(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6311065
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】燃料電池システムのためのバーナ蒸発器
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20180402BHJP
H01M 8/0612 20160101ALI20180402BHJP
C01B 3/32 20060101ALI20180402BHJP
B01J 7/00 20060101ALI20180402BHJP
F23D 11/44 20060101ALI20180402BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/0612
C01B3/32 A
B01J7/00 Z
F23D11/44
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-502256(P2017-502256)
(86)(22)【出願日】2015年7月16日
(65)【公表番号】特表2017-531897(P2017-531897A)
(43)【公表日】2017年10月26日
(86)【国際出願番号】DK2015000025
(87)【国際公開番号】WO2016008486
(87)【国際公開日】20160121
【審査請求日】2017年2月15日
(31)【優先権主張番号】PA201400393
(32)【優先日】2014年7月16日
(33)【優先権主張国】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】517009361
【氏名又は名称】サーエナジー エー/エス
【氏名又は名称原語表記】SERENERGY A/S
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100161274
【弁理士】
【氏名又は名称】土居 史明
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】コルスガード、アンダース、リズム
(72)【発明者】
【氏名】バン、マッズ
【審査官】
武市 匡紘
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−083684(JP,A)
【文献】
特開2006−306657(JP,A)
【文献】
特表2003−522087(JP,A)
【文献】
特表2006−503780(JP,A)
【文献】
特開2003−269882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00−8/24
B01J 4/00−7/02
C01B 3/00−6/34
F23D 11/40−11/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
‐燃料電池スタックと、
‐接触改質器と、
‐遊離水素の一部を生成するために接触改質器を介して供給されるメタノールと水の混合物を蒸発させるための蒸発器と、
を備えた燃料電池システムであって、
‐前記燃料電池スタックは、電流を流すためのアノードおよびカソードの形態の電極を各々が特徴とする、複数のプロトン交換膜燃料電池から構成され、アノードとの接触による遊離水素のイオン形態への反応は電極間の電流の流れに比例し、
‐前記燃料電池システムが安定した電流生産状態に入ることのできる温度レベルまで前記システムを加熱するための熱を提供するための流体燃料バーナを、さらに備えた、
燃料電池システムにおいて、
前記システムは、前記バーナ用の液体燃料を加熱するためのバーナ燃料蒸発器をさらに含み、前記バーナ燃料蒸発器は、熱を生成するためバーナに導かれる液体燃料を微細ミスト状の燃料に蒸発させるために、前記バーナからの熱の形態のエネルギを吸収することができるように前記バーナに近接して配設されており、
前記バーナ燃料蒸発器は、予蒸発器を形成する第一セクションが、前記液体燃料を部分的に蒸発させて液滴、小滴、およびミストにした後、ノズルを形成する第二セクションが、前記液体燃料を微細ミストに霧化し、その後に前記微細ミストが、液体燃料をさらに加熱し安定化させて気相にする経路である第三セクションに送られるように構成されており、
