(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6309968
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】矩形または長方形のスティックブレードの径方向調整能力を持つ歯切工具
(51)【国際特許分類】
B23F 21/12 20060101AFI20180402BHJP
B23C 5/24 20060101ALI20180402BHJP
【FI】
B23F21/12
B23C5/24
【請求項の数】17
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-547480(P2015-547480)
(86)(22)【出願日】2013年12月11日
(65)【公表番号】特表2016-504205(P2016-504205A)
(43)【公表日】2016年2月12日
(86)【国際出願番号】US2013074227
(87)【国際公開番号】WO2014093411
(87)【国際公開日】20140619
【審査請求日】2016年9月15日
(31)【優先権主張番号】61/737,525
(32)【優先日】2012年12月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500094370
【氏名又は名称】ザ グリーソン ワークス
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハーマン ジェイ.シュタットフェルト
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー ジェイ.ノーセリ
【審査官】
宮部 菜苗
(56)【参考文献】
【文献】
特表2008−522842(JP,A)
【文献】
米国特許第01836472(US,A)
【文献】
米国特許第02584449(US,A)
【文献】
特開2006−075974(JP,A)
【文献】
特公昭35−001599(JP,B1)
【文献】
特開2002−346808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23F 1/00−23/12
B23C 1/00−9/00
B23B 27/00−29/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
かさ歯車およびハイポイドギヤのフェースホブ加工用およびフェースミル加工用のためのかさ歯車フェースカッターヘッドであって、前記カッターヘッドは概ね円板形状であってカッターヘッド軸線を中心に回転可能であり、前記カッターヘッドは、
頂面および底面と、
カッターヘッドに設けられる1つ以上の切削ブレード位置決め溝であって、前記頂面および前記底面の間に延在してそれぞれの前記切削ブレード位置決め溝に四辺形状の断面を画成し、前記切削ブレード位置決め溝のそれぞれと共に前記カッターヘッドに配される1つ以上の切削ブレード位置決め溝と
を具え、前記切削ブレード位置決め溝は、前記頂面および前記底面の間に延在する少なくとも1つのブレード着座面をそれぞれ有し、
前記少なくとも1つのブレード着座面は改変形状を有すると共に前記頂面から前記底面まで延在し、前記改変形状が前記頂面から前記底面まで延在する連続した直線状着座面の直線形状から外れ、
前記カッターヘッドは切削ブレードを締めることができることにより、前記切削ブレードが仮締めされて軸線方向に位置決めされ、その後、前記切削ブレードは、前記ブレード着座面の前記改変形状の領域で設置されるねじ部材のトルクの増大によって刃先の径方向位置が調整できる
ことを特徴とするカッターヘッド。
【請求項2】
前記改変形状は、
前記頂面または前記底面の一方から前記頂面および前記底面の間のあらかじめ設定された位置まで延在し、第1の形状を有する第1の部分と、
前記あらかじめ設定された位置から前記改変形状が前記頂面または前記底面の他方まで延在し、第2の形状を有する第2の部分であって、前記第1の部分の形状および前記第2の部分の形状が相互に前記頂面から前記底面まで延在する連続した直線を共に描かないようになっていることを特徴とする請求項1に記載のカッターヘッド。
【請求項3】
前記第1の部分および前記第2の部分の少なくとも一方の形状が湾曲していることを特徴とする請求項2に記載のカッターヘッド。
【請求項4】
