(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
下水処理場に流入する下水(被処理水、汚水)は、日間変動、季節変動、天候等により、流入量や被処理水中の成分が変動する。
【0003】
最初沈殿池ではその影響を受けて初沈汚泥の発生量や成分が変動するが、最終沈殿池では、処理水が反応槽を経て流入してくるため、余剰汚泥の発生量や余剰汚泥の成分変動が少ない。
【0004】
初沈汚泥は、主に固形の有機物や土砂等の無機成分からなっており、一般的に脱水性がよい。
【0005】
一方、余剰汚泥は、微生物が分泌した多糖類、タンパク質、核酸からなっており、著しく脱水性が悪いことが知られている。
【0006】
最初沈殿池で発生する初沈汚泥や最終沈殿池で発生する余剰汚泥は、脱水工程での効率改善を図るため、それぞれ備え付けた濃縮設備で一定の濃度に濃縮している。
【0007】
それぞれの濃縮汚泥を所定の比率で混合した混合汚泥を脱水機に供給し、脱水機で生成した脱水ケーキは焼却あるいは埋立に利用される。
【0008】
脱水ケーキを搬送、処分するためのランニングコストを低減するために、安定的に低含水率の脱水ケーキを生成することが望まれている。
【0009】
混合汚泥に繊維状物や、おがくず、籾殻などの植物素材を脱水助材として混合して脱水することが古くから知られ、多くの下水処理場で実施されている。
【0010】
このように、混合汚泥に繊維状物(脱水助材)を混合して脱水すると、低含水率の脱水ケーキが得られ、かつ、加圧脱水の場合には脱水ケーキの剥離性が改善される。
【0011】
しかしながら、大量の脱水助材を用意しなければならないため、ランニングコストが増大し、また、脱水助材の備蓄・供給設備を設置しなければならないため、イニシャルコストが増大するという問題があった。
【0012】
また、濃縮設備では初沈汚泥を1日〜3日滞留させるが、この滞留期間中に初沈汚泥内の有機分が腐敗して脱水性の悪い汚泥へと性状変化することがあった。
【0013】
初沈汚泥に含有される繊維状物も同様に腐敗し、脱水助材として機能し難い性状に変化することがあった。
【0014】
さらに、濃縮設備の維持管理のためのランニングコストやプラント工事のためのイニシャルコストが増大するという問題があった。
【0015】
そこで、汚水処理プロセスの最初沈殿池で発生する生汚泥である初沈汚泥に希釈水を加えて汚泥溶液とし、その汚泥溶液の流量、比重および固形分濃度を測定することで、その流量、比重および固形分濃度に基づいて直接的に汚泥の含水率を算出することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0016】
また、処理槽に流入する汚水からセルロース系の繊維分を回収するとともに、この繊維分を添加して汚泥を脱水することも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0017】
このように、固形分濃度に基づいて汚泥の含水率を算出したり、初沈汚泥から分離、回収した繊維分を脱水助材とすることにより、ランニングコストを低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、この発明の実施例を、図面を参照して説明する。
【0029】
図1は、この発明の繊維状物回収装置の構成を示すブロック図である。
【0030】
図1において、繊維状物回収装置Aは、移送手段、例えば、ポンプ1によって送られてくる被処理物〔例えば、汚水(被処理水)、最初沈殿地で発生した汚泥(生汚泥、初沈汚泥)〕から夾雑物を除去する夾雑物除去部(夾雑物除去工程)3と、この夾雑物除去部3からの汚泥内で絡み合っている繊維状物をすり潰して微細化する調整部(調整工程)5と、この調整部5で微細化した繊維状物を分離する分離部(分離工程)7と、この分離部7で分離した繊維状物を回収する回収部(回収工程)9と、この回収部9で回収した繊維状物の濃度などを計測する計測部(計測工程)11と、回収部9内の繊維状物を移送する移送手段、例えば、ポンプ13と、このポンプ13によって移送される繊維状物の流量測定部(流量計)15と、計測部11の計測結果に応じて、分離部7で分離する繊維状物の濃度が一定の範囲内になるように分離部7を制御したり、流量計15の出力に応じてポンプ13を制御する制御部17と、を有する。