前記予蒸発器は、複数のチャンバに分割されており、隣接するチャンバは、前記液体燃料の液滴を通過させるための間隙を介して相互につながっていること、を特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記予蒸発器は、略垂直方向の壁を持つ少なくとも一つの井戸形キャビティによって形成され、前記キャビティ内に少なくとも一つの突出ロッドが配設され、前記壁および前記突出ロッドは前記液体燃料を加熱するための加熱要素を形成することを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記井戸形キャビティは壁および突出ロッドを持つチャネルを形成し、その中で前記液体燃料は重力のため壁から壁に跳飛して、液体燃料の液滴を液滴、小滴、およびミストへと霧化し蒸発させることができることを特徴とする、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
加熱要素を形成する前記突出ロッドは、前記井戸形キャビティ内であらゆる方向に突出することができるように構成されることを特徴とする、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
加熱要素を形成する前記突出ロッドは、三角形から略円形に達するまで多辺形にわたって多数の側面により形成されることを特徴とする、請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
加熱要素を形成する前記突出ロッドの側面の形状は、平面から曲面または凹面まで様々な形状とすることができることを特徴とする、請求項2に記載のシステム。
【請求項7】
前記壁および前記突出ロッドは、残留液体燃料が重力のため前記井戸形キャビティの突出部と衝突することのできる液滴を形成するように適応された、ノーズを形成するエッジを有していることを特徴とする、請求項2ないし6に記載のシステム。
【請求項8】
加熱要素を形成する前記突出ロッドは、前記井戸形キャビティ内に縦横に配列されることを特徴とする、請求項2ないし7に記載のシステム。
【請求項9】
前記予蒸発器の各チャンバは、壁の負に角度付けられた略垂直部分と、その後に続く壁の正に角度付けられた略垂直部分と、を含むことを特徴とする、請求項2に記載のシステム。
【請求項10】
前記チャンバ間の前記間隙は、後続のより低い圧力のチャンバ内へ前記液体燃料を二相霧化させるための圧力ノズルを形成するように適応されることを特徴とする、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記液体燃料を微細ミストに霧化する前記ノズルは、前記液体燃料のミストへの霧化を支援する圧力降下をもたらすために、縮小断面の通路の後に続く拡大断面の通路によって形成されることを特徴とする、請求項1ないし10のいずれかに記載のシステム。
【請求項12】
二相霧化のための減圧ノズルは前記井戸形キャビティの最後の出口を形成することを特徴とする、請求項2に記載のシステム。
【請求項13】
前記改質器へ送られるように液体燃料を加熱するための前記蒸発器は、前記燃料電池システムの迅速な始動を容易にするため、液体燃料の蒸発を加速して前記改質器に送られる微細ミスト状の燃料にするために、前記バーナからの熱の形態のエネルギを吸収することができるように配設されることを特徴とする、請求項1ないし12のいずれかに記載のシステム。
【請求項14】
前記液体燃料を前記燃料電池スタックへ送られるシンガスに改質するための前記改質器は、前記燃料電池システムの迅速な始動を容易にするため、前記バーナからの熱の形態のエネルギを吸収することができるように配設されることを特徴とする、請求項1ないし13に記載のシステム。
【請求項15】
前記燃料電池スタックを冷却するための冷却システムは、前記燃料電池システムの迅速な始動を容易にするため、前記バーナからの熱の形態のエネルギを吸収することができるように配設されたラジエータを含むことを特徴とする、請求項1ないし14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、燃料電池によって電気エネルギを発生させる技術に関する。さらに詳しくは、本発明は、燃料電池スタックと、遊離水素の一部を生成するために接触改質器を介して供給されるメタノールと水の混合物を蒸発させるための蒸発器とを備えた燃料電池システムに関し、燃料電池スタックは、電流を流すためのアノードおよびカソードの形態の電極を各々が特徴とする複数のプロトン交換膜燃料電池から構成され、アノードに接触することによる遊離水素のイオン形態への反応は電極間の電流の流れに比例する。
