特許第6310173号(P6310173)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三星電子株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6310173-半導体組成物 図000029
  • 特許6310173-半導体組成物 図000030
  • 特許6310173-半導体組成物 図000031
  • 特許6310173-半導体組成物 図000032
  • 特許6310173-半導体組成物 図000033
  • 特許6310173-半導体組成物 図000034
  • 特許6310173-半導体組成物 図000035
  • 特許6310173-半導体組成物 図000036
  • 特許6310173-半導体組成物 図000037
  • 特許6310173-半導体組成物 図000038
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6310173
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】半導体組成物
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/30 20060101AFI20180402BHJP
   H01L 51/05 20060101ALI20180402BHJP
   H01L 51/40 20060101ALI20180402BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20180402BHJP
【FI】
   H01L29/28 250H
   H01L29/28 100A
   H01L29/28 220A
   H01L29/28 310A
   H01L29/78 618B
【請求項の数】2
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2011-271276(P2011-271276)
(22)【出願日】2011年12月12日
(65)【公開番号】特開2012-134483(P2012-134483A)
(43)【公開日】2012年7月12日
【審査請求日】2014年5月28日
【審判番号】不服2016-12248(P2016-12248/J1)
【審判請求日】2016年8月12日
(31)【優先権主張番号】12/977,464
(32)【優先日】2010年12月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イリアン・ウー
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・ウィグルスワース
(72)【発明者】
【氏名】ピン・リウ
(72)【発明者】
【氏名】ナン−シン・フー
【合議体】
【審判長】 深沢 正志
【審判官】 加藤 浩一
【審判官】 飯田 清司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−283786(JP,A)
【文献】 特開2009−260340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/336
H01L29/786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の半導体層を製造するプロセスであって、
ポリマーバインダーとしての重量平均分子量45,000乃至300,000のスチレン系ポリマーと、式(II)の低分子半導体とを1:1の重量比で混合した組成物を基板にコーティングし、均一な膜を作成し、
【化2】
ここで、式中、R及びRは、それぞれ独立して、アルキルであり、
70乃至80℃で乾燥させた後、前記低分子半導体の融点よりも低い温度で前記組成物をアニーリングし、前記半導体層を作成し、
半導体層の上部に、金のソース電極およびドレイン電極を真空蒸着させ、デバイスを完成し、
前記半導体層が、0.10cm/V・secより大きな電界効果移動度を有する、プロセス。
【請求項2】
電子機器であって、半導体層を備え、前記半導体層が、ポリマーバインダーと
しての重量平均分子量45,000乃至300,000のスチレン系ポリマーと、式(II)の低分子半導体とを1:1の重量比で含み、
【化3】
式中、R及びRは、それぞれ独立して、アルキルであり、
前記半導体層が、0.10cm/V・secより大きな電界効果移動度を有する、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薄膜トランジスタ(TFT)および/または半導体層を含む他の電子機器に関する。半導体層は、本明細書に記載の半導体組成物から作られる。この組成物が、あるデバイスの半導体層で使用される場合、高い移動度と優れた安定性を達成する場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
本出願は、種々の実施形態では、電子機器、電子機器で使用される半導体組成物、このような電子機器を製造するプロセスを開示している。半導体層は、ポリマーバインダーと、式(I)の低分子半導体とを含む半導体組成物から作られ、
【化1】

式中、各Rは、独立して、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、トリアルキルシリル、ケトニル、シアノ、ハロゲンから選択され、mおよびnは、それぞれのフェニル環またはナフチル環の上にあるR側鎖の数であり、独立して、0〜6の整数であり、Xは、O、S、Seからなる群から選択され、a、b、cは、独立して、0または1である。得られた半導体層は、高い移動度を達成し、優れた安定性を有する。電子機器は、このような半導体組成物から作られる半導体層を含む。いくつかの実施形態では、電子機器は、薄膜トランジスタである。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1】本開示のTFTの第1の実施形態の図である。
