(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6310367
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】煙道調査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/84 20060101AFI20180402BHJP
G01N 21/954 20060101ALI20180402BHJP
【FI】
G01N21/84 B
G01N21/954 A
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-173920(P2014-173920)
(22)【出願日】2014年8月28日
(65)【公開番号】特開2016-48222(P2016-48222A)
(43)【公開日】2016年4月7日
【審査請求日】2017年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】100094042
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 知
(72)【発明者】
【氏名】村中 浩昭
(72)【発明者】
【氏名】中野 秀和
(72)【発明者】
【氏名】古長 達廣
(72)【発明者】
【氏名】田村 信幸
(72)【発明者】
【氏名】三井 隆司
【審査官】
藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−320467(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3163271(JP,U)
【文献】
特開昭63−122933(JP,A)
【文献】
特開平3−105195(JP,A)
【文献】
特開2006−340092(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第1691236(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/01
G01N 21/17−21/61
G01N 21/84−21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
煙突に接続される水平な煙道内部を調査するための煙道調査装置であって、上記煙道内部を走行する耐熱性の走行体と、該走行体に搭載され、上記煙道内部を撮影するための撮影装置と、上記走行体に上記撮影装置を覆って設けられた耐熱性の透明キャノピーと、上記走行体に搭載された耐熱性の照明装置と、上記煙道外部から上記キャノピー内部へ冷却用の冷媒を供給し、上記撮影装置及び上記照明装置に給電し、上記走行体に走行駆動力を伝達し、また該煙道外部との間で該撮影装置とデータの送受信を行うための耐熱性のフレキシブルホースとを備えたことを特徴とする煙道調査装置。
【請求項2】
前記フレキシブルホースは内部に、冷媒が流通される空隙を有することを特徴とする請求項1に記載の煙道調査装置。
【請求項3】
前記キャノピーの外側に冷媒を噴き付ける冷媒噴出部が備えられることを特徴とする請求項1または2に記載の煙道調査装置。
【請求項4】
前記フレキシブルホースの内部には、前記キャノピーへ冷媒を供給するための冷媒供給用フレキシブルパイプ、前記撮影装置及び前記照明装置へ給電するための給電用フレキシブルケーブル、前記走行体に走行駆動力を伝達するための動力伝達用フレキシブルシャフト、並びに上記撮影装置とデータの送受信を行うための通信用フレキシブルケーブルが内蔵されることを特徴とする請求項1〜3いずれかの項に記載の煙道調査装置。
【請求項5】
前記フレキシブルホースは、前記煙道外部に設置され、冷媒供給部、給電部、動力発生部、並びに通信制御部を備える制御設備に接続されることを特徴とする請求項1〜4いずれかの項に記載の煙道調査装置。
【請求項6】
前記撮影装置、前記キャノピー及び前記照明装置を備える前記走行体は、前記煙道に形成した開口部を当該煙道外部から開放可能に覆う耐熱性カバーで区画形成した前室から該煙道内部に向かって走行されることを特徴とする請求項1〜5いずれかの項に記載の煙道調査装置。
【請求項7】
