(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0015】
また、符号「
−」および「
+」は、導電型がn型またはp型の不純物の相対的な濃度を表しており、例えばn型不純物の場合は、「n
−」、「n
+」の順に不純物濃度が高くなる。
【0016】
本実施の形態および以下の実施の形態の半導体装置は、不揮発性メモリ(不揮発性記憶素子、フラッシュメモリ、不揮発性半導体記憶装置)を備えた半導体装置である。本実施の形態では、不揮発性メモリは、nチャネル型MISFET(MISFET:Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)を基本としたメモリセルをもとに説明を行う。
【0017】
また、本実施の形態および以下の実施の形態での極性(書込・消去・読出時の印加電圧の極性やキャリアの極性)は、nチャネル型MISFETを基本としたメモリセルの場合の動作を説明するためのものであり、pチャネル型MISFETを基本とする場合は、印加電位やキャリアの導電型等の全ての極性を反転させることで、原理的には同じ動作を得ることができる。また、本願では、金属膜と半導体膜とが反応して形成されたシリサイド層と半導体膜とを区別して説明する。つまり、本願でいうシリサイドは、金属とシリコンとの化合物であり、半導体ではない。
【0018】
<半導体装置の製造方法について>
本実施の形態の半導体装置の製造方法を、
図1〜
図22を参照して説明する。
【0019】
図1〜
図22は、本実施の形態の半導体装置の製造工程中の断面図である。
図1〜
図22においては、各図の左側にメモリセル領域1Aを示し、右側に周辺回路領域1Bを示している。メモリセル領域1Aには不揮発性メモリのメモリセルが、周辺回路領域1BにはMISFETが、それぞれ形成される様子を示す。
【0020】
ここでは、メモリセル領域1Aにnチャネル型のMISFET(制御トランジスタおよびメモリトランジスタ)からなるメモリセルを形成する場合について説明するが、導電型を逆にしてpチャネル型のMISFET(制御トランジスタおよびメモリトランジスタ)からなるメモリセルをメモリセル領域1Aに形成することもできる。同様に、ここでは、周辺回路領域1Bにnチャネル型のMISFETを形成する場合について説明するが、導電型を逆にしてpチャネル型のMISFETを周辺回路領域1Bに形成することもできる。
【0021】
また、周辺回路領域1Bに、nチャネル型のMISFETとpチャネル型のMISFETの両方、すなわちCMISFETを形成することもできる。また、本実施の形態では、周辺回路領域1Bに比較的低耐圧のMISFETを形成することについて説明するが、周辺回路領域1Bには、当該低耐圧のMISFETに比べてゲート長、またはゲート絶縁膜の厚さなどに違いのある、高耐圧のMISFETも形成される。
【0022】
半導体装置を製造工程においては、まず、
図1に示すように、例えば1〜10Ωcm程度の比抵抗を有するp型の単結晶シリコン(Si)などからなる半導体基板(半導体ウエハ)SBを用意する。それから、半導体基板SBの主面に、活性領域を規定する複数の素子分離領域STを形成する。
【0023】
素子分離領域STは、酸化シリコンなどの絶縁体からなり、例えばSTI法またはLOCOS法などにより形成することができる。ここでは、STI法により素子分離領域を形成することについて説明する。
【0024】
すなわち、半導体基板SB上に順に酸化シリコン膜および窒化シリコン膜を順に積層した後、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング法を用いて窒化シリコン膜および酸化シリコン膜をエッチングし、さらに半導体基板SBの上面に溝を形成する。当該溝は複数形成される。
【0025】
続いて、それらの溝内に、例えば酸化シリコンからなる絶縁膜を埋め込んだ後、研磨工程などにより、半導体基板SB上の各絶縁膜を除去することで、複数の素子分離領域STを形成する。素子分離領域STは、例えばメモリセル領域1Aと周辺回路領域1Bとの間と、周辺回路領域1B内に形成するMISFET同士の間とに形成されている。これにより
図1に示す構造を得る。
【0026】
次に、図示は省略するが、メモリセル領域1Aおよび周辺回路領域1Bの半導体基板SBの主面にp型ウエルを形成する。p型ウエルは、例えばホウ素(B)などのp型の不純物を半導体基板SBにイオン注入することなどによって形成することができる。なお、メモリセル、高耐圧のMISFETまたは低耐圧のMISFETなどのそれぞれの形成領域において形成するp型ウエルは、同じイオン注入工程で形成することもできるが、各素子の特性の最適化のため、それぞれの領域において、異なるイオン注入工程で形成することも可能である。
【0027】
次に、
図2に示すように、半導体基板SBの主面に、ゲート絶縁膜用の絶縁膜IF1を形成する。すなわち、メモリセル領域1Aおよび周辺回路領域1Bの半導体基板SBの上面上に絶縁膜IF1を形成する。絶縁膜IF1としては、例えば酸化シリコン膜を用いることができる。メモリセル領域1Aおよび周辺回路領域1Bのそれぞれの絶縁膜IF1は、別々の工程で形成することで、互いに異なる膜厚で形成してもよい。
【0028】
その後、絶縁膜IF1の上面を覆うように、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて、半導体基板SB上に多結晶シリコン膜からなるシリコン膜PS1を形成する。成膜時はシリコン膜PS1をアモルファスシリコン膜として形成してから、その後の熱処理で、アモルファスシリコン膜からなるシリコン膜PS1を、多結晶シリコン膜からなるシリコン膜PS1に変えることもできる。また、シリコン膜PS1は、成膜時に不純物を導入するか、あるいは成膜後に不純物をイオン注入することなどにより、低抵抗の半導体膜(ドープトポリシリコン膜)とすることができる。シリコン膜PS1に導入するn型不純物としては、例えばリン(P)を好適に用いることができる。
【0029】
その後、シリコン膜PS1上に、例えばCVD法を用いて絶縁膜IF2を形成する。絶縁膜IF2は例えば窒化シリコン(SiN)からなるキャップ絶縁膜である。絶縁膜IF2の膜厚は、例えば20〜50nm程度とすることができる。
【0030】
次に、
図2に示すように、メモリセル領域1Aの絶縁膜IF2、シリコン膜PS1および絶縁膜IF1からなる積層膜を、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術によりパターニングする。これにより、メモリセル領域1Aでは、絶縁膜IF1からなるゲート絶縁膜GIが形成される。また、このエッチング工程により、メモリセル領域1Aのシリコン膜PS1からなる制御ゲート電極CGが形成される。制御ゲート電極CGは、後の工程でシリサイド化されることで制御ゲート電極となるパターンである。制御ゲート電極CGは、平面視において所定の方向に延在するパターンである。当該所定の方向、つまりゲート幅方向とは、
図2の奥行き方向である。
【0031】
上記のパターニング工程は、例えば次のようにして行うことができる。すなわち、メモリセル領域1Aの絶縁膜IF2、シリコン膜PS1および絶縁膜IF1を、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング法を用いて加工する。これにより、制御ゲート電極CGおよびゲート絶縁膜GIを形成する。なお、最初にメモリセル領域1Aの絶縁膜IF2をフォトリソグラフィ技術およびドライエッチング法を用いて加工し、その後に絶縁膜IF2をマスクとして、シリコン膜PS1および絶縁膜IF1を加工することも可能である。
【0032】
次に、
図3に示すように、フォトリソグラフィ技術およびウェットエッチング法を用いて、周辺回路領域1Bの絶縁膜IF2を除去する。これにより、周辺回路領域1Bのシリコン膜PS1の上面が露出する。このとき、メモリセル領域1Aの絶縁膜IF2は除去しない。
【0033】
その後、半導体基板SBの主面全面上に、メモリトランジスタのゲート絶縁膜用のONO(oxide-nitride-oxide)膜ONを形成する。ONO膜ONは、メモリセル領域1Aの半導体基板SBの上面と、ゲート絶縁膜GI、IF2および制御ゲート電極CGからなる積層膜の側壁および上面とを覆い、周辺回路領域1Bの絶縁膜IF1およびシリコン膜PS1を含む積層膜の側壁および上面を覆っている。
【0034】
ONO膜ONは、内部に電荷蓄積部を有する絶縁膜である。具体的には、ONO膜ONは、半導体基板SB上に形成された酸化シリコン膜OX1と、酸化シリコン膜OX1上に形成された窒化シリコン膜NTと、窒化シリコン膜NT上に形成された酸化シリコン膜OX2との積層膜からなる。
【0035】
酸化シリコン膜OX1、OX2は、例えば酸化処理(熱酸化処理)またはCVD法あるいはその組み合わせにより形成することができる。この際の酸化処理には、ISSG(In-Situ Steam Generation)酸化を用いることも可能である。窒化シリコン膜NTは、例えばCVD法により形成することができる。
【0036】
本実施の形態においては、メモリセルを構成し、トラップ準位を有する絶縁膜(電荷蓄積層)として、窒化シリコン膜NTを形成している。電荷蓄積層として用いる膜は、信頼性の面などで窒化シリコン膜が好適であるが、窒化シリコン膜に限定されものではなく、例えば酸化アルミニウム膜(アルミナ)、酸化ハフニウム膜または酸化タンタル膜など、窒化シリコン膜よりも高い誘電率を有する高誘電率膜(高誘電率絶縁膜)を電荷蓄積層または電荷蓄積部として使用することもできる。
【0037】
酸化シリコン膜OX1の厚みは、例えば2〜10nm程度とすることができ、窒化シリコン膜NTの厚みは、例えば5〜15nm程度とすることができ、酸化シリコン膜OX2の厚みは、例えば2〜10nm程度とすることができる。
【0038】
続いて、ONO膜ONの表面を覆うように、半導体基板SBの主面全面上に、例えばCVD法を用いて多結晶のシリコン膜PS2を形成する。これにより、メモリセル領域1Aにおいて露出していたONO膜ONの側壁および上面は、シリコン膜PS2により覆われる。つまり、制御ゲート電極CGの側壁には、ONO膜ONを介してシリコン膜PS2が形成される。
