の振動データと、予備振動モードM1における均し板10の振動データとをそれぞれ比較する。
比較演算部48は、振動の振幅、速度または加速度を比較する。例えば、振動検出モードM2の均し板10の振幅と予備振動モードM1の均し板10の振幅を比較する(比率を求める)。
【0047】
タイミング判定部46は、比較演算部48の比較結果に基づいて、コンクリートCに振動を与えるタイミングを判定する。タイミング判定部46は、コンクリートCに再振動を付与するタイミング(再振動付与時機TA)とコンクリートCに仕上げ振動を付与するタイミング(仕上げ振動付与時機TB)を判定する。
具体的には、タイミング判定部46は、再振動付与時機TAとして、再振動を開始する再振動開始時機TA1と再振動を終了する再振動終了時機TA2を判断する。また、タイミング判定部46は、仕上げ振動付与時機TBとして、仕上げ振動を開始する仕上げ振動開始時機TB1および仕上げ振動を終了する仕上げ振動終了時機TB2を判断する。
以下では、再振動終了時機TA2と仕上げ振動開始時機TB1は、ほぼ一致するとして、同一(同時)に判断される。
【0048】
タイミング判定部46は、予備振動モードM1の振幅に対する振動検出モードM2の振幅の比率が第一閾値を下回ると、コンクリートCに再振動を与えるタイミング(再振動開始時機TA1)になったと判定する。
また、タイミング判定部46は、予備振動モードM1の振幅に対する再振動モードM3の振幅の比率が第二閾値を下回ると、再振動を終了するタイミング(再振動終了時機TA2)になったと判定する。言い換えれば、タイミング判定部46は、コンクリートCに仕上げの振動を与えるタイミング(仕上げ振動開始時機TB1)になったと判定する。
さらに、タイミング判定部46は、予備振動モードM1の振幅に対する仕上げ振動モードM4の振幅の比率が第三閾値を下回ると、仕上げ振動を終了するタイミング(仕上げ振動終了時機TB2)になったと判定する。
【0049】
これらの閾値(第一閾値、第二閾値および第三閾値)は、速度同士や加速度同士を比較するときの閾値とは、異なる値(比率)に設定することができる。
【0050】
タイミング判定部46は、コンクリートCに振動を与えるタイミングの判定結果に基づいて、表示ランプ62を点灯させる。
タイミング判定部46は、予備振動モードM1には、表示ランプ62を黄色に点灯させる。
また、タイミング判定部46は、振動検出モードM2には、最初に表示ランプ62を黄色に点滅させる。そして、タイミング判定部46は、振動検出モードM2に、再振動開始時機TA1になったと判定すると、表示ランプ62を青色に点灯させる。
また、タイミング判定部46は、再振動モードM3に、仕上げ振動開始時機TB1(再振動終了時機TA2)になったと判定すると、表示ランプ62を青色に点滅させる。
さらに、タイミング判定部46は、仕上げ振動モードM4に、仕上げ振動終了時機TB2になったと判定すると、表示ランプ62を赤色に点灯させる。
【0051】
図1に戻り、操作ハンドル50は、作業者が把持する部材であり、例えばアルミニウムや鉄鋼などの金属により形成される。
操作ハンドル50は、前下方から後上方に延びる部材であって、例えばT字形状または二等辺三角形状に形成される。操作ハンドル50の先端(前端)は、電動モータ部30に連結される。具体的には、操作ハンドル50の先端は、モータハウジング31の上面に固定される。
作業者は、操作ハンドル50を介してコンクリート振動付与装置1に前方向の力を加える。これにより、コンクリート振動付与装置1は、コンクリートCの表面CSに沿って滑動(進行)する。
【0052】
図4は、本発明の実施形態に係るコンクリート振動付与方法(コンクリート振動付与時機判定方法)を示すフローチャート図である。
コンクリート振動付与装置1は、以下に示すコンクリート振動付与工程(コンクリート振動付与時機判定工程)において用いられる。
コンクリート振動付与工程は、打設工程S1、予備工程S2、振動検出工程S3、再振動開始時機判定工程S4、再振動付与工程S5、仕上げ振動開始時機判定工程S6、仕上げ振動付与工程S7および仕上げ振動終了時機判定工程S8の八つの工程を有する。
【0053】
コンクリート振動付与工程には、二つのコンクリート振動付与時機判定工程が含まれる。
第一の振動付与時機判定工程は、予備工程S2、振動検出工程S3および再振動開始時機判定工程S4からなる。