前記走行体には、これを走行させる駆動モータが搭載され、前記耐熱性のフレキシブルホースは、上記走行体に走行駆動力を伝達することに代えて、上記駆動モータを駆動する駆動電力を給電することを特徴とする請求項1〜3または6いずれかの項に記載の煙道調査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煙突に接続される水平な煙道内部を、排煙が流れる高炉設備等の稼働中であっても調査することが可能な煙道調査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高温の排煙が流れる煙道内部の様子を調査する技術として、特許文献1及び特許文献2が知られている。特許文献1の「煤塵濃度測定装置」は、大口径の煙道或いは高濃度の煤塵を含む流体に対しても煤塵濃度を確実に測定でき、且つ光軸調整作業を工場等で予め実施し得、測定精度の向上並びにコスト削減を図ることができ、更に、煙道に生じる経年的な歪の影響を受けることなく、光軸を常に一定に保持し得、メンテナンスコストの削減をも図り得る煤塵濃度測定装置を提供することを課題とし、管状で中間部に流体流通空間が形成された光通過管状体を、その軸線が煙道の流体流通方向と略直交する方向に延び且つ流体流通空間が煙道内に位置するよう、煙道の壁面を貫通させて配置し、前記光通過管状体の一端側から流体流通空間を流れる流体に対し光を投射して光透過率を求めるよう構成している。
【0003】
特許文献2の「煙道炎検知システム」は、簡易な構成および制御で、煙道内の炎を正確で確実に検知すると共に、部品の故障や汚れを自己診断できる煙道炎検知システムの提供を課題とし、紫外線検知器、紫外線発光器、シャッタ、および制御器を備える。シャッタは、紫外線検知器への煙道内の炎からの紫外線の光路を開閉する。制御器は、紫外線発光器を設定タイミングで作動させる一方、紫外線検知器による紫外線の検知の有無に基づき、紫外線検知器および紫外線発光器の異常や汚れ、透明ガラスの汚れの有無を検知する。また、制御器は、紫外線発光器を作動させていないにも拘わらず、紫外線検知器により紫外線が検知された場合、シャッタを閉じて紫外線検知器による紫外線の検知の有無を確認することで、煙道内の炎か、紫外線検知器の自己放電かを判別するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−317148号公報
【特許文献2】特開2007−32988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
いずれの特許文献も、煙道内部の様子を調査するものであるが、煙道内部の構造的な劣化状況を調査し得るものではなかった。すなわち、製鉄所の高炉設備等では、長年に亘る使用により、煙道の内側が次第に劣化していくため、この内部の劣化状態を調査する必要がある。
【0006】
高炉設備等の稼働を停止して調査するのでは、稼働効率が低下してしまうため、好ましくない。他方、高炉設備等の稼働を維持しつつ調査を行うためには、流れる排煙によって250℃程度にも達する高温な煙道内部で調査を実施し得る調査装置の案出が望まれる。
【0007】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、煙突に接続される水平な煙道内部を、排煙が流れる高炉設備等の稼働中であっても調査することが可能な煙道調査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる煙道調査装置は、煙突に接続される水平な煙道内部を調査するための煙道調査装置であって、上記煙道内部を走行する耐熱性の走行体と、該走行体に搭載され、上記煙道内部を撮影するための撮影装置と、上記走行体に上記撮影装置を覆って設けられた耐熱性の透明キャノピーと、上記走行体に搭載された耐熱性の照明装置と、上記煙道外部から上記キャノピー内部へ冷却用の冷媒を供給し、上記撮影装置及び上記照明装置に給電し、上記走行体に走行駆動力を伝達し、また該煙道外部との間で該撮影装置とデータの送受信を行うための耐熱性のフレキシブルホースとを備えたことを特徴とする。
【0009】
前記フレキシブルホースは内部に、冷媒が流通される空隙を有することを特徴とする。
【0010】
前記キャノピーの外側に冷媒を噴き付ける冷媒噴出部が備えられることを特徴とする。
【0011】
前記フレキシブルホースの内部には、前記キャノピーへ冷媒を供給するための冷媒供給用フレキシブルパイプ、前記撮影装置及び前記照明装置へ給電するための給電用フレキシブルケーブル、前記走行体に走行駆動力を伝達するための動力伝達用フレキシブルシャフト、並びに上記撮影装置とデータの送受信を行うための通信用フレキシブルケーブルが内蔵されることを特徴とする。
【0012】
前記フレキシブルホースは、前記煙道外部に設置され、冷媒供給部、給電部、動力発生部、並びに通信制御部を備える制御設備に接続されることを特徴とする。
【0013】
