【文献】
Chin. J. Nephrol.,2007年,Vol.23,pp.251-256
【文献】
Int. J. Cancer,2010年,Vol.126,pp.1095-1108
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記siRNAのセンス鎖の3’末端の末端側から連続する1〜10ヌクレオチドがDNAに変換され、且つアンチセンス鎖の5’末端の末端側から連続する1〜10ヌクレオチドがDNAに変換された請求項1〜3のいずれか1項に記載のsiRNA。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2007/109097号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2003/035083号パンフレット
【特許文献3】特開2007−119396号公報
【特許文献4】特表2009−516517号公報
【特許文献5】国際公開第2009/061417号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2008/109548号パンフレット
【特許文献7】国際公開第2007/79224号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Wang Z, Gao Z, Shi Y, Sun Y, Lin Z, Jiang H, Hou T, Wang Q, Yuan X, Zhu X, Wu H, Jin Y, J Plast Reconstr Aesthet Surg, 1193-1193, 60, 2007
【非特許文献2】Hwang M, Kim HJ, Noh HJ, Chang YC, Chae YM, Kim KH, Jeon JP, Lee TS, Oh HK, Lee YS, Park KK, Exp Mol Pathol, 48-54, 81, 2006
【非特許文献3】Takabatake Y, Isaka Y, Mizui M, Kawachi H, Shimizu F, Ito T, Hori M, Imai E, Gene Ther, 965-973, 12, 2005
【非特許文献4】Xu W, Wang LW, Shi JZ, Gong ZJ, Hepatobiliary Pancreat Dis Int, 300-308, 8, 2009
【非特許文献5】Liu XJ, Ruan CM, Gong XF, Li XZ, Wang HL, Wang MW, Yin JQ, Biotechnol Lett, 1609-1615, 27, 2005
【非特許文献6】福本重太郎, 末次彩子, 原田知佳, 河口知允, 濱田直樹, 前山隆茂, 桑野和善, 中西洋一, 日本呼吸器学会雑誌, 185, 46, 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、線維症を治療するために有効なsiRNA及びこれを用いた医薬を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、ヒトSmad3遺伝子またはヒトMCP−1遺伝子を標的とする特定のsiRNAが、ヒト細胞においてSmad3またはMCP−1の発現を効果的に抑制できることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の1)〜10)に係るものである。
1)配列番号1の塩基番号647〜667番の塩基、1816〜1836番の塩基、2359〜2387番の塩基、3670〜3690番の塩基及び5486〜5506番の塩基、並びに配列番号2の塩基番号377〜410番の塩基、473〜493番の塩基、533〜560番の塩基及び599〜631番の塩基よりなる群から選ばれる連続する17〜21塩基を標的配列とし、全長が30ヌクレオチド以下であるsiRNA。
2)siRNAが、以下の(a)〜(r)から選ばれる上記1)のsiRNA。
(a)配列番号3に示されるセンス配列と配列番号4に示されるアンチセンス配列とから形成されるsiRNA
(b)配列番号5に示されるセンス配列と配列番号6に示されるアンチセンス配列とから形成されるsiRNA
(c)配列番号7に示されるセンス配列と配列番号8に示されるアンチセンス配列とから形成されるsiRNA
(d)配列番号9に示されるセンス配列と配列番号10に示されるアンチセンス配列とから形成されるsiRNA
(e)配列番号11に示されるセンス配列と配列番号12に示されるアンチセンス配列とから形成されるsiRNA
