(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a)第1主面と、前記第1主面と反対側の面である第2主面を有する基板を準備し、前記基板の前記第1主面上に複数の半導体素子を形成することにより半導体ウエハを形成する工程と、
(b)粘着テープが貼り付けられた環状のリングを準備する工程と、
(c)前記半導体ウエハの前記第2主面と前記リングの環内に位置する前記粘着テープの粘着面とが対向するように、前記粘着テープ上に前記半導体ウエハを貼り付ける工程と、
(d)前記半導体ウエハを切断することにより、複数の半導体チップに分割し、前記複数の半導体チップが前記粘着テープに貼り付いた状態で前記リングに保持される、ソーンウエハを作成する工程と、
(e)前記(d)工程の後、前記ソーンウエハの前記複数の半導体チップが貼り付けられた第1面を覆う第1ケース部と、前記ソーンウエハの前記第1面の反対側の第2面を覆う第2ケース部と、を有する梱包ケース内に前記ソーンウエハを収納して前記リングを固定する工程と、
(f)前記(e)工程の後、梱包袋内に前記梱包ケースを収納する工程と、
(g)前記(f)工程の後、前記梱包袋内の気体を吸気することにより、前記梱包ケース内を減圧する工程と、を有し、
前記第1ケース部は、前記(e)工程で、前記複数の半導体チップを覆う第1凹部、および上記第1凹部に連通し、前記梱包ケースの外部空間に接続される第1通気経路を有し、
前記第2ケース部は、前記(e)工程で、前記ソーンウエハの前記第2面を覆う第2凹部を有し、
前記(g)工程では、前記第1通気経路を介して、前記梱包ケース内の気体を排出する、半導体装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本願における記載形式・基本的用語・用法の説明)
本願において、実施の態様の記載は、必要に応じて、便宜上複数のセクション等に分けて記載するが、特にそうでない旨明示した場合を除き、これらは相互に独立別個のものではなく、記載の前後を問わず、単一の例の各部分、一方が他方の一部詳細または一部または全部の変形例等である。また、原則として、同様の部分は繰り返しの説明を省略する。また、実施の態様における各構成要素は、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、必須のものではない。
【0012】
同様に実施の態様等の記載において、材料、組成等について、「AからなるX」等といっても、特にそうでない旨明示した場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、A以外の要素を含むものを排除するものではない。例えば、成分についていえば、「Aを主要な成分として含むX」等の意味である。例えば、「シリコン部材」等といっても、純粋なシリコンに限定されるものではなく、シリコン・ゲルマニウム(SiGe)合金やその他シリコンを主要な成分とする多元合金、その他の添加物等を含む部材も含むものであることはいうまでもない。また、金めっき、Cu層、ニッケル・めっき等といっても、そうでない旨、特に明示した場合を除き、純粋なものだけでなく、それぞれ金、Cu、ニッケル等を主要な成分とする部材を含むものとする。
【0013】
さらに、特定の数値、数量に言及したときも、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、その特定の数値を超える数値であってもよいし、その特定の数値未満の数値でもよい。
【0014】
また、実施の形態の各図中において、同一または同様の部分は同一または類似の記号または参照番号で示し、説明は原則として繰り返さない。
【0015】
また、本願では、複数のデバイス領域を有する半導体ウエハに集積回路を形成した後、デバイス領域毎に個片化されたものを、半導体チップと記載する。また、半導体チップがリードフレームや配線基板などの基材に搭載され、基材が有する端子と電気的に接続されたものを半導体パッケージと記載する。
【0016】
また、本願では、半導体材料を利用した回路(集積回路)を有する電子部品の総称を半導体装置と記載する。したがって、半導体装置には、上記した半導体チップおよび半導体パッケージが含まれる。また、複数の半導体チップが梱包された包装体も半導体装置に含まれる。
【0017】
また、添付図面においては、却って、煩雑になる場合または空隙との区別が明確である場合には、断面であってもハッチング等を省略する場合がある。これに関連して、説明等から明らかである場合等には、平面的に閉じた孔であっても、背景の輪郭線を省略する場合がある。更に、断面でなくとも、空隙でないことを明示するため、あるいは領域の境界を明示するために、ハッチングやドットパターンを付すことがある。
【0018】
(実施の形態)
<半導体パッケージ>
まず、本実施の形態の半導体パッケージ(半導体装置)PKG1の概要構成について、
図1および
図2を用いて説明する。本実施の形態の半導体パッケージPKG1は、配線基板2、および配線基板2上に搭載された半導体チップ(半導体装置)CPを備えている。
図1は本実施の形態の半導体パッケージ(半導体装置)の上面図である。また、
図2は、
図1のA−A線に沿った断面図である。なお、
図1および
図2では、半導体チップCPの主面CPt側に形成された複数のイメージセンサ素子(受光素子)の配置領域を見やすくするため、イメージセンサ素子の配置領域を二点鎖線で囲み、符号LSEを付して示している。
【0019】
図2に示すように、配線基板2は、半導体チップCPが搭載された上面(面、主面、第1面、チップ搭載面)2t、上面2tとは反対側の下面(面、主面、第2面、実装面)2b、および上面2tと下面2bの間に配置された側面2sを有し、
図1に示すように平面視において四角形の外形形状を成す。
【0020】
配線基板2の上面2tには、半導体チップCPと電気的に接続される複数の端子(ボンディングリード、ボンディングフィンガ、半導体チップ接続用端子)2BFが形成されている。また、
図2に示すように、配線基板2の下面2bには、半導体パッケージPKG1の外部入出力端子である複数のランド2LDが形成されている。複数の端子2BFと複数のランド2LDは、配線基板2に形成された複数の配線2Wを介して、それぞれ電気的に接続されている。また、