前記第1の部分および前記第2の部分の少なくとも一方の形状が直線状であることを特徴とする請求項2に記載のカッターヘッド。
【請求項5】
1つ以上の固定ねじ部材をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載のカッターヘッド。
【請求項6】
前記第1の部分に力を加えるように配された第1の固定ねじ部材と、前記第2の部分に力を加えるように配された第2の固定ねじ部材との2つの固定ねじ部材を具えていることを特徴とする請求項5に記載のカッターヘッド。
【請求項7】
前記切削ブレードの隅部に力を加えるように配された第1の固定ねじ部材と、前記第1の部分または前記第2の部分に力を加えるように配された第2の固定ねじ部材との2つの固定ねじ部材を具えていることを特徴とする請求項5に記載のカッターヘッド。
【請求項8】
前記1つ以上の前記切削ブレード位置決め溝は、概ね正方形状または長方形状の断面を画成していることを特徴とする請求項1に記載のカッターヘッド。
【請求項9】
前記1つ以上の前記切削ブレード位置決め溝が2つのブレード着座面を含むことを特徴とする請求項8に記載のカッターヘッド。
【請求項10】
前記2つのブレード着座面の一方に対して力を加えるように配された少なくとも1つの固定ねじ部材をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載のカッターヘッド。
【請求項11】
前記2つのブレード着座面の他方が改変されていないことを特徴とする請求項10に記載のカッターヘッド。
【請求項12】
山形固定ブロックをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のカッターヘッド。
【請求項13】
カッターヘッドに配された少なくとも1つの切削ブレードを形直しする方法であって、
概ね円板形状であって、カッターヘッド軸線を中心に回転可能であるカッターヘッドを用意することであって、前記カッターヘッドは、第1の側および第2の側と、前記カッターヘッドに設けられた1つ以上の切削ブレード位置決め溝とを具え、前記切削ブレード位置決め溝のそれぞれが前記第1の側と前記第2の側との間に延在し、前記切削ブレード位置決め溝は、前記第1の側と前記第2の側との間に延在する少なくとも1つブレード着座面をそれぞれ有すると共に四辺形状の断面を画成し、前記少なくとも1つのブレード着座面は、改変形状を有して前記第1の側から前記第2の側まで延在し、前記改変形状は前記第1の側から前記第2の側まで延在する連続した直線状の着座面の形状から逸脱することと、
切削ブレードを少なくとも1つの前記切削ブレード位置決め溝に挿入し、前記切削ブレードを前記少なくとも1つのブレード着座面と接触状態へともたらすことと、
前記切削ブレードに力を加えて前記切削ブレードを前記少なくとも1つの着座面に対して締め付け、これによって前記切削ブレードの先端が前記軸線から、ある径方向の距離に配されることと、
前記切削ブレードにさらなる力を加えて前記改変形状を有する前記ブレード着座面にある前記切削ブレードを実質的に動かし、これによって切削刃先の前記径方向の距離の変動をもたらすことと
を具えたことを特徴とする方法。
【請求項14】
回転可能な切削工具のためのカッターヘッドであって、前記カッターヘッドは概ね円板形状であって、カッターヘッド軸線を中心に回転可能であり、前記カッターヘッドは、
第1の側および第2の側と、
前記カッターヘッドに設けられた1つ以上の切削ブレード位置決め溝であって、それぞれが前記第1の側と前記第2の側との間に延在して四辺形状の断面を画成する切削ブレード位置決め溝と
を具え、前記切削ブレード位置決め溝は、前記カッターヘッドが前記第1の側と前記第2の側との間に延在する少なくとも1つのブレード着座面をそれぞれ有し、
前記少なくとも1つのブレード着座面は、前記第1の側から前記第2の側まで延在する旋回ブロックに設けられ、この旋回ブロックは、前記第1の側と前記第2の側との間に配された旋回手段を中心に旋回可能であることを特徴とするカッターヘッド。
【請求項15】
前記旋回手段が旋回ピンを具えていることを特徴とする請求項14に記載のカッターヘッド。
【請求項16】
前記旋回手段は、前記旋回ブロックまたは前記カッターヘッドの一方にある湾曲した旋回面と、前記旋回ブロックまたは前記カッターヘッドの他方にある対応した形状の湾曲引っ込みとを具えていることを特徴とする請求項14に記載のカッターヘッド。
【請求項17】