(f)配列番号13に示されるセンス配列と配列番号14に示されるアンチセンス配列とから形成されるsiRNA
(g)配列番号15に示されるセンス配列と配列番号16に示されるアンチセンス配列とから形成されるsiRNA
(h)配列番号17に示されるセンス配列と配列番号18に示されるアンチセンス配列とから形成されるsiRNA
(i)配列番号19に示されるセンス配列と配列番号20に示されるアンチセンス配列とから形成されるsiRNA
(j)配列番号21に示されるセンス配列と配列番号22に示されるアンチセンス配列とから形成されるsiRNA
(k)配列番号23に示されるセンス配列と配列番号24に示されるアンチセンス配列とから形成されるsiRNA
(l)配列番号25に示されるセンス配列と配列番号26に示されるアンチセンス配列とから形成されるsiRNA
(m)配列番号27に示されるセンス配列と配列番号28に示されるアンチセンス配列とから形成されるsiRNA
(n)配列番号29に示されるセンス配列と配列番号30に示されるアンチセンス配列とから形成されるsiRNA
(o)配列番号31に示されるセンス配列と配列番号32に示されるアンチセンス配列とから形成されるsiRNA
(p)配列番号33に示されるセンス配列と配列番号34に示されるアンチセンス配列とから形成されるsiRNA
3)前記siRNAのセンス鎖の3’末端の末端側からオーバーハングヌクレオチドを除いた連続する1〜10ヌクレオチドがDNAに変換された上記1)又は2)のsiRNA。
4)前記siRNAのアンチセンス鎖の5’末端の末端側から連続する1〜10ヌクレオチドがDNAに変換された上記1)−3)のsiRNA。
5)前記siRNAのセンス鎖の3’末端の末端側からオーバーハングヌクレオチドを除いた連続する1〜10ヌクレオチドがDNAに変換され、且つアンチセンス鎖の5’末端の末端側から連続する1〜10ヌクレオチドがDNAに変換された上記1)−4)のsiRNA。
6)アンチセンス鎖の5’末端がモノリン酸化された上記1)〜5)のsiRNA。
7)上記1)〜6)のいずれかのsiRNAを含有する医薬組成物。
8)上記1)〜6)のいずれかのsiRNAを有効成分として含有するSmad3遺伝子またはMCP−1遺伝子発現抑制剤。
9)上記1)〜6)のいずれかのsiRNAを有効成分として含有する線維症予防又は治療剤。
10)上記1)〜6)のいずれかのsiRNAを有効成分として含有する肺線維症予防又は治療剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明のsiRNAは、Smad3またはMCP−1の発現を低濃度で効率よく抑制又は阻害することができるので、線維症の予防又は治療のための医薬として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のsiRNAが標的とする配列は、配列番号1の塩基番号647〜667番の塩基、1816〜1836番の塩基、2359〜2387番の塩基、3670〜3690番の塩基及び5486〜5506番の塩基、並びに配列番号2の塩基番号377〜410番の塩基、473〜493番の塩基、533〜560番の塩基及び599〜631番の塩基よりなる群から選ばれる連続する17〜21塩基であるが、ここで、各群から選ばれる連続する17〜21塩基としては、好ましくは19〜21塩基であり、より好ましくは21塩基である。
配列番号1で示される塩基配列は、Smad3のmRNAの塩基配列であり、当該配列情報はGenBankに、GeneBank Accession No. NM_005902.3として、配列番号2で示される塩基配列は、MCP−1のmRNAの塩基配列であり、当該配列情報はGenBankに、GeneBank Accession No. NM_002982.2として、登録されている。
【0015】
本発明のsiRNAは、Smad3またはMCP−1のmRNAの上記標的配列に相補的な配列であるアンチセンス鎖と当該アンチセンス鎖に相補的な配列であるセンス鎖がハイブリダイズしてなるものであり、当該Smad3またはMCP−1のmRNAを切断する活性(RNA干渉作用)を有し、当該mRNAの翻訳を阻止する能力、すなわち当該Smad3遺伝子またはMCP−1遺伝子の発現を阻害する能力を有する。
【0016】
本発明のsiRNAのヌクレオチド長は、センス鎖、アンチセンス鎖が同一のヌクレオチド長であっても異なっていてもよく、その全長は30ヌクレオチド以下であり、好ましくは25ヌクレオチド以下、より好ましくは23ヌクレオチド以下、或いは21ヌクレオチドである。
