(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6310143
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】柘榴石型蛍光粉と調製方法及びこの蛍光粉を含有する装置
(51)【国際特許分類】
C09K 11/67 20060101AFI20180402BHJP
C09K 11/80 20060101ALI20180402BHJP
C09K 11/08 20060101ALI20180402BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20180402BHJP
【FI】
C09K11/67
C09K11/80
C09K11/08 B
H01L33/50
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-500370(P2017-500370)
(86)(22)【出願日】2015年8月3日
(65)【公表番号】特表2017-521524(P2017-521524A)
(43)【公表日】2017年8月3日
(86)【国際出願番号】CN2015085962
(87)【国際公開番号】WO2016058439
(87)【国際公開日】20160421
【審査請求日】2017年1月5日
(31)【優先権主張番号】201410546588.0
(32)【優先日】2014年10月15日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515330421
【氏名又は名称】有研稀土新材料股▲フン▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】511136049
【氏名又は名称】北京有色金属研究総院
【氏名又は名称原語表記】General Research Institute for Nonferrous Metals
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】庄 ▲衛▼▲東▼
(72)【発明者】
【氏名】▲ジョン▼ ▲継▼有
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ ▲榮▼▲輝▼
(72)【発明者】
【氏名】李 彦峰
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 元▲紅▼
(72)【発明者】
【氏名】徐 会兵
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 磊
【審査官】
古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第102703077(CN,A)
【文献】
国際公開第2014/097527(WO,A1)
【文献】
特開2016−201569(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0344775(US,A1)
【文献】
国際公開第2014/136407(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0361340(US,A1)
【文献】
国際公開第2013/005356(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0152173(US,A1)
【文献】
国際公開第98/005078(WO,A1)
【文献】
特開2003−064358(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0085466(US,A1)
【文献】
ZHONG Jiyou et al.,Synthesis, structure and luminescence properties of new blue-green-emitting garnet-type Ca3Zr2SiGa2O12:Ce3+ phosphor for near-UV pumped white-LEDs,RSD Advances,2016年,6,pp.2155-2161
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/67
C09K 11/08
C09K 11/80
H01L 33/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柘榴石の結晶体構造を有し、その化学式は(M1a−xM2x)ZrbM3cOdであることを特徴とする蛍光粉。
