【文献】
半田大介,省エネ型遠心脱水技術の実証試験事例報告,第51回下水道研究発表会講演集,日本,公益社団法人日本下水道協会,2014年 7月 4日,p.955-957
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
下水処理場に流入する被処理水は、日間変動、季節変動、天候等により、流入量や被処理水中の成分が変動する。
【0003】
最初沈殿池ではその影響を受けて初沈汚泥の発生量や成分が変動するが、最終沈殿池では、処理水が反応槽を経て流入してくるため、余剰汚泥は発生量や成分の変動が少ない。
【0004】
初沈汚泥は、主に固形の有機物や土砂等の無機成分からなっており、一般的に脱水性がよい。
【0005】
一方、余剰汚泥は、微生物が分泌した多糖類、タンパク質、核酸からなっており、著しく脱水性が悪いことが知られている。
【0006】
最初沈殿池で発生する初沈汚泥や最終沈殿池で発生する余剰汚泥は、脱水工程での効率改善を図るため、それぞれ備え付けた濃縮設備で一定の濃度に濃縮している。
【0007】
それぞれの濃縮汚泥を所定の比率で混合して脱水機に供給し、脱水機で生成した脱水ケーキは焼却あるいは埋立処分される。
【0008】
脱水ケーキを搬送、処分するためのランニングコストを低減するために、安定的に低含水率の脱水ケーキを生成することが望まれている。
【0009】
混合汚泥に繊維状物や、おがくず、籾殻などの植物素材を脱水助材として混合して脱水することが古くから知られ、多くの下水処理場で実施されている。
【0010】
このように、混合汚泥に繊維状物(脱水助材)を混合して脱水すると、低含水率の脱水ケーキが得られ、かつ、加圧脱水の場合には脱水ケーキの剥離性が改善される。
【0011】
しかしながら、大量の脱水助材を用意しなければならないため、ランニングコストが増大し、また、脱水助材の備蓄・供給設備を設置しなければならないため、イニシャルコストが増大するという問題があった。
【0012】
また、濃縮設備では初沈汚泥を1日〜3日滞留させるが、この滞留期間中に初沈汚泥内の有機分が腐敗して脱水性の悪い汚泥へと性状変化することがあった。
【0013】
初沈汚泥に含有される繊維状物も同様に腐敗し、脱水助材として機能し難い性状に変化することがあった。
【0014】
さらに、濃縮設備の維持管理のためのランニングコストやプラント工事のためのイニシャルコストが増大するという問題があった。
【0015】
そこで、汚水処理プロセスの最初沈殿池で発生する生汚泥である初沈汚泥から繊維分を分離、回収し、余剰汚泥または消化汚泥などの難脱水汚泥に回収した繊維分を添加して脱水処理することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0016】
また、初沈汚泥と余剰汚泥との混合比率を調整して脱水処理することも提案されている(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。
【0017】
このように、初沈汚泥から分離、回収した繊維分を脱水助材とすることにより、ランニングコストを低減することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、特許文献1に記載されている汚泥脱水処理方法、汚泥脱水処理システムでは、初沈汚泥から繊維分を分離、回収する設備を用意する必要があるとともに、繊維分を備蓄する備蓄設備が必要になるという問題がある。
【0020】
また、特許文献2に記載されている汚泥脱水処理方法、汚泥脱水処理システムは、初沈汚泥と余剰汚泥との接触時間を短くすることによってリン濃度の低減を目的とするものである。
【0021】
なお、特許文献2には、未濃縮状態の混合汚泥の脱水性の改善に関して、脱水性の悪い余剰汚泥に脱水性のよい初沈汚泥を混合させる旨の記載はなく、具体性に欠けるものである。