図2に示す例では、複数のランド2LDのそれぞれには、半田ボール(半田材、外部端子、電極、外部電極)SBが接続されている。半田ボールSBは、半導体パッケージPKG1を図示しない実装基板に実装する際に、実装基板側の複数の端子(図示は省略)と複数のランド2LDを電気的に接続する、導電性部材である。
【0021】
また、半導体パッケージPKG1は、配線基板2上に搭載される半導体チップCPを備えている。
図2に示すように、半導体チップCPのそれぞれは、主面(表面、上面)CPt、主面CPtとは反対側の主面(裏面、下面)CPb、および、主面CPtと主面CPbとの間に位置する側面CPsを有し、
図1に示すように平面視において配線基板2よりも平面積が小さい四角形の外形形状を成す。
【0022】
また、半導体チップCPの主面CPtには、複数のパッド(ボンディングパッド、チップ電極)PDが形成されており、本実施の形態では、複数のパッドPDが主面CPtの各辺に沿って(側面CPsに沿って)形成されている。また、
図2に示す例では、半導体チップCPは、主面CPbが配線基板2の上面2tと対向配置された状態で、配線基板2上に搭載されている。このような搭載方式は、フェイスアップ実装方式と呼ばれる。
【0023】
半導体チップCP(詳しくは、半導体チップCPの基材)は、例えばシリコン(Si)から成る。また、主面CPtには、半導体チップCPの基材および配線を覆う絶縁膜が形成されており、複数のパッドPDのそれぞれの表面は、この絶縁膜に形成された開口部において、絶縁膜から露出している。また、複数のパッドPDは、それぞれ金属からなり、本実施の形態では、例えばアルミニウム(Al)からなる。
【0024】
図1および
図2に示す例では、半導体チップCPは、主面CPt側に形成された複数のイメージセンサ素子(受光素子)LSEを有する、所謂、イメージセンサチップである。イメージセンサ素子は、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)を用いた固体撮像素子である。半導体チップCPの主面CPt側に形成された複数のイメージセンサ素子LSEは、主面CPtの周縁部に形成された複数のパッドPDと電気的に接続されている。
【0025】
また、半導体チップCPの複数のパッドPDは、例えば金(Au)あるいは銅(Cu)などの金属材料から成る複数のワイヤ(導電性部材)BWを介して配線基板2の複数の端子2BFと電気的に接続されている。イメージセンサチップなどのセンサチップを有する半導体パッケージの場合、センサ部分を視認可能な状態にする必要が生じる場合が多い。このため、
図1および
図2に示す例では、フェイスアップ実装方式により半導体チップCPが搭載され、ワイヤBWを介して半導体チップCPと配線基板2とが電気的に接続される。
【0026】
また、ワイヤBWにより半導体チップCPと配線基板2とを電気的に接続する場合、ワイヤBWによる接続部分を保護する必要がある。このため、
図1および
図2に示す例では、半導体チップCPおよび複数のワイヤBWは、可視光に対して透明なカバー部材CGにより覆われている。
【0027】
なお、
図1および
図2では、半導体チップCPを搭載する基材として、配線基板2を例示的に示しているが、種々の変形例がある。例えば、半導体チップCPを図示しない金属製のリードフレームのチップ搭載部に搭載することもできる。
【0028】
また、
図1および
図2に対する変形例としてセンサチップではない半導体チップに置き換えることができる。この場合、半導体チップが例えば黒色の樹脂に覆われていても良いので、半導体チップCPおよび複数のワイヤBWを樹脂で封止しても良い。また、半導体チップの半導体素子のパッドPDの形成面である主面CPt側が配線基板2の上面2tと対向するように搭載される、フェイスダウン実装方式で配線基板2上に搭載されても良い。この場合、ワイヤBWに代えて、複数のパッドPDに接合された複数の突起電極を介して半導体チップCPと配線基板2とを電気的に接続することができる。
【0029】
<半導体装置の製造方法>
次に、
図1および
図2を用いて説明した半導体パッケージPKG1の製造工程について説明する。なお、本実施の形態では、
図1に示す半導体チップCPを製造する工程(ウエハ工程)と、半導体パッケージを組み立てる工程(組立工程)と、を互いに異なる場所で行う実施態様について説明する。この場合、ウエハ工程を実施した後、完成した半導体チップを梱包し、搬送する必要がある。
図3は、
図1および
図2を用いて説明した半導体パッケージの製造工程の概要を示す説明図である。
【0030】
<ウエハ工程>
図3に示すウエハ工程では、ウエハ準備工程として、例えばシリコン(Si)などの半導体材料からなる基板である、半導体ウエハWH(
図4参照)を準備する。
図4は、
図3に示すウエハ準備工程で準備する半導体ウエハの回路形成面側の平面図である。なお、ウエハ準備工程で準備する半導体ウエハWHは、複数のデバイス領域DVpを有するが、各デバイス領域DVpの境界に、目視可能な線が形成されていなくても良い。
図4では、複数のデバイス領域DVpが存在することを明示的にしめすため、デバイス領域DVpの境界、すなわち、ダイシングラインDCpに二点鎖線を付している。
【0031】
図4に示す半導体ウエハWHは、回路形成面CFtおよび回路形成面CFtの反対側の裏面を有している。また、平面視において、半導体ウエハWHは、複数のデバイス領域DVp、および複数のデバイス領域DVpの間に位置するダイシングライン(スクライブ領域)DCpを有する。
【0032】
また、
図3に示す回路形成工程として、半導体ウエハWHの回路形成面CFtに複数の半導体素子を含む回路を形成する。本工程では、複数の半導体素子、複数のパッドPD(
図1参照)および複数の半導体素子と複数のパッドPDとを電気的に接続する複数の配線を形成する。複数の半導体素子は、例えばトランジスタやダイオードなどの電子回路素子であって、半導体材料に不純物を導入することにより形成される。また、上記したように、本実施の形態では、CMOSセンサなどのイメージセンサ素子LSE(
図1参照)を形成する。イメージセンサ素子LSEは、複数の半導体素子により構成される。また、
図1および
