特許第6310462号(P6310462)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6310462鋳型用途における摩耗保護コーティング製造用ポリウレタン鋳造化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6310462
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】鋳型用途における摩耗保護コーティング製造用ポリウレタン鋳造化合物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/10 20060101AFI20180402BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20180402BHJP
   C08G 18/66 20060101ALI20180402BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20180402BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20180402BHJP
   B22C 3/00 20060101ALI20180402BHJP
   B22C 7/06 20060101ALI20180402BHJP
【FI】
   C08G18/10
   C08G18/32 037
   C08G18/66 081
   C08G18/48 054
   C08G18/76 014
   B22C3/00 C
   B22C7/06
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-533631(P2015-533631)
(86)(22)【出願日】2013年10月1日
(65)【公表番号】特表2015-532317(P2015-532317A)
(43)【公表日】2015年11月9日
(86)【国際出願番号】EP2013070389
(87)【国際公開番号】WO2014053458
(87)【国際公開日】20140410
【審査請求日】2016年9月29日
(31)【優先権主張番号】12186891.3
(32)【優先日】2012年10月1日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504274505
【氏名又は名称】シーカ・テクノロジー・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デュルナイ ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】グナイティング フロリアン
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−185427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/10
B22C 3/00
B22C 7/06
C08G 18/32
C08G 18/48
C08G 18/66
C08G 18/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳型模型作製用の鋳造樹脂又は表面樹脂として用いられる、イソシアネート剤とアミン剤とを含む複剤組成物であって、
前記イソシアネート剤が、トルエンジイソシアネート及びポリテトラメチレンポリオールから得られうるプレポリマーを含み、
前記アミン剤が、ジアルキルチオアリールジアミンを含み、さらにポリテトラメチレンオキシドポリアミンを含んでいてもよい、
複剤組成物。
【請求項2】
前記アミン剤が、ジアルキルチオアリールジアミンとしてジアルキルチオトルエンジアミンを含む、請求項1に記載の複剤組成物。
【請求項3】
前記プレポリマーが7%〜10%の範囲のイソシアネート含有率を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の複剤組成物。
【請求項4】
前記プレポリマーが8%〜9.5%の範囲のイソシアネート含有率を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の複剤組成物。
【請求項5】