【背景技術】
【0002】
電気化学的に、燃料電池は原燃料を電気エネルギおよび熱に変換し、原燃料が連続的に供給される限り、生成し続ける。
【0003】
燃料電池の基本的変換技術は少なくとも一世紀にわたってよく知られているが、燃料の節約および環境に優しい技術の最新の開発および需要に伴い、ルネサンス(復興期)に入ってきた。加えて、燃料電池技術は、モバイルまたはリモートプラットフォームにおける電気供給およびバックアップ解決策に有利である。
【0004】
簡単に説明すると、プロトン交換膜技術を使用して、燃料電池は、水素の供給を、アノードを形成する第一電極に沿って通過させ、かつ一般的に大気として直接取り入れる酸素の供給を、カソードを形成する第二電極に沿って通過させる必要がある。電極間に配設されるのはイオン伝導層、一般的にプラチナとリン酸とを含む高分子膜である。水素および酸素を供給すると、電極間に電圧が発生し、電極間に電流が流れ、取り付けられた電力消費機器に供給することができるようになる。電流の引込みに対応して、多数の水素分子および酸素分子は反応し、後に排気中で結合したときに、水素イオンおよび酸素は最終生成物として水を形成する。加えて、システムは熱を発生する。
【0005】
必要な酸素供給は、酸素を含む充分な量の大気を取り込むことによって達成されるので、燃料電池を利用するために全体的に必要なものは、水素の安定かつ充分な供給を形成することである。水素は、大小を問わず加圧シリンダから供給することがおそらく可能であるが、水素は爆発性の高い気体であるので、分配および貯蔵は危険である。水素を加圧することは非常にエネルギを消費し、たとえ加圧された形態でも水素は比較的大きい場所を取る。より良い解決策は、より安定した形態の燃料から多量の水素を含有する合成ガス(以下、シンガスという)への変換によって、現場で直接水素を発生させることである。
【0006】
高く評価されるのは、分配に関して明らかに有利であることから、水素含有シンガスを生成するためにメタノールを使用するプロセスである。技術は低温および高温両方の燃料電池スタックを記載しており、120℃の温度がこれらの技術を分岐する温度であると一般的に理解されている。さらに詳しくは、低温システムは通常およそ70℃の温度領域で動作し、高温システムはおよそ160℃で動作する。しかし、どちらの技術にも当てはまるのは、燃料を処理し、かつ遊離水素を含むシンガスを供給するために、プロセスには改質器が必要であるということである。処理される燃料はメタノール水溶液である(以下、液体燃料という)。第一段階で、加熱器は液体燃料を蒸発させ、ガスは改質器へ送られる。改質器は銅を含む触媒を含み、それは熱に加えて、液体燃料を主に水素とともに、比較的大きい含有量の二酸化炭素ならびに小さい含有量の水ミストおよび一酸化炭素から成るシンガスに変換する。シンガスは、燃料電池に供給するための燃料源として直接使用可能である。
【0007】
燃料電池システムは他の電流発生システム用のバックアップ解決策として使用されるので、燃料システムは、電流が生成されない冷待機状態から、システムが定格公称電流量を発生する生産モードへの高速遷移時間を持つことが重要である。
【0008】
燃料電池システムは、安定生産モードに達する前の水素含有シンガスの安定的な発生に依存するので、これは難問である。このプロセスでは、蒸発器および改質器を加熱する必要がする。したがって、システムを初期化するために、熱の形態のエネルギが必要である。従来のシステムでは、熱は電気的加熱手段によって提供される。通常はバックアップシステム用に限られた量の電気エネルギしか利用できないので、先行技術に関連して始動プロセスには依然として限られた量の電気エネルギだけを必要とし、冷待機モードから安定状態の生産モードへより高速で遷移する改善された解決策をさらに提供する、代替解決策が求められている。
【発明の概要】
【0009】
本発明の全体的な目的は、始動プロセスのために電気エネルギを必要としないか、あるいは限られた量の電気エネルギを必要とするだけであり、冷待機状態から安定状態の生産モードへ高速で遷移する、燃料電池システムを提供することである。
【0010】
これは、本発明によれば、請求項1に記載する燃料電池システムの技術的特徴によって達成される。
【0011】