図2では図示を省略するが、イメージセンサ素子LSEの上方には、複数のレンズ(マイクロレンズ)が形成されている。したがって、本実施の形態では、回路形成工程において、イメージセンサ素子LSE、イメージセンサ素子LSEと電気的に接続される複数の配線、および複数のパッドPD(
図1参照)が形成される。
【0033】
なお、
図3に示す回路形成工程では、
図4に示す半導体ウエハWHの回路形成面CFt上に配線層が積層される。
図2に示す半導体チップの主面CPtは、上記のように、配線層を積層することにより回路が形成された後の半導体ウエハWHの上面である。このため、回路が形成された後の半導体ウエハWHの断面を示す場合には、例えば
図6に示すように半導体ウエハWHの上面を主面CPtとして示している。
【0034】
また、
図3に示す検査工程では、回路形成工程で半導体ウエハWHに形成された回路に対して電気的試験等を行う。この電気的試験では、例えば、導通試験や回路の電気的特性を確認する試験等を行うことができる。
【0035】
なお、
図3では図示を省略するが、回路形成工程の後に半導体ウエハWHの裏面を研削し、半導体ウエハの厚さを低減させる、裏面研削工程を行っても良い。裏面研削工程を行う場合、回路形成工程の後で半導体ウエハWHを薄くできるので、回路形成工程における半導体ウエハWHのハンドリングを向上させ、かつ、取得する半導体チップCP(
図1参照)の厚さを薄型化できる。裏面研削工程は、
図3に示す検査工程の後、かつ、ダイシング工程の前に行うこともできる。ただし、裏面研削工程における回路への影響を検査する観点からは、検査工程の前に行うことが好ましい。
【0036】
なお、
図2に示す半導体チップCPの主面CPbは、裏面研削工程を行う場合には、研削後に露出する面である。また、
図2に示す半導体チップCPの主面CPbは、裏面研削工程を行わない場合には、
図4に示す半導体ウエハWHの回路形成面CFtの反対側に位置する裏面と同一面である。したがって、
図3に示すダイシング工程以降の工程において、半導体ウエハWHの断面を示す場合には、例えば、後述する
図6に示すように半導体ウエハWHの下面を主面CPbとして示している。
【0037】
次に、
図3に示すダイシング工程では、
図4に示すダイシングラインDCpに沿って半導体ウエハWHを切断し、デバイス領域DVpごとに分割された、複数の半導体チップCP(
図7参照)を取得する。
図5は、
図3に示すダイシング工程で使用する半導体ウエハの支持部材を示す平面図である。また、
図6は、
図5のA−A線に沿った断面において、ダイシングテープに半導体ウエハを貼り付けた状態を示す断面図である。また、
図7は、
図6に示す半導体ウエハをダイシングラインに沿って切断する様子を示す拡大断面図である。また、
図8は、
図3に示すダイシング工程後に得られるソーンウエハの平面図である。
【0038】
なお、
図5に示すリングRGは、半導体ウエハWH(
図6参照)の貼り付け面である粘着面ADf側を示している。また、上記したように、半導体ウエハWHは、複数のデバイス領域DVpを有するが、各デバイス領域DVpの境界に、目視可能な線が形成されていなくても良い。
図6では、複数のデバイス領域DVpが存在することを明示的にしめすため、デバイス領域DVpの境界、すなわち、ダイシングラインDCpに点線を付している。
【0039】
ダイシング工程は、
図5に示すようにダイシングテープ(粘着シート)DTが貼り付けられたリングRGを準備するリング準備工程を有する。また、ダイシング工程は、
図6に示すように、半導体ウエハWHの主面CPbとリングRGの環内に位置するダイシングテープDTの粘着面ADfとが対向するように、ダイシングテープDT上に半導体ウエハWHを貼り付ける、ウエハ接着工程を有する。また、ダイシング工程は、
図7に示すように、半導体ウエハWHを切断することにより、複数の半導体チップCPに分割し、ソーンウエハSWを作成する、ソーンウエハ形成工程を有する。
【0040】
リング準備工程で準備するリングRGは、
図5に示すように平面形状が環状の支持枠であって、
図6に示すように上面RGtおよび上面RGtの反対側の下面RGbを有する。また、リングRGに貼り付けられるダイシングテープDTは、樹脂フィルムであって、一方の面に粘着材料を含む粘着層が形成された粘着面(接着面、上面)ADfを有する。一方、粘着面の反対側の下面DTbの粘着性は、粘着面よりも低くなっている。
【0041】
ダイシングテープDTの粘着面ADfに半導体ウエハWHやリングRGを密着させると、粘着面ADfの粘着力によって、半導体ウエハWHやリングRGが接着される。
図6に示す例では、ダイシングテープDTの粘着面ADfはリングRGの下面RGbに貼り付けられている。
【0042】
また、ダイシングテープDTの基材は樹脂フィルムなので、力を加えることにより、基材がある程度伸縮する。このため、リングRGの下面RGbにダイシングテープDTを貼り付ける際に、ダイシングテープDTを引っ張りながら貼り付けて、半導体ウエハWHとの対向面に、弛みや皺が形成されないようにすることが好ましい。
【0043】
また、粘着面ADfに配置される粘着材料は、例えば紫外線硬化性の樹脂を含む。このため、ダイシングテープDTに貼り付いた半導体チップCP(
図7参照)をピックアップする時には、ダイシングテープDTに紫外線を照射した後、半導体チップCPをピックアップする。これにより、半導体チップCPとダイシングテープDTとを容易に剥離させることができる。
【0044】
次に、ウエハ接着工程では、
図6に示すように、半導体ウエハWHの主面CPbとダイシングテープDTの粘着面ADfとを接着し、半導体ウエハWHを、ダイシングテープDTを介してリングRGに固定する。
図6に示すように、半導体ウエハWHの主面CPb側をダイシングテープDTに貼り付けた場合、回路形成面側の主面CPtは、露出する。
【0045】
次に、ソーンウエハ形成工程では、
図7に示すように、ダイシングラインDCpに沿って半導体ウエハWHを切断する。例えば
図7に示す例では、切削加工治具であるブレード(ダイシングブレード)DBを用いてダイシングラインDCpを切削加工することで、デバイス領域DVpごとに半導体ウエハWHを分割する。ブレードDBは、円盤形状の板状部材であって、円盤の周縁部に、砥粒が形成されている。この円盤状のブレードDBを円盤の円周方向に回転させながら、ダイシングラインDCpに沿って移動させると、半導体ウエハWHが切断される。この時、半導体ウエハWHはダイシングテープDTに貼り付けられているので、半導体ウエハWHを固定した状態で、切削加工を施すことができる。また、切断後の半導体チップCPの主面CPbは、それぞれダイシングテープDTに貼り付いているので、ダイシング後の半導体チップCPが周囲に飛び散ることを防止できる。
