(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記非イオン界面活性剤が、ひまし油のアルキレンオキサイド付加物及び硬化ひまし油のアルキレンオキサイド付加物から選ばれる少なくとも1種の化合物と、モノカルボン酸及びジカルボン酸とを縮合させたエーテルエステル化合物であり、
該エーテルエステル化合物が、質量平均分子量3,000〜30,000のものを含有するものである請求項1又は2に記載の合成繊維用処理剤。
前記エーテルエステル化合物が、ひまし油のアルキレンオキサイド付加物及び硬化ひまし油のアルキレンオキサイド付加物から選ばれる少なくとも1種の化合物を20〜40モル%、モノカルボン酸を35〜65モル%、並びにジカルボン酸を5〜35モル%(合計100モル%)から構成されるものである請求項3に記載の合成繊維用処理剤。
前記有機リン酸エステルのアミン塩を構成するアミンが、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジブチルエタノールアミン、及び炭素数4〜30のモノアルキルアミン1モルに対しアルキレンオキシドを1〜50モルの割合で付加させた化合物から選ばれる少なくとも1種である請求項6に記載の合成繊維用処理剤。
前記平滑剤、前記非イオン界面活性剤、及び前記イオン界面活性剤の含有割合の合計を100質量%とすると、前記平滑剤を30〜70質量%、前記非イオン界面活性剤を20〜60質量%、及び前記イオン界面活性剤を0.1〜20質量%の割合で含有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、これら従来の合成繊維用処理剤では、製糸工程におけるタール汚れの低減、白粉汚れの低減、毛羽発生の抑制における各機能の両立が十分に対応できていなかった。
本発明が解決しようとする課題は、製糸工程において発生するタール汚れ、白粉汚れ、毛羽を低減することができる合成繊維用処理剤及び合成繊維を提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、平滑剤及び非イオン界面活性剤を含有する合成繊維用処理剤において、イオン界面活性剤として特定の芳香族スルホン酸塩及び脂肪族スルホン酸塩を所定割合で併用することが正しく好適であることを見出した。
【0007】
すなわち本発明の一態様は、平滑剤、非イオン界面活性剤、及びイオン界面活性剤を含有する合成繊維用処理剤であって、前記イオン界面活性剤が、下記の化1で示される芳香族スルホン酸塩、及び脂肪族スルホン酸塩を含んでなり、該脂肪族スルホン酸塩の含有量に対する該芳香族スルホン酸塩の含有量の質量比が、芳香族スルホン酸塩/脂肪族スルホン酸塩=1/5〜1/10,000の割合で含有することを特徴とする。
【0008】
【化1】
(化1において、
R
1:炭素数1〜18の炭化水素基、
M
1:アルカリ金属、アンモニウム基、又は有機アミン基。)
前記脂肪族スルホン酸塩が、下記の化2で示される化合物及び下記の化3で示される化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物を含有するものであることが好ましい。
【0009】
【化2】
(化2において、
a,b:それぞれ0以上の整数であってa+b=5〜17を満たす整数、
M
2:アルカリ金属、アンモニウム基、又は有機アミン基。)
【0010】
【化3】
(化3において、
R
2,R
3:それぞれ炭素数4〜12の炭化水素基、
M
3:アルカリ金属、アンモニウム基、又は有機アミン基。)
前記非イオン界面活性剤が、ひまし油のアルキレンオキサイド付加物及び硬化ひまし油のアルキレンオキサイド付加物から選ばれる少なくとも1種の化合物と、モノカルボン酸及びジカルボン酸とを縮合させたエーテルエステル化合物であり、該エーテルエステル化合物が、質量平均分子量3,000〜30,000のものを含有するものであることが好ましい。
【0011】
前記エーテルエステル化合物が、ひまし油のアルキレンオキサイド付加物及び硬化ひまし油のアルキレンオキサイド付加物から選ばれる少なくとも1種の化合物を20〜40モル%、モノカルボン酸を35〜65モル%、並びにジカルボン酸を5〜35モル%(合計100モル%)から構成されるものであることが好ましい。
【0012】
前記平滑剤が、下記の化4で示される含硫黄エステル化合物を含有するものであることが好ましい。
【0013】
【化4】
(化4において、
R
4,R
5:それぞれ炭素数12〜24の炭化水素基、
m,n:それぞれ1〜4の整数。)
前記イオン界面活性剤が、さらに有機リン酸エステルのアミン塩を含有するものであることが好ましい。
【0014】