【0031】
下水処理場に流入する被処理水(汚水)には、多量の繊維状物が含有されている。
【0032】
この被処理水中に含有されている繊維状物の大部分は、繊維長さが0.1mm〜5mmで、繊維径が1μm〜50μmのトイレットペーパーに由来する繊維状物であることが判明している。
【0033】
図2は、トイレットペーパーと初沈汚泥から回収した繊維状物とを比較するグラフであり、横軸を繊維長(mm)、縦軸をその繊維長が占める割合(%)とした時の、トイレットペーパーを水中に溶解して得られた繊維分と、下水処理場の初沈汚泥から回収した繊維分とを比較している。
【0034】
図2の比較結果より、下水汚泥中の繊維分布(繊維長、割合)がトイレットペーパーと酷似していることが判明した。
【0035】
また、回収する繊維の性状として、繊維長0.1mm〜5mmとしておくことが好ましいことが分かる。
【0036】
図3は、初沈汚泥が含有する繊維状物を示す参考顕微鏡写真である。
【0037】
図3から分かるように、最初沈殿池における生汚泥(初沈汚泥)が含有する繊維状物は、トイレットペーパーと同様で繊維径にばらつきはなく、1μm〜50μmの範囲に収まっていることが判明した。
【0038】
これらのことから、初沈汚泥が含有する繊維状物(繊維分)の性状分布は、トイレットペーパーの繊維性状と非常に酷似しており、トイレットペーパーの繊維分と同等の性状を有すると判断できるもので、脱水助材として好ましいことが分かる。
【0039】
なお、被処理水中に含有されている繊維状物には、トイレットペーパー由来の繊維状物以外にも植物由来の繊維状物、あるいは、食物残渣由来の繊維状物もあり、繊維状に細分化している状態であれば脱水助材として機能する。
【0040】
初沈汚泥には、固形分比で40%〜60%の繊維状物が含有されている。
【0041】
図4は、繊維分含有率と脱水ケーキ含水率との関係を示すグラフである。
【0042】
初沈汚泥および余剰汚泥を濃縮せずに混合した混合汚泥中の繊維分の含有率を変化させて脱水したもので、10%の繊維分含有率で3%、20%の繊維分含有率で6%程度ケーキ含水率が減少している。
【0043】
例えば、初沈汚泥の繊維状物が40%で、繊維状物以外の固形物が60%で、余剰汚泥の繊維状物が0%で、繊維状物以外の固形物が100%のとき、初沈汚泥と余剰汚泥とを1:0.8の割合で混合すると、混合汚泥の繊維状物の割合は、(40/180)×100=22(%)となり、脱水機で含水率を十分に低減させることができる。
【0044】
一般的に、下水処理場で発生する脱水ケーキは、含水率が80%以下であると、搬送し易く、焼却、埋立等の後処理にかかるランニングコストも低減できる。
【0045】
そして、被処理水の性状変化も考慮して、混合汚泥中の繊維状物含有率が20%以上であると、脱水ケーキ含水率を80%以下に抑えることが可能となる。
【0046】
図5は、トイレットペーパーを添加した脱水ケーキの含水率と、回収した繊維状物を添加した脱水ケーキの含水率とを比較したグラフであり、横軸を添加率(%/TS)、縦軸を含水率低減効果(%)としている。
【0047】
図5に示すように、双方とも添加率の上昇に伴って脱水ケーキの含水率が低下しており、その傾向は酷似している。
【0048】
したがって、回収した繊維状物は、トイレットペーパーの繊維分と同等の性状を有するもので、脱水助材として好ましいことが分かる。
【0049】
次に、
図1における各部分について説明する。
【0050】
〔夾雑物除去部:夾雑物除去工程〕
下水処理場に流入する汚水(汚泥)中に回収範囲上限以上の大きな夾雑物(固形物)が混入している場合、大きな夾雑物は脱水助材として不適切であり、次の調整部5における繊維分の調整の妨げとなるため、回収範囲上限以上の大きな夾雑物と、回収対象の繊維分を含むSSおよび小さな夾雑物とを分離し、大きな夾雑物を除去する。
【0051】
