(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記更新部が前記記憶部に記憶されている前記設定吊能力値を更新したことに応じて前記クレーンの操作者に前記設定吊能力値が更新されたことを報知する報知部をさらに備える、請求項1〜3のいずれか1項に記載のクレーン。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0025】
本発明の一実施形態によるクレーンは、
図1に示すように、自走可能な下部走行体2と、その下部走行体2上に旋回中心軸C回りに旋回自在となるように搭載された上部旋回体4とを備える。
【0026】
上部旋回体4には、吊荷100の吊作業(クレーン作業)を行う作業装置8が設けられている。作業装置8は、ブーム10と、フック装置12と、起伏装置14と、巻上ウインチ15とを有する。
【0027】
ブーム10は、その基端部のブームフット(図略)を支点として起伏自在となるように上部旋回体4に設けられている。フック装置12は、吊荷100を吊るものであり、ブーム10の先端から吊ロープ13を介して吊り下げられる。なお、本実施形態のクレーンが吊作業で巻き上げ及び巻き下げを行う対象物101は、フック装置12とそのフック装置12に吊られた吊荷100とからなる。
【0028】
起伏装置14は、起伏ウインチ16と、下部スプレッダ17と、上部スプレッダ18と、ガントリ19と、ガイロープ20とを有する。
【0029】
下部スプレッダ17は、上部旋回体4の後部に立設されたガントリ19の上端部に設けられている。上部スプレッダ18は、下部スプレッダ17から離間して設けられている。下部スプレッダ17のシーブと上部スプレッダ18のシーブには、起伏ウインチ16から引き出された起伏ロープ21が掛け回されている。ガイロープ20は、上部スプレッダ18とブーム10の先端部とを繋いでいる。起伏ウインチ16は、起伏ロープ21の巻き取り/繰り出しを行うことにより下部スプレッダ17に対する上部スプレッダ18の間隔を変化させ、それによって、ガイロープ20を介してブーム10を起伏させる。
【0030】
巻上ウインチ15は、本発明におけるウインチ(吊作業用ウインチ)の一例である。この巻上ウインチ15は、上部旋回体4に搭載されている。巻上ウインチ15から引き出された吊ロープ13がブーム10の先端を経てフック装置12に接続されている。巻上ウインチ15は、吊ロープ13の巻き取り/繰り出しを行うことによりフック装置12の巻き上げ/巻き下げを行い、それによって対象物101の巻き上げ/巻き下げを行う。
【0031】
巻上ウインチ15は、電動ウインチであり、ウインチドラム24(以下、単にドラム24という)と、電動機26(
図2参照)とを有する。
【0032】
ドラム24は、対象物101の巻き上げ又は巻き下げのために回転するものである。ドラム24は、一方の回転方向である巻上方向に回転することによって吊ロープ13を巻き取り、それによって対象物101を巻き上げる。また、ドラム24は、巻上方向と逆の回転方向である巻下方向に回転することによって吊ロープ13を繰り出し、それによって対象物101を巻き下げる。
【0033】
電動機26(
図2参照)は、クレーンに搭載された電源29と電気的に接続されている。電動機26の駆動軸は、ドラム24に接続されている。電動機26は、電源29から電力が供給されることにより作動してドラム24を回転させるトルクを出力する。
【0034】
また、本実施形態によるクレーンは、
図2に示すように、スイッチ36と、設定部40と、角度検出器42と、荷重検出器44と、トルク計測装置46と、過負荷防止装置48と、表示装置49とを備えている。
【0035】
スイッチ36は、電源29と電動機26との間の電気経路に設けられている。スイッチ36は、電源29と電動機26とを導通させて電源29から電動機26への電力の供給を許容するオン状態と、電源29と電動機26との間の導通を遮断して電源29から電動機26への電力の供給を停止させるオフ状態とに切り換わるようになっている。スイッチ36は、過負荷防止装置48の後述する制御部63によりオン状態とオフ状態とに切換制御される。
【0036】
設定部40は、クレーンに関する各種設定値を入力するためのものである。具体的には、設定部40によりブーム10(
図1参照)の軸方向の長さ(ブームフットからブーム10の先端までの距離)等の設定値が入力される。設定部40により入力された設定値のデータは、過負荷防止装置48(
図2参照)へ入力される。
【0037】
角度検出器42は、ブーム10(
図1参照)の起伏角度を検出するものである。具体的には、角度検出器42は、上部旋回体4の旋回中心軸Cと直交する面に対してブーム10が成す角度である起伏角度を逐次検出する。角度検出器42は、検出したブーム10の起伏角度のデータを過負荷防止装置48(
図2参照)へ逐次出力する。
【0038】
荷重検出器44は、本発明における荷重導出部の一例である。荷重検出器44は、ドラム24に掛かる対象物101(