【0039】
シリコン膜PS2の膜厚は、例えば40nmである。成膜時はシリコン膜PS2をアモルファスシリコン膜として形成してから、その後の熱処理で、アモルファスシリコン膜からなるシリコン膜PS2を、多結晶シリコン膜からなるシリコン膜PS2に変えることもできる。シリコン膜PS2は、例えばp型の不純物(例えばホウ素(B))を比較的高い濃度で導入された膜である。シリコン膜PS2は、後述のメモリゲート電極MGを形成するための膜である。
【0040】
ここでいう膜厚とは、特定の膜の場合、当該膜の下地の表面に対して垂直な方向における当該膜の厚さをいう。例えば、ONO膜ONの上面などのように、半導体基板SBの主面に沿う面の上に、当該面に沿ってシリコン膜PS2が形成された場合、シリコン膜PS2の膜厚とは、半導体基板SBの主面に対して垂直な方向におけるシリコン膜PS2の厚さをいう。また、ONO膜ONの側壁のように、半導体基板SBの主面に対して垂直な壁に接して形成される部分のシリコン膜PS2の場合、当該側壁に対して垂直な方向におけるシリコン膜PS2の厚さをいう。
【0041】
なお、
図3では酸化シリコン膜OX1、窒化シリコン膜NTおよび窒化シリコン膜NTの3層の積層構造からなるONO膜ONを示しているが、以下の説明で用いる断面図では、図を分かりやすくするため、ONO膜ONの積層構造の図示を省略する。すなわち、ONO膜ONは積層構造を有するが、以下の説明で用いる図では、ONO膜ONを構成する膜同士の境界の図示を省略し、ONO膜ONを1つの膜として示す。
【0042】
次に、
図4に示すように、異方性エッチング技術により、シリコン膜PS2をエッチバック(エッチング、ドライエッチング、異方性エッチング)することで、ONO膜ONの上面を露出させる。当該エッチバック工程では、シリコン膜PS2を異方性エッチング(エッチバック)することにより、ゲート絶縁膜GI、IF2および制御ゲート電極CGからなる積層膜の両方の側壁上に、ONO膜ONを介して、シリコン膜PS2をサイドウォール状に残す。
【0043】
これにより、メモリセル領域1Aにおいて、上記積層膜の側壁のうち、一方の側壁に、ONO膜ONを介してサイドウォール状に残存したシリコン膜PS2からなるメモリゲート電極MGが形成される。また、上記エッチバックにより、周辺回路領域1BのONO膜ONの上面が露出する。
【0044】
続いて、フォトリソグラフィ技術を用いて、制御ゲート電極CGの一方の側壁に隣接するメモリゲート電極MGを覆い、かつ、制御ゲート電極CGの他方の側壁に隣接するシリコン膜PS2を露出するレジスト膜(図示しない)を半導体基板SB上に形成する。その後、そのレジスト膜をエッチングマスクとしてエッチングを行うことにより、制御ゲート電極CGを挟んでメモリゲート電極MGの反対側に形成されたシリコン膜PS2を除去する。その後、当該レジスト膜を除去する。このエッチング工程において、メモリゲート電極MGは、レジスト膜で覆われているため、エッチングされずに残存する。
【0045】
続いて、ONO膜ONのうち、メモリゲート電極MGで覆われずに露出する部分をエッチング(例えばウェットエッチング)によって除去する。この際、メモリセル領域1Aにおいて、メモリゲート電極MGの直下のONO膜ONは除去されずに残る。同様に、ゲート絶縁膜GI、IF2および制御ゲート電極CGを含む積層膜と、メモリゲート電極MGとの間に位置するONO膜ONは、除去されずに残る。他の領域のONO膜ONは除去されるため、メモリセル領域1Aの半導体基板SBの上面が露出し、また、上記積層膜の上面が露出し、また、周辺回路領域1Bのシリコン膜PS1の上面が露出する。また、制御ゲート電極CGの側壁であって、メモリゲート電極MGと隣接していない方の側壁が露出する。
【0046】
このようにして、制御ゲート電極CGと隣り合うように、半導体基板SB上に、内部に電荷蓄積部を有するONO膜ONを介してメモリゲート電極MGが形成される。
【0047】
次に、
図5に示すように、半導体基板SBの主面全面上に、例えばCVD法を用いて、絶縁膜IF3を形成する。絶縁膜IF3は、例えば窒化シリコン膜からなる。これにより、周辺回路領域1Bのシリコン膜PS1は、絶縁膜IF3により覆われる。また、メモリセル領域1Aのゲート絶縁膜GI、制御ゲート電極CGおよび絶縁膜IF2からなる積層膜と、当該積層膜の側壁に隣接するONO膜ONおよびメモリゲート電極MGと、メモリセル領域1Aの半導体基板SBの主面とは、絶縁膜IF3により覆われる。なお、図示はしていないが、絶縁膜IF3を形成する前に、半導体基板SBの主面全面上に、例えばCVD法を用いて酸化シリコン膜を堆積してもよい。
【0048】
続いて、フォトリソグラフィ技術を用いて、メモリセル領域1Aの絶縁膜IF3を覆うレジスト膜PR1を形成する。なお、シリコン膜PS1の上面および側壁のそれぞれに接する絶縁膜IF3はレジスト膜PR1から露出している。
【0049】
次に、
図6に示すように、レジスト膜PR1から露出する絶縁膜IF3をウェットエッチング法により除去した後、レジスト膜PR1を除去する。これにより、周辺回路領域1Bの絶縁膜IF3は除去され、シリコン膜PS1および絶縁膜IF1が露出する。
【0050】
その後、周辺回路領域1Bのシリコン膜PS1および絶縁膜IF1を、例えばウェットエッチング法を用いて除去する。このとき、メモリセル領域1Aのゲート絶縁膜GI、制御ゲート電極CGおよび絶縁膜IF2からなる積層膜と、当該積層膜の側壁に隣接するONO膜ONおよびメモリゲート電極MGとは、絶縁膜IF3により覆われているため除去されない。
【0051】
次に、
図7に示すように、半導体基板SBの主面全面上に、絶縁膜IF4、HK、金属膜TN、シリコン膜PS3および絶縁膜IF5を順に形成する。これにより、メモリセル領域1Aのゲート絶縁膜GI、制御ゲート電極CGおよび絶縁膜IF2からなる積層膜と、当該積層膜の側壁に隣接するONO膜ONおよびメモリゲート電極MGとは、絶縁膜IF3、IF4、HK、金属膜TN、シリコン膜PS3および絶縁膜IF5により覆われる。
【0052】
絶縁膜IF4は、例えば酸化シリコン膜からなり、熱酸化法などの酸化法を用いて形成することができる。絶縁膜HKは、ゲート絶縁膜用の絶縁膜である。具体的には、絶縁膜HKは、後に周辺回路領域1Bに形成するMISFETのゲート絶縁膜を構成する膜である。絶縁膜HKは、酸化シリコンおよび窒化シリコンのいずれよりも誘電率(比誘電率)が高い絶縁材料膜、いわゆるhigh−k膜(高誘電率膜)である。
【0053】
絶縁膜HKとしては、酸化ハフニウム膜、酸化ジルコニウム膜、酸化アルミニウム膜、酸化タンタル膜または酸化ランタン膜などの金属酸化物膜を用いることができ、また、これらの金属酸化物膜は、窒素(N)およびケイ素(Si)の一方または両方をさらに含有することもできる。絶縁膜HKは、例えば、ALD(Atomic layer Deposition:原子層堆積)法などにより形成することができる。絶縁膜HKの膜厚は例えば1.5nmである。ゲート絶縁膜に高誘電率膜(ここでは絶縁膜HK)を用いた場合は、酸化シリコン膜を用いた場合に比べて、ゲート絶縁膜の物理的膜厚を増加させることができるため、リーク電流を低減できるという利点を得られる。
【0054】
金属膜TNは、例えば窒化チタン膜からなり、例えばスパッタリング法により形成することができる。シリコン膜PS3はポリシリコン膜からなり、例えばCVD法により形成することができる。シリコン膜PS3の膜厚は、例えば40nmである。成膜時はシリコン膜PS3をアモルファスシリコン膜として形成してから、その後の熱処理で、アモルファスシリコン膜からなるシリコン膜PS3を、多結晶シリコン膜からなるシリコン膜PS3に変えることもできる。シリコン膜PS3は、例えばp型の不純物(例えばホウ素(B))を比較的高い濃度で導入された膜である。シリコン膜PS3は、後述のダミーゲート電極DGを形成するための膜である。絶縁膜IF5は、例えば窒化シリコンからなるキャップ絶縁膜であり、例えばCVD法により形成することができる。
【0055】
次に、
図8に示すように、フォトリソグラフィ技術によりパターニングされたレジスト膜PR2を形成する。レジスト膜PR2は、メモリセル領域1Aと周辺回路領域1Bとの境界の近傍の半導体基板SBと素子分離領域STとを露出するレジスト膜である。その後、レジスト膜PR2をマスクとしてエッチングを行うことにより、絶縁膜IF5、シリコン膜PS3、金属膜TN、絶縁膜HKおよび絶縁膜IF4を除去する。これにより、メモリセル領域1Aのシリコン膜PS3と周辺回路領域1Bのシリコン膜PS3とは、互いに分離される。
【0056】
次に、
図9に示すように、レジスト膜PR2を除去した後、半導体基板SBの主面全面上に、例えばCVD法を用いて絶縁膜IF6を形成する。絶縁膜IF6は、例えば酸化シリコン膜からなるキャップ絶縁膜である。その後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング法を用いて、メモリセル領域1Aの絶縁膜IF6を除去する。これにより、メモリセル領域1Aは絶縁膜IF6から露出し、周辺回路領域1Bの絶縁膜IF4、HK、金属膜TN、シリコン膜PS3および絶縁膜IF5は、絶縁膜IF6に覆われた状態となる。
【0057】
次に、
図10に示すように、リン酸を用いてメモリセル領域1Aの絶縁膜IF5およびシリコン膜PS3を除去した後、金属膜TN、絶縁膜HKおよびIF3を除去する。このとき、周辺回路領域1Bの半導体基板SB上の構造体はレジスト膜に覆われているため、除去されない。これにより、メモリセル領域1Aのゲート絶縁膜GI、制御ゲート電極CGおよび絶縁膜IF2からなる積層膜と、当該積層膜の側壁に隣接するONO膜ONおよびメモリゲート電極MGと、半導体基板SBの主面とが露出する。その後、周辺回路領域1Bの絶縁膜IF6を除去する。
【0058】
次に、
