特許第6309949号(P6309949)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6309949混合塩懸濁重合方法および樹脂ならびにそれから製造される触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6309949
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】混合塩懸濁重合方法および樹脂ならびにそれから製造される触媒
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/18 20060101AFI20180402BHJP
   C08F 26/06 20060101ALI20180402BHJP
【FI】
   C08F2/18
   C08F26/06
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-516228(P2015-516228)
(86)(22)【出願日】2013年6月7日
(65)【公表番号】特表2015-518919(P2015-518919A)
(43)【公表日】2015年7月6日
(86)【国際出願番号】US2013044631
(87)【国際公開番号】WO2013188221
(87)【国際公開日】20131219
【審査請求日】2016年5月23日
(31)【優先権主張番号】61/657,817
(32)【優先日】2012年6月10日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/657,816
(32)【優先日】2012年6月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】益戸 孝
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ジェイ・オルセン
(72)【発明者】
【氏名】ガース・アール・パーカー
(72)【発明者】
【氏名】ホセ・アントニオ・トレージョ
【審査官】 水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−081440(JP,A)
【文献】 特開2002−239380(JP,A)
【文献】 特開2006−348379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00−246/00
C08F 301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
懸濁重合による樹脂の調製方法であって、
i)水性懸濁液を形成することであって、前記水性懸濁液は水相および有機相を含み、前記有機相は
a)モノマー相、
b)0.1〜5重量パーセントの重合開始剤
を含み、前記モノマー相は少なくとも50重量パーセントの1つの水溶性モノマーおよび0.1〜50重量パーセントの架橋モノマーを含むこと、
ii)前記懸濁液中に重合条件を成立させること、
iii)水不溶性の粒子を形成するまで、前記モノマーを重合させること、および
iv)前記粒子を前記水相から分離すること、
を含み、さらに、前記水相は非腐食性混合塩を含み、前記非腐食性混合塩は亜硝酸ナトリウムを含み、かつ前記非腐食性混合塩は、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、硫酸カリウム、重炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、重炭酸カルシウム、リン酸ナトリウムおよび硫酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも一種の塩をさらに含む、方法。
【請求項2】
前記非腐食性混合塩が亜硝酸ナトリウムならびに重炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、重炭酸カリウムおよび硫酸カリウムからなる群から選択される少なくとも1つの塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水溶性モノマーがビニルピリジンである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記水相がさらに水および懸濁化剤を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記懸濁化剤がポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)またはゼラチンである、請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性モノマーの無塩または混合塩懸濁重合方法ならびにそれから製造される樹脂および触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
