(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
<第1の実施形態>
太陽光発電のような自然エネルギーに基づいて発電する発電設備は、大規模な発電設備から小規模な発電設備まで含めて広範な地域に設置されるようになってきている。小規模発電の例としては、例えば、商業ビル、店舗、一般家庭などに加えて、災害時の停電対応として、携帯電話の基地局への設置なども推進されている。このような発電設備では、例えば、電力需要に応じて効率よく供給するために、発電電力量が電力需要量より多くなることにより生じる余剰電力を蓄電池に一時的に蓄えて、蓄えた電力を電力需要量の多い時間に供給するようにしている。
【0021】
ところで、蓄電池としては、例えば、蓄電可能な電力のエネルギー密度が比較的高いリチウムイオン電池が利用されることがあるが、定格温度範囲より低い温度で蓄電すると電極の劣化につながる場合がある。そのため、屋外に設置されている発電設備では、地域、季節、天候、時間などによって、設置している蓄電池が低温状態となり、その低い温度環境のもとで充電すると蓄電池の電極の劣化が進行することがある。そこで、低温状態のときには充電を行わないように制限することが考えられるが、その場合、余剰電力があったとしてもその電力を蓄えておくことができなくなる。例えば、寒冷地では昼間でも気温が低い場合があり、昼間に余剰電力が生じたとしても気温が低いことによりその電力を夜間に利用するために蓄えておくことができなくなる。その対策として、蓄電池の温度を高めようとすると暖房設備が必要になる。特に、蓄電池の容量が多い場合には、蓄電池を配置する施設と、その施設内の温度を高めるための暖房設備が必要になり、電力的にも経済的にも効率がよくない。
【0022】
そこで、本実施形態による電力システムでは、配電線を介して発電設備に接続される他の設備の蓄電池まで電力を送って蓄電させるように制御する。この場合の他の設備の蓄電池とは、低温状態ではなく充電可能な温度環境に配置されている蓄電池である。例えば、この蓄電池は、コンビニエンスストアなどの店舗やサーバルームなどのように、店舗内の暖房設備による熱やサーバから放出される熱などにより充電可能な温度環境が保たれるような施設の屋内に配置されている。即ち、本実施形態による電力システムでは、配電線を介して接続される設備として、蓄電池を温めることを目的とする熱源以外からの熱により、外気温が低い場合でも低温状態にならずに充電可能な温度環境が保たれるような施設の屋内に蓄電池が設置される設備を、少なくとも一つ以上備えるようにした。
【0023】
これにより、発電設備に設置されている蓄電池が低温状態であっても、蓄電池の温度を高めるための専用の暖房設備を必要とせずに、発電設備により発電された電力を蓄えておくことができる。蓄えられた電力は、その蓄電池を有する設備で利用してもよいし、配電線に接続された他の設備に提供してもよい。これにより、発電された電力の利用効率を高めることができる。
以下、発電された電力を温度状態によって選択した蓄電池に蓄電させる蓄電制御を行う本実施形態による電力システムについて説明する。
【0024】
図1は、本発明の第1の実施形態による電力システム1の概略構成の一例を示す構成図である。
この図に示す電力システム1は、発電所10と、発電設備20と、クラスタ30と、送電系統40と、配電系統50と、蓄電制御装置60と、を備えている。ここで、本実施形態における用語「クラスタ」とは、自然エネルギー(再生可能エネルギー)利用の分散型電源から構成される発電装置、蓄電装置、または負荷装置を備える需要家の設備を1単位(例えば、ビル、店舗、無線基地局単位の設備)とする電力クラスタ(Electricity Cluster)を意味している。なお、ここでは電力システム1が、2つの発電設備20(発電設備20−1、発電設備20−2)と、3つのクラスタ30(クラスタ30−1、クラスタ30−2、クラスタ30−3)と、を備えている例を示しているが、それぞれ任意の数とすることができる。
【0025】
発電所10は、火力、水力、原子力などの各種エネルギーに基づいて発電する。これらの発電所10が発電する電力は、クラスタ(需要家の設備)に安定な電力が供給されるように管理されている。発電所10は、送電系統40に接続されている。送電系統40は、配電系統50に接続されており、発電所10が発電した電力を、送電線を介して配電系統50に対して送電する。配電系統50は、発電所10から送電系統40を介して送電された電力を、配電線を介して発電設備20及びクラスタ30に配電する。なお、ここでは、1つの発電所10が送電系統40に接続されている例を示しているが、発電所10の数は任意の数とすることができる。
【0026】
発電設備20は、自然エネルギーに基づいて発電する。例えば、自然エネルギーとして太陽光、太陽熱、風力、波力、地熱などが挙げられる。これらの自然エネルギーに基づいて発電設備20が発電する電力は、発電する場所の天候や気候など周囲の環境の変化の影響を受けて変動する。この発電設備20は、配電系統50に接続されている。
【0027】
例えば、発電設備20は、太陽光に基づいて発電する発電装置210(発電部の一例)と、蓄電池(例えば、リチウムイオン電池)を有する蓄電装置220とを備えている。発電装置210が発電した電力は、配電系統50を介してクラスタ30に配電される。また、発電装置210が発電した電力のうちの余剰電力は、蓄電装置220に蓄電され、クラスタ30の電力需要に応じて放電されて配電系統50を介してクラスタ30に配電される。なお、蓄電装置220は、配電系統50を介して受電した電力を蓄電することも可能である。なお、ここでは、発電設備20−1及び発電装置20−2のそれぞれの蓄電装置220は、屋外に設置されているものとする。
【0028】
クラスタ30は、配電系統50に接続されている需要家の設備である。例えば、クラスタ30は、太陽光に基づいて発電する発電装置310と、蓄電装置320と、負荷装置330と、を備えている。蓄電装置320は、蓄電池(例えば、リチウムイオン電池)を有しており、配電系統50を介して受電した電力(発電所10が発電した電力または発電設備20が発電した電力)や発電装置310が発電した電力を蓄電する。
【0029】
蓄電装置320に蓄えられた電力は、負荷装置330の電力需要に応じて負荷装置330に給電される。また、蓄電装置320に蓄えられた電力は、他の設備の電力需要に応じて配電系統50を介して他のクラスタ30または発電設備20に配電される。負荷装置330は、配電系統50を介して受電した電力、発電装置310が発電した電力、または蓄電装置320に蓄えられた電力を消費する。
