特許第6310699号(P6310699)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6310699
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20180402BHJP
   C08K 5/3417 20060101ALI20180402BHJP
   C08K 5/3447 20060101ALI20180402BHJP
   C08K 5/36 20060101ALI20180402BHJP
   C08K 3/06 20060101ALI20180402BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20180402BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20180402BHJP
【FI】
   C08L9/00
   C08K5/3417
   C08K5/3447
   C08K5/36
   C08K3/06
   C08K3/04
   B60C1/00 A
   B60C1/00 B
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-1391(P2014-1391)
(22)【出願日】2014年1月8日
(65)【公開番号】特開2015-129224(P2015-129224A)
(43)【公開日】2015年7月16日
【審査請求日】2016年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100098464
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 洌
(74)【代理人】
【識別番号】100149630
【弁理士】
【氏名又は名称】藤森 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100111279
【弁理士】
【氏名又は名称】三嶋 眞弘
(72)【発明者】
【氏名】小森 佳彦
【審査官】 今井 督
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−023610(JP,A)
【文献】 特開2008−111014(JP,A)
【文献】 特開2008−050441(JP,A)
【文献】 特開2013−112732(JP,A)
【文献】 特開2015−040245(JP,A)
【文献】 特開2015−007186(JP,A)
【文献】 特開2012−046602(JP,A)
【文献】 特開2013−249416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00− 13/08
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソプレン系ゴムを40〜70質量%、ブタジエンゴムを30〜60質量%含有するゴム成分100質量部に対し、
窒素吸着比表面積が20〜402/gのカーボンブラックを15〜55質量部、
硫黄を1.0〜2.3質量部含有し、
カーボンブラック100質量部に対し、下記式(I)で示されるスルフィド化合物を0.05〜20質量部含有するゴム組成物により構成されたサイドウォール、ウイング、ベーストレッド、サイドウォールパッキンおよびタイガムからなる群から選ばれる少なくとも1種を備えたタイヤであって、
ブタジエンゴムがシンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するブタジエンゴム、希土類系ブタジエンゴムおよびスズ変性ブタジエンゴムからなる群から選ばれる少なくとも1種であるタイヤ。
【化1】
(式中、R1は、水素原子、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基またはアルケニル基、または炭素数3〜6の環状のアルキル基またはアルケニル基を表す。Aは、O、S、NH、またはNR2を表す。R2は、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基またはアルケニル基、または炭素数3〜6の環状のアルキル基またはアルケニル基を表す。nは1〜6の整数を表し、xは1〜4の整数を表す。)
【請求項2】
前記スルフィド化合物のカーボンブラック100質量部に対する含有量が0.10〜10質量部である請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
前記カーボンブラックのゴム成分100質量部に対する含有量が15〜40質量部である請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項4】
前記ブタジエンゴムがシンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するブタジエンゴムおよび希土類系ブタジエンゴムからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定のゴム組成物により構成されたサイドウォール、ウイング、ベーストレッド、サイドウォールパッキンおよびタイガムからなる群から選ばれる少なくとも1種を備えたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車に対する低燃費性の要請が高まり、タイヤのゴム物性が低燃費性に重要な影響を及ぼすことが知られているため、低燃費性に優れたタイヤ用ゴム組成物の提供が望まれている。一般に、低燃費タイヤとするためにはゴム組成物のヒステリシスロスを低下させることが有効である。