前記ポリテトラメチレンポリオールが500〜1500の範囲の計算された分子量(Mw)を有することを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の複剤組成物。
【請求項6】
前記ジアルキルチオアリールジアミンがジメチルチオトルエンジアミンの形態で存在することを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の複剤組成物。
【請求項7】
前記アミン剤が、ジアミンの形態のポリテトラメチレンオキシドポリアミンを更に含有することを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の複剤組成物。
【請求項8】
前記ポリテトラメチレンオキシドポリアミンにおいて、アミンがリンカー分子によってポリテトラメチレンオキシドに結合されることを特徴とする、請求項に記載の複剤組成物。
【請求項9】
前記アミン剤が非鹸化性の可塑剤を更に有することを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の複剤組成物。
【請求項10】
前記アミン剤が、約30重量%〜70重量%の範囲のジアルキルチオアリールジアミン含有率、約5重量%〜25重量%の範囲のポリテトラメチレンオキシドポリアミン含有率、及び20重量%〜60重量%の範囲の非鹸化性可塑剤含有率を有することを特徴とする、請求項に記載の複剤組成物。
【請求項11】
前記イソシアネート剤及び前記アミン剤が約4:1〜2:1の範囲の重量比で存在することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の複剤組成物。
【請求項12】
鋳型模型作製用の鋳造樹脂又は表面樹脂としての請求項1〜11のいずれか一項に記載される複剤組成物の使用。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の複剤組成物から得られうる硬化した組成物でできたコーティングを有することを特徴とする、鋳型用途の模型及び/又は中子型。
【請求項14】
砂型又は砂中子製造用の中子型を製造するための模型であることを特徴とする、請求項13に記載の模型。
【請求項15】
鋳型用途の模型及び/又は中子型を製造する方法であって、請求項1〜11のいずれか一項に記載の複剤組成物を混合し、成形部分に塗布又は鋳造して硬化することを特徴とする、鋳型用途の模型及び/又は中子型を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソシアネート剤とアミン剤とを含む複剤組成物であって、前記イソシアネート剤が、トルエンジイソシアネート及びポリテトラメチレンポリオールから得られうるプレポリマーを含み、前記アミン剤が、ジアルキルチオアリールジアミンを含み、さらにポリテトラメチレンオキシドポリアミンを含んでいてもよい、複剤組成物に関する。かかる組成物は鋳型模型作製用の鋳造樹脂として有利に使用することができ、本発明による組成物は、中子型及び砂中子又は砂型の製造用模型の保護コーティングに特に適している。さらに、本発明は鋳型用途の模型の製造方法に関し、このプロセスの一環として、上述の複剤組成物を成形部分に塗布又は鋳造して硬化する。
【背景技術】
【0002】
金属鋳造用の中子型及びダイプレートは、金属から既知の方法を使用して、又は既製のポリマーブロック材料から機械加工によって製造することができる。ポリマー材料は、純金属の道具よりも迅速な製造、並びにより長い寿命並びに修理及び交換がより容易であるという利点を有する。
【0003】
変化可能なサイズで型を作製する際に直接に鋳造することができる液体の鋳造樹脂系の使用は、一般的な方法と比べてより高い柔軟性を提供し、また、大規模な機械設備を必要としないという利点とも関連する。したがって、鋳型用途におけるプレート及び砂成形の中子型用の表面保護コーティングの製造は、殆どの場合、対応する樹脂系の手作業の鋳造又は塗布によって行われ、模型を作製する企業又は部門で直接に行われ得る。かかる用途に適した樹脂は、室温条件下で加工可能でなくてはならず、そのため、それら樹脂の反応性及び粘性に関して或る特定の制限の範囲内でなくてはならない。さらに、それらの樹脂は、高い操作安全性を提供しなくてはならず、すなわち、水分に曝された場合に膨れ(blisters)を形成しにくいものでなくてはならない。
【0004】