(ここで、M1元素はSr、Ca、Y、Lu及びGdから選ばれる一種類または二種類であって、その中Ca又はSrは必ず含み、M2元素はCe、Pr、Sm、Eu、Tb及びDyから選ばれる一種類または二種類であって、Ceは必ず含み、M3元素はGa、Si、Geから選ばれる少なくとも2種類であって、Gaは必ず含み、2.8≦a≦3.2、1.9≦b≦2.1、2.8≦c≦3.2、11.8≦d≦12.2、0.002≦x≦0.6であり、GaとM3との原子数の比kは2/3≦k<1を満たす)
【請求項2】
(Ca+Sr)とM1との原子数の比mは2/3≦m≦1を満たすことを特徴とする請求項1に記載の蛍光粉。
【請求項3】
CeとM2との原子数の比nは0.8≦n≦1を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の蛍光粉。
【請求項4】
M1元素がCaを含有することを特徴とする請求項1に記載の蛍光粉。
【請求項5】
a、b、c、dが、a:b:c:d=3:2:3:12を満たすことを特徴とする請求項1に記載の蛍光粉。
【請求項6】
M1がCaを含有する場合、Ca原子数とM1の原子数との比mは2/3≦m≦1を満たし、
M1がCaを含有せずSrを含有する場合、Sr原子数とM1の原子数との比mは2/3≦m≦1を満たすことを特徴とする請求項1に記載の蛍光粉。
【請求項7】
(1) M1、M2、M3及びZrに対応する化合物を原料として、細くすりつぶし、均一に混合し、
(2) 工程(1)で得た混合物を還元雰囲気で高温ロースティングし、
(3) 工程(2)で得たロースティング産物を後処理を行って、蛍光粉を得る工程を含むことを特徴とする請求項1乃至6に記載の蛍光粉の調製方法。
【請求項8】
前記工程(1)において、前記M1、M2、M3及びZrに対応する化合物は、酸化物、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩を含むことを特徴とする請求項7に記載の調製方法。
【請求項9】
前記工程(2)において、前記高温ロースティングは1回又は複数回行い、毎回のロースティングの温度は1100〜1400℃であって、毎回のロースティングの時間は0.5〜20時間であることを特徴とする請求項7又は8に記載の調製方法。
【請求項10】
前記工程(3)において、前記後処理は、破砕、研磨、選別を含むことを特徴とする請求項9に記載の調製方法。
【請求項11】
光源と蛍光粉とを含む発光装置であって、少なくとも一つの蛍光粉が請求項1乃至6の中のいずれかに記載の蛍光粉又は請求項7乃至10の中のいずれかに記載の調製方法で調製される蛍光粉から選ばれる蛍光粉であることを特徴とする発光装置。
【請求項12】
請求項11に記載の発光装置を含むことを特徴とする画像表示装置。
【請求項13】
請求項11に記載の発光装置を含むことを特徴とする照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機LED発光材料分野に関し、特に、蛍光粉に関し、より具体的に、柘榴石構造を有し、紫外又は青色光によって有効に励起されて可視光線を発射する蛍光粉に関する。本発明はさらに、この蛍光粉を調製する方法及びこの蛍光体を含有する発光装置、画像表示装置と照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)は、発光効率が高く、電気消費量が低く、寿命が長く、汚染が低く、体積が小さく、操作反応速度が速い等のメリットを有し、現在照明、表示等の分野で汎用されている。ここで、YAG:Ce
3+(Y
3Al
5O
12:Ce
3+)黄色粉と青色光LEDチップとの組み合わせによって白色光を実現し、効率的で、コストが低く、製造が簡単である等の特徴を有するので、汎用されている。その中、最も重要な原因は、柘榴石構造を有するYAG黄色粉が極めて安定的な物理化学的性質と優れた高光合成効率を有しているからである。従って、柘榴石構造の蛍光粉の研究開発は、ずっと、国内外の研究重点であった。特に、d−f遷移を有するCe
3+イオンが活性剤として、それが柘榴石構造において現した励起スペクトルはそれぞれ、紫外領域と青色光領域で強い励起ピークを有し、紫外、近紫外又は青色光チップと良好に整合できる。
【0003】
通常、YAG(及びYAGにGa、La、Lu、Gd等の元素をドーピングしたもの)、Ca
3Sc
2Si
3O
12等の柘榴石構造の化合物の合成温度はいずれも1500℃以上である。合成温度を低下させると、コストを低減することができ、省エネ・排出削減効果が顕著である。よって、低温で合成可能な柘榴石型蛍光粉を探すことは、省エネ・排出削減を促進し、生態文明レベルの向上に重要な意味を持つことである。
【0004】
柘榴石構造の一般式はA
3B
2(XO