【0030】
なお、ここでは、クラスタ30−1、クラスタ30−2、及びクラスタ30−3が同様に発電装置310、蓄電装置320、及び負荷装置330を備えた構成であるものとして説明するが、発電装置310、蓄電装置320、及び負荷装置330のうちの少なくとも1つを備えたクラスタ30が配電系統50に接続されていてもよい。また、ここでは、クラスタ30−1及びクラスタ30−2は、屋外に設置された設備であるとし、クラスタ30−3は屋内(例えば、コンビニエンスストアなどの店舗内)に設置された設備であるとする。即ち、クラスタ30−1及びクラスタ30−2にそれぞれ備えられた蓄電装置320は屋外に設置されており、クラスタ30−3に備えられた蓄電装置320は屋内(店舗内)に設置されているものとする。なお、クラスタ30−3が備える構成のうちの発電装置310は屋外(店舗の屋根など)に設置されているが、以下では、説明を容易にするため、「屋内に蓄電池が設置されているクラスタ30−3」のことを、単に「屋内にあるクラスタ30−3」などとも称する。
【0031】
蓄電制御装置60は、配電系統50を介して接続される発電設備20及びクラスタ30のそれぞれから情報を収集する。また、蓄電制御装置60は、収集した情報に基づいて、発電設備20及びクラスタ30の動作を制御する制御信号を発電設備20及びクラスタ30に送信する。例えば、蓄電制御装置60は、発電設備20により発電された電力を、配電系統50を介して接続されるいずれの蓄電池に蓄電させるかを制御する。具体的には、蓄電制御装置60は、発電設備20及びクラスタ30のそれぞれの蓄電池が設置されている環境の温度情報を取得し、取得した温度情報に基づいて、発電設備20により発電された電力を蓄電させるための蓄電池を選択する。
【0032】
次に、
図2を参照して、蓄電制御装置60の構成について詳しく説明する。
図2は、本実施形態による蓄電制御装置60の概略構成の一例を示す構成図である。この図に示す蓄電制御装置60は、通信部610と、情報収集部620と、温度環境判定部630(判定部の一例)と、記憶部640と、蓄電制御部650と、を備えている。
【0033】
通信部610は、通信網を介して発電設備20(発電設備20−1、発電設備20−2)、及びクラスタ30(クラスタ30−1、クラスタ30−2、クラスタ30−3)と通信する。
【0034】
情報収集部620は、発電設備20及びクラスタ30のそれぞれの発電装置の発電状態、蓄電池の蓄電状態(例えば、蓄電池残容量SOC(State of charge))、電力消費量などの情報を、通信部610を介して取得して収集する。また、情報収集部620は、発電設備20及びクラスタ30のそれぞれの蓄電装置(蓄電装置220または蓄電装置320)が有する蓄電池が設置されている環境の温度情報を収集する。この温度情報は、蓄電池の温度または蓄電池の周囲温度(近傍の温度)である。例えば、温度情報は、発電設備20及びクラスタ30のそれぞれにおいて、蓄電池に設けられた温度センサにより検出された温度、または蓄電池の近傍に設けられた温度センサにより検出された温度に基づいた温度情報である。また、情報収集部620は、発電設備20及びクラスタ30のそれぞれから取得した各種情報を、温度環境判定部630、記憶部640、または蓄電制御部650に供給する。
【0035】
温度環境判定部630は、発電設備20及びクラスタ30のそれぞれの蓄電池が、充電可能な温度環境にあるか否かを判定する。例えば、蓄電池に対する充電を許可する温度範囲が設定されており、この温度範囲に基づいて、充電可能な温度環境にあるか否かを判定する判定基準値が定まる。温度環境判定部630は、情報収集部620が取得した発電設備20及びクラスタ30のそれぞれの温度情報と、蓄電池の充電可能な温度範囲に基づいて定まる判定基準値とに基づいて、それぞれの蓄電池が充電可能な温度環境にあるか否かを判定する。そして、温度環境判定部630は、判定した結果を示す判定結果情報を、記憶部640及び蓄電制御部650に供給する。
【0036】
記憶部640は、配電系統50に接続されている各設備の情報、各設備から情報収集部620が収集した各種情報、情報収集部620が収集した情報に基づいて生成された情報などを記憶する。例えば、記憶部640は、設備位置情報記憶部641と、電力状態情報記憶部642と、温度環境情報記憶部643と、を備えている。
【0037】
設備位置情報記憶部641は、発電設備20及びクラスタ30のそれぞれが設置されている位置を示す設備位置情報を記憶する。例えば、設備位置情報には、設備を識別する設備情報と、その設備の位置情報とが関連付けられた情報が含まれる。設備の位置情報には、例えば、緯度、経度、及び高度を示す情報が含まれている。蓄電制御部650は、この設備位置情報を参照することにより、例えば、各設備間の距離を算出する。
【0038】
電力状態情報記憶部642は、情報収集部620が取得した発電設備20及びクラスタ30のそれぞれの発電装置の発電状態、蓄電池の蓄電状態、電力消費量などの電力状態情報を記憶する。例えば、電力状態情報には、設備を識別する設備情報と、その設備の発電装置の発電状態、蓄電池の蓄電状態、電力消費量などを示す情報とが関連付けられた情報が含まれる。蓄電制御部650は、この電力状態情報を参照することにより、各設備の発電装置の発電電力量、余剰電力量、蓄電池残容量SOCなどを取得する。
【0039】
温度環境情報記憶部643は、発電設備20及びクラスタ30のそれぞれの蓄電池が充電可能な温度環境にあるか否かを示す温度環境情報を記憶する。この温度環境情報は、温度環境判定部630が判定した結果を示す判定結果情報に基づいて、記憶または更新される。
【0040】
図3は、温度環境情報記憶部643に記憶されている温度環境情報の一例を示す図である。温度環境情報には、設備を識別する設備情報(設備)と、その設備の蓄電池が設置されている温度環境を示す情報(温度環境)として蓄電池に充電可能であるか否かを示す情報(ここでは、「充電許可」または「充電禁止」)と、が関連付けられた情報が含まれる。この
図3の例では、発電設備20−1、発電設備20−2、クラスタ30−1、及びクラスタ30−2のそれぞれの蓄電池が、充電可能な温度環境にない(充電禁止)ことを示しており、クラスタ30−3の蓄電池が、充電可能な温度環境にある(充電許可)ことを示している。
【0041】
