(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
円筒状であって、前記円筒状の外周には、軸方向に長く周方向にNS着磁がなされた棒状の複数の外周用永久磁石を周方向に間隔をあけて、かつ周方向に隣接する前記外周用永久磁石の対向する磁極が同極となるように配置すると共に周方向に一直線状に配置される複数のセンタ側突出部を有し、前記外周用永久磁石の配置位置の内周側には、センタ巻線部を有する軟磁性体からなるセンタヨークと、
円筒状であって、中心軸を中心として周方向に配置される複数の巻線部と、前記外周用永久磁石に対向する位置に配置される複数の溝部と、前記センタ側突出部に対向して軸方向に半ピッチずれて配置されると共に前記溝部を周方向に挟むアウタ側突出部と、を有する軟磁性体からなるアウタヨークと、
を有し、
前記センタヨークの内周には、軸方向に長く周方向と直交する方向にNS着磁がなされた板状の複数の内周用永久磁石を周方向に、かつ隣接する前記内周用永久磁石では着磁方向が反対になるように、かつ前記外周用永久磁石の配置位置と前記内周用永久磁石の配置位置とが交互になるように配置され、
前記センタヨークと前記アウタヨークのいずれか一方または両方がリニアに移動する、
ことを特徴とするリニア発電装置。
円筒状であって、前記円筒状の外周には、軸方向に長く周方向にNS着磁がなされた棒状の複数の外周用永久磁石を周方向に間隔をあけて、かつ周方向に隣接する前記外周用永久磁石の対向する磁極が同極となるように配置すると共に周方向に一直線状に配置され、かつ前記外周用永久磁石を挟む設置位置が隣接するものの間で軸方向に半ピッチずれて配置される複数のセンタ側突出部を有し、前記外周用永久磁石の配置位置の内周側には、センタ巻線部を有する軟磁性体からなるセンタヨークと、
円筒状であって、中心軸を中心として周方向に配置される複数の巻線部と、前記外周用永久磁石に対向する位置に配置される複数の溝部と、前記センタ側突出部に対向して周方向に一直線状に配置されると共に前記溝部を周方向に挟むアウタ側突出部と、を有するアウタヨークと、
を有し、
前記センタヨークの内周には、軸方向に長く周方向と直交する方向にNS着磁がなされた板状の複数の内周用永久磁石を周方向に、かつ隣接する前記内周用永久磁石では着磁方向が反対になるように、かつ前記外周用永久磁石の配置位置と前記内周用永久磁石の配置位置とが交互になるように配置され、
前記センタヨークと前記アウタヨークのいずれか一方または両方がリニアに移動する、
ことを特徴とするリニア発電装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、磁束は、磁力線の束であり、磁路は、磁力線の通り道である。また、磁束によって磁路が形成されるという表記は、磁力線によって磁路が形成されると置き換えてもよい。なお、以下の説明では、「リニア発電装置」を単に「発電機」と称する。
【0017】
本発明の実施の形態に係る発電機1は、
図1に示すように、センタヨーク2と、アウタヨーク3と、発電した電力を出力する出力端子4a,4bと、を外観的な構成として有する。発電機1は、センタヨーク2がアウタヨーク3内を往復運動(振動)することによって発電を行う。また、以下の説明で、軸方向とは、センタヨーク2またはアウタヨーク3の上下方向(
図1では左右方向)を指し、周方向とは、軸方向を中心とした円周方向であり、センタヨーク2またはアウタヨーク3の外周または内周に沿う方向をいう。なお、センタヨーク2の「センタ」は、中心という意味であり、アウタヨークの「アウタ」は外側という意味であるが、このセンタヨーク2が外側に来て、アウタヨーク3が中心に来る場合もあるので、「センタ」、「アウタ」は仮の名称である。
【0018】
発電機1は、
図1に示すように、センタヨーク2の端部にセンタヨーク2と一体的に設けられた往復運動するシリンダ50と、他の部材に固定されたピストン51とを有するリニア駆動部を設置する。このリニア駆動部は、シリンダ50に送気装置52から空気などの気体が送り込まれることで、シリンダ50が往復運動する。これによりシリンダ50に繋がるセンタヨーク2が往復運動する。
【0019】
たとえば、
図2に示すように、排気孔66の排気弁67を閉じ、排気孔62の排気弁63を開放し、送気管60から送気孔61に送気すると、ピストン51が固定されているため、シリンダ50は、
図2の紙面の左方向に動き始める。
【0020】
その後、
図3に示すように、シリンダ50がさらに動き、ピストン50の先端部51aが排気孔62を通過すると、シリンダ50内の気体は、排気孔62から外部に排気される。これにより、シリンダ50の動きはいったん停止する。
【0021】
その後、
図4に示すように、排気孔62の排気弁63を閉じ、排気孔66の排気弁67を開放し、送気管64から送気孔65に送気すると、ピストン51が固定されているため、シリンダ50は、
図4の紙面の右方向に動き始める。
【0022】
その後、
図5に示すように、シリンダ50がさらに動き、ピストン50の先端部51aが排気孔66を通過すると、シリンダ50内の気体は、排気孔66から外部に排気される。これにより、シリンダ50の動きはいったん停止し、
図2の位置に戻る。
【0023】
このようにして、シリンダ50は、送気装置52からの送気によって、往復運動を繰り返して行うことができる。なお、
図1〜
図5に示すシリンダ50、ピストン51、送気装置52、送気管60,64、送気孔61,65、排気孔62,66、排気弁63,67などの構造については模式的に図示してあり、様々な構造のものを適用することができる。他の例としては、送排気される空間がセンタヨーク2の内部ではなく、センタヨーク2とアウタヨーク3との間の空間とする例がある。なお、シリンダ50の往復運動に伴い、送気管60,64は柔軟に変形する(曲がる)ものとする。
【0024】
発電機1のその他の例としては、