第二の振動付与時機判定工程は、予備工程S2、再振動付与工程S5および仕上げ振動開始時機判定工程S6からなる。
【0054】
打設工程S1は、コンクリートCを打設する工程である。打設工程では、地上等にフレッシュコンクリートCを打設する。フレッシュコンクリートCの打設は、従来通りの手順で行われる。
【0055】
予備工程S2は、均し板10を硬化前のコンクリートCの表面CSから離間させて振動させ、そのときの振動状態を加速度センサー61で検出する工程である。
予備工程S2では、まず、電源部41から電動モータ部30に向けて電源供給を開始する。そして、作業者は、コンクリート振動付与装置1を持ち上げる等して、均し板10をコンクリートCの表面CSから離間させる。
次いで、作業者は、操作指令部45を操作して、予備振動モードM1を選択する。これにより、電動モータ部30の回転数(交流周波数)が予備振動モードM1に応じた回転数に設定される。操作指令部45に回転数が設定されると、電源部41のインバータ制御部42が作動して、電源部41から供給された交流を所望の周波数の交流に変更する。これにより、電動モータ部30は、予備振動モードM1に応じた回転数で回転する。電動モータ部30が回転すると、ロータ32に直結された偏心回転体21が回転する。偏心回転体21は、回転中心線Oが上下方向を向くので、水平方向の振動を発生する。偏心回転体21の水平方向の振動は、回転体カバー23を介して均し板10に伝達される。
均し板10は、コンクリートCの表面CSから離間しているので、コンクリートCからの反力がない状態で振動する。このとき、タイミング判定部46は、表示ランプ62を黄色に点灯させる。
そして、このときの振動状態(振幅、速度および加速度)は、加速度センサー61に検出されて、この振動データがタイミング判定部46の不揮発性メモリー47に記憶される。
【0056】
振動検出工程S3は、コンクリート振動付与装置1を硬化前のコンクリートCの表面CSに密着させて振動させる工程である。
振動検出工程S3では、まず、作業者は、コンクリート振動付与装置1の均し板10をコンクリートCの表面CSに密着させる。
次いで、作業者は、操作指令部45を操作して、振動検出モードM2を選択する。これにより、電動モータ部30は、振動検出モードM2に応じた回転数で回転する。均し板10は、再振動開始時機判定に適した周波数で振動する。また、均し板10は、コンクリートCの表面CSに密着しているので、コンクリートCからの反力を受けた状態で振動する。このとき、タイミング判定部46は、表示ランプ62を黄色に点滅させる。
【0057】
次に、コンクリート振動付与装置1の作業者は、操作ハンドル50を把持して、コンクリートCの表面CSに沿ってコンクリート振動付与装置1を前方に向けて押し進める。これにより、均し板10がコンクリートCの表面CSに沿って滑動し、コンクリートCの表面CSに水平方向の振動が伝達される。このようにして、打設したコンクリートCの広範囲に亘って、再振動開始時機判定に適した振動が与えられる。
そして、このときの振動状態は、加速度センサー61に検出されて、この振動データがタイミング判定部46の比較演算部48に入力される。
【0058】
再振動開始時機判定工程S4は、硬化前のコンクリートCに再振動を与えるタイミング(再振動開始時機TA1)を求める工程である。
再振動開始時機判定工程S4は、振動検出工程S3と一体的に行われる。つまり、振動検出工程S3と再振動開始時機判定工程S4は、繰り返し行われる。
これにより、コンクリート振動付与装置1をコンクリートCに密着させて振動させつつ、再振動のタイミングを判断する。
【0059】
再振動開始時機判定工程S4では、タイミング判定部46(比較演算部48)は、予備振動モードM1(予備工程S2)時の振幅と振動検出モードM2(振動検出工程S3)時の振幅を比較する。タイミング判定部46は、予備振動モードM1の振幅に対する振動検出モードM2の振幅の比率が第一閾値を下回ると、コンクリートCに再振動を与えるタイミング(再振動開始時機TA1)になったと判定する。
振動検出工程S3では、均し板10は、コンクリートCからの反力を受けた状態で振動する。コンクリートCの硬化が進むと、コンクリートCからの反力が徐々に大きくなる。これに伴って、均し板10の振幅が徐々に小さくなる。このため、振動検出モードM2の振幅が、予備振動モードM1の振幅に対して所定の割合(第一閾値)を下回ると、コンクリートCに再振動を与えるタイミングになったと判定できる。