【0046】
また、半導体ウエハWHを分割した後は、洗浄工程を行って、切削屑を除去する。この洗浄工程では、半導体ウエハWHの構成部分のうち、半導体チップCP以外の部分(例えば周縁部の端材など)を切削屑とともに取り除いても良い。この場合、例えば、取り除く部分に選択的に紫外線を照射する。これにより半導体チップCPはダイシングテープDTから剥離せず、かつ、除去対象の端材を選択的にダイシングテープDTから剥離させることができる。
【0047】
以上の各工程により、
図8に示すソーンウエハ(半導体装置)SWが作成される。
図8に示すソーンウエハSWは、複数の半導体チップCPがダイシングテープDTに貼り付いた状態でリングRGに保持される、リング付切断済半導体ウエハである。
【0048】
次に、
図3に示すケース準備工程では、
図9に示すように、ソーンウエハSWを収納する梱包ケースSPを準備する。
図9は、
図8に示すソーンウエハを梱包ケースに収容する様子を示す組立斜視図である。また、
図10は、
図9に示す梱包ケースの蓋部を上方から視た平面図である。また、
図11は、
図9に示す梱包ケースの本体部を上方から視た平面図である。また、
図12は、
図10および
図11のA−A線に沿った断面において、梱包ケースにソーンウエハが梱包された状態を示す断面図である。また、
図13は、
図10および
図11のB−B線に沿った断面において、梱包ケースにソーンウエハが梱包された状態を示す断面図である。
【0049】
なお、
図10および
図11では、梱包ケースSPとソーンウエハSWの平面的な位置関係を示すため、
図10では蓋部SP1に覆われるソーンウエハSWを点線で示し、
図11では本体部SP2のうち、ソーンウエハSWに覆われる部分を点線で示す。また、
図12および
図13では、梱包ケースSPの内部空間と外部空間との間で、気体GS1、GS2を通気可能にするための通気経路を二点鎖線で模式的に示す。
【0050】
また、
図3に示すケース収納工程では、梱包ケースSPにソーンウエハSWを収容する。梱包ケースSPは、
図9に示すように蓋部(第1ケース部)SP1と本体部(第2ケース部)SP2との間に、ソーンウエハSWを挟んで収容する、ソーンウエハ搬送用の収納容器である。
【0051】
ここで、ソーンウエハを搬送する途中で、半導体チップCP(
図8参照)が損傷することを防止する観点から、ケース内で半導体チップCPが動かないように固定することが好ましい。ソーンウエハSWの複数の半導体チップCPは、上記したように、ダイシングテープDT(
図8参照)を介してリングRG(
図8参照)に支持されている。したがって、リングRGを固定すれば、半導体チップCPが搬送中に動いてしまうことを防止できる。
【0052】
本実施の形態では、
図11に示すように本体部SP2は、ソーンウエハSWを収容する凹部DM2、および凹部DM2に形成された複数の支持部STG1を備える。ソーンウエハSWは、本体部SP2に形成された凹部DM2に収容される。また、支持部STG1は、凹部DM2の底面に対して上方に盛り上がった部分(盛り上がり部)である。ソーンウエハSWを凹部DM2内に配置すると、
図6に示すリングRGの下面RGbに貼り付けられたダイシングテープDTの下面DTb、すなわち、ソーンウエハSWの下面SWbの周縁部は、支持部STG1と接触する。言い換えれば、支持部STG1は、ソーンウエハSWの一部と接触して支持する支持面を有する。
【0053】
一方、
図12に示すように、蓋部SP1は複数の半導体チップCPを覆う凹部DM1、および凹部DM1の外側において、ソーンウエハSWのリングRGの上面RGtを押さえるリング押さえ部HDR1を有する。リング押さえ部HDR1は、リングRGの上面RGtと接触する位置に形成され、リングRGを上面RGt側から押圧することによりリングRGを固定する。
【0054】
また、梱包ケースSPは、蓋部SP1と本体部SP2とを重ねあわせることで、内部に形成された空間の気密性を向上させることができる。詳しくは後述するが、蓋部SP1と本体部SP2との間に形成される内部空間と梱包ケースSPの外部空間との間での気体の出入りは、意図的に形成された複数の通気経路を介しての出入りが主要経路になる。このように、梱包ケースSPの気密性を向上させることで、梱包ケースSP内に異物が侵入することを抑制できる。このため、異物により半導体チップCPが汚染されることを抑制できる。
【0055】
また、梱包ケースSPが、ソーンウエハSWを収容する前に、予め清浄な状態になるように、洗浄などの作業を行っても良い。これにより、梱包ケースSP内に収容された複数の半導体チップCPに異物が付着する可能性を低減できる。
【0056】
ところで、本実施の形態に対する変形例として、梱包ケースSP内に複数枚のソーンウエハSWを積層して収容する実施態様も可能である。ただしこの場合、積層したソーンウエハSW同士が接触することを避ける観点から、ソーンウエハSWの間に緩衝機能を備えるスペーサ部材を配置する必要がある。また、一つの梱包ケースSP内に収容される部品点数が増加すれば、部品同士の接触により異物が発生する懸念が増大する。したがって、異物の発生を抑制する観点からは、本実施の形態のように一つの梱包ケースSPに一枚のソーンウエハSWを収容する実施態様が特に好ましい。
【0057】
また、本実施の形態のように一つの梱包ケースSPに一枚のソーンウエハSWを収容する場合、ソーンウエハSW一枚を梱包する包装体の体積が増加する。したがって、例えば
図14に示すように、複数の梱包ケースSPを勘合させて積み重ねることが可能な構造にすれば、多数のソーンウエハSWを搬送する場合でも搬送対象物の体積を低減できる点で好ましい。
【0058】
次に、
図3に示す真空包装工程では、
図14に示すようにソーンウエハSWが収容された梱包ケースSPを梱包袋に収納し、梱包袋SBG内の気体GS1を吸気することにより、梱包ケースSP内を減圧する。
図14は、