なお、この図では、屋内に設置されているクラスタ30−3の蓄電池のみが充電可能な温度環境にある(充電許可)例を示しているが、屋外にある他の設備でも、充電可能な温度環境にある場合には充電許可を示す情報が関連付けられる。
【0042】
蓄電制御部650は、通信部610を介して制御信号を発電設備20及びクラスタ30に送信することにより、発電設備20及びクラスタ30のそれぞれの動作の制御を行う。例えば、蓄電制御部650は、互いに異なる場所に設置されている各設備が備える蓄電池のうち、充電可能な温度環境にある蓄電池に対して、発電設備20及びクラスタ30のいずれかの発電装置により発電された電力を蓄電させるように制御する。ここで、各設備の蓄電池が設置されている互いに異なる場所には、屋内の場所が含まれている。例えば、
図1に示す電力システム1の例では、クラスタ30−3の蓄電池が、屋内に設置された蓄電池である。即ち、このクラスタ30−3の蓄電池は、外気が低温状態のときであっても、充電可能な温度環境にある蓄電池である。
【0043】
具体的には、蓄電制御部650は、温度環境判定部630が判定した結果に基づいて、それぞれの蓄電池が充電可能な温度環境にあるか否かを示す情報を取得する。そして、蓄電制御部650は、例えば、発電設備20−1の発電装置210が設置されている場所にある蓄電池が充電可能な温度環境にない場合、他の設備の充電可能な温度環境にある蓄電池(例えば、屋内にあるクラスタ30−3の蓄電池)に対して、発電設備20−1の発電装置210により発電された電力を蓄電させる。このように、蓄電制御部650は、各設備に設置されている複数の蓄電池のそれぞれの温度情報に基づいて、蓄電させる蓄電池を選択する。
【0044】
なお、蓄電制御部650は、温度環境判定部630が判定した結果を、温度環境判定部630から取得してもよいし、温度環境判定部630が判定した結果が記憶されている温度環境情報記憶部643の温度環境情報を参照して、温度環境判定部630が判定した結果を取得してもよい。
【0045】
次に、
図4を参照して、本実施形態による電力システム1における蓄電制御処理の動作について説明する。
図4は、本実施形態による蓄電制御処理の一例を示すフローチャートである。ここでは、発電設備20−1が発電した電力に余剰電力が生じた場合に、発電設備20−1の蓄電池が低温状態であって充電可能な温度環境にないため、他の設備の充電可能な温度環境にある蓄電池に余剰電力を蓄電させる蓄電制御処理の例を説明する。
【0046】
まず、情報収集部620は、発電設備20及びクラスタ30のそれぞれの発電装置の発電状態、蓄電池の蓄電状態、電力消費量、及び蓄電池が設置されている環境の温度情報を収集する(ステップS10)。
【0047】
次に、蓄電制御部650は、情報収集部620が収集した発電設備20及びクラスタ30のそれぞれの発電状態、蓄電状態、及び電力消費量に基づいて、発電装置により発電された電力に余剰電力が生じている設備があるか否かを判定する(ステップS20)。ステップS20において、余剰電力が生じている設備がないと判定された場合(ステップS20:No)、蓄電制御部650は、蓄電制御を行わずに処理を終了する。
【0048】
一方、ステップS20において、余剰電力が生じている設備があると判定された場合(ステップS20:Yes)、温度環境判定部630は、発電設備20及びクラスタ30のそれぞれの蓄電池が充電可能な温度環境にあるか否かを、情報収集部620が取得した発電設備20−1の蓄電池の温度情報と、その蓄電池に対する充電を許可する温度範囲とに基づいて判定する。そして、蓄電制御部650は、温度環境判定部630が判定した判定結果に基づいて、余剰電力が生じている設備(ここでは、発電設備20−1)の蓄電池が充電可能な温度環境にあるか否かを判定する(ステップS30)。
【0049】
ステップS30において、発電設備20−1の蓄電池が充電可能な温度環境にないと判定された場合(ステップS30:No)、蓄電制御部650は、温度環境判定部630の判定結果に基づいて、充電可能な温度環境にある蓄電池を、発電設備20−1により発電された電力(余剰電力)を蓄電させる蓄電池として選択する。ここでは、屋内にあるクラスタ30−3の蓄電池が充電可能な温度環境にある蓄電池であると温度環境判定部630により判定され、蓄電制御部650は、クラスタ30−3の蓄電池を、発電設備20−1により発電された電力(余剰電力)を蓄電させる蓄電池として選択する(ステップS40)。
【0050】
次に、蓄電制御部650は、選択したクラスタ30−3の蓄電池に対して、発電設備20−1の発電装置210により発電された電力(余剰電力)が蓄電されるように、発電設備20及びクラスタ30のそれぞれに制御信号を送信する(ステップS50)。即ち、蓄電制御部650は、充電可能な温度環境にあるクラスタ30−3の蓄電池(例えば、屋内にある蓄電池)に対して、発電設備20−1により発電された電力を蓄電させる。
【0051】
一方、ステップS30において、発電設備20−1の蓄電池が充電可能な温度環境にあると判定された場合(ステップS30:Yes)、発電設備20−1の蓄電池に対して、発電設備20−1の発電装置210により発電された電力を蓄電させる(ステップS60)。
【0052】
このように、本実施形態による電力システム1において、蓄電制御装置60は、各設備の蓄電池が設置されている環境の温度に基づいて、発電設備20−1の蓄電池が充電可能な温度環境にない場合には、発電設備20−1の発電装置210により発電された電力を、充電可能な温度環境にあるクラスタ30−3の蓄電池に配電系統50を介して蓄電させるように制御する。よって、本実施形態によれば、発電設備20−1の蓄電池が低温状態で充電できない場合であっても、発電設備20−1により発電された電力を他の設備の充電可能な蓄電池に蓄えることができるため、発電された電力(余剰電力)を有効に利用することができる。
【0053】
なお、上述の例では、充電可能な温度環境にある蓄電池がクラスタ30−3の蓄電池ある場合を例に説明したが、充電可能な温度環境にある蓄電池が複数あることもある。充電可能な温度環境にある蓄電池が複数ある場合には、蓄電制御装置60は、その複数の蓄電池のうちのいずれか一つを任意に選択して蓄電させてもよいし、いずれか複数を任意に選択して蓄電させてもよい。
【0054】
また、充電可能な温度環境にある蓄電池が複数ある場合に、蓄電制御装置60は、その充電可能な複数の蓄電池のそれぞれの蓄電状態(例えば、蓄電池残容量SOC)に基づいて、蓄電させる蓄電池を選択してもよい。具体的には、蓄電制御装置60は、