4)
3であって、A、B、Xは通常、それぞれ8配位、6配位、4配位で、Bは通常、隣接するO原子と八面体を形成し、Xは通常、隣接するO原子と四面体を形成する。稀土類元素をドーピングして蛍光粉とする柘榴石構造の化合物の場合、そのB位元素を分類すると、通常、2価金属元素(例えば、非特許文献1:Lu
2CaMg
2(Si,Ge)
3O
12中のMg)、3価金属元素(例えば、特許文献1:YAG中のAl、特許文献2:Ca
3Sc
2Si
3O
12中のSc)、5価金属元素(例えば、特許文献3:Li
5La
2Ta
2O
12中のTa)がある。しかし、B位元素が4価金属元素Zrである化合物Ca
2LaZr
2Ga
3O
12(例えば、非特許文献2)の場合、その稀土類元素固溶体を蛍光粉としたことに関する報道はなかった。そして、このシリーズの柘榴石構造の化合物に基づいて、Gaを4価元素に一部の入れ替えを行うと、Gaの使用量を低減し、ランタン系元素の使用量を低減でき、例えばCa
3Zr
2Ga
2SiO
12、Ca
3Zr
2Ga
2GeO
12等の新規の化合物が得られ、且つこのシリーズの化合物及び稀土類元素をドーピングして得た新規の化合物の合成温度はいずれも1400℃以下である。
【0005】
既存技術において、Zrを含有する柘榴石構造の化合物が少し存在する。Zrが占める結晶体格子位置に応じて、これらの化合物を以下の3種類に分けることができる:
【0006】
第1種類は、特許文献3に開示されたCa
3Sc
2Si
3O
12を代表とするもので、Zrが少量ドーピング元素として、X位に位置するSi、Ge等の元素を一部置換したものである。
【0007】
第2種類は、ZrがB位を占めるもので、例えば、特許文献4、5中のCa-Zrでそれぞれ、(Y/La/Lu)
3Al
5O
12中の(Y/La/Lu)とAlを置換し、Zr-Mgで(Y/La/Lu)
3Al
5O
12中のAl-Alを置換したものである。
【0008】
第3種類は、少量のZrが電荷補償剤としてA位を占めるもので、例えば特許文献6において、Zr
4+又はHf
4+で少量元素として置換した電荷補償剤である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許US 5998925B
【特許文献2】米国特許US 7189340B
【特許文献3】CN 103509555 A
【特許文献4】CN 103703102 A
【特許文献5】CN 101760197 A
【特許文献6】CN 101323784 A
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Anant A. Setlur、 William J. Heward、 Yan Gao、 Alok M. Srivastava、 R. Gopi Chandran、 and Madras V. Shankar、 Chem. Mater.、 2006、 18 (14): 3314−3322
【非特許文献2】S. Geller、 Materials Research Bulletin、 1972、 7(11): 1219-1224
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、紫外又は青色光によって有効に励起されて発光することのできる蛍光粉及びその調製方法、及びこの蛍光体を含有する発光装置、画像表示装置と照明装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を実現するため、本発明は以下のような技術案を用いる:
本発明は、柘榴石の結晶体構造を有し、その化学式は(M
1a−xM
2x)Zr
bM
3cO
dであって、ここで、M
1元素はSr、Ca、La、Y、Lu及びGdから選ばれる一種類または二種類であって、その中Ca又はSrは必ず含み、M
2元素はCe、Pr、Sm、Eu、Tb及びDyから選ばれる一種類または二種類であって、Ceは必ず含み、M
3元素はGa、Si、Geから選ばれる少なくとも1種類であって、Gaを必ず含む蛍光粉を提供する。ここで、2.8≦a≦3.2、1.9≦b≦2.1、2.8≦c≦3.2、11.8≦d≦12.2、0.002≦x≦0.6である。さらに、2.9≦a≦3.1、1.9≦b≦2.0、2.9≦c≦3.1、11.9≦d≦12.1、0.02≦x≦0.4であることが好ましい。さらに、a=3.0、b=2.0、c=3.0、d=12.0であることが好ましい。
【0013】
前記柘榴石構造は、立方晶系に属し、Ia−3d空間群を有し、且つ一般式がA
3B
2(XO
4)
3であるものであって、A、B、Xはそれぞれ、8配位、6配位、4配位であって、Bは隣接するO原子と八面体を形成し、Xは通常隣接するO原子と四面体を形成する結晶体構造である。前記蛍光粉において、M