懸濁重合は通常、離散したモノマー液滴を水性媒体中に懸濁させ、フリーラジカル重合を開始させ、懸濁させた液滴が固体球状粒子を形成するまで重合を継続させることにより、水性懸濁化媒体中で行われる。このような粒子は、特にモノエチレン性不飽和モノマーおよびポリエチレン性不飽和架橋モノマーの共重合によって形成される場合、イオン交換樹脂製造における中間体としてとりわけ有用である。多くの一般的なモノマー、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、メチルメタクリレート、エチルアクリレートなどは、水に不溶であり、したがって懸濁重合によく適している。しかし、いくつかのモノマー、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ビニルピリジン、ジメチルアミノエチルメタクリレートなどは水にかなりの程度溶解する。
【0003】
部分的にまたは完全に水溶性のモノマーで懸濁重合が計画される場合、モノマーは水相へ分配される。完全水溶性モノマーの場合、懸濁液滴は形成すらしない可能性があり、たとえ液滴が形成したとしても、例えば溶解したモノマーが不溶ポリマーを形成し溶液から沈降することによる、水相での乳化、ポップコーンまたは沈降重合体の発生、または、水相に可溶なポリマーの存在による凝集粒子の形成などのいくつかの望ましくない現象が重合中に起こる。凝集は、ポリマー製品に低い水理特性をもたらし、また水相中のポリマーの存在も、加工装置のファウリングをもたらす。
【0004】
水溶性モノマーの懸濁重合に関する当業者に既知の技術としては、水性懸濁化媒体を塩、例えば塩化ナトリウムまたは硫酸ナトリウムなどの無機塩で飽和させ水性媒体へのモノマーの溶解度を低下させることが含まれる。この方法は、望ましくない現象のいくつかを、完全に取り除くわけではないが減らす一助となる。
【0005】
多くの懸濁安定剤は高塩水相において不安定であり、したがって十分にモノマー液滴を保護できず、凝集させてしまう。また、塩化ナトリウムなどいくつかの無機塩では解決が難しいことが分かっている。塩化ナトリウムはしばしば、水性懸濁化剤の飽和に使用される場合、リアクターやその他の重合装置の腐蝕を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
驚くべきことに、本発明の無塩実施形態は、水溶性モノマーの水相への溶解度を低下させるための塩を必要とせずに高分子加工物を製造する懸濁重合方法を提供することにより、当技術分野におけるこの腐蝕問題を解決する。
【0007】
本発明の混合塩実施形態においては、驚くべきことに、ポリマーの調製に特定の混合塩の組み合わせが用いられた場合、当技術分野における前記問題が解決されることが分かっている。さらに、驚くべきことに、このようにして調製されたポリマーは、触媒として用いられた場合、ポリマーのビルドアップが少ないことが分かっており、したがって、走査電子顕微鏡で観察されるように、このような特定の塩の組み合わせを用いずに作られたものと比べてより清浄な表面を持つことが分かっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、懸濁重合による樹脂の調製方法であって、
i)水性懸濁液を形成することであって、前記水性懸濁液は水相および有機相を含み、前記有機相は
a)モノマー相、
b)0.1〜5重量パーセントの重合開始剤、および
c)少なくとも1つの溶媒またはポロゲン
を含み、前記モノマー相は少なくとも50重量パーセントの1つの水溶性モノマーおよび0.1〜50重量パーセントの架橋モノマーを含むこと、
ii)前記懸濁液中に重合条件を成立させること、
iii)不水溶性の粒子を形成するまで、前記モノマーを重合させること、および
iv)前記粒子を前記水相から分離すること、
を含む方法であって、さらに、前記水性懸濁液は塩相を含まない、または混合塩を含み、前記混合塩は亜硝酸ナトリウムを含む方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の水相は水、0.01〜4重量パーセントの懸濁化剤を含み、ならびに塩を含まないか混合塩を含む。前記有機相はモノマー相を含み、前記モノマー相は総モノマー重量の少なくとも50重量パーセントの1つの水溶性モノマー、モノマー重量の0.1〜50重量パーセントの架橋モノマー、および選択的に少量の付加的な非水溶性共重合性モノマーを含む。前記有機相はまた、0.1〜5重量パーセントの重合開始剤および少なくとも1つの溶媒またはポロゲンを含む。
【0010】