図1参照)の荷重を検出する。具体的に、荷重検出器44には、吊ロープ13が接続されており、その吊ロープ13からドラム24に掛かる荷重を常時検出する。荷重検出器44は、検出した荷重値のデータを過負荷防止装置48へ逐次出力する。
【0039】
トルク計測装置46は、電動機26に取り付けられている。トルク計測装置46は、電動機26の作動中にその電動機26の出力トルクを常時計測する。トルク計測装置46は、計測した電動機26の出力トルクのデータを過負荷防止装置48の後述するトルク指標値導出部57へ送信する。
【0040】
過負荷防止装置48は、荷重検出器44によって検出される荷重の値を監視し、その荷重の値がクレーンの設定吊能力値を超えた場合に電動機26の作動を停止させてドラム24の回転を停止させ、それによって対象物101の巻き上げ又は巻き下げを停止させる。過負荷防止装置48は、
図2に示すように、記憶部56と、機能ブロックとしてのトルク指標値導出部57、トルク制限値設定部58、吊能力制限値算出部59と、更新部60、作業半径算出部61、吊能力値読取部62及び制御部63とを備える。
【0041】
記憶部56は、設定部40から入力された各種設定値や、規定値、クレーンの設定吊能力値、その他の各種データを記憶する。
【0042】
設定吊能力値は、クレーンが吊る対象物101(
図1参照)の荷重値で表されるものであり、ブーム10(
図1参照)が強度的に耐え得る範囲で且つクレーンの転倒に対する安定性を損なわない範囲でできる限り大きい荷重値に設定される。記憶部56は、
図2に示すように、前記設定吊能力値を吊能力データベースの形態で記憶している。吊能力データベースは、クレーンの所定間隔毎の作業半径Rと設定吊能力値Wとの対応関係を規定したものである。例えば、吊能力データベースは、
図3に示すように、所定間隔毎の各作業半径r
0、r
1、r
2、r
3、・・・に対応する設定吊能力値w
0、w
1、w
2、w
3、・・・を規定している。記憶部56は、更新部60によって後述のように吊能力データベースの設定吊能力値が更新された場合には、その更新後の吊能力データベースを記憶するとともに、未更新の初期状態での吊能力データベースも記憶しておく。
【0043】
また、記憶部56は、トルク指標値導出部57により導出される電動機26のトルク指標値を記憶する。トルク指標値は、電動機26から出力されたトルクの大きさの指標値である。トルク指標値導出部57は、後述のように電動機26の出力トルクの実効値(以下、トルク実効値という)をトルク指標値として算出するため、記憶部56は、この算出されるトルク実効値を記憶する。
【0044】
また、記憶部56は、電動機26の出力トルクの定格超過率と電動機26のトルク制限値Tq
limit及び制限有効時間t
limitとの相関関係を規定した次のような制限値設定用テーブルデータを記憶する。
【0046】
定格超過率は、電動機26の仕様から定められる電動機26の出力トルクの定格値(以下、トルク定格値という)に対する電動機26のトルク実効値の超過率である。電動機26の仕様では、出力トルクと対応する作動時間とを規定した定格運転状態が定められており、トルク定格値は、その定格運転状態で電動機26が作動する場合にトルク実効値を算出するための後述の式(1)と同じ式で算出される実効値に相当する。トルク定格値は、本発明における規定値の一例である。定格超過率は、トルク定格値に対するトルク実効値の超過量をトルク定格値で除することによって得られる値である。トルク制限値Tq
limitは、電動機26の出力トルクの制限値であり、トルク定格値よりも小さく且つ0よりも大きい値である。制限有効時間t
limitは、対応するトルク制限値Tq
limitによる電動機26の出力トルクの制限を有効にする時間長さを示す値である。
【0047】
電動機26のトルク実効値がトルク定格値を超過している状態は、定格運転状態に比べて高出力での過酷な運転状態で電動機26が作動している状態である。この状態では、電動機26の発熱量が増大し、電動機26の発熱と冷却(水冷等の強制冷却や自然冷却)との間のヒートバランスが崩れる。このため、事前の実験及びその実験結果の解析等により、電動機26のトルク実効値の各定格超過率毎に、そのトルク実効値をどのようなトルク制限値まで低下させた状態をどの程度の制限有効時間だけ継続すれば、電動機26のヒートバランスをトルク定格値以下のトルクを出力している状態でのヒートバランスに戻すことができるかを調べ、その調査結果に基づいて制限値設定用テーブルデータが予め作成される。
【0048】
すなわち、制限値設定用テーブルデータは、所定間隔毎の各定格超過率について、その定格超過率に対応したトルクを出力する電動機26のヒートバランスをトルク定格値以下のトルクを出力しているときのヒートバランスに戻すために必要なトルク制限値Tq
limitとそのトルク制限値Tq
limit以下に電動機26の出力トルクを保持しておく必要がある制限有効時間t
limitとを規定する。制限値設定用テーブルデータでは、定格超過率が大きくなるにつれてトルク制限値Tq
limitが小さくなるとともに制限有効時間t
limitが長くなるように定格超過率とトルク制限値Tq
limit及び制限有効時間t