【0022】
また、特許文献3には、初沈汚泥と余剰汚泥との混合比率を調整する技術が記載されており、具体的には、初沈汚泥と余剰汚泥との混合汚泥における固形分中の無機質成分と有機質成分との質量比を、10:90〜40:60にすることが開示されている。
【0023】
なお、有機質成分は、主に『タンパク質』、『炭水化物』、『脂質』等からなっており、繊維分は『炭水化物』に含まれるため、特許文献3の技術は、混合汚泥中の繊維分を限定するために、初沈汚泥と余剰汚泥との混合比率を調整する技術である。
【0024】
しかし、特許文献3に記載されている有機質成分は、脱水性の悪化要因として記載されており、具体的には、最初沈殿池で発生する初沈汚泥は有機質成分の含有量が少ないため脱水性がよく、最終沈殿池で発生する終沈汚泥は有機質成分の含有量が多いため脱水性が悪いと記載されている。
【0025】
なお、特許文献3には、脱水性を改善するための脱水助材として使用する繊維状物について、記載も示唆もされていない。
【0026】
この発明は、初沈汚泥に含まれている繊維状物が脱水助材として機能することに着目してなされたもので、下水処理場および汚泥処理にかかるイニシャルコストおよびランニングコストを低減することができるとともに、汚泥の脱水処理を速く行うことのできる汚泥脱水処理方法および汚泥脱水処理システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
この発明の汚泥脱水処理方法は、繊維状物を含有する被処理水を最初沈殿池で重力沈殿させた初沈汚泥と、最終沈殿池で重力沈殿させた余剰汚泥とを
濃縮せずに混合して混合汚泥とした後、前記混合汚泥を脱水機で脱水処理する汚泥脱水処理方法であって、前記混合汚泥における前記繊維状物の含有率が
常時20%以上になるように前記初沈汚泥と前記余剰汚泥とを混合することを特徴とする。
【0028】
この発明の汚泥脱水処理システムは、繊維状物を含有する被処理水を重力沈殿させる最初沈殿池と、前記最初沈殿池から供給される一次処理水を、生物処理する反応槽と、前記反応槽から供給される処理水を重力沈殿させ、上澄み水を放流する最終沈殿池と、前記最初沈殿池に沈殿した初沈汚泥を
直接混合槽へ供給する初沈汚泥供給装置と、前記最終沈殿池に沈殿した余剰汚泥を
直接前記混合槽へ供給する余剰汚泥供給装置と、前記初沈汚泥供給装置と前記余剰汚泥供給装置とによって前記初沈汚泥と前記余剰汚泥とが供給される前記混合槽と、前記混合槽内の混合汚泥を脱水機へ供給する混合汚泥供給装置と、前記混合汚泥供給装置によって供給された前記混合汚泥を脱水する前記脱水機と、前記初沈汚泥供給装置内の前記初沈汚泥における前記繊維状物の含有率を測定する繊維状物含有率測定装置と、前記繊維状物含有率測定装置の出力に基づいて、前記混合槽内の前記混合汚泥における前記繊維状物の含有率が
常時20%以上になるように前記初沈汚泥供給装置と前記余剰汚泥供給装置とを制御する制御装置と、を有することを特徴とする。
【0029】
また、この発明の汚泥脱水処理システムは、繊維状物を含有する被処理水を重力沈殿させる最初沈殿池と、前記最初沈殿池から供給される一次処理水を、生物処理する反応槽と、前記反応槽から供給される処理水を重力沈殿させ、上澄み水を放流する最終沈殿池と、前記最初沈殿池に沈殿した初沈汚泥を
直接混合槽へ供給する初沈汚泥供給装置と、前記最終沈殿池に沈殿した余剰汚泥を
直接前記混合槽へ供給する余剰汚泥供給装置と、前記初沈汚泥供給装置と前記余剰汚泥供給装置とによって前記初沈汚泥と前記余剰汚泥とが供給される前記混合槽と、前記混合槽内の混合汚泥を脱水機へ供給する混合汚泥供給装置と、前記混合汚泥供給装置によって供給された前記混合汚泥を脱水する前記脱水機と、前記混合槽内の前記混合汚泥における前記繊維状物の含有率を測定する繊維状物含有率測定装置と、前記繊維状物含有率測定装置の出力に基づいて、前記混合槽内の前記混合汚泥における前記繊維状物の含有率が