図2】本開示のTFTの第2の実施形態の図である。
図3】本開示のTFTの第3の実施形態の図である。
図4】本開示のTFTの第4の実施形態の図である。
図5A】大部分の領域を示す、HMDSで改質されたSiO表面にある2,7−トリデシル−[1]ベンゾチエノ[3,2−b]ベンゾチオフェン層の第1の顕微鏡写真である。
図5B】別の大部分の領域を示す、HMDSで改質されたSiO表面にある2,7−トリデシル−[1]ベンゾチエノ[3,2−b]ベンゾチオフェン層の第2の顕微鏡写真である。
図5C】小さな領域を示す、HMDSで改質されたSiO表面にある2,7−トリデシル−[1]ベンゾチエノ[3,2−b]ベンゾチオフェン層の第3の顕微鏡写真である。
図6】OTS−8で改質されたSiO表面にあるポリスチレンと2,7−トリデシル−[1]ベンゾチエノ[3,2−b]ベンゾチオフェンとを含む薄膜の顕微鏡写真である。
図7】2,7−トリデシル−[1]ベンゾチエノ[3,2−b]ベンゾチオフェンの半導体層を有するTFTのI−V曲線を示すグラフである。
図8】2,7−トリデシル−[1]ベンゾチエノ[3,2−b]ベンゾチオフェンとポリスチレンの半導体層を有するTFTのI−V曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0004】
本開示は、ポリマーバインダーと、本明細書にさらに記載される低分子半導体とを含む組成物に関する。この組成物から作られる半導体層は、空気中できわめて安定であり、高い移動度を有する。これらの半導体組成物は、電子機器(例えば、薄膜トランジスタ(TFT))中に層を作成するのに有用である。この半導体組成物は、0.10cm/V・secより大きな、0.15cm/V・secより大きな電界効果移動度を有する層を作成することができる。
【0005】
図1は、本開示にかかるボトム−ゲート型でボトム−コンタクト型のTFT構造を示す。TFT10は、ゲート電極18と接する基板16と、ゲート誘電層14とを備えている。ゲート電極18は、ここでは基板16の上側に示されているが、ゲート電極は、基板の中の凹部に配置されていてもよい。ゲート誘電層14が、ゲート電極18を、ソース電極20、ドレイン電極22、半導体層12と分離していることが重要である。半導体層12は、ソース電極20およびドレイン電極22を覆うように、これらの間にある。この半導体は、ソース電極20とドレイン電極22との間に所定のチャネル長を有する。
【0006】
図2は、本開示にかかるボトム−ゲート型でトップ−コンタクト型の別のTFT構造を示す。TFT30は、ゲート電極38と接する基板36と、ゲート誘電層34とを備えている。半導体層32は、ゲート誘電層34の上部に配置されており、ゲート誘電層34をソース電極40およびドレイン電極42から分離している。
【0007】
図3は、本開示にかかるボトム−ゲート型でボトム−コンタクト型のTFT構造を示す。TFT50は、ゲート電極としても作用し、ゲート誘電層54と接する基板56を備えている。ソース電極60、ドレイン電極62、半導体層52は、ゲート誘電層54の上部に配置されている。
【0008】
図4は、本開示にかかるトップ−ゲート型でトップ−コンタクト型のTFT構造を示す。TFT70は、ソース電極80、ドレイン電極82、半導体層72と接する基板76を備えている。半導体層72は、ソース電極80およびドレイン電極82を覆うように、これらの間にある。ゲート誘電層74は、半導体層72の上部にある。ゲート電極78は、ゲート誘電層74の上部にあり、半導体層72とは接していない。
【0009】
半導体組成物は、ポリマーバインダーと、低分子半導体とを含む。低分子半導体は、式(I)の構造を有しており、
【化2】

式中、各Rは、独立して、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、トリアルキルシリル、ケトニル、シアノ(CN)、ハロゲンから選択され、mおよびnは、それぞれのフェニル環またはナフチル環の上にあるR側鎖の数であり、独立して、0〜6の整数であり、Xは、O、S、Seからなる群から選択され、a、b、cは、独立して、0または1である。この観点で、aまたはbが0である場合、この化合物の外側部分は、4個までの側鎖を有してもよいフェニル環であろう。aまたはbが1である場合、この化合物の外側部分は、6個までの側鎖を有することができるナフチル環であろう。
【0010】
a、b、cが0である場合、式(I)の分子は、正式には、二置換−[1]ベンゾチエノ[3,2−b]ベンゾチオフェンとしても知られる。[1]ベンゾチエノ[3,2−b]ベンゾチオフェン部分は、本明細書では、「BTBT」と省略されてもよい。例えば、式(I)の半導体は、二置換−BTBTと呼ばれてもよい。
【0011】
いくつかの実施形態では、低分子半導体は、バンドギャップが約1.5〜約3.5eVであっておよい(約1.8〜約2.8eVを含む)。この大きなバンドギャップは、典型的には、ペンタセンに由来する半導体と比較した場合に、この低分子半導体が空気中で良好な安定性を有していることを示す。この低分子半導体は、結晶性または半結晶性の構造を有している。特定の実施形態では、式(I)の半導体は、電磁気スペクトルの可視光領域(すなわち、390nm〜750nm)では無色である。無色の半導体は、その大きなバンドギャップに起因して優れた安定性を付与するだけではなく、透明なデバイス用途のために、透明性という利点を与える。
【0012】
式(I)の化合物の5種類の特定の変形が本開示で想定されている。1つめの変形において、低分子分子半導体は、式(II)の構造を有しており、
【化3】