1とM
2はA位を占め、Zrは6配位のB位を占め、M
3はX位を占め、また、粉末X線回折パターンの精密補正によって証明される((Ca
2Y
0.94,Ce
0.06)Zr
2Ga
3O
12の粉末X線回折パターンの精密補正を例に説明し、精密補正の範囲は10°≦2θ≦100°であって、回折計が使用した標的物質はCo標的であって、λ=0.178892nmで、精密補正に用いられた初期モデルは典型的な柘榴石構造の化合物であるY
3Al
5O
12であって、精密補正の結果である晶系、空間群、セルパラメータ、精密補正の残差因子は表1に示すとおりである。原子座標、位置占用率、温度因子等の構造情報は表2に示すとおりである。
図7にデータ似合い図を示す)。
【0014】
【表1】
【0015】
【表2】
【0016】
前記蛍光粉において、Zrが単独に6配位のB位を占めていて、それは、YAGより短い発射波長を得るためである。Zr
4+のイオン半径(0.72Å)がAl
3+のイオン半径(0.535Å)より大きいので、B位に半径の大きいイオンをドーピングすることで、セルの体積を拡張し、Ce
3+が位置する結晶場を低下して、5dエネルギー分裂レベルを低下し、短波長発射を実現する。また、Bは単にZrで、B位のイオン半径差異を低減し、結晶格子の応力を低下し、柘榴石構造が一層安定になる。
【0017】
上記構造の精密補正の結果によると、本発明の蛍光粉において、Zrが柘榴石構造中のB位を占める。よって、本発明は特許文献3、6との関連性を排除できる。特許文献5と本発明とは、特許文献5においてZrをB位に導入するとともに同量のMg又はZnをB位に導入しており、且つA位に3価稀土類元素のみを含有するに対し、本発明においてはB位にZrの1種類の元素のみがあって、A位には必ず2価アルカリ土類金属元素を含む点で相違している。そして、特許文献4と本発明とは、特許文献4において必ずAl元素を含有し、且つ合成温度が1500℃以上であるが、本発明においてはGa元素を必ず含有しAl元素は含有せず、合成温度が1400℃以下であって、且つ本発明においてさらに2価金属元素(例えばCa、Sr)と4価金属元素(例えばSi、Ge)をそれぞれAとX位に導入して、さらにA位の稀土類元素の使用量を低下した点で相違している。
【0018】
前記蛍光粉において、(Ca+Sr)とM
1との原子数の比はmであって、mは2/3≦m≦1を満たす。この範囲の設定は、稀土類元素の使用量を低下し、分子式の電荷バランスを満たすためである。
【0019】
前記蛍光粉において、CeとM
2との原子数の比はnであって、nは0.8≦n≦1を満たす。この範囲の設定は、活性剤としてのCe
3+の主導作用を突出させて、発光性能のよい蛍光粉を得るためである。
【0020】
前記蛍光粉において、GaとM
3との原子数の比はkであって、kは2/3≦k≦1を満たす。この範囲の設定は、柘榴石相を安定化し、Si、GeとGaとのイオン半径及び電荷差異が大きいので、Ga元素を2/3以上に制御することで、安定的な柘榴石構造の蛍光粉を得るためである。
【0021】
前記蛍光粉において、M
3に一部のGaを入れ替えできる及びM
1中の稀土類元素の使用量を低減できるSi、Ge元素を導入しているが、導入量はM
3原子総数の1/3未満であって、紫外と近紫外の励起を強化し、発射波長の連続調節性を実現する作用を果たす。
【0022】
総するに、上記範囲の設定は、安定的な柘榴石構造相の取得と、発光性能のよい蛍光粉の取得に有利である。
【0023】
本発明の柘榴石構造の蛍光粉において、前記M
1元素が、Ca又はSrの中の一つを含有することが好ましく、この好適な技術案によると、同一の格子位置でのイオンサイズの差異を低減でき、結晶格子の応力を低下し、柘榴石構造の安定化に有利である。
【0024】
本発明の柘榴石構造の蛍光粉において、前記蛍光粉のM
1元素がCaを含有することが好ましく、Caイオンの半径が稀土類イオンに接近し、発光中心M
2と良好な整合性を有し、構造が安定的で、発光性能のよい蛍光粉の取得に有利である。
【0025】
前記蛍光粉において、パラメータa、b、c、dが、a:b:c:d=3:2:3:12を満たすことが好ましく、当該比例のパラメータである場合、柘榴石相の安定化や結晶の完璧性に有利である。
【0026】
前記蛍光粉の調製方法は、
(1) M
1、M
2、M
3及びZrに対応する化合物を原料として、細かくすりつぶし、均一に混合し、
(2) 工程(1)で得た混合物を還元雰囲気で高温ロースティングし、
(3) 工程(2)で得たロースティング産物を後処理を行って、上記蛍光粉を得る工程を含む。
【0027】
前記工程(1)において、前記原料M
1、M
2、M