したがって、夾雑物除去部3としては、回収範囲上限以上の夾雑物を除去できるものであればどのようなものでもよく、バースクリーン、ふるいまたはスクリーンドラムといったものを使用(利用)できる。
【0052】
なお、汚水(汚泥)中に回収範囲上限以上の大きな夾雑物(固形物)が混入していない場合には、夾雑物除去部3を省略してもよい。
【0053】
〔調整部:調整工程〕
下水処理場に流入した汚水中の固形物には、脱水助材として回収するトイレットペーパーの主成分である難分解性有機物の植物性繊維分(繊維状物)以外にも、食品残渣由来の易分解性有機物を主成分とした夾雑物、SSが混在しており、それらが繊維分と絡み合っている場合がある。
【0054】
したがって、調整部5において、繊維分の絡まりをほどくとともに、回収範囲以上の繊維分の長さを整え、夾雑物またはSSを細かく破砕するなどして、汚泥を調整する必要がある。
【0055】
なお、調整時に希釈水を注水して、汚泥濃度を低くした状態で細分化してもよく、また、回収対象の繊維分を含む夾雑物およびSSをすり潰し機で細分化してもよい。
【0056】
繊維分の多くは、繊維分同士または夾雑物と絡み合っているため、そのままでは分離部7で回収範囲下限未満の小さな夾雑物を除去することが困難であるため、繊維分をすり潰し機で細分化し、繊維分と夾雑物とを容易に分離できるようにする。
【0057】
そして、主な夾雑物が食品残渣である場合、すり潰すことによって食品残渣内部の繊維分を抽出できるとともに、その他の有機物を細分化できる。
【0058】
すり潰し機としては、円板形、ローラー型、擂り粉木等、繊維分を連続的にすり潰して細分化できるものであればどのようなものでも構わないが、難分解性有機物および易分解性有機物をともに粉状に粉砕すると、脱水助材として有効な繊維分の分離が困難となるため、易分解性有機物である固形分のみをすり潰せるような装置が望ましい。
【0059】
〔分離部:分離工程〕
分離部7では、分離機を用いて調整部5で調整した繊維分をふるいに掛け、所定の繊維分と、回収範囲下限未満の小さな夾雑物等とを分離する。
【0060】
繊維分は調整部5で調整され、繊維分と絡み合っていた夾雑物等はほどけているので、回収範囲内の繊維分が残るようにふるいに掛ければ、所定の性状の繊維分のみが回収できる。
【0061】
細分化した繊維分をふるいに掛けると、細分化する前には繊維分と絡み合っていた夾雑物等が取り除かれ、同時に回収範囲未満の小さな繊維分も取り除かれる。
【0062】
分離を行う際に、洗浄水を噴射して水圧により夾雑物を分離する分離補助や、浸漬させることによって繊維分と夾雑物とをほどく分離補助、あるいは、複数の転動体によって分離時の繊維と夾雑物の絡まりを防止する分離補助等を用いてもよい。
【0063】
洗浄水を噴射することにより、繊維分に付着したわずかな夾雑物または回収範囲未満の小さな繊維分をさらに取り除くことができ、また、分離時に細分化された汚泥を浸漬させることにより、繊維間内部に付着したわずかな夾雑物または回収範囲未満の小さな繊維分を引き離し、確実に分離することができ、また、複数の転動体を細分化された汚泥に混入することにより、分離部7での繊維同士の絡み付きを防止するとともに、調整汚泥をほぐす作用を奏するので、分離効率が向上する。
【0064】
なお、分離部7から排出される夾雑物を含む排水を清澄ろ過等で固液分離し、清澄水を洗浄水として再利用できる。
【0065】
分離部7としては、円筒型、ベルト型、振動ふるい型等、所定の性状の繊維分と細分化された夾雑物とを分離できるものであればどのようなものでも構わない。
【0066】
〔回収部:回収工程〕
回収部9では、分離部7によって分離した所定の性状の繊維分を連続的に回収する。
【0067】
回収部9は分離部7の型式に適合したものを適宜選定し、例えば、分離部7(分離機)が円筒型である場合、回収部9は分離機に内挿したスクリューコンベア方式を採用することができ、また、分離部7(分離機)がベルト型である場合、回収部9はろ過面に押圧したスクレーパを採用することができる(分離部7から連続的に排出できるものであれば、どのようなものでも構わない。)。
【0068】