図6に示すように、たとえば、センタヨーク2は、エンジンなどによって回転する円盤70に連結部71により連結されるアーム72によって往復運動するように構成される。なお、アウタヨーク3は台座部73などに固定されている。
【0025】
図7は、発電機1のセンタヨーク2とアウタヨーク3を軸方向(振動方向)から見た図を示している。
図7に対し、
図8は、
図7の発電機1のセンタヨーク2およびアウタヨーク3の構成部材を分割して示している。
図8に示す分割の状態は、実際に分割可能であるか否かとは関係が無く、説明の便宜上において、分割して説明した方が分かり易い場合の説明上の分割の仕方を示している。たとえば、
図7において、アウタヨーク3は、
図8において、アウタヨーク3−1、3−2、3−3、3−4に分割される。このときアウタヨーク3は、実際には一体に成形されており、分割不可能であってもよい。このように、以下の説明では、各部材を分割して説明した方が分かり易い場合に、各部材の符号(たとえばアウタヨーク3)に枝番号を付与(たとえばアウタヨーク3−1、3−2、3−3、3−4)して説明することとする。さらにセンタヨーク2の8つの永久磁石10a,10bについても分割して説明した方が分かり易い場合には、対向するアウタヨーク3−1〜3−4の永久磁石24−1〜24−4に対応させて永久磁石10a−1〜10a−4,10b−1〜10b−4と記すことにする。
【0026】
発電機1のセンタヨーク2は、
図7、
図9に示すように、永久磁石10a,10bとセンタコア11とセンタ側突出部11aと巻線部25bとを有し、円筒状に形成されている。すなわちこのセンタヨーク2は、軟磁性体からなるセンタコア11を有し、円筒状の外周aに露出するように軸方向に沿い周方向にNS着磁がなされた棒状の複数の永久磁石10aと、円筒状の内周bに軸方向に沿い周方向に直交する方向にNS着磁がなされた板状の複数の永久磁石10bと、センタコア11の外周aからさらに外側に突出するセンタ側突出部11aと、永久磁石10aの配置位置の内周側に配置される巻線部25bとを有する。永久磁石10aは、センタヨーク2の周方向に複数等間隔で配置される。この実施の形態では4つの永久磁石10aが配置されている。なお、永久磁石10aは、隣接する永久磁石10aの対向する極が同極となるように配置されている。永久磁石10bは、センタヨーク2の内周bの周方向に複数等間隔で配置される。この実施の形態では4つの永久磁石10bが配置されている。なお、永久磁石10bは、隣接する永久磁石10bでは着磁方向が反対になるように、かつ永久磁石10aの配置位置と永久磁石10bの配置位置とが交互になるように配置されている。
【0027】
また、センタヨーク2は、軸方向から見て周方向に複数等間隔で配置されるセンタコア11を有し、各センタコア11は、軸方向に等間隔で平行に配置されると共に周方向に沿い、かつ外周aから径方向外方に突出する複数のセンタ側突出部11aを有する。また、センタヨーク2は、中心部に空洞部12を有し、空洞部12の内壁が内周bとなる。空洞部12は、効率の良い往復運動のために、センタヨーク2の質量を軽量化するために設けるものである。空洞部12には、上述した永久磁石10bと巻線部25bが配置される。したがって、空洞部12の永久磁石10bと巻線部25bが配置されていない部分については、そのまま空洞としておくことが好ましいが、当該部分をアルミニュームなどの軽金属または合成樹脂などの軽量かつ非磁性体の材料で充填してもよい。
【0028】
発電機1のアウタヨーク3は、
図7に示すように、センタヨーク2が貫通する貫通孔20を有する。アウタヨーク3は、軟磁性体からなる円筒状であって軸を中心として等角度毎に軸方向に沿う複数の非磁性体部21を有する。この実施の形態では非磁性体部21は空洞部となっており、巻線部25aが配置されている。さらにアウタヨーク3は、内周b1から非磁性体部21にそれぞれ至る複数の溝部22を有する。さらにアウタヨーク3は、軸方向から見てこの実施の形態では4つに分割された軟磁性体からなる複数のアウタコア23を有し、センタヨーク2のセンタ側突出部11aに対向して軸方向に等間隔で平行に配置されると共に周方向に沿い、かつ内周b1から径方向内方に突出する複数のアウタ側突出部23aを有する。このようなセンタ側突出部11aおよびアウタ側突出部23aを形成することで、磁束の密度を上げ、吸引力を高めることができる。
【0029】
図7に示すアウタ側突出部23aは、ひとつの溝部22とこの溝部22の隣に位置する溝部22との間の周方向の中間点で半ピッチずれて配置されるものである。すなわち、
図8に示すように、アウタヨーク3を4分割した状態でアウタヨーク3−1、3−2、3−3、3−4として示すとき、アウタヨーク3−1および3−3のアウタ側突出部23a−1および23a−3(たとえばタイプA)とアウタヨーク3−2および3−4のアウタ側突出部23a−2および23a−4(たとえばタイプB)とでは軸方向で見た場合、そのアウタ側突出部23aの位置が半ピッチずれている。
【0030】
この半ピッチずれている状態について
図10と
図11を参照しながらさらに詳しく説明する。
図10は、タイプAであるアウタヨーク3−1および3−3の斜視図であり、
図11は、タイプBであるアウタヨーク3−2および3−4の斜視図である。
図10、
図11からも分かるように、たとえば
図10の最も上方のアウタ側突出部23a−1およびアウタ側突出部23a−3は、外方に露出している一方、
図11の最も上方のアウタ側突出部23a―2および23a−4は、外方に露出する位置ではなく内方側に位置し、両者を軸方向で見た場合、アウタ側突出部23は半ピッチずれて配置される状態となる。このように、センタヨーク2が軸方向に振動するので、その動きに対し、コギングが生じないようにするため、アウタヨーク3は軸方向に半ピッチずれたアウタ側突出部23aを有する構成となっている。
【0031】
また、アウタヨーク3は、