本発明において有用である水溶性モノマーは、これらに限定されるものではないが、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などの酸単量体、アクリル酸無水物およびメタクリル酸無水物などの水溶性無水物、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N,N−ビス−(ジメチルアミノエチル)メタクリルアミド、N,N−ビス−(ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド、N,N−ビス−(ジメチルアミノエチル)アクリルアミドおよびN,N−ビス−(ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミドなどのアミノ置換アクリルアミド類およびメタクリルアミド類、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレートおよびジメチルアミノプロピルアクリレートなどのアミノ置換アクリレート類およびメタクリレート類、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートおよびヒドロキシプロピルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレート類およびメタクリレート類、その他アクリロニトリル、ビニルピリジン類、ビニルホスホン酸、ホスホエチルメタクリレート、ビニルベンジルピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどの窒素置換水溶性モノマー類、またはそれらの混合物、を含む。前記水溶性モノマーはモノマー混合物中に主成分として存在し、すなわち、前記水溶性モノマーが総モノマーのうち少なくとも50重量パーセントのレベルで存在し、好ましくは、前記水溶性モノマーは50〜90重量パーセントで存在し、より好ましくは、50〜80重量パーセントであり、最も好ましくは50〜75重量パーセントである。本明細書で用いられる用語「水溶性」は、モノマーに適用される場合、そのモノマーは1重量パーセント以上の水溶性を持つことを指し、すなわち、少なくともモノマー1グラムが20℃で測定した100gの水に溶解する。好ましくは、モノマーの水溶性は100グラムの水に少なくとも2グラムであり、より好ましくは、前記水溶性は20℃で測定した100グラムの水に少なくとも5グラムである。
【0011】
本発明において有用な架橋モノマーは、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルトルエン、ジビニルクロロベンゼン、ジアリルフタレート、ジビニルキシレン、ジビニルエチルベンゼン、トリビニルナフタレン、ポリビニルアントラセンなどの芳香族架橋剤、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラ−およびトリ−メタクリレート類、アリルアクリレート、ジビニルケトン、N,N’−メチレンジアクリルイミド、N,N’−メチレン−ジメタクリルイミド、N,N’−エチレンジアクリルイミド、マレイン酸ジアリル、フマル酸ジアリル、コハク酸ジアリル、炭酸ジアリル、マロン酸ジアリル、シュウ酸ジアリル、アジピン酸ジアリル、セバシン酸ジアリル、酒石酸ジアリル、トリカルバリル酸ジアリル、アコニット酸トリアリル、クエン酸トリアリルなどの脂肪族架橋剤、ならびにグリコール、グリセロールおよびペンタエリスリトールのポリアリルおよびポリビニルエーテル類、ビスフェノールAジメタクリレート、レゾルシノールのポリアリルおよびポリビニルエーテル類など、ならびにそれらの混合物、を含む、水溶性および水不溶性両方の架橋剤を含む。好ましい架橋モノマーは、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ヘキサメチレン−ビス−メタクリルアミドおよびジエチレングリコールジビニルエーテルならびにそれらの混合物。架橋モノマーは、モノマー混合物の総重量に対して、0.1〜50重量パーセントのレベルで存在し、好ましくは5〜40重量パーセント、最も好ましくは5〜20重量パーセントである。
【0012】
他に、非水溶性モノマーが、モノマー混合物中に少量存在しても良く、すなわち、モノマー混合物の総重量に対して少なくとも50重量%未満で存在し得る。そのような非水溶性モノマーは、好ましくはモノマー混合物の総重量に対して少なくとも25重量%未満である。本発明における有用な非水溶性モノマーは水溶性モノマーおよび架橋モノマーを組み合わせて共重合可能なものを含む。これらはモノエチレン性不飽和を持つ、芳香族および脂肪族モノマーの両方を含み、エチレン性基以外の官能基で置換されたものを含む。
【0013】