回収した所定範囲内の繊維分は脱水助材として、後述する混合槽に送られ、凝集の核として難脱水汚泥と混合する。
【0069】
なお、分離部7で分離された夾雑物等の固形物の大部分は易分解性有機物で構成されており、後述する反応槽に送れば、長時間の生物処理を必要とせずに汚泥減容化に貢献できる。
【0070】
〔計測部:計測工程〕
計測部11は、回収部9で回収した繊維状物の濃度を濃度計で測定し、また、回収部9に回収した繊維状物を含む液体の量を液位計で測定して制御部17に出力する。
【0071】
〔制御部〕
制御部17は、各入力および設定値に基づいて、各部を制御する。
【0072】
次に、繊維状物回収装置Aの動作の一例について説明する。
【0073】
なお、制御部17に、回収する繊維状物の濃度が3%〜5%に設定されているものとする。
【0074】
ポンプ1によって送られてくる被処理物(汚泥)は、回収範囲上限以上の大きな夾雑物(固形物)を挟雑物除去部3で除去された後、調整部5によって繊維分の長さが整えられるとともに、夾雑物等が細かく破砕される。
【0075】
調整部5で調整された汚泥は、分離部7によって分離され、回収部9で回収される。
【0076】
分離部7で分離された挟雑物は、反応槽に送られる。
【0077】
回収部9で回収された繊維状物は、計測部11によって濃度と、液位(量)とが計測され、計測部11によって計測された値は制御部17に送られる。
【0078】
制御部17は、計測部11から送られてくる濃度によって繊維状物の濃度が分かり、計測部11から送られてくる濃度と液位とによって繊維状物の量が分かるので、繊維状物の濃度が3%〜5%となるように分離部7を制御するとともに、繊維状物の要求量に基づいて、要求量の繊維状物を送るように、流量計15からの計測値に基づいてポンプ13を制御する。
【0079】
上述した調整部5、分離部7、回収部9および計測部11などをユニット化して一つの装置とすることができ、その装置の中に、夾雑物除去部3を含ませてもよい。
【0080】
図6は繊維状物回収装置の第1実施例の構成を示す説明図である。
【0081】
繊維状物回収装置Aは、主に、調整部5(すり潰し機21)と、分離部7(分離機51)と、回収部9と、計測部11とで構成されている。
【0082】
調整部5は、生汚泥を細分化するすり潰し機21で構成され、すり潰し機21は、対向した固定ディスク23と、回転ディスク25とで構成され、回転円筒状のスクリーンドラム53で構成した分離部7の端部内に設けられている。
【0083】
すり潰し機21から排出された調整汚泥は、スクリーンドラム53の内面に立設したスクリュー羽根93によってスクリーンドラム53の一端(左端)側から他端(右端)へ搬送されつつ、細分化された夾雑物等がスクリーンドラム53のろ過面57から分離、排出され、所定の性状の繊維分はスクリュー羽根93によってスクリーンドラム53の他端まで搬送されて回収される。
【0084】
最初沈殿池から送られてきた生汚泥は繊維分と夾雑物とが絡み合っているため、調整部5で絡み合った繊維分を繊維長さ0.1mm〜0.5mm、繊維径1μm〜50μmの繊維分に調整する。
【0085】
生汚泥を希釈水で希釈し、微細化は回転ディスク25と固定ディスク23とを対向させたすり潰し機21で行われ、対向させた各ディスク23,25の内部に供給された生汚泥は、ディスク表面の粗く微小な凹凸によって微細化されながら外部に排出され、細分化された生汚泥は分離部7に送られる。
【0086】
調整部5の具体的な構成について詳述すると、すり潰し機21は外周部から中心に向かって内部に円錐状の凹部27を形成する円盤状の各ディスク23,25が回転可能に対向している。
【0087】
固定ディスク23は放射状のリブ31で分離機51に固定され、回転ディスク25は、中心部の供給口29に連結した供給管33から内部へ生汚泥が供給される。
【0088】
駆動機35からの動力はベルト等の動力伝達手段37を介して供給管33に伝達され、供給管33および回転ディスク25を回転させる。
【0089】
なお、必要に応じて供給管33および回転ディスク25の適所を、軸受等で支持する。
【0090】