前記有機リン酸エステルのアミン塩を構成するアミンが、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジブチルエタノールアミン、及び炭素数4〜30のモノアルキルアミン1モルに対しアルキレンオキシドを1〜50モルの割合で付加させた化合物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0015】
前記平滑剤、前記非イオン界面活性剤、及び前記イオン界面活性剤の含有割合の合計を100質量%とすると、前記平滑剤を30〜70質量%、前記非イオン界面活性剤を20〜60質量%、及び前記イオン界面活性剤を0.1〜20質量%の割合で含有することが好ましい。
【0016】
また、本発明の別の態様は、前記合成繊維用処理剤が付着していることを特徴とする合成繊維が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、製糸工程において発生するタール汚れ、白粉汚れ、毛羽を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
先ず、本発明に係る合成繊維用処理剤(以下、処理剤という)を具体化した第1実施形態について説明する。本実施形態の処理剤は、平滑剤、非イオン界面活性剤、及び所定のイオン界面活性剤を含有する。イオン界面活性剤が下記の化5で示される芳香族スルホン酸塩、及び脂肪族スルホン酸塩を含んでなり、さらに脂肪族スルホン酸塩の含有量に対する芳香族スルホン酸塩の含有量の質量比が、芳香族スルホン酸塩/脂肪族スルホン酸塩=1/5〜1/10,000の割合で含有するものである。
【0019】
【化5】
(化5において、
R
1:炭素数1〜18の炭化水素基、
M
1:アルカリ金属、アンモニウム基、又は有機アミン基。)
本実施形態の処理剤に供する平滑剤としては、特に制限はなく、例えば(1)1,4−ブタンジオールジオレアート、トリメチロールプロパントリラウラート、トリメチロールプロパントリオレアート、グリセリントリオレアート、ペンタエリスリトールテトラオクタノアート等の、多価アルコールと一価カルボン酸とのエステル化合物、(2)ジイソセチルチオジプロピオナート、ジイソステアリルチオジプロピオナート、ジオレイルチオジプロピオナート、ビスポリオキシエチレンラウリルアジパート等の、多価カルボン酸と一価アルコールとのエステル化合物、(3)オレイルラウラート、オレイルオレアート等の、一価アルコールと一価カルボン酸とのエステル化合物、(4)ひまし油、パーム油、ナタネ白絞油等の天然油脂等が挙げられる。これらの成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも下記の化6で示される分子中に硫黄元素を有する多価カルボン酸と一価アルコールとのエステル化合物(含硫黄エステル化合物)を含有するものが好ましい。かかる化合物を使用することにより、本発明の効果をより向上、特に製糸工程において発生するタール汚れ、毛羽をより低減することができる。
【0020】
【化6】
(化6において、
R
4,R
5:それぞれ炭素数12〜24の炭化水素基、
m,n:それぞれ1〜4の整数。)
化6において、R
4,R
5は、それぞれラウリル基、トリデシル基、イソトリデシル基、ミリスチル基、イソミリスチル基、セチル基、イソセチル基、ステアリル基、イソステアリル基、アラキジル基、イソアラキジル基、ベヘニル基、イソベヘニル基、リグノセリル基、イソリグノセリル基、パルミトレイル基、オレイル基、エイコセニル基、ドコセニル基、テトラコセニル基等の炭素数12〜24の炭化水素基である。
【0021】
本実施形態の処理剤に供する非イオン界面活性剤としては、特に制限はなく、例えば(1)有機酸、有機アルコール、有機アミン、及び有機アミドから選ばれる少なくとも一種に炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを付加した化合物、例えばポリオキシエチレンラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンラウリン酸エステルメチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシプロピレンラウリルエーテルメチルエーテル、ポリオキシブチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンラウロアミドエーテル等のエーテル型ノニオン界面活性剤、(2)ソルビタンモノオレアート、ソルビタントリオレアート、グリセリンモノラウラート等の多価アルコール部分エステル型ノニオン界面活性剤、(3)ポリエチレングリコールジオレアート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート、ポリオキシブチレンソルビタントリオレアート、ポリオキシプロピレンひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンプロピレン硬化ひまし油トリオレアート、ポリオキシエチレン硬化ひまし油トリラウラート、ひまし油のエチレンオキサイド(以下、EOという)付加物及び硬化ひまし油のEO付加物から選ばれる少なくとも1種の化合物と、モノカルボン酸及びジカルボン酸とを縮合させたエーテルエステル化合物等のポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル型ノニオン界面活性剤、(4)ジエタノールアミンモノラウロアミド等のアルキルアミド型ノニオン界面活性剤、(5)ポリオキシエチレンジエタノールアミンモノオレイルアミド等のポリオキシアルキレン脂肪酸アミド型ノニオン界面活性剤等が挙げられる。