前記撮影装置、前記キャノピー及び前記照明装置を備える前記走行体は、前記煙道に形成した開口部を当該煙道外部から開放可能に覆う耐熱性カバーで区画形成した前室から該煙道内部に向かって走行されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる煙道調査装置にあっては、煙突に接続される水平な煙道内部を、排煙が流れる高炉設備等の稼働中であっても調査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る煙道調査装置の好適な一実施形態を示す使用状態の側面図である。
【
図5】
図1に示した煙道調査装置に用いられるフレキシブルホースの断面図である。
【
図6】本発明に係る煙道調査装置の変形例を示す側面図である。
【
図7】
図6に示した煙道調査装置に用いられるフレキシブルホースの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明にかかる煙道調査装置の好適な一実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る煙道調査装置1の使用状態を示す側面図である。
図2は、煙道2の縦断面を示す、
図1中A−A線矢視断面図である。
図3は、
図1に示した煙道調査装置1の側面図である。
図4は、
図1に示した煙道調査装置1の正面図である。
図5は、
図1に示した煙道調査装置1に用いられるフレキシブルホース3の断面図である。
【0017】
図1及び
図2に示すように、高炉設備の燃焼部分と煙突とを接続する水平な煙道2は、鉄筋コンクリート製の中空シャフト4の内周面に耐火材5を内設することで構成されている。この耐火材5は、高温の排煙に晒されて経年的に劣化することから、煙道2内部の劣化状況を調査する必要がある。
【0018】
煙道調査装置1は、煙道2外部から煙道2内部に送り込まれ、調査を実施するために煙道2内部で走行される。煙道調査装置1は
図3及び
図4に示すように、主に、煙道2内部を走行するための走行体6と、煙道2内部を撮影するための撮影装置7と、透明なキャノピー8と、照明装置9と、走行体6に一端が接続され、他端が煙道2外部へ引き出されるフレキシブルホース3とから構成される。
【0019】
煙道調査装置1は、煙道2内部の雰囲気に晒される露出部分はすべて耐熱材料で形成される。少なくとも走行体6、キャノピー8、照明装置9及びフレキシブルホース3は、耐熱性とされる。耐熱性としては、煙道2内部の温度が250℃程度であるので、この程度の温度に耐え得る性能を備えていればよい。
【0020】
走行体6は、ボディ10と、ボディ10を支持するシャーシ11と、シャーシ11に搭載された動力伝達機構12と、シャーシ11に支持されると共に、動力伝達機構12から伝達される動力で駆動され、不陸があっても走行可能な無限軌道13とから構成される。動力伝達機構12は、方向転換用の左右一対のクラッチ(図示せず)や減速機14を含む。
【0021】
動力伝達機構12には、フレキシブルホース3から走行駆動力が伝達されるようになっている。走行体6は、動力伝達機構12に伝達される走行駆動力で無限軌道13が駆動されることにより、煙道2内部を走行する。
【0022】
撮影装置7は、走行体6のボディ10に搭載される。撮影装置7は、回転駆動自在なターンテーブル15上にテレビカメラ16が設置されて構成されている。テレビカメラ16は、回転駆動されるターンテーブル15により回転されて、搭載位置周囲の画像を撮影するようになっている。撮影装置7の画像データは、フレキシブルホース3へ送り込まれる。
【0023】
キャノピー8は、撮影装置7による撮影のために透明な耐熱ガラスで形成される。キャノピー8は、煙道2内部の高温かつ粉塵を含む雰囲気から撮影装置7を保護するために、走行体6のボディ10に当該撮影装置7を覆って開閉自在に設けられる。また、照明装置9は、撮影装置7の後方から走行体6の走行方向前方を照らすように、キャノピー8の後方に位置させて走行体6のボディ10に搭載される。
【0024】
煙道調査装置1には、煙道2外部からキャノピー8内部や走行体6へ冷却用の冷却空気や冷却水などの冷媒を供給し、撮影装置7及び照明装置9に給電し、走行体6に走行駆動力を伝達し、また煙道2外部との間で撮影装置7とデータの送受信を行うための耐熱性のフレキシブルホース3が備えられる。
【0025】
図5に示すように、フレキシブルホース3の内部には具体的には、キャノピー8や走行体6へ冷却空気や冷却水などの冷媒を供給するための冷媒供給用フレキシブルパイプ17,18、撮影装置7及び照明装置9へ給電するための給電用フレキシブルケーブル19,20、走行体6に走行駆動力を伝達するための動力伝達用フレキシブルシャフト21、並びに撮影装置7とデータの送受信を行うための通信用フレキシブルケーブル22,23が内蔵される。図示例にあっては、フレキシブルチューブ3の内面には、耐熱チューブ24が内張りされている。
【0026】
