(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6309920
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】長いもの種芋用の畝立てマルチ装置
(51)【国際特許分類】
A01G 13/00 20060101AFI20180402BHJP
A01G 22/25 20180101ALI20180402BHJP
【FI】
A01G13/00 303
A01G1/00 301A
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-140012(P2015-140012)
(22)【出願日】2015年6月24日
(65)【公開番号】特開2017-6110(P2017-6110A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2015年10月7日
【審判番号】不服2017-1575(P2017-1575/J1)
【審判請求日】2017年2月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】596016937
【氏名又は名称】株式会社苫米地技研工業
(74)【代理人】
【識別番号】100078776
【弁理士】
【氏名又は名称】安形 雄三
(74)【代理人】
【識別番号】100121887
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 好章
(72)【発明者】
【氏名】苫米地 力
【合議体】
【審判長】
小野 忠悦
【審判官】
西田 秀彦
【審判官】
住田 秀弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭58−43705号公報
【文献】
実開昭53−112516号公報
【文献】
実開昭52−167106号公報
【文献】
実開昭56−52901号公報
【文献】
特開昭62−130601号公報
【文献】
実開昭59−6402号公報
【文献】
実開昭58−146402号公報
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B13/02
A01C 5/06
A01G13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタの後部に連結して、深耕畝に開口した溝に植え付けした種芋に対し平面視で八字状に配置した一対の土寄せ板で覆土して丸畝を成形すると同時にマルチフイルムを施設する長いもの種芋用の畝立てマルチ装置であって、
長いもの種芋用の畝立てマルチ装置は、前方に畝成形装置を、後方にマルチ装置を装備し、
前記畝成形装置は、
前記トラクタが走行するにしたがって前記土寄せ板は前記深耕畝の左右の盛り土を中央に寄せて前記種芋に覆土して、次いで丸型成形板は半丸状で基端から後方に向けて尻しぼみに傾斜して漏斗状をなして、成形畝の表面を圧縮鎮圧し、
前記丸型成形板の上部には錘を乗せる載置台を設け、
前記丸型成形板は、弾性を有する鋼板で成形された半丸状断面を有すると共に、畝頂部高さを変更する調整手段を具備し、
前記マルチ装置のフイルム支持部は、畝中心部に対して左右の位置変更装置が具備されており、
前記八字状に配置した一対の土寄せ板の側方であって前記トラクタの車輪後方側には跡けし爪を有し、前記丸型成形板と前記フイルム支持部との間には、整地デスクを設けた、ことを特徴とした長いもの種芋用の畝立てマルチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタの後部に連結して、深耕畝の開口溝に長いもの種芋を植え付けし、その種芋周囲に覆土した後に丸畝を成形すると同時にマルチフイルムを施設する畝立てマルチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から耕耘された土地に畝を成形しながら、自動的にマルチングシートを施設する畝立てマルチ装置に関するものは種々提案されている。例えば、左右の溝切り板で規制された幅で、且つスプリングの弾力を調節可能とした抑圧板よって高さ及び硬さを調整された畝が形成され且つ、この畝上にマルチシートが連続的に施設される技術が開示されている(特許文献1)。