【0003】
タイヤ用ゴム組成物の充填剤としては、補強性と耐摩耗性の点でカーボンブラックが汎用されている。カーボンブラック配合で低燃費化を図る場合、カーボンブラックの粒子径を大きくする、カーボンブラックの配合量を少なくするといった方法が考えられるが、破壊特性、耐摩耗性、ウェットグリップ性能などの低下が避けられない。一方、充填剤としてシリカを用いて低燃費化を図ることも知られているが、シリカ配合はカーボンブラック配合に比べてゴム強度などが劣り、十分な性能を得ることが困難である。
【0004】
特許文献1および2には、特定のアミン化合物の配合によりカーボンブラックの分散性を向上させ、低発熱性を改善する技術が提案されている。しかしながら、カーボンブラックの配合により得られるゴム強度を維持しつつ、低燃費性を向上させるという点については、未だ改善の余地がある。また、加工性に劣るという問題もある。
【0005】
特許文献3には、特定のスルフィド化合物を含有するゴム・カーボンブラック用カップリング剤の添加によりカーボンブラックの分散性を向上し、低発熱性を改善する技術が提案されている。しかしながら、カーボンブラックの配合により得られるゴム強度を維持しつつ、低燃費性を向上させるという点については、未だ改善の余地がある。また、加工性に劣るという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2912845号公報
【特許文献2】特開2011−16984号公報
【特許文献3】特開2013−23610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、加工性およびカーボンブラック含有による優れたゴム強度を維持しつつ、低燃費性に優れたゴム組成物により構成されたサイドウォール、ウイング、ベーストレッド、サイドウォールパッキンおよびタイガムからなる群から選ばれる少なくとも1種を備えたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、イソプレン系ゴムを40〜70質量%、ブタジエンゴムを30〜60質量%含有するゴム成分100質量部に対し、窒素吸着比表面積が20〜90m2/gのカーボンブラックを15〜55質量部、硫黄を1.0〜2.3質量部含有し、カーボンブラック100質量部に対し、下記式(I)で示されるスルフィド化合物を0.05〜20質量部含有するゴム組成物により構成されたサイドウォール、ウイング、ベーストレッド、サイドウォールパッキンおよびタイガムからなる群から選ばれる少なくとも1種を備えたタイヤに関する。
【化1】
(式中、R1は、水素原子、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基またはアルケニル基、または炭素数3〜6の環状のアルキル基またはアルケニル基を表す。Aは、O、S、NH、またはNR2を表す。R2は、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基またはアルケニル基、または炭素数3〜6の環状のアルキル基またはアルケニル基を表す。nは1〜6の整数を表し、xは1〜4の整数を表す。)
【0009】
前記スルフィド化合物のカーボンブラック100質量部に対する含有量が0.10〜10質量部であることが好ましい。
【0010】
前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積が20〜70m2/gであり、ゴム成分100質量部に対する含有量が15〜50質量部であることが好ましい。
【0011】
前記ゴム成分中のシンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するブタジエンゴム、希土類系ブタジエンゴムおよび変性ブタジエンゴムからなる群から選ばれる少なくとも1種のブタジエンゴムの含有量が10〜60質量%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、所定量のイソプレン系ゴムおよびブタジエンゴムを含有するゴム成分に対して、所定のカーボンブラック、硫黄および下記式(I)スルフィド化合物を所定量含有するゴム組成物により構成されたサイドウォール、ウイング、ベーストレッド、サイドウォールパッキンおよびタイガムからなる群から選ばれる少なくとも1種を備えたタイヤとすることにより、ゴム加工性およびゴム強度を維持しながら、低燃費性に優れたタイヤを提供することができる。
【化2】
(式中、R1は、水素原子、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基またはアルケニル基、または炭素数3〜6の環状のアルキル基またはアルケニル基を表す。Aは、O、S、NH、またはNR2を表す。R2は、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基またはアルケニル基、または炭素数3〜6の環状のアルキル基またはアルケニル基を表す。nは1〜6の整数を表し、xは1〜4の整数を表す。)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のタイヤは、所定量のイソプレン系ゴムおよびブタジエンゴム(BR)を含有するゴム成分に対して、所定のカーボンブラック、硫黄および所定のスルフィド化合物を所定量含有するゴム組成物により構成されたサイドウォール、ウイング、ベーストレッド、サイドウォールパッキンおよびタイガムからなる群から選ばれる少なくとも1種を備えることを特徴とする。