本発明における有用な重合開始剤は、ペルオキシド、ヒドロペルオキシドおよび関連開始剤、例えばベンジルペルオキシド、tert−ブチルハイドロペルオキシド、クメンペルオキシド、テトラリンペルオキシド、アセチルペルオキシド、カプロイルペルオキシド、tert−ブチルペルベンゾアート、tert−ブチルジペルフタラート、メチルエチルケトンペルオキシドなどの、モノマー可溶性開始剤を含む。アゾジイソブチロニトリル、アゾジイソブチルアミド、2,2’−アゾ−ビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾ−ビス−(α−メチルブチロニトリル)およびジメチル−、ジエチル−またはジブチル−アゾ−ビス−(吉草酸メチル)などのアゾ開始剤もまた有用である。開始剤は、モノマーの総重量に対して0.01〜10重量%のレベルで使用され、好ましくは、ペルオキシド開始剤は、モノマーの総重量に対して0.01重量%〜3重量%のレベルで使用され、好ましくは、アゾ開始剤モノマーの総重量に対して0.01重量%〜2重量%のレベルで使用される。好ましい開始剤は、アゾ開始剤であり、2,2’−アゾ−ビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)がとりわけ好ましい。
【0014】
前述のとおり、水溶性モノマーの有機相への溶解度を下げるため、塩が当技術分野で使用されてきた。驚くべきことに、本発明の方法の無塩実施形態では、水溶性モノマーの水相への溶解度を下げるための塩を必要とせずに高分子化合物を製造することが分かった。
【0015】
前述のとおり、水溶性モノマーの有機相への溶解度を下げるため、塩が当技術分野で使用されてきたが、いくつかの塩では、反応装置の腐蝕を引き起こすまたは表面積の少ないポリマーが生成するため、解決が難しいことが分かっている。本発明の方法の混合塩実施形態では、本発明の特定の塩の組み合わせが非腐蝕性であり表面積が増加することが分かった。このような適切な塩の組み合わせは、これらに限定するものではないが、次のうち少なくとも1つの塩:重炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、重炭酸カリウム、硫酸カリウム、重炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、重炭酸カルシウム、リン酸ナトリウムおよび硫酸カルシウム、と組み合わせた亜硝酸ナトリウムを含む。好ましくは、本発明の塩の組み合わせは、次のうち少なくとも1つの塩:重炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、重炭酸カリウムおよび硫酸カリウム、と組み合わせた亜硝酸ナトリウムである。本発明の塩の組み合わせでは、亜硝酸ナトリウムが存在しなければならない。塩の組み合わせは、一般的に加えた水の総量に対して1〜20重量パーセントで水相に存在し、好ましくは1〜15パーセント、最も好ましくは2〜12パーセントである。
【0016】
本発明における有用な懸濁化剤は、当業者に既知である。適切な具体例としては、これらに限定するものではないが、ゼラチン、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシメチルエチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、およびポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)を含む。
【0017】
モノマー相は水相中に球状の液滴を形成し、液滴は、好ましくは撹拌によって懸濁が維持されるが、例えば、静的ミキサーの使用またはその密度により動こうとする方向と逆の液体の流れの中に液滴を懸濁させることなど、当業者が容易に分かる懸濁を維持する他の方法も使用され得る。重合反応は懸濁したモノマー液滴内で起こるが、それは、液滴が重合開始剤の分解温度程度となることによって開始される。合理的な低めの重合温度は、多くの一般的な開始剤の分解温度より高い約50℃であり、当業者は、もしこれより高い分解温度を持つ開始剤が選択された場合は最低温度は実際に使用される開始剤の分解温度によって選択されることを認識するであろう。重合反応の上限温度は懸濁化剤の沸点であり、本明細書で使用される媒体は水性であるので大気圧での最大温度は100℃であり、より高圧下ではより高温が用いられる。1つ以上のモノマーもしくは分散剤の分解を防ぐため、または当業者に明らかな他の理由により、より低温の方が有利でありうる。
【0018】
本発明の方法は、ゲルおよびマクロ多孔質樹脂の両方の調製に使用することができる。マクロ多孔質樹脂の調製には、ポロゲンが通常使用される。マクロ多孔質樹脂の作製に有用なポロゲンは当業者に既知であり、その性質および選択については、例えば米国特許第3,991,017号で議論されている。ポロゲンは、モノマーはそれに可溶だが結果として生じるポリマーは不溶であり、懸濁液滴内にモノマーを溶解し、重合混合物の他の成分とは反応しない物質である。したがって、本発明の方法では、十分なポロゲンが、モノマー混合物を少なくとも部分的に溶解するため、およびポリマーが形成される際に粒子内に細孔を形成するために、懸濁液滴内に留まらなければならない。本発明の好ましいポロゲンは、これらに限定するものではないが、メチラール、メチルイソブチルケトン、メチルイソブチルカルビノール、ジイソブチルケトン、キシレン、トルエン、ヘキサン、へプタン、オクタン、イソオクタン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、ジメチルベンゼン、エチルベンゼン、シクロヘキサノン、ジオクチルフタレートおよびそれらの組み合わせを含む。