図11に示すように、周辺回路領域1Bの絶縁膜IF5、シリコン膜PS3、金属膜TN、絶縁膜HKおよびIF4を、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いてパターニングする。これにより、周辺回路を構成するMISFETを形成する領域に、シリコン膜PS3からなるダミーゲート電極DGと、絶縁膜HKおよびIF4からなるゲート絶縁膜とを形成する。ここでは、まず絶縁膜IF5をフォトリソグラフィ技術およびエッチング法を用いてパターニングした後、メモリセル領域1Aをレジスト膜により覆った状態で、絶縁膜IF5をマスクとしてエッチングを行うことで、シリコン膜PS3、金属膜TN、絶縁膜HKおよびIF4をパターニングする。
【0059】
次に、
図12に示すように、複数のエクステンション領域(n
−型半導体領域、不純物拡散領域)EXを、イオン注入法などを用いて形成する。すなわち、例えばヒ素(As)またはリン(P)などのn型の不純物を、ゲート絶縁膜GI、制御ゲート電極CG、メモリゲート電極MG、ダミーゲート電極DGおよびONO膜ONなどをマスクとして用いて半導体基板SBにイオン注入法で導入することにより、複数のエクステンション領域EXを形成する。エクステンション領域EXの形成前に、ゲート絶縁膜GI、制御ゲート電極CG、絶縁膜IF2、ONO膜ONおよびメモリゲート電極MGを含む構造体の側壁と、ダミーゲート電極DGの側壁とをそれぞれ覆うオフセットスペーサを、例えば窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、またはそれらの積層膜などにより形成してもよい。
【0060】
メモリセル領域1Aと周辺回路領域1Bのそれぞれのエクステンション領域EXは、同じイオン注入工程で形成することができるが、異なるイオン注入工程で形成することも可能である。なお、図示は省略しているが、エクステンション領域EXの形成工程の前または後に、例えば周辺回路領域1Bの半導体基板SBの主面に、絶縁膜IF5、ダミーゲート電極DGをマスクとしてp型の不純物(例えばホウ素(B))を打ち込むことで、ハロー領域を形成してもよい。ハロー領域は、エクステンション領域EXよりもダミーゲート電極DGの中心の直下の半導体基板SBの主面、つまり、後の工程で周辺回路領域1Bに形成されるMISFETのチャネル領域に近い箇所に形成される。ハロー領域を形成することにより、当該MISFETの短チャネル特性を改善させることが可能である。
【0061】
続いて、メモリセル領域1Aの制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGを含む上記構造体の両側の側壁を覆うサイドウォールSWを形成する。また、同工程により、周辺回路領域1Bにおいて、ゲート絶縁膜GI、絶縁膜HK、金属膜TN、ダミーゲート電極DGおよび絶縁膜IF5からなる積層膜の両側の側壁を覆うサイドウォールSWを形成する。
【0062】
サイドウォールSWは、CVD法などを用いて半導体基板SB上に例えば酸化シリコン膜および窒化シリコン膜を順に形成した後、異方性エッチングにより当該酸化シリコン膜および当該窒化シリコン膜を一部除去し、半導体基板SBの上面および絶縁膜IF2、IF5の上面を露出させることにより、自己整合的に形成することができる。つまり、サイドウォールSWは積層膜により形成することが考えられるが、図では当該積層膜を構成する膜同士の界面を示していない。
【0063】
続いて、拡散領域(n
+型半導体領域、不純物拡散領域)DFを、イオン注入法などを用いてメモリセル領域1Aおよび周辺回路領域1Bに形成する。すなわち、n型不純物(例えばヒ素(As)またはリン(P))を、ゲート絶縁膜GI、制御ゲート電極CG、絶縁膜IF2、ONO膜ON、メモリゲート電極MG、ダミーゲート電極DGおよびサイドウォールSWをマスク(イオン注入阻止マスク)として用いて半導体基板SBにイオン注入法で導入することで、拡散領域DFを形成することができる。拡散領域DFは、エクステンション領域EXよりも不純物濃度が高く、かつ接合深さが深い。
【0064】
これにより、エクステンション領域EXと、エクステンション領域EXよりも不純物濃度が高い拡散領域DFとからなり、LDD(Lightly Doped Drain)構造を有するソース・ドレイン領域が形成される。
【0065】
メモリセル領域1Aにおいて、制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGを含む構造体の横の半導体基板SBの上面に形成されたエクステンション領域EXおよび拡散領域DFは、後に形成するメモリセル領域1Aの制御トランジスタおよびメモリトランジスタのソース・ドレイン領域を構成する。また、周辺回路領域1Bにおいて、ダミーゲート電極DGの横の半導体基板SBの上面に形成されたエクステンション領域EXおよび拡散領域DFは、後に形成する周辺回路領域1BのMISFETのソース・ドレイン領域を構成する。メモリセル領域1Aと周辺回路領域1Bのそれぞれの拡散領域DFは、同じイオン注入工程で形成することができるが、異なるイオン注入工程で形成することも可能である。
【0066】
続いて、ソースおよびドレイン用の半導体領域(エクステンション領域EXおよび拡散領域DF)などに導入された不純物を活性化するための熱処理である活性化アニールを行う。
【0067】
次に、
図13および
図14を用いて説明する、いわゆるサリサイド(Salicide:Self Aligned Silicide)プロセスを行うことによって、シリサイド層を形成する。具体的には、次のようにしてシリサイド層を形成することができる。
【0068】
すなわち、
図13に示すように、前処理として、半導体基板SBの主面に対してケミカルドライエッチングを行うことで、半導体基板SB上の余分な酸化シリコン膜などを除去し、半導体の表面を露出させる。続いて、拡散領域DFの上面上およびメモリゲート電極MGの上面上を含む半導体基板SBの主面全面上に、シリサイド層形成用の金属膜MF1を形成(堆積)する。金属膜MF1の膜厚は、例えば20〜25nmである。
【0069】
金属膜MF1は、例えば、ニッケル(Ni)と白金(Pt)との合金膜からなり、スパッタリング法などを用いて形成することができる。ここで形成する金属膜MF1はニッケルを含む合金膜であり、当該合金膜内においてニッケルに対して添加する材料は、白金に限らず、アルミニウム(Al)または炭素(C)などであってもよい。ただし、白金はアルミニウムまたは炭素などに比べて耐熱性が高いため、当該合金膜に好適に用いることができる。
【0070】
次に、
図14に示すように、半導体基板SBに対して熱処理を施すことによって、拡散領域DFおよびメモリゲート電極MGの各表層部分を、金属膜MF1と反応させる。この反応、つまりシリサイド化により、拡散領域DFおよびメモリゲート電極MGのそれぞれの上部に、シリサイド層S1が形成される。また、上記熱処理を行っても未反応であった金属膜MF1を、ウェットエッチングなどにより除去する。
【0071】
この熱処理では、カーボンヒータにより半導体基板に対して加熱を行う熱処理装置を用いる。ここで、当該熱処理は、2度の熱処理工程を含んでいる。つまり、1度目の熱処理では、例えば260℃で30〜120秒加熱を行うことで、NiSiの微結晶およびNi
2Siを含むシリサイド層S1を形成する。その後、上記のように未反応の金属膜MF1をウェットエッチングなどにより除去した後、さらに2度目の熱処理において、600℃で5〜30秒加熱を行うことで、シリサイド層S1内のNiSi結晶を成長させる。このように2度に分けて熱処理を行うことで、シリサイド層S1が異常成長して半導体基板SB内において延伸することを防ぐことができる。これにより形成されたシリサイド層S1は、例えばニッケル白金(NiPt)シリサイドからなる。
【0072】
ここでは、上記熱処理において2回行われる熱処理のうち、2度目に行われる熱処理を、便宜上、第1熱処理と呼ぶ。第1熱処理は例えば450〜600℃で行う。本実施の形態では、上記のように、第1熱処理を600℃で行っている。なお、第1熱処理は、レーザーまたはフラッシュランプを用いて行ってもよい。また、第1熱処理を行ってから、未反応の金属膜MF1を除去してもよい。
【0073】
このように第1熱処理は非常に高い温度で行われるため、シリサイド層S1内の白金はシリサイド層S1の底部に偏析する。つまり、シリサイド層S1内の白金は、シリサイド層S1の上面に比べ、シリサイド層S1の底面に非常に多く存在している。また、このように比較的高い温度の熱処理により形成されたシリサイド層S1は、比較的大きい引張応力を有している。
【0074】
なお、制御ゲート電極CGの上面はキャップ膜である絶縁膜IF2により覆われているため、制御ゲート電極CGの上部にシリサイド層S1は形成されない。同様に、周辺回路領域1Bのダミーゲート電極DGの上部もキャップ膜である絶縁膜IF5に覆われているため、ダミーゲート電極DGの上部にシリサイド層S1は形成されない。また、サイドウォール状のメモリゲート電極MGの上部は露出しているため、その露出部にはシリサイド層S1が形成される。ただし、このシリサイド層S1は、後の工程において行うCMP(Chemical Mechanical Polishing)法による研磨工程により、完全に除去される。
【0075】
次に、
図15に示すように、半導体基板SBの主面全面上に、制御ゲート電極CG、メモリゲート電極MG、ダミーゲート電極DGおよびサイドウォールSWを覆うように、絶縁膜(ライナー絶縁膜)IF7および層間絶縁膜IL1を順に形成する。絶縁膜IF7は例えば窒化シリコン膜からなり、例えばCVD法により形成することができる。絶縁膜IF7は、後の工程でコンタクトホールを形成する際にエッチングストッパ膜として用いることができる。層間絶縁膜IL1は、例えば酸化シリコン膜の単体膜からなり、例えばCVD法などを用いて形成することができる。ここでは、例えば制御ゲート電極CGの膜厚よりも厚い膜厚で層間絶縁膜IL1を形成する。
【0076】
次に、
図16に示すように、層間絶縁膜IL1の上面を、CMP法などを用いて研磨する。これにより、制御ゲート電極CG、メモリゲート電極MGおよびダミーゲート電極DGのそれぞれの上面を露出させる。つまり、この研磨工程では、制御ゲート電極CG、メモリゲート電極MGおよびダミーゲート電極DGのそれぞれの上面が露出するまで、層間絶縁膜IL1および絶縁膜IF7を研磨する。これにより、絶縁膜IF2、IF5は除去され、サイドウォールSWおよびONO膜ONのそれぞれの上部も一部除去される。また、メモリゲート電極MG上のシリサイド層S1は、この工程により、メモリゲート電極MGの上部の一部とともに除去される。