また、センス鎖及びアンチセンス鎖の両端は、平滑末端でもよいし、それぞれの鎖の3’側がオーバーハング(突出末端)であっても良い。ここで、「平滑末端」とは、2本鎖RNAの末端部分において、センス鎖の末端領域とそれに対合するアンチセンス鎖の末端領域が、1本鎖部分を形成することなく対合している構造を意味する。また、「オーバーハング」は、ダングリングエンドとも称され、2本鎖RNAの末端部分のセンス鎖の末端領域又はそれに対合するアンチセンス鎖の末端領域において、対合する塩基が存在しないために2本鎖を形成できず、1本鎖部分(突出末端)が存在している構造を意味する。
突出末端部分の塩基数は1〜10ヌクレオチドであり、好ましくは1〜4ヌクレオチドであり、さらに好ましくは1〜2ヌクレオチドである。尚、突出末端の長さは二つの鎖の間で無関係であり、互いに異なる長さであっても良い。突出末端部分のヌクレオチドはRNAでも、DNAでもよく、標的であるSmad3のmRNAまたはMCP−1のmRNAに相補的な塩基が好ましいが、上記RNA干渉能を保持する限り相補的でない塩基であってもよい。
【0017】
本発明のsiRNAは、2つの別個の鎖から構成される1つの二本鎖RNAである他、1本の鎖がステムループ構造をとることにより形成される二本鎖RNAであってもよい。すなわち、本発明のsiRNAには、センス鎖の5’末端とアンチセンス鎖の3’末端に2〜4ヌクレオチドからなるループを形成したRNA、センス鎖の3’末端とアンチセンス鎖の5’末端に2〜4ヌクレオチドからなるループを形成したRNAも含まれる。さらには、センス鎖の5’末端とアンチセンス鎖の3’末端及びセンス鎖の3’末端とアンチセンス鎖の5’末端の両端に2〜4ヌクレオチドからなるループを形成したRNAも含まれる。
【0018】
本発明のsiRNAと標的配列は、同一であることが望ましいが、上記RNA干渉を誘導できる範囲において、実質的に同一、すなわち相同な配列であってもよい。具体的には、本発明のsiRNAのアンチセンス鎖配列と標的配列がハイブリダイズする限り、1又は数個(例えば、2、3、4個)のミスマッチがあってもよい。すなわち、本発明のsiRNAには、標的配列に対して1又は数個の塩基が置換、付加若しくは欠失したものであってRNA干渉を誘導できるもの、或いは標的配列と85%以上、好ましくは90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上の配列同一性を有し、且つRNA干渉を誘導できるものが包含される。
尚、この場合のハイブリダイズ条件は、本発明のsiRNAを生体内に投与して医薬として用いる場合は、生体内の条件であり、本発明のsiRNAを試薬としてin vitroで用いる場合は、中度のストリンジェントな条件又は高度なストリンジェントな条件であり、このような条件として、例えば、400mM NaCl、40mM PIPES pH6.4、1mM EDTA、50℃〜70℃で12〜160時間でのハイブリゼーション条件が挙げられる。これらの条件については、当業者に周知であり、Sambrook et al.(Molecular Cloning: A Laboratory Manual
second edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, USA, 1989)に記載されている。
また、配列同一性は、リップマン−パーソン法(Lipman-Pearson法;Science, 227, 1435, (1985))等によって計算すればよく、例えば、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx-Win(Ver.5.1.1;ソフトウェア開発)のホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、Unit size to compare(ktup)を2として解析を行なうことにより算出される。
【0019】
また、本発明のsiRNAには、上記RNA干渉を誘導できる限り、センス鎖又はアンチセンス鎖の何れか一方のヌクレオチドを全てDNAに変換したもの(ハイブリッド型)や、センス鎖及び/又はアンチセンス鎖の一部のヌクレオチドをDNAに変換したもの(キメラ型)が包含される。
ここで、RNAヌクレオチドのDNAへの変換とは、AMPをdAMPへ、GMPをdGMPへ、CMPをdCMPへ、UMPをdTMPへ変換することを意味する。