対向する固定ディスク23と回転ディスク25との中心部の容積は広く、外周に向かうほど容積が狭くなっており、固定ディスク23と回転ディスク25との外周端の隙間は1mm以下に設定されていることにより、中心部に供給された生汚泥は供給手段(図示せず)による圧入圧力と回転ディスク25の遠心作用とによって外周側に移送されながら各ディスク23,25の内面で、長さ0.1mm〜30mmであった繊維が、長さ0.1mm〜5mmに調整される。
【0091】
なお、この実施例では、すり潰し機21へ供給する生汚泥に希釈水を供給し、調整部5での作用効果を増大させている。
【0092】
具体的には、生汚泥中の絡み合っていた繊維分と夾雑物とは、希釈水中でのすり潰し作用によってほどけ、容易に分離できるようになるため、大きな夾雑物は、細分化によって除去しやすい大きさに砕かれる。
【0093】
すり潰し機21を分離機51に内設して一体化しているので、各ディスク23,25の外部に排出された調整汚泥は、スクリーンドラム53で構成した分離機51で連続的に分離が可能となる。
【0094】
なお、処理量が多い場合は、各ディスク23,25の径を大きくする、あるいは、各ディスク23,25を多段に併設する等、周知の技術で適宜対応できる。
【0095】
また、
図7のように、すり潰し機21を分離機51の機外に設置する場合は、各ディスク23,25をケーシング39で囲繞し、移送管41を介して調整汚泥を分離機51に送れば、連続的に調整・分離工程が可能となる。
【0096】
この実施例の分離機51は、回転円筒状のスクリーンドラム53で構成している。
【0097】
スクリーンドラム53の左端部の供給部55に供給された調整汚泥は、スクリーンドラム53の内面に中心方向に向かって立設したスクリュー羽根93によってスクリーンドラム53の右端に搬送されつつ、細分化された夾雑物等がスクリーンドラム53のろ過面57(多数の細孔)から分離、排出される。
【0098】
回転円筒状のスクリーンドラム53のろ過面57の下方には分離槽61を配設しており、スクリーンドラム53のろ過面57を通過した夾雑物等の易分解性有機物を集積している。
【0099】
スクリーンドラム53の両端には軸63が延設されており、この軸63によってスクリーンドラム53を回転可能に軸支している。
【0100】
スクリーンドラム53の内部にすり潰し機21を設ける場合には、軸63と、すり潰し機21の供給管33とでスクリーンドラム53を回転可能に軸支し、駆動機65からの動力はベルト等の動力伝達手段67を介してスクリーンドラム53に伝達され、スクリーンドラム53を回転させる。
【0101】
スクリーンドラム53の外部にすり潰し機21を設ける場合(
図7に示す場合)には、軸63と、移送管41とでスクリーンドラム53を回転可能に軸支し、駆動機65からの動力はベルト等の動力伝達手段67を介してスクリーンドラム53に伝達され、スクリーンドラム53を回転させる。
【0102】
この実施例では、分離槽61の壁板をスクリーンドラム53に重複する程度まで高くして、内部に浸漬水を貯水することでスクリーンドラム53の一部を浸漬させ、スクリーンドラム53の抽出部59a近傍を円錐状に漸減させていることで、繊維間内部に付着しているわずかな夾雑物または回収範囲未満の小さな繊維分を、浸漬水中でほぐしながら分散させ、水とともに分離槽61へ重力分離する作用を高めることができる。
【0103】
なお、分離中の調整汚泥に洗浄水を噴射する洗浄機構69を設けても同等の効果が見込める。
【0104】
分離槽61には返送管71が連結されており、分離槽61に分離、排出された易分解性有機物を主とする夾雑物は重力濃縮槽に返送される。
【0105】
反応槽の前段で難分解性有機物である植物繊維を主とした繊維分を抽出しており、反応槽では食品残渣由来の易分解性有機物の割合が高くなることにより、生物処理に要する反応時間が短時間で済み、下水処理場全体の処理効率が向上する。
【0106】
スクリーンドラム53のろ過面57から分離されずにスクリーンドラム53の内部に残留する所定の性状の繊維分は、スクリュー羽根93によってスクリーンドラム53の右端まで搬送される。
【0107】