【0019】
無塩実施形態において、ゲル状樹脂の調製には、必須でないが溶媒が通常使用される。当業者に既知の溶媒が使用される。適切な具体例としては、これらに限定するものではないが、テトラヒドロフラン、トルエン、オクタン、メチルイソブチルカルビノール、およびジオキサンを含む。驚くべきことに、前述の組み合わせは、有機相で共に用いられるとマクロ多孔質樹脂を生成することが分かった。
【0020】
ポロゲンまたは溶媒(存在する場合)は、溶媒抽出処置または蒸留過程によって、終局ポリマーから除去することができる。溶媒抽出は、一般的に当業者に既知の溶媒を用いて行われる。適切な具体例としては、これらに限定するものではないが、メタノール、エタノール、プロパノールまたはアセトンを含む。形成される樹脂は、当業者に既知の方法によって水相から分離することができる。
【0021】
本発明の方法によって製造された樹脂は3〜80m2/gの表面積、0.03〜0.30cm3/gの細孔容積、0.0005〜0.0080cm3/gのミクロ細孔容積、および100〜400オングストロームの細孔径を持つ。すべてのパラメーターはBET法を用いて測定される。本発明の樹脂は、限定するものではないが例えばカルボニル化反応など、様々な反応の触媒として使用することができる。
また、本発明の方法によって製造された樹脂には下記の樹脂が包含される。
(1)少なくとも50重量パーセントの1つの水溶性モノマーおよび0.1〜50重量パーセントの水不溶性架橋モノマーの重合単位を含み、並びに表面積3〜80m2/g、細孔容積0.03〜0.30cm3/gおよび細孔径100〜400オングストロームを有する樹脂。
(2)前記樹脂がゲル状である、上記(1)に記載の樹脂。
(3)前記樹脂がマクロ多孔質である、上記(1)に記載の樹脂。
(4)前記樹脂が、表面積3〜80m2/g、細孔容積0.03〜0.30cm3/g、ミクロ細孔容積0.0005〜0.0080cm3/g、細孔径100〜400オングストロームである、上記(3)に記載の樹脂。
(5)前記樹脂が清浄である、上記(4)に記載の樹脂。
(6)前記水不溶性架橋モノマーが芳香族架橋剤である、上記(1)に記載の樹脂。
(7)前記水不溶性架橋モノマーが、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルトルエン、ジビニルクロロベンゼン、ジアリルフタレート、ジビニルキシレン、ジビニルエチルベンゼン、トリビニルナフタレンおよびポリビニルアントラセンからなる群から選択される、上記(6)に記載の樹脂。
【0022】
混合塩実施形態においては、有利なことに、本発明の混合塩の組み合わせは、各塩単独と比べ、ポリマー樹脂の内部表面積へのアクセシビリティの増加を示すBET窒素吸着率が増加することが分かった。このアクセシビリティの増加により、樹脂マトリックス内へのより効果的な金属負荷および分布ならびに樹脂マトリックス内外への反応物および製品のより容易な分散に起因する、より効果的な触媒が期待される。本発明において、表面積の、等温線のBET部分が終了するまでの時間に対する比率は、内部表面積のアクセシビリティおよび終局樹脂の相対的清浄性を表す。6.7以上の比値は清浄性を表し、清浄とみなされ、6.7未満は望ましくないとされる。したがって、6.7以上の比値を持つ本発明の塩の組み合わせは非腐蝕性でありかつより清浄であり、それゆえ、各塩単独、または硝酸ナトリウムを含まない混合物より有利である。
【0023】
表面積、細孔容積、ミクロ細孔容積および細孔径の測定はBET法を用いて行われ、特に本明細書の実施例においては、試験方法は次のとおりである。前もって105℃で乾燥させた0.20〜0.25gの樹脂をサンプルチューブに移し、脱気しさらに105℃、真空下で(50μm)少なくとも1晩乾燥させた。再計量後、脱気サンプルをMicromeritics社製ポロシメータ、Tri Star 3000 Surface Area and Porosity Analyzer上に置いた。吸着曲線は相対圧0.01〜0.998で53点を用いて、脱着曲線は相対圧0.998〜0.05で45点を用いてN等温線が得られた。BET法を用いた表面積は、相対圧0.06〜0.20の点で得られた。全細孔容積は、相対圧0.998において吸着されたガスの最大量から得られた。ミクロ細孔容積t−plot分析から評価された。4V/Aにより計算される平均径は、同じ全細孔容積および表面積を持つとした均一な円柱の直径である。2つの経過時間、等温線のBET部分が終了するまでの時間(相対圧0.20に対して11点)および全細孔容積に到達するまでの時間(相対圧0.998に対して53点)が算出された。これらの時間は、第一の参照圧力測定に関連して行われ、1〜2時間の装置起動シーケンスの最後に行われる。しばしば液体窒素デュワーフラスコを差し替えるために分析を中断する必要があるため、全時間を分析に利用することはできず、それにより総経過時間には記録されない遅延がもたらされる。