式中、RおよびRは、独立して、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、トリアルキルシリル、ケトニル、シアノ、ハロゲンから選択される。この式(II)の半導体化合物について、Rは、2位に位置しており、Rは、7位に位置している。したがって、式(II)の化合物は、2,7−二置換−BTBTと呼ぶことができる。式(I)を参照すると、式(II)の化合物は、a、b、cが0の時に得られる。
【0013】
ある実施形態では、RおよびRは、独立して、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、トリアルキルシリル、ケトニル、シアノ、ハロゲンから選択される。他のある実施形態では、RおよびRは、独立して、アルキルおよび置換アルキルから選択され、この低分子半導体を特定のポリマーバインダーと合わせ、高い磁場電界効果移動度を達成する。ポリマーバインダーは、本明細書でさらに説明する。アルキル基は、炭素原子を約4〜約30個含んでいてもよい(炭素原子約4〜約16個を含む)。例示的なアルキル基としては、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、ドデシル、トリデシル、ヘキサデシルなどが挙げられる。ある実施形態では、アルキル基は、奇数個の炭素原子を有しており、他の実施形態では、アルキル基は、偶数個の炭素原子を有している。特定の実施形態では、RとRは、同じである。
【0014】
別の変形では、低分子半導体は、式(III)の構造を有しており、
【化4】

式中、R、Rは、独立して、アルキルまたは置換アルキルであり、各Arは、独立して、アリーレン基またはヘテロアリーレン基である。式(I)を参照すると、式(III)の化合物は、a、b、cが0である場合に得られ、mおよびnは、1であり、各Rは、アルケニルまたは置換アルケニルである。アルキル基は、炭素原子を1〜約30個含んでいてもよい(炭素原子約4〜約18個を含む)。
【0015】
用語「アリーレン」は、完全に炭素原子と水素原子とで構成され、2個の異なる原子と単結合を形成することが可能な芳香族基を指す。例示的なアリーレン基は、フェニレン(−C−)である。
【0016】
用語「ヘテロアリーレン」は、炭素原子と、水素原子と、1個以上のヘテロ原子とから構成され、2個の異なる原子と単結合を形成することが可能な芳香族基を指す。炭素原子およびヘテロ原子は、この基の環式環または骨格に存在する。ヘテロ原子は、O、S、Nから選択される。例示的なヘテロアリーレン基は、2,5−チエニルである。
【0017】
第3の変形では、低分子半導体は、式(IV)の構造を有しており、
【化5】

式中、RおよびRは、独立して、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、トリアルキルシリル、ケトニル、シアノ、ハロゲンから選択され、jおよびkは、独立して、0〜6の整数である。式(I)を参照すると、式(IV)の化合物は、aおよびbが両方とも1であり、cが0である場合に得られる。RおよびRの側鎖は、式(IV)の化合物の外側のナフチル部分の任意の炭素原子に位置していてもよい。
【0018】
式(IV)の特定の実施形態では、RおよびRは、独立して、アルキルであり、jは1であり、kは1である。
【0019】
次の変形では、低分子半導体は、式(V)の構造を有しており、
【化6】

式中、RおよびRは、独立して、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、トリアルキルシリル、ケトニル、シアノ、ハロゲンから選択され、pおよびqは、独立して、0〜4の整数である。式(I)を再び参照すると、式(V)の化合物は、aおよびbが両方とも0であり、cが1である場合に得られる。
【0020】
最後の変形では、低分子半導体は、式(VI)の構造を有しており、
【化7】

式中、R10およびR11は、独立して、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、トリアルキルシリル、ケトニル、シアノ、ハロゲンから選択され、a、b、cは、独立して、0または1である。
【0021】
式(VI)の特定の実施形態では、R10は、ハロゲンまたはシアノであり、R11は、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、またはケトニルである。他の実施形態では、R11は、ハロゲンまたはシアノであり、R10は、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、またはケトニルである。
【0022】
また、式(I)の低分子半導体に関する他の特定の変形は、式(1)〜(50)として知られており、
【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

式中、各R’は、独立して、約4〜約20個の炭素原子を含む(約4〜約16個の炭素原子を含む)アルキルまたは置換アルキルである。
【0023】
式(2)、(3)、(7)、(8)、(9)、(13)、(14)、(15)、(20)、(21)、(43)〜(50)の半導体化合物も、式(II)の例示的な化合物である。
【0024】
式(2)、(3)、(13)、(14)、(15)、(20)、(21)の半導体化合物も、式(III)の例示的な化合物である。
【0025】
式(22)、(23)、(24)、(25)、(26)、(27)、(28)、(29)、(30)、(31)、(34)、(35)の半導体化合物も、式(IV)の例示的な化合物である。
【0026】
式(36)、(37)、(38)、(39)、(40)の半導体化合物も、式(V)の例示的な化合物である。
【0027】