また畝の幅や高さ及びマルチフイルムの幅に合わせて、畝成形板の位置や抑え輪及び覆土輪の位置をセットする場合に、回転ハンドルの操作によって、左右に対抗して配置した畝成形板と押さえ板と覆土輪を一体化した状態で同時に、または単独で左右移動調整が可能とした技術が開示される(特許文献2)。
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭61−12722公報
【特許文献2】実公平7−13486公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した実公昭61−12722公報号の明細書に寄れば、垂直状の溝切り板と水平上の押さえ板によって断面直方形の畝が形成され、この押さえ板はスプリング圧により垂直状の圧力をかけるように構成される。この際形成される断面直方形の左右の肩部と側壁は鎮圧されていないのでマルチフイルムの密着性は弱く、時には空気だまりに雑草がはえて雑草の排除作業が大変であった。
また実公平7−13486公報に開示の畝断面は丸型を形成するもので、平畦や高畦等の高さを調整するのに便利な構成を提示しているが、単に畝表面を均すだけなので、時間経過によって、畝の崩れや畝とマルチフイルムの間に隙間が生じて雑草が発生することがあった。
本発明の課題は長いもの種芋を深耕畝の開口溝に植え付けした後に、種芋の周辺に確実に土寄せをして同時に丸畝の表面を圧縮鎮圧した畝を成形してマルチフイルムを密着させて畝が型崩れせず、畝とフイルムの隙間に雑草が生えない畝立てをすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はトラクタの後部に連結して、深耕畝に開口した溝に植え付けした種芋に対し平面視で八字状に配置した一対の土寄せ板で覆土して丸畝を成形すると同時にマルチフイルムを施設する長いもの種芋用の畝立てマルチ装置であって、
長いもの種芋用の畝立てマルチ装置は、前方に畝成形装置を、後方にマルチ装置を装備し、前記畝成形装置は、前記トラクタが走行するにしたがって前記土寄せ板は前記深耕畝の左右の盛り土を中央に寄せて前記種芋に覆土して、次いで丸型成形板は半丸状で基端から後方に向けて尻しぼみに傾斜して漏斗状をなして、成形畝の表面を圧縮鎮圧し、前記丸型成形板の上部には錘を乗せる載置台を設け、前記丸型成形板は、弾性を有する鋼板で成形された半丸状断面を有すると共に、畝頂部高さを変更する調整手段を具備し、
前記マルチ装置のフイルム支持部は、畝中心部に対して左右の位置変更装置が具備されており、前記八字状に配置した一対の土寄せ板の側方であって前記トラクタの車輪後方側には跡けし爪を有し、前記丸型成形板と前記フイルム支持部との間には、整地デスクを設けた、ことを特徴とした長いもの種芋用の畝立てマルチ装置である。
【発明の効果】
【0006】
丸型成形板は基端から後方に向けて尻しぼみに傾斜しているので、畝の表面に圧縮鎮圧作用を成し、マルチフイルムは圧縮された畝の表面の復元力によってより密着される。従って雑草の生える空隙の余地がなく、同時に丸畝の形状は長く保持される。また、丸型成形板の上部に錘を搭載すると圧縮成形がより確実になり、走行も速くできる。また、丸型成形板は半丸状断面から、畝頂部高さを変更して、さらに高畦に設定すると、東北、北海道の春の遅い地域ではマルチの効果が長くなる。また、畝のカーブなどにおいて、マルチフイルムのスリット位置のずれが発生した時は、作業途中においてマルチ施設装置の操作レバーによって左右調整して畝中心と合致可能である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、トラクタの後部に連結して、植え付けした種芋に対し覆土して丸畝を成形すると同時にマルチフイルムを施設する畝立て装置において、丸型成形板は半丸状で基端から後方に向けて尻しぼみに傾斜して漏斗状をなして、成形畝の表面を圧縮鎮圧することを特徴とした長いも等の畝立てマルチ装置であり、さらに丸型成形板の上部に錘を乗せる載置台を設けて、かつ、丸型成形板は弾性を有する鋼板で成形され半丸状断面から、畝頂部高さを変更する調整手段を具備した長いも等の畝立てマルチ装置の構成である。
【実施例】
【0009】