limitとの相関関係が規定されている。
【0049】
トルク指標値導出部57は、吊作業中の電動機26から出力されたトルクの大きさの指標値であるトルク指標値を導出する。具体的に、トルク指標値導出部57は、トルク計測装置46から送信される電動機26の出力トルクの計測データに基づいて、特定のサイクル時間(経過時間)の間の電動機26の出力トルクの実効値(トルク実効値)を電動機26のトルク指標値として算出する。トルク指標値導出部57は、サイクル時間が経過する毎にその経過した各サイクル時間のトルク実効値を逐次算出する。トルク指標値導出部57は、算出したトルク実効値を記憶部56に記憶させる。トルク実効値の具体的な算出方法については後述する。
【0050】
トルク制限値設定部58は、トルク指標値導出部57によって逐次算出されるトルク実効値がトルク定格値を超過した場合に、トルク定格値よりも小さく且つ0よりも大きいトルク制限値Tq
limitとそのトルク制限値Tq
limitを有効にする制限有効時間t
limitとを設定する。具体的には、トルク制限値設定部58は、トルク指標値導出部57によって算出された電動機26のトルク実効値の定格超過率を算出し、その算出した定格超過率に応じたトルク制限値Tq
limit及び制限有効時間t
limitを記憶部56に記憶された制限値設定用テーブルデータに基づいて導出する。
【0051】
吊能力制限値算出部59は、トルク制限値設定部58により設定されたトルク制限値Tq
limitに対応する吊能力制限値w
xを算出する。吊能力制限値w
xは、クレーンの吊能力の制限のために用いられる値である。吊能力制限値算出部59は、設定されたトルク制限値Tq
limitに相当するトルクを電動機26がドラム24に付与した場合にそのドラム24が巻き上げ可能な最大の荷重を吊能力制限値w
xとして算出する。
【0052】
更新部60は、吊能力制限値算出部59により算出された吊能力制限値w
xが記憶部56に記憶されている吊能力データベースの対応する設定吊能力値よりも小さい場合に、その設定吊能力値を吊能力制限値w
xに等しい値に更新する。一方、更新部60は、吊能力制限値算出部59により算出された吊能力制限値w
xが記憶部56に記憶されている吊能力データベースの対応する設定吊能力値以上である場合には、その設定吊能力値を更新せずに元のまま維持する。
【0053】
作業半径算出部61は、記憶部56に記憶されているブーム10の長さと、上部旋回体4の旋回中心軸Cに直交する面における旋回中心軸Cから上部旋回体4のブームフットを支持する部位までの距離(設定値)と、角度検出器42から過負荷防止装置48に入力されるブーム10の起伏角度とに基づいて、クレーンの吊作業中の作業半径を逐次算出する。
【0054】
吊能力値読取部62は、作業半径算出部61により逐次算出される作業半径に対応した設定吊能力値を記憶部56に記憶されている最新の吊能力データベースから逐次読み取る。なお、吊能力値読取部62は、作業半径算出部61によって算出された作業半径が吊能力データベースに登録されている各作業半径のうち隣り合う2つの作業半径の間の値である場合には、その2つの作業半径に対応する設定吊能力値を最新の吊能力データベースから読み取り、その読み取った設定吊能力値から補間演算により前記作業半径算出部61によって算出された作業半径に対応する設定吊能力値を算出する。
【0055】
制御部63は、電動機26の作動を許容する制御と電動機26の作動を停止させる制御とを行う。
【0056】
具体的に、制御部63は、荷重検出器44から過負荷防止装置48に入力される荷重の検出値がその時点で吊能力値読取部62により読み取られている設定吊能力値以下である場合には、電動機26の作動を許容する。すなわち、制御部63は、荷重の検出値がその時点でのクレーンの作業半径に対応した設定吊能力値以下である場合には、電動機26の作動を許容する。
【0057】
一方、制御部63は、荷重検出器44から過負荷防止装置48に入力される荷重の検出値がその時点で吊能力値読取部62により読み取られている設定吊能力値を超えた場合には、電動機26の作動を停止させる。すなわち、制御部63は、荷重の検出値がその時点でのクレーンの作業半径に対応した設定吊能力値を超えた場合には、電動機26の作動を停止させる。
【0058】
制御部63は、電動機26の作動を許容する場合には、スイッチ36をオン状態にすることにより電源29から電動機26へ電力を供給させてその電動機26を作動させる。また、制御部63は、電動機26の作動を停止させる場合には、スイッチ36をオフ状態にすることにより電源29から電動機26への電力の供給を停止し、それによって電動機26の作動を停止させる。制御部63は、スイッチ36へオン状態又はオフ状態を指示する制御信号を送信するようになっており、スイッチ36は、制御部63から受けた制御信号に応じてオン状態又はオフ状態になる。
【0059】
また、制御部63は、電動機26のトルク実効値(トルク指標値)がトルク定格値を超えたか否かの判断や、吊能力データベースの設定吊能力値の更新に係るその他の判断を行う。これらの判断の処理内容については後述する。