これらの成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でもひまし油のアルキレンオキサイド付加物及び硬化ひまし油のアルキレンオキサイド付加物から選ばれる少なくとも1種の化合物と、モノカルボン酸及びジカルボン酸とを縮合させたエーテルエステル化合物が好ましく。さらに、該エーテルエステル化合物は、質量平均分子量(MW)3,000〜30,000のものを含有するものが好ましい。これらの化合物を使用することにより、本発明の効果をより向上、特に製糸工程において発生する毛羽をより低減することができる。該エーテルエステル化合物に使用されるアルキレンオキサイドとしては、例えばEO、プロピレンオキサイド(以下、POという)、ブチレンオキサイド(以下、BOという)等が挙げられる。モノカルボン酸としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、エイコセン酸、ベヘン酸、エルカ酸等が挙げられる。また、ジカルボン酸としては、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸等が挙げられる。より好ましい該エーテルエステル化合物としては、硬化ひまし油1モルに対しEO20モル付加したものをアジピン酸で架橋し、オレイン酸で末端エステル化した化合物(MW10,000)、ひまし油1モルに対しEO25モル付加したものをマレイン酸で架橋し、ステアリン酸で末端エステル化した化合物(MW5,000)、硬化ひまし油1モルに対しEO20モル、PO20モルをランダム付加したものをマレイン酸で架橋し、オレイン酸で末端エステル化した化合物(MW18,000)等が挙げられる。
【0022】
ここで質量平均分子量は、東ソー社製高速ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置HLC−8320GPCを用い、試料濃度5mg/ccで、東ソー社製分離カラムTSK gel Super H−2000、H−3000、H−4000に注入し、示差屈折率検出器で測定されたピークにより求めることができる。
【0023】
ひまし油のアルキレンオキサイド付加物及び硬化ひまし油のアルキレンオキサイド付加物から選ばれる少なくとも1種の化合物と、モノカルボン酸及びジカルボン酸とを縮合させたエーテルエステル化合物の場合、各成分のモル比率に特に制限はない。ひまし油のアルキレンオキサイド付加物及び硬化ひまし油のアルキレンオキサイド付加物から選ばれる少なくとも1種の化合物を20〜40モル%、モノカルボン酸を35〜65モル%、並びにジカルボン酸を5〜35モル%(合計100モル%)から構成されるものが好ましい。かかる構成により、本発明の効果をより向上、特に製糸工程において発生する毛羽をより低減することができる。
【0024】
本実施形態の処理剤に供するイオン界面活性剤は、前記の化5で示される芳香族スルホン酸塩、及び脂肪族スルホン酸塩を含んでなり、さらに該脂肪族スルホン酸塩の含有量に対する該芳香族スルホン酸塩の含有量の質量比が、芳香族スルホン酸塩/脂肪族スルホン酸塩=1/5〜1/10,000の割合で含有するものである。化5において、R
1はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、トリデシル基、ミリスチル基、セチル基、ステアリル基等の炭素数1〜18の炭化水素基である。M