さらに詳しくは、燃料電池システムは、燃料電池スタックと、接触改質器と、遊離水素の一部を生成するために接触改質器を介して供給されるメタノールと水の混合物を蒸発させるための蒸発器とを備え、燃料電池スタックは、電流を流すためのアノードおよびカソードの形態の電極を各々が特徴とする複数のプロトン交換膜燃料電池から構成され、アノードとの接触による遊離水素のイオン形態への反応は電極間の電流の流れに比例し、燃料電池システムはさらに、燃料電池システムが安定した電流生産状態に入ることのできる温度レベルまでシステムを加熱するための熱を提供する流体燃料バーナを備える。
【0012】
一実施形態ではバーナは従来の火炎バーナである。
【0013】
さらなる実施形態ではバーナは触媒バーナであり、一実施形態ではそれはモノリスである。モノリス触媒バーナとは、触媒で被覆された管状チャネルを持つセラミック装置であると理解される。触媒バーナがその発熱動作を開始することができるためには、その前に約100℃の温度に達しなければならない。これは、バーナの周囲の領域に配設された電気的加熱手段を使用することによって達成することができる。動作温度に達するための電気的加熱は、バッテリバックアップによって提供することのできる限られた量の電気エネルギを必要とするだけである。高く評価されるのは、安定した電流生産への始動手順に電力を供給するように意図されたバッテリバックアップであり、バックアップバッテリは補充して、燃料電池システムの次の始動に備えることができる。これは、適切なインタフェースを介してバッテリバックアップを配電システムに接続することによって、または生産モードに入ったときに燃料電池システムから電流を供給することによって、達成することができる。
【0014】
一実施形態では、システムは、バーナ用の液体燃料を加熱するためのバーナ燃料蒸発器をさらに含み、バーナ燃料蒸発器は、熱を生成するためバーナに導かれる液体燃料を加速的に微細ミスト状の燃料に蒸発させるために、バーナからの熱の形態のエネルギを吸収することができるように、バーナに近接して配設される。メタノール‐水混合物の形態の液体燃料を加熱することで、バーナの熱の生成が増強され、燃料電池システムの迅速な始動が容易になる。液体燃料を加熱するための熱はバーナから供給されるが、液体燃料を加熱することの利点は、システムの加熱により生産モードへの移行が加速されることである。
【0015】
より明確には、バーナ燃料蒸発器は、液体燃料を部分的に蒸発させて液滴、小滴、およびミストにする予蒸発器を形成する第一セクションの後に、液体燃料を微細ミストに霧化するノズルを形成する第二セクションが続き、その後に微細ミストが送られる第三セクションであって、液体燃料をさらに加熱し安定化させて気相にする経路である第三セクションが続くことを特徴とする。
【0016】
一実施形態では、予蒸発器は、略垂直方向の壁を持つ少なくとも一つの井戸形キャビティによって形成され、このキャビティ内に少なくとも一つの突出ロッドが配設され、壁および突出ロッドは液体燃料を加熱するための加熱要素を形成している。
【0017】
さらに一実施形態では、液体燃料を微細ミストに霧化するノズルは、液体燃料のミストへの霧化を支援する圧力降下をもたらすために、縮小断面の通路の後に続く拡大断面の通路によって形成される。
【0018】
一実施形態では、改質器に送られる液体燃料を加熱するための蒸発器は、燃料電池システムの迅速な始動を容易にするため、改質器に導かれる液体燃料を加速的にミスト状の燃料に蒸発させるために、バーナからの熱の形態のエネルギを吸収することができるように構成される。
【0019】
一実施形態では、液体燃料を燃料電池スタックに送られるシンガスに改質するための改質器は、燃料電池システムの迅速な始動を容易にするため、バーナからの熱の形態のエネルギを吸収することのできるように構成される。
【0020】
さらに別の実施形態では、燃料電池スタックを冷却するための冷却システムは、燃料電池システムの迅速な始動を容易にするため、バーナからの熱の形態のエネルギを吸収することができるように構成されたラジエータを含む。
【0021】
以上の説明を統合すると、システムの動作温度を維持するための充分な熱が部分的に燃料電池スタックによって提供され、かつ部分的にバーナで排ガスを燃焼することによって提供される、定常状態の生産モードに達するまで、システムは、バーナによって生成された熱をシステム全体に分配するように構成される。余剰熱は冷却システムによってシステムから除去される。
【0022】
以下で、幾つかの代替的実施形態を説明しながら、バーナ燃料蒸発器についてさらに詳述する。一般的に、蒸発器は井戸状のキャビティとして形成され、流体燃料は重力のためキャビティ内部へ跳ね落ち、微細片に分割することができる。