3及びZrに対応する化合物は、酸化物、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩等を含む。
【0028】
前記工程(2)において、高温ロースティングは1回又は複数回行うことができ、毎回の高温ロースティングの温度は1100〜1400℃であって、毎回のロースティングの時間は0.5〜20時間である。
【0029】
前記工程(3)において、前記後処理は、破砕、研磨、選別を含む。
【0030】
総じて、本発明に係わる蛍光粉は良好な発光性能を有し、基質成分を調節することで、紫外、近紫外と短波長の青色光により励起されて、青色光から黄色-緑色光の波長区間の発射を実現できる。
【0031】
そして、本発明によると、光源と蛍光粉とを含む発光装置であって、少なくとも一つの蛍光粉が上述した蛍光粉又は上述した調製方法で調製される蛍光粉から選ばれる発光装置を提供する。
【0032】
最後に、本発明によると、上述した発光装置を含む画像表示装置及び照明装置を提供する。
【発明の効果】
【0033】
本発明によると、以下のメリットを有する:
-本発明に係わる蛍光粉は、有効励起範囲が広く、紫外、近紫外又は短波長の青色光による励起に適切であって、適応性が強い。
【0034】
-本発明に係わる蛍光粉は、紫外、近紫外又は短波長の青色光によって励起されて、青色光-黄緑色光を発射することができ、且つ発光効率が高い。
【0035】
-本発明の蛍光粉は、柘榴石構造を有し、物理化学性質が極めて安定的である。
【0036】
-本発明に係わる蛍光粉は、合成温度が低く、調製工程が簡単で、特別な反応機器を必要とせず、産業化生産を簡単に実現できる。
【0037】
ここで説明する図面は本発明を一層理解させるためのもので、本願の一部を構成し、本発明に示す実施例及びその説明は本発明を解釈するもので、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】(Ca
2La
0.96,Ce
0.04)Zr
2Ga
3O
12の粉末X線回折パターンである。
【
図2】(Ca
2La
0.96,Ce
0.04)Zr
2Ga
3O
12の励起スペクトル図である。
【
図3】(Ca
2La
0.96,Ce
0.04)Zr
2Ga
3O
12の発射スペクトル図である。
【
図4】(Ca
2.91,Ce
0.06)Zr
2(Ga
2Ge)O
12の粉末X線回折パターンである。
【
図5】(Ca
2.91,Ce
0.06)Zr
2(Ga
2Ge)O
12の励起スペクトル図である。
【
図6】(Ca
2.91,Ce
0.06)Zr
2(Ga
2Ge)O
12の発射スペクトル図である。
【
図7】(Ca
2Y
0.94,Ce
0.06)Zr
2Ga
3O
12の粉末X線回折パターンの精密補正図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明を一層理解するように、実施例によって本発明の蛍光粉及びその調製方法をさらに説明するが、本発明の保護範囲はこれらの実施例に限定されず、特許請求の範囲によって決められるべきである。
【0040】
比較例
化学式(Ca
2La)Zr
2Ga
3O
12に従って、0.2mol CaCO
3、0.05mol La
2O
3、0.2mol ZrO
2、0.15mol Ga
2O
3を計る。充分に均一に混合粉砕した後、CO雰囲気で、1350℃で4時間ロースティングした。ロースティング産物を破砕、選別、洗浄、乾燥、ふるい分け等の後処理を行って、組成が(Ca
2La)Zr
2Ga
3O
12である化合物を得た。サンプリングしてスペクトルテストを行った結果、紫外と青色光領域による励起で発射スペクトルは発現できなかった。表3に示すように、420nm励起での相対発光強度は0である。
【0041】
実施例1
蛍光粉の化学式(Ca
2La
0.96,Ce
0.04)Zr
2Ga
3O
12に従って、0.2mol CaCO
3、0.048mol La
2O
3、0.2mol ZrO
2、0.15mol Ga
2O
3、0.004mol CeO
2を計る。充分に均一に混合粉砕した後、CO雰囲気で、1350℃で4時間ロースティングした。ロースティング産物を破砕、選別、洗浄、乾燥、ふるい分け等の後処理を行って、組成が(Ca
2La
0.96,Ce
0.04)Zr
2Ga
3O
12である蛍光粉を得た。その粉末X線回折パターン(Co標的、λ=0.178892nm)は
図1に示すとおりである。励起スペクトル(515nmモニタリング)と発射スペクトル(420nm励起)は
図2と
図3に示すとおりであって、図に示すように、励起波長範囲は280〜480nmをカバーし、420nm励起で、発射スペクトルのピーク波長は515nmであって、相対発光強度は表3に示すとおりである。