30年以上に亘り、ジシクロへキシルメタンジイソシアネートプレポリマー及びジフェニルメタンジアミン(DDM)に基づくポリウレタン鋳造樹脂が、鋳型用途における表面保護コーティングの製造用硬化剤として用いられ成功してきた。例えば、かかる樹脂は、SikaからBiresin U1320の商品名のもと入手可能であった。これらの材料は、特に、耐摩耗性及び加工性に関して極めて優れた特性を特徴とした。しかしながら、ジフェニルメタンジアミンによってもたらされる潜在的な生理学的リスクのため、この製品の製造業者によってREACH登録は行われなかった。したがって、2014年8月以降、その配合製品を加工処理することができなくなった。
【0005】
DDM系鋳造樹脂系の代替物として、最近、HDI/ジメチルチオトルエンジアミンに基づく系が試験され、市販されている。しかしながら、これらの鋳造樹脂の実用において、例えば、上記材料の不利な収縮挙動、問題のあるプレートへの砂のクリンギング(clinging)、及び低い耐摩耗性といった問題が生じることがわかっている。この理由のため、今日まで市場に出ているDDMを含まない代替物は、鋳造樹脂としての使用に適していない。
【0006】
金属鋳造用途に対して鋳造樹脂系の利点を利用し続けるためには、結果としてジフェニルメタンジアミン系鋳造樹脂系の代替物を見出すことが必要である。そのため、適切な加工特性、特に良好な流動性を呈する鋳造樹脂系及び化合物が必要とされている。同時に、これらの鋳造化合物は、以前より利用可能なDDM不含鋳造樹脂系と比較して、改善された収縮挙動を呈し、可能な限り砂が付着しにくい、高い耐摩耗性を有するはずである。有利には、上記系は、従来技術より既知のDDM系材料と類似の特性を有するが、ジフェニルメタンジアミン等のいかなる毒性物質も含有すべきではない。
【0007】
ジアルキルチオアリールジアミンの添加によって硬化が起こる芳香族ポリイソシアネート及びポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコールに基づくポリウレタンが、様々な用途について従来技術に記載されている。
【0008】
例えば、特許文献1は、ポリウレタンコーティングを用いて提供される繊維強化基材を有する製紙部門のシュープレス用ベルトを記載する。しかしながら、ジアルキルチオアリールジアミンを用いて硬化された上記ポリウレタンは、1,4−ブタジエンを用いて硬化されたポリウレタンと比較してより不利な破壊挙動を有する。
【0009】
特許文献2は、或る1つの担体表面から別の担体表面へのトナー像の転写用要素のためのコーティングとして対応するポリウレタンを開示する。そのポリウレタンは、比較的高い90のショア硬度及び高大気湿度に対する良好な抵抗性を有する。
【0010】
最後に、特許文献3は、ゴルフボール用コーティングとしての対応するポリウレタンの使用を開示する。かかるコーティングでできたボールの良好な飛行特性が実証された。
【0011】
しかしながら、これらの開示は全て共通して、イソシアネートに基づく構成要素の含有率、したがって硬化剤に基づく構成要素の含有率も、相対的に低いという事実を有する。これは、脂肪族構成要素に対する芳香族構成要素の含有率の比のため、硬化したポリウレタンの特性についてかなりの影響を有する。
【0012】
さらに、特許文献4より、ポリテトラヒドロフランアミノベンゾエートエステル、ジアルキルチオアリールジアミン及びヘキサメチレンジイソシアネートの三量体に基づくゴム接着剤が知られ、例えばタイヤにおいて、それを用いてゴム基体が接着され得る。しかしながら、かかる系は、鋳型用途の中子型における使用には不十分な摩耗特性を有する。
【0013】
最後に、例えば、特許文献5より、ポリウレタンは鋳型モルド(casting house molds)における砂の結合剤として使用され得る。しかしながら、一般に、これらの系もまた不利な摩耗特性を有し、そのため、表面保護コーティングの調製に適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/314067号明細書
【特許文献2】米国特許第5,212,032号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2003/236381号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1178097号明細書