【0060】
表示装置49は、本発明における報知部の一例である。表示装置49には、トルク制限値設定部58により設定された制限有効時間t
limitの情報が過負荷防止装置48から入力される。また、表示装置49には、更新部60により吊能力データベースの設定吊能力値の更新が行われた場合には、その更新が実施されたことを示す情報が過負荷防止装置48から入力される。また、表示装置49には、トルク指標値導出部57により算出された電動機26のトルク実効値のデータが過負荷防止装置48から入力される。また、表示装置49には、記憶部56に記憶されている吊能力データベースの作業半径と設定吊能力値との相関関係のデータが過負荷防止装置48から入力される。なお、吊能力データベースの設定吊能力値が更新されていない場合には、未更新の吊能力データベースのデータが表示装置49に入力され、吊能力データベースの設定吊能力値が更新された場合には、更新前(未更新)の吊能力データベースのデータと更新後の最新の吊能力データベースのデータとが表示装置49に入力される。
【0061】
表示装置49は、入力された情報やデータに基づいてその画面にクレーンの状態に関する各種情報を表示する。具体的に、表示装置49は、記憶部56に記憶されている吊能力データベースの設定吊能力値が更新されたか否かの情報や設定吊能力値の更新内容の情報などの各種情報を操作者に報知する報知画面(
図4及び
図5参照)を表示する。
【0062】
図4は、電動機26のトルク実効値がトルク定格値を超えて吊能力データベースの設定吊能力値が更新されたときの報知画面を示している。
図5は、電動機26のトルク実効値がトルク定格値を超えておらず、吊能力データベースの設定吊能力値が更新されない状態での報知画面を示している。
【0063】
報知画面には、更新情報表示欄72と、有効時間表示欄74と、出力状態表示欄76と、吊能力表示部78とが設けられている。
【0064】
更新情報表示欄72は、吊能力データベースの設定吊能力値が更新されたか否かが表示される箇所である。表示装置49は、過負荷防止装置48から更新部60による設定吊能力値の更新が実施されたとの情報が入力されたことに応じて、
図4に示すように更新情報表示欄72に「更新済」を表示する。一方、表示装置49は、過負荷防止装置48から更新部60による設定吊能力値の更新が実施されたとの情報が入力されていない状態では、
図5に示すように更新情報表示欄72に「更新なし」を表示する。
【0065】
有効時間表示欄74は、更新部60による吊能力データベースの設定吊能力値の更新内容が有効とされている残り時間が表示される箇所である。本実施形態では、制限値設定部58が設定する制限有効時間t
limitの間のみ、そのトルク制限値設定部58が設定するトルク制限値Tq
limitに応じた吊能力制限値w
xに基づく設定吊能力値の更新内容を有効にする。表示装置49は、更新部60による吊能力データベースの設定吊能力値の更新が実施された場合には、過負荷防止装置48から入力される制限有効時間t
limitの情報に基づいて前記更新内容が有効とされている残り時間を
図4に示すように有効時間表示欄74に表示する。なお、表示装置49は、設定吊能力値の更新が実施されていない場合には、
図5に示すように有効時間表示欄74には何も表示しない。
【0066】
出力状態表示欄76は、電動機26のトルク定格値に対するトルク実効値の割合が表示される箇所である。表示装置49は、過負荷防止装置48から入力されたトルク実効値のデータに基づいて、そのトルク実効値のトルク定格値に対する割合を出力状態表示欄76に表示する。また、表示装置49は、トルク実効値がトルク定格値を超えている場合には、そのことを表す「OVER」を
図4に示すように出力状態表示欄76に表示する。
【0067】
吊能力表示部78は、吊能力データベースの設定吊能力値とクレーンの作業半径との相関関係が表示される箇所である。表示装置49は、吊能力データベースの設定吊能力値が更新された場合には、過負荷防止装置48から入力される更新前の吊能力データベースのデータと更新後の吊能力データベースのデータに基づいて、
図4に示すように、更新前の吊能力データベースの設定吊能力値と作業半径との相関関係と、更新後の吊能力データベースの設定吊能力値と作業半径との相関関係とを並べて図示する。一方、表示装置49は、吊能力データベースの設定吊能力値が更新されていない場合には、過負荷防止装置48から入力される未更新の吊能力データベースのデータに基づいて、
図5に示すように、未更新の吊能力データベースの設定吊能力値と作業半径との相関関係のみを図示する。
【0068】
次に、
図6のフローチャートを参照して、本実施形態のクレーンにおける過負荷防止のための処理プロセスについて説明する。
【0069】
まず、クレーンにおいて吊作業が実施されるのに伴って、トルク指標値導出部57により電動機26のトルク指標値としてのトルク実効値が導出される(ステップS1)。
【0070】
具体的には、トルク指標値導出部57は、予め設定された特定のサイクル時間毎の電動機26のトルク実効値Tq