【0042】
実施例2
蛍光粉の化学式(Ca
2.91,Ce
0.06)Zr
2(Ga
2Ge)O
12に従って、0.291mol CaCO
3、0.2mol ZrO
2、0.1mol GeO
2、0.1mol Ga
2O
3、0.006mol CeO
2を計る。充分に均一に混合粉砕した後、CO雰囲気で、1320℃で8時間ロースティングした。ロースティング産物を破砕、選別、洗浄、乾燥、ふるい分け等の後処理を行って、組成が(Ca
2.91,Ce
0.06)Zr
2(Ga
2Ge)O
12である蛍光粉を得た。その粉末X線回折パターン(Co標的、λ=0.178892nm)は
図4に示すとおりである。励起スペクトル(475nmモニタリング)と発射スペクトル(420nm励起)は
図5と
図6に示すとおりであって、図に示すように、励起スペクトルの波長範囲は280〜440nmをカバーし、420nm励起で、発射スペクトルのピーク波長は475nmであって、相対発光強度は表3に示すとおりである。
【0043】
実施例3
蛍光粉の化学式(Ca
2Y
0.94,Ce
0.06)Zr
2Ga
3O
12に従って、0.2mol CaCO
3、0.2mol ZrO
2、0.047mol Y
2O
3、0.15mol Ga
2O
3、0.006mol Ce(NO
3)
3を計る。充分に均一に混合粉砕した後、H
2/N
2混合雰囲気で、1360℃で6時間ロースティングした。ロースティング産物を破砕、選別、洗浄、乾燥、ふるい分け等の後処理を行って、組成が(Ca
2Y
0.94,Ce
0.06)Zr
2Ga
3O
12である蛍光粉を得た。その粉末X線回折パターンの精密補正の似合いパラメータは表1、表2に示すとおりであって、図の似合いは
図7に示すとおりである。励起スペクトルの波長範囲は280〜480nmをカバーし、420nm励起で、発射スペクトルのピーク波長は512nmであって、相対発光強度は表3に示すとおりである。
【0044】
実施例4
蛍光粉の化学式(Ca
2Lu
0.92,Ce
0.08)Zr
2Ga
3O
12に従って、0.2mol CaCO
3、0.2mol ZrO
2、0.046mol Lu
2O
3、0.15mol Ga
2O
3、0.008mol CeO
2を計る。充分に均一に混合粉砕した後、空気中で、1100℃で4時間ロースティングした。ロースティング産物を破砕した後、CO雰囲気で、二回目のロースティングを行い、1350℃の温度で、6時間ロースティングした。二回目のロースティング産物を破砕、選別、洗浄、乾燥、ふるい分け等の後処理を行って、組成が(Ca
2Lu
0.92,Ce
0.08)Zr
2Ga
3O
12である蛍光粉を得た。その励起スペクトルの波長範囲は280〜480nmをカバーし、420nm励起で、発射スペクトルのピーク波長は502nmであって、相対発光強度は表3に示すとおりである。
【0045】
実施例5
蛍光粉の化学式(Ca
2Gd
0.9,Ce
0.1)Zr
2Ga
3O
12に従って、0.2mol CaCO
3、0.045mol Gd
2O
3、0.2mol ZrO
2、0.15mol Ga
2O
3、0.01mol CeO
2を計る。充分に均一に混合粉砕した後、H
2/N
2混合雰囲気で、1400℃で6時間ロースティングした。ロースティング産物を破砕、選別、洗浄、乾燥、ふるい分け等の後処理を行って、組成が(Ca
2Gd
0.9,Ce
0.1)Zr
2Ga
3O
12である蛍光粉を得た。その励起スペクトルの波長範囲は280〜480nmをカバーし、420nm励起で、発射スペクトルのピーク波長は514nmであって、相対発光強度は表3に示すとおりである。
【0046】
実施例6
蛍光粉の化学式(Ca
2.75Sr
0.1,Ce
0.1)Zr
2(Ga
2Ge
0.8Si
0.2)O
12に従って、0.275mol CaCO
3、0.01mol SrCO
3、0.2mol ZrO
2、0.02mol SiO
2、0.1mol Ga
2O
3、0.08mol GeO
2、0.01mol CeO
2を計る。充分に均一に混合粉砕した後、空気中で、1200℃で0.5時間ロースティングした。一回目のロースティング産物を破砕した後、CO雰囲気で、二回目のロースティングを行い、1320℃の温度で、6時間ロースティングした。ロースティング産物を破砕、選別、洗浄、乾燥、ふるい分け等の後処理を行って、組成が(Ca
2.75Sr
0.1,Ce
0.1)Zr
2(Ga
2Ge
0.8Si
0.2)O
12である蛍光粉を得た。その励起スペクトルの波長範囲は280〜460nmをカバーし、420nm励起で、発射スペクトルのピーク波長は482nmであって、相対発光強度は表3に示すとおりである。