【0077】
これにより、制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGの形状が加工されることで、メモリセル領域1Aにおいて、制御ゲート電極CG、ONO膜ON、メモリゲート電極MGおよびソース・ドレイン領域を含む、スプリットゲート型のMONOSメモリのメモリセルMCが形成される。MONOS型の不揮発性記憶素子であるメモリセルMCは、制御トランジスタおよびメモリトランジスタにより構成されている。
【0078】
すなわち、メモリセル領域1Aにおいて、制御ゲート電極CGと、制御ゲート電極CGの横の半導体基板SBの上面に形成された一対のソース・ドレイン領域とは、制御トランジスタを構成している。また、メモリセル領域1Aにおいて、メモリゲート電極MGと、メモリゲート電極MGの横の半導体基板SBの上面に形成された一対のソース・ドレイン領域とは、メモリトランジスタを構成している。また、メモリゲート電極MGの下のONO膜ONは、メモリトランジスタのゲート絶縁膜を構成している。このように、制御トランジスタおよびメモリトランジスタは、一対のソース・ドレイン領域を共有している。
【0079】
なお、制御トランジスタは、メモリセル選択用トランジスタであるため、選択トランジスタとみなすこともできる。このため、制御ゲート電極CGは、選択ゲート電極とみなすこともできる。メモリトランジスタは、記憶用トランジスタである。
【0080】
次に、
図17に示すように、層間絶縁膜IL1上に、例えばCVD法を用いて絶縁膜IF8を形成した後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング法を用いて、周辺回路領域1Bの絶縁膜IF8を除去する。これにより、絶縁膜IF8はメモリセル領域1Aに残る。つまり、絶縁膜IF8は制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGの上面を覆っており、ダミーゲート電極DGの上面を露出している。絶縁膜IF8は、例えば酸化シリコン膜からなる。
【0081】
続いて、絶縁膜IF8から露出している周辺回路領域1Bのダミーゲート電極DGの上面をエッチバックすることで後退させる。このようにダミーゲート電極DGの上部の一部を除去することで、ダミーゲート電極DGの上面上の膜を除去することができるため、
図18を用いて後述するエッチング工程において、ダミーゲート電極DGを容易に除去することが可能となる。
【0082】
次に、
図18に示すように、層間絶縁膜IL1上に、例えばCVD法を用いて絶縁膜IF9を形成した後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング法を用いて絶縁膜IF9を加工する。これにより、絶縁膜IF9はメモリセル領域1Aを覆い、かつ、周辺回路領域1Bの層間絶縁膜IL1を覆った状態となる。つまり、絶縁膜IF9は制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGの上面を覆っており、ダミーゲート電極DGの上面を露出している。絶縁膜IF9は、例えば酸化シリコン膜からなる。なお、ここでは図示を省略しているが、絶縁膜IF8(
図18参照)は、除去されずに絶縁膜IF9と層間絶縁膜IL1との間に残っていてもよい。
【0083】
その後、ダミーゲート電極DGをウェットエッチング法により除去する。ここでは、絶縁膜IF9を、制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGを保護するマスクとして用いて、例えばアルカリ水溶液によりウェットエッチングを行うことで、ダミーゲート電極DGを除去する。このアルカリ水溶液としては、例えばアンモニア水(NH
4OH)を用いる。ダミーゲート電極DGが除去されたことにより、ゲート絶縁膜を構成する絶縁膜IF4およびHKの上に溝(凹部、窪み部)が形成される。周辺回路領域1Bの絶縁膜HK上の溝は、ダミーゲート電極DGが除去された領域であり、当該溝の両側の側壁はサイドウォールSWにより構成されている。
【0084】
次に、
図19に示すように、半導体基板SB上、つまり、上記の溝の内面(底面および側壁)上を含む層間絶縁膜IL1上に、上記の溝を完全に埋め込むように、ゲート電極用の導電膜として金属膜を形成する。なお、当該金属膜は、例えば2つ以上の金属膜を積層した構造を有することが考えられるが、図では当該2つ以上の金属膜の境界の図示を省略し、1つの膜として金属膜を示す。
【0085】
当該金属膜の形成工程において、上記の溝の内側は完全に埋まった状態になる。また、当該金属膜は、層間絶縁膜IL1上にも形成される。当該金属膜としては、例えば、窒化チタン(TiN)膜、窒化タンタル(TaN)膜、窒化タングステン(WN)膜、炭化チタン(TiC)膜、炭化タンタル(TaC)膜、炭化タングステン(WC)膜、窒化炭化タンタル(TaCN)膜、チタン(Ti)膜、タンタル(Ta)膜、チタンアルミニウム(TiAl)膜またはアルミニウム(Al)膜などを用いることができる。なお、ここで言う金属膜とは、金属伝導を示す導電膜を言い、単体の金属膜(純金属膜)または合金膜だけでなく、金属伝導を示す金属化合物膜も含むものとする。当該金属膜は、例えばスパッタリング法などを用いて形成することができる。
【0086】
ここでは、例えば当該金属膜は、例えば、窒化チタン(TiN)膜と、当該窒化チタン膜上のアルミニウム(Al)膜との積層膜により形成することができる。この際、窒化チタン膜よりもアルミニウム膜を厚くすることが好ましい。アルミニウム膜は、低抵抗であるため、後に形成するゲート電極G1の低抵抗化を図ることができる。
【0087】
その後、上記の溝のそれぞれの外部の不要な上記金属膜および絶縁膜IF9などをCMP法などによって研磨して除去することにより、溝内に上記金属膜を埋め込む。これにより、制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGを露出させる。また、周辺回路領域1Bの絶縁膜IF4上の溝内に埋め込まれた上記金属膜により、ゲート電極G1が形成される。これにより、周辺回路領域1Bにおいて、MISFETQ1が形成される。MISFETQ1は、ゲート電極G1とその横のソース・ドレイン領域とを有する。MISFETQ1は、例えばメモリセルMCの周辺回路を構成する電界効果トランジスタである。
【0088】
ゲート電極G1の直下の絶縁膜HKおよび絶縁膜IF4は、MISFETQ1のゲート絶縁膜を構成している。ゲート電極G1はメタルゲート電極である。本実施の形態では、ダミーゲート電極DG(
図17参照)を除去してゲート電極G1に置き換えている。このため、ダミーゲート電極DGは、擬似的なゲート電極であり、置換用ゲート電極とみなすことができる。
【0089】
このように、本実施の形態では、半導体基板SB上のダミーゲート電極DGを形成し、半導体基板SB内にソース・ドレイン領域を形成した後、当該ダミーゲート電極をメタルゲート電極に置換する方法、つまりゲートラストプロセスを用いて、MISFETQ1を形成している。また、本実施の形態では、ゲート電極G1をメタルゲート電極としているため、トランジスタ素子の小型化(ゲート絶縁膜の薄膜化)を可能としている。
【0090】
次に、
図20および
図21を用いて説明するように、サリサイドプロセスを行うことによって、ポリシリコン膜からなる各電極上にシリサイド層を形成する。具体的には、次のようにしてシリサイド層を形成することができる。
【0091】
すなわち、
図20に示すように、周辺回路領域1Bを覆う絶縁膜IF10のパターンを、例えばCVD法、フォトリソグラフィ技術およびエッチング法を用いて形成する。絶縁膜IF10はメモリセル領域1Aの制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGの上面を露出し、ゲート電極G1を覆う絶縁膜であり、例えば酸化シリコン膜などからなる。
【0092】
続いて、前処理として、半導体基板SBの主面に対してケミカルドライエッチングを行うことで、制御ゲート電極CG上およびメモリゲート電極MG上の余分な酸化シリコン膜などを除去し、半導体の表面を露出させる。続いて、制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGのそれぞれの上面上を含む半導体基板SBの主面全面上に、シリサイド層形成用の金属膜MF2を形成(堆積)する。金属膜MF2の膜厚は、例えば20〜25nmである。
【0093】
金属膜MF2は、例えば、ニッケル(Ni)と白金(Pt)との合金膜からなり、スパッタリング法などを用いて形成することができる。ここで形成する金属膜MF2はニッケルを含む合金膜であり、当該合金膜内においてニッケルに対して添加する材料は、白金に限らず、アルミニウム(Al)または炭素(C)などであってもよい。ただし、白金はアルミニウムまたは炭素などに比べて耐熱性が高いため、当該合金膜に好適に用いることができる。
【0094】
次に、
図21に示すように、半導体基板SBに対して熱処理を施すことによって、制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGの各表層部分を、金属膜MF2と反応させる。このシリサイド化により、制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGのそれぞれの上部に、シリサイド層S2が形成される。また、上記熱処理を行っても未反応であった金属膜MF2は、ウェットエッチングなどにより除去する。このとき、金属膜からなるゲート電極G1は、絶縁膜IF10により保護されているため、除去されない。
【0095】
この熱処理では、カーボンヒータにより半導体基板に対して加熱を行う熱処理装置を用いる。ここで、当該熱処理は、2度の熱処理工程を含んでいる。つまり、1度目の熱処理では、例えば260℃で30〜120秒加熱を行うことで、NiSiの微結晶およびNi