【0023】
より明確には、キャビティは、略垂直方向に形成される壁、または表面積の大きい壁を提供するために様々な形状に形成される壁により構成される。壁の形状は、液体燃料が壁を伝って流下するとき、またはキャビティ内を跳ね落ちるときに、液体燃料を液滴、小滴、およびミストへと分裂させるように働くエッジまたはドロップノーズ(drop nose)を備えることができる。
【0024】
一実施形態では、蒸発器は、壁の垂直方向の伝播が直線状の垂直線から離れて角度付けられるように形成された壁を持つキャビティとして形成される。こうして、壁はチャネルを形成し、その中を液体燃料の液滴は、重力のため壁から壁へ跳飛し、液体燃料の液滴は液滴、小滴、およびミストへと霧化され蒸発される。換言すると、予蒸発器内の経路の向きは、通常の動作中には略垂直に形成されるが、壁は上から下へわずかに傾斜する。
【0025】
上述した方向付けは、燃料電池システム自体が通常の意図された動作時に向けられる水平方向に対して相対的に記載されるものであることを理解されたい。
【0026】
熱は蒸発プロセスのために必要であるので、蒸発プロセスを強化するために、壁はさらに加熱要素として働くように適応される。熱伝導性材料の選択はこれを容易にする。加えて、壁の加熱は、バーナからの熱の伝達を受ける表面の大きさに依存する。
【0027】
さらなる実施形態では、チャネル内に突出するロッド形加熱要素が、蒸発器のキャビティ内に配設される。ロッド形加熱要素は、蒸発器のキャビティを横切る全ての方向に突出することができる。
【0028】
ロッド形加熱要素の形状は、三角形から略円形に達するまで多辺形にわたって多数の側面を持つことができれば、高く評価される。
【0029】
さらに、ロッド形加熱要素の側面の形状は、平面から曲面または凹面まで様々な形状とすることができる。曲面または凹面の形状は、表面を伝って流れる液体燃料の移動距離を長くする。その結果、より多くの液体燃料が蒸発する。
【0030】
特に評価されるのは、残留液体燃料を滴下させ、こうして重力のため蒸発器キャビティの突出部と衝突するように適応されたノーズをエッジが形成する実施形態であり、これは、ロッド状加熱要素または壁である。ノーズはロッド状加熱要素および/または壁に適用することができる。
【0031】
液体燃料の液滴が予蒸発器内を落下するときに、液滴はより小さい液滴に分裂し、チャネルの壁とロッド状の加熱要素との間で跳飛する。壁およびロッド形加熱要素との接触は燃料をミストへと蒸発させ、霧化させる。
【0032】
特別な実施形態では、ロッド形加熱要素は蒸発器キャビティ内に縦横に配列される。
【0033】
さらなる実施形態では、ロッド形加熱要素は、少なくとも一つのロッド形加熱要素を含む格子として構成される。
【0034】
格子は、一実施形態では、横に並んで配置された幾つかのロッド形加熱要素を含む。
【0035】
さらなる実施形態では、格子は、横に並んで配置された幾つかのロッド形加熱要素と、第一組のロッド形加熱要素に対する交差部材を形成するように、少なくとも一つの、しかしおそらく二つ以上の、横に並んで配置されたロッド形加熱要素との網状体として形成される。一実施形態では、ロッド形加熱要素の組はそれらが相互に交差する接合部を形成する。
【0036】
蒸発器は、各々が液体燃料の液滴を通過させるための間隙と、壁の負に角度付けられた略垂直部分と、その後に続く壁の正に角度付けられた略垂直部分と、それに続いて次のチャンバに通じる間隙とを含む、複数のチャンバに分割することができる。
【0037】
一実施形態では、チャンバは鏡像配置された少なくとも二組の壁を有し、ロッド状加熱要素、格子またはロッド状加熱要素の縦横配列は、壁の間に配設される。
【0038】
提示する実施形態から分かる通り、蒸発器内の移動距離および壁の表面および加熱ロッドへの液体の暴露の程度は、液体燃料が液滴、小滴、および霧状ミストへと適合し、燃料がチャネル内をより遠くに移動して完全に蒸発してガスになるのを支援する。
【0039】
一実施形態では、チャンバ間の間隙は、後続のより低い圧力のチャンバ内へ液体燃料を二相霧化するための圧力ノズルを形成するように適応される。霧化された液体燃料をより低い圧力のチャンバまたはキャビティに流入させることは、液体が蒸発して気体になることを効果的に支援する。
【0040】