前記旋回手段は、前記旋回ブロックと前記カッターヘッドとを連結する追従要素を具え、前記カッターヘッドは、前記追従要素と前記第1の側との間に配された第1の追従溝と、前記追従要素と前記第2の側との間に配された第2の追従溝とをさらに含むことを特徴とする請求項14に記載のカッターヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2012年12月14日に提出された米国仮特許出願第61/737525号の利益を請求し、参照することによってその開示全体がこの明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、歯車製造、特にフェースホブ加工およびフェースミル加工用のためのかさ歯車フェースカッターヘッドに向けられる。
【背景技術】
【0003】
傘歯車およびハイポイドギヤは、単一または間欠割り出し方式(フェースミル加工)か、あるいは連続割り出し方式(フェースホブ加工)で切削することができる。創成またはクレードル面での基本的な切削の段取りは、カッターヘッドの中心をいわゆる径方向距離の量だけ創成する歯車の中心(クレードル軸線)から離れた位置に移動させよう。切削ブレードの輪郭は、カッターが回転している間、創成する歯車の1つの歯を示す。かさ歯車切削のための一般的なフェースカッターは、いくつかのブレード群を有し、それぞれの群が1本から4本のブレードを有する。最も一般的なカッターは、ブレード群毎に1つの外側ブレードと1つの内側ブレードとを持った互い違いの(完成した)カッターである。すべての内側ブレードおよびすべての外側ブレードの等しい切り込みを切削加工中に達成するため、すべての外側ブレードの切れ刃は同じ径方向位置にて相互に追従することが好ましい。また、すべての内側ブレードは同じ径方向位置にて相互に追従すべきである。換言すれば、一種類(内側または外側)のすべての刃先は、カッターが回転している間、同じ円錐面を画成すべきである。
【0004】
カッターヘッド本体の製作公差と、ブレード素材と、ブレードの輪郭研削でのずれとは、1つのカッターヘッドの異なるブレードに関して異なる切れ刃位置をもたらそう。
【0005】
旧来のフェースカッターシステムはブレードの径方向位置の調整を可能にしたのに対し、今日のスティックブレードシステムは径方向の調整を直接達成するための対策を有していない。しかしながら、切れ刃位置の径方向の変更を達成する周知の技術は、以下の2つの方法を含む。すなわち、
1.スティックブレードが基準位置と異なる軸線方向のある位置に動かされると、この場合にはカッター基準面における半径がほぼΔR=Δs・tanαだけ増大または減少し、ここでΔsはスティックブレードの正または負の軸線方向移動であり、αはブレードの圧力角である(例えば特許文献1を参照のこと)。
2.スティックブレードが(上部および下部の)2つの固定ねじ部材にて締め付けられると、この場合には、スティックブレードが厳密にまっすぐではないか、あるいは標準的な溝壁が厳密に平らではないと、上部または下部ねじ部材のトルクの増大は刃先を径方向にわずかに動かすことを可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5839943号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の方法1の欠点は、軸線方向に変位したすべてのブレードの刃先がこれらの共通刃先面からずれてしまうことである。ブレードの調整は切れ刃の径方向位置を改善するけれども、これは刃先の振れを引き起こす。この刃先の振れは、ブレードの早すぎる先端摩耗を引き起こすもととなろう。
【0008】
上述の方法2の欠点は、カッターがブレード毎に2つの固定ねじ部材を必要とし、これら2つの固定ねじ部材のトルクを個々のブレードおよび溝の個別の誤差に応じて選択しなければならないということである。また、ブレードおよび溝の特別な形状のため、ブレード半径の増大またはブレード半径の縮小の如きブレード半径の変化が起こらないという可能性もある。このような場合、この特別な溝/ブレード組み合わせの調整ができない可能性がある。方法2は偶然の一致に基づいており、試行錯誤のループに費やす時間によって単に制御されるだけでしかない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、かさ歯車を製造するフェースホブ加工用およびフェースミル加工用のフェースカッターヘッドに向けられ、このカッターヘッドは正のブレード着座面と、ブレードをこの正の着座面にしっかりと締結してこれらを予備締結して軸線方向に位置決めした後、スティックブレードを径方向に調整する能力とを具えている。