常時20%以上になるように前記初沈汚泥供給装置と前記余剰汚泥供給装置とを制御する制御装置と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
この発明の汚泥脱水処理方法および汚泥脱水処理システムによれば、混合汚泥における繊維状物の含有率が20%以上になるように初沈汚泥と余剰汚泥とを混合するので、安定した脱水工程を行うための汚泥性状を維持することができる。
【0031】
したがって、脱水性が日間変動等で刻々と変化する初沈汚泥を脱水機の前段で濃縮せずに直接脱水機に供給することが可能となり、下水処理場にて迅速な汚泥処理を行うことができるとともに、濃縮設備を削減することができる。
【0032】
また、脱水助材を外部から持ち込んで添加する必要がなくなることにより、イニシャルコストおよびランニングコストを低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、この発明の実施例を図面を参照して説明する。
【0035】
図1は、この発明の第1実施例である汚泥脱水処理システムの構成を示すブロック図である。
【0036】
図1において、汚泥脱水処理システム1は、繊維状物を含有する被処理水11を重力沈殿させる最初沈殿池31と、この最初沈殿池31から供給される一次処理水13を、生物処理する反応槽33と、この反応槽33から供給される処理水15を重力沈殿させ、上澄み水17を河川などへ放流する最終沈殿池35と、最初沈殿池31に沈殿した初沈汚泥19を混合槽55へ供給する初沈汚泥供給装置37と、最終沈殿池35に沈殿した余剰汚泥21を混合槽55へ供給する余剰汚泥供給装置43と、初沈汚泥供給装置37と余剰汚泥供給装置43とによって初沈汚泥19と余剰汚泥21とが供給される混合槽55と、混合槽55の混合汚泥23を凝集混和槽63へ供給する混合汚泥供給装置57と、この混合汚泥供給装置57によって混合汚泥23が供給される凝集混和槽63と、この凝集混和槽63へ凝集剤25を供給する凝集剤供給装置65と、凝集混和槽63から供給される凝集汚泥27を脱水し、脱水ケーキ29を生成する脱水機(例えば、スクリュープレス)67と、初沈汚泥供給装置37内の初沈汚泥19における繊維状物の含有率を測定する繊維状物含有率測定装置73と、この繊維状物含有率測定装置73の出力に基づいて、混合槽55内の混合汚泥23における繊維状物の含有率が20%以上になるように初沈汚泥供給装置37と余剰汚泥供給装置43とを制御する制御装置75と、を有する。
【0037】
そして、汚泥脱水処理システム1は、一点鎖線で示すように、余剰汚泥21の一部を反応槽33へ返送させる余剰汚泥返送装置49を備えていてもよい。
【0038】
上記した初沈汚泥供給装置37は、最初沈殿池31の、例えば、下部(底)に一端が接続され、他端が混合槽55に接続された供給管39と、この供給管39の途中に設けられ、最初沈殿池31内の初沈汚泥19を吸引して混合槽55内へ圧送するポンプ41とで構成されている。
【0039】
また、余剰汚泥供給装置43は、最終沈殿池35の、例えば、下部(底)に一端が接続され、他端が混合槽55に接続された供給管45と、この供給管45の途中に設けられ、最終沈殿池35内の余剰汚泥21を吸引して混合槽55内へ圧送するポンプ47とで構成されている。
【0040】
また、余剰汚泥返送装置49は、余剰汚泥供給装置43のポンプ47よりも上流の供給管45に一端が接続され、他端が反応槽33に接続された供給管51と、この供給管51の途中に設けられ、最初沈殿池31内の余剰汚泥21を吸引して反応槽33内へ圧送するポンプ53とで構成されている。
【0041】