図4のステップS40の処理において、電力状態情報記憶部642に記憶されている電力状態情報を参照して、複数の充電可能な温度環境にある蓄電池のうち蓄電池残容量SOCの値が小さい蓄電池を、発電設備20−1により発電された電力(余剰電力)を蓄電させる蓄電池として優先して選択してもよい。
【0055】
これにより、電力システム1において、発電設備20−1の蓄電池が低温状態で充電できない場合には、他の設備の充電可能な複数の蓄電池のうち蓄電池残容量SOCの値が小さい蓄電池に優先して、発電設備20−1により発電された電力(余剰電力)を蓄えることができるため、発電された電力を有効に利用することができる。
【0056】
また、充電可能な温度環境にある蓄電池が複数ある場合に、蓄電制御装置60は、その充電可能な複数の蓄電池のそれぞれの発電元(発電設備20−1が設置されている場所)からの距離に基づいて、蓄電させる蓄電池を選択してもよい。具体的には、蓄電制御装置60は、
図4のステップS40の処理において、設備位置情報記憶部641に記憶されている設備位置情報を参照して、充電可能な複数の蓄電池のうち発電元からの距離が近い場所にある蓄電池を、発電設備20−1により発電された電力(余剰電力)を蓄電させる蓄電池として優先して選択してもよい。
【0057】
これにより、電力システム1において、発電設備20−1の蓄電池が低温状態で充電できない場合には、他の設備の充電可能な複数の蓄電池のうち距離が近い蓄電池に優先して、発電設備20−1により発電された電力(余剰電力)を蓄えることができるため、充電ロスを抑制し、発電された電力を有効に利用することができる。
【0058】
また、充電可能な温度環境にある蓄電池が複数ある場合には、蓄電制御装置60は、その充電可能な複数の蓄電池のそれぞれの蓄電状態と、発電元との距離との両方に基づいて、蓄電させる蓄電池を選択してもよい。例えば、蓄電制御装置60は、蓄電池残容量SOCが所定の値より小さい蓄電池のうち、発電元との距離が最も近い蓄電池を蓄電させる蓄電池として選択してもよい。
【0059】
なお、
図4に示す蓄電制御処理において、ステップS30及びステップS60の処理を除いた処理としてもよい。即ち、余剰電力が生じている設備(ここでは、発電設備20−1)の蓄電池が充電可能な温度環境にあるか否かを判定する処理は行わずに、当該蓄電池を含む配電系統50に接続されている蓄電池のうちから充電可能な温度環境にある蓄電池を、余剰電力を蓄電させる蓄電池として選択してもよい。例えば、余剰電力が生じている設備の蓄電池が充電可能な温度環境にない場合には、この余剰電力が生じている設備の蓄電池ではなく、他の充電可能な温度環境にある蓄電池が選択される。なお、余剰電力が生じている設備の蓄電池が充電可能な温度環境にある場合には、例えば発電元(余剰電力が生じている設備)との距離を優先すると、この余剰電力が生じている設備の蓄電池が選択される。
【0060】
なお、上述した例では、温度環境判定部630は、情報収集部620が取得した蓄電池の温度情報に基づいて、その蓄電池が充電可能な温度環境にあるか否かを判定したが、蓄電池の温度情報に代えて、その蓄電池が設置されている場所の近隣の天気情報に含まれる温度情報(気温情報)に基づいて、その蓄電池が充電可能な温度環境にあるか否かを判定してもよい。さらに、温度環境判定部630は、その蓄電池が設置されている場所の近隣の天気情報に含まれる温度情報(気温情報)に加えて、時期(季節)や時刻、蓄電池が設置されている環境などを加味して判定してもよい。
【0061】
なお、上述した例では、発電設備20−1(発電元)により発電された電力が、クラスタ30−3の蓄電池(蓄電先)に蓄電される例を説明したが、発電元の設備または蓄電先の設備はこれに限られるものではない。例えば、互いに異なるクラスタ30どうし、または互いに異なる発電設備どうしが、発電元の設備と蓄電先の設備との関係となってもよい。また、発電設備20の蓄電池が充電可能な温度環境にあって、クラスタ30の蓄電池が充電可能な温度環境にない場合には、クラスタ30により発電された電力が発電設備20の蓄電池に蓄電されてもよい。
【0062】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
上述した第1の実施形態では、蓄電池が充電可能な温度環境にあるか否かを、蓄電池の温度情報に基づいて判定して、充電可能な温度環境にある蓄電池に蓄電させる例を説明した。本実施形態では、蓄電池が屋内に設置されているか否かに基づいて、屋内に設置されている蓄電池を充電可能な温度環境にある蓄電池として蓄電させる例を説明する。
【0063】
本実施形態による電力システム1の基本的な構成は、
図1に示す構成と同様でありその説明を省略する。ここでは、
図5を参照して、本実施形態による蓄電制御装置60Aの構成について説明する。
図5は、本実施形態による蓄電制御装置60Aの概略構成の一例を示す構成図である。なお、この
図5において
図2の各部に対応する構成には同一の符号を付け、その説明を省略する。
【0064】
蓄電制御装置60Aは、通信部610と、情報収集部620と、記憶部640Aと、蓄電制御部650Aと、を備えている。記憶部640Aは、設備位置情報記憶部641と、電力状態情報記憶部642と、設置場所情報記憶部644Aと、を備えており、温度環境情報記憶部643に代えて設置場所情報記憶部644Aを備えた点が、
図2に示す記憶部640と異なる。
【0065】
設置場所情報記憶部644Aは、発電設備20及びクラスタ30のそれぞれの蓄電池が設置されている場所に関する設置場所情報を記憶する。この設置場所情報は、設備が設けられたときや設備が変更されたときなどに、システム管理者などの指示に基づいて、設置場所情報記憶部644Aに記憶または更新される。
図6は、設置場所情報記憶部644Aに記憶されている設置場所情報の一例を示す図である。設置場所情報には、設備を識別する設備情報(設備)と、その設備の蓄電池が設置されている設置場所が屋外であるかまたは屋内であるかを示す情報(設置場所)とが関連付けられた情報が含まれている。この
図6の例では、発電設備20−1、発電設備20−2、クラスタ30−1、及びクラスタ30−2の蓄電池が屋外に設置されており、クラスタ30−3の蓄電池が屋内に設置されていることを示している。
【0066】
なお、ここでの屋内は、前述したように、外気温が低い場合でも低温状態にならずに充電可能な温度環境が保たれるような施設の屋内であり、例えば、コンビニエンスストアなどの店舗内やサーバルーム内のことを示している。
【0067】