この実施例の回収部9は、回転円筒型のスクリーンドラム53に適合するように、スクリーンドラム53の内部の繊維分を搬送するスクリュー羽根93としている。
【0108】
スクリーンドラム53の内面にスクリュー羽根93を螺旋状に掛け回して立設し、スクリーンドラム53の回転に伴って残留繊維分を抽出部59aまで搬送して回収槽97に貯留する。
【0109】
なお、回転円筒状のスクリーンドラム53の場合、軸63にスクリュー羽根を掛け回したスクリュー軸を内挿して回収部9として使用してもよい。
【0110】
この実施例の計測部11は、回収槽97に設置した濃度計99Aと、液位計99Bとによって構成されている。
【0111】
濃度計99Aは繊維状物の濃度を測定するものであり、計測信号は、制御部17に送られる。
【0112】
液位計99Bは回収槽97内の繊維状物を含む液体の量(液位)を測定するものであり、計測信号は、制御部17に送られる。
【0113】
回収された繊維分は、短時間で腐敗する食品残渣由来の易分解性有機物がないので、特別な処理および装置を必要とせず、長時間の保管が可能となる。
【0114】
この実施例においては、スクリーンドラム53の回転数を速くすることで、すなわち、調整された汚泥がスクリーンドラム53内に滞在する時間を短くすることにより(ろ過面57を通過する繊維分を少なくすることにより)、回収する繊維分(繊維状物、脱水助材)の回収率を上げることができ、また、スクリーンドラム53の回転数を遅くすることで、すなわち、調整された汚泥がスクリーンドラム53内に滞在する時間を長くすることにより(ろ過面57を通過する繊維分を多くすることにより)、回収する繊維分の回収率を下げることができる。
【0115】
また、スクリーンドラム53の回転数を一定とし、洗浄機構69から汚泥に向けて噴射する洗浄水の噴射量を多くしたり、洗浄機構69から汚泥に向けて噴射する洗浄水の噴射圧を高くすることで、すなわち、ろ過面57を通過する繊維分を多くすることにより、回収する繊維分の回収率を下げることができ、また、スクリーンドラム53の回転数を一定とし、洗浄機構69から汚泥に向けて噴射する洗浄水の噴射量を少なくしたり、洗浄機構69から汚泥に向けて噴射する洗浄水の噴射圧を低くすることで、すなわち、ろ過面57を通過する繊維分を少なくすることにより、回収する繊維分の回収率を上げることができる。
【0116】
また、スクリーンドラム53の回転数、洗浄機構69から汚泥に向けて噴射する洗浄水の噴射量、洗浄機構69から汚泥に向けて噴射する洗浄水の噴射圧の少なくともいずれかを変えることにより、回収する繊維分の回収率を変化させることができる。
【0117】
図8は繊維状物回収装置の第3実施例の構成を示す説明図である。
【0118】
図8に示す実施例はスクリーンドラム53の抽出部59bを上方に傾斜させた状態に配設しているので、すり潰し機21から排出された調整汚泥は、浸漬水でほぐされて分散し、分離機51のスクリーンドラム53で小さな夾雑物を分離、排出しつつ、所定の性状の繊維分をスクリュー羽根93で抽出部59bへ搬送し、回収槽97に集積する。
【0119】
分離機51が傾斜しているため、スクリーンドラム53の抽出部59b近傍が浸漬されておらず、浸漬による洗浄・分散効果と、抽出部59b近傍での重力分離作用により、
図6の実施例と同様の効果が得られる。
【0120】
その他の構成は、
図6に示す実施例と同様である。
【0121】
図9は繊維状物回収装置の第4実施例の構成を示す説明図である。
【0122】
回転円筒状のスクリーンドラム53の内部に混入させた複数の転動体73は、スクリーンドラム53の内部ですり潰し機21から排出された調整汚泥と混合し、分離部7での繊維同士の絡み付きを防止するとともに、調整汚泥をほぐす作用を奏するので、分離効率が向上する。
【0123】
転動体73は金属、合成ゴム、樹脂等の重量物であれば、材質を限定しないが、スクリーンドラム53の内部で搬送されながら転がるため、振動や騒音の観点から衝撃・振動吸収性に優れた低反発ゴムが望ましい。
【0124】