2Siを含むシリサイド層S2形成する。その後、上記のように未反応の金属膜MF2をウェットエッチングなどにより除去した後、さらに2度目の熱処理において、400℃で10〜120秒加熱を行うことで、シリサイド層S2内のNiSi結晶を成長させる。これにより形成されたシリサイド層S2は、例えばニッケル白金(NiPt)シリサイドからなる。
【0096】
ここでは、上記熱処理において2回行われる熱処理のうち、2度目に行われる熱処理を、便宜上、第2熱処理と呼ぶ。第2熱処理は例えば400℃以下で行う。本実施の形態では、上記のように、第2熱処理を400℃で行っている。なお、第2熱処理を行ってから、未反応の金属膜MF2を除去してもよい。
【0097】
第2熱処理により形成されたシリサイド層S2内の白金は、シリサイド層S2の底部に偏析する。つまり、シリサイド層S2内の白金は、シリサイド層S2の上面に比べ、シリサイド層S2の底面に多く存在している。また、このように第1熱処理に比べて低い温度の熱処理により形成されたシリサイド層S2は、比較的小さい引張応力を有する。
【0098】
ここで、
図13および
図14を用いて説明した工程(第1熱処理)でソース・ドレイン領域上に形成したシリサイド層S1は、450〜600℃程度の比較的高い温度で形成されているため、シリサイド層S1内の白金(Pt)の多くがシリサイド層S1内の下方に偏析している。これに対し、
図20および
図21を用いて説明した工程(第2熱処理)で制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGの上に形成したシリサイド層S2は、400℃以下の比較的低い温度で形成されているため、シリサイド層S2内の白金(Pt)の下方への偏析量は比較的小さい。
【0099】
すなわち、シリサイド層S2内の白金(Pt)の下方への偏析量は、シリサイド層S1内の白金(Pt)の下方への偏析量よりも少ない。言い換えれば、シリサイド層S1、S2のそれぞれは、上面よりも下面の方が白金(Pt)の量が多く、シリサイド層S1の下面の単位面積当たりの白金(Pt)の量は、シリサイド層S2の下面の単位面積当たりの白金(Pt)の量よりも多い。また、シリサイド層S1の上面の単位面積当たりの白金(Pt)の量は、シリサイド層S2の上面の単位面積当たりの白金(Pt)の量よりも少ない。
【0100】
このように、シリサイド層S1、S2のそれぞれの白金(Pt)の偏析量に差があるのは、各シリサイド層の形成するために行った熱処理の温度の差に起因する。また、第1熱処理に比べて低い温度の第2熱処理により形成されたシリサイド層S2の引張応力は、第1熱処理により形成されたシリサイド層S1の引張応力よりも小さい。したがって、シリサイド層S2は、シリサイド層S1に比べて断線しにくい特徴を有する。
【0101】
次に、
図22に示すように、層間絶縁膜および複数のコンタクトプラグを形成する。ここではまず、メモリセル領域1Aおよび周辺回路領域1Bを含む半導体基板SBの上面全体を覆う層間絶縁膜IL2を、例えばCVD法を用いて形成する。層間絶縁膜IL2は、例えば酸化シリコン膜からなり、制御ゲート電極CG、メモリゲート電極MG、ゲート電極G1および層間絶縁膜IL1のそれぞれの上面を覆っている。
【0102】
続いて、フォトリソグラフィ技術を用いて層間絶縁膜IL2上に形成したレジスト膜(図示しない)をエッチングマスクとして、層間絶縁膜IL2、IL1、絶縁膜IF10およびIF7をドライエッチングする。これにより、層間絶縁膜IL2を貫通するコンタクトホール(開口部、貫通孔)と、層間絶縁膜IL1、IL2および絶縁膜IF7を貫通するコンタクトホールとを、それぞれ複数形成する。なお、周辺回路領域1Bのコンタクトホールは、絶縁膜IF10を貫通している。
【0103】
各コンタクトホールの底部では、半導体基板SBの主面の一部、例えば拡散領域DFの表面上のシリサイド層S1の一部、制御ゲート電極CGの表面上のシリサイド層S2の一部、メモリゲート電極MGの表面上のシリサイド層S2の一部、またはゲート電極G1の一部などが露出している。なお、各ゲート電極上のコンタクトホールは、
図22に示していない領域に形成されている。
【0104】
続いて、各コンタクトホール内に、接続用の導電体として、タングステン(W)などからなる導電性のコンタクトプラグCPを形成する。コンタクトプラグCPを形成するには、例えば、コンタクトホールの内部を含む層間絶縁膜IL2上に、バリア導体膜(例えばチタン膜、窒化チタン膜、あるいはそれらの積層膜)を形成する。それから、このバリア導体膜上にタングステン膜などからなる主導体膜を、各コンタクトホール内を完全に埋めるように形成してから、コンタクトホールの外部の不要な主導体膜およびバリア導体膜をCMP法またはエッチバック法などによって除去することにより、コンタクトプラグCPを形成することができる。なお、図面の簡略化のために、
図22では、コンタクトプラグCPを構成するバリア導体膜および主導体膜(タングステン膜)を一体化して示している。
【0105】
コンタクトホールに埋め込まれたコンタクトプラグCPは、拡散領域DF、制御ゲート電極CG、メモリゲート電極MGまたはゲート電極G1のそれぞれの上部に接続されるように形成される。つまり、メモリセルMCおよびMISFETQ1のそれぞれの拡散領域DFの上面には、シリサイド層S1を介してコンタクトプラグCPが接続されている。また、制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGのそれぞれの上面には、シリサイド層S2を介してコンタクトプラグCPが接続されている。
【0106】
シリサイド層S1、S2を設ける目的の1つは、コンタクトプラグCPと、半導体からなる拡散領域DF、制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGとの間の接触抵抗を低減することにある。したがって、メタルゲート電極であるゲート電極G1とコンタクトプラグCPとの間にはシリサイド層を設けていない。
【0107】
この後は、図示は省略するが、コンタクトプラグCPが埋め込まれた層間絶縁膜IL2上に第1層目の配線を含む第1配線層を形成する。この配線は、ダマシン技術を用いて形成することができる。第1配線層は、層間絶縁膜と、それを貫通する第1層目の配線とを有する。複数の第1層目の配線は、
図22に示す各コンタクトプラグCPの上面に接続される。その後、第1配線層上に、第2配線層、第3配線層などを順に形成して積層配線層を形成した後、半導体ウエハをダイシング工程により個片化し、複数の半導体チップを得る。以上のようにして、本実施の形態の半導体装置が製造される。
【0108】
<不揮発性メモリの動作について>
次に、不揮発性メモリの動作例について、
図23を参照して説明する。
【0109】
本実施の形態のメモリセルは、MISFET構造を有し、当該MISFETのゲート電極内のトラップ性絶縁膜での電荷蓄積状態を記憶情報とし、それをトランジスタの閾値として読み出すものである。トラップ性絶縁膜とは、電荷の蓄積可能な絶縁膜をいい、一例として、窒化シリコン膜などが挙げられる。このような電荷蓄積領域への電荷の注入・放出によってMISFETのしきい値をシフトさせ記憶素子として動作させる。トラップ性絶縁膜を用いた不揮発性半導体記憶装置としては、本実施の形態のメモリセルのように、スプリットゲート型のMONOSメモリがある。
【0110】
図23は、本実施の形態の「書込」、「消去」および「読出」時における選択メモリセルの各部位への電圧の印加条件の一例を示す表である。
図23の表には、「書込」、「消去」および「読出」時のそれぞれにおいて、
図22に示されるようなメモリセルMCのメモリゲート電極MGに印加する電圧Vmg、ソース領域に印加する電圧Vs、制御ゲート電極CGに印加する電圧Vcg、ドレイン領域に印加する電圧Vd、および半導体基板上面のp型ウエルに印加するベース電圧Vbが記載されている。ここでいう選択メモリセルとは、「書込」、「消去」または「読出」を行う対象として選択されたメモリセルをいう。
【0111】
なお、
図22に示す不揮発性メモリの例では、メモリゲート電極MGの右側の活性領域がソース領域、制御ゲート電極CGの左側の活性領域がドレイン領域である。また、
図23の表に示したものは電圧の印加条件の好適な一例であり、これに限定されるものではなく、必要に応じて種々変更可能である。また、本実施の形態では、メモリトランジスタのONO膜ON中の電荷蓄積部である窒化シリコン膜NT(
図3参照)への電子の注入を「書込」、ホール(hole:正孔)の注入を「消去」と定義する。
【0112】
また、
図23の表において、Aの欄は、書込み方法がSSI方式で、かつ消去方法がBTBT方式の場合に対応し、Bの欄は、書込み方法がSSI方式で、かつ消去方法がFN方式の場合に対応し、Cの欄は、書込み方法がFN方式で、かつ消去方法がBTBT方式の場合に対応し、Dの欄は、書込み方法がFN方式で、かつ消去方法がFN方式の場合に対応している。
【0113】
SSI方式は、窒化シリコン膜NTにホットエレクトロンを注入することによってメモリセルの書込みを行う動作法とみなすことができ、BTBT方式は、窒化シリコン膜NTにホットホールを注入することによってメモリセルの消去を行う動作法とみなすことができ、FN方式は、電子またはホールのトンネリングによって書込みまたは消去を行う動作法とみなすことができる。FN方式について、別の表現でいうと、FN方式の書込みは、窒化シリコン膜NTにFNトンネル効果により電子を注入することによってメモリセルの書込みを行う動作方式とみなすことができ、FN方式の消去は、窒化シリコン膜NTにFNトンネル効果によりホールを注入することによってメモリセルの消去を行う動作方式とみなすことができる。以下、具体的に説明する。
【0114】
書込み方式は、いわゆるSSI(Source Side Injection:ソースサイド注入)方式と呼ばれるソースサイド注入によるホットエレクトロン注入で書込みを行う書込み方式(ホットエレクトロン注入書込み方式)と、いわゆるFN方式と呼ばれるFN(Fowler Nordheim)トンネリングにより書込みを行う書込み方式(トンネリング書込み方式)とがある。