【0060】
タイミング判定部46は、コンクリートCに再振動を与えるタイミング(再振動開始時機TA1)になったと判定すると、表示ランプ62を青色に点灯させる。
一方、タイミング判定部46は、コンクリートCに再振動を与えるタイミングにならない間は、表示ランプ62を黄色に点滅させる。つまり、振動検出工程S3と再振動開始時機判定工程S4が繰り返される。
【0061】
上述したように、振動検出工程S3では、打設したコンクリートCの広範囲に亘って、コンクリート振動付与装置1により振動が与えられる。このため、再振動開始時機判定工程S4では、打設したコンクリートCの広範囲に亘って再振動開始時機TA1が判断される。
【0062】
再振動付与工程S5は、硬化前のコンクリートCに再振動を与えて、コンクリートCを締め固める工程である。再振動付与工程S5は、再振動開始時機判定工程S4が終了した直後に、時間を空けることなく行われる。
再振動付与工程S5では、まず、作業者は、操作指令部45を操作して、再振動モードM3を選択する。これにより、電動モータ部30は、再振動モードM3に応じた回転数で回転する。
このため、電動モータ部30は、再振動モードM3に応じた振回転数で回転する。均し板10は、再振動に適した周波数で振動する。このとき、タイミング判定部46は、表示ランプ62を青色に点灯させる。
作業者は、前工程から引き続き、操作ハンドル50を操作して、コンクリート振動付与装置1をコンクリートCの表面CSに沿って滑動させる。これにより、均し板10からコンクリートCの表面CSに水平方向の振動が伝達される。このようにして、打設したコンクリートCの広範囲に亘って再振動が与えられる。したがって、コンクリートCが締め固められて圧縮強度が向上する。
【0063】
仕上げ振動開始時機判定工程S6は、コンクリートCに仕上げ振動を与えるタイミング(仕上げ振動開始時機TB1)を求める工程である。仕上げ振動開始時機判定工程S6は、再振動を終了するタイミング(再振動終了時機TA2)を求める工程でもある。
仕上げ振動開始時機判定工程S6は、再振動付与工程S5と一体的に行われる。つまり、再振動付与工程S5と仕上げ振動開始時機判定工程S6は、繰り返し行われる。
これにより、コンクリート振動付与装置1をコンクリートCに密着させて再振動させつつ、仕上げ振動のタイミングを判断する。
【0064】
仕上げ振動開始時機判定工程S6では、タイミング判定部46(比較演算部48)は、予備振動モードM1(予備工程S2)時の振幅と再振動モードM3(再振動付与工程S5)時の振幅を比較する。タイミング判定部46は、予備振動モードM1の振幅に対する再振動モードM3の振幅の比率が第二閾値を下回ると、コンクリートCに仕上げ振動を与えるタイミング(仕上げ振動開始時機TB1、再振動終了時機TA2)になったと判定する。
再振動付与工程S5には、コンクリートCの硬化がさらに進行して、コンクリートCからの反力が大きくなる。これに伴って、均し板10の振幅がさらに小さくなる。このため、再振動モードM3の振幅が、予備振動モードM1の振幅に対して所定の割合(第二閾値)を下回ると、コンクリートCに仕上げ振動を与えるタイミングになったと判定できる。
【0065】
タイミング判定部46は、コンクリートCに仕上げ振動を与えるタイミング(仕上げ振動開始時機TB1、再振動終了時機TA2)になったと判定すると、表示ランプ62を青色に点滅させる。
一方、タイミング判定部46は、コンクリートCに仕上げ振動を与えるタイミングにならない間は、表示ランプ62を青色に点灯させる。つまり、再振動付与工程S5と仕上げ振動開始時機判定工程S6が繰り返される。
【0066】
上述したように、再振動付与工程S5では、打設したコンクリートCの広範囲に亘って、コンクリート振動付与装置1により再振動が与えられる。このため、仕上げ振動開始時機判定工程S6では、打設したコンクリートCの広範囲に亘って仕上げ振動開始時機TB1が判断される。
【0067】
仕上げ振動付与工程S7は、コンクリートCに仕上げ振動を与えて、コンクリートCの表面CSを敷き均す工程である。仕上げ振動付与工程S7は、再振動付与工程S5が終了した直後に、時間を空けることなく行われる。
仕上げ振動付与工程S7では、まず、作業者は、操作指令部45を操作して、仕上げ振動モードM4を選択する。これにより、電動モータ部30は、仕上げ振動モードM4に応じた回転数で回転する。