蓄電制御部650Aは、複数の蓄電池のうち、屋内にある蓄電池を充電可能な温度環境にある蓄電池として選択して、選択した蓄電池に対して、発電設備20及びクラスタ30のいずれかの発電装置により発電された電力を蓄電させるように制御する。即ち、本実施形態では、蓄電池の温度情報を用いるのではなく、屋内にある蓄電池であることを条件として、蓄電させる蓄電池を選択する点が第1の実施形態とは異なる。
【0068】
例えば、蓄電制御部650Aは、設置場所情報記憶部644Aに記憶されている設置場所情報を参照して、発電設備20−1の蓄電池が充電可能な温度環境にない場合、屋内(店舗内)にあるクラスタ30−3の蓄電池に対して、発電設備20−1により発電された電力を蓄電させる。
【0069】
次に、本実施形態による蓄電制御処理の動作について説明する。本実施形態による蓄電制御処理は、
図4に示す蓄電制御処理の例において、ステップS30及びステップS40において行われる具体的な処理以外は第1の実施形態で説明した処理と同様である。そのため、ここではステップS30及びステップS40の処理についてのみ説明する。
【0070】
ステップS30において、蓄電制御部650は、余剰電力が生じている設備(ここでは、発電設備20−1)の蓄電池が充電可能な温度環境にあるか否かを判定する。具体的には、本実施形態では、蓄電制御部650は、発電設備20−1が設置されている地域の年間の気温の推移や一日の気温の推移を示す情報、現在の時期(季節)や時刻、現在の天気情報、蓄電池が設置されている環境(屋内または屋外)、などに基づいて、発電設備20−1の蓄電池が充電可能な温度環境にあるか否かを推定する。そして、蓄電制御部650は、推定結果に基づいて、発電設備20−1の蓄電池が充電可能な温度環境にあるか否かを判定する。簡易には、例えば、発電設備20−1が設置されている地域の現在の季節では屋外に設置されている蓄電池は充電可能な温度環境にない蓄電池であると判定されてもよい。
【0071】
ステップS30において、発電設備20−1の蓄電池が充電可能な温度環境にないと判定された場合(ステップS30:No)、蓄電制御部650は、充電可能な温度環境にある蓄電池を、発電設備20−1により発電された電力(余剰電力)を蓄電させる蓄電池として選択する。具体的には、本実施形態では、蓄電制御部650は、設置場所情報記憶部644Aに記憶されている設置場所情報を参照して、屋内(店舗内)にあるクラスタ30−3の蓄電池を、発電設備20−1により発電された電力(余剰電力)を蓄電させる蓄電池として選択する(ステップS40)。
【0072】
このように、本実施形態では、蓄電制御装置60は、発電設備20−1の蓄電池が充電可能な温度環境にない場合には、発電設備20−1の発電装置210により発電された電力を、屋内にあるクラスタ30−3の蓄電池に配電系統50を介して蓄電させるように制御する。よって、本実施形態によれば、発電設備20−1の蓄電池が低温状態で充電できない場合であっても、発電設備20−1により発電された電力を他の設備の充電可能な蓄電池に蓄えることができるため、発電された電力(余剰電力)を有効に利用することができる。
【0073】
なお、本実施形態において、第1の実施形態で説明したように、充電可能な温度環境にある蓄電池が複数ある場合には、蓄電制御装置60は、充電可能な複数の蓄電池のそれぞれの蓄電状態(例えば、蓄電池残容量SOC)と、充電可能な複数の蓄電池のそれぞれの発電元からの距離と、のいずれか一方または両方に基づいて、蓄電させる蓄電池を選択してもよい。また、本実施形態において、第1の実施形態で説明したように、
図4に示す蓄電制御処理において、ステップS30及びステップS60の処理を除いた処理としてもよい。
【0074】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
上述した第2の実施形態では、蓄電池が屋内に設置されているか否かに基づいて、屋内に設置されている蓄電池を充電可能な温度環境にある蓄電池として蓄電させる例を説明した。
ところで、コンビニエンスストアのような店舗には、24時間営業の店舗もあれば、1日のうちの所定の時間のみ営業している店舗もある。ここで、1日のうちの所定の時間のみ営業している店舗としては、スーパーマーケットやショッピングモールなどに代表される大型の商業施設などの店舗があり、このような場所には発電装置や蓄電装置の設置が今後も進むことが考えられる。
【0075】
このように屋内とはいっても、24時間営業の店舗とは異なり所定の時間のみ営業している店舗もあるため、例えば、営業時間外には低温状態となって充電可能な温度環境ではなくなる場合もある。
そこで、本実施形態では、屋内に設置されている蓄電池であることに加えて、時間の条件も加味して、充電可能な温度環境にある蓄電池を選択する例を説明する。
【0076】
本実施形態による電力システム1の基本的な構成は、
図1に示す構成と同様でありその説明を省略する。ここでは、
図7を参照して、本実施形態による蓄電制御装置60Bの構成について説明する。
図7は、本実施形態による蓄電制御装置60Bの概略構成の一例を示す構成図である。なお、この
図7において
図5の各部に対応する構成には同一の符号を付け、その説明を省略する。
【0077】
蓄電制御装置60Bは、通信部610と、情報収集部620と、記憶部640Bと、蓄電制御部650Bと、計時部660と、を備えている。
記憶部640Bは、設備位置情報記憶部641と、電力状態情報記憶部642と、設置場所情報記憶部644Bと、を備えており、設置場所情報記憶部644Bが記憶する設置場所情報の内容が、
図5に示す設置場所情報記憶部644Aが記憶する設置場所情報の内容と一部が異なる。
【0078】
図8は、設置場所情報記憶部644Bに記憶されている設置場所情報の一例を示す図である。この図に示す設置場所情報には、
図6に示す例と同様に、設備を識別する設備情報(設備)と、その設備の蓄電池が設置されている設置場所が屋外であるかまたは屋内であるかを示す情報(設置場所)とが関連付けられた情報が含まれている。また、この図に示す設置場所情報には、さらに、設置場所の種類を示す情報(場所種別)と、設置場所が店舗の場合には営業時間を示す情報(営業時間)とが、設備情報に関連付けられている。この
図8の例は、屋内に設置されている設備として、クラスタ30−3の他にクラスタ30−4(
図1では不図示)が配電系統50に接続されている例である。ここでは、クラスタ30−3は、「場所種別」が「店舗」であり、「営業時間」が「24時間」である。また、クラスタ30−4は、「場所種別」が「店舗」であり、「営業時間」が「10時〜23時」である。