図3に示す真空包装工程で、梱包されたソーンウエハを真空包装する様子を模式的に示す説明図である。なお、
図14では、気体GS1の流れ方向に矢印を付して模式的に示す。
【0059】
本工程では、梱包ケースSPが収容された梱包袋SBG内が真空引きされた状態で梱包袋SBGをシールする、所謂、真空包装を行う。なお、上記した「真空」の状態とは、気密空間中の大気を排出することにより減圧された状態の意味であって、気体が存在しない絶対真空の状態には限定されない。
【0060】
真空包装工程は、
図14に模式的に示すように、例えば、内部を減圧状態にすることができる減圧容器である真空チャンバVC内に、梱包ケースSPが収容された梱包袋SBGを配置して行う。真空チャンバVCには、真空ポンプVPが接続されており、チャンバVC内の空間の気体GS1を強制的に外部に排出することができる。また、真空チャンバVCには、例えば熱により梱包袋SBGの一部を溶融させてシールする、シール装置HSが設けられる。真空包装工程では、真空チャンバVC内で梱包袋SBGおよび梱包ケースSPの内部が真空引きされた状態で、梱包袋SBGをシールして、梱包袋SBGの内部を密封する。
【0061】
図14に示すように、強制的に、気体GS1を排出する方式の場合、梱包ケースSPの内部空間と外部空間の間に隙間が生じていれば、内部の気体を排出することができる。また、本実施の形態の場合、
図12に示すように、梱包ケースSPには、梱包ケースSPの内部空間と外部空間の間を接続する通気経路が形成されている。この場合、梱包ケースSPの内部の気体GS1を排出する時間を短縮することができる。また、梱包ケースSPの内部の気体GS1を排出する際に気体GS1の流れを制御し易くなるので、梱包ケースSPの内部空間における気圧のバランスを制御し易くなる。
【0062】
次に、
図3に示す包装体搬出工程(出荷工程ともいう)では、
図14に示す包装袋SBGを密封することにより得られる包装体SWpkgを搬出する。包装体SWpkg内のソーンウエハSWは、真空包装された状態で梱包ケースSP内に固定されているので、搬送中に半導体チップCP(
図12)が損傷すること、あるいは酸化によって特性が劣化することを抑制できる。このような搬送方法を利用すれば、例えば、半導体チップCPを製造する工程(ウエハ工程)と、半導体パッケージを組み立てる工程(組立工程)と、を互いに異なる場所で行うことができる。
【0063】
なお、例えば、ウエハ工程と、組立工程を異なる事業者が行う場合、
図14に示す包装体SWpkgは、複数の半導体チップCP(
図12参照)が真空包装された、半導体装置の製品と見做すこともできる。
【0064】
<組立工程>
次に、
図3に示す組立工程について説明する。
図15は、
図3に示す包装開封工程で、梱包袋の密封状態を開封する様子を模式的に示す説明図である。また、
図16は、
図10に示す梱包ケースが有する通気経路を模式的に示す平面図である。また、
図17は、
図11に示す梱包ケースが有する通気経路を模式的に示す平面図である。
【0065】
図3に示す基材準備工程では、
図12に示す半導体チップCPが搭載される基材を搭載する。本実施の形態では、
図1および
図2に示す配線基板2を基材として準備する。なお、本実施の形態では、説明を単純化するために、
図1および
図2に示す配線基板2に半導体チップCPを搭載する実施態様について説明する。しかし、変形例としては、配線基板2に相当する複数の製品形成領域を備える、所謂多数個取り基板を準備して、複数の半導体装置を一括して組立てた後、製品形成領域毎に個片化する方法もある。この場合、組立工程を効率化することができる。
【0066】
また、
図3に示す包装体受入工程では、
図14に示す包装体SWpkgを受け入れる。次に、
図3に示す包装開封工程では、
図14に示す包装体SWpkgの密封状態を開封して、梱包ケースSPからソーンウエハSWを取り出す。
【0067】
包装開封工程には、梱包袋SBGの密封状態を開封することにより、梱包ケースSP内の圧力を上昇させる工程、および、梱包ケースSPからソーンウエハSWを取り出す工程が含まれる。
図15に示す例では、清浄度が管理されたクリーンルームCR内で、梱包袋SBGの一部が切断される。これにより、梱包袋SBGの密封状態が開封され、クリーンルームCR内の気体(例えば大気)GS2が梱包袋SBG内に流入する。また、梱包ケースSPは、完全に密封された状態ではないので、梱包袋SBG内に流入した気体GS2は、梱包ケースSPの内部に侵入し、梱包ケースSP内の圧力が上昇する。
【0068】
ここで、本願発明者が検討した所、ソーンウエハSWの梱包ケースSPの構造によっては、包装開封工程において、梱包ケースSP内でソーンウエハSWの個々の半導体チップCPが損傷する懸念があることが判った。
【0069】
例えば、
図20に示す検討例の梱包ケースSPh1の場合、蓋部SP1に形成されたリング押さえ部HDRhが、複数の半導体チップCPの周囲を連続的に囲むように形成されている点で、
図10に示す本実施の形態の梱包ケースSPと相違する。また、梱包ケースSPh1は、凹部DM1とソーンウエハSWの上面SWtにより形成される空間SPC1と梱包ケースSPh1の外部空間を接続する通気経路が形成されていない点で、
図10に示す本実施の形態の梱包ケースSPと相違する。
図20に示す変形例の場合、リング押さえ部HDRhと、リングRGの上面RGtとが全周に亘って連続的に接触する。このため、凹部DM1とソーンウエハSWの上面SWtにより形成される空間SPC1は、気密空間になり、外部空間との間での気体の出入りが行い難い状態になる。
【0070】
上記した真空包装工程において、空間SPC1の内部圧力が常圧状態(例えば、101.325kPa)から減圧状態に移行する際には、空間SPC1内の気体は僅かな隙間からでも排出され易い。このため、リング押さえ部HDRhが、複数の半導体チップCPの周囲を連続的に囲むように形成されていても、空間SPC1を減圧状態にすることは可能である。
【0071】
しかし、包装開封工程において、空間SPC1の内部圧力が減圧状態から常圧状態に移行する際には、空間SPC1の内圧と外部空間との圧力差に起因する外力により、蓋部SP1のリング押さえ部HDRhがリングRGに押し付けられる。このため、リング押さえ部HDRhが、複数の半導体チップCPの周囲を連続的に囲むように形成されている場合、空間SPC1に気体が流入する経路が形成され難い。