図7、
図8に示すように、溝部22には軸方向に伸びた永久磁石24が配置されている。この永久磁石24はセンタ側ヨーク2の永久磁石10aとは対向するように配置され、かつその極性が周方向に見て互いに逆となるようにNS着磁がなされている。さらにアウタヨーク3は、非磁性体部21に巻き回される巻線部25aを有する。巻線部25aを形成した後、合成樹脂などの非磁性材料で非磁性体部21を埋めるようにしてもよい。
【0032】
たとえばセンタヨーク2のセンタコア11とセンタ側突出部11aは一体成形により製造され、アウタヨーク3のアウタコア23とアウタ側突出部23aは一体成形により製造される。永久磁石10a,10bはセンタコア11に接着され、永久磁石24はアウタコア23に接着されているが、センタコア11やアウタコア23の材料によっては永久磁石10a,10bとセンタコア11をインサート成形またはアウトサート成形により、永久磁石24とアウタコア23をインサート成形またはアウトサート成形してもよい。
【0033】
図12は、
図8に示すアウタヨーク3−1とアウタヨーク3−2との分割点からセンタヨーク2のセンタ側突出部11aの1つを周方向に展開した状態(実線)と、このセンタ側突出部11aに対向するアウタヨーク3のアウタ側突出部23a−1,23a−2,23a−3,23a−4(破線)とを模式的に示している。
図12の白抜きの矢印は、センタヨーク2がアウタヨーク3内を移動する方向を示している。
【0034】
なお、以下の説明では、説明の便宜上、
図12に図示した状態に基づき、センタ側突出部11aがアウタ側突出部23a−2と対向可能な部分をセンタ側突出部11aの1段目、センタ側突出部11aがアウタ側突出部23a−3と対向可能な部分をセンタ側突出部11aの2段目、センタ側突出部11aがアウタ側突出部23a−4と対向可能な部分をセンタ側突出部11aの3段目、センタ側突出部11aがアウタ側突出部23a−1と対向可能な部分をセンタ側突出部11aの4段目と称することにより、センタ側突出部11aの部位を分けて説明することとする。
【0035】
図13は、センタ側突出部11aの2段目がアウタ側突出部23a−3と対向し、センタ側突出部11aの4段目がアウタ側突出部23a−1と対向している状態S1を示している。このときアウタ側突出部23a−2および23a−4はセンタ側突出部11aとは対向していない。
【0036】
状態S1では、
図14に示すように、センタ側突出部11aの2段目と、これに対向しているアウタ側突出部23a−3、およびセンタ側突出部11aの4段目と、これに対向しているアウタ側突出部23a−1との間で、互いの吸引力が最大になる。反対に、状態S1では、
図14に示すように、センタ側突出部11aの1段目と、これに対向していないアウタ側突出部23a−2、およびセンタ側突出部11aの3段目と、これに対向していないアウタ側突出部23a−4との間で、互いの吸引力が最小になる。
【0037】
この状態S1では、センタ側突出部11aとアウタ側突出部23a―1,23a―3とが対向しているため、センタヨーク2の永久磁石10a−1および10a−3の磁束は、アウタヨーク3の永久磁石24−1および24−3に吸引されやすくなり、永久磁石10a−1のN極→永久磁石24−1のS極→永久磁石24−1のN極→永久磁石10a−1のS極という磁路M1と、永久磁石10a−3のN極→永久磁石24−3のS極→永久磁石24−3のN極→永久磁石10a−3のS極という磁路M2が強い状態で形成される。また、状態S1では、センタヨーク2の永久磁石10a−2および10a−4の磁束は、その近くのセンタ側突出部11aがアウタ側突出部23a―2,23a―4と対向していないため、突出部が一部対向している隣接した位置の突出部に吸引される。すなわち永久磁石10a−2,10a−4の磁束はアウタヨーク3の永久磁石24−1および24−3に吸引されるので、永久磁石10a−4のN極→永久磁石24−1のS極→永久磁石24−1のN極→永久磁石10a−2のS極→永久磁石10a−2のN極→永久磁石24−3のS極→永久磁石10a−4のS極という磁路M3,M4が形成される。さらに、永久磁石10a−2,10a−4の磁束は、磁路M3,M4の形成に係る他に、自己の周囲に磁路M7b,M8bをそれぞれ形成する。このとき、磁路M7b,M8bの磁束密度は、磁路M3,M4の磁束密度よりも大きい。
【0038】
永久磁石10b−1,10b−2の磁束は、永久磁石10a−2の磁束に追加される。また、永久磁石10b−2,10b−3の磁束は、永久磁石10a−3の磁束に追加される。また、永久磁石10b−3,10b−4の磁束は、永久磁石10a−4の磁束に追加される。また、永久磁石10b−4,10b−1の磁束は、永久磁石10a−1の磁束に追加される。
【0039】
また、状態S1において、アウタ側突出部23a−2および23a−4は、センタ側突出11aと対向していないので、アウタヨーク3−2および3−4にある永久磁石24−2および24−4の磁束はそれぞれアウタヨーク3−2および3−4から外に出ず、巻線部25a−2を通過する磁路M5および巻線部25a−4を通過する磁路M6を形成する。
【0040】
ここで状態S1における巻線部25a−1および25a−3に係る磁束密度に着目すると、これらの巻線部25a−1および25a−3に係る磁束密度は、磁束がセンタヨーク2側に吸引されているために最小になる。一方、状態S1における巻線部25a−2および25a−4に係る磁束密度に着目すると、これらの巻線部25a−2および25a−4に係る磁束密度は、磁路M5、M6による磁束がそれぞれアウタヨーク3−2および3−4から外に出る程度がきわめて少なくなり各磁束密度は最大になる。
【0041】
また、状態S1における巻線部25b−1,25b−2,25b−3,および25b−4に係る磁束密度に着目すると、永久磁石10a―1,10a−3の磁束は、永久磁石24−1,24−3に吸引されるため、巻線部25b−1,25b−3を通る磁束はほとんど無く最小になる。一方、巻線部25b−2および巻線部25b−4に係る磁束密度は、巻線部25b−2,25b−4を磁路M7b,M8bがそれぞれ通るため最大になる。