【0014】
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、高純度天然ゴム(HPNR)などが挙げられ、なかでもNRおよび/またはIRを好適に使用できる。
【0015】
前記NRとしては特に限定されず、SIR20、RSS#3、TSR20など、タイヤ工業において一般的なものが挙げられる。また、前記IRとしても特に限定されず、タイヤ工業において一般的なものが使用できる。
【0016】
ゴム成分中のイソプレン系ゴムの含有量は、40質量%以上であり、50質量%以上が好ましい。含有量が40質量%未満の場合は、低燃費性の改善効果が不十分となる傾向がある。また、イソプレン系ゴムの含有量は、70質量%以下であり、65質量%以下が好ましい。含有量が70質量%を超える場合は、耐屈曲疲労性が不十分となる傾向がある。
【0017】
前記BRとしては特に限定されず、例えば、シス含有量が95質量%以上のBR(ハイシスBR)、希土類元素系触媒を用いて合成された希土類系ブタジエンゴム(希土類系BR)、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR(SPB含有BR)、変性BRなどを使用できる。なかでも、SPB含有BR、希土類系BRおよび変性BRからなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、希土類系BRを用いることがより好ましい。
【0018】
希土類系BRとしては、希土類元素系触媒を用いて合成され、ビニル含量が1.0質量%以下(好ましくは0.8質量%以下)、シス含量が95質量%以上のものを好適に使用できる。なお、本発明において、ビニル含量(1,2−結合ブタジエン単位量)およびシス含量(シス−1,4−結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定された値である。
【0019】
希土類系BRの合成に使用される希土類元素系触媒としては、公知のものを使用でき、例えば、ランタン系列希土類元素化合物、有機アルミニウム化合物、アルミノキサン、ハロゲン含有化合物、必要に応じてルイス塩基を含む触媒が挙げられる。なかでも、ランタン系列希土類元素化合物を用いた触媒がより好ましく、ネオジム(Nd)含有化合物を用いたNd系触媒が特に好ましい。
【0020】
前記SPB含有BRは、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶が、単にBR中に結晶を分散させたものではなく、BRと化学結合したうえで分散していることが好ましい。前記結晶がゴム成分と化学結合したうえで分散することにより、複素弾性率が向上する傾向がある。このようなSPB含有BRとしては、宇部興産(株)製のVCR−303、412、617などが挙げられる。
【0021】
前記変性BRとしては、リチウム開始剤により1,3−ブタジエンの重合をおこなったのち、スズ化合物を添加することにより得られるスズ変性BRが好ましく、さらにBR分子の末端がスズ−炭素結合で結合されたスズ末端変性BRが好ましい。
【0022】
リチウム開始剤としては、アルキルリチウム、アリールリチウム、ビニルリチウム、有機スズリチウムおよび有機窒素リチウム化合物などのリチウム系化合物や、リチウム金属などが挙げられる。前記リチウム開始剤を変性BRの開始剤とすることで、高ビニル、低シス含有量の変性BRを作製できる。
【0023】
スズ化合物としては、四塩化スズ、ブチルスズトリクロライド、ジブチルスズジクロライド、ジオクチルスズジクロライド、トリブチルスズクロライド、トリフェニルスズクロライド、ジフェニルジブチルスズ、トリフェニルスズエトキシド、ジフェニルジメチルスズ、ジトリルスズクロライド、ジフェニルスズジオクタノエート、ジビニルジエチルスズ、テトラベンジルスズ、ジブチルスズジステアレート、テトラアリルスズ、p−トリブチルスズスチレンなどが挙げられ、これらのスズ化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
ゴム成分中のBRの合計含有量は、30質量%以上であり、35質量%以上が好ましい。合計含有量が30質量%未満の場合は、耐屈曲疲労性が不十分となる傾向がある。また、BRの合計含有量は、60質量%以下であり、55質量%以下が好ましい。合計含有量が60質量%を超える場合は、低燃費性の改善効果が不十分となる傾向がある。
【0025】
また、SPB含有BR、希土類系BRおよび変性BRからなる群より選択される少なくとも1種を用いる場合のゴム成分中のSPB含有BR、希土類系BRおよび変性BRの合計含有量は、10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、35質量%以上がさらに好ましい。合計含有量が10質量%未満の場合は、十分な耐摩耗性および耐亀裂成長性を確保できなくなる傾向がある。また、SPB含有BR、希土類系BRおよび変性BRの合計含有量は、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。合計含有量が60質量%を超える場合は、低燃費性の改善効果が不十分となる傾向がある。
