【文献】
宮崎恵美, 加工でん粉の製パンへの利用, 農畜産業振興機構, 2011.04.08, [オンライン], [検索日 2017.07.21], インターネット:<URL: https://www.alic.go.jp/joho-d/joho08_000059.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず最初に本発明のパン用穀粉組成物について以下に詳細に説明する。
【0013】
本発明のパン用穀粉組成物は、小麦粉と、加工澱粉と、小麦蛋白とを必須成分として含有する粉体の組成物である。
【0014】
本発明に用いる小麦粉に特に制限はなく、パン類の製造に通常用いられる小麦粉を用いることができる。当該小麦粉として通常には強力粉を用いる。
本発明に用いる小麦粉の蛋白含有率は、作業性及び食味の観点から10.0質量%以上であることが好ましく、11.0質量%以上であることがより好ましく、11.5質量%以上であることがさらに好ましい。また、生地伸展性等の生地特性の観点からは15.0質量%以下であることが好ましく、14.5質量%以下であることがより好ましく、14.0質量%以下であることがさらに好ましい。
また、本発明に用いる小麦粉中の澱粉含有率は、作業性及び食感の観点から65.0質量%以上であることが好ましく、68.0質量%以上であることが好ましく、70.0質量%以上であることがさらに好ましい。また、食感の観点から76.0質量%以下であることが好ましく、74.0質量%以下であることがより好ましく、72.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0015】
本発明のパン用穀粉組成物中、小麦粉の含有量は60〜80質量%であることが好ましく、65〜75質量%であることがより好ましい。
【0016】
本発明に用いる加工澱粉は、澱粉の構成単位であるグルコース単位における2位、3位及び6位の炭素原子が有するヒドロキシル基の1又は2以上が修飾されたものである。当該修飾形態としては、好ましくはエステル化又はエーテル化が挙げられる。
上記のエステル化は、グルコース単位が有する1又は2以上のヒドロキシル基と、カルボン酸又はリン酸とがエステル結合を形成してなる形態が好ましい。
また、上記のエーテル化は、グルコース単位が有する1又は2以上のヒドロキシル基と、1価又は多価のアルコールとがエーテル結合を形成してなる形態が好ましい。
さらに、上記のエステル化又はエーテル化の形態として、一のグルコース単位における1又は2以上のヒドロキシル基と、他のグルコース単位における1又は2以上のヒドロキシル基とが、多価アルコール、多価カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、リン酸等を介してエーテル結合やエステル結合で架橋されてなる形態(以下、架橋澱粉ともいう。)も挙げることができる。上記一のグルコース単位と他のグルコース単位とは、同一の澱粉分子に存在してもよいし、異なる澱粉分子に存在していてもよい。
【0017】
加工澱粉中のエステル基及びエーテル基の定量は、平成20年10日付けで交付された「食品衛星法施行規則の一部を改正する省令、食安発第1001001号」にて制定された成分規格の分析方法に準じて行うことができる。
本発明に用いる加工澱粉の乾燥質量当たりのエステル基又はエーテル基の含有量は、パンの食感、特に柔らかさ及び老化防止の観点から、エステル化澱粉の場合は好ましくは0.7質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、さらに好ましくは1.3質量%以上、よりさらに好ましくは1.5質量%以上であり、エーテル化澱粉の場合は好ましくは2.0質量%以上、より好ましくは3.0質量以上、さらに好ましくは4.0質量%以上である。また、パンの食感の観点から、エステル化澱粉の場合は好ましくは2.5質量%以下、より好ましくは2.3質量%以下、さらに好ましくは2.1質量%以下であり、エーテル化澱粉の場合は好ましくは7.0質量%以下、より好ましくは6.0質量%以下、さらに好ましくは5.0質量%以下である。
【0018】
また、上記の架橋澱粉において、架橋の程度は膨潤度で表される。当該膨潤度は、乾燥物換算で試料1.0gを純水100mLに分散し、90℃で30分間加熱後、30℃まで冷却し、得られた糊化液を遠心分離(3000rpm、10分間)してゲル層と上澄層に分け、ゲル層の質量を測定した値をAとし、質量を測定したゲル層を乾固(105℃、恒量)して質量を測定した値をBとしたときのA/Bの比率で表わされる。
本発明に用いうる架橋澱粉の膨潤度は、食感及びパンの体積の観点から8以上が好ましく、11以上がより好ましく、15以上がさらに好ましい。また、老化抑制の観点から、29以下が好ましく、27以下がより好ましく、25以下がさらに好ましい。
本発明に用いる加工澱粉を以下に具体例を挙げて説明する。
【0019】
(A)グルコース単位が有するヒドロキシル基と、カルボン酸又はリン酸とがエステル結合を形成してなる形態
当該カルボン酸化合物の炭素原子数は1〜10の整数であることが好ましい。澱粉に無水酢酸を作用させれば酢酸がエステル結合した形態のアセチル化澱粉が得られるし、オクテニルコハク酸無水物を作用させれば、オクテニルコハク酸がエステル結合した澱粉が得られる。
【0020】
(B)グルコース単位が有するヒドロキシル基と、ジオールとがエーテル結合を形成してなる形態
当該ジオールの炭素原子数は1〜10の整数であることが好ましい。当該ジオール化合物は好ましくはプロピレングリコールが好ましい。プロピレングリコールが澱粉とエーテル結合を形成した構造をとることで、ヒドロキシプロピル化澱粉となる。
【0021】
