(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6309845
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】ラッピング基材の製造方法及びその製造装置
(51)【国際特許分類】
B29C 63/04 20060101AFI20180402BHJP
【FI】
B29C63/04
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-142158(P2014-142158)
(22)【出願日】2014年7月10日
(65)【公開番号】特開2016-16622(P2016-16622A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2017年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】709002521
【氏名又は名称】庄内鉄工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】514162911
【氏名又は名称】斎藤 勝実
(74)【代理人】
【識別番号】100184767
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100098556
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々 紘造
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 勝実
【審査官】
今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−087161(JP,A)
【文献】
特開2010−284860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/00−63/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略長方形の基材をラッピングシートで、連続的にラッピングする方法であって、ラッピングシートの供給工程と、幅の異なるラッピングシートへ切り替えるためにシートを切断してつなげるジョイント工程と、溜めより前のラッピングシートの移送を停止させる工程と、ラッピングシートを溜めておく工程と、ラッピングシートに合わせて幅を調整して接着剤を塗布する工程と、基材を供給しラッピングシートと貼り合わせる工程と、進行方向直角にラッピングシートを切断する工程と、幅の異なる基材が、搬送されてくるのに合わせて、進行方向に区切られたブロックごとに進行方向両側のサイドロール間の幅が変わり、連続的に基材側面へラッピングシートを折り込んでいく工程とからなる幅の異なるラッピング基材の製造方法。
【請求項2】
略長方形の基材をラッピングシートで、連続的にラッピングする装置であって、ラッピングシートの供給手段と、幅の異なるラッピングシートへ切り替えるためのシートを切断してつなげるジョイント手段と、溜めより前のラッピングシートの移送を停止させる手段と、ラッピングシートを溜めておく手段と、ラッピングシートに合わせて幅を調整して接着剤を塗布する手段と、基材を供給しラッピングシートと貼り合わせる手段と、進行方向直角にラッピングシートを切断する手段と、幅の異なる基材が、搬送されてくるのに合わせて、進行方向に区切られたブロックごとに進行方向両側のサイドロール間の幅が変わり、連続的に基材側面へラッピングシートを折り込んでいく手段とからなる幅の異なるラッピング基材の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラッピング基材の製造方法及びその製造装置に関する。さらに詳しくは、幅の異なるラッピング基材を連続的に製造する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
合板、PB(Particle Board)及びMDF(Midium Dencity Fiber Board)などの板状の基材に樹脂製の化粧シート等をラッピングしたラッピング基材が、クローゼットや棚、造作材等に、デザインや価格等の観点から、多用されている。これら種々の用途に応じ、求められる大きさも様々である。従って、幅の異なるラッピング基材を製造する方法が求められている。