ハイブリッド型としては、センス鎖のヌクレオチドをDNAに変換したものが好ましい。キメラ型としては、下流側(センス鎖の3’末端側、アンチセンス鎖の5’末端側)の一部のヌクレオチドをDNAに変換したものが挙げられる。具体的には、センス鎖の3’末端側及びアンチセンス鎖の5’末端側のヌクレオチドを共にDNAに変換したもの、センス鎖の3’末端側又はアンチセンス鎖の5’末端側の何れかのヌクレオチドをDNAに変換したものが挙げられる。また、変換するヌクレオチド長は、RNA分子の1/2に相当するヌクレオチドまでの任意長とするのが好ましく、例えば末端から1〜13ヌクレオチド、好ましくは1〜10ヌクレオチドが挙げられる。RNA干渉効果、RNA分子の安定性、安全性等の点から、好適なキメラ型siRNAとしては、例えばヌクレオチド長がそれぞれ19〜21であり、センス鎖の3’末端側からオーバーハングヌクレオチドを除いた1〜10、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜6のヌクレオチド及びアンチセンス鎖の5’末端側から1〜10、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜6のヌクレオチドを任意数、連続してDNAに変換したものが挙げられる(後記〔表2〕参照)。また、この場合、センス鎖(オーバーハングヌクレオチドを除く)とアンチセンス鎖のDNA変換数は同一であるのがより好ましい。
【0020】
また、本発明のsiRNAは、上記RNA干渉を誘導できる限り、そのヌクレオチド(リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド)が、糖、塩基及び/又はリン酸塩が化学修飾されたヌクレオチド類似体であっても良い。塩基が修飾されたヌクレオチド類似体としては、例えば、5位修飾ウリジン又はシチジン(例えば、5−プロピニルウリジン、5−プロピニルシチジン、5−メチルシチジン、5−メチルウリジン、5−(2−アミノ)プロピルウリジン、5−ハロシチジン、5−ハロウリジン、5−メチルオキシウリジン等);8位修飾アデノシン又はグアノシン(例えば、8−ブロモグノシン等);デアザヌクレオチド(例えば7−デアザ−アデノシン等);O−及びN−アルキル化ヌクレオチド(例えば、N6−メチルアデノシン等)等が挙げられる。
また、糖が修飾されたヌクレオチド類似体としては、例えば、リボヌクレオチドの2’−OHが、H、OR、R、ハロゲン原子、SH、SR、NH
2、NHR、NR
2、もしくはCN(ここで、Rは炭素数1−6のアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を示す)等によって置換された2’位糖修飾、5’末端がモノリン酸化された5’末端リン酸化修飾が挙げられる。
リン酸塩が修飾されたヌクレオチド類似体としては、隣接するリボヌクレオチドを結合するホスホエステル基を、ホスホチオエート基で置換したものが挙げられる。
【0021】
また、本発明のsiRNAは、上記ヌクレオチド類似体とは別に、センス鎖の5’末端側又は3’末端側から1〜6番目のヌクレオチド(5’末端、3’末端、又は末端以外の内部の塩基、糖)の少なくとも1つに特定の置換基又は機能性分子が直接又はリンカーを介して結合していてもよく、センス鎖の5’末端側から1〜6番目、好ましくは1〜4番目のヌクレオチドの少なくとも1つに当該置換基又は機能性分子が結合しているのが好ましい。
ここで、置換基としては、一例として、アミノ基;メルカプト基;ニトロ基;炭素数1〜40(好ましくは2〜20、更に好ましくは4〜12)のアルキル基;炭素数1〜40(好ましくは2〜20、更に好ましくは4〜12)のアミノアルキル基;炭素数1〜40(好ましくは2〜20、更に好ましくは4〜12)のチオアルキル基;炭素数1〜40(好ましくは2〜20、更に好ましくは4〜12)のアルコキシル基;炭素数1〜40(好ましくは2〜20、更に好ましくは4〜12)のアミノアルコキシル基;炭素数1〜40(好ましくは2〜20、更に好ましくは4〜12)のチオアルコキシル基;炭素数1〜40(好ましくは2〜20、更に好ましくは4〜12)のモノ若しくはジアルキルアミノ基;炭素数1〜40(好ましくは2〜20、更に好ましくは4〜12)のアルキルチオ基;炭素数2〜40(好ましくは2〜20、更に好ましくは4〜12)のポリエチレンオキサイド基;炭素数3〜39(好ましくは3〜21、更に好ましくは3〜12)のポリプロピレンオキサイド基等を挙げることができる。これらの置換基を結合させることによって、RNA干渉効果を顕著に増強させることが可能になる。
【0022】