【0115】
SSI方式の書込みでは、例えば
図23の表のAの欄またはBの欄の「書込動作電圧」に示されるような電圧(Vmg=10V、Vs=5V、Vcg=1V、Vd=0.5V、Vb=0V)を、書込みを行う選択メモリセルの各部位に印加し、選択メモリセルのONO膜ON中の窒化シリコン膜NT中に電子を注入することで書込みを行う。
【0116】
この際、ホットエレクトロンは、2つのゲート電極(メモリゲート電極MGおよび制御ゲート電極CG)間の下のチャネル領域(ソース、ドレイン間)で発生し、メモリゲート電極MGの下のONO膜ON中の電荷蓄積部である窒化シリコン膜NTにホットエレクトロンが注入される。注入されたホットエレクトロン(電子)は、ONO膜ON中の窒化シリコン膜NT中のトラップ準位に捕獲され、その結果、メモリトランジスタのしきい値電圧が上昇する。すなわち、メモリトランジスタは書込み状態となる。
【0117】
FN方式の書込みでは、例えば
図23の表のCの欄またはDの欄の「書込動作電圧」に示されるような電圧(Vmg=−12V、Vs=0V、Vcg=0V、Vd=0V、Vb=0V)を、書込みを行う選択メモリセルの各部位に印加し、選択メモリセルにおいて、メモリゲート電極MGから電子をトンネリングさせてONO膜ON中の窒化シリコン膜NTに注入することで書込みを行う。この際、電子はメモリゲート電極MGからFNトンネリング(FNトンネル効果)により酸化シリコン膜OX2(
図3参照)をトンネリングしてONO膜ON中に注入され、ONO膜ON中の窒化シリコン膜NT中のトラップ準位に捕獲され、その結果、メモリトランジスタのしきい値電圧が上昇する。すなわち、メモリトランジスタは書込み状態となる。
【0118】
なお、FN方式の書込みにおいて、半導体基板SBから電子をトンネリングさせてONO膜ON中の窒化シリコン膜NTに注入することで書込みを行うこともでき、この場合、書込動作電圧は、例えば
図23の表のCの欄またはDの欄の「書込動作電圧」の正負を反転させたものとすることができる。
【0119】
消去方法は、いわゆるBTBT方式と呼ばれるBTBT(Band-To-Band Tunneling:バンド間トンネル現象)によるホットホール注入により消去を行う消去方式(ホットホール注入消去方式)と、いわゆるFN方式と呼ばれるFN(Fowler Nordheim)トンネリングにより消去を行う消去方式(トンネリング消去方式)とがある。
【0120】
BTBT方式の消去では、BTBTにより発生したホール(正孔)を電荷蓄積部(ONO膜ON中の窒化シリコン膜NT)に注入することにより消去を行う。例えば
図23の表のAの欄またはCの欄の「消去動作電圧」に示されるような電圧(Vmg=−6V、Vs=6V、Vcg=0V、Vd=open、Vb=0V)を、消去を行う選択メモリセルの各部位に印加する。これにより、BTBT現象によりホールを発生させ電界加速することで選択メモリセルのONO膜ON中の窒化シリコン膜NT中にホールを注入し、それによってメモリトランジスタのしきい値電圧を低下させる。すなわち、メモリトランジスタは消去状態となる。
【0121】
FN方式の消去では、例えば
図23の表のBの欄またはDの欄の「消去動作電圧」に示されるような電圧(Vmg=12V、Vs=0V、Vcg=0V、Vd=0V、Vb=0V)を、消去を行う選択メモリセルの各部位に印加し、選択メモリセルにおいて、メモリゲート電極MGからホールをトンネリングさせてONO膜ON中の窒化シリコン膜NTに注入することで消去を行う。この際、ホールはメモリゲート電極MGからFNトンネリング(FNトンネル効果)により酸化シリコン膜OX2(
図3参照)をトンネリングしてONO膜ON中に注入され、ONO膜ON中の窒化シリコン膜NT中のトラップ準位に捕獲され、その結果、メモリトランジスタのしきい値電圧が低下する。すなわち、メモリトランジスタは消去状態となる。
【0122】
なお、FN方式の消去において、半導体基板SBからホールをトンネリングさせてONO膜ON中の窒化シリコン膜NTに注入することで消去を行うこともでき、この場合、消去動作電圧は、例えば
図23の表のBの欄またはDの欄の「消去動作電圧」の正負を反転させたものとすることができる。
【0123】
読出し時には、例えば
図23の表のAの欄、Bの欄、Cの欄またはDの欄の「読出動作電圧」に示されるような電圧を、読出しを行う選択メモリセルの各部位に印加する。読出し時のメモリゲート電極MGに印加する電圧Vmgを、書込み状態におけるメモリトランジスタのしきい値電圧と消去状態におけるしきい値電圧との間の値にすることで、書込み状態と消去状態とを判別することができる。
【0124】
<本実施の形態の効果について>
以下に、本実施の形態の製造方法および半導体装置の効果について説明する。
【0125】
MONOSメモリでは、半導体膜からなるゲート電極上に形成されたシリサイド層を配線として用いることにより、ゲート電極の低抵抗化を実現することができる。また、MISFETのソース・ドレイン領域の上面に接して形成されたシリサイド層が引張応力を有する場合、チャネル領域へ引張応力を誘起させてMISFETの特性を向上させることができる。具体的には、チャネル移動度を向上させることができる。したがって、メモリセルおよびその周辺回路を構成するMISFETのそれぞれのソース・ドレイン領域上のシリサイド層の引張応力を高めることで、メモリセルの書き込み・消去速度を向上させることができる。シリサイド層の引張応力を高めるためには、半導体装置の製造工程において、当該シリサイド層を形成するために行う熱処理を、例えば450〜600℃程度の高い温度で行うことが考えられる。
【0126】
ここで、ゲートラストプロセスを行わない半導体装置の製造方法、つまり、ダミーゲート電極を形成せず、ゲート電極の置き換えを行わない製造方法では、ソース・ドレイン領域上にシリサイド層を形成する工程において、MISFETのゲート電極上にもシリサイド層が形成される。このようなゲートファーストプロセスにより半導体素子を形成する場合、シリサイド層の形成後にゲート電極の上部を研磨する工程を行わないため、ゲート電極の上部の当該シリサイド層は、半導体装置の完成後においても残る。
【0127】
この場合において、ソース・ドレイン領域上に形成するシリサイド層の引張応力を高めてMISFETの特性を向上させるために、シリサイド層を形成する際の熱処理を例えば450〜600℃程度の高い温度で行った場合、ゲート電極上のシリサイド層にも、高い引張応力が生じる。このとき、半導体基板上にMONOSメモリが設けてある場合、MONOSメモリの動作速度が低下する問題が生じる。
【0128】
すなわち、MONOSメモリを構成するMISFETのゲート電極の上部のシリサイド層は、当該ゲート電極の低抵抗化を実現する配線として用いられるものである。上記のように当該ゲート電極上のシリサイド層の引張応力が大きくなった場合、当該シリサイド層は断線しやすくなる。このため、MONOSメモリのゲート電極上のシリサイド層が断線すると、ゲート電極の抵抗値が著しく上昇し、MONOSメモリの動作速度が低下する問題が生じる。このように、ゲートファーストプロセスを用いて、メモリセルを含む半導体装置を形成する場合、素子に引張応力を与えて素子の特性を向上させることは、シリサイド層の断線を防ぐ観点から困難である。
【0129】
なお、MONOSメモリのソース・ドレイン領域と、周辺回路領域のMISFETのゲート電極およびソース・ドレイン領域のそれぞれの上部のシリサイド層は、配線として用いられるものではない。また、MONOSメモリのソース・ドレイン領域と、周辺回路領域のMISFETのゲート電極およびソース・ドレイン領域のそれぞれに対しては、MONOSメモリのゲート電極に比べて、短い間隔でコンタクトプラグを接続することが可能である。したがって、MONOSメモリのソース・ドレイン領域と、周辺回路領域の高耐圧または低耐圧のMISFETのゲート電極およびソース・ドレイン領域のそれぞれの上部のシリサイド層が断線したとしても、それらの電極またはソース・ドレイン領域には所望の電位を容易に供給することができ、素子の特性が低下する問題は殆ど乗じない。
【0130】
しかし、MONOSメモリのゲート電極(制御ゲート電極およびメモリゲート電極)は、メモリセルの集積度を向上させるために高い密度で複数並んで配置されるため、コンタクトプラグをゲート電極に接続するための給電部を短い周期で設けることは困難である。したがって、当該ゲート電極に接続される複数のコンタクトプラグ同士の間隔は非常に長くなるため、メモリセルのゲート電極上のシリサイド層を配線として用いなければ、ゲート電極が高抵抗化してメモリセルの動作が遅くなる。
【0131】
これに対し、ゲートラストプロセスを用いてMISFETを形成する半導体装置の製造工程では、メモリセルおよびその他のMISFETのゲート電極またはダミーゲート電極を形成し、ソース・ドレイン領域上のシリサイド層を形成した後、それらのゲート電極の上部の一部を除去する工程を行う。このとき、各ゲート電極上のシリサイド層は除去されるため、ゲート電極上の配線として、またはゲート電極とコンタクトプラグとの接触抵抗を低減する緩和層としてシリサイド層を再度形成する必要がある。
【0132】
つまり、ゲートラストプロセスにより半導体装置を形成する場合には、ソース・ドレイン領域上のシリサイド層と、ゲート電極上のシリサイド層とを別々の工程で形成することが可能である。本発明者はこのことに着目し、ソース・ドレイン領域上の、引張応力の高いシリサイド層と、メモリセルのゲート電極上の、引張応力の低いシリサイド層とを異なる条件のシリサイド化工程で形成することで、各半導体素子の特性向上と、メモリセルの動作速度低下の防止との両方を実現することを見出した。
【0133】
すなわち、本実施の形態において、
図13および
図14を用いて説明した工程では、比較的高い温度で第1熱処理を行うことで、ソース・ドレイン領域上に、引張応力の高いシリサイド層S1を形成している。これにより、MONOSメモリのメモリセルMC(
図22参照)および周辺回路領域1BのMISFETQ1(