式(4)、(5)、(10)、(11)、(12)、(18)、(19)、(24)、(25)、(26)、(27)、(37)、(38)、(39)、(41)、(42)の半導体化合物も、式(VI)の例示的な化合物である。
【0028】
当該技術分野で既知の種々の方法を用い、本発明で開示されている低分子半導体を製造してもよい。例えば、式(II)の低分子半導体を製造する方法は、2,7−ジハロ−BTBT Aと、アルキレンとを反応させ、2,7−ジアルキン−1−イル−BTBT 1を作成することを含む。この最初の反応を以下に示し、
【化16】

式中、Xはハロゲンであり、Rは、アルキルであり、Ph(PPhClは、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリドであり、CuIは、ヨウ化銅であり、iPrNHは、ジイソプロピルアミンである。ここに示されるように、2個のR基は同じである。しかし、例えば、X基の1個にブロッキング基/保護基を用い、第1のアルキンと第1の反応を行い、保護されていないX基に変換し、ブロッキング基/保護基を除去し、次いで、第2の異なるアルキンと第2の反応を行なうことによって、2個のR基は異なっていてもよい。
【0029】
次いで、2,7−ジアルキン−1−イル−BTBT 1を還元し、以下に示すように2,7−ジアルキル−[1]ベンゾチエノ[3,2−b]ベンゾチオフェン 1aにしてもよく、
【化17】

式中、Pd/Cは、炭素担持型パラジウム触媒であり、THFは、テトラヒドロフランである。他の可能なR置換基に対し、同様の反応を行ってもよい。
【0030】
また、化合物1aを調製する方法は、三塩化アルミニウム存在下、[1]ベンゾチエノ[3,2−b]−ベンゾチオフェンのコアBと、置換された酸塩化物とを反応させ、2,7−ジケトニル BTBT 2を作成することを含む。
【化18】
【0031】
次いで、ジケトニルBTBT 2を、ジエチレングリコール中、水酸化カリウム存在下でヒドラジンを用い、改変型のWolff−Kishner還元を用いて脱酸素する。これにより、2,7−ジアルキル−[1]ベンゾチエノ[3,2−b]ベンゾチオフェン1bが生成する。
【化19】

この2段階の方法は、短いR置換基(C〜C)には特に有効である。
【0032】
低分子半導体自体は、膜形成性が悪く、この性質は、この半導体が結晶性または液晶性であることによるものである。したがって、半導体組成物は、均一な膜を得ることが可能なようにポリマーバインダーも含んでおり、デバイスの性能が顕著に向上する。ポリマーバインダーは、低分子半導体が分散するマトリックスを形成するものであると考えてもよい。
【0033】
半導体組成物のポリマーバインダーとして、任意の適切なポリマーを用いることができる。ある実施形態では、ポリマーは、アモルファスポリマーである。アモルファスポリマーは、ガラス転移点が、低分子半導体の融点よりも低くてもよい。他の実施形態では、アモルファスポリマーは、ガラス転移点が、低分子半導体の融点よりも高い。いくつかの実施形態では、ポリマーは、室温、60Hzで測定した場合、誘電率が4.5未満、好ましくは3.5未満である(3.0未満を含む)。いくつかの実施形態では、ポリマーは、C、H、F、Cl、またはN原子のみを含むポリマーから選択される。ある実施形態では、ポリマーは、極性の低いポリマー、例えば、極性基を含まない炭化水素ポリマーまたはフルオロカーボンポリマーである。
【0034】
半導体組成物によって作られる半導体の移動度は、低分子半導体と特定のポリマーとの組み合わせによって影響を受けることがわかっている。式(I)の化合物を、多くの異なるポリマーと合わせてもよい。ある特定の実施形態では、ポリマーバインダーは、スチレン系ポリマーである。
【0035】
より特定的な実施形態では、ポリマーバインダーは、スチレン系ポリマーである。特定的な実施形態では、スチレン系ポリマーは、重量平均分子量が約40,000〜約2,000,000である。ある実施形態では、スチレン系ポリマーは、分子量が約100,000〜約1,000,000である。ある好ましい実施形態では、ポリマーバインダーは、重量平均分子量が約40,000〜約2,000,000のポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、またはポリ(4−メチルスチレン)である。
【0036】
式(III)、(IV)、(V)、(VI)の化合物を、一般的に、任意のポリマーバインダーと合わせてもよい。例示的なポリマーバインダーとしては、上述のポリマーバインダー、他のポリマー、例えば、ポリ(経皮酸ビニル)、ポリシロキサン、ポリピロール、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエステル、およびこれらの混合物が挙げられる。ポリマーは、重量平均分子量が、約10,000〜約2,000,000であってもよい(約40,000〜約1,000,000を含む)。
【0037】
式(I)の低分子半導体と、ポリマーバインダーとの重量比は、約99:1〜約1:3であってもよい(約10:1〜約1:2、約5:1〜約2:3、または約3:2〜約3:4を含む)。ある実施形態では、式(I)の低分子半導体と、ポリマーバインダーとの重量比は、1:1付近である。式(II)の低分子半導体と、スチレン系ポリマーバインダーとの重量比は、望ましくは、約3:2〜約2:3であり、最適には、約1:1の比率で機能する。
【0038】
半導体組成物は、低分子半導体およびポリマーバインダーが可溶性であるような溶媒をさらに含んでいてもよい。
【0039】
低分子半導体およびポリマーバインダーは、半導体組成物の約0.05〜約20重量%である(約0.1〜約10重量%、または約0.1〜約1.0重量%を含む)。
【0040】