【0079】
計時部660は、基本周波数信号を発振する発振回路と、発振回路から出力される基本周波数の信号から所定の周波数の信号に分周する分周回路と、を備え、計時用の所定の周波数の計時信号を生成し、生成した計時信号に基づいて計時を行う。なお、計時部660は、外部の時刻情報を提供するサーバ装置から取得した時刻情報に基づいて計時を行ってもよい。
【0080】
蓄電制御部650Bは、設置場所情報記憶部644Bに記憶されている設置場所情報を参照して、店舗の営業時間に基づいて、営業中の店舗内にある蓄電池を、充電可能な温度環境にある蓄電池として選択する。例えば、
図8に示す例では、23時から翌10時までの間では、蓄電制御部650Bは、クラスタ30−3の蓄電池に蓄電させるように制御する。一方、10時から23時までの間では、蓄電制御部650Bは、クラスタ30−3の蓄電池またはクラスタ30−4の蓄電池に蓄電させるように制御する。例えば、蓄電制御部650Bは、23時から翌10時までの間ではクラスタ30−3の蓄電池に優先して蓄電させるように制御し、10時から23時までの間ではクラスタ30−4の蓄電池に優先して蓄電させるように制御する。
【0081】
なお、蓄電制御装置60は、クラスタ30−3の蓄電池及びクラスタ30−4の蓄電池のいずれもが営業中である時間帯の場合には、第1の実施形態で説明したように、充電可能な複数の蓄電池のそれぞれの蓄電状態(例えば、蓄電池残容量SOC)と、充電可能な複数の蓄電池のそれぞれの発電元からの距離と、のいずれか一方または両方に基づいて、蓄電させる蓄電池を選択してもよい。
【0082】
このように、本実施形態では、蓄電制御装置60は、発電設備20−1の蓄電池が充電可能な温度環境にない場合には、発電設備20−1の発電装置210により発電された電力を、営業中の店舗内にあるクラスタ30−3の蓄電池に配電系統50を介して蓄電させるように制御する。よって、本実施形態によれば、発電設備20−1の蓄電池が低温状態で充電できない場合であっても、発電設備20−1により発電された電力を他の設備の充電可能な蓄電池に蓄えることができるため、発電された電力(余剰電力)を有効に利用することができる。
【0083】
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
第1から第3の実施形態による電力システム1では、1つの配電系統50に接続されている設備の間で、当該配電系統50を介して蓄電制御処理が行われる構成を説明した。本実施形態では、複数の配電系統を介して蓄電制御処理が行われる構成について説明する。
【0084】
以下、
図9を参照して、本実施形態による電力システム1Aの構成を説明する。
図9は、本実施形態による電力システム1Aの概略構成の一例を示す構成図である。なお、この
図9において
図1の各部に対応する構成には同一の符号を付け、その説明を省略する。
【0085】
この図に示す電力システム1Aは、配電系統50に加えて、配電系統50とは異なる配電系統51が送電系統40に接続されている。送電系統40は、発電所10が発電した電力を、送電線を介して配電系統50及び配電系統51に対して送電する。配電系統51には、配電系統50と同様に、複数の設備が接続されている。例えば、配電系統51には、発電設備21と、クラスタ31(クラスタ31−1、クラスタ31−2)とが接続されている。配電系統51は、発電所10から送電系統40を介して送電された電力を、配電線を介して発電設備21及びクラスタ31に配電する。
【0086】
発電設備21と、クラスタ31とは、配電系統51に接続されている発電設備20と、クラスタ30とのそれぞれと基本的な構成が同様であるため説明を省略する。また、蓄電制御装置61は、蓄電制御装置60と基本的な構成が同様であり、配電系統51に接続されている各設備間の蓄電制御処理を行う。
【0087】
例えば、蓄電制御装置61は、配電系統51を介して接続される発電設備21及びクラスタ31のそれぞれから情報を収集する。また、蓄電制御装置61は、収集した情報に基づいて、発電設備21及びクラスタ31の動作を制御する制御信号を発電設備21及びクラスタ31に送信する。例えば、蓄電制御装置61は、発電設備21により発電された電力を、配電系統51を介して接続されるいずれの蓄電池に蓄電させるかを制御する。なお、蓄電制御装置61の構成として、第1から第3の実施形態における蓄電制御装置60、60A、60Bのいずれの構成も適用することができる。
【0088】
また、本実施形態による電力システム1Aにおいては、配電系統50に接続されている各設備を制御する蓄電制御装置60と、配電系統51に接続されている各設備を制御する蓄電制御装置61とが互いに通信することにより連系して制御を行ってもよい。例えば、蓄電制御装置60と蓄電制御装置61とが連系して制御することにより、発電設備21により発電された電力を、配電系統51と送電系統40と配電系統50とを介して、クラスタ30−3の蓄電池に蓄電させるように制御してもよい。なお、蓄電制御装置60と蓄電制御装置61とが連系して制御することにより、発電設備20により発電された電力を、配電系統50と送電系統40と配電系統51とを介して、クラスタ31の蓄電池に蓄電させるように制御してもよい。これら、発電元の設備と蓄電先の設備とは任意に選択することができる。
【0089】
このように、本実施形態による電力システム1Aでは、蓄電制御装置60と蓄電制御装置61とが連系して制御することにより、互いに異なる配電系統に接続された設備の間で余剰電力が送られて蓄電される蓄電制御処理を行う。これにより、本実施形態によれば、余剰電力が生じた場合に充電可能な蓄電池を広範囲のエリアで探すことができ、余剰電力をロスする可能性を低減することができる。例えば、寒冷地の設備により発電された電力を、温暖な地域の設備の蓄電池まで送って蓄電させることも可能である。よって、発電された電力を有効に利用することができる。
【0090】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態において、蓄電制御装置60(60A、60B、61)が備える各部は、専用のハードウェアにより実現されるものであってもよく、また、メモリおよびCPU(中央演算装置)により構成され、上述の各部の機能を実現するためのプログラムをメモリにロードして実行することによりその機能を実現させるものであってもよい。
【0091】