図22参照)のそれぞれの特性を向上させることを可能としている。このとき、メモリゲート電極MG上には引張応力が高いシリサイド層S1が形成されるが、
図16を用いて説明した研磨工程により、メモリゲート電極MG上のシリサイド層S1は除去される。このため、メモリゲート電極MG上に、断線しやすいシリサイド層S1は残らない。
【0134】
そして、
図20および
図21を用いて説明した工程では、比較的低い温度で第2熱処理を行うことで、制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGのそれぞれの上に、引張応力の小さいシリサイド層S2を形成している。つまり、MONOSメモリのメモリセルMC(
図22参照)の制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGのそれぞれの上に、断線しにくいシリサイド層S2を形成することができる。
【0135】
したがって、本実施の形態では、ソース・ドレイン領域上に引張応力の高いシリサイド層S1を形成し、かつ、メモリセルMCの制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGのそれぞれの上に引張応力の低いシリサイド層S2を形成することができる。このため、メモリセルMCおよびMISFETQ1を含む各半導体素子の特性向上と、メモリセルMCの動作速度低下の防止との両方を実現することができる。これにより、半導体装置の性能を向上させ、かつ、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0136】
本実施の形態では、ニッケル(Ni)と白金(Pt)の合金と半導体とを反応させてシリサイド層S1、S2を形成しているため、白金の偏析量の違いにより、シリサイド層S1とシリサイド層S2とのそれぞれの形成工程における熱処理温度の違い、および、当該温度に起因するシリサイド層S1とシリサイド層S2とのそれぞれの引張応力の違いを判断することが可能である。これは、上記のように、各シリサイド層S1、S2を形成するために行う熱処理の温度の差に起因して、各シリサイド層S1、S2のそれぞれの内部の白金の偏析量に差が生じるためである。
【0137】
つまり、より高い温度で行われた第1熱処理によって形成されたシリサイド層S1内の白金の多くはシリサイド層S1内で下方に拡散するのに比べて、第1熱処理より低い温度で行われた第2熱処理によって形成されたシリサイド層S2内の白金は、シリサイド層S2内における下方への拡散量が少ない。よって、シリサイド層S1の下面の単位面積当たりの白金の量は、シリサイド層S2の下面の単位面積当たりの白金の量よりも多く、シリサイド層S1の上面の単位面積当たりの白金の量は、シリサイド層S2の上面の単位面積当たりの白金の量よりも少ない。よって、異なる温度で形成されたシリサイド層S1、S2は、上記のように白金の偏析量に違いが生じる。
【0138】
以下に、シリサイド層内の白金の偏析量に違いが生じることで、MISFETの特性が変化する理由、およびシリサイド層の断線の起こりやすさが変化する理由を説明する。
【0139】
本実施の形態では、ソース・ドレイン領域上のシリサイド層S1を高温で形成することで、シリサイド層S1と半導体基板SBとの界面に白金(Pt)が偏析して、シリサイド層S1内に(010)配向のNiSi膜が優先的に形成される。本発明者は、実験により、(010)配向のNiSi膜は引張応力が大きい膜となることを発見しており、また、引張応力をソース・ドレイン領域上のシリサイド層からnチャネル型のMISFETのチャネルに印加すれば、nチャネル型のMISFETのチャネル移動度を向上させることができることを発見している。
【0140】
また、pチャネル型のMISFETにおいて、チャネル方向が<100>の場合は、応力感度がないので、移動度は劣化しない。また、pチャネル型のMISFETにおいて、チャネル方向が<110>の場合、ソース・ドレイン領域は、半導体基板の主面よりも高さが高いSiGeからなるせり上げ構造となるため、応力による劣化の問題はなく本実施の形態の構成を適用することができる。
【0141】
制御ゲート電極およびメモリゲート電極のそれぞれの上のシリサイド層の断線による抵抗上昇はデバイス特性の劣化を起こす。これに対し、本実施の形態では、
図22に示すシリサイド層S2を400℃以下の低温で形成することで、シリサイド層S2と制御ゲート電極CGまたはメモリゲート電極MGとの界面への白金の偏析を抑制し、(010)配向が形成されることを防ぐことができる。つまり、シリサイド層S1の単位体積当たりの(010)配向粒の数は、シリサイド層S2の単位体積当たりの(010)配向粒の数よりも多い。その結果、シリサイド層S1に比べて、応力が小さく、断線に対して高い強度を有するシリサイド層S2を形成することができる。
【0142】
また、本実施の形態では、シリサイド層S1、S2の材料の一部に白金を用いることで、シリサイド層S1、S2の耐熱性を向上させている。これにより、メモリセルMCの制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGのそれぞれの上のシリサイド層S2が断線することを防ぐことができる。
【0143】
また、制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGのそれぞれの上のシリサイド層S2の形成温度を低くする理由には、次に説明する理由もある。すなわち、シリサイド層S2の形成時には、周辺回路領域1Bにメタルゲート電極であるゲート電極G1が形成されているため、シリサイド層S2の形成時の第2熱処理を高温で行うと、ゲート電極G1内の金属が、MISFETQ1のゲート絶縁膜内に拡散してトランジスタが劣化する虞がある。このような素子の劣化を防ぐため、シリサイド層S2の形成の際の温度は400℃以下の低温とすることが望ましい。
【0144】
<変形例1について>
図24に、本実施の形態の半導体装置の変形例1であるMONOSメモリのメモリセルMC1の断面を示す。
図24では、
図22と同様に、メモリセル領域1Aおよび周辺回路領域1Bを示している。
【0145】
図24に示すメモリセルMC1は、
図22に示すメモリセルMCと同様に、互いに絶縁されて隣接する制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGを有している。また、メモリゲート電極MGと半導体基板SBとの間には、ONO膜ON1が形成されている。ここでは、
図22と異なり、ONO膜ON1の積層構造を図示している。つまり、メモリゲート電極MGの直下のONO膜ON1は、半導体基板SB上に順に形成された酸化シリコン膜OX1、窒化シリコン膜NT、および酸化シリコン膜OX2の積層膜からなる。
【0146】
これに対し、制御ゲート電極CGとメモリゲート電極MGとの間には、ONO膜ON1ではなく、電荷蓄積部として機能する膜(例えば窒化シリコン膜)を含まない絶縁膜IF11が形成されている。絶縁膜IF11は、例えば酸化シリコン膜からなる。
【0147】
すなわち、制御ゲート電極CGとメモリゲート電極MGとの間に形成された絶縁膜IF11が、メモリゲート電極MGの直下のONO膜ON1と異なり電荷蓄積部を有していない点で、本変形例は
図22を用いて説明した構造と異なる。よって、ONO膜ON1はL字型の断面を有していない。ここでも、シリサイド層S1の底面には、シリサイド層S2の底面よりも多くPt(白金)が偏析しており、シリサイド層S1は、シリサイド層S2よりも引張応力が大きい。このように、ONO膜ON1および絶縁膜IF11を有するメモリセルMC1を含む半導体装置においても、
図1〜
図22を用いて説明した効果と同様の効果を得ることができる。
【0148】
本変形例の構造を形成する工程では、例えば以下のような製造方法を用いる。つまり、半導体基板SB上にONO膜ON1およびポリシリコン膜を順に形成した後、当該ポリシリコン膜およびONO膜ON1を加工してメモリゲート電極MGを形成する。その後、メモリゲート電極MGの一方の側壁に膜厚が比較的小さいサイドウォール状の絶縁膜IF11を形成し、続いて半導体基板SB上にポリシリコン膜を堆積することでメモリゲート電極MGを覆う。
【0149】
その後、当該ポリシリコン膜をエッチバックすることで、メモリゲート電極MGの側壁に自己整合的にサイドウォール状の制御ゲート電極CGを形成する。その後の工程は、層間絶縁膜IL1の形成、制御ゲート電極CGおよびメモリゲート電極MGの上面の研磨工程、並びに各シリサイド層S1、S2を形成する工程は、
図16〜
図22を用いて説明した工程と同様に行う。これにより、
図24に示す構造を得ることができる。
【0150】
<変形例2について>
図25に、本実施の形態の半導体装置の変形例2であるMONOSメモリのメモリセルMC2の断面を示す。
図25では、
図22と同様に、メモリセル領域1Aおよび周辺回路領域1Bを示している。
【0151】
図25に示すメモリセルMC2は、前記変形例1と同様に、制御ゲート電極CGとメモリゲート電極MGとの間に、電荷蓄積部を含まない絶縁膜IF11を有している。本変形例は、制御ゲート電極が、半導体基板SBの主面およびメモリゲート電極MGの側壁に沿うように堆積された膜により構成されている点で、
図22および
図24に示す構造と異なる。
【0152】
つまり、本変形例において、制御ゲート電極CGの一部は、半導体基板SBの上面に沿って延在しており、他の一部は、メモリゲート電極MGの側壁に沿って延在している。このような形状の制御ゲート電極CGは、前記変形例1の製造工程において、ポリシリコン膜を加工して制御ゲート電極CGを形成する際に、当該加工により残すポリシリコン膜の幅を大きくすることで形成することができる。また、このような形状の制御ゲート電極CGは、前記変形例1の製造工程において、加工により制御ゲート電極CGとなるポリシリコン膜の膜厚を小さくすることで形成することができる。
【0153】
ここでも、シリサイド層S1の底面には、シリサイド層S2の底面よりも多くPt(白金)が偏析しており、シリサイド層S1は、シリサイド層S2よりも引張応力が大きい。このように、ONO膜ON1および絶縁膜IF11を有するメモリセルMC2を含む半導体装置においても、