いくつかの実施形態では、低分子半導体とポリマーバインダーとを含む半導体組成物は、粘度が約1.5センチポイズ(cps)〜約100cpsであってもよい(約2〜約20cpsを含む)。高分子量ポリマーバインダーを用いると、半導体組成物の粘度が上がるだろう。結果として、インクジェット印刷およびスピンコーティングのような溶液析出技術を用いると、均一な半導体層を作成するのに役立つだろう。
【0041】
ボトム−ゲート型TFTは、一般的に製造が単純であるため、有益であろう。しかし、以前の半導体/ポリマーコンポジット系は、トップ−ゲート型デバイスでのみ高い移動度が達成されている。本開示の半導体組成物を利用すると、図1〜3に示されるようなボトム−ゲート型デバイスでも、高い移動度を達成することができる。
【0042】
当該技術分野で既知の従来のプロセスを用い、電子機器中に半導体層を作成してもよい。いくつかの実施形態では、半導体層は、溶液析出技術を用いて作成される。例示的な溶液析出技術としては、スピンコーティング、ブレードコーティング、ロッドコーティング、浸漬コーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、スタンピング、ステンシル印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷などが挙げられる。
【0043】
析出させた後、半導体組成物を乾燥し、場合により、低分子半導体の融点よりも低い温度でアニーリングし、半導体層を作成する。ある実施形態では、他の低分子半導体/ポリマーコンポジットとは対照的に、半導体組成物から半導体層を製造する間にアニーリング工程が存在しない。低分子半導体の融点よりも高い温度でアニーリングすると、低分子半導体およびポリマーバインダーの顕著な相分離が起こるだろう。その結果、電子機器は、電気特性が悪くなるだろう。半導体層は、電界効果移動度が、少なくとも0.10cm/V・sec、または少なくとも0.15cm/V・sec、または少なくとも0.4cm/V・secである(少なくとも0.5cm/V・secを含む)。
【0044】
半導体組成物を用いて作られた半導体層は、深さが約5ナノメートルから約1000ナノメートルであってもよい(約20〜約100ナノメートルを含む)。特定の構造(例えば、図1および4に示される構造)において、半導体層は、ソース電極とドレイン電極を完全に覆っている。
【0045】
TFTの性能を、移動度によって測定することができる。移動度は、単位cm/V・secで測定され、移動度が高いことが望ましい。本開示の半導体組成物を用いて得られたTFTは、電界効果移動度が、少なくとも0.1cm/V・secであってもよい。本開示のTFTは、電流オン/オフ比が少なくとも10であってもよい(少なくとも10を含む)。式(I)の低分子半導体とポリマーバインダーとを含む半導体層を含むTFTは、空気中で優れた安定性を有する。例えば、周囲の空気にさらされると、電界効果移動度は、最初は増加し、その後低下するだろう。2週間にわたって(1週間にわたってを含む)、電界効果移動度は低下しない。
【0046】
薄膜トランジスタは、一般的に、半導体層に加え、基板と、任意要素のゲート電極と、ソース電極と、ドレイン電極と、誘電層とを備えている。
【0047】
基板は、限定されないが、ケイ素、ガラス板、プラスチック膜またはシートを含む材料で構成されていてもよい。構造的に可とう性の機器では、例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミドのシートなどのようなプラスチック基板が好ましい場合がある。基板の厚みは、約10マイクロメートルから10ミリメートルを超えていてもよく、例示的な厚みは、特に、可とう性プラスチック基板の場合には、約50〜約100マイクロメートル、ガラスまたはケイ素のような剛性基板の場合には、約0.5〜約10ミリメートルであってもよい
【0048】
誘電層は、一般的に、無機材料の膜、有機材料の膜、または有機−無機コンポジットの膜であってもよい。誘電層として適する無機材料の例としては、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸バリウムジルコニウムなどが挙げられる。適切な有機ポリマーの例としては、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ(ビニルフェノール)、ポリイミド、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、エポキシ樹脂などが挙げられる。誘電層の厚みは、使用される材料の誘電率によって変わり、例えば、約10ナノメートル〜約500ナノメートルであってもよい。誘電層は、導電率が、例えば、約10−12ジーメンス/センチメートル(S/cm)未満であってもよい。誘電層は、ゲート電極を作成するときに記載したプロセスを含む、当該技術分野で知られる従来のプロセスによって作られる。
【0049】
本開示において、誘電層は、表面改質剤で表面が改質されていてもよい。表面改質剤の例としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、オクチルトリクロロシラン(OTS−8)が挙げられる。半導体層は、この改質された誘電層表面に直接接していてもよい。完全に接触していてもよいし、部分的に接触していてもよい。この表面改質は、誘電層と半導体層との間に界面層を作成すると考えることもできる。
【0050】