(C)グルコース単位が有するヒドロキシル基と、他のグルコース単位が有するヒドロキシル基とが、リン酸又はジカルボン酸を介してリン酸エステル結合又はエステル結合により架橋されてなる形態
当該ジカルボン酸の炭素原子数は1〜10の整数であることが好ましい。より具体的には、アジピン酸が好ましい。
【0022】
(D)上記(A)〜(C)のうち、2以上の形態が混在した形態。
好ましくは上記(A)又は(B)の形態と(C)の形態とが混在した形態である。
具体例として、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉等が挙げられる。
【0023】
本発明に用いうる加工澱粉の原料には、ワキシーコーン澱粉、コーン澱粉、小麦澱粉、米澱粉、糯米澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉及びタピオカ澱粉等から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
本発明に用いうる加工澱粉は、常法により製造することができ、市販品を用いてもよい。
【0024】
本発明のパン用穀粉組成物中、食感の向上と生理機能発現の観点から、小麦粉、加工澱粉、及び小麦蛋白の総含有量100質量部中、当該加工澱粉の含有量は20〜40質量部である。さらに、生理機能発現の観点から、小麦粉、加工澱粉、及び小麦蛋白の総含有量100質量部中の加工澱粉の含有量は23質量部以上であることが好ましく、25質量部以上であることがより好ましい。また、製パン作業性の観点からは38質量部以下であることが好ましく、35質量部以下であることがより好ましい。
【0025】
本発明に用いる小麦蛋白は、小麦粉より抽出した蛋白画分の製剤である。また、本発明においては、本発明のパン用穀粉組成物の一成分である、上述の小麦粉に含まれる蛋白質は、本発明で規定する小麦蛋白ではない。本発明の小麦蛋白は、小麦粉として配合されるものではなく、小麦粉より抽出した蛋白画分の製剤として配合されるものである。
本発明に用いる小麦蛋白は、蛋白質の含有量が60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることがさらに好ましい。
本発明に用いる小麦蛋白中、小麦蛋白質以外の残部は、糖質、灰分、水分等で構成される。
本発明に用いる小麦蛋白としては、市販品を用いることができる。例えば、グリコ栄養食品社製のA−グルシリーズ(A−グルWP、A−グルG、A−グルK等)やファイングルVP、理研ビタミン社製のエマソフトシリーズ(エマソフトEX−100、エマソフトEX−95、エマソフトA−2000、エマソフトVE等)が挙げられる。
【0026】
本発明のパン用穀粉組成物において、小麦蛋白の含有量と加工澱粉の含有量の関係は、製パン作業性及びパン食感の観点から、質量比で下記式(1)を満たし、より好ましくは下記式(2)を満たす。
【0027】
12≦[加工澱粉の含有量]/[小麦蛋白の含有量]≦20 (1)
14≦[加工澱粉の含有量]/[小麦蛋白の含有量]≦18 (2)
【0028】
本発明のパン用穀粉組成物には、小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白から構成されていてもよいし、他の成分、例えば、糖類、膨剤、食塩、香料、乳化剤、粉乳、イーストから選ばれる1種又は2種以上を含有してもよい。
本発明のパン用穀粉組成物中、小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白の総含有量は80〜100質量%であることが好ましく、85〜100質量%であることがより好ましく、88〜100質量%であることがさらに好ましい。本発明のパン用穀粉組成物中の小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白の総含有量が100質量%未満の場合、残部に上記他の成分が目的に応じて適宜含有される。
【0029】
上記イースト(酵母)は、パン生地の調製において通常用いられる酵母を用いることができる。穀粉組成物中に存在するイーストはドライイーストであることが好ましい。穀粉組成物中のイーストの種類と含有量に特に制限はなく、パン生地の発酵が進行する範囲で適宜調節することができるが、ドライイーストであれば、小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白の総含有量100質量部に対してイーストを0.2〜10質量部含有することが好ましく、0.5〜5質量部配合することがより好ましい。
【0030】
上記糖類に特に制限はなく、単糖類、二糖類、三糖類、四糖類、五糖類、六糖類や澱粉加水分解物、又はこれらを還元した糖アルコール等が挙げられる。例えば、グルコース、マルトース、フルクトース、シュークロース、ラクトース、トレハロース、マルトトリオース、マルトテトラオース、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、砂糖、水飴、異性化糖、転化糖、シクロデキストリン、デキストリン、分岐シクロデキストリン等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0031】
上記乳化剤としては、粉末乳化製剤、又は、乳化した状態で製剤化された剤、例えばベースト状態で製剤化された剤を用いることができる。粉末乳化剤または乳化した状態で製剤化された剤に特に制限はなく、目的に応じて種々の乳化剤を用いることができる。粉末乳化剤の例としては、エマルジーMM−100(理研ビタミン社製)、パンマック200V(理研ビタミン社製)、ポエムW−90V(理研ビタミン社製)、サンソフトNo.437(太陽化学社製)等を用いることができる。乳化した状態で製剤化された剤としては、ソフィカルベータ(理研ビタミン社製)等を用いることができる。