このため、電動モータ部30は、仕上げ振動モードM4に応じた振回転数で回転する。均し板10は、仕上げ(敷き均し)振動に適した周波数で振動する。このとき、タイミング判定部46は、表示ランプ62を青色に点滅させる。
作業者は、前工程から引き続き、操作ハンドル50を操作して、コンクリート振動付与装置1をコンクリートCの表面CSに沿って滑動させる。これにより、均し板10からコンクリートCの表面CSに水平方向の振動が伝達される。このようにして、打設したコンクリートCの広範囲に亘って仕上げ振動が与えられる。したがって、コンクリートCの表面CSが敷き均される。
【0068】
仕上げ振動終了時機判定工程S8は、仕上げ振動付与工程S7を終了するタイミング(仕上げ振動終了時機TB2)を求める工程である。
仕上げ振動終了時機判定工程S8は、仕上げ振動付与工程S7と一体的に行われる。つまり、仕上げ振動付与工程S7と仕上げ振動終了時機判定工程S8は、繰り返し行われる。
これにより、コンクリート振動付与装置1をコンクリートCに密着させて仕上げ振動を付与しつつ、仕上げ振動を終了するタイミングを判断する。
【0069】
仕上げ振動終了時機判定工程S8では、タイミング判定部46(比較演算部48)は、予備振動モードM1(予備工程S2)時の振幅と仕上げ振動モードM4(仕上げ振動付与工程S7)時の振幅を比較する。タイミング判定部46は、予備振動モードM1の振幅に対する仕上げ振動モードM4の振幅の比率が第三閾値を下回ると、仕上げ振動付与工程S7を終了するタイミング(仕上げ振動終了時機TB2)になったと判定する。
仕上げ振動付与工程S7では、コンクリートCの硬化がさらに進行して、コンクリートCからの反力が大幅に大きくなる。これに伴って、均し板10の振幅が大幅に小さくなる。このため、仕上げ振動モードM4の振幅が、予備振動モードM1の振幅に対して所定の割合(第三閾値)を下回ると、仕上げ振動付与工程S7を終了するタイミングになったと判定できる。
【0070】
タイミング判定部46は、仕上げ振動付与工程S7を終了するタイミング(仕上げ振動終了時機TB2)になったと判定すると、表示ランプ62を赤色に点灯させる。
一方、タイミング判定部46は、仕上げ振動付与工程S7を終了するタイミングにならない間は、表示ランプ62を青色に点滅させる。つまり、仕上げ振動付与工程S7と仕上げ振動終了時機判定工程S8が繰り返される。
【0071】
上述したように、仕上げ振動付与工程S7では、打設したコンクリートCの広範囲に亘って、コンクリート振動付与装置1により仕上げ振動が与えられる。このため、仕上げ振動付与工程S7では、打設したコンクリートCの広範囲に亘って仕上げ振動終了時機TB2が判断される。
【0072】
このようにして、コンクリート振動付与装置1により、打設したコンクリートCの広範囲に亘って、再振動開始時機TA1、仕上げ振動開始時機TB1(再振動終了時機TA2)および仕上げ振動終了時機TB2が判定される。
また、コンクリート振動付与装置1により、打設したコンクリートCの広範囲に亘って、再振動および仕上げ振動が与えられる。
【0073】
以上説明したように、コンクリート振動付与装置(コンクリート振動付与時機判断装置)1およびこれを用いたコンクリート振動付与時機判定方法では、加速度センサー61とタイミング判定部46を備えるので、打設したコンクリートCに振動を付与する時機を容易かつ正確に判定することができる。
打設したコンクリートCに器具等を貫入(挿入)したり埋没させたりする必要がないため、コンクリートCの表面CSに穴が空いたり内部に異物が残ったりすることがなく、打設したコンクリートCに振動を付与する時機を容易に判定することができる。
試験体コンクリートを用いる必要がないので、打設したコンクリートCを振動させるタイミングを正確に判定することができる。
【0074】
タイミング判定部46が、均し板10を表面CSから離間させて振動させたときの検出結果と均し板10を表面CSに密着させて振動させたときの検出結果を比較するので、コンクリートCの硬化進行状態を検出することができる。
コンクリートCに振動を付与する時機として、再振動を付与する時機と仕上げ振動を付与する時機を判断するので、コンクリートCに対して再振動と仕上げ振動を適時に付与することができる。
タイミング判定部46が表示ランプ62を備えるので、作業者に対して判断結果を適格に報知することができる。