特別な実施形態では、二相霧化のための減圧ノズルは、予蒸発器キャビティの最後の出口を形成する。部分的に霧化され蒸発した液体燃料を迷路状経路チャネルの入口として機能する出口に移送する、垂直チャネルを形成するように適応されたチャネルが、ノズルの後に続く。霧化した燃料ミストと蒸発した燃料ガスの混合物は共に垂直チャネル内を流れ、蒸発器のチャネルの行程の奥に配設された低圧キャビティに逃避しようとする。それは、霧化された燃料ミストの一部を蒸発させてガスにし、かつ/またはミストを迷路状経路チャネル内に吹き込む場合に、効果を発揮する。迷路状経路チャネルは蒸発した燃料をさらに加熱し、霧化燃料の残りを完全に蒸発してガスにすることを確実にする。迷路状経路を含むチャネルの壁は、蒸発した燃料を加熱するための加熱要素を形成する。
【0041】
さらに詳しく説明すると、液体燃料の蒸発は熱の形態のエネルギを必要とする。第一相(液体)から第二相(気体)への転移は、気体状の水が体積でおよそ千倍に拡大することを意味する。霧化に必要なエネルギは、デルタ圧力×気体膨脹の速度係数に等しい。さらに、表面張力のため霧化に必要なエネルギは、小滴の面積×液体燃料のシグマに等しい。一実施形態では、電気的に加熱される加熱パネルは、この二相霧化および蒸発に必要なエネルギを提供するが、評価される実施形態では、燃料電池スタックおよび排ガスからの余剰熱が、蒸発器を加熱するこの目的に役立つ。
【0042】
モジュールは物理的に、例えばダイカストのような様々な製造方法を用いて、または機械加工プロセスでモジュールのチャネルを切り出すことによって、作製することができることを理解されたい。付加的作業は、その特徴的な経路を持つバーナ燃料蒸発器モジュールを形成することである。その特徴的な経路はバーナに近接して配設され、液体バーナ燃料をミスト状に蒸発させるために熱エネルギを取り込むことを容易にし、バーナにとってより良好な許容できる燃料を提供し、こうしてシステムを迅速に加熱して生産モードに入ることを促進する。
【0043】
蒸発器モジュールは、説明した通り、好ましくはアルミニウム製とすることができるが、鉄、ステンレス鋼、マグネシウムの合金のみならず、セラミック材のような、他の熱伝導性材料の使用も予見することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
本発明の実施形態について、添付の図面に関連して説明する。
【0045】
【
図2】液体燃料を蒸発させてバーナで燃焼させるのに適したミスト状にするためのバーナ燃料蒸発器設備を備えた、改質器モジュールの略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図面の
図1は、燃料電池スタック2と、燃料電池スタック2に改質燃料を供給して燃料電池スタック2が電流の定常流を生成することを可能にする複数の支援モジュールとを備えた、燃料電池システム1を示す。燃料電池スタック2に供給されたが電流に変換されていない過剰なガスはバーナ3に送られる。排ガスは500℃の温度領域で通常の動作条件下にあり、エネルギ含有量は、燃料電池スタック2に燃料を供給するためのシンガスを調製するために再使用される。さらに詳しくは、排ガスは熱交換器モジュール4を介して送られ、それは排ガスから熱を取り出し、熱をスタック内の隣接モジュール、ここでは蒸発器モジュール5に移送する。さらに、熱交換器モジュール4は、熱の形態の熱エネルギを冷却システムへ移送するためのラジエータを含む。冷却システムは始動段階で、熱の形態で熱エネルギを燃料電池スタック2に提供するように働き、システムが立ち上がると、燃料電池スタック2から過度の熱を取り去るように動作する。熱エネルギは液体燃料を蒸発させかつ改質するために使用され、余剰熱は廃棄される。
【0047】
液体燃料つまりメタノールと水の混合物は処理されて、燃料電池スタック2で使用される遊離水素から構成されるシンガスになる。蒸発器モジュール5で、燃料は霧化され、蒸発して二相段階の液体燃料になる。さらに、蒸発したガスは、蒸発したガスを改質して大部分が遊離水素から構成されるシンガスにする、接触改質器モジュール6に送られる。接触改質器モジュール6は銅を含む触媒を含み、それは熱に加えて、蒸発した液体燃料を、燃料電池スタック2が直接利用可能なシンガスへと変換する。燃料電池スタック2および排ガスバーナ3の排熱は、蒸発器モジュール5および接触改質器モジュール6のチャネルを通して導かれる。接触改質器6における温度要求は最高であり、したがって接触改質器6はバーナ3の真後ろに配設される。排ガスチャネルの後段では、蒸発器モジュール5は、液体燃料をガスに蒸発させるために、排ガスから熱を取り込む。