【0032】
続いて、本発明のパン類の製造方法(以下、単に、「本発明の製造方法」という。)について説明する。
【0033】
本発明の製造方法の第1の実施形態は、上記本発明のパン用穀粉組成物を用いてパン生地を調製し、この生地を焼成することを含む。用いるパン用穀粉組成物に含まれないか、あるいは含有量が十分でない成分は、穀粉組成物の配合とは別に配合してパン生地を調製することができる。例えば、パン用穀粉組成物が小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白のみからなる場合、この組成物を用いてパン生地を調製するには、通常は少なくとも水、イーストを別途配合する。同様に、糖類、膨剤、食塩、香料、乳化剤、粉乳、油脂等の種々の成分を別途配合することができる。後述の実施例では、小麦粉、加工澱粉、小麦蛋白の他、イースト、イーストフード、粉末乳化剤、砂糖、食塩、脱脂粉乳を含有する穀粉組成物を用い、ショートニング及び水を別途添加してパン生地を調製している。
【0034】
第1の実施態様において、パン生地中に乳化剤を配合することが好ましい。乳化剤は穀粉組成物に由来してもよいし、穀粉組成物とは別に配合してもよい。いずれの場合においても、生地中への乳化剤の配合量は、穀粉組成物100質量部に対して0.1〜2.0質量部とすることが好ましい。
上記水、イースト等のパン生地中での配合量は、後述する第2の実施形態と同様である。
【0035】
本発明の穀粉組成物と、水と、必要により配合される各成分を混捏し、これを発酵させてパン生地を調製することができる。パン生地の調製において、混捏でダメージを受けた生地を回復させるためにフロアータイムをとることが好ましい。また、生地を分割した後には分割により生地のダメージを回復させるためのベンチタイムをとることが好ましい。
発酵させたパン生地を焼成することでパンが得られる。焼成温度は通常は180〜240℃である。
【0036】
本発明の製造方法の第2の実施形態は、少なくとも小麦粉と、加工澱粉と、小麦蛋白と、水と、イーストとを混合して混捏し、これを発酵させてパン生地を調製する工程を含む。上記小麦粉、加工澱粉、小麦蛋白の好ましい形態は上記本発明の穀粉組成物において説明したものと同一である。
第2の実施形態においては、パン生地の調製における加工澱粉の配合量は、食感向上と生理機能発現の観点から、小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白の総配合量100質量部中、20〜40質量部を占める。生理機能発現の観点から、小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白の総配合量100質量部に占める加工澱粉の配合量は23質量部以上であることが好ましく、より好ましくは25質量部以上である。また、製パン作業性の観点から、小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白の総配合量100質量部に占める加工澱粉の配合量は38質量部以下であることが好ましく、より好ましくは35質量部以下である。
【0037】
第2の実施形態において、パン生地に配合される加工澱粉の配合量と、小麦蛋白の配合量の関係は、製パン作業性及びパン体積等の品質向上の観点から、質量比で下記式(1’)を満たし、より好ましくは下記式(2’)を満たす。
【0038】
12≦[加工澱粉の配合量]/[小麦蛋白の配合量]≦20 (1’)
14≦[加工澱粉の配合量]/[小麦蛋白の配合量]≦18 (2’)
【0039】
また、第2の実施形態において、パン生地への水の配合量は適宜に調節することができる。通常には、小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白の総配合量100質量部に対して20〜80質量部、好ましくは40〜80質量部配合する。また、イーストの配合量に特に制限はないが、ドライイーストであれば、小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白の総配合量100質量部に対して0.2〜10質量部配合することが好ましく、0.5〜5質量部配合することがより好ましい。
【0040】
第2の実施形態では、パン生地の調製において、糖類、油脂、膨剤、食塩、香料、乳化剤等から選ばれる1種又は2種以上を配合してもよい。糖類、乳化剤としては上述したものを用いるのが好ましい。油脂としては、バター、マーガリン等の乳化油脂、ショートニング、液状食用油、ラード等が挙げられる。各成分の配合量に特に制限はなく、目的に応じて適宜決定すればよい。
【0041】
第2の実施形態における生地の調製において、各成分は、最終的に上記で説明した配合比率を満たせば同時に混合してもよいし、各成分を順次混合してもよい。また、各成分を複数回に分けて混合して生地を調製してもよい。例えば、中種法を採用する場合には、小麦粉とイースト等を混捏した後、発酵(中種発酵)させて中種生地を調製し、この中種生地に加工澱粉、小麦蛋白等を配合してさらに捏上げて、発酵(ホイロ)を行うことでパン生地を調製することができる。
第2の実施形態では、上記特定の成分を特定量配合すれば、他は通常のパン類の製法を採用することができる。例えば、上記中種法の他、直捏法や水種法等の製法を採用することができる。
【0042】
上記で調製したパン生地を焼成することでパンが得られる。焼成温度は上記と同様に通常は180〜240℃である。
【0043】
本発明のパン類は、乾燥質量当たりのヒドロキシプロピル基の含有量が0.7〜2.0質量%、又は、乾燥質量当たりのアセチル基の含有量が0.3〜0.8質量%であり、且つ、乾燥質量当たりのタンパク質含有量が9.5〜11.6質量%である。かかる構成をとることで、パン類を、比容積が大きくソフトで、しっとり感、口溶け感、風味のいずれにも優れ、かつ、品質低下の少ないものとすることができる。