コンクリート振動付与装置1が操作ハンドル50を備えるので、均し板10を表面CSに沿って滑動させながら振動させることができる。このため、打設したコンクリートCの広範囲(全域)に亘って振動を付与する時機を判定することができる。
【0075】
コンクリート振動付与装置1およびこれを用いたコンクリート振動付与方法では、振動付与時機判断の直後に、時間を空けることなく、即時に振動付与を開始することができる。このため、作業効率を大幅に向上させることができる。
また、コンクリート振動付与装置1が二つの機能(コンクリート振動付与時機判断、コンクリート振動付与)を有するので、別々の装置を用意する必要がなく、コスト低減を図ることができる。
【0076】
図5は、コンクリート振動付与方法の変形例を示すフローチャート図である。
以下では、上述したコンクリート振動付与方法(図4参照)とは異なる工程(処理)についてのみ説明する。
【0077】
四つの振動モードは、作業者が操作指令部45を操作して手動で切り替えることなく、自動的に切り替わるようにしてもよい。
予備工程S2では、均し板10の振動データがタイミング判定部46の不揮発性メモリー47に記憶されると、予備振動モードM1から振動検出モードM2に自動的に切り替わる。
【0078】
再振動開始時機判定工程S4では、タイミング判定部46が再振動開始時機TA1になったと判定すると、振動検出モードM2から再振動モードM3に自動的に切り替わる。
一方、再振動開始時機判定工程S4において、タイミング判定部46が再振動開始時機TA1ではないと判断すると、振動検出工程S3に戻る。
【0079】
仕上げ振動開始時機判定工程S6では、タイミング判定部46が仕上げ振動開始時機TB1になったと判定すると、再振動モードM3から仕上げ振動モードM4に自動的に切り替わる。
一方、仕上げ振動開始時機判定工程S6において、タイミング判定部46が仕上げ振動開始時機TB1ではないと判断すると、再び再振動開始時機判定工程S4に戻る。つまり、再振動モードM3から振動検出モードM2に自動的に切り替わる。
【0080】
仕上げ振動終了時機判定工程S8では、タイミング判定部46が仕上げ振動終了時機TB2になったと判定すると、仕上げ振動モードM4が解除されて、均し板10の振動が自動的に止まる。
一方、仕上げ振動終了時機判定工程S8において、タイミング判定部46が仕上げ振動終了時機TB2ではないと判断すると、再び仕上げ振動開始時機判定工程S6に戻る。つまり、仕上げ振動モードM4から再振動モードM3に自動的に切り替わる。
【0081】
このように、振動モード(工程)を自動的に切り替えると、コンクリートCの硬化進行状態にばらつきがある場合に、好適である。打設したコンクリートCには、硬化が進行した領域と硬化が遅延した領域が混在する場合がある。つまり、再振動開始時機TA1を判定すべき領域、仕上げ振動開始時機TB1を判定すべき領域(再振動を付与すべき領域)、仕上げ振動終了時機TB2を判定すべき領域(仕上げ振動を付与すべき領域)が混在する。
このように、コンクリートCの硬化進行状態にばらつきがある場合において、振動モード(工程)を自動的に切り替えると、それぞれの領域の硬化進行状態に適した振動モード(工程)が選択される。このため、打設したコンクリートCの全域に亘って、品質を向上させ、かつ、品質を均一化させることができる。
【0082】
この発明の技術範囲は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0083】
加速度センサー61は、二軸型の加速度センサーに限らない。前後方向または幅方向のいずれか一方向の振動を検出する一軸型の加速度センサーであってもよい。また、前後方向、幅方向および上下方向の三方向の振動を検出する三軸型の加速度センサーであってもよい。
加速度センサー61は、慣性を利用して測定を行う慣性センサーであればよい。すなわち、線形加速度を測定する加速度センサー61に代えて、角速度(回転角速度)を測定するジャイロセンサー(ジャイロスコープ)を用いてもよい。さらに、角加速度(回転角加速度)を測定する角加速度センサーを用いてもよい。
【0084】
仕上げ振動開始時機TB1と再振動終了時機TA2がほぼ一致する場合に限らない。仕上げ振動開始時機TB1と再振動終了時機TA2を別々に判断するようにしてもよい。つまり、第二閾値を二つの異なる閾値(仕上げ振動開始時機判断用の閾値、再振動終了時機判断用の閾値)に分けて設定してもよい。
【0085】