【特許文献5】独国特許第1280493号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は上述の課題に対する解決策を提供し、ジフェニルメタンジアミンにより従来製造される表面保護コーティングに匹敵する特性を有する組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第一の態様は、イソシアネート剤とアミン剤とを含む複剤組成物であって、前記イソシアネート剤が、トルエンジイソシアネート及びポリテトラメチレンポリオールのプレポリマーを含み、前記アミン剤が、ジアルキルチオアリールジアミン、好ましくはジアルキルチオトルエンジアミンを含み、さらにポリテトラメチレンオキシドポリアミンを含んでいてもよい、複剤組成物に関する。
【0017】
本発明の更なる態様は、鋳型模型作製用の鋳造樹脂としての上述の複剤組成物の使用に関する。
【0018】
さらに、本発明は、コーティング、特に上述の複剤組成物から得られうる硬化した組成物でできた摩耗保護コーティングを有することを特徴とする鋳型用途の模型及び/又は中子型に関する。最後に、本発明は、上述の複剤組成物を混合し、成形部分に塗布又は鋳造して硬化することを特徴とする鋳型用途の模型及び/又は中子型を製造する方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に関して「アミン剤」の用語は、アミン剤の成分が、その組成物の保存中にイソシアネート剤の成分から空間的に分離されるべきことを意味すると理解される。
【0020】
また、言及されるイソシアネート剤及びアミン剤に加えて、上記複剤組成物は、追加の剤を含有してもよい。しかしながら、上記複剤組成物は、イソシアネート剤及びアミン剤のみから本質的になることが好ましい。
【0021】
上述のように、イソシアネート剤は、トルエンジイソシアネート(TDI)及びポリテトラメチレンポリオールから得られうるプレポリマーを含む。本発明に関して、このプレポリマーが約7%〜10%、好ましくは約8%〜9.5%の範囲のイソシアネート含有率を有する場合が有利であることが証明された。上記イソシアネート含有率は、プレポリマーの総重量に対するプレポリマー中の全てのイソシアネートの総重量の比率として計算される。
【0022】
また本発明に関して、イソシアネート剤のプレポリマー中のポリテトラメチレンポリオールは、約250〜1500、好ましくは約250〜1000、及びとりわけ好ましくは約650〜1000の範囲の分子量(Mw)を有するのが好ましいことがわかった。ポリテトラメチレンポリオールが250未満の分子量(Mw)を有する場合には、これは、その原料を加工するのが困難であることを意味する。1500超の分子量を有するポリテトラメチレンポリオールが使用される場合には、得られる製品は最適な剛性及び耐久性を有しない。
【0023】
25℃における第1剤の粘度は、好ましくは6000mPa・s〜20000mPa・sの範囲、とりわけ好ましくは7000mPa・s〜14000mPa・sの範囲である。これらの粘度を、本発明に関して、Z3 DINロータを備え、25℃において剪断勾配D=10の回転式転粘度計を使用して求めることができる。具体的には、イソシアネート剤とアミン剤とを混合した後の6000mPa・s未満の粘度は、その混合物の低い初期粘度をもたらすことがわかった。これは、気泡及びエア混入がこれらの組成物においてより容易に形成する可能性があるため、鋳造樹脂用途の場合に特に不利である。これは、製品の修理の必要性を高める。さらに、粘度が非常に低い鋳造樹脂は、非常に狭い隙間に入り込む可能性もあり、鋳型用途においてはこれを回避できないことが多い。したがって、鋳造化合物の硬化後、望ましくない突出を排除するため更なる努力が必要とされる。
【0024】
また、ジアルキルチオアリールジアミンが、アルキルラジカルが好ましくは炭素数1〜6のアルキルラジカルであるジアルキルチオトルエンジアミンであることが好ましい。ジアルキルチオアリールジアミンがジメチルチオトルエンジアミンの形態で存在することがとりわけ好ましい。このタイプの製品は、例えば、米国のAlbemarle Corp.からEthacure 300の商品名のもと入手可能である。本発明に関して、チオアルキル基が、製品が適切な時間に亘って加工に必要な流動性を有するように、イソシアネートプレポリマーによる重付加の必要な遅延をもたらすことが見出された。例えば、類似するジアルキルトルエンジアミンの硬化が早すぎるために対応する用途に適していないことを比較実験で示すことができた。ジアルキルチオアリールジアミンは、尿素架橋の形成を伴って、イソシアネートと反応することができる。