上記パン類の「乾燥質量」とは、パン類の凍結乾燥品を、120℃、13.3Pa以下で4時間乾燥した直後の質量である。
【0044】
上記「パン類」としては、例えば、フィリングなどの詰め物をしたパンも含まれ、食パン、特殊パン、調理パン、菓子パンなどが挙げられる。具体的には、食パンとしては白パン、黒パン、フランスパン、バラエティーブレッド、ロール(テーブルロール、バンズ、バターロールなど)が挙げられる。特殊パンとしてはマフィンなど、調理パンとしてはホットドッグ、ハンバーガーなど、菓子パンとしてはジャムパン、あんパン、クリームパン、レーズンパン、メロンパン、スイートロール、リッチグッズ(クロワッサン、ブリオッシュ、デニッシュペストリー)などが挙げられる。
ここで、本発明において、パン類の「乾燥質量」とは、パン類中のパン生地を焼成して得られる部分(パン生地に由来する部分)の乾燥質量を意味する。すなわち、パン類の乾燥質量当たりのヒドロキシプロピル基、アセチル基及びタンパク質の含有量は、上記フィリング等の部分を除いた、パン生地由来部分を試料として得られる値である。
本発明のパン類を製造するための方法に特に制限はないが、上記本発明の製造方法において、特定の加工澱粉を用いて得ることが好ましい。
【0045】
本発明のパン類の乾燥質量当たりのヒドロキシプロピル基の含有量及びアセチル基の含有量は、食品添加物における加工澱粉の純度試験に用いられる測定方法に準じて測定することができる。具体的には、後述の実施例に記載されるように、測定試料に澱粉を用いるところをパン凍結乾燥粉末に置き換えて測定することができる。
【0046】
本発明のパン類において、パン類の乾燥質量当たりのヒドロキシプロピル基の含有量は0.8質量%以上であることが好ましい。また、パン類の乾燥質量当たりのヒドロキシプロピル基の含有量は1.7質量%以下であることが好ましく、1.6質量%以下であることがより好ましい。
また、パン類の乾燥質量当たりのアセチル基の含有量は0.5質量%以上であることが好ましい。また、パン類の乾燥質量当たりのアセチル基の含有量は0.7質量%以下であることが好ましい。
【0047】
本発明のパン類において、パン類の乾燥質量当たりのタンパク質含有量は、測定試料としてパン凍結乾燥粉末を用いて、改良ケルダール法によって定量した窒素量に、窒素−タンパク質換算係数6.25を乗じて算出した。
【0048】
本発明のパン類において、パン類の乾燥質量当たりのタンパク質の含有量は、風味の点で、9.6質量%以上であることが好ましく、10.0質量%以上であることがより好ましい。また、パン類の乾燥質量当たりのタンパク質の含有量は11.5質量%以下であることが好ましく、11.3質量%以下であることがより好ましく、10.8質量%以下であることがさらに好ましい。
【0049】
一般的に菓子パン類は、パン生地を焼成して得られる部分(パン生地由来部分)に乾燥質量当たりで糖類を8〜50質量%含有し、通常はそれよりも糖類含有量が低いものが、食パン等のいわゆるプレーンな風味を有するパン類である。加工澱粉は種々の生理機能を有している澱粉ではあるが、その生理機能がより発現しやすいパン類とするためには、パン生地由来部分において、乾燥質量当たりの糖類の含有量を0.1〜10質量%とすることが好ましく、より好ましくは0.2〜8質量%、更に好ましくは0.3〜7質量%とする。
【0050】
上述した実施形態に関し、本発明は以下のパン用穀粉組成物、パン類の製造方法及びパン類を開示する。
【0051】
<1>
小麦粉と、加工澱粉と、小麦蛋白とを含有するパン用穀粉組成物であって、
前記小麦粉、前記加工澱粉及び前記小麦蛋白の総含有量100質量部に占める前記加工澱粉の含有量が20〜40質量部であり、
前記小麦蛋白の含有量と前記加工澱粉の含有量が、質量比で下記式を満たす、パン用穀粉組成物。
12≦[加工澱粉の含有量]/[小麦蛋白の含有量]≦20
【0052】
<2>
前記小麦粉が好ましくは強力粉である、前記<1>に記載のパン用穀粉組成物。
<3>
前記小麦粉の蛋白含有率が好ましくは10.0質量%以上であり、より好ましくは11.0質量%以上であり、さらに好ましくは11.5質量%以上である、前記<1>又は<2>に記載のパン用穀粉組成物。
<4>
前記小麦粉の蛋白含有率が好ましくは15.0質量%以下であり、より好ましくは14.5質量%以下であり、さらに好ましくは14.0質量%以下である、前記<1>〜<3>のいずれか1つに記載のパン用穀粉組成物。
<5>
前記小麦粉の蛋白含有率が好ましくは10.0〜15.0質量%であり、より好ましくは11.0〜14.5質量%であり、さらに好ましくは11.5〜14.0質量%である、前記<1>又は<2>に記載のパン用穀粉組成物。
【0053】
<6>
前記小麦粉の澱粉含有率が好ましくは65.0質量%以上であり、より好ましくは68.0質量%以上であり、さらに好ましくは70.0質量%以上である、前記<1>〜<5>のいずれか1つに記載のパン用穀粉組成物。
<7>
前記小麦粉の澱粉含有率が好ましくは76.0質量%以下であり、より好ましくは74.0質量%以下であり、さらに好ましくは72.0質量%以下である、前記<1>〜<6>のいずれか1つに記載のパン用穀粉組成物。
<8>
前記小麦粉の澱粉含有率が好ましくは65.0〜76.0質量%であり、より好ましくは68.0〜74.0質量%であり、さらに好ましくは70.0〜72.0質量%である、前記<1>〜<5>のいずれか1つに記載のパン用穀粉組成物。
【0054】
<9>