図1は本発明を実施した外観側面図を示し、トラクタ後部1に公知の三点リンクであるトップリンク33とロアリンク34によって、畝立てマルチ装置を支承している機枠2を連結したものである。機枠2は前方に畝成形装置3を装備して、後方に4のマルチ装置を装備している。畝成形装置2は一対の土寄せ板5と、6の丸型成形板とから構成される。12は機枠2と丸型成形板6の取り付け金具13と繋ぐ支持棒である。4のマルチ装置はマルチフイルム8の支持部である14の連結枠に支承される。マルチ装置4はフイルムを畝に案内する押さえローラー9、マルチフイルム8をしっかり押さえる押圧車輪10、マルチフイルムの左右端に覆土する覆土デスク、フイルムの位置中心を左右に調整する操作レバー15から構成されている。7は整地デスクを示しマルチフイルム8を施設する直前に整地するものである。35は跡けし爪を示しトラクタの車輪
の走行跡を耕起して畑地が硬化するのを防止する。
図2は丸型成形板6の斜視図を示し、断面半丸で弾性の有する金属の支持カバー30と31の内壁からなり内壁は合成樹脂製である。上部には左右のサイドリンク17と、中央には水平に上部リンク16が横架される。上部リンク16の中央にはボス部18が設けられて、ねじ軸19によって支持カバー30の頂部と連結される。13は連結金具である。ねじ軸19はボス部18によって上下に伸縮されて、丸型成形板6の支持カバー30の頂部を高くして高畦形状を形成し、また頂部を低くして広幅台形の畝断面を形成する。32は錘を示し、畝成形装置3の上部の機枠2に載置されて、丸型成形板6に押圧力を与えて畝の圧縮鎮圧作用を確実にする。
【0010】
図3はマルチ装置の取り付け部斜視図であり、14は連結枠で前記した機枠2の後部に連結される。23は横枠で左右端にサイド枠24を垂設して下部の支軸25によってマルチフイルム8を支承する。15は操作レバーで受枠20の軸支部21に回動自在に固着される。操作レバー15の下方には長穴が設けられて横枠22が連結枠14に対して横に摺動自在に支持されている。9は押さえローラを示しマルチフイルム支軸25の前方に配置されて横枠23に一体的に固着されている。操作レバー15を必要によって左右の何れかに搖動すれば下方の長孔22を介して横枠23を摺動させてマルチフイルム8の絶対位置が移動され、成形畝の中心部に対するズレを修正する。この時横枠23に一体的な押さえローラ9も同時に移動するので操作レバー15の操作に対して作用が同期して押さえローラ9の押さえも確実である。28は芽だし用のスリットである。
図4は丸型成形板の三面説明図であり、基端に対して後方に向けて先細りで漏斗状に形成される。
図4の(イ)は側面図で後方に向けて角度Aの傾斜角度を有している。
図4の(ロ)は平面図で左右の側部は角度Bの傾斜を有している。
図4の(ハ)は後面図で丸型成形板の頂部高さHを示し、
図2のボス部18のナットとねじ軸19によって高さHが調整される。
図5は土寄せ板と丸型成形板の作用説明図であり、26は深耕畝に口開けされた溝に植え付けた種芋を示し、5は平面視で八字状に配置した土寄せ板であり、6は半丸状の丸型成形板を示す。トラクタが走行するにしたがって土寄せ板5は深耕畝の左右の盛り土を中央に寄せて種芋に覆土して、次いで丸型成形板6がその傾斜角度A,Bによって圧縮成形した畝を形成する。
図6は長いも植え付け畝の成形説明図であり、
図6の(イ)は深耕畝に開口した溝に26の種芋を植え付けした状態を示し、29は溝を開口したとき左右に放出された盛り土である。
図6の(ロ)はマルチフイルム8で被覆した丸型畝の断面を示している。28は予め穿設した芽だし用のスリットを示している。
【産業上の利用可能性】
【0011】
本発明の長いも等の畝立てマルチ装置は、長芋栽培における芽だしの温度と根茎の成長を促す丸型マルチ畝を形成するもので、特に春が遅い東北や北海道の地域での貢献が期待されている。
【符号の説明】
【0012】
1 トラクタ後部 2 機枠
3 畝成形部 4 マルチ装置
5 土寄せ板 6 丸型成形板
7 整地デスク 8 マルチフイルム
9 押さえローラ 10 押圧車輪
11 覆土デスク 12 支持棒
13 取り付け金具 14 連結枠
15 操作レバー 16 上部リンク
17 サイドリンク 18 ボス部
19 ねじ軸 20 受け棒
21 軸支部 22 長孔
23 横枠 24 サイド枠
25 支軸 26 種芋
27 成形畝 28 スリット
29 盛り土 30 支持バー
31 内壁 32 錘
33 トップリンク 33 ロアリンク
34 跡けし爪