rmsを次式(1)に基づいて算出する。サイクル時間は、例えば数秒〜数十秒の範囲内で設定される一定の時間である。
【0072】
この式(1)において、t_startは、トルク実効値Tq
rmsの算出を行うサイクル時間の開始時点であり、t_endは、そのサイクル時間の終了時点である。また、Tq(t)は、電動機26の実際の出力トルクの値であり、トルク計測装置46によって計測されてそのトルク計測装置46からトルク指標値導出部57に送信される電動機26の出力トルクの値である。
【0073】
次に、制御部63は、電動機26のトルク指標値としてのトルク実効値が定格値を超えたか否かを判断する(ステップS2)。具体的に、制御部63は、上記ステップS1でトルク指標値導出部57により算出されたトルク実効値Tq
rmsが電動機26のトルク定格値を超えたか否かを判断する。
【0074】
ここで、制御部63が、トルク実効値Tq
rmsはトルク定格値を超えていない、すなわちトルク実効値Tq
rmsはトルク定格値以下であると判断した場合には、吊能力データベースの設定吊能力値の変更が行われず、上記ステップS1の処理が再度行われる。
【0075】
一方、制御部63がトルク実効値Tq
rmsはトルク定格値を超えたと判断した場合には、記憶部56に記憶されている吊能力データベースの設定吊能力値を更新するための以降の一連の処理が行われる。
【0076】
まず、トルク制限値設定部58が電動機26のトルク制限値Tq
limitとそのトルク制限値Tq
limitについての制限有効時間t
limitとを設定する(ステップS3)。
【0077】
具体的には、トルク制限値設定部58は、上記ステップS1でトルク指標値導出部57によって算出されたトルク実効値Tq
rmsについてトルク定格値に対する超過量を算出し、その算出した超過量をトルク定格値で除することにより、トルク実効値Tq
rmsの定格超過率を算出する。そして、トルク制限値設定部58は、算出した定格超過率に応じたトルク制限値Tq
limit及び制限有効時間t
limitを記憶部56に記憶された制限値設定用テーブルデータから導出する。
【0078】
具体的には、トルク制限値設定部58は、算出した定格超過率に一致する定格超過率が制限値設定用テーブルデータに存在する場合には、その定格超過率に対応するトルク制限値Tq
limit及び制限有効時間t
limitを制限値設定用テーブルデータから選択する。一方、トルク制限値設定部58は、算出した定格超過率に一致する定格超過率が制限値設定用テーブルデータに存在しない場合には、その算出した定格超過率に近い上下2つの定格超過率を制限値設定用テーブルデータから選択する。そして、トルク制限値設定部58は、算出した定格超過率に対応するトルク制限値Tq
limit及び制限有効時間t
limitを、選択した2つの定格超過率にそれぞれ対応する制限値設定用テーブルデータのトルク制限値Tq
limit及び制限有効時間t
limitから補間演算によって算出する。
【0079】
次に、吊能力制限値算出部59が、ステップS3で設定されたトルク制限値Tq
limitに応じた吊能力制限値w
xを算出する(ステップS4)。吊能力制限値算出部59は、トルク制限値Tq
limitに相当するトルクがドラム24に付与された場合にそのドラム24が巻き上げ可能な最大荷重を吊能力制限値w
xとして算出する。
【0080】
次に、制御部63は、吊能力制限値算出部59によって算出された吊能力制限値w
xが記憶部56に記憶されている吊能力データベースの所定の作業半径に対応する設定吊能力値よりも小さいか否かを判定する(ステップS5)。ここでは、制御部63は、吊能力制限値w
xが吊能力データベースに登録された作業半径の中で最も小さい作業半径r
0に対応する設定吊能力値w
0よりも小さいか否かを判定する。
【0081】
制御部63が吊能力制限値w
xは設定吊能力値w
0よりも小さいと判定した場合には、次に、更新部60が、記憶部56に記憶されている吊能力データベースの作業半径r
0に対応する設定吊能力値w
0を吊能力制限値w
xに等しい値に更新する(ステップS6)。
【0082】
一方、制御部63が、吊能力制限値w
xは設定吊能力値w
0よりも小さくない、すなわち設定吊能力値w
0以上であると判定した場合には、更新部60は、記憶部56に記憶されている吊能力データベースの作業半径r
0に対応する設定吊能力値w
0を更新せずにそのまま維持する(ステップS7)。
【0083】
上記ステップS6又はS7の後、制御部63は、吊能力データベースに登録されている全ての作業半径r
0、r
1、r
2、r
3、・・・の設定吊能力値w
0、w
1、w
2、w
3、・・・についてその更新のための上記ステップS4〜S7の処理が終了したか否かを判断する(ステップS8)。
【0084】
ここで、制御部63は、まだ全ての作業半径の設定吊能力値について上記ステップS4〜S7の処理が終了していない、すなわち上記ステップS4〜S7の処理が行われていない作業半径の設定吊能力値が存在すると判断した場合には、処理していない次の作業半径に対応する設定吊能力値を更新対象として設定する(ステップS9)。すなわち、上記ステップS4〜S7で作業半径r