ゲート電極は、導電性材料で構成されている。ゲート電極は、金属の薄膜、導電性ポリマー膜、導電性インクまたはペーストから作られる導電性膜、または基板自体(例えば、重金属がドープされたケイ素)であってもよい。ゲート電極の材料の例としては、限定されないが、アルミニウム、金、銀、クロム、インジウムスズ酸化物、導電性ポリマー、例えば、ポリスチレンスルホネートがドープされたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PSS−PEDOT)、カーボンブラック/グラファイトで構成される導電性インク/ペーストが挙げられる。ゲート電極は、減圧エバポレーション、金属または導電性金属酸化物のスパッタリング、従来のリソグラフィーおよびエッチング、化学真空蒸着、スピンコーティング、鋳造または印刷、または他の堆積プロセスによって調製されてもよい。ゲート電極の厚みは、例えば、金属膜の場合には、約10〜約200ナノメートル、導電性ポリマーの場合には、約1〜約10マイクロメートルの範囲である。ソース電極およびドレイン電極として用いるのに適した、典型的な材料としては、アルミニウム、金、銀、クロム、亜鉛、インジウム、導電性金属酸化物、例えば、亜鉛−ガリウム酸化物、インジウムスズ酸化物、インジウム−アンチモン酸化物、導電性ポリマーおよび導電性インクのようなゲート電極の材料が挙げられる。ソース電極およびドレイン電極の典型的な厚みは、例えば、約40ナノメートル〜約1マイクロメートルであり、より特定的な厚みは、約100〜約400ナノメートルである。
【0051】
ソース電極およびドレイン電極として用いるのに適した、典型的な材料としては、金、銀、ニッケル、アルミニウム、白金、導電性ポリマー、導電性インクのようなゲート電極の材料が挙げられる。特定の実施形態では、電極材料は、半導体に対する接触抵抗が低い。典型的な厚みは、例えば、約40ナノメートル〜約1マイクロメートルであり、より特定的な厚みは、約100〜約400ナノメートルである。本開示のOTFTデバイスは、半導体チャネルを含む。半導体チャネルの幅は、例えば、約5マイクロメートル〜約5ミリメートルであってもよく、特定的なチャネルの幅は、約100マイクロメートル〜約1ミリメートルである。半導体チャネルの長さは、例えば、約1マイクロメートル〜約1ミリメートルであってもよく、より特定的なチャネルの長さは、約5マイクロメートル〜約100マイクロメートルである。
【0052】
ソース電極は、接地されており、ゲート電極に、例えば、約+10ボルト〜約−80ボルトの電圧がかけられる場合、半導体チャネルを通って移動する電荷キャリアを集めるために、例えば、約0ボルト〜約80ボルトのバイアス電圧がドレイン電極にかけられる。電極は、当該技術分野で既知の従来のプロセスを用いて作成されるか、または堆積されてもよい。
【0053】
所望な場合、電気的性質を破壊し得る環境条件(例えば、光、酸素、水分など)から守るために、防御層をTFTの上部に堆積させてもよい。このような防御層は、当該技術分野で知られており、単にポリマーからなるものであってもよい。
【0054】
OTFTの種々の要素を、任意の順序で基板の上に堆積させてもよい。しかし、一般的に、ゲート電極および半導体層は、両方ともゲート誘電層に接していなければならない。それに加え、ソース電極およびドレイン電極は、両方とも半導体層に接していなければならない。句「任意の順序で」は、順次作成すること、同時に作成することを含む。例えば、ソース電極およびドレイン電極を同時に作成してもよく、順次作成してもよい。用語基板「の上(on)」または基板「の上(upon)」は、基板の上部にある層および要素について、底部または支持板であるような基板に対する、種々の層および要素を指す。言い換えると、すべての要素は、すべてが基板と直接接していない場合であっても、基板の上にある。例えば、誘電層および半導体層は、一方の層が他の層よりも基板に近い場合であっても、両方とも基板の上にある。得られたTFTは、良好な移動度を有し、良好な電流オン/オフ比を有する。
【0055】
以下の実施例は、本開示の方法にしたがって製造された化合物および電子機器を示す。この実施例は、単なる説明であり、ここに記載した材料、条件またはプロセスパラメータに関し、本開示を限定することを意図したものではない。すべての部は、他の意味であると示されていない限り、重量%である。
【実施例】
【0056】
(低分子半導体の合成)
2,7−ジトリデシル−[1]ベンゾチエノ[3,2−b]ベンゾチオフェン(2,7−ジトリデシル−BTBT)(式(49))を以下のように製造した。
50mLのSchlenkフラスコに、2,7−ジヨード−BTBT(0.51グラム、1.036mmol)、トリデカ−1−イン(0.934グラム、5.18mmol)を入れた。トルエン(15ml)、ジイソプロピルアミン(15ml)を加え、反応物を2回の凍結/ポンプ/解凍サイクルで脱気した。凍結した反応混合物に、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド(0.145グラム、0.207mmol)、ヨウ化銅(I)(0.079グラム、0.415mmol)を加えた。反応物に対し、最後の凍結/ポンプ/解凍サイクルを行い、アルゴン下で撹拌した。18時間後、反応物を濾過し、ロータリーエバポレーターを用いて濾液を乾燥するまで濃縮した。未精製生成物をBiotage SP1クロマトグラフィーシステム(50グラム SNAP、ヘキサン中、0−20% CHCl)で精製した。生成物である2,7−ジトリデシン−1−イル−BTBTを単離し、ヘキサンから再結晶させた。Hおよび13CのNMR分光法を用い、構造を確認した。収量0.25g(40%)が実現した。この工程を以下に示す。
【化20】
【0057】
次いで、250mLの丸底フラスコに、2,7−ジトリデシン−1−イル−BTBT(0.47グラム、0.787mmol)のテトラヒドロフラン(50ml)を入れ、Pd/C(0.5グラム、4.70mmol)で処理した。このフラスコから減圧下で注意深く取り出し、Hガスを数回流した。出発物質がTLCによって検出されなくなるまで、H雰囲気(風船)で反応物を撹拌した。18時間後、反応物をロータリーエバポレーターで濃縮し、ヘキサンで再び懸濁させ、短いシリカ栓(ヘキサン)で濾過した。生成物は、TLCで実際に純粋であり、これをヘキサンから再結晶させた。Hおよび13CのNMR分光法を用い、構造を確認した。収量0.40g(84%)が実現し、最終生成物を得た。この工程を以下に示す。