【0026】
本発明に係るゴム組成物は、前記のイソプレン系ゴムおよびBR以外にも、他のゴム成分を含有することができる。他のゴム成分としては、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、スチレンイソプレンゴム(SIR)、イソプレンブタジエンゴムなどのジエン系ゴムが挙げられる。なかでも、リバージョン防止効果があり、Hsを確保しやすい点から、SBRが好ましい。
【0027】
SBRとしては、アミノアルコキシシランで末端が変性されたシリカ用変性SBRを好適に使用できる。SBRを含有する場合のゴム成分中のSBRの含有量は、1〜20質量%が好ましく、5〜15質量%がより好ましい。
【0028】
前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、20m2/g以上であり、30m2/g以上がより好ましく、40m2/g以上がさらに好ましい。N2SAが20m2/g未満の場合は、補強性が不十分となる傾向がある。また、カーボンブラックのN2SAは、90m2/g以下であり、70m2/g以下が好ましく、60m2/g以下がより好ましい。N2SAが90m2/gを超える場合は、低燃費性が不十分となる傾向がある。なお、本発明におけるカーボンブラックのN2SAはJIS K 6217のA法に準じて測定される値である。
【0029】
カーボンブラックのジブチルフタレート(DBP)吸油量は、30cm3/100g以上が好ましく、40cm3/100g以上がより好ましい。DBP吸油量が30cm3/100g未満の場合は、補強性が不十分となる傾向がある。また、カーボンブラックのDBP吸油量は、400cm3/100g以下が好ましく、350cm3/100g以下がより好ましい。DBP吸油量が400cm3/100gを超える場合は、加工性が不十分となる傾向がある。なお、カーボンブラックのDBP吸油量は、JIS K 6221に準じて測定される値である。
【0030】
カーボンブラックのゴム成分100質量部に対する含有量は、15質量部以上であり、20質量部以上が好ましく、25質量部以上がより好ましい。カーボンブラックの含有量が15質量部未満の場合は、補強性が不十分となる傾向がある。また、カーボンブラックの含有量は、55質量部以下であり、50質量部以下が好ましく、45質量部以下がより好ましく、40質量部以下がさらに好ましい。カーボンブラックの含有量が55質量部を超える場合は、低燃費性が不十分となる傾向がある。
【0031】
前記硫黄は、加硫剤として含有する硫黄における純硫黄成分のことをいい、加硫促進剤などに含まれる硫黄成分は含まないものとする。また、硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる不溶性硫黄を好適に用いることができる。
【0032】
硫黄のゴム成分100質量部に対する含有量は、1.0質量部以上であり、1.2質量部以上が好ましく、1.4質量部以上がより好ましい。硫黄の含有量が1.0質量部未満の場合は、加硫が不十分となる傾向がある。また、硫黄の含有量は2.3質量部以下であり、2.0質量部以下が好ましく、1.8質量部以下がより好ましい。硫黄の含有量が2.3質量部を超える場合は、破断時伸び(EB)が不十分となる傾向がある。なお、硫黄として不溶性硫黄を用いる場合、硫黄の含有量は、オイル分を除いた純硫黄分の含有量を示す。
【0033】
前記スルフィド化合物は、下記式(I)で示される。
【化3】
式中、R1は、水素原子、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基またはアルケニル基、または炭素数3〜6の環状のアルキル基またはアルケニル基を表す。Aは、O、S、NH、またはNR2を表す。R2は、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基またはアルケニル基、または炭素数3〜6の環状のアルキル基またはアルケニル基を表す。nは1〜6の整数を表し、xは1〜4の整数を表す。
【0034】
式(I)で示されるスルフィド化合物としては、例えば、2,2’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)エチルスルフィド、2,2’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)エチルジスルフィド、2,2’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)エチルトリスルフィド、2,2’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)エチルテトラスルフィド、3,3’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、3,3’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)プロピルトリスルフィド、3,3’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)プロピルテトラスルフィド、4,4’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ブチルジスルフィド、4,4’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