【0003】
ラッピング基材を製造するには、基材と、長尺で基材の幅よりも両側面高さの分幅広のラッピングシートを連続的に張り合わせ、両側のはみ出し部分をサイドロールで側面に折り込み接着して上面と両側面の3面をラッピングし、基材の長さに合わせてラッピングシートを切断する(特許文献1)。その後に、後加工で木口の部分にラッピングシートを張り付けたり、塗装したりする。
【0004】
幅の異なるラッピング基材を製造するには、ラッピングシートを交換したり、接着剤を塗付する幅を調整したり、基材側面へラッピングシートを折り込むサイドロール間の幅を調整する必要がある。しかし、そのためには、切り替え時に製造ラインを停止する必要があり、連続的な製造ができず、生産効率が低下し、操作も煩雑になるという問題点が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2736232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、幅の異なるラッピング基材を製造するに際し、製造ラインを停止させず、連続的に製造できる方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討の結果、接着剤を塗布する幅を調整できるようにするとともに、ラッピングシートを基材側面へ折り込んでいく工程を、進行方向にブロックごとに分けてサイドロール間の幅を調整できるようにすることにより、上記の課題を解決することに想到し、本発明に到達した。
即ち、本発明は以下のとおりである。
1.略長方形の基材をラッピングシートで、連続的にラッピングする方法であって、ラッピングシートの供給工程と、幅の異なるラッピングシートをつなげるジョイント工程と、溜めより前のラッピングシートの移送を停止させる工程と、ラッピングシートを溜めておく工程と、ラッピングシートに合わせて幅を調整して接着剤を塗布する工程と、基材を供給しラッピングシートと貼り合わせる工程と、進行方向直角にラッピングシートを切断する工程と、幅の異なる基材が、搬送されてくるのに合わせて、進行方向に区切られたブロックごとに進行方向両側のサイドロール間の幅が変わり、連続的に基材側面へラッピングシートを折り込んでいく工程とからなる幅の異なるラッピング基材の製造方法。
2.略長方形の基材をラッピングシートで、連続的にラッピングする装置であって、ラッピングシートの供給手段と、幅の異なるラッピングシートをつなげるジョイント手段と、溜めより前のラッピングシートの移送を停止させる手段と、ラッピングシートを溜めておく手段と、ラッピングシートに合わせて幅を調整して接着剤を塗布する手段と、基材を供給しラッピングシートと貼り合わせる手段と、進行方向直角にラッピングシートを切断する手段と、幅の異なる基材が、搬送されてくるのに合わせて、進行方向に区切られたブロックごとに進行方向両側のサイドロール間の幅が変わり、連続的に基材側面へラッピングシートを折り込んでいく手段とからなる幅の異なるラッピング基材の製造装置。
【発明の効果】
【0008】
幅の異なるラッピング基材を連続的に生産することが可能となり、生産効率が高まるとともに、操作も比較的簡単になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】幅の異なるラッピングシートが基材側面へ折り込まれていく様子を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において、ラッピングされる基材は、通常、長方形の板状であるが、その木口や側面の形状を加工したものも含まれる。例えば、ドアに使用される基材で、手でつかみやすいように、その側面が断面Jの形に加工されたものが挙げられる。基材は、木製、金属製、及びプラスチック製等が用いられ、木製が好ましい。木製としては、例えば、合板、PB及びMDFが挙げられる。
【0011】
ラッピングシートとしては、樹脂製、紙製等が挙げられ、樹脂製としては、例えばオレフィン系シート、塩化ビニルシート、ポリエステルフィルム等が挙げられ、紙製としては、例えば、コーティング紙が挙げられる。通常、目的に応じて木目などの印刷が施されている。ラッピングシートにはフィルムのように薄い素材も含まれる。ラッピングシートは、基材の幅よりもほぼ両側面を覆う分だけ幅広のものを使用する。
【0012】