図1〜
図22を用いて説明した効果と同様の効果を得ることができる。
【0154】
<変形例3について>
図26に、本実施の形態の半導体装置の変形例3であるMONOSメモリのメモリセルMC3の断面を示す。
図26では、
図22と同様に、メモリセル領域1Aおよび周辺回路領域1Bを示している。
【0155】
図26に示すメモリセルMC3は、
図22を用いて説明した構造と同様に、制御ゲート電極CGとメモリゲート電極MGとの間、および、メモリゲート電極MGと半導体基板SBとの間に、電荷蓄積部を含む絶縁膜を有している。ただし、制御ゲート電極CGとメモリゲート電極MGとの間に設けられたONO膜ON2と、メモリゲート電極MGと半導体基板SBとの間に形成されたONO膜ON1とは、異なる膜により形成されている。この点において、本変形例は
図22に示す構造と異なる。つまり、制御ゲート電極CGとメモリゲート電極MGとの間に設けられたONO膜ON2と、メモリゲート電極MGと半導体基板SBとの間に形成されたONO膜ON1とは、一体になっていないため、ONO膜ON1はL字型の断面を有していない。
【0156】
図26に示す本変形例のメモリセルMC3の構造は、前記変形例1の製造工程において、絶縁膜IF11(
図24参照)の代わりにONO膜ON2を形成することで得ることができる。ONO膜ON2は、メモリゲート電極MGの側壁から、制御ゲート電極CGの側壁側に向かって、順に酸化シリコン膜OX3、窒化シリコン膜NT1および酸化シリコン膜OX4を積層した膜である。ここでも、シリサイド層S1の底面には、シリサイド層S2の底面よりも多くPt(白金)が偏析しており、シリサイド層S1は、シリサイド層S2よりも引張応力が大きい。このように、ONO膜ON1およびON2を有するメモリセルMC3を含む半導体装置においても、
図1〜
図22を用いて説明した効果と同様の効果を得ることができる。
【0157】
(実施の形態2)
以下では、前記実施の形態1と異なり、シングルゲート型のMONOSメモリを形成し、ソース・ドレイン領域の上のシリサイド層と、シングルゲート電極の上部のシリサイド層とを作り分けることについて、
図27〜
図29を用いて説明する。
図27〜
図29は、本実施の形態の半導体装置の製造工程を説明する断面図である。
図27〜
図29では、
図1〜
図22と同様に、メモリセル領域1Aおよび周辺回路領域1Bを示している。
【0158】
本実施の形態の製造工程では、まず、
図27に示すように、半導体基板SB上に、絶縁膜IF1、ポリシリコン膜PS1を順に形成した後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング法を用いてポリシリコン膜PS1および絶縁膜IF1を加工する。これにより、周辺回路領域1Bのポリシリコン膜PS1および絶縁膜IF1を残し、メモリセル領域1Aのポリシリコン膜PS1および絶縁膜IF1を除去する。その後、半導体基板SBの主面の全面上にONO膜ONを形成する。ONO膜ONは、酸化シリコン膜OX1、窒化シリコン膜NTおよび酸化シリコン膜OX2を順に積層した積層膜である。
【0159】
次に、
図28に示すように、ONO膜ON上にポリシリコン膜を形成した後、当該ポリシリコン膜およびONO膜ONを加工することで、メモリセル領域1Aに、当該ポリシリコン膜からなる制御ゲート電極CGを形成する。このとき、ONO膜ONは制御ゲート電極CGと半導体基板SBとの間に残り、メモリセル領域1Aにおいて制御ゲート電極CGに覆われていない領域では、半導体基板SBの上面が露出する。また、周辺回路領域1Bの当該ポリシリコン膜およびONO膜ONは除去され、ポリシリコン膜PS1が露出する。
【0160】
次に、
図29に示すように、
図11から
図22を用いて説明した工程と同様の工程を行うことで、メモリセル領域1Aにシングルゲート型のMONOSメモリであるメモリセルMC4を有し、周辺回路領域1BにMISFETQ1を有する本実施の形態の半導体装置を形成する。
【0161】
つまり、周辺回路領域1Bのポリシリコン膜PS1を加工してダミーゲート電極を形成した後、制御ゲート電極CGおよび当該ダミーゲート電極のそれぞれの横のサイドウォールおよびソース・ドレイン領域を形成した後、当該ソース・ドレイン領域上にシリサイド層S1を形成する。続いて、層間絶縁膜IL1を形成し、層間絶縁膜IL1の上面を研磨することで、制御ゲート電極CGおよび当該ダミーゲート電極のそれぞれの上面を露出させる。このとき、制御ゲート電極CGの上面にシリサイド層S1が形成されていたとしても、当該研磨工程により制御ゲート電極CG上のシリサイド層S1は除去される。
【0162】
その後、ダミーゲート電極を除去してメタルゲート電極に入れ替えた後、制御ゲート電極CGの上面に応力の小さいシリサイド層S2を形成する。続いて、層間絶縁膜IL2および複数のコンタクトプラグを形成する。これにより、
図29に示す構造を得る。
【0163】
メモリセルMC4は、前記実施の形態1とは異なり、制御ゲート電極CGの他にゲート電極を有していない。メモリセルMC4の書き込み動作および消去動作には、例えばファウラーノルドハイム型トンネル現象が利用される。なお、ホットエレクトロンやホットホールを用いて書き込み動作や消去動作させることも可能である。メモリセルMC4の書き込み動作時などには、メモリセルMC4に高い電位差(12V程度)を印加するため、メモリセルMC4を構成するMONOS型トランジスタは、相対的に高い耐圧が要求される。
【0164】
次に、メモリセルMC4の消去、書き込みおよび読み出し動作を説明する。
【0165】
まず、消去動作から説明する。例えば、メモリセルMC4に蓄積されたデータを消去する場合を考える。選択されたp型ウエルの電位を1.5V、制御ゲート電極CGの電位を−8.5V、ソース領域の電位を1.5V、ドレイン領域をフローティングにする。すると、メモリセルMC4の制御ゲート電極CGの下の電荷蓄積部、つまり窒化シリコン膜NTに蓄積された電荷が半導体基板SB側に引き抜かれ、データが消去される。
【0166】
次に、書き込み動作について説明する。例えば、メモリセルMC4にデータを書き込む場合を考える。選択されたp型ウエルの電位を−10.5V、制御ゲート電極CGの電位を1.5V、ソース領域の電位を−10.5V、ドレイン領域をフローティングにする。すると、制御ゲート電極CGの下の電荷蓄積部に電荷が注入され、データの書き込みが行なわれる。
【0167】
次に、読み出し動作について説明する。例えば、メモリセルMC4にデータ“1”が書き込まれトランジスタのしきい値電圧が高くなっているとする。メモリセルMC4のデータを読み出す場合、選択されたp型ウエルの電位を−2V、制御ゲート電極CGの電位を0V、ソース領域の電位を0V、ドレイン領域の電位を1Vにする。これにより、メモリセルMC4のデータを読み出す。この場合、データ“1”が書き込まれたメモリセルMC4のしきい値電圧は、データ“0”が書き込まれたメモリセルMC4のしきい値電圧に比べて高くなっているため、情報を読出すことができる。
【0168】
本実施の形態では、前記実施の形態1と異なりメモリゲート電極を設けていないが、前記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0169】
つまり、ゲートラストプロセスを用いているため、メモリセルMC4およびMISFETQ1のそれぞれのソース・ドレイン領域の上のシリサイド層S1と、制御ゲート電極CG上のシリサイド層S2とを別々の工程により形成することができる。
【0170】
ここでも、シリサイド層S1の底面には、シリサイド層S2の底面よりも多くPt(白金)が偏析しており、シリサイド層S1は、シリサイド層S2よりも引張応力が大きい。したがって、ソース・ドレイン領域に接するシリサイド層S1の引張応力を、制御ゲート電極CG上のシリサイド層S2よりも大きくすることで、各トランジスタの特性を向上させることができる。また、制御ゲート電極CG上のシリサイド層S2の引張応力を、ソース・ドレイン領域に接するシリサイド層S1よりも小さくすることで、シリサイド層S2の断線を防ぐことができる。
【0171】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0172】
その他、実施の形態に記載された内容の一部を以下に記載する。
【0173】
(1)半導体基板と、
前記半導体基板上に第1絶縁膜を介して形成された第1ゲート電極と、
前記第1ゲート電極の側壁に、内部に電荷蓄積部を有する第2絶縁膜を介して形成された第2ゲート電極と、
前記半導体基板の主面に形成された第1ソース・ドレイン領域と、
前記第1ソース・ドレイン領域の上面に接して形成された第1シリサイド層と、
前記第1ゲート電極の上面に接して形成された第2シリサイド層と、
前記第2ゲート電極の上面に接して形成された第3シリサイド層と、
を含むメモリセルを有し、
前記第2ゲート電極は、前記半導体基板上に前記第2絶縁膜を介して形成され、
前記第1〜第3シリサイド層は、白金を含んでおり、
前記第1シリサイド層の下面の単位面積当たりの白金の量は、前記第2シリサイド層および前記第3シリサイド層のそれぞれの下面の単位面積当たりの白金の量よりも多い、半導体装置。
【0174】
(2)半導体基板と、
前記半導体基板上に、内部に電荷蓄積部を有する第1絶縁膜を介して形成された第1ゲート電極と、
前記半導体基板の主面に形成された第1ソース・ドレイン領域と、
前記第1ソース・ドレイン領域の上面に接して形成された第1シリサイド層と、
前記第1ゲート電極の上面に接して形成された第2シリサイド層と、
を含むメモリセルを有し、
前記第2ゲート電極は、前記半導体基板上に前記第2絶縁膜を介して形成され、
前記第1および第2シリサイド層は、白金を含んでおり、
前記第1シリサイド層の下面の単位面積当たりの白金の量は、前記第2シリサイド層の下面の単位面積当たりの白金の量よりも多い、半導体装置。
【0175】
(3)(2)記載の半導体装置において、
前記第1シリサイド層の引張応力は、前記第2シリサイド層の引張応力よりも大きい、半導体装置。