前記パン用穀粉組成物中、小麦粉の含有量が好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは65質量%以上である、前記<1>〜<8>のいずれか1つに記載のパン用穀粉組成物。
<10>
前記パン用穀粉組成物中、小麦粉の含有量が好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは75質量%以下である、前記<1>〜<9>のいずれか1つに記載のパン用穀粉組成物。
<11>
前記パン用穀粉組成物中、小麦粉の含有量が好ましくは60〜80質量%であり、より好ましくは65〜75質量%である、前記<1>〜<8>のいずれか1つに記載のパン用穀粉組成物。
【0055】
<12>
前記加工澱粉が、好ましくは、澱粉の構成単位であるグルコース単位における2位、3位及び6位の炭素原子が有するヒドロキシル基の1又は2以上が修飾されたものである、前記<1>〜<11>のいずれか1つに記載のパン用穀粉組成物。
<13>
前記修飾が好ましくはエステル化又はエーテル化である、前記<12>に記載のパン用穀粉組成物。
<14>
前記エステル化が、好ましくは、グルコース単位が有する1又は2以上のヒドロキシル基と、カルボン酸又はリン酸とがエステル結合を形成してなる形態であり、より好ましくはアセチル化を含む、前記<13>に記載のパン用穀粉組成物。
<15>
前記エーテル化が、好ましくは、グルコース単位が有する1又は2以上のヒドロキシル基と、1価又は多価のアルコールとがエーテル結合を形成してなる形態であり、より好ましくはヒドロキシプロピル化を含む、前記<13>に記載のパン用穀粉組成物。
<16>
前記エステル化又はエーテル化の形態が、好ましくは、一のグルコース単位における1又は2以上のヒドロキシル基と、他のグルコース単位における1又は2以上のヒドロキシル基とが、多価アルコール、多価カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸又はリン酸を介してエーテル結合又はエステル結合で架橋されてなる形態を含む、前記<13>〜<15>のいずれか1つに記載のパン用穀粉組成物。
<17>
前記一のグルコース単位と前記他のグルコース単位とが、好ましくは、同一の澱粉分子に存在しているか、又は異なる澱粉分子に存在している、前記<16>に記載のパン用穀粉組成物。
【0056】
<18>
前記加工澱粉の乾燥質量当たりのエステル基の含有量が、好ましくは0.7質量%以上であり、より好ましくは1.0質量%以上であり、さらに好ましくは1.3質量%以上であり、よりさらに好ましくは1.5質量%以上である、前記<1>〜<17>のいずれか1つに記載のパン用穀粉組成物。
<19>
前記加工澱粉の乾燥質量当たりのエステル基の含有量が、好ましくは2.5質量%以下であり、より好ましくは2.3質量%以下であり、さらに好ましくは2.1質量%以下である、前記<1>〜<18>のいずれか1つに記載のパン用穀粉組成物。
<20>
前記加工澱粉の乾燥質量当たりのエステル基の含有量が、好ましくは0.7〜2.5質量%であり、より好ましくは1.0〜2.3質量%であり、さらに好ましくは1.3〜2.1質量%であり、よりさらに好ましくは1.5〜2.1質量%である、前記<1>〜<17>のいずれか1つに記載のパン用穀粉組成物。
<21>
前記加工澱粉の乾燥質量当たりのエーテル基の含有量が、好ましくは2.0質量%以上であり、より好ましくは3.0質量以上であり、さらに好ましくは4.0質量%以上である、前記<1>〜<20>のいずれか1つに記載のパン用穀粉組成物。
<22>
前記加工澱粉の乾燥質量当たりのエーテル基の含有量が、好ましくは7.0質量%以下であり、より好ましくは6.0質量%以下であり、さらに好ましくは5.0質量%以下である、前記<1>〜<21>のいずれか1つに記載のパン用穀粉組成物。
<23>
前記加工澱粉の乾燥質量当たりのエーテル基の含有量が、好ましくは2.0〜7.0質量%であり、より好ましくは3.0〜6.0質量%であり、さらに好ましくは3.0〜5.0質量%である、前記<1>〜<20>のいずれか1つに記載のパン用穀粉組成物。
【0057】
<24>
前記加工澱粉の膨潤度が、好ましくは8以上であり、より好ましくは11以上であり、さらに好ましくは15以上である、前記<16>〜<23>のいずれか1つに記載のパン用穀粉組成物。
<25>
前記加工澱粉の膨潤度が、好ましくは29以下であり、より好ましくは27以下であり、さらに好ましくは25以下である、前記<16>〜<24>のいずれか1つに記載のパン用穀粉組成物。
<26>
前記加工澱粉の膨潤度が、好ましくは8〜29であり、より好ましくは11〜27であり、さらに好ましくは15〜25である、前記<16>〜<23>のいずれか1つに記載のパン用穀粉組成物。
【0058】
<27>
前記加工澱粉が、好ましくはグルコース単位が有するヒドロキシル基と、カルボン酸又はリン酸とがエステル結合を形成してなる形態を有する、前記<1>〜<26>のいずれか1つに記載のパン用穀粉組成物。
<28>
前記加工澱粉が、好ましくはグルコース単位が有するヒドロキシル基と、ジオールとがエーテル結合を形成してなる形態を有する、前記<1>〜<26>のいずれか1つに記載のパン用穀粉組成物。
<29>
前記加工澱粉が、好ましくはグルコース単位が有するヒドロキシル基と、他のグルコース単位が有するヒドロキシル基とが、リン酸又はジカルボン酸を介してリン酸エステル結合又はエステル結合により架橋されてなる形態を有する、前記<1>〜<28>のいずれか1つに記載のパン用穀粉組成物。
【0059】
<30>
前記加工澱粉が、好ましくはアセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、及びリン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉から選ばれる1種又は2種以上である、前記<1>〜<29>のいずれか1つに記載のパン用穀粉組成物。