【0010】
本発明のカッターヘッドは、概ね円板形状であって、カッターヘッド軸線を中心に回転可能である。このカッターヘッドは、第1の側および第2の側と、当該カッターヘッドに配された1つ以上の切削ブレード位置決め溝とを具え、ブレード位置決め溝のそれぞれは第1の側と第2の側との間に延在している。ブレード位置決め溝は、前記第1の側と第2の側との間に延在する少なくとも1つのブレード着座面をそれぞれ有し、ブレード着座面は改変形状を有すると共に第1の側から第2の側まで延在し、改変形状は第1の側から第2の側まで延在する連続した直線状着座面の形状から外れている。
【0011】
好ましくは、改変形状の着座面は、第1の側または第2の側の一方から第1の側と第2の側との間のあらかじめ設定された位置まで延在する第1の部分と、あらかじめ設定された位置から第1の側または第2の側の他方まで延在する第2の部分とを含み、第2の部分は、第1の部分の形状および第2の部分の形状が第1の側から第2の側まで延在する連続した直線(ずっと同じ傾斜)を共に描かないような形状を有する。第1の部分は直線であることが好ましくは、第2の部分は湾曲していることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】スティックブレード用のカッターヘッド溝にある複数の異なる種類の着座面改変を示す。
【
図2(a)】固定ブロックおよび上部固定ねじ部材のみがトルクを与えている状態の2つの固定ねじ部材によりカッターヘッドに連結されるスティックブレードを持つカッターヘッドの断面図を示す。
【
図2(b)】下部固定ねじ部材が上部固定ねじ部材よりも高いトルクを有する状態での
図2(a)と同じ断面図を示す。
【
図3(a)】1つの固定ねじ部材と固定ブロックとによって径方向着座面に押圧されたスティックブレードを示す。
【
図3(b)】1つの固定ねじ部材と固定ブロックとによって径方向着座面に押圧されたスティックブレードを示す。第2の固定ねじ部材は第1の固定ねじ部材の下方に配されて(
図2aまたは
図2bを参照)ブレードを下部径方向凹部へと押圧する。
【
図4】ブレードの二次元平面図をカッターヘッド溝の長方形断面と共に示す。ブレードは2つの着座面に対し山形固定ブロックと1つ以上の隅ねじ部材とによって押圧される。
【
図5】ブレードの三次元図面をカッターヘッド溝の長方形断面および正の座と共に示す。
【
図6】ブレードの二次元平面図をカッターヘッド溝の長方形断面と共に示す。破線は着座面の下部(見えない)の径方向着座面の改変を示す。
【
図7】ブレードの二次元平面図をカッターヘッド溝の長方形断面と共に示す。破線は接線方向着座面の下部が改変されていることを示す。上部固定ねじ部材は山形固定ブロックの隅部に向けられているのに対し、下部固定ねじ部材は径方向に向けられている。
【
図8】ブレードの三次元図面をカッターヘッド溝の長方形断面および正の座と共に示す。切削円に対して接線方向を向く着座面の下部が改変されている。
【
図9】
図2(a)の改変ブレード着座面の代わりの固定ブロック・ブレード・着座面の配置の断面図を示すが、これは(カッターの中心に向かって)その右側のブレード着座面と左側の旋回機構とを有する旋回ブロックを示している。
【
図10】3つのブレード溝をブレードと共に示した
図9からのカッターヘッドの一部の平面図を示す。
【
図11】
図2(a)の改変ブレード着座面の代わりの固定ブロック・ブレード・着座面の配置の断面図を示すが、これは機械的旋回軸線の代わりの追従要素を持つ旋回ブロックを示している。
【
図12】3つのブレード溝をブレードと共に示した
図11からのカッターヘッドの一部の平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この明細書で用いた「発明」および「この発明」ならびに「本発明」という用語は、この明細書および以下の特許請求の範囲のあらゆる請求項のすべての内容を広く解釈されること意図している。これらの用語を含む表現は、ここに記述された内容に限定するか、あるいは以下の特許請求の範囲の何れかの請求項の意味または範囲に限定するように理解されるべきではない。さらにまた、この明細書は、この出願の任意の請求項の任意の特定部分か、段落か、表現か、あるいは図面により包含される内容を記述または限定しようとしていない。その内容は、明細書全体およびすべての図面ならびに以下のあらゆる請求項を参照することによって理解されるべきである。この発明は他の構成で可能であり、種々の方法で実践または実行することができる。また、ここで用いた語彙および用語は、説明の目的のためであって限定として見なされるべきではないと解釈される。