例えば、上記実施形態において、蓄電制御装置60(60A、60B、61)、は、内部にコンピュータシステムを有している。そして、上述の各部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述の各部の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0092】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0093】
なお、ここで、本発明と上述した実施形態との対応関係について補足して説明する。本発明における電力システムは、
図1に示す電力システム1または
図9に示す電力システム1Aが対応する。また、本発明における蓄電制御装置は、
図1及び
図2に示す蓄電制御装置60、
図5に示す蓄電制御装置60A、
図5に示す蓄電制御装置60B、または
図9に示す蓄電制御装置60、61が対応する。また、本発明における発電部は、
図1に示す発電装置210または発電装置310が対応する。また、本発明における蓄電池は、
図1に示す蓄電装置220または蓄電装置320が有する蓄電池が対応する。また、本発明における判定部は、
図2に示す温度環境判定部630が対応する。また、本発明における配電線は、
図1または
図9に示す配電系統50または配電系統51に備えられた配電線が対応する。
【0094】
[1]そして、上記実施形態において、電力システム1(1A)は、自然エネルギーに基づいて発電する発電部(例えば、発電装置210または発電装置310)を備えている。また、電力システム1(1A)は、互いに異なる場所に設置されている複数の蓄電池(例えば、蓄電装置220または蓄電装置320が有する蓄電池)のうち、充電可能な温度環境にある蓄電池に対して、発電部により発電された電力を蓄電させる蓄電制御部(例えば、蓄電制御部650、650A、650B)を備えている。
【0095】
このように、電力システム1(1A)は、自然エネルギーに基づいて発電された電力を、複数の蓄電池うち充電可能な温度環境にある蓄電池に対して蓄電させる。これにより、電力システム1(1A)は、低温状態(例えば、寒冷地などで蓄電池に充電不可能な状態)であっても、自然エネルギーに基づいて発電された電力を蓄電させることができる。よって、電力システム1(1A)は、発電された電力(余剰電力)を有効に利用することができる。
【0096】
[2]また、上記実施形態において、互いに異なる場所には、例えば、屋内の場所が含まれている。そして、蓄電制御部(例えば、蓄電制御部650A、650B)は、屋内にある蓄電池を、充電可能な温度環境にある蓄電池としてもよい。
【0097】
これにより、電力システム1(1A)は、例えば、屋内の充電可能な環境にある蓄電池(例えば、クラスタ30−3の蓄電装置320が有する蓄電池)に、発電された電力を蓄電させることができる。
【0098】
[3]また、上記実施形態において、互いに異なる場所には、発電部(例えば、発電設備20−1の発電装置210)が設置されている場所と、屋内の場所とが含まれている。そして、蓄電制御部650(例えば、蓄電制御部650A、650B)は、発電部が設置されている場所にある蓄電池(例えば、発電設備20−1の蓄電装置220が有する蓄電池)が充電可能な温度環境にない場合、屋内にある蓄電池(例えば、クラスタ30−3の蓄電装置320が有する蓄電池)に対して、発電部により発電された電力を蓄電させてもよい。
【0099】
これにより、電力システム1(1A)は、例えば、発電設備20−1の蓄電池が低温状態で充電できない場合であっても、発電設備20−1により発電された電力を、他の設備の屋内にある蓄電池に蓄えることができるため、発電された電力(余剰電力)を有効に利用することができる。
【0100】
[4]また、上記実施形態において、屋内の場所には、例えば、店舗内の場所が含まれている。ここで、店舗内の場所は、店舗内の暖房設備の熱により、外気温が低い場合でも低温状態にならずに充電可能な温度環境が保たれている。例えば、店舗として24時間営業のコンビニエンスストアなどを適用することができる。
【0101】
これにより、電力システム1(1A)は、蓄電池の温度を高めるための専用の暖房設備を必要とせずに、発電設備により発電された電力を蓄えておくことができる。よって、電力システム1(1A)は、発電された電力の利用効率を高めることができる。
【0102】
なお、屋内の場所は、店舗内の場所に限られるものではなく、例えば、サーバルーム内などであってもよい。屋内の場所としては、例えば、蓄電池を温めることを目的とする熱源以外からの熱により、外気温が低い場合でも低温状態にならずに充電可能な温度環境が保たれるような施設の屋内であることが望ましい。
【0103】
[5]また、上記実施形態において、蓄電制御部(例えば、蓄電制御部650B)は、店舗の営業時間に基づいて、営業中の店舗内にある蓄電池を、充電可能な温度環境にある蓄電池としてもよい。
これにより、電力システム1(1A)は、24時間営業の店舗内に設置された蓄電池のみならず、1日のうちの所定の時間のみ営業している店舗内に設置された蓄電池も、低温状態の設備において発電された電力(余剰電力)を蓄える蓄電池として活用できる。
【0104】
[6]また、上記実施形態において、蓄電制御部(例えば、蓄電制御部650、650A、650B)は、充電可能な温度環境にある蓄電池が複数ある場合、当該充電可能な複数の蓄電池のそれぞれの蓄電状態に基づいて、発電部により発電された電力を蓄電させる蓄電池を選択してもよい。
【0105】
これにより、電力システム1(1A)は、充電可能な複数の蓄電池のうち蓄電池残容量SOCの値が小さい蓄電池に優先して、発電設備20−1により発電された電力(余剰電力)を蓄えることができるため、発電された電力を有効に利用することができる。
【0106】
[7]また、上記実施形態において、蓄電制御部(例えば、蓄電制御部650、650A、650B)は、充電可能な温度環境にある蓄電池が複数ある場合、発電部が設置されている場所からの距離が近い場所にある蓄電池を、発電部により発電された電力を蓄電させる蓄電池として優先してもよい。
【0107】
これにより、電力システム1(1A)は、複数の蓄電池のうち距離が近い蓄電池に優先して、発電設備20−1により発電された電力(余剰電力)を蓄えることができるため、充電ロスを抑制し、発電された電力を有効に利用することができる。
【0108】