機能性分子としては、糖、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、DNA、RNA(tRNAを含む)、アプタマー、修飾ヌクレオチド、低分子有機・無機材料、コレステロール、デンドリマー、脂質、高分子材料等が例示される。機能性分子を付加することにより、優れたRNA干渉効果と当該機能性分子に基づく有用効果を兼ね備えさせることができる。
【0023】
上記糖としては、例えば、グルコース、ガラクトース、グルコサミン、ガラクトサミン等の単糖、これらを任意に組み合わせたオリゴ糖又は多糖等が挙げられる。
【0024】
上記タンパク質としては、生体内に存在するタンパク質、薬理作用を有するタンパク質、分子認識作用を有するタンパク質等を使用でき、該タンパク質の一例として、インポーチンbタンパク質、アビジン、抗体等を挙げることができる。
【0025】
上記DNAとしては、具体的には、塩基長が5〜50のDNA、好ましくは塩基長が5〜25のDNAが例示される。
【0026】
上記ペプチドとしては、例えば、オクタアルギニンペプチド R8、核局在化シグナルペプチド配列(HIV−1 TatやSV40T抗原等)、核外移行性シグナルペプチド(HIV−1 RevやMAPKK等)、細胞膜融合ペプチド等が挙げられる。上記修飾ヌクレオチドとしては、例えば、ホスホロチオエート型、ボラノフォスフェート型DNA/RNA等のリン酸骨格を修飾したもの;2’−0Me修飾RNA、2’−F修飾RNA等の2’修飾ヌクレオチド;LNA(Locked Nucleic Acid)やENA(2'-O,4'-C-Ethylene-bridged nucleic acids)等のヌクレオチドの糖分子を架橋した修飾ヌクレオチド;PNA(ペプチド核酸)、モルフォリノヌクレオチド等の基本骨格が異なる修飾ヌクレオチドなどが挙げられる(国際公開第2008/140126号パンフレット、国際公開第2009/123185号パンフレット参照)。
【0027】
上記低分子有機・無機材料としては、例えば、Cy3、Cy5等の蛍光物質;ビオチン;量子ドット;金微粒子等が挙げられる。上記デンドリマーとしては、例えば、ポリアミドアミンデンドリマー等が挙げられる。上記脂質としては、例えば、リノール酸、DOPE(1,2-Dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine)等の他、国際公開第2009/123185号パンフレットに記載の2つの疎水基を有する2本鎖脂質が挙げられる。上記高分子材料としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン等が挙げられる。
【0028】
ここで、機能性分子を有する基としては、機能性分子の残基そのものであってもよく、また、機能性分子の残基に二官能性リンカーの一方の官能基が結合した基であってもよい。つまり、前者の場合、機能性分子が、上記センス鎖RNAの所定の部位に直接結合しており、後者の場合、機能性分子が二官能性リンカーを介して上記センス鎖RNAの所定の部位に結合している。ここで、二官能性リンカーとしては、官能基を2つ含むリンカーであれば特に制限されないが、例えば、N-スクシニミジル=3-(2-ピリジルジチオ)プロピナート、N-4-マレイミド酪酸、S-(2-ピリジルジチオ)システアミン、ヨードアセトキシスクシンイミド、N-(4-マレイミドブチリルオキシ)スクシンイミド、N-[5-(3’-マレイミドプロピルアミド)−1−カルボキシペンチル]イミノジアセティクアシッド、N-(5-アミノペンチル)-イミノジアセテックアシッド等を使用できる。
上記センス鎖RNAにおける、置換基若しくは機能性分子又はこれらを連結するリンカーの結合部位については、特に限定されるものではないが、これらがセンス鎖RNAの所定のヌクレオチドのリン酸部分の水酸基を構成する水素原子と置換されて結合していることが好ましい。
【0029】
本発明のsiRNAは、具体的には、例えば以下の(a)〜(q)に示すセンス配列とアンチセンス配列とから形成される二本鎖RNA分子が例示できる。
【0031】
また、キメラ型としては、センス鎖の3’末端側から1〜8のヌクレオチド及びアンチセンス鎖の5’末端側から1〜6のヌクレオチドを任意数、連続してDNAに変換したものが好適に挙げられ、例えば上記の(c)の場合を用いて例示すれば以下のとおりである。
【0033】
本発明のsiRNAの製造方法は、特に限定されないが、公知の製造方法、例えば、in
vitroで化学的に合成すること、又はプロモーター及びRNAポリメラーゼを用いた転写系により合成することができる。
化学的合成は、siRNA構成要素である核酸分子を含むアミダイド樹脂を原料として、核酸合成装置により合成することが可能である。