表示ランプ62に代えて、液晶画面等に判断結果を表示するようにしてもよい。表示ランプ62に代えて、ブザー等を用いてもよい。表示ランプ62とブザー等を併用してもよい。
【0086】
打設工程S1と予備工程S2とは、順番を入れ替えてもよい。つまり、コンクリートCを打設する前に、予備工程S2を行ってもよい。
【0087】
均し板10は、平板状の部材に限らない。裏面12がコンクリートCの表面CSに密着する平坦な面であればよい。例えば円形平板、多角形平板、半円形、円錐形、多角錐形等であってもよい。
【0088】
均し板10を振動させる手段として、偏心回転体21を電動モータ部30で回転させる場合に限らない。電動モータ部30に代えて、平面モータやリニアモータを用いてもよい。また、複数のリニアモータを上下方向に積み重ねて配置してもよい。電動モータ部30や平面モータ、リニアモータの他、電磁石に供給する電流の切り替えによって磁石部を振動させる電動機が含まれる。さらに、他の手段を用いて均し板10を振動させる場合であってもよい。
【0089】
偏心回転体21は、回転中心線Oが鉛直方向に沿う姿勢の場合に限らない。回転中心線Oが鉛直方向に対して例えば30°以下の角度で傾斜する姿勢の場合であってもよい。つまり、偏心回転体21は、回転中心線Oが鉛直方向に対して浅い角度で傾斜する姿勢であればよい。このような場合には、偏心回転体21は、鉛直方向の振動を含む。しかし、この鉛直方向の振動は、水平方向の振動に比べて無視できる程度の大きさの振動に過ぎない。したがって、均し板10は、上下方向に波打つ等することなく、水平方向に振動する。
【0090】
偏心回転体21を回転駆動する駆動部として、原動機を用いてもよい。原動機の上部に操作ハンドル50を連結することにより、偏心回転体21の振動が操作ハンドル50に吸収されることなく、均し板10に均等に伝達できる。
【0091】
偏心回転体21は、円形平板に限らない。例えば偏心軸体であってもよい。すなわち、回転中心線が重心に一致しない形状の部材であればよい。偏心回転体21と回転体カバー23は、滑り接触する場合に限らず、軸受を介して連結される場合であってもよい。
【0092】
均し板10や突部15等の形状、寸法は、任意に変更することができる。電動モータ部30の回転数は、コンクリートCの種類や気温などの状況に応じて任意に変更してもよい。
【0093】
均し板10の裏面12には、複数の突部15に代えて、複数の窪部を設けてもよい。この場合であっても、均し板10がブリーディング水により浮き上がることを防止できる。したがって、突部15と同様の効果が得られる。
突部15および窪部は、半球状に限らない。突部15および窪部は、任意の形状に形成することができる。突部15や窪部は、下方から見て、例えば三角形や四角形、多角形等に形成される場合であってもよい。突部15や窪部は、側方(水平方向)から見て、例えば柱形、錐形、截頭錐形、正弦曲線形等であってもよい。
突部15および窪部は、図2(a)に示すように、前後方向および幅方向において互い違いに配列される場合に限らない。突部15および窪部の裏面12における配列も、任意の形状に設定することができる。突部15および窪部は、裏面12において、前後方向および幅方向に沿って配列されたり、ランダムに配置されたりしてもよい。
【0094】
突部15や窪部を点在配置する場合に限らず、幅方向や前後方向に延びる突列や溝を設けてもよい。突列や溝は、突部15や窪部と同様に、均し板10がブリーディング水により浮き上がることを防止できる。
突列および溝は、前後方向や幅方向に沿って延びる場合に限らない。突列および溝は、前後方向や幅方向に交差する方向(斜め方向)に延びる場合であってもよい。突列および溝は、直線状に延びる場合に限らず、曲線であってもよい。
突列および溝は、断面形状が半球形、柱形、錐形、截頭錐形、正弦曲線形等であってもよい。突列および溝は、断面の幅が一定である場合に限らない。
【0095】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0096】
1 コンクリート振動付与装置(コンクリート振動付与時機判定装置) 10 均し板(コンクリート接触部材) 20 振動機 46 タイミング判定部(振動付与時機判定部) 48 比較演算部 50 操作ハンドル 61 加速度センサー(振動検出部) 62 表示ランプ(報知部) C コンクリート CS 表面 TA 再振動付与時機 TB 仕上げ振動付与時機
図1
図2
図3
図4
図5