ブチルトリスルフィド、4,4’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ブチルテトラスルフィド、5,5’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ペンチルジスルフィド、5,5’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ペンチルトリスルフィド、5,5’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ペンチルテトラスルフィド、6,6’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ヘキシルジスルフィド、6,6’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ヘキシルトリスルフィド、6,6’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)ヘキシルテトラスルフィド、2,2’−ビス(1−メチルベンズイミダゾリル−2)エチルジスルフィド、2,2’−ビス(4−メチルベンズイミダゾリル−2)エチルジスルフィド、2,2’−ビス(5−メチルベンズイミダゾリル−2)エチルジスルフィド、3,3’−ビス(1−メチルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、3,3’−ビス(4−メチルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、3,3’−ビス(5−メチルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、2,2’−ビス(1−エチルベンズイミダゾリル−2)エチルジスルフィド、2,2’−ビス(4−エチルベンズイミダゾリル−2)エチルジスルフィド、2,2’−ビス(5−エチルベンズイミダゾリル−2)エチルジスルフィド、3,3’−ビス(1−エチルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、3,3’−ビス(4−エチルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、3,3’−ビス(5−エチルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、3,3’−ビス(1−n−プロピルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、3,3’−ビス(4−n−プロピルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、3,3’−ビス(5−n−プロピルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、3,3’−ビス(1−イソプロピルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、3,3’−ビス(4−イソプロピルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、3,3’−ビス(5−イソプロピルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、3,3’−ビス(1−tert−ブチルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、3,3’−ビス(4−tert−ブチルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、3,3’−ビス(5−tert−ブチルベンズイミダゾリル−2)プロピルジスルフィド、2,2’−ビス(ベンズオキサゾリル−2)エチルジスルフィド、2,2’−ビス(ベンズオキサゾリル−2)エチルトリスルフィド、2,2’−ビス(ベンズオキサゾリル−2)エチルテトラスルフィド、3,3’−ビス(ベンズオキサゾリル−2)プロピルジスルフィド、4,4’−ビス(ベンズオキサゾリル−2)ブチルジスルフィド、5,5’−ビス(ベンズオキサゾリル−2)ペンチルジスルフィド、6,6’−ビス(ベンズオキサゾリル−2)ヘキシルジスルフィド、2,2’−ビス(4−メチルベンズオキサゾリル−2)エチルジスルフィド、2,2’−ビス(4−メチルベンズオキサゾリル−2)エチルトリスルフィド、2,2’−ビス(4−メチルベンズオキサゾリル−2)エチルテトラスルフィド、2,2’−ビス(5−メチルベンズオキサゾリル−2)エチルジスルフィド、2,2’−ビス(5−メチルベンズオキサゾリル−2)エチルトリスルフィド、2,2’−ビス(5−メチルベンズオキサゾリル−2)エチルテトラスルフィド、3,3’−ビス(6−メチルベンズオキサゾリル−2)プロピルジスルフィド、3,3’−ビス(6−メチルベンズオキサゾリル−2)プロピルトリスルフィド、3,3’−ビス(6−メチルベンズオキサゾリル−2)プロピルテトラスルフィド、2,2’−ビス(ベンズチアゾリル−2)エチルジスルフィド、2,2’−ビス(ベンズチアゾリル−2)エチルトリスルフィド、2,2’−ビス(ベンズチアゾリル−2)エチルテトラスルフィド、3,3’−ビス(ベンズチアゾリル−2)プロピルジスルフィド、4,4’−ビス(ベンズチアゾリル−2)ブチルジスルフィド、5,5’−ビス(ベンズチアゾリル−2)ペンチルジスルフィド、6,6’−ビス(ベンズチアゾリル−2)ヘキシルジスルフィド、3,3’−ビス(4−メチルベンズチアゾリル−2)プロピルジスルフィド、3,3’−ビス(4−メチルベンズチアゾリル−2)プロピルトリスルフィド、3,3’−ビス(4−メチルベンズチアゾリル−2)プロピルテトラスルフィド、3,3’−ビス(5−エチルベンズチアゾリル−2)プロピルジスルフィド、3,3’−ビス(5−エチルベンズチアゾリル−2)プロピルトリスルフィド、3,3’−ビス(5−エチルベンズチアゾリル−2)プロピルテトラスルフィド、3,3’−ビス(6−n−プロピルベンズチアゾリル−2)プロピルジスルフィド、3,3’−ビス(6−n−プロピルベンズチアゾリル−2)プロピルトリスルフィド、3,3’−ビス(6−n−プロピルベンズチアゾリル−2)プロピルテトラスルフィド、3,3’−ビス(7−イソプロピルベンズチアゾリル−2)プロピルジスルフィド、3,3’−ビス(7−イソプロピルベンズチアゾリル−2)プロピルトリスルフィド、3,3’−ビス(7−イソプロピルベンズチアゾリル−2)プロピルテトラスルフィド等が挙げられる。これらのスルフィド化合物は単独で用いることも複数を併用することもできる。
【0035】
式(I)で示されるスルフィド化合物は、分子内に芳香族縮合複素環を有しているので、カーボンブラック表面との酸塩基相互作用による結合とは別に、カーボンブラック表面のベンゼン環とのπ電子相互作用による結合が形成される。また、硫黄部分(SX)によるポリマーラジカルとの反応、または硫黄架橋を伴う反応によりポリマーとの結合が形成される。これにより、カーボンブラックのゴム組成物中での分散性を向上させ、さらに分散状態を維持することができる。また、カーボンブラックとの結合によりポリマーが拘束されるため、発熱を抑えることができる。
【0036】
式(I)で示されるスルフィド化合物は、通常、固体の粉末であるが、平均粒子径が小さな微粒子粉末を用いることが、ゴム組成物中での分散性が高くなることから好ましい。該スルフィド化合物を微粒子粉末化する方法としては、特に限定されないが、気流式ジェットミル粉砕や乾式粉砕により行うことができる。
【0037】
式(I)で示されるスルフィド化合物の微粒子粉末の窒素吸着比表面積(N2SA)は、2.0m2/g以上が好ましく、2.5m2/g以上がより好ましく、5.0m2/g以上がさらに好ましく、10.0m2/g以上が特に好ましい。N2SAが2.0m2/g未満の場合は、平均粒子径が大きく、ゴム組成物中での分散性が不十分となる傾向がある。また、該微粒子粉末のN2SAの上限は特に限定されないが、コストが高くなることから100m2/g以下とすることが好ましい。なお、本発明におけるスルフィド化合物のN2SAは前記カーボンブラックと同様にJIS K 6217のA法に準じて測定される値である。
【0038】
また、式(I)で示されるスルフィド化合物は、オイルを添加した油展物として含有することが、スルフィド化合物の粒子がゴム成分と馴染みやすくなり、分散性を向上させることができるという理由から好ましい。オイルの添加量は、スルフィド化合物100質量部に対し、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい。添加量が5質量部未満の場合は、分散性の向上効果が不十分となる傾向がある。また、オイルの添加量は40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。添加量が40質量部を超える場合は、油展物中のスルフィド化合物の含有率が低下して含有効率が悪化する。また、ゴム組成物が軟化してしまい、これを用いたタイヤのハンドリング性能が悪化する傾向がある。
【0039】
式(I)で示されるスルフィド化合物のカーボンブラック100質量部に対する含有量は、0.05質量部以上であり、0.10質量部以上が好ましく、0.20質量部以上がより好ましい。含有量が0.05質量部未満の場合は、スルフィド化合物を含有することによる効果が得られにくくなる傾向がある。また、スルフィド化合物の含有量は、20質量部以下であり、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、1質量部以下がさらに好ましい。含有量が20質量部を超える場合は、加工性が悪化する傾向がある。なお、式(I)で示されるスルフィド化合物としてオイルを添加した油展物を用いる場合、該スルフィド化合物の含有量は、オイル分を除いたスルフィド化合物の含有量を示す。
【0040】
本発明に係るゴム組成物は、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、クレー等のカーボンブラック以外の補強用充填剤、カップリング剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、各種老化防止剤、アロマオイル等のオイル(スルフィド化合物が油展物である場合は該油展オイル以外のオイル)、軟化剤、ワックス、硫黄等の加硫剤、各種加硫促進剤等を好適に含有することができる。
【0041】
前記老化防止剤としては、アミン系、フェノール系、イミダゾール系の各化合物や、カルバミン酸金属塩、ワックス等を適宜選択して使用することが可能である。なかでも、アミン系が好ましく、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミンがより好ましい。
【0042】