【0014】
さて、本発明を単なる実例として示した添付図面を参照しつつ、この発明の詳細が論じられよう。図面において、同様な特徴または構成要素は、類似の参照番号によって指示されよう。「含む」および「有する」および「具える」ならびにこれらの変化形の使用は、その後に記載される要素を追加の要素と同様に包含することを意図している。
【0015】
図面を記述することにおいて、上部,下部,上方、下方,後方,下,上,前,後などの如き方向に対して参照が以下でなされる可能性があるけれども、便宜上、これらの参照は図面に対して(普通に見るように)なされている。これらの方向は、 文字通りに取られたり、または本発明を何らかの形態に限定したりすることを意図していない。加えて、「第1」,「第2」,「第3」などの如き用語は、説明の目的のためにここでは用いられており、特に述べない限り、重要性あるいは有意性を示すまたは意味することを意図していない。
【0016】
本発明は、最小限の副次的影響を持たないまたは持つ所定の方法で径方向に調整されることができる1つ以上の切削ブレードを持ったかさ歯車カッターヘッドに向けられる。これらの副次的影響は、刃先高さの変動,ブレードのオフセット変動,その長手方向軸線周りのブレードの回転および/またはブレード着座剛性の損失を含む。
【0017】
ブレード着座面は、これらの直線(平面)の初期形状から、
図1に示されるような引っ込みか、下部(または上部)区域の傾斜か、樽形状か、下部(または上部)区域の湾曲した引っ込みか、下部(または上部)区域の直線状立ち上がり形状か、直線状に降下して上昇する形状か、下部(または上部)区域の湾曲した立ち上がり形状か、凹湾曲形状か、あるいはより高次の改変によって変更されることができる。
【0018】
図1は、スティック状または棒状の切削ブレードのためのカッターヘッド2の切削ブレード位置決め溝の着座面4の異なる改変例を示す。直線状の着座面は現状の技術であり、本発明は、カッターヘッドの両側間に連続する直線着座面の直線形状から逸脱した形状(例えば
図1の「直線」および「下部湾曲」形状を比較のこと)を有する着座面を提供する。下部引っ込みと、下部傾斜と、下部湾曲と、直線立ち上がりと、湾曲立ち上がりとが改変であり、これらを刃先により近い着座面の上部区域に形成することも可能である。初期の着座を着座面の変更部分ではなく、直線部分によって与えることが好ましい。引っ込んだ領域に配される固定ねじ部材のトルクの増大は、ブレードの傾き(および何がしかのブレードの曲げ)をもたらし、刃先の径方向位置を変更しよう。直線状に降下して上昇するものは、一点鎖線にてその最低点を有し、これは一点鎖線にて頂点を有するように逆にされることができる。直線状に降下して上昇するものは、凹部および高次の改変と同様に、ねじ部材が一点鎖線に存在する場合、径方向の刃先移動を可能とし、ブレードを弾性的に撓ませる。
【0019】
図2(a)および
図2(b)は、上面3と、下、すなわち後面5とを有し、カッター軸線Aを中心に回転可能であってカッター半径Rを有するカッターヘッド2に関連した本発明のブレード調整原理を示している。改変着座面を有するブレード位置決め溝は、上面3と下面5との間に延在するように示される。スティックブレード8は、下部ねじ部材12からのトルクなしで(
図2a)、また上部ねじ部材10からのトルクよりも高い下部ねじ部材12からのトルクにて(
図2b)改変着座面(例えば
図1の「下部湾曲」)に固定ブロック6により押圧される。上部ねじ部材10のブレード固定力を上部固定ねじ部材の弾性によって一定またはほぼ一定に保持することができる場合、切削ブレード8を改変着座面に対して時計回り方向に実質的に転がすことにより切削ブレード8を揺動させ、これによって刃先位置を径方向に調整するため、下部ねじ部材12の固定トルクを増大させることができる。上部固定ねじ部材の弾性配置は、上部での固定力の著しい増大を阻止し、ブレードの撓みと言うよりもむしろブレードの転がりをもたらす。上部固定ねじ部材10が充分な弾性を有していない場合、ブレードの曲げとブレードの転がりとの組み合わせが起こり、依然として切削ブレード8の径方向の調整を可能にしよう。両方の場合において、ブレードと着座面との間の間隙14は、下部(
図2a)から上部(