<31>
前記加工澱粉の原料が、好ましくはワキシーコーン澱粉、コーン澱粉、小麦澱粉、米澱粉、糯米澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉及びタピオカ澱粉から選ばれる1種又は2種以上である、前記<1>〜<30>のいずれか1つに記載のパン用穀粉組成物。
【0060】
<32>
小麦粉、加工澱粉、及び小麦蛋白の総含有量100質量部中の加工澱粉の含有量が好ましくは23質量部以上であり、より好ましくは25質量部以上である、前記<1>〜<31>のいずれか1つに記載のパン用穀粉組成物。
<33>
小麦粉、加工澱粉、及び小麦蛋白の総含有量100質量部中の加工澱粉の含有量が好ましくは38質量部以下であり、より好ましくは35質量部以下である、前記<1>〜<32>のいずれか1つに記載のパン用穀粉組成物。
<34>
小麦粉、加工澱粉、及び小麦蛋白の総含有量100質量部中の加工澱粉の含有量が好ましくは23〜38質量部であり、より好ましくは25〜35質量部である、前記<1>〜<31>のいずれか1つに記載のパン用穀粉組成物。
【0061】
<35>
前記小麦蛋白中のタンパク質の含有量が好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは75質量%以上である、前記<1>〜<34>のいずれか1つに記載のパン用穀粉組成物。
<36>
前記小麦蛋白の含有量と前記加工澱粉の含有量が、質量比で下記式を満たす、<1>〜<35>のいずれか1つに記載のパン用穀粉組成物。
14≦[加工澱粉の含有量]/[小麦蛋白の含有量]≦18
【0062】
<37>
好ましくは糖類、膨剤、食塩、香料、乳化剤、粉乳、及びイーストから選ばれる1種又は2種以上を含有する、前記<1>〜<36>のいずれか1つに記載のパン用穀粉組成物。
<38>
小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白の総含有量が好ましくは80〜100質量%、より好ましくは85〜100質量%、さらに好ましくは88〜100質量%である、前記<1>〜<37>のいずれか1つに記載のパン用穀粉組成物。
<39>
前記イーストが好ましくはドライイーストである、前記<37>又は<38>に記載のパン用穀粉組成物。
<40>
小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白の総含有量100質量部に対してイーストの含有量が好ましくは0.2質量部以上であり、より好ましくは0.5質量部以上である、前記<39>に記載のパン用穀粉組成物。
<41>
小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白の総含有量100質量部に対してイーストの含有量が好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは5質量部以下である、前記<39>又は<40>に記載のパン用穀粉組成物。
<42>
小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白の総含有量100質量部に対してイーストの含有量が好ましくは0.2〜10質量部、より好ましくは0.5〜5質量部である、前記<39>に記載のパン用穀粉組成物。
<43>
前記糖類が好ましくは単糖類、二糖類、三糖類、四糖類、五糖類、六糖類、澱粉加水分解物、及びこれらを還元した糖アルコールから選ばれる1種又は2種以上である、前記<37>〜<42>のいずれか1つに記載のパン用穀粉組成物。
<44>
前記糖類が好ましくはグルコース、マルトース、フルクトース、シュークロース、ラクトース、トレハロース、マルトトリオース、マルトテトラオース、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、砂糖、水飴、異性化糖、転化糖、シクロデキストリン、デキストリン、及び分岐シクロデキストリンから選ばれる1種又は2種以上である、前記<37>〜<43>のいずれか1つに記載のパン用穀粉組成物。
<45>
前記乳化剤が、粉末乳化製剤、及び乳化した状態で製剤化された剤から選ばれる1種又は2種以上である、前記<37>〜<44>のいずれか1つに記載のパン用穀粉組成物。
【0063】
<46>
前記<1>〜<45>のいずれか1つに記載のパン用穀粉組成物を用いてパン生地を調製し、該生地を焼成することを含む、パン類の製造方法。
<47>
パン生地が、パン用穀粉組成物100質量部に対して乳化剤を0.1〜2.0質量部含有する、前記<46>に記載のパン類の製造方法。
<48>
好ましくは180〜240℃で焼成する、前記<46>又は<47>に記載のパン類の製造方法。
【0064】
<49>
少なくとも小麦粉と、加工澱粉と、小麦蛋白と、水と、イーストとを配合してパン生地を調製し、該生地を焼成することを含むパン類の製造方法であって、
前記小麦粉、前記加工澱粉及び前記小麦蛋白の総配合量100質量部に占める前記加工澱粉の配合量が20〜40質量部であり、
前記小麦蛋白の配合量に対する前記加工澱粉の配合量が、質量比で下記式を満たす、パン類の製造方法。
12≦[加工澱粉の配合量]/[小麦蛋白の配合量]≦20
【0065】
<50>
前記加工澱粉の配合量が、小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白の総配合量100質量部中、好ましくは23質量部以上であり、より好ましくは25質量部以上である、前記<49>に記載の製造方法。
<51>