【0025】
アミン剤中のジアルキルチオアリールジアミンの含有率は本発明の枠組みの中に含まれ、アミン剤の総重量ベースでとりわけ約30重量%〜70重量%の範囲、特に約40重量%〜65重量%の範囲、とりわけ好ましくは約45重量%〜55重量%の範囲に含まれる。
【0026】
本発明に関して、ポリテトラメチレンオキシドポリアミンの追加は、特定の利点と関連することが見出された。そのため、鋳型用途に適した鋳造樹脂の最適な特性を、この追加のアミンを用いて確立することができる。ポリテトラメチレンオキシドポリアミンは、有利には、ジアルキルチオアリールジアミンに加えてアミン剤中に存在することができ、ポリテトラメチレンオキシドポリアミンをこの剤から空間的に分離することができるか、又は有利にはこの成分を含む混合物中において1又は複数の容器中に存在する。
【0027】
ポリテトラメチレンオキシドポリアミンは、ジアミンの形態で存在することが好ましい。アミンは、三級アミンがポリイソシアネートと反応して硬化をもたらすことができないため、一級アミン又は二級アミンとしてポリテトラメチレンオキシドポリアミン中に存在しなければならいことが当業者に明らかである。アミンは、ポリテトラメチレンオキシドに直接に、又はリンカー(テトラメチレン単位で構成されるものではない)を介して結合され得る。アミンは、ポリテトラメチレンオキシドにリンカー分子を介して結合されることがとりわけ好ましい。とりわけ最も好ましい実施形態では、上記リンカーは4−カルボキシフェニルリンカーである。対応する製品は、例えばVersalinkの商品名のもとAir Productsから入手可能である。
【0028】
ポリテトラメチレンオキシドポリアミンについて、この成分のポリテトラメチレンオキシド部分の計算された分子量(Mw)は約250〜1500の範囲、とりわけ好ましくは約250〜1000の範囲、最も好ましくは650〜1000の範囲であることが同様に好ましい。
【0029】
ポリテトラメチレンオキシドポリアミンの量は、アミン剤の総重量ベースで約5重量%〜25重量%の範囲、特に約8重量%〜13重量%の範囲に含まれることが好ましい。
【0030】
本発明に関して、アミン剤が、列挙される成分に加えて、非鹸化性可塑剤を含有するのが有利であることが証明された。有利には、この可塑剤は、アルキルスルホネート、とりわけ好ましくはフェノールアルキルスルホネートの形態で存在する。好適な製品は、例えば、ドイツ国のLanxessによりメザモル(Mesamoll)(登録商標)IIの商品名のもと販売される。
【0031】
アミン剤が追加の非鹸化性可塑剤を使用して配合される場合、非鹸化性可塑剤は、アミン剤の総重量ベースで約20重量%〜60重量%の範囲、とりわけ好ましくは約30重量%〜45重量%の範囲の含有率でアミン剤中に存在するのが好ましい。
【0032】
また本発明に関して、イソシアネート剤及びアミン剤は、約5:1〜1:1の範囲、とりわけ好ましくは約4:1〜2:1の範囲、最も好ましくは約3:1〜2.2:1の範囲の重量比で存在する及び/又は混合されることが好ましい。さらに、正確な混合比率はまた、アミン剤中のアミン量及びイソシアネート剤中のイソシアネート量(NCO)にも依存する。本発明に関して、複剤組成物全体における化学量論比NCO/NHは、1:1〜1.1:1の範囲、特に1.02:1〜1.05:1の範囲であることが好ましい。わずかに過剰なイソシアネートは、大気湿度との反応にも関わらず、上記組成物中に存在するアミンと完全に反応して尿素を形成することを保証する。
【0033】
本発明のとりわけ好ましい実施形態では、上記複剤組成物は、650〜1000の範囲の分子量(Mw)を有し、7%〜10%の範囲のイソシアネート含有率を伴う、トルエンジイソシアネートとポリテトラメチレングリコールとに基づくプレポリマーを含有するイソシアネート剤200重量部〜300重量部と、約650の分子量(Mw)を有する、ジメチルチオトルエンジアミンとポリテトラメチレンオキシドジ−p−アミノベンゾエートとを含有するアミン剤100重量部と、を含む。
【0034】
本発明の更なる態様は、鋳型模型作製用の鋳造樹脂としての上述の複剤組成物の使用に関する。
【0035】