転写系による合成は、ヘアピン型RNAをトリミングする試験管内転写法により2本鎖RNAを合成することが可能である。
【0034】
斯くして得られる本発明のsiRNAは、後記実施例に示すように、ヒト肺胞上皮由来細胞においてSmad3またはMCP−1の発現をmRNAレベルで効果的に抑制することができる。
従って、本発明のsiRNA及び当該siRNAを投与対象内で発現可能な発現ベクターは、Smad3遺伝子またはMCP−1遺伝子発現抑制のための医薬、Smad3またはMCP−1の過剰発現に起因する疾患、例えば線維症および/または肺がんの予防・治療のための医薬、すなわち線維症および/または肺がんの予防又は治療剤として有用である。
ここで、肺の線維化を来たす疾患としては、間質性肺炎、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患(COPD: Chronic obstructive pulmonary disease)、急性呼吸促迫症候群 (ARDS: Acute respiratory distress syndrome)、炎症性肺疾患、肺感染症、放射性肺臓炎、薬剤性間質性肺炎、膠原病に伴う間質性肺炎など多岐にわたるが、原因が特定できない間質性肺炎である特発性間質性肺炎(IIPs)のうち特発性肺線維症 (IPF) が特に好ましい。特発性間質性肺炎(IIPs)には臨床病理学的疾患として、特発性肺線維症(IPF)、非特異的間質性肺炎 (NSIP)、特発性器質化肺炎 (COP/BOOP)、急性間質性肺炎 (AIP)、剥離性間質性肺炎 (DIP)、呼吸細気管支炎に伴う間質性肺疾患 (RB-ILD)、リンパ球性間質性肺炎 (LIP)等が包含される。
【0035】
本発明のsiRNAを医薬として使用する場合、そのままでも使用することができるが、高度分岐環状シクロデキストリン又はシクロアミロースと複合体を形成させてもよい。ここで、高度分岐環状デキストリンとは、枝作り酵素をアミロペクチンに作用させて生産されるものであり、内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有する重合度50〜5000のグルカンをいう。ここで、内分岐環状構造部分とはα−1,4−グルコシド結合とα−1,6−グルコシド結合とで形成される環状構造部分であり、そして外分岐構造部分とは該内分岐環状構造部分に結合した非環状構造部分である。高度分岐環状デキストリンの好適な形態として、上記グルカンの内分岐環状構造部分の重合度が10〜100であるもの、上記グルカンの外分岐構造部分の重合度が40以上であるもの、上記外分岐構造部分の各単位鎖の重合度が平均で10から20であるものが例示される。また、高度分岐環状シクロデキストリンは市販されており、本発明では市販品を使用することもできる。
シクロアミロースは、グルコースがα1,4結合により結合した環状α−1,4−グルカンであり、へリックス構造の内側に立体的で奥行きのある空洞部分を有している。本発明に使用されるシクロアミロースにおけるグルコースの重合度としては、特に制限されるものではないが、例えば10〜500、好ましくは10〜100、更に好ましくは22〜50が例示される。シクロアミロースは、アミロマルターゼ等の酵素を利用して、グルコースから調製することができる。また、シクロアミロースは市販されており、本発明では市販品を使用することもできる(国際公開第2009/61003号パンフレット参照)。
【0036】
本発明のsiRNAは、1以上の薬学的に許容される担体又は賦形剤を用いて常法により、医薬組成物として製剤化することができる。当該医薬組成物は、経肺投与、経鼻投与、経口投与、直腸投与、注射等の何れの投与形態の組成物であってもよく、投与は全身性又は局所的のいずれでもよい。その剤形は、その投与経路に応じて、液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸薬、ペレット、カプセル剤、散剤、徐放性製剤、坐剤、エアロゾル、スプレーなど、使用に適したいかなるものでもよい。
【0037】
例えば、経鼻投与では、有効成分を、適当な溶媒(生理食塩水、アルコールなど)に溶解し、その溶液を鼻に注入又は点鼻することによって送達することができる。あるいは、経肺投与又は経鼻投与では、有効成分を、適切な噴霧剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又はその他の適切な気体を用いて、加圧パック又はネブライザからエアロゾルスプレーを噴出させる形で都合良く送達することができる。加圧エアロゾルの場合、投薬単位は、計量分が送達されるように弁を設けることにより決定することができる。更に粉末吸入剤としての投与も可能である。