ラッピングシートは、通常ロール状に巻かれ、複数の異なる幅のものが、ジョイント手段へ供給される。ジョイント手段では、これらラッピングシート切り替え時に、切り替え前のラッピングシートを切断し、その切断辺に、新しいラッピングシートの一端をつなげる。つなげるときは、ラッピングシートとラッピングシートが重ならないように、両ラッピングシートの辺を突き合わせる形でテープ止めするのが好ましい。重ならないことでラッピングシートの厚みは一定となり、ラッピングシートが各種ロールを通過するときの負荷が軽減される。例えば接着剤塗布手段のブレードコーターや、貼りあわせ手段の2本ロールの負荷が軽減される。
【0013】
ジョイントする際は、溜めより前のラッピングシートの移送を停止することにより、ジョイント手段へのラッピングシートの供給を一時的に中断して、異なる幅のラッピングシートをつなぐ。このとき、停止のタイミングを調整して、ジョイントする位置を調整する。ジョイントする位置は、後の貼り合わせ工程で、不要な基材、例えばダミー基材が供給されるのに合わせて、ジョイント部分が、不要な基材に貼り合わされるように調整する。供給の停止は、例えばストッパーでラッピングシートを挟んでもよいし、ロール状ラッピングシートの回転を止めてもよい。
また、ジョイント部分の貼り合わせ位置の調整は、後の貼り合わせ工程で、不要な基材、例えばダミー基材の供給タイミングを調整することでも可能である。
【0014】
ラッピングシートは、ジョイント手段と貼り合わせ手段との間で、適当長さ溜められる。溜めをつくることで、溜めより前のラッピングシートの移送が停止したときでも、後工程にラッピングシートを供給でき、製造が連続的にできる。この溜めは、例えば、ラッピングシートを上下に移動可能な多数のロールを用いて繰り返し折り返すことで作ることができる。
【0015】
溜めを通過したラッピングシートは、接着剤塗布手段へ供給され、ラッピングシート裏側に接着剤が塗布される。接着剤塗布手段は、従来用いられる通常のコーティング手段、例えばロールコーター、ブレードコーターで差支えないが、接着剤を塗付する幅を調整できるものとし、例えば、ねじ式のシャッターで、接着剤が出てくる開口部の幅を調整できるものとする。調整は迅速に行えることが好ましいが、調整中に接着剤が斜めに塗布される部分があっても構わない。後の、ラッピングシートの基材側面への折り込み工程で、両側面サイドロール間の幅を切り替える際に、無駄部分が生じるので、その部分に斜め塗布部分が納まるのが好ましい。
【0016】
貼り合わせ手段は、従来用いている通常の張り合わせ手段でよく、例えば2本ロール、2本ロールが直列に組み合わされた4本ロール、基材を送るローラーと1本のロールで貼り合わせる手段、上からラッピングシートと基材を押し付けて貼り合わせる手段である。ロールは、接着剤等の性質に合わせて、常温ロールでも熱間ロールでも差支えない。押し付けるときも、常温でも、加熱条件下でもよい。ロールはまたラッピングシート及び基材の主たる移送手段ともなっている場合が多い。
基材は、通常は、一定間隔で貼りあわせ手段に供給される。
【0017】
基材と貼り合わされたラッピングシートは、移送されつつ切断手段により、基材と基材の間を、進行方向に直角に切断される。切断手段としては、例えば、回転刃のカッターやレーザーカッターが挙げられる。カッターは、ラッピングシートが進行方向直角に切断されるように、ラッピングシートの移送速度に連動して移動しつつ切断する。なお、この切断工程は、折り込み工程の後に行ってもよい。
【0018】
基材側面への折り込みは、基材を搬送しながら、ラッピングシートはみ出し部分を側面に折り込んで接着することで行う。折り込み手段としては、常法のものでよく、サイドロールと呼ばれる複数個のコロを徐々に傾斜を変化させて基材側面に圧着するようにする。ここで、折り込み工程の、両側面のサイドロールの間の幅は製造ラインを進行方向に区切られたブロックごとに変わるように構成される。ブロックによる区切りが細かいほど、速やかに基材の幅の切り替えに対応でき、ラッピングシートの無駄も少なくなる。この幅を次々と変えていくことで、異なる幅の基材の両側面へラッピングシートを折り込んでいく。例えば、基材の幅を短いものに切り替える場合は、幅の長い基材が、ブロックを通過したときに、そのブロックのサイドロール間の幅を短くする。以後そのブロックに入ってくる幅の短い基材の両側面へラッピングシートを折り込むことができる。ただし、幅の長い基材が通過するまでの間に、当該ブロックに侵入した、幅の短い基材は無駄となる。