老化防止剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましい。また、老化防止剤の含有量は、7質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。上記範囲内に調整した場合、本発明の効果が良好に得られる。
【0043】
オイルを含有する場合のオイル(スルフィド化合物が油展物である場合は該油展オイル以外のオイル)のゴム成分100質量部に対する含有量は、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましい。また、オイルの含有量は、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましい。オイルの含有量を上記範囲内とすることにより、本発明の効果が良好に得られる。
【0044】
前記加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド−アミン系もしくはアルデヒド−アンモニア系、イミダゾリン系、またはキサンテート系加硫促進剤が挙げられる。これらの加硫促進剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、加硫特性に優れ、加硫後のゴムの物性において、低燃費性に優れるという理由からスルフェンアミド系加硫促進剤が好ましく、例えば、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DZ)等が挙げられ、TBBSがより好ましい。
【0045】
加硫促進剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましい。0.1質量部未満の場合は、ゴム組成物が十分に加硫されず、必要とするゴム特性が得られないおそれがある。加硫促進剤の配合量は、5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましい。5質量部を超える場合は、ゴム焼けの原因となるおそれがある。
【0046】
本発明に係るゴム組成物の製造方法としては特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、前記の各成分をオープンロール、バンバリーミキサー、密閉式混練機等のゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
【0047】
本発明のタイヤは、前記ゴム組成物で構成されたサイドウォール、ウイング、ベーストレッド、サイドウォールパッキンおよびタイガムからなる群から選ばれる少なくとも1種を備える。なお、サイドウォールとはタイヤ側面に配される部材である。ウイングとは、トレッドゴムの両側に配される部材であり、具体的には、特開平9−277801号公報の図1などに示される部材である。ベーストレッドとは、多層構造を有するトレッドの内層部であり、2層構造〔表面層(キャップトレッド)および内面層(ベーストレッド)〕からなるトレッドでは内面層である。サイドウォールパッキンとは、ソフトビードエイペックスとも呼ばれ、ビードエーペックスからタイヤ半径方向外側に向けて先細状にのびる部材であり、具体的には、特開2005−271857号公報の図1などに示される部材である。ブレーカークッションとは、ブレーカーのエッジ部とケース(カーカス)との間に設けられる部材であり、具体的には、特開2006−273934号公報の図1などに示される部材である。タイガムとは、ケースコードとインナーライナーの間に配置される部材であり、具体的には、特開2010−095705号公報の図1などに示される部材である。
【0048】
本発明のタイヤは、通常の方法により製造できる。すなわち、ゴム成分に対して前記の配合剤を必要に応じて配合した本発明に係るゴム組成物を、未加硫の段階で各タイヤ部材の形状にあわせて押出し加工し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、通常の方法にて成型することにより、未加硫タイヤを形成し、この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、本発明のタイヤを製造することができる。
【0049】
本発明のタイヤは、乗用車、トラックやバスなどの重荷重用、二輪車(バイク)等に使用でき、なかでも、乗用車用タイヤおよび重荷重用タイヤに好適に使用できる。
【実施例】
【0050】
実施例にもとづいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0051】
以下、実施例および比較例で使用した各種薬品をまとめて説明する。
NR:TSR20
IR:IR2200
BR1:ランクセス(株)製のCB25(ネオジム(Nd)系触媒を用いて合成したBR(Nd−BR)、シス含量:97質量%、ビニル含量:0.7質量%、Mw/Mn:1.78、Mw:50万、Mn:28万)
BR2:ランクセス(株)製のCB22(ネオジム(Nd)系触媒を用いて合成したBR(Nd−BR)、シス含量:97質量%、ビニル含量:0.6質量%、Mw/Mn:1.60、Mw:59万、Mn:37万)
BR3:宇部興産(株)製のBR150B(コバルト触媒を用いて合成したBR(ハイシスBR)、シス含量97質量%)
BR4:宇部興産(株)製のVCR617(1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含むポリブタジエンゴム、1,2−シンジオタクチックポリブタジエン結晶(SPB)の含有率:12質量%、SPBの融点:200℃、沸騰n−ヘキサン不溶物の含有率:15〜18質量%)