1は、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、アンモニウム基、メチルアンモニウム基、エチルアンモニウム基、プロピルアンモニウム基、ブチルアンモニウム基、ジメチルアンモニウム基、ジエチルアンモニウム基、ジプロピルアンモニウム基、ジブチルアンモニウム基、トリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基、トリプロピルアンモニウム基、トリブチルアンモニウム基、テトラメチルアンモニウム基、テトラエチルアンモニウム基、テトラプロピルアンモニウム基、テトラブチルアンモニウム基、メタノールアンモニウム基、エタノールアンモニウム基、プロパノールアンモニウム基、ブタノールアンモニウム基、ジメタノールアンモニウム基、ジエタノールアンモニウム基、ジプロパノールアンモニウム基、ジブタノールアンモニウム基、トリメタノールアンモニウム基、トリエタノールアンモニウム基、トリプロパノールアンモニウム基、トリブタノールアンモニウム基等のアンモニウム基又は(EO18)ヘキシルアミノエーテル基、(PO16)オクチルアミノエーテル基、(EO6PO6)デシルアミノエーテル基、(EO12)ラウリルアミノエーテル基、(EO10)ミリスチリルアミノエーテル基、(EO8)セチルアミノエーテル基、(EO6)ステアリルアミノエーテル基、(EO4)オレイルアミノエーテル基、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジプロピルエタノールアミン、ジブチルエタノールアミン等の有機アミン基である。なお、括弧内に数値は各基の付加モル数を示す(以下同じ)。これらの成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
より具体的な芳香族スルホン酸塩としては、トルエンスルホン酸ナトリウム、エチルベンゼンスルホン酸カリウム、プロピルベンゼンスルホン酸リチウム、ブチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ヘキシルベンゼンスルホン酸カリウム、オクチルベンゼンスルホン酸リチウム、ノニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ノニルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、デシルベンゼンスルホン酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、テトラデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタデシルベンゼンスルホン酸カリウム等が挙げられる。これらの中でもトルエンスルホン酸ナトリウム、ノニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ノニルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム等分子中に炭素数1〜12のアルキル基を有する芳香族スルホン酸塩が好ましい。
【0026】
脂肪族スルホン酸塩としては、特に制限はなく、例えば1−オクチルスルホン酸ナトリウム、1−デカンスルホン酸カリウム、1−ラウリルスルホン酸ナトリウム、1−ミリスチルスルホン酸ナトリウム、1−セチルスルホン酸カリウム、1−ステアリルスルホン酸ナトリウム、イソオクチルスルホン酸ナトリウム、イソデカンスルホン酸ナトリウム、イソラウリルスルホン酸ナトリウム、イソミリスチリルスルホン酸ナトリウム、イソセチルスルホン酸ナトリウム、イソステアリルスルホン酸ナトリウム、ジイソブチルスルホコハク酸カリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジノニルスルホコハク酸ナトリウム等が挙げられる。これらの成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも下記の化7で示される化合物及び下記の化8で示される化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物を含有するものが好ましい。これらの化合物を使用することにより、本発明の効果をより向上、特に製糸工程において発生するタール汚れ、白粉汚れをより低減することができる。
【0027】
【化7】
(化7において、
a,b:それぞれ0以上の整数であってa+b=5〜17を満たす整数、
M
2:アルカリ金属、アンモニウム基、又は有機アミン基。)
【0028】
【化8】
(化8において、
R
2,R
3:それぞれ炭素数4〜12の炭化水素基、
M
3:アルカリ金属、アンモニウム基、又は有機アミン基。)
化7において、a,bは、それぞれ0以上の整数であってa+b=5〜17を満たす整数であり、M
2についての詳細は、前記化5のところで説明したM
1と同様である。
【0029】
化8において、R
2,R
3は、それぞれブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等の炭素数4〜12の炭化水素基であり、M
3についての詳細は、化5のところで説明したM
1と同様である。
【0030】
具体的に化7としては、好ましくはa+bの値が10〜14、M
2がナトリウムである化合物(混合物)等が挙げられる。化8としては、好ましくはジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩等が挙げられる。