【0047】
実施例7
蛍光粉の化学式(Ca
2.5Lu
0.45,Ce
0.04Eu
0.01)Zr
2(Ga
2.5Si
0.5)O
12に従って、0.25mol CaCO
3、0.0225mol Lu
2O
3、0.2mol ZrO
2、0.05mol SiO
2、0.125mol Ga
2O
3、0.0005mol Eu
2O
3、0.004mol CeO
2を計る。充分に均一に混合粉砕した後、CO雰囲気で、1400℃で8時間ロースティングした。ロースティング産物を破砕、選別、洗浄、乾燥、ふるい分け等の後処理を行って、組成が(Ca
2.5Lu
0.45,Ce
0.04Eu
0.01)Zr
2(Ga
2.5Si
0.5)O
12である蛍光粉を得た。その励起スペクトルの波長範囲は280〜480nmをカバーし、420nm励起で、発射スペクトルのピーク波長は493nmであって、相対発光強度は表3に示すとおりである。
【0048】
実施例8
蛍光粉の化学式(Ca
2.997,Ce
0.002)Zr
2(Ga
2Si)O
12に従って、0.2997mol CaCO
3、0.2mol ZrO
2、0.1mol SiO
2、0.1mol Ga
2O
3、0.0002mol CeO
2を計る。充分に均一に混合粉砕した後、CO雰囲気で、1380℃で4時間ロースティングした。ロースティング産物を破砕、選別、洗浄、乾燥、ふるい分け等の後処理を行って、組成が(Ca
2.997,Ce
0.002)Zr
2(Ga
2Si)O
12である蛍光粉を得た。その励起スペクトルの波長範囲は280〜450nmをカバーし、420nm励起で、発射スペクトルのピーク波長は487nmであって、相対発光強度は表3に示すとおりである。
【0049】
実施例9
蛍光粉の化学式(Ca
2.4Y
0.75,Ce
0.04Pr
0.01)Zr
1.9Ga
2.8O
11.8に従って、0.24mol CaCO
3、0.19mol ZrO
2、0.0375mol Y
2O
3、0.14mol Ga
2O
3、0.004mol CeO
2、0.00017mol Pr
6O
11を計る。充分に均一に混合粉砕した後、炭粉を添加し、1350℃で15時間ロースティングした。ロースティング産物を破砕、選別、洗浄、乾燥、ふるい分け等の後処理を行って、組成が(Ca
2.4Y
0.75,Ce
0.04Pr
0.01)Zr
1.9Ga
2.8O
11.8である蛍光粉を得た。その励起スペクトルの波長範囲は280〜480nmをカバーし、420nm励起で、発射スペクトルのピーク波長は510nmであって、相対発光強度は表3に示すとおりである。
【0050】
実施例10
蛍光粉の化学式(Sr
2Gd
0.7,Ce
0.08Dy
0.02)Zr
2.1Ga
3.2O
12.2に従って、0.2mol SrCO
3、0.035mol Gd
2O
3、0.21molZrO
2、0.16mol Ga
2O
3、0.008mol CeO
2、0.001mol Dy
2O
3を計る。充分に均一に混合粉砕した後、CO雰囲気で、1400℃で20時間ロースティングした。ロースティング産物を破砕、選別、洗浄、乾燥、ふるい分け等の後処理を行って、組成が(Sr
2Gd
0.7,Ce
0.08Dy
0.02)Zr
2.1Ga
3.2O
12.2である蛍光粉を得た。その励起スペクトルの波長範囲は280〜480nmをカバーし、420nm励起で、発射スペクトルのピーク波長は526nmであって、相対発光強度は表3に示すとおりである。
【0051】
実施例11
蛍光粉の化学式(Sr
2.94,Ce
0.04)Zr
2(Ga
2Si)O
12に従って、0.294mol SrCO
3、0.1mol SiO
2、0.2mol ZrO
2、0.1mol Ga
2O
3、0.004mol CeO
2を計る。充分に均一に混合粉砕した後、空気中で、1300℃で6時間ロースティングした。ロースティング産物を破砕した後、CO/N
2雰囲気で、二回目のロースティングを行い、1400℃の温度で、10時間ロースティングした。二回目のロースティング産物を破砕、選別、洗浄、乾燥、ふるい分け等の後処理を行って、組成が(Sr
2.94,Ce
0.04)Zr
2(Ga
2Si)O
12である蛍光粉を得た。その励起スペクトルの波長範囲は280〜480nmをカバーし、420nm励起で、発射スペクトルのピーク波長は494nmであって、相対発光強度は表3に示すとおりである。
【0052】
実施例12
蛍光粉の化学式(Sr
2La
0.95,Ce
0.05)Zr
2Ga
3O
12に従って、0.2mol SrCO
3、0.2mol ZrO
2、0.0475mol La
2O
3、0.15mol Ga
2O
3、0.005mol CeO