また、混合汚泥供給装置57は、混合槽55の、例えば、下部(底)に一端が接続され、他端が凝集混和槽63に接続された供給管59と、この供給管59の途中に設けられ、混合槽55内の混合汚泥23を吸引して凝集混和槽63内へ圧送するポンプ61とで構成されている。
【0042】
また、反応槽33は、空気を吹き込み微生物の働きによって有機物を分解する曝気槽や、OD法(オキシデーションディッチ法)のOD槽が該当する。
【0043】
次に、個々の構成要素(設備)について説明する。
【0044】
まず、最初沈殿池31では、流れ込んだ被処理水11が重力分離され、比重の重い固形分は沈降し、比重の軽い固形分および液分(一次処理水13)は次段の反応槽33へ送られ、底部に沈殿した固形分は初沈汚泥19として次段以降で脱水処理される。
【0045】
この被処理水11には、多量の繊維状物が含有されている。
【0046】
この被処理水11中に含有されている繊維状物の大部分は、繊維長さが0.1mm〜5mmで、繊維径が1μm〜50μmのトイレットペーパーに由来する繊維状物であることが判明している。
【0047】
図2は、トイレットペーパーと初沈汚泥から回収した繊維状物とを比較するグラフであり、横軸を繊維長(mm)、縦軸をその繊維長が占める割合(%)とした時の、トイレットペーパーを水中に溶解して得られた繊維分と、下水処理場の初沈汚泥から回収した繊維分とを比較している。
【0048】
図2の比較結果より、下水汚泥中の繊維分布(繊維長、割合)がトイレットペーパーと酷似していることが判明した。
【0049】
また、回収する繊維の性状として、繊維長0.1mm〜5mmとしておくことが好ましいことが分かる。
【0050】
図3は、初沈汚泥が含有する繊維状物を示す参考顕微鏡写真である。
【0051】
図3から分かるように、初沈汚泥19が含有する繊維状物は、トイレットペーパーと同様で繊維径にばらつきはなく、1μm〜50μmの範囲に収まっていることが判明した。
【0052】
これらのことから、初沈汚泥19が含有する繊維状物の性状分布は、トイレットペーパーの繊維性状と非常に酷似しており、トイレットペーパーの繊維分と同等の性状を有すると判断できるもので、脱水助材として好ましいことが分かる。
【0053】
なお、被処理水11中に含有されている繊維状物には、トイレットペーパー由来の繊維状物以外にも植物由来の繊維状物、あるいは、食物残渣由来の繊維状物もあり、繊維状に細分化している状態であれば脱水助材として機能する。
【0054】
初沈汚泥19には、固形分比で40%〜60%の繊維状物が含有されている。
【0055】
そして、処理場の規模にもよるが、最初沈殿池31では、被処理水11を1時間〜2時間滞留させる。
【0056】
次に、反応槽33では、最初沈殿池31から供給される一次処理水13に活性汚泥(好気性微生物を多量に含んだ汚泥)を加え、空気を吹き込んで攪拌する。
【0057】
空気(酸素)と一次処理水13中の有機物とにより、活性汚泥中の微生物が繁殖して一次処理水13中の有機物(汚れ)が減少するとともに、活性汚泥がフロックを形成し、沈殿し易い状態になり、次段へ流出する。
【0058】
そして、処理場の規模にもよるが、反応槽33では、一次処理水13を6時間〜10時間滞留させる。
【0059】
次に、最終沈殿池35では、反応槽33から供給された活性汚泥の混入した処理水15を滞留させて重力沈殿を行う。
【0060】
最終沈殿池35の上澄み水17は、必要に応じて高度処理を施して河川などへ放流する。
【0061】
最終沈殿池35の底部に沈殿した余剰汚泥21は、後段において脱水処理される。
【0062】
この余剰汚泥21は、微生物が分泌した多糖類、タンパク質、核酸からなり、著しく脱水性が悪いることが知られている。
【0063】
そして、処理場の規模にもよるが、最終沈殿池35では、処理水15を3時間〜4時間滞留させる。
【0064】
次に、混合槽55は、初沈汚泥供給装置37によって送られてくる初沈汚泥19と、余剰汚泥供給装置43によって送られてくる余剰汚泥21とを攪拌機構で均一に混合し、混合汚泥23とする。