【0072】
また、梱包ケースSPh1の本体部SP2には、凹部DM2が形成され、凹部DM2とソーンウエハSWの下面SWbにより空間SPC2が形成される。また、本体部SP2には、凹部DM2に連通し、外部と梱包ケースSP内の気体GS2(例えば空気)を通気可能にする(出し入れ可能にする)通気経路VTR2が形成されている。
【0073】
このため、上記した真空包装工程では、空間SPC2内の気体GS1は、通気経路VTR2を介して梱包ケースSPh1の外部に排出される。一方、包装開封工程では、梱包ケースSPh1の外部空間の気体GS2が通気経路VTR2を介して空間SPC2内に流入する。
【0074】
このように空間SPC1には気体GS2が流入し難く、かつ、空間SPC2には気体GS2が流入し易い場合、空間SPC2の内部圧力が空間SPC1の内部圧力よりも大きくなる。この時、ソーンウエハSWの複数の半導体チップCPに貼り付けられたダイシングテープDTは樹脂テープなので、空間SPC1と空間SPC2との圧力差が大きくなると、圧力差に起因した外力に押されて変形する。例えば、
図20に示すように、空間SPC2の内部圧力が相対的に大きくなると、ダイシングテープDTは、複数の半導体チップCPを上方に押し上げるように変形する。そして、ダイシングテープDTの変形の程度によっては、
図20に示すように、半導体チップCPの主面CPtが蓋部SP1h1の凹部DM1の内面に接触する場合がある。
【0075】
上記したように、半導体チップCPの主面CPtは、回路形成面側に配置される面であり、主面CPtが他の部材と接触すると、半導体チップCPに形成された回路が損傷する懸念がある。特に、本実施の形態の半導体チップCPのように、主面CPt側に形成された複数のイメージセンサ素子(受光素子)を有する、所謂、イメージセンサチップの場合、主面CPtが損傷すると、受光機能の低下の原因になる。
【0076】
また、
図20に示す梱包ケースSPh1とは別の検討例として、凹部DM2に連通する通気経路VTR2を形成しなかった場合には、空間SPC1および空間SPC2の両方が気密状態になるので、ダイシングテープDTの変形は抑制できる。しかし、この場合、空間SPC1および空間SPC2の両方に気体GS2が流入し難くなり、梱包ケースの内部が減圧状態で維持されるので、蓋部SP1と本体部SP2を引き剥がすことが困難になる。
【0077】
ここで、本実施の形態の梱包ケースSPは、
図16に示すように、蓋部SP1の凹部DM1に連通する、通気経路VTR1を有する。
図13に示すように通気経路VTR1は、ソーンウエハSWの上面SWtおよび下面SWbのうち、複数の半導体チップCPが保持される上面SWt側の空間SPC1と外部空間とを接続する。つまり、梱包ケースSPの蓋部SP1の凹部DM1内の空間SPC1は、通気経路VTR1を介して、梱包ケースSPの外部空間との間で気体GS2を通気することが可能である。
【0078】
図13および
図16に示す例では、通気経路VTR1は、空間SPC2(
図13参照)と外部空間を連通する通気経路VTR2と接続されている。包装開封工程では、梱包ケースSPの外部空間の気体GS2は、通気経路VTR2および通気経路VTR1を通って蓋部SP1の凹部DM1内の空間SPC1に供給される。また、包装開封工程では、梱包ケースSPの外部空間の気体GS2は、通気経路VTR2を通って
図13に示す本体部SP2の凹部DM2内の空間SPC2に供給される。
【0079】
本実施の形態のように、蓋部SP1の凹部DM1に連通する通気経路VTR1を介して、梱包ケースSPの外部と凹部DM1内の空間SPC1とを接続することで、包装開封工程において、空間SPC1内に安定的に気体GS2を供給することができる。このため、
図13に示す空間SPC1と空間SPC2の間で圧力差が生じることを抑制し、圧力差に起因するダイシングテープDTの変形を抑制することができる。この結果、ダイシングテープDTに貼り付けられた複数の半導体チップCPが蓋部SP1と接触して損傷することを抑制できる。
【0080】
また、本実施の形態に対する変形例として、通気経路VTR1と通気経路VTR2とを互いに接続せず、それぞれ独立して形成することができる。ただし、空間SPC1と空間SPC2との圧力差を低減する観点からは、本実施の形態のように、通気経路VTR1と通気経路VTR2とを互いに接続することが好ましい。通気経路VTR1と通気経路VTR2とを互いに接続すれば、空間SPC1および空間SPC2のうち、いずれか一方の圧力が上昇すると、他方への気体GS2の流入量が増加するので、圧力差を低減できる。
【0081】
また、
図16に示すように、本実施の形態の梱包ケースSPの蓋部SP1は、凹部DM1の外側において、ソーンウエハSWのリングRGを押圧してリングRGを固定するリング押さえ部HDR1を有する。また、平面視において、通気経路VTR1は、リングRGの内側の空間とリングRGの外側の空間とを連通する。つまり、通気経路VTR1は、凹部DM1に覆われた複数の半導体チップCP上には形成されず、複数の半導体チップCPの周囲に形成されている。このような構造の場合、包装開封工程において、
図16に示すように外部空間から気体GS2が空間SPC1に流入する際に、半導体チップCPに気体GS2が直接的に吹き付けられることを防止できる。このため、半導体チップCPに異物が付着することを抑制できる。
【0082】
また、
図16に示すように、本実施の形態の梱包ケースSPは、凹部DM1の周囲に複数の通気経路VTR1を有している。この場合、通気経路VTR1の断面積を増大させることができるので、通気経路VTR1を通過する気体GS2の流速を低下させることができる。これにより、気体GS2により異物が半導体チップCPまで搬送される可能性をさらに低減できる。
【0083】
また、
図16に示すように、本実施の形態の梱包ケースSPは、凹部DM1の周囲に複数のリング押さえ部HDR1が形成されている。このように、凹部DM1の周囲において複数箇所でリングRGを押さえることにより、リングRGの固定強度を向上させることができる。そしてリングRGを固定する強度を向上させれば、搬送中にリングRGが動いて半導体チップCPが損傷することを抑制できる。
【0084】
また、