【0042】
続いて状態S2では、
図15に示すように、センタ側突出部11aに対し、全てのアウタ側突出部23a−1〜23a−4が均等に対向している。しかしながらセンタ側突出部11aとアウタ側突出部23a−1〜23a−4との対向面積は、それぞれのアウタ側突出部23a−1〜23a−4において面積の半分ずつになる。これによれば、
図16に示すように、アウタヨーク3−1および3−3とセンタヨーク2との間で磁束の少ない磁路M10、M11、M12、M13が形成される。この磁路M10は、
図14に示す磁路M1に相当し、磁路M11は磁路M2に相当し、磁路M12は磁路M3に相当し、磁路M13が磁路M4に相当する。このとき、永久磁石10a−1,10a−3には、巻線部25b−1,25b−3を通過する磁路M18,M19が形成される。さらに、
図16に示すように、アウタヨーク3−2および3−4とセンタヨーク2との間で磁束の少ない磁路M14、M15、M16、M17が形成される。この各磁路M14、M15、M16、M17は、磁路M10、M11、M12、M13とほぼ同様な強度となっている。このとき、永久磁石10a−2,10a−4には、巻線部25b−2,25b−4を通過する磁路M7c,M8cが形成される。磁路M7c,M8cの磁束密度は、
図14に示す磁路M7b,M8bの磁束密度よりも小さい。磁路M18,M19,M7c,M8cの磁束密度はほぼ同じである。
【0043】
状態S2における巻線部25a−1〜25a−4に係る磁束密度に着目すると、これらの巻線部25a−1〜25a−4に係る磁束密度はほぼ均等になる。これにより、状態S1で最大の磁束密度であった巻線部25a−1および25a−3の磁束密度は減少し、状態S1で最小の磁束密度であった巻線部25a−2および25a−4の磁束密度は増加する。すなわち、磁路M5、M6は、約半分の磁束強度となる磁路M5a,M6aとなり巻線部25a−1,25a−3には新たな磁路であり磁路M5a,M6aと同じ程度の磁束密度になる磁路M7a,M8aが形成される。
【0044】
また、状態S2における巻線部25b−1,25b−2,25b−3,および25b−4に係る磁束密度に着目すると、巻線部25b−1には、磁路M18が通過し、巻線部25b−2には、磁路M7cが通過し、巻線部25b−3には、磁路M19が通過し、巻線部25b−4には、磁路M8cが通過する。状態S2では、巻線部25b−1〜25b−4を通過する磁束密度はほぼ同じである。すなわち、状態S1で、最大であった巻線部25b−2,25b−4の磁束密度は状態S2では減少し、状態S1で、最小であった巻線部25b−1,25b−3の磁束密度は状態S2では増加する。これにより、状態S2では、巻線部25b−1〜25b−4を通過する磁束密度はほぼ同じになる。
【0045】
さらに
図17は、センタ側突出部11aの1段目がアウタ側突出部23a−2と対向し、センタ側突出部11aの3段目がアウタ側突出部23a−4と対向している状態S3を示している。このときアウタ側突出部23a−1および23a−3はセンタ側突出部11aとは対向していない。
【0046】
このような状態S3では、
図18に示すように、センタ側突出部11aの1段目および3段目と、これに対向しているアウタ側突出部23a−2および23a−4との間で、互いの吸引力が最大になる。このため磁路M14は強い磁束密度をもつ磁路M20となり、同様に弱い磁路M15は強い磁路M21となる。反対に、状態S3では、
図18に示すように、センタ側突出部11aの2段目および4段目と、これに対向していないアウタ側突出部23a−1および23a−3との間で、互いの吸引力が最小になる。この状態S3は、状態S1を機械角度で90度回転させた状態である。また、この状態S3は、状態S1を電気的に180度前進させた状態である。
【0047】
このような状態S3における巻線部25a−2および25a−4に係る磁束密度に着目すると、これらの巻線部25a−2および25a−4に係る磁束は、センタヨーク2側に吸引されているために最小になる(
図18では図示省略)。一方、状態S3における巻線部25a−1および25a−3に係る磁束密度に着目すると、センタ側突出部11aとアウタ側突出部23a−1および23a−3が対向していないため、永久磁石24−1および24−3の磁束は、アウタヨーク3−1および3−3から漏れる程度が非常に少なくなるので、巻線部25a−1および25a−3の磁束密度は最大になる。このとき、弱い磁束密度であった磁路M7aは、強い磁束密度を有する磁路M7となり、同様に弱い強度の磁路M8aは強い強度の磁路M8となる。
【0048】
また、状態S3における巻線部25b−1,25b−2,25b−3,および25b−4に係る磁束密度に着目すると、永久磁石10a―2,10a−4の磁束は、永久磁石24−2,24−4に吸引されるため、巻線部25b−2,25b−4を通る磁束はほとんど無く最小になる。一方、巻線部25b−1および巻線部25b−3に係る磁束密度は、巻線部25b−1,25b−3を磁路M26,M27がそれぞれ通るため最大になる。
【0049】
以上の
図13〜
図18で説明したように、センタヨーク2がアウタヨーク3内を
図12の白抜き矢印の方向(すなわち
図12の右から左)に移動することにより、巻線部25a−1〜25a−4,25b−1〜25b−4の磁束密度が最小と最大の間を繰り返す。これにより巻線部25a−1〜25a−4,25b−1〜25b−4には、磁束密度の変化を妨げる方向に電流が発生する。また、
図12の左端まで到達したセンタ側突出部11が