0に対応する設定吊能力値w
0を更新対象としてきたため、当該ステップS9では、未処理の作業半径の中で最も小さい作業半径r
1に対応する設定吊能力値w
1を更新対象として設定する。
【0085】
その後、上記ステップS5以降の処理が繰り返し行われる。その結果、吊能力データベースに登録された各作業半径について小さい方から順番に設定吊能力値の更新のための処理が行われる。
【0086】
そして、制御部63がステップS8において全ての作業半径r
0、r
1、r
2、r
3、・・・の設定吊能力値w
0、w
1、w
2、w
3、・・・についてステップS4〜S7の処理が終了したと判断した場合には、次に、制御部63は、上記ステップS3で設定された制限有効時間t
limitが経過したか否かを判断する(ステップS10)。
【0087】
制御部63は、ステップS10において、制限有効時間t
limitがまだ経過していないと判断した場合には、上記ステップS4〜S7の処理による設定吊能力値の更新内容を有効にする(ステップS11)。これにより、過負荷防止装置48では、記憶部56に記憶されている最新の吊能力データベースである更新後の吊能力データベースに基づいて、作業半径算出部61、吊能力値読取部62及び制御部63による過負荷防止のための処理が行われる。そして、ステップS11の処理の後、ステップS10の処理が再度行われる。
【0088】
一方、制御部63は、ステップS10において、制限有効時間t
limitが経過したと判断した場合には、上記ステップS4〜S7の処理による設定吊能力値の更新内容を無効にする(ステップS12)。すなわち、制御部63は、更新部60に、記憶部56に記憶されている更新後の吊能力データベースを、記憶部56に記憶されている初期状態の吊能力データベースに更新させる。その結果、過負荷防止装置48では、初期状態の吊能力データベースに基づいて、作業半径算出部61、吊能力値読取部62及び制御部63による過負荷防止のための処理が行われる。
【0089】
制限有効時間t
limitが経過した場合には、電動機26のヒートバランスは、その電動機26がトルク定格値以下のトルクを出力している状態でのヒートバランスに戻ったと推定できる。従って、初期状態の吊能力データベースに基づいた過負荷防止が行われたとしても、電動機26の発熱による出力トルクの低下に起因した過負荷防止の確実性の低下や、電動機26の発熱による損傷が生じない。
【0090】
以上のようにして、本実施形態によるクレーンにおける過負荷防止のための処理が行われる。
【0091】
本実施形態では、電動機26が発熱するような高出力での作動が行われてトルク指標値導出部57により導出される電動機26のトルク実効値Tq
rmsがトルク定格値を超えた場合には、トルク定格値よりも小さいトルク制限値Tq
limitが設定されるとともに、その設定されたトルク制限値Tq
limitに対応する吊能力制限値w
xが算出される。そして、記憶部56に記憶されている吊能力データベースに算出された吊能力制限値w
xよりも小さい設定吊能力値が存在する場合には、その設定吊能力値が算出された吊能力制限値w
xに等しい値に更新される。そして、荷重検出器44によって検出される荷重値が記憶部56に記憶されている最新の吊能力データベースの設定吊能力値を超えた場合には、制御部63が電動機26の作動を停止させるため、ドラム24の回転が停止されて吊作業が停止される。
【0092】
従って、本実施形態では、電動機26が発熱してその電動機26の出力トルクが低下し、実際の吊能力値が低下するような場合には、過負荷防止装置48の制御部63による過負荷防止のための電動機26の作動停止の判断基準となる設定吊能力値が低下する。その結果、過負荷防止の確実性が高められる。また、この場合には、電動機26の発熱が過大となるような高出力での電動機26の作動が継続されないため、電動機26の過大な発熱による損傷を防止できる。
【0093】
また、本実施形態では、トルク制限値Tq
limitはトルク定格値よりも小さく且つ0よりも大きい値に設定されるため、そのトルク制限値Tq
limitに対応する吊能力制限値w
xは0よりも大きくなり、その吊能力制限値w
xに等しい値に更新される吊能力データベースの設定吊能力値も0よりも大きい値になる。このため、荷重検出器44によって検出される荷重値が更新後の0よりも大きい設定吊能力値以下である場合に、制御部63が電動機26の作動を許容する。従って、この場合には、記憶部56に記憶されている最新の吊能力データベースの設定吊能力値が未更新であるときに比べて吊能力は制限されるものの、可能な範囲において最大の吊能力で吊作業を継続して実施できる。
【0094】
また、本実施形態では、トルク指標値導出部57が、特定のサイクル時間毎の電動機26のトルク実効値Tq
rmsを電動機26のトルク指標値として算出する。そして、その算出されたサイクル時間毎のトルク実効値Tq
rmsがトルク定格値を超えたことに応じて、トルク制限値Tq
limitの設定、その設定されたトルク制限値Tq
limitに対応する吊能力制限値w