【0065】
このように、初沈汚泥19と余剰汚泥21とを均一に攪拌する目的は、初沈汚泥19に含まれる繊維状物を均一に分散させ、繊維状物を凝集の核として機能させるとともに、脱水時に水路を形成する効果を有する脱水助材として機能させるためである。
【0066】
次に、凝集混和槽63は、混合汚泥供給装置57によって供給される混合汚泥23と、凝集剤供給装置65から供給される凝集剤25とを均一に攪拌しつつ混合し、脱水機67で安定して脱水可能な凝集フロックを形成させる。
【0067】
次に、脱水機67は、凝集混和槽63から供給される凝集汚泥27を脱水し、安定した低含水率の脱水ケーキ29を生成する。
【0068】
この発明は、濃縮設備が不要であり、被処理水11が最初沈殿池31に流入した時点から脱水機67に供給されるまでに要する時間が概ね6時間未満であるので、初沈汚泥19および初沈汚泥19に含有される繊維状物の性状変化がなく、良好な脱水性を維持した汚泥を高機能な脱水助材で脱水することが可能となる。
【0069】
従来、脱水性に影響を与える因子として、汚泥の濃度、有機分、繊維分(繊維状物、脱水助材)が知られている。
【0070】
そして、その影響度の度合いについては、汚泥の濃度、有機分と比較して繊維分が脱水性に大きな影響を与えることが判明している。
【0071】
そして、繊維分が凝集汚泥27(混合汚泥23)中に20%以上含有されていると、脱水工程の前段で汚泥を濃縮せずに低含水率の脱水ケーキ29を効率よく生成することができる。
【0072】
次に、繊維状物含有率測定装置73は、初沈汚泥供給装置37のポンプ41よりも上流の供給管39に一端が接続され、他端が反応槽33に接続された分岐管69の途中に設けられ、初沈汚泥供給装置37から抽出した初沈汚泥19に含まれる繊維状物(脱水助材)の含有率を測定する。
【0073】
なお、ポンプ41の吸引によって分岐管69に初沈汚泥19が分岐し(供給され)ない場合は、分岐管69の途中に、制御装置75によって制御されるポンプを設け、分岐管69に初沈汚泥19が供給されるようにするとよい。
【0074】
この繊維状物の含有率を測定する一例としては、フィルタ上に初沈汚泥19を供給し、微小な夾雑物を洗い流し、繊維状物を残留させる。
【0075】
そして、重量で繊維状物の含有率を測定する場合は、フィルタ上に残留した繊維状物の重量を測定し、含有率を算出する。
【0076】
また、圧力損失で繊維状物の含有率を測定する場合は、フィルタ上に残留した繊維状物に気体を吹き付け、フィルタの上流側と、下流側とで圧力を測定して含有率を算出し、または、フィルタ上に残留した繊維状物に液体を供給し、液体の通過速度、通過量などから含有率を算出する。
【0077】
また、画像で繊維状物の含有率を測定する場合は、フィルタ上に残留した繊維状物を撮影し、画像分析(輝度、透光率など)することで含有率を算出する。
【0078】
なお、被処理水11を最初沈殿池31で重力沈殿させると、被処理水11中の繊維状物の97%位が最初沈殿池31に沈降、沈殿し、残りの3%位の繊維状物は反応槽33で分解されるので、最終沈殿池35には繊維状物が供給されなくなる。
【0079】
そして、最初沈殿池31で沈降する繊維状物と、繊維状物以外の固形物との割合は、40(%):60(%)〜60(%):40(%)である。
【0080】
また、最終沈殿池35で沈降する繊維状物と、繊維状物以外の固形物との割合は、0(%):100(%)である。
【0081】
そして、季節、時間変動の受け易い初沈汚泥19を余剰汚泥21と混合する場合、初沈汚泥19における繊維状物が少ないときでも常時20%以上は確保できる可能性が高く、かつ、20%以上の繊維状物を混合汚泥23が含有していれば、汚泥濃度に依存することなく脱水可能で、脱水機67で含水率を十分に低減させることができる。