図12の左から右の方向に移動する際にも同様に、巻線部25a−1〜25a−4,25b−1〜25b−4の磁束密度が最小と最大の間を繰り返す。これにより巻線部25a−1〜25a−4,25b−1〜25b−4には、磁束密度の変化を妨げる方向に電流が発生する。このようにしてセンタヨーク2がアウタヨーク3内を往復運動することにより発電機1は連続して発電を行うことができる。
【0050】
図19は、センタヨーク2のセンタ側突出部11aとアウタヨーク3のアウタ側突出部23a−1〜23a−4との位置関係を、上述した状態S1,S2,S3がS1→S2→S3と遷移する過程について時刻t1〜t5の経過と共に示している。また、
図20は、
図19に示す時刻t1〜t5のそれぞれの時点における発電機1の巻線部25a−1,25a−2と巻線部25b−1,25b−2に発生する電流の状態を示している。なお、巻線部25a−3,25b−3の電流波形は、巻線部25a−1,25b−1と同じであり、巻線部25a−4,25b−4の電流波形は、巻線部25a−2,25b−2と同じであるため説明は省略する。
図19に示すように、センタヨーク2が一定の速度でアウタヨーク3内を移動することによって、
図20に示すように、巻線部25a−1,25b−1,25a−2,25b−2には正弦波の電流波形が発生する。
【0051】
たとえば
図19において、時刻t1は、
図14に示す状態S1に対応している。時刻t1は、センタヨーク2のセンタ側突出部11の2段目とアウタヨーク3のアウタ側突出部23−3とが対向し、巻線部25a−2,25b−2の周囲の磁束密度は最大となり、その後、減少していく。このため、巻線部25a−2,25b−2には、その変化を妨げる方向の磁力線を発生させる電流がワイヤをある方向に流れ始める。この方向を仮にプラスとすると、プラス電流が流れ始める。この点は、
図20では、W11として示される。一方、巻線部25a−1,25b−2の周囲の磁束密度は最小となり、その後は増加していくため、その変化を妨げる方向の磁力線を発生させる電流がワイヤを流れる。その流れる方向は巻線部25a−2,25b−2とは逆方向になる。この方向は上述のプラスに対してマイナスとなる。この点は、
図20ではW21として示される。このとき、センタヨーク2のセンタ側突出部11の2段目はアウタヨーク3のアウタ側突出部23a−3との間で、最大の吸引力を発生させている。
【0052】
よって、時刻t1では、
図20に示すように、巻線部25a−1,25b−1,25a−2,25b−2において、電流の流れる方向の逆転が発生するため、交流曲線のプラス、マイナスの中間点となる。すなわち、時刻t1では、
図20に示すように、巻線部25a−1,25b−1,25a−2,25b−2において、プラス側の電流もマイナス側の電流も発生しない(電流の最小値=0アンペア)。
【0053】
また、
図20において、時刻t5は、
図18に示す状態S3に対応している。時刻t5は、センタヨーク2のセンタ側突出部11の1段目とアウタヨーク3のアウタ側突出部23−2とが対向し、巻線部25a−2,25b−2の周囲の磁束密度は最小となり、その後、増加していく。このため、巻線部25a−2,25b−2には、その変化を妨げる方向の磁力線を発生させる電流がワイヤをある方向に流れ始める。この方向は、上述の基準に従うとプラスとなる。この点は、
図20では、W12として示される。一方、巻線部25a−1,25b−1の周囲の磁束密度は最大となり、その後は減少していく。このため、巻線部25a−1,25b−1には、その変化を妨げる方向の磁力線を発生させる電流がワイヤを流れる。その流れる方向は巻線部25a−2,25b−2とは逆方向になる。この方向は上述のプラスに対してマイナスとなる。この点は、
図20ではW22として示される。このとき、センタヨーク2のセンタ側突出部11の1段目はアウタヨーク3のアウタ側突出部23−2との間で、最大の吸引力を発生させている。
【0054】
よって、時刻t5では、
図20に示すように、巻線部25a−2,25b−2において、プラス側の最大値(W12)の電流が発生し、巻線部25a−1,25b−1において、マイナス側の最大値(W22)の電流が発生する。
【0055】
時刻t3は、
図16に示す状態S2に対応している。時刻t3は、センタヨーク2のセンタ側突出部11の半分とアウタヨーク3のアウタ側突出部23−1〜23−4の半分とが対向している。時刻t3は、状態S1から状態S3に遷移する過程の中間点である。よって、時刻t3では、
図20に示すように、巻線部25a−1,25b−1,25a−2,25b−2において、正側および負側での最大値と最小値(=0アンペア)の略中間値の電流が発生する。
【0056】
時刻t2,t4は、それぞれ状態S1からS2、S2からS3に遷移する過程である。よって、時刻t2では、
図20に示すように、巻線部25a−1,25b−1,25a−2,25b−2において、それぞれ状態S1で発生する電流値(0アンペア)と状態S2で発生する電流値との略中間値の電流が発生する。また、時刻t4では、
図20に示すように、巻線部25a−1,25b−1,25a−2,25b−2において、それぞれ状態S2で発生する電流値と状態S3で発生する電流値(最大値)との略中間値の電流が発生する。
【0057】
このようにして、時刻t1〜t5では、巻線部25a−1,25b−1,25a−2,25b−2で発生する正弦波状の電流波形のうちの4分の1周期分の電流が発生する。すなわち、発電機1のセンタヨーク2が一定の速度で移動している場合、時刻t1〜t5の時間の4倍の時間で、巻線部25a−1,25b−1,25a−2,25b−2で発生する正弦波状の電流波形の1周期分が終了する。
【0058】
なお、上述した巻線部25a−1,25b−1,25a−2,25b−2の説明は、巻線部25a−1,25b−1を巻線部25a−3,25b−3、巻線部25a−2,25b−2を巻線部25a−4,25b−4にそれぞれ置き換えても同様である。
【0059】