xの算出及び吊能力データベースの設定吊能力値の更新を行うことができる。このため、例えば、電動機26の実際の出力トルクが一瞬だけトルク定格値を超えたがそれ以外はトルク定格値以下であって、電動機26のトルク実効値がトルク定格値を超えず、その電動機26の発熱が過大にならないような場合には、記憶部56に記憶されている吊能力データベースの設定吊能力値を低下させるように更新せずにクレーンの吊能力を維持することができる。
【0095】
また、本実施形態では、更新部60が記憶部56に記憶されている吊能力データベースの設定吊能力値を更新したことに応じて、表示装置49がその更新報知画面の更新情報表示欄72に「更新済」を表示するため、操作者がその表示を見て設定吊能力値の更新が行われたことを知ることができる。
【0096】
また、表示装置49は、吊能力データベースの設定吊能力値が更新された場合には、更新報知画面の吊能力表示部78に更新前の吊能力データベースの作業半径と設定吊能力値との相関関係と更新後の吊能力データベースの作業半径と設定吊能力値との相関関係とを並べて表示する。このため、操作者は、その吊能力表示部78の表示を見て、更新後の設定吊能力値を知ることができるとともに、その更新後の設定吊能力値が更新前の設定吊能力値からどの程度低下したのかを知ることができる。そして、操作者は、吊能力表示部78の表示から把握した更新後の設定吊能力値に基づいて、吊作業において更新後の設定吊能力値を超えないような荷重の吊荷100を吊ることを選択できる。
【0097】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、また、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含む。
【0098】
例えば、トルク指標値導出部57は、トルク計測装置46により計測された電動機26の実際の出力トルクの計測値に基づいてトルク指標値を導出する代わりに、電動機26に入力される電流の大きさの指標値である電流指標値に基づいてトルク指標値を導出してもよい。
【0099】
図7には、このようなトルク推定値に基づいてトルク指標値を導出する第1変形例の構成が示されている。この第1変形例では、電動機26の回転速度を制御するために電動機26に入力される電流を制御する電流制御装置80において電流指標値としての電流ベクトルが導出される。トルク指標値導出部57には、その電流ベクトルに基づいて、その電流ベクトルが示す大きさの電流が電動機26に入力された場合に電動機26が出力するトルク実効値を算出する。電流制御装置80は、電動機26の回転速度の制御のために一般的に用いられるものであり、上記実施形態の
図2では図示を省略しているが、電源29と電動機26との間の電気経路に設けられる。
【0100】
電流制御装置80では、電動機26の回転速度の目標値を指示する目標速度指令が速度制御器81に入力される。速度制御器81は、入力された目標速度指令に応じた回転速度で電動機26を作動させるために電動機26に入力する必要がある電流の指令値としての電流ベクトルを算出する。速度制御器81は、算出した電流ベクトルを電流ベクトル変換部82へ出力する。
【0101】
電流ベクトル変換部82には、電流制御装置80で定められた電流位相角が入力されている。電流ベクトル変換部82は、速度制御器81から入力された電流ベクトルを入力された電流位相角に応じてd軸電流目標値とq軸電流目標値に変換する。変換されたd軸電流目標値は、第1電流制御器83に入力され、変換されたq軸電流目標値は、第2電流制御器84に入力される。
【0102】
第1電流制御器83は、入力されたd軸電流目標値に応じたd軸電流をdq/uvw変換部85へ出力し、第2電流制御器84は、入力されたq軸電流目標値に応じたq軸電流をdq/uvw変換部85へ出力する。dq/uvw変換部85は、入力されたd軸電流及びq軸電流をu相電圧、v相電圧及びw相電圧に変換し、その変換した各相電圧を電動機26へ入力する。電動機26は、三相モータであり、入力されたu相電圧、v相電圧及びw相電圧によって駆動される。
【0103】
電動機26には、当該電動機26において流れる電流を検出する図略の電流検出器が設けられている。この電流検出器は、電動機26に流れるu相電流、v相電流及びw相電流を検出し、その各相電流の検出値がuvw/dq変換部86に入力される。uvw/dq変換部86は、入力された相電流の検出値をd軸電流検出値及びq軸電流検出値に変換して出力する。uvw/dq変換部86から出力されたd軸電流検出値は、電流ベクトル変換部82から出力されるd軸電流目標値にフィードバックされ、第1電流制御器83に入力されるd軸電流目標値が調整される。また、uvw/dq変換部86から出力されたq軸電流検出値は、電流ベクトル変換部82から出力されるq軸電流目標値にフィードバックされ、第2電流制御器84に入力されるd軸電流目標値が調整される。
【0104】
また、電動機26に設けられた図略の回転速度検出器から電動機26の回転速度の検出値が速度制御器81に入力される目標速度にフィードバックされて、その目標速度が調節されるようになっている。