図2b)まで移動させられる。図示した着座面が固定ねじ部材の軸接方向に対して直交していると、この場合には固定剛性の低下を結果として生ずる。
【0020】
固定ねじ部材または加圧点の数(例えば1か2または3)に応じて、径方向Rにおける刃先移動ΔRを固定設備のトルクに応じて達成することができる(
図2bを参照)。1つの副次的影響は、切れ刃圧力角がφだけ変化することである。第2の副次的影響は、ブレードと着座面の上部または下部の溝との間の間隙14であり、これはブレードの着座剛性を低減させる可能性がある。
【0021】
本発明のカッターヘッドの設計は、四辺形状(例えば正方形または長方形)のブレードを有する種類のスティックブレードシステムに好ましくは適合する。
図3(a)は、1つの固定ねじ部材10と固定ブロック6とでカッターヘッド2のブレード位置決め溝20の径方向着座面22に押圧される長方形断面を持ったスティックブレード8を示している。ブレード8とカッターヘッド2との間の結合は、(固定ブロック6と径方向着座面22との間の)摩擦着座である。固定ブロック6は、図示したような1つのねじ部材10か、あるいは2つ以上のねじ部材にてブレードに対し押圧されることができる。何がしかの切削を行うに先立ち、カッターが作られる(すなわち組み立てられる)時に切削ブレード8を溝20へと自由に摺動させるための間隙26が必要である。この時、間隙26の全体またはその一部がブレード8と径方向着座面22との間にあってよい。主切削力は、制限された摩擦着座のためにブレード8を径方向着座面22に沿って摺動させることができる。その結果として、これはブレードの位置決め精度を低下させないだけでなく、切れ刃の欠損および工具寿命の低下を引き起こさなくすることができよう。
【0022】
図3(b)は、1つの固定ねじ部材10と固定ブロック6とで径方向着座面22に押圧されたスティックブレード8を示している。第2の固定ねじ部材12が第1の固定ねじ部材の下に配され(
図2(a)参照)、ブレードを例えば
図1の「下部湾曲」の如き径方向改変28へと押圧する。第2の固定ねじ部材12からの力は、ブレード8の下部をカッターヘッドの中心に向けて径方向に移動させよう。ブレードは着座面22と改変28との間の遷移位置にて旋回し、ブレードの先端はわずかにより大きな半径へと移動しよう。
【0023】
図4の実施形態において、本発明のカッターヘッドは、長方形のブレード断面と2つの着座面の間の正のブレード着座とを持つスティックブレードシステムと、切削ブレード8の隅部とこの切削ブレードの隅部を画成するように交差する切削ブレードの両側面の少なくとも一部とに当接する山形固定ブロックとを具えている。切削ブレード8は、山形固定ブロック30および1つ以上の隅ねじ部材10,12により2つの着座面22,24に対して押圧され、これによって山形固定ブロック30と2つの着座面22,24との間に正(形態)の着座を与える。
【0024】
図5は、長方形断面およびカッターヘッド溝20に正の着座を持つ切削ブレード8の図面を示す。固定ねじ部材のトルクT
1およびT
2は、山形固定ブロック30の隅部に対して固定力を発生させる。固定ねじ部材の力は、スティックブレード8を2つの着座面22,24に対して押圧しよう。径方向着座面22はブレードを径方向に位置決めし、接線方向着座面24は主切削力に対して反力をもたらす。
【0025】
図6において、破線は着座面の下部(目に見えない)における径方向着座面22の改変28を示している。2つの隅部固定ねじ部材10および12は、スティックブレード8を改変引っ込み28へと動かす唯一の限定された可能性を有する。上部固定ねじ部材10は、ブレード8の上部を径方向着座面22の接線方向かつ未改変の上部にのみ押圧しよう。下部ねじ部材12は、ブレード8の下部を接線方向着座面22から改変引っ込み28へと動かすため、摩擦力を克服できる可能性がある径方向着座面22に対する構成要素を有しよう。
【0026】
図7において、上部固定ねじ部材10は、山形固定ブロック30の隅部に向けられ、スティックブレード8をその2つの力成分(F
1aおよびF
1b)にて径方向着座面22および接線方向着座面24(正の着座)の上部へと押圧する。下部固定ねじ部材12は、径方向に向けられ、ブレード8をその全固定力F
2にて径方向着座面22の下部の引っ込み28へと押圧する。接触力は、着座面改変が始まる境界線で最大となる。ブレード8は、この境界線(