2を計る。充分に均一に混合粉砕した後、空気中で、1200℃で6時間ロースティングした。ロースティング産物を破砕した後、H
2/N
2雰囲気で、二回目のロースティングを行い、1370℃の温度で、2時間ロースティングした。二回目のロースティング産物を破砕、選別、洗浄、乾燥、ふるい分け等の後処理を行って、組成が(Sr
2La
0.95,Ce
0.05)Zr
2Ga
3O
12である蛍光粉を得た。その励起スペクトルの波長範囲は280〜480nmをカバーし、420nm励起で、発射スペクトルのピーク波長は535nmであって、相対発光強度は表3に示すとおりである。
【0053】
実施例13
蛍光粉の化学式(Ca
2Y
0.4,Ce
0.5Tb
0.1)Zr
2Ga
3O
12に従って、0.2mol CaCO
3、0.2mol ZrO
2、0.02mol Y
2O
3、0.15mol Ga
2O
3、0.05mol CeO
2、0.0025mol Tb
4O
7を計る。充分に均一に混合粉砕した後、CO雰囲気でロースティングし、1350℃の温度で、4時間ロースティングした。ロースティング産物を破砕、選別、洗浄、乾燥、ふるい分け等の後処理を行って、組成が(Ca
2Y
0.4,Ce
0.5Tb
0.1)Zr
2Ga
3O
12である蛍光粉を得た。その励起スペクトルの波長範囲は280〜450nmをカバーし、420nm励起で、発射スペクトルのピーク波長は542nmであって、相対発光強度は表3に示すとおりである。
【0054】
実施例14
蛍光粉の化学式(Ca
2.8Gd
0.16,Ce
0.04)Zr
2(Ga
2.2Si
0.8)O
12に従って、0.28mol CaCO
3、0.2mol ZrO
2、0.08mol SiO
2、0.008mol Gd
2O
3、0.11mol Ga
2O
3、0.004mol CeO
2を計る。充分に均一に混合粉砕した後、CO雰囲気でロースティングし、1320℃の温度で、6時間ロースティングした。ロースティング産物を破砕、選別、洗浄、乾燥、ふるい分け等の後処理を行って、組成が(Ca
2.8Gd
0.16,Ce
0.04)Zr
2(Ga
2.2Si
0.8)O
12である蛍光粉を得た。その励起スペクトルの波長範囲は280〜450nmをカバーし、420nm励起で、発射スペクトルのピーク波長は492nmであって、相対発光強度は表3に示すとおりである。
【0055】
実施例15
蛍光粉の化学式(Sr
2.2La
0.73,Ce
0.05Sm
0.02)Zr
2(Ga
2.8Si
0.2)O
12に従って、0.22mol SrCO
3、0.2mol ZrO
2、0.02mol SiO
2、0.0365mol La
2O
3、0.14mol Ga
2O
3、0.005mol CeO
2、0.001mol Sm
2O
3を計る。充分に均一に混合粉砕した後、空気中で、1200℃で6時間ロースティングした。ロースティング産物を破砕した後、H
2/N
2雰囲気で、二回目のロースティングを行い、1380℃の温度で、2時間ロースティングした。二回目のロースティング産物を破砕、選別、洗浄、乾燥、ふるい分け等の後処理を行って、組成が(Sr
2.2La
0.73,Ce
0.05Sm
0.02)Zr
2(Ga
2.8Si
0.2)O
12である蛍光粉を得た。その励起スペクトルの波長範囲は280〜480nmをカバーし、420nm励起で、発射スペクトルのピーク波長は524nmであって、相対発光強度は表3に示すとおりである。
【0056】
実施例16
実施例1で得た緑色の蛍光粉とK
2SiF
6:Mn赤色粉末とを7:1の比例で樹脂に分散させ、スラリーに調製してから450nm青色光LEDチップに塗布して硬化し、回路を溶接し、樹脂で密封して白色光を発光する発光素子を得て、その色座標は(0.3885,0.3692)で、演色評価数は87.2で、相関色温度は3624Kである。
【0057】
実施例17
実施例2で得た青色の蛍光粉とβ-SiAlON:Eu緑色の蛍光粉と、CaAlSiN
3:Eu赤色の蛍光粉とを3:6:1の比例で樹脂に分散させ、スラリーに調製してから405nmの紫外LEDチップに塗布して硬化し、回路を溶接し、樹脂で密封して白色光を発光する発光装置を得て、その色座標は(0.3963,0.3785)で、色再現範囲は80%NTSCである。
【0058】
実施例18
実施例7で得た青色の蛍光粉と実施例13で得た緑色の蛍光粉と、(Sr,Ca)
2Si
5N
8:Eu赤色の蛍光粉とを4:7:1の比例で樹脂に分散させ、スラリーに調製してから405nmの紫外LEDチップに塗布して硬化し、回路を溶接し、樹脂で密封して白色光を発光する発光素子を得て、その色座標は(0.3796,0.3589)で、演色評価数は85.6で、相関色温度は4230Kである。