前記加工澱粉の配合量が、小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白の総配合量100質量部中、好ましくは38質量部以下であり、より好ましくは35質量部以下である、前記<49>又は<50>に記載の製造方法。
<52>
前記加工澱粉の配合量が、小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白の総配合量100質量部中、好ましくは23〜38質量部であり、より好ましくは25〜35質量部である、前記<49>に記載の製造方法。
<53>
前記小麦蛋白の配合量に対する前記加工澱粉の配合量が、質量比で下記式を満たす、前記<49>〜<52>のいずれか1つに記載の製造方法。
14≦[加工澱粉の配合量]/[小麦蛋白の配合量]≦18
<54>
前記水の配合量が、好ましくは、小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白の総配合量100質量部に対して20質量部以上であり、より好ましくは40質量部以上である、前記<49>〜<53>のいずれか1つに記載の製造方法。
<55>
前記水の配合量が、好ましくは、小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白の総配合量100質量部に対して80質量部以下である、前記<49>〜<54>のいずれか1つに記載の製造方法。
<56>
前記水の配合量が、好ましくは、小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白の総配合量100質量部に対して20〜80質量部であり、より好ましくは40〜80質量部である、前記<49>〜<53>のいずれか1つに記載の製造方法。
<57>
前記イーストが好ましくはドライイーストであり、該ドライイーストの配合量が、好ましくは、小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白の総配合量100質量部に対して0.2質量部以上であり、より好ましくは0.5質量部以上である、前記<49>〜<56>のいずれか1つに記載の製造方法。
<58>
前記イーストが好ましくはドライイーストであり、該ドライイーストの配合量が、好ましくは、小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白の総配合量100質量部に対して10質量部以下であり、より好ましくは5質量部以下である、前記<49>〜<57>のいずれか1つに記載の製造方法。
<59>
前記イーストが好ましくはドライイーストであり、該ドライイーストの配合量が、好ましくは、小麦粉、加工澱粉及び小麦蛋白の総配合量100質量部に対して0.2〜10質量部であり、より好ましくは0.5〜5質量部である、前記<49>〜<56>のいずれか1つに記載の製造方法。
<60>
パン生地の調製において、好ましくは、糖類、油脂、膨剤、食塩、香料、及び乳化剤から選ばれる1種又は2種以上を配合する、前記<49>〜<59>のいずれか1つに記載の製造方法。
<61>
好ましくは180〜240℃で焼成する、前記<49>〜<60>のいずれか1つに記載の製造方法。
<62>
前記小麦粉が好ましくは強力粉である、前記<49>〜<61>のいずれか1つに記載の製造方法。
<63>
前記小麦粉の蛋白含有率が好ましくは10.0質量%以上であり、より好ましくは11.0質量%以上であり、さらに好ましくは11.5質量%以上である、前記<49>〜<62>のいずれか1つに記載の製造方法。
<64>
前記小麦粉の蛋白含有率が好ましくは15.0質量%以下であり、より好ましくは14.5質量%以下であり、さらに好ましくは14.0質量%以下である、前記<49>〜<63>のいずれか1つに記載の製造方法。
<65>
前記小麦粉の蛋白含有率が好ましくは10.0〜15.0質量%であり、より好ましくは11.0〜14.5質量%であり、さらに好ましくは11.5〜14.0質量%である、前記<49>〜<62>のいずれか1つに記載の製造方法。
【0066】
<66>
前記小麦粉の澱粉含有率が好ましくは65.0質量%以上であり、より好ましくは68.0質量%以上であり、さらに好ましくは70.0質量%以上である、前記<49>〜<65>のいずれか1つに記載の製造方法。
<67>
前記小麦粉の澱粉含有率が好ましくは76.0質量%以下であり、より好ましくは74.0質量%以下であり、さらに好ましくは72.0質量%以下である、前記<49>〜<66>のいずれか1つに記載の製造方法。
<68>
前記小麦粉の澱粉含有率が好ましくは65.0〜76.0質量%であり、より好ましくは68.0〜74.0質量%であり、さらに好ましくは70.0〜72.0質量%である、前記<49>〜<65>のいずれか1つに記載の製造方法。
【0067】
<69>
前記加工澱粉が、好ましくは、澱粉の構成単位であるグルコース単位における2位、3位及び6位の炭素原子が有するヒドロキシル基の1又は2以上が修飾されたものである、前記<49>〜<68>のいずれか1つに記載の製造方法。
<70>
前記修飾が好ましくはエステル化又はエーテル化である、前記<69>に記載の製造方法。
<71>
前記エステル化が、好ましくは、グルコース単位が有する1又は2以上のヒドロキシル基と、カルボン酸又はリン酸とがエステル結合を形成してなる形態であり、より好ましくはアセチル化を含む、前記<70>に記載の製造方法。
<72>
前記エーテル化が、好ましくは、グルコース単位が有する1又は2以上のヒドロキシル基と、1価又は多価のアルコールとがエーテル結合を形成してなる形態であり、より好ましくはヒドロキシプロピル化を含む、前記<70>に記載の製造方法。
<73>