【化21】
【0058】
(低分子半導体の合成)
2,7−ジペンチル−[1]ベンゾチエノ[3,2−b]ベンゾチオフェンを製造した(2,7−ジペンチル−BTBT)(式(46))。
250mLの3ッ首丸底フラスコで、ベンゾ[b]ベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]チオフェン(1グラム、4.16mmol)をCHCl(100ml)に溶解し、−10℃まで冷却した。反応物をAlCl(3.05グラム、22.88mmol)で処理し、得られた褐色懸濁物を−78℃まで冷却した。反応物に塩化ペンタノイル(2.52ml、20.80mmol)を滴下して処理し、得られた赤色懸濁物をアルゴン雰囲気下、この温度で撹拌した。1時間後、冷却浴をはずし、反応物を室温まで加温し、アルゴン雰囲気下で撹拌した。48時間後、この反応物を氷に注ぎ、1時間撹拌した。未精製生成物を減圧濾過によって集め、水(50mL)、メタノール(50mL)で順に洗浄した。未精製生成物をトルエンから再結晶させることによって精製した。Hおよび13CのNMR分光法を用い、構造を確認した。収量0.65g(38%)が実現した。
【化22】
【0059】
250mLの3ッ首丸底フラスコで、水酸化カリウム(0.453g、8.08mmol)をジエチレングリコール(70ml)に溶解した。この反応物を1,1’−(ベンゾ[b]ベンゾ[4,5]チエノ[2,3−d]チオフェン−2,7−ジイル)ビス(ペンタン−1−オン)(0.600g、1.469mmol)、ヒドラジン一水和物(1.817ml、37.4mmol)とともに処理し、得られた懸濁物を100℃まで加熱した。1時間後、反応物を210℃まで加熱した。5時間後、加熱源をはずし、反応物を室温まで冷却し、一晩撹拌した。未精製生成物を減圧濾過によって集め、次いで、水(50mL)、メタノール(50mL)で洗浄した。この生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって、ヘキサンで溶出させて精製し、次いで、ヘキサンから再結晶させた。Hおよび13CのNMR分光法を用い、構造を確認した。収量0.25g(45%)が実現し、最終生成物を得た。
【化23】
【0060】
(比較例1〜3)
一般的に、3種類の比較例を以下のように調製した。200nmの熱的に成長させた酸化ケイ素誘電層を有する、nドープされたケイ素ウェハを基板として用いた。0.6wt%の2,7−ジトリデシル−BTBTのクロロベンゼン半導体溶液を誘電層にスピンコーティングした。70〜80℃で30分間乾燥させた後、半導体層の上部に、金のソース電極およびドレイン電極を真空蒸着させ、デバイスを完成させた(図3を参照)。このデバイスは、Keithley 4200 SCSを用い、周囲条件で特性決定された。それぞれの例について少なくとも10個のトランジスタを製造し、特性決定した。半導体層の形態を光学顕微鏡によって調べた。
【0061】
比較例1では、酸化ケイ素誘電層の表面は改質されなかった。
【0062】
比較例2では、酸化ケイ素誘電層の表面は、半導体溶液を析出させる前に、HMDSで改質された。
【0063】
比較例3では、酸化ケイ素誘電層の表面は、半導体溶液を析出させる前に、OTS−8で改質された。
【0064】
(比較例4〜6)
3mgの2,7−BTBTを、3mgのポリ(3,3’’’−ジドデシルクアテルチオフェン)(PQT−12としても知られ、以下に示される構造を有するポリマー)とともに、1gのジクロロベンゼン溶媒に溶解した。
【化24】

半導体溶液を、OTS−8で改質された基板にスピンコーティングし、均一な膜を作成した。70〜80℃で30分間乾燥させた後、半導体層の上部に、金のソース電極およびドレイン電極を真空蒸着させ、デバイスを完成させた。それぞれの例について少なくとも10個のトランジスタを製造し、特性決定した。
【0065】
比較例4では、ソース電極およびドレイン電極を堆積させた後、デバイスをアニーリングしなかった。
【0066】
比較例5では、次いで、このデバイスを、減圧乾燥器中、130℃の温度で10分間アニーリングした。
【0067】
比較例6では、次いで、このデバイスを、減圧乾燥器中、140℃の温度で10分間アニーリングした。
【0068】
(実施例1〜9)
15mgのポリスチレン、15mgの2,7−ジトリデシル−BTBTを2gのクロロベンゼン溶媒に溶解した。半導体溶液を、OTS−8で改質された基板にスピンコーティングし、均一な膜を作成した。70〜80℃で30分間乾燥させた後、半導体層の上部に、金のソース電極およびドレイン電極を真空蒸着させ、デバイスを完成させた。それぞれの例について少なくとも10個のトランジスタを製造し、特性決定した。
【0069】
実施例1では、ポリスチレンは、分子量が約45,000であった。
【0070】
実施例2では、ポリスチレンは、分子量が約280,000であった。
【0071】
実施例3では、分子量が100,000のポリ(α−メチルスチレン)を、ポリスチレンの代わりに用いた。
【0072】
実施例4では、分子量が72,000のポリ(4−メチルスチレン)をポリスチレンの代わりに用いた。また、フェニルトリクロロシラン(PTS)をOTS−8の代わりに用いた。
【0073】
実施例5では、コポリマー、ポリ(ビニルトルエン−コ−α−メチルスチレン)(溶融粘度、161℃で100ポイズ)をポリスチレンの代わりに用いた。また、PTSをOTS−8の代わりに用いた。
【0074】
実施例6では、分子量が100,000のポリ(N−ビニルカルバゾール)をポリスチレンの代わりに用いた。また、PTSをOTS−8の代わりに用いた。
【0075】
実施例7では、ポリスチレンをポリマーとして用い、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)をOTS−8の代わりに用いた。2,7−ジペンチル−BTBTを2,7−ジトリデシル−BTBTの代わりに用いた。