冷媒供給用フレキシブルパイプ17,18で供給される冷媒、例えば冷却空気は、キャノピー8に導入されてキャノピー8内部を50℃程度まで冷却し、これにより撮影装置7の温度上昇を防止する。走行体6のボディ10には、煙道2内部に流通する排煙に晒されて汚損され易いキャノピー8外側を清浄に維持するために、キャノピー8内部を冷却した冷却空気を当該キャノピー8の外側に吹き付ける冷媒噴出部25が設けられる。
【0027】
冷却水は、走行体6に供給されて、ボディ10やシャーシ11、動力伝達機構12などを冷却する。走行体6には、供給された冷却水を排水する排水部が形成される。給電用フレキシブルケーブル19,20は、ターンテーブル15やテレビカメラ16を作動させたり、照明装置9を点灯するために、撮影装置7及び照明装置9に電力を供給する。図示例にあっては、給電用フレキシブルケーブル19,20は、交流用と直流用の2種類が内蔵されている。
【0028】
動力伝達用フレキシブルシャフト21は、走行体6の動力伝達機構12へ回転駆動力を伝達する。また、フレキシブルホース3内には、走行体6を方向転換するために使用される左右一対のクラッチを制御するために、一対のクラッチワイヤ26,27が内蔵される。
【0029】
通信用フレキシブルケーブル22,23としては、映像ケーブルと通信ケーブルの2種類が内蔵されている。映像ケーブル22は、テレビカメラ16で撮影した映像データを送信するのに用いられる。通信ケーブル23は、撮影装置7の作動制御データの送信や撮影装置7からの応答データの受信、照明装置9のON・OFF操作信号の送信に用いられる。フレキシブルホース3を利用した有線による制御により、煙道調査装置1を適切に遠隔操作することができる。
【0030】
フレキシブルホース3には、内部に収納されているパイプ17,18やケーブル19,20、22,23、シャフト21などの相互間に空隙Sが存在する。この空隙Sには、フレキシブルホース3内部を冷却するために、冷却空気などの冷媒が供給される。空隙Sに供給された冷媒は、フレキシブルホース3の走行体側端部近傍に形成された孔部から煙道2内部に排出される。
【0031】
煙道2には
図1に示すように、煙道調査装置1、すなわちキャノピー8及び照明装置9を備える走行体6を煙道2に送り込むための開口部28が形成される。また煙道2外部には、開口部28を覆うために、当該開口部28を開放可能に耐熱性カバー29が設置される。
【0032】
耐熱性カバー29は、煙道調査装置1全体を収容可能な前室30を形成する。カバー29には、フレキシブルホース3を煙道2外部へ引き出すための孔部31が形成される。カバー29を取り外して前室30に煙道調査装置1を設置し、その後、カバー29で開口部28を覆うことで、煙道2が封鎖される。
【0033】
カバー29で開口部28を覆って封鎖される煙道2外部には、フレキシブルホース3と接続される制御設備32が設置される。制御設備32は主に、冷媒供給部、給電部、動力発生部、並びに通信制御部を備える。
【0034】
冷媒供給部は、冷却空気や冷却水を生成する冷凍機及び冷却空気送風ファン、冷却水用ポンプなどから構成され、冷却空気や冷却水を冷媒供給用フレキシブルパイプ17,18へ送り込む。また、冷媒は、フレキシブルホース3の空隙Sにも送り込まれる。給電部は、給電用フレキシブルケーブル19,20に接続され、商用の交流電力やAC/DCコンバータで変換した直流電力を供給する。
【0035】
動力発生部は、電動モータなどから構成され、これに接続された動力伝達用フレキシブルシャフト21を回転駆動する。動力発生部には、走行体6の走行駆動との関係で、クラッチワイヤ26,27の操作端も配設される。
【0036】
通信制御部は、通信用フレキシブルケーブル22,23と接続される。通信制御部は、画像データを表示するためのモニタや画像データを記憶するためのメモリを備え、制御命令を出力することができるパーソナルコンピュータ等から構成され、撮影装置7から映像ケーブル22を介して送信されてくる画像データを、煙道2外部で見たり、保存したりすることができる。また、通信制御部は、通信ケーブル23を介して、撮影装置7とデータの送受信をしたり、照明装置9を操作するようになっている。
【0037】
次に、本実施形態に係る煙道調査装置1の作用について説明する。調査を行う際には、煙道調査装置1を耐熱性カバー29内部の前室30に配置した後、フレキシブルホース3を利用した制御設備32からの有線による遠隔操作で当該煙道調査装置1を開口部28から煙道2内部へ走行する。煙道2内部では、煙道調査装置1は、制御設備32からの制御により、撮影による調査を実施する。
【0038】