【0048】
図2に示す接触改質器モジュール6もまた、液体燃料を蒸発させて、バーナ3で燃焼させるのに適したミストにするためのバーナ燃料蒸発器設備7を含む。
【0049】
バーナ燃料蒸発器設備7の詳細図を図面の
図3に示す。液体燃料はバーナ燃料蒸発器設備7の入口穴8を介して供給される。バーナ燃料蒸発器設備7の第一部分は予蒸発器9として形成され、液体燃料をそれを介して重力によって下降する。予蒸発器9は本実施形態では五つのチャンバ10に分かれており、特定の実施形態では、それをより多数またはより少数のチャンバにすることができる。液体燃料が入口穴8を介して供給されると、それは第一チャンバ内に落下し、さらに間隙11を介して次のチャンバに送られる。液滴は次のチャンバ10内に飛び込み、そこで突出ロッド12に衝突する。突出ロッド12は部分的に加熱要素として働き、かつ部分的に液体燃料を霧化し蒸発させて小滴およびミストにするように働く。小滴は重力のため予蒸発器9の下へさらに落下するので、より多くの突出ロッド12に衝突し、蒸発の効果が増大する。見て分かる通り、予蒸発器9の壁13は、壁13を伝って流れる液体燃料の移動距離が延長されかつ可能な限り多くの液体燃料が霧化または蒸発するように突出ロッド12を抱持するために、垂直に角度付けられる。液体燃料は、特に入口穴8の直後に予蒸発器9内を跳ね落ちるので、液体燃料および小滴は壁13から壁13へ跳飛し、最終的に突出ロッド12に衝突し、この構成は液体燃料を完全に霧化かつ蒸発させるのに役立ち、したがって噴射注入器の優れた代替物となる。壁13もまた加熱され、液体燃料を加熱しかつ蒸発させる加熱要素を形成することが注目される。加熱要素として働く突出ロッド12は、壁13と同様に、液体燃料が予蒸発器9を伝って下降するときに、液体燃料を霧化しかつ液体燃料の移動距離を延長させるように特に適応される。実験は、突出ロッド12の四角形の形状が液体燃料の霧化および蒸発に優れた効果を持つことを示した。三角形の形状もまた効果的に働く。しかし、より多くのエッジは液滴の捕捉、およびしたがって液滴が加熱を受ける時間を支援する。したがってエッジの形状は、残留液体燃料を滴下させ、したがって重力のため蒸発器キャビティ内の突出部と衝突させるように適応されたノーズ20を形成しており、このノーズ20はロッド状加熱要素または壁のいずれかに配設される。
図3から分かるように、ノーズはロッド状加熱要素および/または壁に適用することができる。
【0050】
間隙11は、増大する圧力のため、バーナ燃料蒸発器設備7のチャネルの行程で液体燃料が蒸発し、かつ気相を維持するのを助けるノズルとしても働く。
【0051】
特殊な圧力ノズル14は予蒸発器の出口として設けられる。小さい通路のため、圧力ノズル14は圧力降下をもたらし、それは霧化した液体燃料の残りをさらに、蒸発器の迷路チャネル16への経路15である垂直チャネル内に吹き込むのに役立ち、霧化し蒸発した燃料はチャネル内でさらに加熱されて均一なガスミストになる。圧力ノズル14を介して圧力はかなり高くなるので、それは蒸発器のための噴射注入ユニットとして働くという効果があるが、それはバーナ燃料蒸発器設備7の完全に一体化された特徴であるので、前に示した欠点は無い。バーナ燃料蒸発器の出口17は、バーナを取り囲むキャビティ18に直接つながる。バーナ、ここでは好ましくはモノリスの前で、蒸発した燃料のジェット噴流を発生させるために、小さい注入ノズル19が設けられる。
【0052】
システムを理解するために、システムの構成部品は、従来のねじおよびボルトによって一体に固定することのできるモジュールとして組み立てられる。できるだけ多くの熱エネルギを取り出し、システムの高い効果を得るために、例えば排ガス用の経路はモジュールからモジュールへ送られる。こうして、モジュールは、
図1で蒸発器モジュール5と改質器モジュール6との間に見られるように、中間ガスケットを用いて結合することができる。
【0053】
モジュールは材料の棒材を機械加工することによって、または押出し、ダイカスト、もしくは焼結等によって作製することができる。本実施形態では、蒸発器モジュールは、アルミニウムの棒材を用いて、棒材の第一側に蒸発器用のチャネルを切り出して提供される。
【0054】
本発明によって提供されるのは、燃料を部分的に蒸発させ、その後に燃料を微細ミストに霧化するノズル14が続き、その後に最終蒸発ゾーン16に送られ、かつ注入ノズル19を介してバーナに導かれる、バーナ燃料蒸発器設備7を用いて液体燃料を蒸発させるための増強されたシステムである。