よって、巻線部25a−1および25a−3では互いに同じ方向に同じ強さの電流が発生し、巻線部25a−2および25a−4では、巻線部25a−1および25a−3とは逆方向になるが、互いに同じ方向に同じ強さの電流が発生している。そこで、巻線部25a−1〜25a−4,25b−1〜25b−4を適宜接続して同方向の電流が得られるようにすることで、
図1および
図2で示した出力端子4a,4bから出力することにより発電機1は電力を発生することができる。また、必要によっては、180度周期が異なる2つの電流を取り出すようにしてもよい。
【0060】
ここで、一般的なリニア発電装置でコギングが発生する原因を考えてみると、センタヨーク2側とアウタヨーク3側との間の吸引力もしくは反発力がセンタヨークの位置によって変化することが原因である。これに対し、発電機1では、時刻t1〜t5のいずれの時刻においても突出部同士の対向面積は変化しない。すなわち、センタヨーク2とアウタヨーク3との位置関係に係わらずセンタヨーク2のセンタ側突出部11aとアウタヨーク3のアウタ側突出部23a−1〜23a−4との対向面積は常に一定で、かつセンタ側突出部11aとアウタヨーク3の突出していない部分との対向面積は常に一定である。このため、センタヨーク2とアウタヨーク3との間の吸引力は常に一定になる。
【0061】
たとえば、時刻t1(状態S1)においては、センタヨーク2のセンタ側突出部11aの2段目および4段目とアウタヨーク3のアウタ側突出部23a−3および23a−1とは、アウタ側突出部23a−1および23a−3の最大の面積で対向して最大の吸引力で引き合っている。その一方で、アウタヨーク3のアウタ側突出部23a−2および23a−4は、センタヨーク2のセンタ側突出部11aの一部の面積も対向しておらず吸引力は最小である。このことからセンタヨーク2のセンタ側突出部11aとアウタヨーク3のアウタ側突出部23a−1〜23a−4との間の吸引力の強さは、センタヨーク2のセンタ側突出部11aとアウタヨーク3のアウタ側突出部23a−1〜23a−4との間の対向面積部分の強さと非対向面積部分の強さの合計に依存すると考えることができる。
【0062】
そこでアウタヨーク3のアウタ側突出部23a−1〜23a−4がセンタヨーク2のセンタ側突出部11aと対向する際の面積の最大値をQcm
2(平方センチメートル)とし、1cm
2単位当たりの吸引力の強さをP1とすると、時刻t1において、センタヨーク2のセンタ側突出部11aの2段目とアウタヨーク3のアウタ側突出部23a−3との間の対向面積はQcm
2で吸引力はQ×P1となる。また、センタヨーク2のセンタ側突出部11aの4段目とアウタヨーク3のアウタ側突出部23a−1との間の対向面積もQcm
2で吸引力はQ×P1となる。また、センタヨーク2のセンタ側突出部11aの1段目とアウタヨーク3のアウタ側突出部23a−2との間の非対向面積およびセンタヨーク2のセンタ側突出部11aの3段目とアウタヨーク3のアウタ側突出部23a−4との間の非対向面積はそれぞれQcm
2で非対向部分の1cm
2単位当たりの吸引力の強さをP2とすると吸引力はそれぞれQ×P2となる。よって、時刻t1におけるセンタヨーク2とアウタヨーク3との間の各突出部11a、23a−1〜23a−4の吸引力は「2Q×P1+2Q×P2=2Q(P1+P2)」である。
【0063】
同じように、時刻t2においては、センタヨーク2のセンタ側突出部11aの1段目および3段目の周方向の4分の1とアウタヨーク3のアウタ側突出部23a−2および23a−4の周方向の4分の1とが対向し、センタヨーク2のセンタ側突出部11aの2段目と4段目の4分の3とアウタヨーク3のアウタ側突出部23a−3および23a−1の周方向の4分の3とが対向して互いに引き合っている。
【0064】
ここで、センタヨーク2のセンタ側突出部11aの1段目および3段目とアウタヨーク3のアウタ側突出部23a−2および23a−4との間の対向面積はそれぞれ(1/4)Qcm
2、センタヨーク2のセンタ側突出部11aの2段目および4段目とアウタヨーク3のアウタ側突出部23a−3および23a−1との間の対向面積はそれぞれ(3/4)Qcm
2である。よって、時刻t2におけるセンタヨーク2とアウタヨーク3との間の各突出部11a、23a−1〜23a−4の対向する部分の吸引力の総和は、
(1/4)Qcm
2×P1+(1/4)Qcm
2×P1+(3/4)Qcm
2×P1+(3/4)Qcm
2×P1
=(8/4)Qcm
2×P1
=2Qcm
2×P1
である。一方、非対向部分の吸引力は、同様に計算して、2Qcm
2×P2となる。よって時刻t2においても吸引力は、時刻t1と同じように「2Q×P1+2Q×P2=2Q(P1+P2)」となる。
【0065】
同じように、時刻t3においては、センタヨーク2のセンタ側突出部11aの周方向の2分の1とアウタヨーク3のアウタ側突出部23a−1〜23a−4の周方向の2分の1とが対向とが対向して互いに強く引き合っている。
【0066】
ここで、センタヨーク2のセンタ側突出部11aとアウタヨーク3のアウタ側突出部23a−1〜23a−4との間の対向面積は、それぞれ(1/2)Qcm
2である。よって、時刻t3におけるセンタヨーク2とアウタヨーク3との間の各突出部11a、23a−1〜23a−4の対向する部分の吸引力の総和は、
(1/2)Qcm
2×P1+(1/2)Qcm
2×P1+(1/2)Qcm
2×P1+(1/2)Qcm
2×P1
=(4/2)Qcm
2×P1
=2Qcm
2×P1
である。一方、非対向部分、すなわちアウタヨーク3のアウタ側突出部23a−1〜23a−4ではない部分とセンタヨーク2のセンタ側突出部11aが対向している部分の吸引力はその面積が2Qcm
2となるので、2Qcm
2×P2となる。よって、時刻t3においての吸引力の総和は時刻t1,t2と同じように2Q(P1+P2)となる。
【0067】