BR5:日本ゼオン(株)製のBR1250(開始剤としてリチウムを用いて重合、ビニル結合量:10〜13質量%、Mw/Mn:1.5、スズ原子の含有率:250ppm、ポリスチレン換算分子量で105以下の成分の含有率:2〜3質量%)
SBR:JSR(株)製のHPR340(アミノアルコキシシランで末端が変性されたシリカ用変性SBR)
スルフィド化合物1:四国化成工業(株)製の2EBZ(2,2’−ビス(ベンズイミダゾリル−2)エチルジスルフィド、式(I)中のR1が水素原子、AがNH、nが2、xが2、N2SA:10.5m2/g、油展なし)
スルフィド化合物2:100質量部のスルフィド化合物1にオイルを30質量部添加した油展物(添加したオイル:(株)ジャパンエナジー製のプロセスオイルX−40)
カーボンブラック1:コロンビアケミカル社製のStatex N550(N2SA:40m2/g)
カーボンブラック2:コロンビアケミカル社製のStatex N660(N2SA:34m2/g)
カーボンブラック3:コロンビアケミカル社製のStatex N330(N2SA:78m2/g)
カーボンブラック4:コロンビアケミカル社製のStatex N762(N2SA:29m2/g)
カーボンブラック5:コロンビアケミカル社製のStatex N220(N2SA:119m2/g)
石油系C5レジン:丸善石油化学(株)製のマルカレッツT−100AS
TDAEオイル:H&R社製のVivaTec 400
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース355
老化防止剤1:住友化学(株)製のアンチゲン6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(6PPD))
老化防止剤2:大内新興化学工業(株)製ノクラック224(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体(TMQ))
ステアリン酸:日油(株)製の椿
亜鉛華:東邦亜鉛(株)製の銀嶺R
硫黄:細井化学工業(株)製のHK−200−5(5%オイル含有粉末硫黄)
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラ−NS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS))
【0052】
実施例1〜20および比較例1〜5
表1〜3に示す配合処方にしたがい、1.7Lの密閉型バンバリーミキサーを用いて、硫黄および加硫促進剤以外の薬品を排出温度150℃で4分間混練りし、混練り物を得た。次に、オープンロールを用いて、得られた混練り物に硫黄および加硫促進剤を添加し、排出温度105℃で2分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。さらに、得られた未加硫ゴム組成物を170℃の条件下で12分間加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
【0053】
得られた未加硫ゴム組成物および加硫ゴム組成物を用いて以下に示す方法により評価を行った。評価結果を各表に示す。
【0054】
<粘弾性試験>
(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメータVESを用いて、温度40℃、周波数10Hz、初期歪10%および動歪2%の条件下で、上記加硫ゴム組成物の損失正接tanδを測定した。結果は比較例1のtanδを100とし、下記計算式による指数で示す。低燃費性指数が大きいほど転がり抵抗特性(低燃費性)に優れることを示す。なお、110以上を性能目標値とする。
(低燃費性指数)=(比較例1のtanδ)/(各配合のtanδ)×100
【0055】
<引張試験>
加硫ゴム組成物からなる3号ダンベル型試験片を用いて、JIS K 6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に準じて、室温にて引張試験を実施し、破断時伸びEB(%)を測定した。結果は比較例1の破断時伸びを100とし、下記計算式による指数で示す。破断時伸び指数が大きいほどゴム強度に優れることを示す。なお、80以上を性能目標値とする。
(破断時伸び指数)=(各配合の破断時伸び)/(比較例1の破断時伸び)×100
【0056】
<加工性試験>
各未加硫ゴム組成物について、JIS K 6300−1の「未加硫ゴム−物理特性−第1部:ムーニー粘度計による粘度及びスコーチタイムの求め方」に準じたムーニー粘度の測定方法に従い、130℃の温度条件にて、ムーニー粘度(ML1+4)を測定した。結果は比較例1のムーニー粘度を100とし、下記計算式による指数で示す。加工性指数が大きいほどムーニー粘度が低く、加工性に優れることを示す。なお、90以上を性能目標値とする。
(加工性指数)=(比較例1のML1+4)/(各配合のML1+4)×100
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
表1〜3の結果より、イソプレン系ゴムおよびブタジエンゴムを所定量含有するゴム成分に対し、所定のカーボンブラック、硫黄および前記式(I)で示されるスルフィド化合物を所定量含有するゴム組成物はゴム加工性およびゴム強度を維持しながら、低燃費性に優れることがわかる。