分離機51は、所定の性状の繊維分を回収する抽出部59cをスクリーンドラム53の円筒面に設け、抽出部59cの開孔を繊維分より大きく、かつ、転動体73の径よりも小さくすることで繊維分のみを抽出できる。
【0125】
転動体73は抽出部59cからさらに搬送され、スクリーンドラム53の右端部から転動体槽75に排出される。
【0126】
転動体槽75に貯留された転動体73は、公知の返送手段77によって循環管79を介してスクリーンドラム53内のすり潰し機21側に供給される。
【0127】
必要に応じて、転動体73を洗浄してもよく、その他の構成は、
図6に示す実施例と同様である。
【0128】
図10は繊維状物回収装置の第5実施例の構成を示す説明図である。
【0129】
回転円筒状のスクリーンドラム43と、このスクリーンドラム43の内壁に摺接しながら回転するローラー(摺接部材)45とで構成したすり潰し機21で汚泥を細分化し、調整汚泥をベルト型の分離機51に供給し、調整汚泥を抽出部59dまで搬送する間に夾雑物を分離し、抽出部59dでスクレーパ95によって所定の繊維分を抽出する。
【0130】
すり潰し機21は、一方が閉塞された筒状のケーシング47に、径方向に所定の間隔を設けてスクリーンドラム43を内挿し、スクリーンドラム43の内壁にローラー45を押圧しながら摺接回転させている。
【0131】
スクリーンドラム43の開口部中央には、供給管33が連結され、汚泥が供給される。
【0132】
駆動機35からの動力はベルト等の動力伝達手段37を介してローラー45に伝達され、ローラー45を回転させる。
【0133】
供給管33からスクリーンドラム43内に供給された汚泥は、ローラー45の押圧作用と遠心作用とによってすり潰されながら細分化され、スクリーンドラム43の細孔を通過する。
【0134】
スクリーンドラム43とケーシング47との間に移送された調整汚泥は、ケーシング47に設けた移送管49を経て分離機51へ供給される。
【0135】
なお、ローラー45をスクリーンドラム43の内壁に摺設させているが、同様の効果を得るものであれば、摺接部材は限定されない。
【0136】
分離機51の構成は、複数のロール81にろ過面85を有した無端スクリーンベルト83を掛け回し、無端スクリーンベルト83の上部(ろ過面85)に調整汚泥を供給し、ロール81を駆動して小さな夾雑物を分離しながら無端スクリーンベルト83を走行させる。
【0137】
ろ過面85の下方には分離槽61を配設し、濾過された小さな夾雑物が貯留される。
【0138】
分離槽61には返送管71を連結し、分離槽61に分離、排出された易分解性有機物を主とする夾雑物を反応槽に返送する。
【0139】
必要に応じてろ過面85を再生する洗浄装置87を適所に配設する。
【0140】
洗浄水は、分離槽61から清澄ろ過等で夾雑物を分離したろ液を用いてもよい。
【0141】
調整汚泥の供給部91には越流防止用のカバー89を設け、調整汚泥を浸漬させるようにしてもよい。
【0142】
回収部9として、無端スクリーンベルト83の抽出部59dにスクレーパ95を押圧し、無端スクリーンベルト83の上面に残留した所定の繊維分をスクレーパ95で掻き取る。
【0143】
掻き取られた繊維分は、回収槽97に貯留される。
【0144】
調整部(すり潰し機)、分離部(分離機)、回収部は様々な組み合わせで使用することが可能で、仕様や処理場に応じて適宜選択できる。
【0145】
この実施例においては、無端スクリーンベルト83の走行速度を速くすることで、すなわち、調整された汚泥が無端スクリーンベルト83上に滞在する時間を短くすることにより(ろ過面85を通過する繊維分を少なくすることにより)、回収する繊維分(繊維状物、脱水助材)の回収率を上げることができ、また、無端スクリーンベルト83の走行速度を遅くすることで、すなわち、調整された汚泥が無端スクリーンベルト83上に滞在する時間を長くすることにより(ろ過面85を通過する繊維分を多くすることにより)、回収する繊維分の回収率を下げることができる。
【0146】