【0082】
図4は、繊維状物含有率と脱水ケーキ含水率との関係を示すグラフである。
【0083】
初沈汚泥19および余剰汚泥21を濃縮せずに混合した混合汚泥23中の繊維状物の含有率を変化させて脱水したもので、10%の繊維状物含有率で3%、20%の繊維状物含有率で6%程度ケーキ含水率が減少している。
【0084】
例えば、初沈汚泥19の繊維状物が40%で、繊維状物以外の固形物が60%で、余剰汚泥21の繊維状物が0%で、繊維状物以外の固形物が100%のとき、初沈汚泥19と余剰汚泥21とを1:0.8の割合で混合すると、混合汚泥23の繊維状物の割合は、(40/180)×100=22(%)となり、脱水機67で含水率を十分に低減させることができる。
【0085】
一般的に、下水処理場で発生する脱水ケーキは、含水率が80%以下であると、搬送し易く、焼却、埋立等の後処理にかかるランニングコストも低減できる。
【0086】
そして、被処理水11の性状変化も考慮して、混合汚泥23中の繊維状物含有率が20%以上であると、脱水ケーキ含水率を80%以下に抑えることが可能となる。
【0087】
次に、汚泥脱水処理システム1の動作について説明する。
【0088】
まず、繊維状物を含有する被処理水11は最初沈殿池31で重力沈殿させられ、初沈汚泥19が最初沈殿池31に沈殿する。
【0089】
そして、最初沈殿池31の一次処理水13は反応槽33に供給され、反応槽33で生物処理される。
【0090】
そして、反応槽33の処理水15は最終沈殿池35に供給され、最終沈殿池35で重力沈殿させられ、余剰汚泥21が最終沈殿池35に沈殿し、上澄み水17は河川などへ放流される。
【0091】
このようにして汚水を処理しているときに発生する初沈汚泥19と、余剰汚泥21とを脱水処理する場合は、まず、ポンプ41を制御して最初沈殿池31から初沈汚泥19を吸引して混合槽55へ初沈汚泥19を供給する。
【0092】
このようにして初沈汚泥19を混合槽55へ供給する際、初沈汚泥19の一部は分岐管69を介して繊維状物含有率測定装置73へ供給されるので、繊維状物含有率測定装置73によって初沈汚泥19内の繊維状物の含有率が測定され、その含有率は制御装置75へ送られる。
【0093】
なお、繊維状物の含有率測定に供された初沈汚泥19は、最初沈殿池31へ供給される。
【0094】
そして、初沈汚泥19内の繊維状物の含有率を測定した繊維状物含有率測定装置73から含有率の信号が供給された制御装置75は、混合槽55内の混合汚泥23における繊維状物の含有率が20%以上になるように初沈汚泥供給装置37のポンプ41と余剰汚泥供給装置43のポンプ47とを制御する。
【0095】
そして、混合槽55は供給された初沈汚泥19と余剰汚泥21とを均一に混合して混合汚泥23(凝集汚泥)とし、凝集フロックを形成させる。
【0096】
この混合された混合汚泥23は、混合汚泥供給装置57によって凝集混和槽63へ供給される。
【0097】
混合汚泥23が供給される凝集混和槽63には、例えば、制御装置75によって制御された凝集剤供給装置65から凝集剤25が供給されるので、凝集混和槽63は混合汚泥23と凝集剤25とを均一に混合して凝集汚泥27とし、凝集フロックを形成させながら脱水機67へ供給する。
【0098】
凝集汚泥27が供給される脱水機67は、凝集汚泥27を脱水して脱水ケーキ29を生成する。
【0099】
この発明の第1実施例によれば、初沈汚泥19内の繊維状物を脱水助材として利用しているので、ランニングコストを低減することができるとともに、脱水工程の前段で汚泥を濃縮せずに汚泥の脱水処理を速く行うことができる。
【0100】
図5はこの発明の第2実施例である汚泥脱水処理システムの構成を示すブロック図であり、
図1と同一部分または相当部分に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0101】