【0019】
前後の木口はラッピングシートを貼り付けたり、塗装したりする。よりきれいに仕上げるために、ラッピングシートを基材の側面や木口に合わせてトリミングしてもよい。
【実施例】
【0020】
以下に本発明を図面及び実施例で説明する。
図1は、本発明の概略を表したもので、幅の異なるラッピングシートが基材へラッピングされる様子を示している。
図2は、幅の異なるラッピングシートが基材側面へ折り込まれていく様子を表したもので、ラッピングシートと基材を分離して記載している。
【0021】
1a、1bはロール状に巻かれた塩化ビニル製ラッピングシートである。ジョイント部分で、それまで供給されていたロール1aから引き出された幅広のラッピングシートが切断され、その切断辺にロール1bから引き出された幅狭のラッピングシートの一端が、末端が重ならないようにしてテープ止めされる。この間、ストッパー12で、溜め13より前のラッピングシートの移送を停止することで、ジョイント手段へのラッピングシートの供給が止められる。一方で、溜め13からラッピングシートが供給されるのでラッピング基材の製造は連続的に行われる。溜め13は上下に稼働するロール14で複数回折り返して作られる。
【0022】
ストッパー12を閉じるタイミングは、ジョイント装置11から二本ロール16までのラッピングシートの長さによる。例えば、ジョイント装置11から二本ロール16までのラッピングシートの長さが基材5.5枚分の場合、ダミー基材の6枚前の基材が二本ロール16へ侵入するタイミングで閉じることで、ジョイント部分をダミー基材に貼り合わすことができる。
ストッパー12が解除されると、ロール1bからのラッピングシートの供給が始まる。ラッピングシートはジョイント手段11を出るとストッパー12を通過し、溜め13を通過して、ブレードコーター15で接着剤が塗布される。ブレードコーター15のネジ式シャッターで幅を調製できる接着剤の開口部は、幅広ラッピングシートが通過したときに、迅速に狭くなる。この際、狭くなるのに多少の時間はかかり、ラッピングシートに無駄が生じるが、後のラッピングシートの基材側面への折り込み工程で生じる無駄部分の範囲内に抑える。
【0023】
ブレードコーター15を出たラッピングシートは貼り合わせ手段の二本ロール16で、基材2と貼り合わされる。この際、前記ストッパー12を閉じるタイミングを適切にすることでジョイント部分5は、ダミー基材4の上に貼り合わされる。二本ロール16を出たラッピングシートは、進行方向直角に回転刃17で切断される。
【0024】
次いで、ラッピングシートの両側はみ出し部分を、傾斜角度が変化する複数のコロ19及び21で構成されたサイドロールで基材側面に折り込み接着する。サイドロールは進行方向のブロックごとにその両側面間の幅を調整できる。幅広のラッピングシートがブロック18を通過後、ブロック18の両側面サイドロール間の幅が狭くなる。狭くなる前に、ブロック18に侵入した基材のラッピングシート部分3は基材側面にはきれいに折り込まれず無駄が生じるが、その前後はきれいに折り込まれ、この基材の後からは、製品となるラッピング基材が製造される。
ブロック20は、幅広のダミー基材が通過中で、両サイドロール間の幅は広いままであるが、ダミー基材4がブロック20を通過すれば、その幅は狭くなる。6はダミー基材よりひとつ前を流れる幅広のラッピング基材である。
これらの後工程で、前後の木口をラッピングする。
以上のようにして、異なる幅のラッピング製品を連続的に生産する。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明のラッピング基材製造方法は、幅の異なるラッピング基材を連続的に製造できるので、生産効率を高める製造方法として有用である。
【符号の説明】
【0026】
1a 幅広のロール状ラッピングシート
1b 幅狭のロール状ラッピングシート
2 基材
3 両サイドロール間の幅変更によるラッピングシートの無駄部分
4 ダミー基材
5 幅広と幅狭ラッピングシートのジョイント部分
6 ラッピングされた製品
11 ジョイント装置
12 ストッパー
13 ラッピングシートの溜め
14 ラッピングシートの溜めを構成するロール
15 接着剤の塗布幅を調整できるブレードコーター
16 二本ロール
17 回転刃
18 両サイドロール間の幅が狭まったブロック
19 ブロック18の複数のコロ
20 両サイドロール間の幅が広いままのブロック
21 ブロック19の複数のコロ