図16に示す例では、平面視において、通気経路VTR1は、リング押さえ部HDR1の一部を貫通するように、凹部DM1内の空間とリング押さえ部HDR1の外側の空間とを連通する。つまり、通気経路VTR1と厚さ方向に重なる位置では、
図13に示すようにリングRGの上面RGtが蓋部SP1と接触しない。言い換えれば、通気経路VTR1の部分では、蓋部SP1を構成する部材は、通気経路VTR1を覆うようにドーム状に形成されている。更に言い換えれば、リング押さえ部HDR1のリングRGと接触する部分に形成された凹部が第1通気経路VTR1となっている。このように通気経路VTR1をドーム状に形成する場合、蓋部SP1を製造する際に、成形金型により容易に形成することができる。
【0085】
また、本実施の形態に対する変形例としては、
図12に示す本体部SP2に凹部DM2を形成しない実施態様も考えられる。この場合、ソーンウエハSWの下面SWb、すなわち、ダイシングテープDTの下面DTbの全体が、本体部SP2と接触する構造になる。ただし、本体部SP2に凹部DM2を形成しない場合、真空包装によって、ソーンウエハSWと本体部SP2とが密着し、引き剥がし難くなる場合がある。したがって、ソーンウエハSWと本体部SP2を引き剥がし易くする観点からは、本実施の形態のように、本体部SP2には、ソーンウエハSWの下面SWb側を覆う凹部DM2が形成されていることが好ましい。
【0086】
また、本体部SP2とソーンウエハSWとの剥離性を向上させる観点から、本体部SP2には、凹部DM2に連通し、梱包ケースSPの外部空間と空間SPC2との間で気体の通気を可能にする通気経路VTR2が形成されていることが好ましい。なお、凹部DM2内にソーンウエハSWを収容する場合、凹部DM2の内側の寸法と、ソーンウエハSWの外形寸法を完全に一致させることは難しい。このため、ソーンウエハSWのリングRGの外縁部と凹部DM2の壁面との間には隙間が生じる。凹部DM2に連通する通気経路VTR2は、この隙間を利用しても良い。
【0087】
ただし、凹部DM2に流入する気体GS2の流量を制御する観点からは、上記隙間以外に通気経路VTR2を形成することが好ましい。例えば、本実施の形態では、
図17に示すように、凹部DM2には、ソーンウエハSWの下面SWb(
図13参照)を支持する複数の支持部STG1が形成され、ソーンウエハSWは、支持部STG1上に形成されている。したがって、複数の支持部STG1のうち、隣り合う支持部STG1の間には、気体GS2の通気が可能な空間が形成される。本実施の形態では、この複数の支持部STG1の間の空間を通気経路VTR2として利用する。
【0088】
また、
図13に示すように、本実施の形態では、梱包ケースSPの外部空間と凹部DM1内の空間SPC1とを接続する通気経路中に、通気経路の断面積が局所的に大きくなる空間SPC3が設けられている。本実施の形態の例では、
図17に示すように平面視において四角形を成す本体部SP2の四つの角部には、凹部DM2よりも更に深く窪んだ凹部DM3がそれぞれ形成されている。
図13に示すように、凹部DM3と蓋部SP1に囲まれた空間SPC3では、通気経路VTR1の他の部分と比較して、通気経路の断面積が相対的に大きくなっている。
【0089】
このように、通気経路中に、通気経路の断面積が局所的に大きくなる空間SPC3が設けられている場合、空間SPC3では気体GS2の流速が遅くなる。このため、包装開封工程において、空間SPC1に向かって気体GS2を流入させる場合、気体GS2に異物が含まれていた場合でも、空間SPC3を通過させることにより、異物を空間SPC3内に落下させることができる。つまり、通気経路中に、通気経路の断面積が局所的に大きくなる空間SPC3が設けられていることにより、空間SPC1への異物の流入を抑制することができる。
【0090】
また、複数の半導体チップCPが保持される空間SPC1への気体GS2の流入速度を低減する観点からは、
図12に示す空間SPC1の容積を空間SPC2の容積よりも小さくすることが好ましい。
【0091】
また、
図12および
図13に示すように、本体部SP2の凹部DM2には、複数の半導体チップCPの厚さ方向において、ダイシングテープDTに貼り付けられた複数の半導体チップCPと重なる位置に、支持部STG2が形成されている。支持部STG2は、凹部DM2の底面に対して上方に盛り上がった部分(盛り上がり部)である。また、支持部STG2の上面の高さは、
図13に示す複数の支持部STG1の支持面の高さと同じ高さになっており、ダイシングテープDTの下面DTbは、支持部STG2の上面と接触する。言い換えれば、支持部STG2は、ソーンウエハSWのうち、複数の半導体チップCPが貼りついている領域のダイシングテープDTの下面DTbと接触して支持する支持面を有する。
【0092】
このように、複数の半導体チップCPの下方に支持部STG2を設けることにより、仮に、空間SPC1の圧力が空間SPC2の圧力よりも大きくなった場合でも、ダイシングテープDTが下方に変形することを抑制できる。
【0093】
半導体チップCPは、ソーンウエハSWの上面SWt側に保持されているので、ダイシングテープDTが下方に向かって変形しても半導体チップCPは梱包ケースSPには接触し難い。しかし、ダイシングテープDTが下方に向かって変形する際に、半導体チップCPがダイシングテープDTから剥離してしまうことを抑制する観点からは、ダイシングテープDTが下方に向かって変形することを抑制することが好ましい。
【0094】
図3に示す包装開封工程が終わると、梱包ケースSPから取り出されたソーンウエハSWは、
図3に示すダイボンド工程を行う場所に搬送される。ダイボンド工程では、
図2に示すように、半導体チップCPを基材である配線基板2のチップ搭載面に搭載する。この時、
図8に示すソーンウエハSWのダイシングテープDTに例えば紫外線を照射することで、ダイシングテープDTの粘着層に含まれる、紫外線硬化性樹脂成分を硬化させる。これにより、半導体チップCPをダイシングテープDTから容易にピックアップすることが可能になる。
【0095】
また、
図2に示す例では、半導体チップCPは、主面CPbが配線基板2の上面2tと対向配置された状態で、配線基板2上に搭載される。このような搭載方式は、フェイスアップ実装方式と呼ばれる。なお、