【0024】
以下の実施例は、本発明を説明することを意図したもので、特許請求の範囲に限定されたものを除き本発明を限定することを意図したものではない。すべての比およびパーセンテージは重量基準である。
【0025】
実施例
比較例1〜3および混合塩実施例MS−1およびMS−2:ポリ(4−ビニルピリジン−コ−ジビニルベンゼン)マクロ多孔質樹脂の合成
水相を、720gの水および2.4gのPharmagel(商標、PHARMAGEL ENGINEERING社より入手可能なゼラチン懸濁化剤)を加え、50℃で2時間加熱することにより構築した。反応器を室温まで冷やした。塩を反応器に加え、有機相を加える前に混ぜた。(比較例1〜3および実施例1および2に加えた塩については下表2を参照されたい。)有機相を加える前30分間、反応器を撹拌した。有機相は次の反応物質を混ぜることによって作製された:ジビニルベンゼン180g(63%)、4−ビニルピリジン198g、トルエン47g、n−オクタン23g、ジベンゾイルジフェニルペルオキシド4gおよび2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1g。有機相を開始剤が完全に溶解するまで混ぜた。次に有機相を反応器に加え、180rpm、室温で60分間分散させた。反応器を加熱し、70℃で4時間維持し、90℃まで加熱し、6時間維持した。反応器の液体レベルを維持するために水を加えながら、蒸留を還流条件で10時間行った。次に樹脂を、逆流カラムで上向きに24時間、40℃で洗浄し、作製した樹脂から微粒子と残留物を除去した。次にサンプルを分析にかけた。腐蝕についての結果は表1のように予測される。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
[表]
(*)比値が大きいほど良い結果である。
(**)NaHCO3およびNaHCO3/NaNO2混合塩の化学的効果により、表面積が改善した。
【0029】
実施例3:ポリ(4−ビニルピリジン−コ−ジビニルベンゼン)マクロ多孔質樹脂の合成
水相を、720gの水および2.4gのPADMAC(商標)を加え、50℃で2時間加熱することにより構築した。反応器を室温まで冷やした。NaHCO3(5%)およびNaNO(1%)を反応器に加え、有機相を加える前に混ぜた。(実施例3については下表3を参照されたい。)有機相を加える前30分間、反応器を撹拌した。有機相は次の反応物質を混ぜることによって作製された:ジビニルベンゼン180g(63%)、4−ビニルピリジン198g、トルエン47g、n−オクタン23g、ジフェニルペルオキシド4gおよび2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1g。有機相を開始剤が完全に溶解するまで混ぜた。次に有機相を反応器に加え、180rpm、室温で60分間分散させた。反応器を加熱し、70℃で4時間維持し90℃まで加熱し、6時間維持した。反応器の液体レベルを維持するために水を加えながら、蒸留を還流条件で10時間行った。次に樹脂を、逆流カラムで上向きに24時間、40℃で洗浄し、作製した樹脂から微粒子と残留物を除去した。次にサンプルを分析にかけた。
【0030】
【表3】
【0031】
【表4】
*BET SA−BETにより測定される表面積
全PV−BETにより測定される全細孔容積
μPV−BETにより測定されるミクロ細孔容積
細孔径−BETにより測定される細孔径
t−等温線のBET部分が終了するまでの時間
【0032】
無塩実施例NS−1:ポリ(4−ビニルピリジン−コ−ジビニルベンゼン)マクロ多孔質樹脂の合成
水相を720gの水および2.4gのPharmagel(商標、PHARMAGEL ENGINEERING社より入手可能なゼラチン懸濁化剤)を加え、50℃で2時間加熱することにより構築した。反応器を室温まで冷やした。有機相を加える前30分間、反応器を撹拌した。有機相は次の反応物質を混ぜることによって作製された:ジビニルベンゼン180g(63%)、4−ビニルピリジン198g、トルエン47g、n−オクタン23g、ジベンゾイルペルオキシド4gおよび2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1g。有機相を開始剤が完全に溶解するまで混ぜた。次に有機相を反応器に加え、180rpm、室温で60分間分散させた。反応器を加熱し、70℃で4時間維持し、90℃まで加熱し、6時間維持した。反応器の液体レベルを維持するために水を加えながら、蒸留を還流条件で10時間行った。次に樹脂を、逆流カラムで上向きに24時間、40℃で洗浄し、作製した樹脂から微粒子と残留物を除去した。次にサンプルを分析にかけた。