[8]また、上記実施形態において、電力システム1(1A)は、複数の蓄電池のそれぞれが、充電可能な温度環境にあるか否かを判定する判定部(例えば、温度環境判定部630)を備えてもよい。そして、蓄電制御部(例えば、蓄電制御部650)は、温度環境判定部630により充電可能な温度環境にあると判定された蓄電池に対して、発電部により発電された電力を蓄電させてもよい。
【0109】
これにより、電力システム1(1A)は、複数の蓄電池のそれぞれの温度に基づいて、充電可能な温度環境にある蓄電池に対して、発電された電力(余剰電力)を蓄電させることができる。
【0110】
[9]また、上記実施形態において、互いに異なる場所には、発電部(例えば、発電設備20−1の発電装置210)が設置されている場所と、屋内の場所とが含まれている。そして、蓄電制御部650(例えば、蓄電制御部650)は、判定部(例えば、温度環境判定部630)により、発電部が設置されている場所にある蓄電池(例えば、発電設備20−1の蓄電装置220が有する蓄電池)が充電可能な温度環境にないと判定され、かつ屋内にある蓄電池(例えば、クラスタ30−3の蓄電装置320が有する蓄電池)が充電可能な温度環境にあると判定された場合、屋内にある蓄電池に対して、発電部により発電された電力を蓄電させる。
【0111】
これにより、電力システム1(1A)は、例えば、発電設備20−1の蓄電池が低温状態で充電できない場合であっても、発電設備20−1により発電された電力を、他の設備の充電可能な温度環境にある蓄電池に蓄えることができるため、発電された電力(余剰電力)を有効に利用することができる。
【0112】
[10]また、上記実施形態において、複数の蓄電池のそれぞれは、少なくとも配電線(例えば、配電系統50に備えられた配電線)を介して発電部に接続されている。そして、蓄電制御部(例えば、蓄電制御部650、650A、650B)は、配電系統50を介して、発電部により発電された電力を複数の蓄電池のいずれかに蓄電させる。
【0113】
これにより、電力システム1(1A)は、発電された電力(余剰電力)を、配電系統50に接続される他の設備の充電可能な蓄電池に蓄電させることができる。
なお、電力システム1(1A)は、発電された電力(余剰電力)を、送電系統40を介して配電系統50と接続される配電系統51に、接続される他の設備の充電可能な蓄電池に蓄電させてもよい。
【0114】
[11]また、上記実施形態において、電力システム1は、蓄電制御装置(例えば、蓄電制御装置60、60A、60B、または61、以下、特に区別しない場合には蓄電制御装置60と総称する)を備えている。そして、この蓄電制御装置60は、例えば、蓄電制御部(例えば、蓄電制御部650、650A、650B)を備えている。この蓄電制御部は、上述したように、互いに異なる場所に設置されている複数の蓄電池のうち、充電可能な温度環境にある蓄電池に対して、自然エネルギーに基づいて発電する発電部により発電された電力を蓄電させる。
【0115】
これにより、電力システム1(1A)において、蓄電制御装置60は、低温状態(例えば、寒冷地などで蓄電池に充電不可能な状態)であっても、自然エネルギーに基づいて発電された電力を蓄電させることができる。よって、蓄電制御装置60は、発電された電力(余剰電力)を有効に利用することができる。
【0116】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の電力システム1(1A)は、上述の図示例にのみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0117】
例えば、上述の第1から第4の実施形態において説明した各構成は、任意に組み合わせることができる。一例として、第1の実施形態で説明した、蓄電池の温度情報に基づいて蓄電池が充電可能な温度環境にあるか否かを判定する構成と、第2の実施形態で説明した、屋内に設置されている蓄電池を充電可能な温度環境にある蓄電池と判定する構成とを組み合わせた構成としてもよい。
【0118】
具体的には、余剰電力が生じている設備(例えば、発電設備20−1)の蓄電池が充電可能な温度環境にあるか否かを判定する処理では、蓄電池の温度情報に基づいて蓄電池が充電可能な温度環境にあるか否かを判定し、余剰電力を蓄電させる蓄電池を選択する処理では、屋内に設置されている蓄電池を充電可能な温度環境にある蓄電池として選択してもよい。また、上記の逆に、余剰電力が生じている設備(例えば、発電設備20−1)の蓄電池が充電可能な温度環境にあるか否かを判定する処理では、屋内に設置されている蓄電池であるか否かに基づいて蓄電池が充電可能な温度環境にあるか否かを判定し、余剰電力を蓄電させる蓄電池を選択する処理では、蓄電池の温度情報に基づいて充電可能な温度環境にある蓄電池を選択してもよい。
【0119】
なお、
図3に示す温度環境情報では、温度環境判定部630が判定した結果に基づいて、充電可能であるか否かを示す情報(例えば、「充電許可」または「充電禁止」)が記憶されている例を示したがこれに限られるものではなく、例えば、温度の状態を示す情報(例えば、「非低温状態」または「低温状態」など)、または、温度を示す情報(例えば、「20度」、「−10度」など)が記憶されていてもよい。この場合、蓄電制御部650は、温度の状態を示す情報や温度を示す情報に基づいて、それぞれの蓄電池が充電可能であるか否かを判定してもよい。
【0120】
また、
図6及び
図8に示す設置場所情報では、蓄電池が設置されている設置場所が屋外であるかまたは屋内であるかを示す情報が設置場所を示す情報として記憶されている例を示したがこれに限られるものではなく、例えば、充電可能な温度環境の場所であるか否かを示す情報、または、充電可能な場所であるか否かを示す情報が記憶されてもいてもよい。
【0121】
なお、以上の説明においては、蓄電装置220及び蓄電装置320が有する蓄電池についてリチウムイオン電池を例示して説明したが、他の種類の蓄電池であってもよい。なお蓄電装置220及び蓄電装置320における蓄電池の種類や仕様によって、充電可能な温度範囲が異なる。そのため、充電可能な温度環境にあるか否かを判定する判定基準値は、蓄電池の種類や仕様に応じた充電を許可する温度範囲に基づいて定められる。
【0122】
また、以上の説明においては、屋内の例として、コンビニエンスストアや商業施設の店舗内、またはサーバルーム内を例示して説明したが、これらに限られるものではない。例えば、屋内としては、充電可能な温度環境が常時または所定の時間保たれる場所であれば、温浴施設内、植物工場内、公共施設内、遊戯施設内などであってもよい。