【0105】
トルク指標値導出部57は、推定値導出部88と、実効値導出部90とを有する。
【0106】
推定値導出部88には、前記電流位相角と、速度制御器81から出力される電流ベクトルとが入力される。電流ベクトルは、本発明における電流指標値の一例である。推定値導出部88は、入力される電流位相角及び電流ベクトルに応じたトルク推定値を以下に示す第1変換テーブルデータに基づいて逐次導出する。
【0108】
この第1変換テーブルデータは、電流位相角及び電流ベクトルの大きさと電動機26のトルク推定値との相関関係を規定するものであり、予め調べられた電流位相角及び電流ベクトルと電動機26の出力トルクとの相関関係に従って作成される。
【0109】
推定値導出部88は、入力された電流位相角と電流ベクトルの大きさに一致するデータが第1変換テーブルデータに存在する場合には、そのデータのトルク推定値を当該推定値導出部88に入力された電流位相角と電流ベクトルの大きさに対応するトルク推定値として導出する。
【0110】
一方、推定値導出部88は、入力された電流位相角に一致する電流位相角が第1変換テーブルデータに存在しない場合には、その入力された電流位相角に近い上下2つの電流位相角に対応するトルク推定値のデータから、入力された電流位相角に対応するトルク推定値を補間演算によって導出する。また、推定値導出部88は、入力された電流ベクトルの大きさに一致する電流ベクトルの大きさが第1変換テーブルデータに存在しない場合には、その入力された電流ベクトルの大きさに近い上下2つの電流ベクトルの大きさに対応するトルク推定値のデータから、入力された電流ベクトルの大きさに対応するトルク推定値を補間演算によって導出する。推定値導出部88は、導出したトルク推定値を実効値導出部90へ出力する。
【0111】
実効値導出部90は、入力されたトルク推定値に基づいて電動機26のトルク実効値を算出する。このトルク実効値の算出方法は、上記実施形態でのトルク実効値の算出方法と同様である。すなわち、実効値導出部90は、上記式(1)のTq(t)として、上記実施形態のトルク計測装置46により計測された出力トルクの値の代わりに、トルク推定値を用い、その式(1)に基づいてトルク実効値Tq
rmsを算出する。
【0112】
また、
図8には、トルク推定値に基づいてトルク指標値としてのトルク実効値を導出する第2変形例の構成が示されている。この第2変形例では、電流制御装置80のuvw/dq変換部86から出力されるd軸電流検出値及びq軸電流検出値に基づいて、トルク指標値導出部57がトルク指標値としてのトルク実効値を導出する。
【0113】
この第2変形例では、トルク指標値導出部57の推定値導出部88に、uvw/dq変換部86から出力されるd軸電流検出値及びq軸電流検出値が入力される。d軸電流検出値及びq軸電流検出値は、本発明における電流指標値の一例である。推定値導出部88は、入力されるd軸電流検出値及びq軸電流検出値に応じたトルク推定値を以下に示す第2変換テーブルデータに基づいて逐次導出する。
【0115】
この第2変換テーブルデータは、d軸電流検出値及びq軸電流検出値と電動機26のトルク推定値との相関関係を規定するものであり、予め調べられたd軸電流検出値及びq軸電流検出値と電動機26の出力トルクとの相関関係に従って作成される。
【0116】
推定値導出部88は、入力されたd軸電流検出値とq軸電流検出値に一致するデータが第2変換テーブルデータに存在する場合には、そのデータのトルク推定値を当該推定値導出部88に入力されたd軸電流検出値及びq軸電流検出値に対応するトルク推定値として導出する。
【0117】
一方、推定値導出部88は、入力されたd軸電流検出値に一致するd軸電流検出値が第2変換テーブルデータに存在しない場合には、その入力されたd軸電流検出値に近い上下2つのd軸電流検出値に対応するトルク推定値のデータから、入力されたd軸電流検出値に対応するトルク推定値を補間演算によって導出する。また、推定値導出部88は、入力されたq軸電流検出値に一致するq軸電流検出値が第2変換テーブルデータに存在しない場合には、その入力されたq軸電流検出値に近い上下2つのq軸電流検出値に対応するトルク推定値のデータから、入力されたq軸電流検出値に対応するトルク推定値を補間演算によって導出する。
【0118】
推定値導出部88は、導出したトルク推定値を実効値導出部90へ出力する。実効値導出部90は、入力されるトルク推定値を用いて上記第1変形例の場合と同様にしてトルク実効値を算出する。
【0119】
以上の第1及び第2変形例の構成によれば、電動機26の実際の出力トルクを計測するトルク計測装置を設けることなく、電動機26のトルク実効値を求めることができる。従って、装置構成を簡略化しつつ、電動機26のトルク実効値を求めることができる。
【0120】
また、本発明による報知部は、記憶部に記憶されている設定吊能力値が更新されたことを画面表示で報知する表示装置に必ずしも限定されない。例えば、音声で報知する装置、点灯や点滅により報知するランプ、その他の装置を本発明による報知部として採用可能である。