図8における「P」)の周りに旋回してその下部を改変引っ込み28へと移動しよう。同時に、ブレード8の先端32が反対方向に移動して刃先半径を変更しよう。下部固定ねじ部材への固定力は、刃先32の径方向移動を制御する。ブレードが旋回軸線P周りに回転するけれども、接線方向着座面24でのカッター溝20とスティックブレード8との間の充分な着座接触が維持される。このような回転は、ブレード上部領域での径方向着座圧力を低減させると共にブレード8と上部固定ブロック領域における固定ブロック30との間の圧力を増大させよう。充分な面圧が切削ブレード8と接線方向着座面24との間の特に上部領域にて維持されよう。これは、本発明のカッターヘッド設計の重要な特徴であり、その理由は主切削力が接線方向に向けられて良好な着座剛性を持った良好な固定状態のブレードを結果として得られるためである。
【0027】
図8は、改変ベクトルの始点にある旋回軸線Pを示し、座標系のX軸と同じ方向に向けられおり、φはブレードの調整のためのブレードの回転方向である。V
PTはブレード調整前の旋回中心刃先間距離ベクトルであり、V
PT*はブレード調整後の旋回中心刃先間距離ベクトルである。この調整はブレードをΔΖ方向に動かし、これは刃先位置の望ましい径方向変化である。切削ブレードの摺動回転のため、付随するΔΥの変化もまた、生ずる。このようなΔΥの変化は望ましくないように概ね考えられるけれども、本発明者らはこのような影響は小さく、切削加工によって形成される歯の幾何学的形状に対してごくわずかな影響しか与えないことを確認している。本発明のブレード調整のさらなる副次的影響は、ブレード回転(または転がり)角φと同じ大きさでの切れ刃の角度変化である。しかしながら、0.010mmの範囲でのブレードの径方向調整は、有効切れ刃圧力角を1分だけ変化させる。ブレードからブレードまでのこのような変化はまた、切削作業および製作される歯面の幾何学的形状に対してごくわずかである。
【0028】
一例として、ある調整の結果としての刃先移動の数学的記述がブレード8および溝20と共に
図8に示した座標系を用いてなされた。水平な回転軸線Pは、接線方向着座面24に対して直交している。
図8の座標系のX軸線に対して平行であるP周りの回転を達成するため、X軸線周りの回転のための回転行列が用いられる。次に、X軸線周りの(着座面の改変の大きさに依存した)大きくはない実際の回転量φがφ=0.08°で選択される。
【0029】
φのX軸を中心とするブレードの調整回転は、
【0032】
実際に中位のピッチのブレード用の初期旋回中心刃先間距離ベクトルは、
【0035】
旋回中心刃先間距離ベクトルと行列(PHI)との積は、水平軸線P周りの旋回中心刃先間ベクトルの正確な回転に帰着する。
【0037】
ベクトルと行列との積の結果は、以下にその一般的形態で示される。
【0039】
V
PTおよび角度φのベクトル成分を上の3成分の式に置き換えたならば、次の調整後の結果である旋回中心刃先間ベクトルとして、
【0042】
調整後の旋回中心刃先間ベクトルから調整前の旋回中心刃先間ベクトルの減算は、この調整のために刃先位置の成分を変化させる。
ΔΧ=V
PTX*−V
PTX= 0.000mm
ΔΥ=V
PTY*−V
PTY=−0.008mm
ΔΖ=V
PTZ*−V
PTZ= 0.045mm
【0043】
ブレード圧力角度の変化は、回転φと等しい。
Δα=φ=0.08°
【0044】
上の実施例において、
図8における座標系のY軸は、カッターの回転軸線に対して平行に選択され、Z軸の左側(負の方向)への延長は、カッターの回転軸線と交差する。理論的なブレードの正面は、Y軸とZ軸とで画成される面に向けられる。カッターヘッドのスティックブレードは、それらの長手方向がY軸に対して一般的に傾斜すると共にこれらの理論的な正面がZ軸に対してオフセットしているけれども、調整の原理的機能は変化せず、結果として生ずる刃先位置および角度の変化が仮にあったとしても、ほんのわずかだけ相違しよう。
【0045】
改変着座面に関し、引っ込みの大きさまたは改変の深さは、切削工具および切削処理のパラメータに応じた任意の量であってよい。しかしながら、好ましい範囲は0.010mmから0.050mmの間にある。引っ込みまたは改変領域の高さは、固定長のおよそ50%からおよそ75%であることが好ましい。本発明のカッターヘッド設計は、固定ブロックの有無に関係なく工具システムに適用される。
【0046】
別な一実施形態において、
図9は、