また、無端スクリーンベルト83の走行速度を一定とし、洗浄機構69から汚泥に向けて噴射する洗浄水の噴射量を多くしたり、洗浄機構69から汚泥に向けて噴射する洗浄水の噴射圧を高くすることで、すなわち、ろ過面85を通過する繊維分を多くすることにより、回収する繊維分の回収率を下げることができ、また、無端スクリーンベルト83の走行速度を一定とし、洗浄機構69から汚泥に向けて噴射する洗浄水の噴射量を少なくしたり、洗浄機構69から汚泥に向けて噴射する洗浄水の噴射圧を低くすることで、すなわち、ろ過面85を通過する繊維分を少なくすることにより、回収する繊維分の回収率を上げることができる。
【0147】
また、無端スクリーンベルト83の走行速度、洗浄機構69から汚泥に向けて噴射する洗浄水の噴射量、洗浄機構69から汚泥に向けて噴射する洗浄水の噴射圧の少なくともいずれかを変えることにより、回収する繊維分の回収率を変化させることができる。
【0148】
この発明の繊維状物回収装置によれば、濃度が一定の範囲内の繊維状物を、被処理物(汚泥)から常時回収することができる。
【0149】
したがって、脱水性が日間変動等で刻々と変化する初沈汚泥を脱水機の前段で濃縮せずに直接脱水機に供給することが可能となり、下水処理場で迅速な汚泥処理を行うことができるとともに、濃縮設備を削減することができ、また、安定的に低含水率の脱水ケーキを生成することができる。
【0150】
また、下水処理場の外部から脱水助材を持ち込んで添加する必要がなくなることにより、イニシャルコストおよびランニングコストを低減することができる。
【0151】
また、汚泥を細分化する調整を行っているので、同一性状の繊維を回収することができる。
【0152】
また、回収する繊維状物の回収量(濃度)を制御部17に設定できるので、回収する繊維状物の回収量を容易に調節することができる。
【0153】
図11はこの発明の繊維状物回収装置を適用した汚泥脱水処理システムの構成を示すブロック図である
【0154】
図11において、汚泥脱水処理システムBは、繊維状物を含有する被処理水を重力沈殿させる最初沈殿池101と、この最初沈殿池101から供給される一次処理水を生物処理する反応槽103と、この反応槽103から供給される処理水を重力沈殿させ、上澄み水を河川などへ放流する最終沈殿池105と、最初沈殿池101に沈殿した初沈汚泥をさらに濃縮させる重力濃縮槽107と、最初沈殿池101の初沈汚泥の一部から繊維状物(脱水助材)を回収する繊維状物回収装置Aと、重力濃縮槽107の初沈汚泥を混合槽109へ供給するポンプ111と、重力濃縮槽107から混合槽109へ供給した初沈汚泥の供給量を検出する流量センサ113と、最終沈殿池105に沈殿した余剰汚泥をさらに濃縮させる機械濃縮槽115と、この機械濃縮槽115の余剰汚泥を混合槽109へ供給するポンプ117と、機械濃縮槽115から混合槽109へ供給した余剰汚泥の供給量を検出する流量センサ119と、重力濃縮槽107から初沈汚泥が供給され、機械濃縮槽115から余剰汚泥が供給されるとともに、繊維状物回収装置Aから繊維状物(脱水助材)が供給される混合槽109と、この混合槽109から混合汚泥が供給される凝集混和槽121と、この凝集混和槽121へ凝集剤を供給する凝集剤供給装置123と、凝集混和槽121の凝集汚泥を脱水機127へ供給するポンプ125と、凝集混和槽121からの凝集汚泥を脱水し、脱水ケーキを生成する脱水機127とを備えている。
【0155】
各センサ113,119の検出信号は繊維状物回収装置Aの制御部17に送られ、各部は繊維状物回収装置Aの制御部17によって制御される。
【0156】
汚泥脱水処理システムBにおいては、繊維状物回収装置Aによって繊維状物が回収される。
【0157】
そして、初沈汚泥と余剰汚泥とを混合して脱水ケーキを生成するときは、混合槽109にそれぞれの汚泥を計量しながら送り、脱水ケーキを生成するために必要な、混合汚泥に対する繊維状物となるように、例えば、混合汚泥に対する繊維状物の割合が20%以上となるように繊維状物を混合槽109に供給する。
【0158】
このようにして脱水ケーキを生成すると、低含水率の脱水ケーキを生成することができる。
【0159】
なお、繊維状物回収装置Aで分離された夾雑物は重力濃縮槽107へ返送され、繊維状物回収装置Aで分離された液分は、反応槽103へ返送される。