【0031】
本実施形態の処理剤に供するイオン界面活性剤は、前記したように芳香族スルホン酸塩及び脂肪族スルホン酸塩を含んでなり、さらに該脂肪族スルホン酸塩の含有量に対する該芳香族スルホン酸塩の含有量の質量比が、芳香族スルホン酸塩/脂肪族スルホン酸塩=1/5〜1/10,000の割合で含有するものである。かかる比率の範囲内に規定することにより、製糸工程において発生するタール汚れ、白粉汚れ、毛羽を低減することができる。
【0032】
イオン界面活性剤としてさらに有機リン酸エステルのアミン塩を含有するものが好ましい。かかる化合物を使用することにより、本発明の効果をより向上、特に製糸工程において発生するタール汚れ、毛羽をより低減することができる。該有機リン酸エステルのアミン塩を構成するアミンが、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジブチルエタノールアミン、及び炭素数4〜30のモノアルキルアミン1モルに対しアルキレンオキシドを1〜50モルの割合で付加させた化合物であることがより好ましい。具体的な有機リン酸エステルのアミン塩としては、ラウリルホスフェートジエタノールアミン塩、ミリスチルホスフェートトリエタノールアミン塩、セチルホスフェートジブチルエタノールアミン塩、イソセチルホスフェート(EO10)ラウリルアミノエーテル塩、ステアリルホスフェート(PO6)ラウリルアミノエーテル塩、イソステアリルホスフェート(EO8)ステアリルアミノエーテル塩、アラキジルホスフェート(BO4)セチルアミノエーテル塩、イソアラキジルホスフェート(EO6PO6)ベヘニルアミノエーテル塩、ベヘニルホスフェート(EO15)リグノセリルアミノエーテル塩、イソベヘニルホスフェートジエタノールアミン塩、リグノセリルホスフェートトリエタノールアミン塩、イソリグノセリルホスフェートジブチルエタノールアミン塩、オレイルホスフェート(EO15)ステアリルアミノエーテル塩、(EO4)オレイルホスフェートジブチルエタノールアミン塩等が挙げられる。これらの成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。その他、イソステアリルホスフェートカリウム塩等のアルキルリン酸エステルの金属塩をさらに配合してもよい。
【0033】
本実施形態の処理剤において、上述した平滑剤、非イオン界面活性剤、及びイオン界面活性剤の含有比率は特に制限ない。前記平滑剤、前記非イオン界面活性剤、及び前記イオン界面活性剤の含有割合の合計を100質量%とすると、平滑剤を30〜70質量%、非イオン界面活性剤を20〜60質量%、及びイオン界面活性剤を0.1〜20質量%の割合で含有するものが好ましい。かかる配合量範囲に規定することにより、本発明の効果をより向上、製糸工程において発生するタール汚れ、白粉汚れ、毛羽をより低減することができる。
【0034】
(第2実施形態)
次に、本発明の合成繊維を具体化した第2実施形態を説明する。本実施形態の合成繊維は、第1実施形態の処理剤が付着している合成繊維である。合成繊維としては、特に制限はなく、例えば(1)ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリ乳酸エステル等のポリエステル系繊維、(2)ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系繊維、(3)ポリアクリル、モダアクリル等のポリアクリル系繊維、(4)ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維、(5)ポリウレタン系繊維等が挙げられる。
【0035】
第1実施形態の処理剤を合成繊維に付着させる割合に特に制限はないが、第1実施形態の処理剤(溶媒を含まない)を合成繊維に対し0.1〜3質量%の割合となるよう付着させることが好ましい。かかる構成により、本発明の効果をより向上させる。また、第1実施形態の処理剤を付着させる方法は、特に制限はなく、例えばローラー給油法、計量ポンプを用いたガイド給油法、浸漬給油法、スプレー給油法等の公知の方法を採用することができる。第1実施形態の処理剤を合成繊維に付着させる際の形態としては、例えば有機溶媒溶液、水性液等が挙げられる。
【0036】
上記実施形態の処理剤及び合成繊維によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態の処理剤では、平滑剤及び非イオン界面活性剤と、特定のイオン界面活性剤を所定の比率で併用して構成した。したがって、合成繊維の製糸工程において特にゴデットローラー周りに発生するタール汚れや、機台周りに堆積する白粉汚れ、合成繊維糸条の毛羽を効果的に低減することができる。それにより、本実施形態の合成繊維は、優れた工程通過性を発揮することができる。