図2(a)における改変ブレード着座面の代わりの固定ブロック・ブレード・着座面の配置の断面図を示すが、これは、その右側にブレード着座面42を有する回転継手部材40と、(カッターの中心に向かって)左側にある旋回機構44とを示している。この旋回機構44を旋回ピン46か、あるいは旋回面48,50だけで達成することができる。上部固定ねじ部材10は、ブレードを溝20に入れた後、指定されたトルクにて締め付けられる。次に、下部固定ねじ部材12を同じトルクで締め付けることが好ましい。ブレードの径方向位置の測定後、例えば5°(ねじ部材の回転)の如き量だけ上部ねじ部材10を外側に回すことが現在可能である。次に、下部ねじ部材12を例えば同じ量(例えば5°)だけ内側に回してもよいが、ねじ部材10および12の回転量を等しくする必要はない。ねじ山のリードに応じ、5度のねじ部材の回転の例では、刃先をおよそ0.039mmだけ径方向外側に移動させよう。
【0047】
図10は、
図9からのカッターヘッドの一部に対する平面図を図示したブレード8を3つのブレード溝20と共に示す。回転継手部材40は着座面42の左側に視認可能である。
【0048】
図11は、
図2(a)の改変ブレード着座面の代わりの固定ブロック・ブレード・着座面の配置の断面図を示すが、これは機械的な旋回軸線の代わりに追従要素54を持った回転継手部材52を示している。この要素は、着座面56の旋回を可能にするため、カッターヘッド材料(例えば鋼)の線形弾性を利用している。ブレード着座面56は回転継手部材52の右側に配され、旋回機構(すなわち追従要素54)は(カッターの中心に向かって)左側に配されている。この実施形態における旋回中心は、上部および下部の追従溝58,60間のリブの形態にある追従要素54によって達成される。追従量はリブの厚みによって制御することができる。両方の固定ねじ部材10,12は、ブレード8を溝20に入れた後に指定されたトルクまで締め付けられる。径方向のブレード位置を測定した後、上部ねじ部材を例えば5°の如き量(反時計回りのねじ回転)だけ外側に回すことができる。次に、下部ねじ部材を時計方向に同じ量(例えば5°)だけ内側に回すことができるが、ねじ部材10および12の回転量を等しくする必要はない。ねじ山のリードに応じ、5度のねじ回転の例は刃先をおよそ0.039mmだけ径方向外側に移動させよう。
【0049】
図12は、
図11からのカッターヘッド2の一部に対する平面図を示し、ブレード8を3つのブレード溝20と共に示した。追従要素は、着座面56の左側の間隙58によって視認できるだけである。追従溝58と着座面56との間のつなぎ破線62は、(例えばワイヤEDMによって)作られるオプションの薄い溝を表しており、ブレードの調整処置中の充分な回動(
図11中の回転矢印)を確実なものにする。好ましくは、追従溝58の幅は、ブレード着座面の幅と概ね等しく、ブレード着座面に対して平行、すなわちカッター半径に対して直角に位置決めされることができる。
【0050】
それぞれのブレードに内側および外側の刃先を持つブレードを用いたブレードシステム(例えば米国特許第7775749号)は、特別な種類の径方向ブレード調整を必要とすることが知られている。刃先半径が増大すると、その場合にはこのブレードの両方の切れ刃がより大きな半径へと移動する。しかしながら、ブレード半径を調整可能な本発明の工具は、一方のブレードの両方の切れ刃の径方向位置の最適な妥協を見出してそれを具体化するためにうまく適合している。
【0051】
本発明方法の好ましい実施形態は、刃先半径を単に増大させるだけであって、これを減少させないことを理解すべきである。カッターヘッドは、基準ブレードに対してこれらを調整するために刃先半径の減少または増大を必要とする場合がある。基準のブレードは任意に選択される(例えば基準外側ブレードとして「1」と付された溝にあるブレードならびに基準内側ブレードとして「2」と付された溝にあるブレード)ので、基準ブレードとして最も大きな半径を持つ外側および内側ブレードを選択することが可能である。本発明の処置に関し、個々の基準ブレードの半径に向けて一種類(内側または外側)のすべてのブレードを改善することが常に可能であろう。理論的に正確なカッター半径と任意に選択した基準ブレードの有効半径との間の径変動は、大部分の場合において0.002mmよりも小さく、従って機械加工される歯面に対する測定可能な影響を有していない。
【0052】
本発明は好ましい実施形態を参照して記述されているけれども、本発明がこれらの事項に限定されないことを理解しなければならない。本発明は、添付した請求項の精神および範囲から逸脱することなく、内容が関係する当業者にとって明らかな変更を含むことを意図している。