図2では、基材の例として配線基板2を挙げているので、本工程では、配線基板2に半導体チップCPを搭載するが、基材には種々の変形性がある。例えば、ダイパッド(チップ搭載部)およびダイパッドと離間して設けられた複数のリードを有するリードフレームを基材として利用する場合、本工程では、チップ搭載部であるダイパッドに半導体チップCPを搭載することになる。
【0096】
次に、ワイヤボンド工程では、
図2に示すように、複数のワイヤBWを介して半導体チップCPと配線基板2とを電気的に接続する。
図2に示す例ではワイヤBWの一方の端部を半導体チップCPのパッドPDに接合した後、ワイヤBWの他方の端部を、配線基板2の端子2BFに接合する。
【0097】
次に、カバー搭載工程では、
図2に示すように、半導体チップCPおよび複数のワイヤBWを覆うカバー部材CGを配線基板2上に搭載し、複数のワイヤBWを保護する。なお、本実施の形態では、半導体チップCPの用途の都合上、半導体チップCPに光を照射する必要があるので、カバー部材CGを搭載する例を示している。しかし、半導体チップCPが樹脂で覆われていても良い場合には、半導体チップCPおよび複数のワイヤBWを樹脂で封止しても良い。
【0098】
次にボール搭載工程では、
図2に示すように、配線基板2の実装面である下面2b側に、複数の半田ボールSBを取り付ける。本工程では、配線基板2の上下を反転させて、配線基板2の下面2bに形成されたランド2LDの露出面に半田ボールSBを配置する。そして、配線基板2に対してリフロー処理(加熱して半田成分を溶融接合させた後、冷却する処理)を施すことにより半田ボールSBが取り付けられる。
【0099】
以上の各工程により、
図1および
図2を用いて説明した半導体パッケージPKG1が得られる。その後、外観検査や電気的試験など、必要な検査を行い、出荷、あるいは、図示しない実装基板に実装する。
【0100】
なお、上記した包装開封工程で説明した課題は、真空包装された梱包袋SBGを開封することにより顕在化する課題である。ただし、ソーンウエハSWを真空包装した包装体は、これを開封した後で半導体チップCPを利用することを前提として真空包装するものである。したがって、上記ウエハ工程で説明した真空包装を行った段階で、潜在的な課題が生じるものである。言い換えれば、本実施の形態によれば、ウエハ工程において、潜在的な課題が解決された状態で真空包装が行われる。
【0101】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。上記実施の形態の説明中にも種々の変形例について説明したが、以下では、上記以外の代表的な変形例について説明する。
【0102】
<変形例1>
例えば、上記実施の形態では、半導体チップの例として、平面視において、主面CPt側にイメージセンサ素子LSEが形成された半導体チップCPを例示的に取り上げた。イメージセンサ素子LSEが形成されている場合、イメージセンサ素子LSEが損傷すると、半導体チップCPの特性低下の原因になるので、特に上記実施の形態で説明した方法が有効である。しかし、主面CPt側にイメージセンサ素子LSEなどが形成されていない半導体チップに適用しても良い。例えば、半導体チップの主面CPtが保護膜に覆われている場合でも、
図1に示す複数のパッドPDは保護膜から露出させる必要がある。この場合、パッドPDが損傷すると、半導体チップの電気的特性が低下する原因になる。
【0103】
<変形例2>
また、上記実施の形態では、
図12に示すようにリング押さえ部HDR1のリングRGと接触する面、すなわち、リング押さえ面HDR1bが平坦な面となっている実施態様について説明した。しかし、変形例として、
図18に示すリング押さえ部HDR3のリング押さえ面HDR3bのように複数の突起部BPを有する凹凸面であっても良い。リング押さえ部HDR3のように複数の突起部BPをリングRGの上面RGtと接触させてリングRGを押さえる構造の場合、隣り合う突起部BPの間の隙間が、凹部DM1に連通する通気経路として機能する。この場合、
図10に示すような通気経路VTR1を設けられていない場合でも、包装開封工程において、空間SPC1内に気体GS2を流入させることができる。
【0104】
ただし、複数の突起部BPをリングRGと接触させる構造の場合、リングRGと突起部BPの摩擦により発塵の可能性がある。したがって、発塵を抑制する観点からは、
図12に示すリング押さえ部HDR1のリング押さえ面HDR1bのように平坦面であることが好ましい。
【0105】
<変形例3>
また、上記実施の形態では、複数の半導体チップCPの主面CPtが露出した状態でソーンウエハSWを梱包ケースSP内に収容する実施態様について説明した。しかし、
図19に示す変形例のように、複数の半導体チップCPの主面CPtを覆う保護テープMTをソーンウエハSWの上面SWt側に貼り付けても良い。この場合、複数の半導体チップCPの主面CPtが保護テープMTにより覆われるので、さらに損傷し難くなる。
【0106】
図19に示すように、ソーンウエハSWの上面SWt側に保護テープMTを貼り付ける場合には、
図3に示すダイシング工程の後、かつ、ケース収納工程の前に貼り付けることが好ましい。
【0107】
また、
図19に示す例では、複数の半導体チップCPに保護テープMTを貼り付けて、リングRGの上面RGtは保護テープMTから露出している。しかし、
図19に対する更なる変形例としては、複数の半導体チップCPおよびリングRGの上面RGtを覆うように、保護テープMTを貼り付けても良い。
【0108】
ただし、リングRGの厚さと半導体チップCPの厚さとが異なる場合でも半導体チップCPの主面CPtに保護テープMTを確実に貼り付ける観点からは、リングRGの上面RGtは保護テープMTから露出させることが好ましい。
【0109】
<変形例4>
また、上記実施の形態では、半導体パッケージの例として、半導体チップCPを基材である配線基板2上に搭載した半導体パッケージを例示的に取り上げて説明した。しかし、半導体パッケージの構造には種々の変形例がある。例えば、基材としてチップ搭載部の隣に、複数のリードが形成されたリードフレームを用いた半導体パッケージであっても良い。
【0110】
<変形例5>
また、上記実施の形態で説明した技術思想の要旨を逸脱しない範囲内において、変形例同士を組み合わせて適用することができる。