【0037】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・本実施形態の処理剤には、本発明の効果を阻害しない範囲内において、処理剤の品質保持のための安定化剤や制電剤として、つなぎ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の通常合成繊維の処理剤に用いられる成分をさらに配合してもよい。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0039】
試験区分1(非イオン界面活性剤としてのエーテルエステル化合物の合成)
・エーテルエステル化合物(N−1)の合成
硬化ひまし油1モルに対しアルキレンオキサイドとしてEO20モル付加した化合物とジカルボン酸としてアジピン酸を通常の条件下でエステル化した。その後に、さらにモノカルボン酸としてオレイン酸を添加し引き続きエステル化を行うことでエーテルエステル化合物(N−1)を得た。
【0040】
・エーテルエステル化合物(N−2、N−3及びrN−1〜rN−3)の合成
エーテルエステル化合物(N−1)の合成と同様にエーテルエステル化合物(N−2及びrN−1〜rN−3)を合成した。各エーテルエステル化合物を構成するアルキレンオキサイド付加物、モノカルボン酸、及びジカルボン酸の内容を表1に示す。
【0041】
【表1】
表1において、各表記は以下のものを示す。
X−1:硬化ひまし油1モルに対しEO20モル付加したもの
X−2:ひまし油1モルに対しEO25モル付加したもの
X−3:硬化ひまし油1モルに対しEO20モル、PO20モルランダム付加したもの
X−4:硬化ひまし油1モルにEO40モル付加したもの
X−5:硬化ひまし油1モルにEO12モル付加したもの
X−6:ポリエチレングリコール(分子量600):PEG600
Y−1:オレイン酸
Y−2:ステアリン酸
Y−3:ラウリン酸
Z−1:アジピン酸
Z−2:マレイン酸
試験区分2(合成繊維用処理剤の調製)
・合成繊維用処理剤(実施例1)の調製
平滑剤としてトリメチロールプロパントリオレアート(rL−1)を40部、パーム油(rL−3)を15部及びジオレイルチオジプロピオナート(L−1)を5部、非イオン界面活性剤として硬化ひまし油1モルに対しEO20モル付加したものをアジピン酸で架橋し、オレイン酸で末端エステル化した化合物(N−1)5部、硬化ひまし油1モルにEO40モル付加したものをラウリン酸3モルでエステル化した化合物(rN−1)15部、硬化ひまし油1モルにEO12モル付加した化合物(rN−2)13部、ソルビタンモノオレアート(rN−4)5部、イオン界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SA−1)を0.1部、前記化7に示されるアルキルスルホン酸ナトリウムにおいて、a+bの値が8〜12、M
2がナトリウムである化合物(混合物)(SB−1)を1部、オレイルホスフェート(EO15)ステアリルアミノエーテル塩(SC−1)を0.9部の割合で均一混合して実施例1の合成繊維用処理剤を調製した。なお、表5においては、平滑剤、非イオン界面活性剤、及びイオン界面活性剤の各含有量の合計を100%とした場合の各成分の比率を示す(以下同様)。
【0042】
・合成繊維用処理剤(実施例2)の調製
表5に示される各成分を使用し、実施例1の合成繊維処理剤と同様の方法にて調製した。但し、表5の原料以外に酸化防止剤として1,1,3−トリス(2−メチル−4−ハイドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタンを処理剤100部に対し0.5部の割合で添加した。
【0043】
・合成繊維用処理剤(実施例3〜13及び比較例1〜6)の調製
表5に示される各成分を使用し、実施例1の合成繊維処理剤の調製の方法にて同様に、実施例3〜13及び比較例1〜6の合成繊維用処理剤を調製した。
【0044】
表2は、処理剤に配合した各イオン界面活性剤について、前記化5に示される芳香族スルホン酸塩のR
1とM
1の種類を示す。
表3は、処理剤に配合した各イオン界面活性剤について、前記化7に示される脂肪族スルホン酸塩のa+bの値、M
2の種類を示す。また、前記化8に示される脂肪族スルホン酸塩のR
2,R
3の種類、M
3の種類を示す。
【0045】
表4は、処理剤に配合した各平滑剤について、前記化6に示される含硫黄エステル化合物のR
4,R
5の種類、m,nの値を示す。
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【0049】
【表5】
表2〜5において、各表記は以下のものを示す。
L−1:ジオレイルチオジプロピオナート
L−2:ジイソセチルチオジプロピオナート
L−3:ジイソステアリルチオジプロピオナート
rL−1:トリメチロールプロパントリオレアート