この第2実施例の汚泥脱水処理システム1Aが、第1実施例の汚泥脱水処理システム1と異なるところは、初沈汚泥供給装置37のポンプ41よりも下流の供給管39に一端が接続され、他端が混合槽55に接続された分岐管69Aの途中に繊維状物含有率測定装置73を設けたところである。
【0102】
この第2実施例の汚泥脱水処理システム1Aは、先に説明した第1実施例の汚泥脱水処理システム1と同様に動作し、第1実施例の汚泥脱水処理システム1と同様な効果を得ることができる。
【0103】
図6はこの発明の第3実施例である汚泥脱水処理システムの構成を示すブロック図であり、
図1、
図5と同一部分または相当部分に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0104】
この第3実施例の汚泥脱水処理システム1Bが、第1実施例または第2実施例の汚泥脱水処理システム1,1Aと異なるところは、混合槽55の、例えば、下部(底)に一端が接続され、他端が混合槽55に接続された引き込み管69Bに、上流側から下流側へポンプ71、繊維状物含有率測定装置73を設けたところである。
【0105】
この第3実施例の汚泥脱水処理システム1Bは、先に説明した第1実施例または第2実施例の汚泥脱水処理システム1,1Aと同様に動作し、第1実施例または第2実施例の汚泥脱水処理システム1,1Aと同様な効果を得ることができる。
【0106】
図7はこの発明の第4実施例である汚泥脱水処理システムの要部の構成を示すブロック図であり、
図1、
図5、
図6と同一部分または相当部分に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0107】
この第4実施例の汚泥脱水処理システム1Cが、第1実施例〜第3実施例の汚泥脱水処理システム1,1A,1Bと異なるところは、混合槽55から混合汚泥23を脱水機67Aへ直接供給し、脱水機(例えば、スクリュープレス、ベルトプレス、遠心脱水機等)67Aで脱水するところである。
【0108】
第1実施例〜第3実施例の汚泥脱水処理システム1,1A,1Bでは、脱水機67の脱水を確実にするために、凝集混和槽63で混合汚泥23と凝集剤25とを混合させている。
【0109】
しかしながら、混合槽55内の混合汚泥23は、脱水助材である繊維状物が20%以上であるので、均一に混合させられることによって凝集フロックを形成する。
【0110】
したがって、混合槽55から混合汚泥23を脱水機67Aへ供給し、脱水機67Aで混合汚泥23を脱水することにより、安定した低含水率の脱水ケーキ29を生成できる。
【0111】
この第4実施例の汚泥脱水処理システム1Cは、先に説明した第1実施例〜第3実施例の汚泥脱水処理システム1,1A,1Bと同様に動作し、第1実施例〜第3実施例の汚泥脱水処理システム1,1A,1Bと同様な効果を得ることができる。
【0112】
さらに、第4実施例の汚泥脱水処理システム1Cは、凝集混和槽、凝集剤供給装置を設置する必要がなくなることにより、イニシャルコストおよびランニングコストを低減することができる。
【0113】
上記した実施例において、最初沈殿池31、最終沈殿池35で発生する初沈汚泥19、余剰汚泥21の発生量が多い場合に備えて、混合槽55の前段に初沈汚泥19あるいは余剰汚泥21を一時的に貯留する調整槽を設けてもよい。
【0114】
このように、調整槽を設ける場合、調整槽から混合槽55へ送る初沈汚泥19あるいは余剰汚泥21の量を、混合槽55内の混合汚泥23における繊維状物の含有率が20%以上になるように制御装置75によって制御する必要がある。
【0115】
なお、初沈汚泥19の汚泥性状および初沈汚泥19内に含有されている繊維状物の性状変化等を管理できる場合は、初沈汚泥供給装置37に初沈汚泥19の濃縮設備を設けてもよい。