【0038】
注射の場合、有効成分は、例えばボーラス注射又は連続注入による非経口投与(すなわち静脈内又は筋肉内投与)用に溶剤として処方することができ、好ましくはハンクス液やリンガー液、生理食塩水などの、生理学的に適合性のある緩衝液として処方することができる。この溶剤は、懸濁剤や安定剤、及び/又は分散剤などの、処方可能な薬剤を含有してよい。あるいは有効成分は、使用前に、例えば滅菌した発熱性物質を含まない水などの適切な賦形剤と共に再構成するために、粉末形態にすることができる。注射用製剤は、保存剤を添加して、例えばアンプル又は複数回投与容器中の単位投与剤形として提供することができる。
【0039】
経口投与する場合には、本発明の治療剤は、例えば錠剤、顆粒、散剤、乳剤、カプセル、シロップ、水性又は油性懸濁液、又はエリキシルの形態であり得る。錠剤又は丸薬形態の場合は、胃腸管内での分散及び吸収を遅延させ、それにより長時間持続した作用をもたらすために、組成物をコーティングすることができる。
【0040】
薬学的に許容される担体又は賦形剤としては、限定されるものではないが、液体(例えば水、油、生理食塩水、デキストロース水溶液、エタノールなど)、固体(例えばアカシアガム、ゼラチン、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、タルク、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、ケラチン、コロイド状シリカ、乾燥脱脂乳、グリセロールなど)が挙げられる。また、本発明の治療剤は、通常の医薬組成物に配合される補助剤、防腐剤、安定化剤、濃化剤、潤滑剤、着色剤、湿潤剤、乳化剤、及びpH緩衝剤などのうち適当なものを含有してもよい。
【0041】
本発明の医薬組成物には、本発明のsiRNAを、0.001〜50質量%、好ましくは0.01〜10質量%、更に好ましくは0.1〜1質量%含有することができる。
【0042】
本発明の医薬組成物の投与量は、有効量を適用すれば特に制限されないが、例えば、体重1kgあたり、好ましくは0.0001〜100mgであり、更に好ましくは0.002〜1mgである。
【0043】
本発明の医薬組成物においては、本発明のsiRNAに換えて、投与対象内で当該siRNAを発現可能な発現ベクターを用いることも可能である。
この場合の発現ベクターは、例えば、本発明のsiRNAをコードすることができるDNAを、適当な遺伝子治療用ベクター、例えば、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、又はレンチウイルスベクター等に挿入することにより構築することができる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1 siRNAの作製
下記表3に示されるSmad3遺伝子またはMCP−1遺伝子を標的とするsiRNA分子を設計し、各siRNAオリゴヌクレオチドを化学合成法によって合成し、HPLC精製法にて精製して使用した。
【0045】
【表3】
【0046】
実施例2 Smad3またはMCP−1の発現抑制効果の評価(in vitro)
(1)細胞
ヒト肺胞上皮由来のA549細胞(DSファーマバイオメディカル株式会社)を用いた。
【0047】
(2)培養条件
1×10
5個の細胞を10%牛胎児血清含有のD−MEM培地(Dulbecco's modified Eagle's Medium, 100 unit/mLペニシリン, 100 μg/mLストレプトマイシン含有)を12ウェルプレートに播種する。37℃、5%CO
2条件下で一晩培養後、40%コンフルエントとなったA549細胞の培地を無血清培地に交換した。
【0048】
(3)前処理・siRNA添加量
siRNAとして、上記表3に示すオリゴヌクレオチドを用い、細胞が40%コンフルエントとなった時点で、Lipofectamine2000 (インビトロジェン社)を用いて上記細胞への導入を行った。
具体的には、各ウェルあたり2.0μL Lipofectamine2000を98μL OPTI−MEM(インビトロジェン)に添加し、5分間室温でインキュベーションした(A溶液)。
0.2μM siRNA溶液0.625μLを99.375μL OPTI−MEMに添加した(B溶液)。A及びB溶液を混和し、室温で20分間インキュベーションした。インキュベーション後、12−ウェルプレート各ウェルにAB混液を添加した。siRNA最終濃度が、0.1nMとなるように添加した。