同じように、時刻t4においては、センタヨーク2のセンタ側突出部11aの1段目および3段目の周方向の4分の3とアウタヨーク3のアウタ側突出部23a−2および23a−4の周方向の4分の3とが対向し、センタヨーク2のセンタ側突出部11aの2段目および4段目の周方向の4分の1とアウタヨーク3のアウタ側突出部23a−3および23a−1の周方向の4分の1とが対向して互いに強く引き合っている。
【0068】
ここで、センタヨーク2のセンタ側突出部11aの1段目および3段目とアウタヨーク3のアウタ側突出部23a−2および23a−4との間の対向面積は、それぞれ(3/4)Qcm
2であり、センタヨーク2のセンタ側突出部11aの2段目および4段目とアウタヨーク3のアウタ側突出部23a−3および23a−1との間の対向面積は、それぞれ(1/4)Qcm
2である。よって、時刻t4におけるセンタヨーク2とアウタヨーク3との間の各突出部11a、23a−1〜23a−4の完全に対向している部分の面積の総和は、
(3/4)Qcm
2+(3/4)Qcm
2+(1/4)Qcm
2+(1/4)Qcm
2
=(8/4)Qcm
2
=2Qcm
2
である。このため突出部同士が対向していることによる吸引力は「2Q×P1」となる。一方、センタヨーク2のセンタ側突出部11aがアウタヨーク3のアウタ側突出部23a−1〜23a−4と対向していない非対向部分の面積はやはり2Qcm
2となり、全体の吸引力は時刻t1,t2,t3と同じく「2Q(P1+P2)」となる。
【0069】
同じように、時刻t5(状態S3)においては、センタヨーク2のセンタ側突出部11aの1段目および3段目とアウタヨーク3のアウタ側突出部23a−2および23a−4とは対向して互いに強く引き合っているが、アウタヨーク3のアウタ側突出部23a−3および23a−1は、センタヨーク2のセンタ側突出部11aとは対向していない。このときのセンタヨーク2のセンタ側突出部11aの1段目および3段目とアウタヨーク3のアウタ側突出部23a−2および23a−4との間の対向面積は、それぞれQcm
2である。よって、時刻t5におけるセンタヨーク2とアウタヨーク3との間の各突出部11a、23a−1〜23a−4の完全に対向している部分の面積の総和は、
Qcm
2+Qcm
2=2Qcm
2
である。このため突出部同士が対向していることによる吸引力は「2Q×P1」となる。一方、センタヨーク2のセンタ側突出部11aの2段目および4段目がアウタヨーク3のアウタ側突出部23a−3および23a−1と対向していない非対向部分の面積はやはり2Qcm
2となり、全体の吸引力は時刻t1,t2,t3,t4と同じく「2Q(P1+P2)」となる。
【0070】
このように、
図19における時刻t1〜t5のいずれの時刻においてもセンタヨーク2とアウタヨーク3との間の各突出部11a、23a−1〜23a−4での吸引力の総和は、「2Qcm
2×(P1+P2)」であり変わらない。時刻t1〜t5で発生する電流波形は、巻線部25a−1〜25a−4、25b−1〜25b−4で発生する正弦波状の電流波形のうちの4分の1周期分の電流波形であるが、正弦波は、この4分の1周期分の電流波形が正負方向を変えながら連続するものである。したがって、巻線部25a−1〜25a−4、25b−1〜25b−4で発生する正弦波状の電流波形のいずれの部位においてもセンタヨーク2のセンタ側突出部11aとアウタヨーク3のアウタ側突出部23a−1〜23a−4との間の吸引力は常に一定になることは自明である。このことは、センタヨーク2とアウタヨーク3との位置関係がどのようであってもセンタヨーク2とアウタヨーク3との間の吸引力は常に一定であることを意味している。これにより発電機1においては、コギングは発生しないことがわかる。
【0071】
また、このようにコギングが発生しない発電機1では、外部からセンタヨーク2に加えられる往復運動(振動)が、コギングトルクによって減ぜられることなく、そのほとんどが発電のためのトルクとして使用されるため、効率の高い発電を行うことができる。
【0072】
(その他の実施の形態)
上述した実施の形態は、その要旨を逸脱しない限り、様々に変更が可能である。たとえば、空洞部12および非磁性体部21は、中空とせず、非磁性体、たとえばアルミや樹脂材を埋め込む構成としてもよい。また、各突出部11a、23a−1〜23a−4はセンタヨーク2およびアウタヨーク3の本体と一体成形されているとして説明したが、各突出部11a、23a−1〜23a−4は一体成形とせず、別部材として各本体に接着などで固定するようにしてもよい。
【0073】
また、上述の実施の形態では、アウタヨーク3のアウタ側突出部23a−1および23a−3とアウタ側突出部23a−2および23a−4とが軸方向に互いに半ピッチずれるとして説明した。これに対し、センタヨーク2のセンタ側突出部11aが永久磁石10を境にして軸方向に半ピッチずれるようにし、アウタヨーク3のアウタ側突出部23a−1〜23a−4のピッチのずれは無くしてもよい。これによっても上述の実施の形態と同様な動作、作用効果を達成することができる。
【0074】
また、
図9に示すセンタヨーク2の軸方向の長さ、および
図10、
図11に示すアウタヨーク3の軸方向の長さは、これに限定されるものではない。すなわち、最小の軸方向の長さは、センタヨーク2のセンタ側突出部11aとアウタヨーク3のアウタ側突出部23aのいずれか一方が1段となり、他方が半ピッチずれた状態で2段となる構成であれば発電機1を構成することができる。
【0075】
また、巻線部25a−1〜25a−4、25b−1〜25b−4を軸方向に複数並列に設けてもよい。すなわち上述したように、発電機1の最小の軸方向の長さに対して1組の巻線部25a−1〜25a−4を設け、これを複数段に積み重ねるようにしてもよい。これによれば段数(長さ)に応じて発電量を変えることができる。同様に、発電機1の最小の軸方向の長さに対して1組の巻線部25b−1〜25b−4を設け、これをセンタヨーク2の内側に向けて複数段に積み重ねるようにしてもよい。これによれば段数(長さ)に応じて発電量を変えることができる。