具体的には、撮影装置7及び照明装置9は、給電用フレキシブルケーブル19,20で供給される電力で作動し、照明装置9で明るく照らし出した煙道2内部を撮影装置7で撮影する。撮影装置7では、通信用フレキシブルケーブル22,23を利用した送受信により、ターンテーブル15が回転したりテレビカメラ16が自在に動かされ、撮影した画像データを送信する。
【0039】
煙道2外部の制御設備32では、送られてくる画像データをモニタで見ながら、遠隔制御で走行体6を走行しつつ、調査を続ける。走行体6は、動力伝達用フレキシブルシャフト21から伝達される動力で無限軌道13が駆動されることによって走行する。左右一対のクラッチワイヤ26,27の操作で、走行体6の走行方向が転換される。
【0040】
さらに、調査中においては、走行体6やキャノピー8には、冷媒供給用フレキシブルパイプ17,18を介して、継続して冷却空気や冷却水などの冷媒が供給され、煙道調査装置1を煙道2内部の高熱から保護する。フレキシブルホース3内の空隙Sにも、冷媒が連続的に供給される。
【0041】
以上説明した本実施形態に係る煙道調査装置1は、煙突に接続される水平な煙道2内部を調査するための煙道調査装置1であって、煙道2内部を走行する耐熱性の走行体6と、走行体6に搭載され、煙道2内部を撮影するための撮影装置7と、走行体6に撮影装置7を覆って設けられた耐熱性の透明キャノピー8と、走行体6に搭載された耐熱性の照明装置9と、煙道2外部からキャノピー8内部や走行体6へ冷媒を供給し、撮影装置7及び照明装置8に給電し、走行体6に走行駆動力を伝達し、また煙道2外部との間で撮影装置7とデータの送受信を行うための耐熱性のフレキシブルホース3とを備えたので、排煙が流れる高炉設備の稼働中であっても調査することができ、高炉設備の稼働効率を低下させることなく、いつでも、そして長時間にわたり煙道2内部の劣化状態等の調査を行うことができる。
【0042】
フレキシブルホース3は内部に、冷媒が流通される空隙Sを有するので、有線による遠隔操作を保証するフレキシブルホース3が熱的損傷受けることを防止することができる。
【0043】
キャノピー8の外側に冷媒を噴き付ける冷媒噴出部25を備えたので、煙道2内部に流通する排煙に晒されて汚損され易いキャノピー8の外側を常に清浄に維持することができ、円滑かつ確実に撮影装置7で煙道2内部を撮影することができる。
【0044】
フレキシブルホース3を、煙道2外部に設置され、冷媒供給部、給電部、動力発生部、並びに通信制御部を備える制御設備32に接続するようにしたので、煙道2外部という安全な位置から煙道調査装置1を適切に運転し、撮影装置7により撮影することができる。
【0045】
撮影装置7、キャノピー8及び照明装置9を備える走行体6は、煙道2に形成した開口部28を当該煙道2外部から開放可能に覆う耐熱性カバー29で区画形成した前室30から煙道2内部に向かって走行されるので、煙道調査装置1を煙道2内部へ送り込む作業を安全に行うことができる。
【0046】
図6及び
図7には、上記実施形態の変形例が示されている。上記実施形態では、外部に設置した制御設備32に動力発生部を備え、動力発生部から動力伝達用フレキシブルシャフト21で動力を伝達して、走行体6の無限軌道13を駆動し、走行体6を走行するようにしていたが、これに代えて、走行体6に、無限軌道13を駆動する駆動モータ33を搭載するようにしても良い。この場合、耐熱性のフレキシブルホース3は、走行体6に走行駆動力を伝達することに代えて、駆動モータ33を駆動する駆動電力を給電する。具体的には、フレキシブルホース3内部には、動力伝達用フレキシブルシャフト21に代えて、フレキシブルな動力ケーブル34が内蔵され、この動力ケーブル34の一端が走行体6の駆動モータ33に、他端が制御設備32の給電部に接続される。これにより、走行体6は、これに設けた駆動モータ33で走行される。このような変形例であっても、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。特に、フレキシブルホース3内部に、動きを伝達する動力伝達用フレキシブルシャフト21がないので、フレキシブルホース3の信頼性を向上することができる。
【0047】
上記実施形態及び変形例にあっては、走行体6に撮影装置7及び照明装置9のみを搭載する場合について説明したが、断面計測機など、各種機器を走行体6に搭載して、煙道2内部に対する各種の調査を実施できるようにしても良いことはもちろんである。
【符号の説明】
【0048】
1 煙道調査装置
2 煙道
3 フレキシブルホース
6 走行体
7 撮影装置
8 キャノピー
9 照明装置
17,18 冷媒供給用フレキシブルパイプ
19,20 給電用フレキシブルケーブル
21 動力伝達用フレキシブルシャフト
22,23 通信用フレキシブルケーブル
25 冷媒噴出部
28 開口部
29 カバー
30 前室
32 制御設備
33 駆動モータ
S 空隙