【0049】
(4)後処理
(i)サイトカイン処理
siRNA及びLipofectamine混液を添加6時間後、培地を0.1%BSA(牛血清アルブミン)及びサイトカイン(1ng/mL IL−1β及び1ng/mL
TNF−α)含有D−MEM培地に交換し、12時間培養した。培養後上清をサンプリングした。
【0050】
(ii)細胞中全RNA抽出
細胞中全RNA抽出には、自動核酸抽出装置QuickGene−810(富士フイルム株式会社)とQuickGene−810の専用キットであるQuickGene RNA cultured cell kitS(富士フイルム株式会社)を用いた。細胞を1.0mL PBSで洗浄し、細胞溶解液0.5mLを添加し、細胞中に含まれる全RNAの抽出を行った。0.5mL溶解液(LRC、メルカプトエタノール添加済み)を添加した12ウェルプレートをシーソー型振盪機で5分間撹拌した。ピペッティングにより液を5−6往復させてよく混ぜ、液をエッペンドルフチューブへ移した。エタノールを420μL添加し、ボルテックスミキサーで15秒間撹拌後、QuickGene−810で処理を行なった。QuickGene−810での処理中、DNase(RQ1 RNase−free DNase,Promega)を添加した。抽出した全RNAサンプルは、次処理を行うまで−80℃冷蔵庫にて保管した。
【0051】
(iii)全RNAのcDNA化
培養細胞から抽出された全RNAサンプル中のRNA濃度(μg/mL)を、260 nmにおける吸光度の測定値から計算した(対照:TEバッファー)。この値をもとに、各サンプルにおいてRNA量が0.1μgに相当する溶液量を96ウェルプレートに入れた。これに蒸留水を加えて全量12μLとし、さらにQuantiTect Reverse Transcription
Kit(QIAGEN)に含まれるgDNA Wipeout Buffer 2μLを加え、ボルテックス混和後、42℃で2分間インキュベートし、その後4℃に冷却した。これにQuantiTect Reverse Transcription Kit(QIAGEN)に含まれるQuantiscript Reverse Transcriptase 1μL、Quantiscript RT Buffer 4μL、及びRT Primer Mix 1μLを加え、混和し、42℃で15分間インキュベートした。続いてQuantiscript Reverse Transcriptaseを失活させるため95℃で3分間加熱した後、4℃に冷却した。
この調製液(cDNA調製原液)をTEバッファーで5倍希釈し、標的遺伝子(Smad3またはMCP−1)をターゲットとしたPCR用cDNA溶液とした。
また、cDNA調製原液をTEバッファーで50倍希釈し、内部標準遺伝子としてGAPDHを選定しPCR用cDNA溶液とした。なお、コントロールサンプル(siRNA非投与)のcDNA調製原液をTEバッファーで1、10、100、及び1000倍希釈し、Smad3またはMCP−1をターゲットとしたPCR検量線用サンプルとした。同様にコントロールサンプルcDNA調製原液をTEバッファーで10、100、1000、及び10000倍希釈し、GAPDHをターゲットとしたPCR検量線用サンプルとした。
【0052】
(5)Smad3またはMCP−1の発現量の測定方法
Smad3またはMCP−1に由来するcDNA産物2.5μLを鋳型として、12.5μLQuantiFast SYBR Green PCR Master Mix (QIAGEN)と、ヒト由来Smad3遺伝子、ヒト由来MCP−1遺伝子又はヒト由来GAPDH遺伝子の2.5 μL QuntiTect Primer Assay (QIAGEN)を用いて、滅菌蒸留水にて最終容量25μLとしたPCR反応溶液を調製した。調製した溶液は、Applied Biosystems 7500 (Life Technologies Japan)にて、95(Cで5分間加熱した後、1)95℃,10秒、2)60℃,35秒のサイクルを40回繰り返した後に、95℃から60℃に徐冷し、熱解離測定を行った。PCR増幅過程に由来するCt(Threshold Cycle)値を基に、GAPDH遺伝子のCt値による各標的遺伝子の増幅割合を補正し、標的遺伝子のmRNA抑制効果を評価した。結果を
図1および
図2に示す。
siRNA番号が、c,eおよびmのものは、0.1nMの濃度においても40%以上のSmad3またはMCP−1の発現抑制効率を有していることがわかった。特に、siRNA番号が、cおよびeのsiRNAは、0.1nMにおいても60%以上の抑制効率を示した。