【0076】
また、上述の発電機1は、センタヨーク2が往復運動(振動)するとして説明したがセンタヨーク2を固定しておき、アウタヨーク3が往復運動してもよい。また、センタヨーク2およびアウタヨーク3は軟磁性体が好ましいが単なる磁性体としてもよい。また、アウタコア23と永久磁石24とがインサート成形などで一体成形されるときは溝部22が形成されないが、そのような一体形成の場合を含めて該当部分を溝部と称する。
【0077】
また、
図21に示すように、アウタヨーク3Aに、永久磁石を有さない発電機1Aを構成することもできる。すなわち、発電機1Aは、発電機1のアウタヨーク3から永久磁石24を取り去った後の溝部22を非磁性体部として利用するようにしたものである。なお、アウタヨーク3から永久磁石24を取り去った後の空間には、樹脂を充填したり非磁性体であるアルミニュウムなどを充填してもよい。発電機1Aは、上述した実施の形態に係る発電機1と同様に動作するが、アウタヨーク3Aに永久磁石を有さないので、電流の波形は、巻線部25a−1、25a−2で
図20に示すものとはそれぞれ反転する。
【0078】
たとえば、
図21に示す状態は、発電機1における
図14に示した状態S1に対応している。発電機1において、
図14に示した状態S1の場合を考えてみると、発電機1では、アウタヨーク3−1に永久磁石24−1を有するため、永久磁石24−1の磁束がセンタヨーク2側に吸引されるので、巻線部25a−1を通過する磁束密度は最小になる。これに対し、発電機1Aでは、アウタヨーク3−1に永久磁石が無いため、センタヨーク2の永久磁石10−1の磁束が対向しているアウタ側突出部23a−1を介して永久磁石10−1からの磁束がアウタヨーク3−1側に入り込む磁路M30が形成される。これにより巻線部25a−1の周囲の磁束密度は最大になる。同様に永久磁石10−3からの磁束による磁路M31が形成される。さらには永久磁石10−2、10−4からの磁束による磁路M32、M33が形成される。
【0079】
このように、発電機1と発電機1Aとを比較すると、巻線部25a−1における磁束密度の最大最小の状態が逆転していることがわかる。これは他の巻線部25a−2〜25a−4についても同様である。よって、発電機1と発電機1Aとでは、
図20に示す電流の波形は反転する。一方、巻線部25b−1〜25b−4を通る磁束密度の最大最小の状態は、発電機1の場合と同じである。よって、巻線部25b−1,25b−2については、
図20に示す波形と同じである。
【0080】
また、センタヨーク2は、
図22に示すように、永久磁石10aが入り込む部分に隣接するセンタコア11をつなぐつなぎ部11bを設けるようにしてもよい。同様に、アウタヨーク3の溝部22に、アウタコア23をつなぐつなぎ部を設けてもよい。さらに永久磁石10a、24はそれぞれ等間隔で配置されているが、各磁石が対向するように配置するのが好ましいため、それぞれは等間隔でない配置とし、かつ永久磁石10aと永久磁石24とが対向するように配置してもよい。また、永久磁石10aと永久磁石24は、完全に対向するように配置することが好ましいが、若干ずれて配置してもよい。
【0081】
また、上述の各実施の形態では、巻線部25bを有するセンタヨーク2が巻線部25aを有するアウタヨーク3内を相対移動するインナータイプとしているが、巻線部25aを有する部分がインナ側となるアウタータイプとしてもよい。この場合、センタヨーク2は、アウタヨーク3の外側を相対移動することとなる。
【0082】
さらに各実施の形態では巻線部25aが非磁性体部21の1個毎に1個配置されているが、巻線部25aは適宜の数としてよい。たとえば、第一の実施の形態の発電機1において1つの巻線部25a−1のみとしたり、2つの巻線部25a−1、25a−3のみとしたり、2つの巻線部25a−1、25a−2のみとしたりしてもよい。さらには1つの非磁性体部21に2つの巻線部を設けてもよい。同様に、各実施の形態では巻線部25bが永久磁石10aの1個毎に1個配置されているが、巻線部25bは適宜の数としてよい。たとえば、第一の実施の形態の発電機1において1つの巻線部25b−1のみとしたり、2つの巻線部25b−1、25b−3のみとしたり、2つの巻線部25b−1、25b−2のみとしたりしてもよい。さらには1つの永久磁石10aに2つの巻線部を設けてもよい。
【0083】
また、永久磁石10bは、これを省略してもよい。永久磁石10bの磁束は、永久磁石10aに追加されるものであるので、永久磁石10bを省略しても発電量に変化はあるものの上述した発電機1の動作は同じである。
【0084】
また、永久磁石10bと共に永久磁石10aを省略してもよい。このときには、永久磁石10aの配置位置に、センタ側突出部11aが延長されて配置されることがよい。これによれば、巻線部25bには、アウタヨーク3の永久磁石24の磁束のみが通ることになる。この場合、巻線部25b−1〜25b−4の磁束密度の大小関係は、発電機1Aの場合と同じになる。
【0085】
また、センタヨーク2は円筒状とされているが、その端部の一方または両方が塞がれていてもよい。このように端部が塞がれているものを含めて円筒状という。
【0086】
また、巻線部25b−1〜25b−4の全部または一部を有さない構成としてもよい。あるいは、巻線部25a−1〜25a−4の全部または一部を有さない構成としてもよい。もしくは、巻線部25b−1〜25b−4の一部と巻線部25a―1〜25a―4の一部を有さない構成としたり、巻線部25b−1〜25b−4の全部と巻線部25a−1〜25a―4の一部を有さない構成としたり、巻線部25b−1〜25b−4の一部と巻線部25a−1〜25a―4の全部を有さない構成としてもよい。このように巻線部25a,25bの構成を変更することにより、発電機1,1Aの発電量を適宜変更することができる。また、巻線部25bを有さないことで、出力端子4bを省略することができる。