また、本発明は鋳型用途、特に金属鋳造用途、とりわけ好ましくは鉄及び/又はアルミニウムの鋳造用途の模型に関し、その模型は、上述の複剤組成物を硬化することにより得られうる組成物でできたコーティングを有することを特徴とする。とりわけ好ましい実施形態では、上記模型は、砂中子の調製用の砂型又は中子型を製造するための模型である。また、上記模型は、約0.1mm〜25mm、特に約6mm〜15mm、とりわけ好ましくは6mm〜10mmの範囲の厚みを有する硬化した組成物のコーティングを有することが好ましい。
【0036】
最後に、本発明の1つの態様は、鋳型用途の模型及び中子型を各々製造する方法であって、上述の組成物において記載されているような複剤組成物を混合し、成形部分に塗布及び/又は鋳造して硬化することを特徴とする、鋳型用途の模型及び中子型を各々製造する方法に関する。上記成形部分は、有利には、後に製造される砂型の形状に少なくとも部分的に同一の形状を有する。また、その方法において、上記組成物は、再現される形状を有する側の成形部分により形成される空洞、及びその成形部分を取り囲む容器又は担体へと鋳造されることが好ましい。上記容器及び成形部分は、結果的に、複剤組成物が上記剤を混合した後に導入される空洞を形成する。このようにして、上記組成物は、硬化後に成形部分の型穴を形成する。上記空洞は、約5mm〜25mm、特に約6mm〜15mm、とりわけ好ましくは6mm〜10mmの範囲の平均厚みを有することが好ましい。
【0037】
以下にいくつかの実施例を用いて本発明を説明するが、それらは、本発明の保護の範囲を何ら限定するものではない。
【実施例】
【0038】
以下に、表1に示される組成に従って様々な鋳造樹脂を配合した。数字による記述は全て重量部の単位である。
【0039】
【表1】
【0040】
これらの組成物の加工特性を調査した。以下のプロトコルを使用してその特性を求めた。
【0041】
イソシアネート剤及びイソシアネート剤とアミン剤との混合物の粘性を、Z3 DINロータを備え、剪断勾配D=10のPhysica MC10回転式粘度計を使用して25℃にて求めた。硬化剤成分の粘度を、同じ方法を使用するが、剪断勾配100で25Cにて求めた。
【0042】
Tecam GT4ゲルタイマーを使用して20℃にてゲル時間を求めた。この目的のため、指定の混合比率に従って熱平衡化した成分を計量した。その後、原料を均質になるまで約1分間混合した。その後、その混合物を最大で容器の100mlの印まで注ぎ、ゲルタイマーの絶縁ボックスに入れ、撹拌棒を容器の中心に配置した。計測を1分後に開始した。計測を、それが計器によって示される時に終了した。ゲル時間は、混合開始から計測の終了までの時間に対応する。
【0043】
500gの試験バッチに基づき、非絶縁ポリエチレンカップにおいて室温(20℃〜23℃)でポットライフを計測した。
【0044】
線収縮は、パーセント単位の鋳造収縮ロッドの初期長さと比較した長さの変化に対応する。収縮試験ロッドは、長さ500mm、幅40mm及び高さ10mmの寸法であった。16時間後に型から試験材料を取り出し(吐出し)、23℃、50%相対湿度で14日間保存した後のロッド長さの変化を求めた。
【0045】
ショア硬度をISO868に従って求めた。
引張強度及び破断伸びをISO527に従って求めた。
弾性率をISO178に従って求めた。
摩耗をISO4649に従って求めた。
【0046】
上記特性の計測結果を下表2に示す。
【0047】
【表2】
【0048】
本発明による組成物は、対応するアミン剤を含むHDIに基づく組成物と比較して顕著に優れた耐摩耗性を呈することが明らかである。それにもかかわらず、硬度、引張強度、破断伸び及び弾性率に関し、匹敵する値が本発明による組成物によって達成できた。収縮は、対応するHDI系材料の収縮に匹敵する。ひけマークは、HDIに基づく組成物について観察されることが多く、これらは、しばしば、鋳造樹脂表面のへこみとして見られた。へこみは、鋳造製品の40%〜50%に存在し、鋳造製品を直接使用するのに不適とする。さらに、脆化相は、HDI系樹脂の不完全な硬化の結果として、HDI系樹脂でしばしば観察される。上記樹脂は可塑性担体上に塗布されることが多く、熱処理が可塑性担体の変型を引き起こす可能性があるため、完全な硬化を達成するための後の熱処理が不可能である。本発明による樹脂は全て、硬化後のひけマーク及び脆化相を免れた。また、ポリテトラメチレンポリアミンを伴わずにジメチルチオトルエンジアミンを使用した場合、全ての例において、最適な流動性を達成できなかったことが明らかである。実施例6は、ジメチルチオトルエンジアミン及びポリテトラメチレンポリアミンの両方を含有する組成物の場合よりも低い耐摩耗性を示した。