【0076】
実施例8では、ポリスチレンをポリマーとして用い、PTSをOTS−8の代わりに用いた。2,7−ジペンチル−BTBTを2,7−ジトリデシル−BTBTの代わりに用いた。
【0077】
実施例9では、ポリ(α−メチルスチレン)をポリマーとして用い、PTSをOTS−8の代わりに用いた。2,7−ジペンチル−BTBTを2,7−ジトリデシル−BTBTの代わりに用いた。
【0078】
(比較例7)
実施例2で製造したトランジスタデバイスを、130℃で5分間、熱によってアニーリングした。室温まで冷却した後、移動度を再び測定した。
【0079】
(結果)
表1は、比較例1〜7、実施例1〜9のトランジスタの性能をまとめたものである。
【0080】
【表1】
比較例1では、改質されていない基板の上に、比較的均一な膜が得られた。しかし、デバイスの電界効果移動度はきわめて低かった。
【0081】
比較例2のHMDSで改質された表面を有するデバイスでは、ほとんど0.5cm/V・secまでの移動度が観察された。しかし、0.02cm/V・sec程度の低い移動度も観察された。これらのデバイスの移動度の変動は、1桁より大きく、これはおそらく膜の均一性が失われているためであろう。
【0082】
OTS−8で改質された比較例3の基板は、膜でコーティングすることができなかった。半導体組成物の粘度が低いことが、原因であろう。
【0083】
図5A〜5Cは、比較例2の薄膜においてみられる3種類の典型的な形態を示す3枚の顕微鏡写真である。図5Aおよび図5Bは、半導体層の大きな領域を示しており、低い移動度を与えていた。図5Cは、小さな領域を示し、最も高い移動度を与えていた。図5A図5Bも、異なる色によってわかるように、小さな領域と、不均一なコーティングが示されており、一方、図5Cは、均一層を有する大きな領域が示されていた。
【0084】
比較例4〜6では、半導体層は、2,7−ジトリデシル−BTBTとPQT−12とを含んでいた。これらの層の移動度は、きわめて高いわけではなく、アニーリングした純粋なポリチオフェンから作られた半導体層と匹敵するものであった。言い換えると、予想されているとおり、2,7−ジトリデシル−BTBTの存在は、半導体層の移動度をまったく高めなかった。これらの結果は、特に、ボトム−ゲート型のデバイスについて、本開示のポリマーバインダーとして用いるのにすべてのポリマーが適しているわけではないことを示唆している。
【0085】
実施例1〜9の半導体層は、良好な膜均一性を与え、良好な性能を与えた。特に、高い分子量を有するスチレン系ポリマーまたはアリールアミン系ポリマー(例えば、ポリ(N−ビニル カルバゾール))を用いる場合に、高い平均移動度が達成された。最も高い移動度は、ポリマーバインダーと2,7−ジトリデシル−[1]ベンゾチエノ[3,2−b]ベンゾチオフェンのコンポジット半導体では0.81cm/V・secまで達し、ポリマーバインダー中の2,7−ジペンチル−[1]ベンゾチエノ[3,2−b]ベンゾチオフェンのコンポジット半導体では3.0cm/V・sまで達し、移動度の変動は大きく減った。好ましくは、アニーリング工程を使用しない。比較例7で示されるように、アニーリングしたデバイスは、移動度が顕著に低くなっていた。
【0086】
図6は、2,7−ジトリデシル−BTBTとポリスチレンとを含む薄膜の形態を示す顕微鏡写真である。組成物は、この図において淡黄色であらわされるような、大きな相分離した領域、またはポリマーが分散した液晶領域を示す。この領域の大きさは、図5Aで示される小さな領域とは対照的に、長さが100マイクロメートル程度と大きなものであった。理論によって制限されないが、この形態が、高い電界効果移動度を可能にするようである。
【0087】
ポリマーバインダーとしてスチレン系ポリマーを用いると、移動度だけではなく、他のデバイス特性も向上した。図7は、2,7−ジトリデシル−BTBTのみからなる半導体層を有するTFTのI−V曲線を示すグラフである。図8は、2,7−ジトリデシル−BTBTとポリスチレンとを含む半導体層を有するTFTのI−V曲線を示すグラフである。これらのデバイスは、チャネル長が90マイクロメートルであり、チャネル幅が1,000マイクロメートルであった。両方の図において、点線の曲線は、ドレインの電流であり、一方、実線は、ドレイン電流の平方根である。まっすぐな点線は、ドレイン電流の平方根に最も適合する線である。
【0088】
図7のデバイスは、−12V付近で電圧が大きく上昇し、約−36Vで大きな電圧閾値を示した。対照的に、図8のデバイスは、0付近で電圧が大きく上昇し、−22V付近では、電圧閾値がかなり小さくなっていた。図7のデバイスは、0.34cm/V・secの移動度を達成し、一方、図8のデバイスは、0.77cm/V・secの移動度を達成した。これらのI−V曲線は、有益な移動効果に加え、ポリスチレンバインダーを加えると、電流の上昇が高まり、電圧閾値が大きくなることを示している。
【0089】
実施例1〜9のデバイスは、優れた安定性を示した。開放した空気中で製造し、特性決定すると、きわめて低い電流(10−12アンペア)で、10までの高い電流オン/オフ比が得られた。このデバイスを1週間より長く周囲の空気にさらしても、オフ電流は増加せず、移動度の低下は観察されなかった。
【0090】
これらの組成物は、アニーリングを必要としないため、ロールツーロール製造にももっと適合する。また、実施例の組成物は、ボトム−ゲート型のデバイス構造をもつTFTでも、高い電界効果移動度を示した。対照的に、以前の半導体/ポリマー組成物は、トップ−ゲート型TFTでのみ、高い移動度を達成した。ボトム−ゲート型のTFT構造は、製造を単純にすることができる。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8