rL−2:オレイルオレアート
rL−3:パーム油
rL−4:なたね白絞油
rL−5:グリセリントリオレアート
N−1:硬化ひまし油1モルに対しEO20モル付加したものをアジピン酸で架橋し、オレイン酸で末端エステル化した化合物(MW10,000)
N−2:ひまし油1モルに対しEO25モル付加したものをマレイン酸で架橋し、ステアリン酸で末端エステル化した化合物(MW5,000)
N−3: 硬化ひまし油1モルに対しEO20モル、PO20モルをランダム付加したものをマレイン酸で架橋し、オレイン酸で末端エステル化した化合物(MW18,000)
rN−1:硬化ひまし油1モルにEO40モル付加したものをラウリン酸3モルでエステル化した化合物
rN−2:硬化ひまし油1モルにEO12モル付加した化合物
rN−3:ポリエチレングリコール(分子量600)ジオレアート
rN−4:ソルビタンモノオレアート
SA−1:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
SA−2:ノニルベンゼンスルホン酸ナトリウム
SA−3:トルエンスルホン酸ナトリウム
SA−4:ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム
SA−5:ノニルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン
SB−1:前記化7に示されるアルキルスルホン酸ナトリウムにおいて、a+bの値が8〜12、M
2がナトリウムである化合物(混合物)
SB−2:前記化7に示されるアルキルスルホン酸ナトリウムにおいて、a+bの値が10〜14、M
2がナトリウムである化合物(混合物)
SB−3:ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム
SB−4:1−ラウリルスルホン酸ナトリウム
SC−1:オレイルホスフェート(EO15)ステアリルアミノエーテル塩
SC−2:イソセチルホスフェート(EO10)ラウリルアミノエーテル塩
SC−3:(EO4)オレイルホスフェートジブチルエタノールアミン塩
rSC−1:イソステアリルホスフェートカリウム塩
試験区分3(合成繊維処理剤の評価)
・耐熱性タールの評価
試験区分2で調製した各例の合成繊維処理剤を必要に応じてイオン交換水又は有機溶剤にて均一に希釈し、15%溶液とした。ポリエチレンテレフタレートのチップを常法により乾燥した後、エクストルーダーを用いて溶融紡糸し、口金から吐出して冷却固化した後の走行糸条に、前記の15%溶液を、計量ポンプを用いたガイド給油法にて付着させた。合成繊維処理剤の付着量が0.6質量%(溶媒を含まない)となるように給油した。その後、ガイドで集束させて、245℃の延伸ロール、弛緩ロールを介して全延伸倍率5.5倍となるように延伸し、1100デシテックス192フィラメントの延伸糸を10kg捲きチーズとして得た。耐熱性(タール)について、48時間紡糸した後のゴデットローラーの汚れ(タール)として下記のように評価した。結果を表5に示す。
【0050】
・耐熱性タールの評価基準
◎:汚れ(タール)がほとんど認められない。
○:汚れ(タール)がわずかに認められる。
×:汚れ(タール)が認められる。
××:激しい汚れ(タール)が認められる。
【0051】
・毛羽の評価
前記の紡糸工程において、糸をチーズとして巻き取る前に、毛羽計数装置(東レエンジニアリング社製)にて1時間当たりの毛羽数を測定し、次の基準で評価した。結果を表5に示す。
【0052】
・毛羽の評価基準
◎:測定された毛羽数が0個。
○:測定された毛羽数が2個以下(但し、0を含まない)。
×:測定された毛羽数が3〜9個。
××:測定された毛羽数が10個以上。
【0053】
・白粉発生の評価
前記の紡糸工程において、48時間紡糸した後のワインダー装置天板上の白粉の蓄積(汚れ)を以下のように評価した。結果を表5に示す。
【0054】
・白粉発生の評価基準
◎:白粉蓄積がほとんど認められない。
○:白粉蓄積がわずかに認められる。
×:白粉蓄積が認められる。
××:多量の白粉蓄積が認められる。
【0055】
表5の結果からも明らかなように、各実施例の合成繊維処理剤は、耐熱性タール、白粉発生、毛羽の評価がいずれも良好であった。本発明によれば、合成繊維の製糸工程において、ゴデットローラー周りのタール汚れ、機台周りの白粉汚れ、また毛羽を低減し、合成繊維の良好な工程通過性を得ることができるという効果が生じる。
【解決手段】本発明は、平滑剤、非イオン界面活性剤、及びイオン界面活性剤を含有して成る合成繊維用処理剤であって、前記イオン界面活性剤が、下記の化1で示される芳香族スルホン酸塩、及び脂肪族スルホン酸塩を含んでなり、該脂肪族スルホン酸塩の含有量に対する該芳香族スルホン酸塩の含有量の質量比が、芳香族スルホン酸塩/脂肪族スルホン酸塩=1/5〜1/10,000の割合で含有する。