【0033】
無塩実施例NS−2:ポリ(4−ビニルピリジン−コ−ジビニルベンゼン)ゲル状樹脂の合成
水相を、720gの水および2.4gのPharmagel(商標)を加え、50℃で2時間加熱することにより構築した。反応器を室温まで冷やした。有機相を加える前30分間、反応器を撹拌した。有機相は次の反応物質を混ぜることによって作製された:ジビニルベンゼン180g(63%)、4−ビニルピリジン198g、トルエン70g、ジベンゾイルペルオキシド4gおよび2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1g。有機相を開始剤が完全に溶解するまで混ぜた。次に有機相を反応器に加え、180rpm、室温で60分間分散させた。反応器を加熱し、70℃で4時間維持し90℃まで加熱し、6時間維持した。反応器の液体レベルを維持するために水を加えながら、蒸留を還流条件で10時間行った。次に樹脂を、逆流カラムで上向きに24時間40℃で洗浄し、得られた樹脂から微粒子と残留物を除去した。次にサンプルを分析にかけた。
【0034】
無塩実施例NS−3:メタクリル酸エステルエチルジメチルアミンを用いた、ポリ(N,N’ジメチルエチルアミンメタクリル酸エステル−コ−ジビニルベンゼン)−ゲル状樹脂の合成
水相を、720gの水、2.4gのPharmagel(商標)を加え、50℃で2時間加熱することにより構築した。反応器を室温まで冷やした。有機相を加える前30分間、反応器を撹拌した。有機相は次の反応物質を混ぜることによって作製された:ジビニルベンゼン180g(63%)、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート198g、トルエン70g、ジベンゾイルペルオキシド4gおよび2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1g。有機相を開始剤が完全に溶解するまで混ぜた。次に有機相を反応器に加え、180rpm、室温で60分間分散させた。反応器を加熱し、70℃で4時間維持し90℃まで加熱し、6時間維持した。蒸留を還流条件で10時間行い、反応器の液体レベルを維持するために水を加えた。次に樹脂を、逆流カラムで上向きに24時間、40℃で洗浄し、作製した樹脂から微粒子と残留物を除去した。次にサンプルを分析にかけた。
【0035】
無塩実施例NS−4:スチレンを用いた、ポリ(4−ビニルピリジン−コ−スチレン−ジビニルベンゼン)マクロ多孔質樹脂の合成
水相を、720gの水および2.4gのPharmagel(商標)を加え、50℃で2時間加熱することにより構築した。反応器を室温まで冷やした。反応器を加える前30分間、反応器を撹拌した。有機相は次の反応物質を混ぜることによって作製された:ジビニルベンゼン168g(63%)、4−ビニルピリジン198g、スチレン30g、n−オクタン35g、トルエン35g、ジベンゾイルペルオキシド4gおよび2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1g。有機相を開始剤が完全に溶解するまで混ぜた。次に有機相を反応器に加え、180rpm、室温で60分間分散させた。反応器を加熱し、70℃で4時間維持し90℃まで加熱し、6時間維持した。蒸留を還流条件で10時間行い、反応器の液体レベルを維持するために水を加えた。次に樹脂を、逆流カラムで上向きに24時間、40℃で洗浄し、作製した樹脂から微粒子と残留物を除去した。次にサンプルを分析にかけた。
【0036】
比較例11:塩を用いた、ポリ(4−ビニルピリジン−コ−ジビニルベンゼン)マクロ多孔質樹脂の合成
水相を、720gの水、2.4gのPharmagel(商標)および10%塩化ナトリウム(72g)を加え、50℃で2時間加熱することにより構築した。反応器を室温まで冷やした。反応器を加える前30分間、反応器を撹拌した。有機相は次の反応物質を混ぜることによって作製された:ジビニルベンゼン180g(63%)、4−ビニルピリジン198g、トルエン47g、n−オクタン23g、ジベンゾイルペルオキシド4gおよび2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1g。有機相を開始剤が完全に溶解するまで混ぜた。次に有機相を反応器に加え、180rpm、室温で60分間分散させた。反応器を加熱し、70℃で4時間維持し90℃まで加熱し、6時間維持した。反応器の液体レベルを維持するために水を加えながら、蒸留を還流条件で10時間行った。次に樹脂を、逆流カラムで上向きに24時間、40℃で洗浄し、作製した樹脂から微粒子と残留物を除去した。次にサンプルを分析にかけた。
【0037】
【表11】