前記エステル化又はエーテル化の形態が、好ましくは、一のグルコース単位における1又は2以上のヒドロキシル基と、他のグルコース単位における1又は2以上のヒドロキシル基とが、多価アルコール、多価カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸又はリン酸を介してエーテル結合又はエステル結合で架橋されてなる形態を含む、前記<70>〜<72>のいずれか1つに記載の製造方法。
<74>
前記一のグルコース単位と前記他のグルコース単位とが、好ましくは、同一の澱粉分子に存在しているか、又は異なる澱粉分子に存在している、前記<73>に記載の製造方法。
【0068】
<75>
前記加工澱粉の乾燥質量当たりのエステル基の含有量が、好ましくは0.7質量%以上であり、より好ましくは1.0質量%以上であり、さらに好ましくは1.3質量%以上であり、よりさらに好ましくは1.5質量%以上である、前記<49>〜<74>のいずれか1つに記載の製造方法。
<76>
前記加工澱粉の乾燥質量当たりのエステル基の含有量が、好ましくは2.5質量%以下であり、より好ましくは2.3質量%以下であり、さらに好ましくは2.1質量%以下である、前記<49>〜<75>のいずれか1つに記載の製造方法。
<77>
前記加工澱粉の乾燥質量当たりのエステル基の含有量が、好ましくは0.7〜2.5質量%であり、より好ましくは1.0〜2.3質量%であり、さらに好ましくは1.3〜2.1質量%であり、よりさらに好ましくは1.5〜2.1質量%である、前記<49>〜<74>のいずれか1つに記載の製造方法。
【0069】
<78>
前記加工澱粉の乾燥質量当たりのエーテル基の含有量が、好ましくは2.0質量%以上であり、より好ましくは3.0質量以上であり、さらに好ましくは4.0質量%以上である、前記<49>〜<77>のいずれか1つに記載の製造方法。
<79>
前記加工澱粉の乾燥質量当たりのエーテル基の含有量が、好ましくは7.0質量%以下であり、より好ましくは6.0質量%以下であり、さらに好ましくは5.0質量%以下である、前記<49>〜<78>のいずれか1つに記載の製造方法。
<80>
前記加工澱粉の乾燥質量当たりのエーテル基の含有量が、好ましくは2.0〜7.0質量%であり、より好ましくは3.0〜6.0質量%であり、さらに好ましくは3.0〜5.0質量%である、前記<49>〜<77>のいずれか1つに記載の製造方法。
【0070】
<81>
前記加工澱粉の膨潤度が、好ましくは8以上であり、より好ましくは11以上であり、さらに好ましくは15以上である、前記<73>〜<80>のいずれか1つに記載の製造方法。
<82>
前記加工澱粉の膨潤度が、好ましくは29以下であり、より好ましくは27以下であり、さらに好ましくは25以下である、前記<73>〜<81>のいずれか1つに記載の製造方法。
<83>
前記加工澱粉の膨潤度が、好ましくは8〜29であり、より好ましくは11〜27であり、さらに好ましくは15〜25である、前記<73>〜<80>のいずれか1つに記載の製造方法。
【0071】
<84>
前記加工澱粉が、好ましくはグルコース単位が有するヒドロキシル基と、カルボン酸又はリン酸とがエステル結合を形成してなる形態を有する、前記<49>〜<83>のいずれか1つに記載の製造方法。
<85>
前記加工澱粉が、好ましくはグルコース単位が有するヒドロキシル基と、ジオールとがエーテル結合を形成してなる形態を有する、前記<49>〜<83>のいずれか1つに記載の製造方法。
<86>
前記加工澱粉が、好ましくはグルコース単位が有するヒドロキシル基と、他のグルコース単位が有するヒドロキシル基とが、リン酸又はジカルボン酸を介してリン酸エステル結合又はエステル結合により架橋されてなる形態を有する、前記<49>〜<85>のいずれか1つに記載の製造方法。
<87>
前記加工澱粉が、好ましくはアセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、及びリン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉から選ばれる1種又は2種以上である、前記<49>〜<86>のいずれか1つに記載の製造方法。
<88>
前記加工澱粉の原料が、好ましくはワキシーコーン澱粉、コーン澱粉、小麦澱粉、米澱粉、糯米澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉及びタピオカ澱粉から選ばれる1種又は2種以上である、前記<49>〜<87>のいずれか1つに記載の製造方法。
<89>
前記小麦蛋白中のタンパク質の含有量が好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは75質量%以上である、前記<49>〜<88>のいずれか1つに記載の製造方法。
【0072】
<90>
乾燥質量当たりのヒドロキシプロピル基の含有量が0.7〜2.0質量%であるか、又は、乾燥質量当たりのアセチル基の含有量が0.3〜0.8質量%であり、且つ、乾燥質量当たりのタンパク質含有量が9.5〜11.6質量%であるパン類。
【0073】
<91>
パン類の乾燥質量当たりのヒドロキシプロピル基の含有量が好ましくは0.8質量%以上である、前記<90>に記載のパン類。
<92>
パン類の乾燥質量当たりのヒドロキシプロピル基の含有量が好ましくは1.7質量%以下であり、より好ましく、1.6質量%以下である、前記<90>又は<91>に記載のパン類。
<93>
パン類の乾燥質量当たりのヒドロキシプロピル基の含有量が好ましくは0.8〜1.7質量%であり、より好ましくは0.8〜1.6質量%である、前記<90>に記載のパン類。
<94>
パン類の乾燥質量当たりのアセチル基の含有量が好ましくは0.5質量%以上である、前記<90>に記載のパン類。
<95>
パン類の乾燥質量当たりのアセチル基の含有量が好ましくは0.7質量%以下である、前記<90>又は<94>に記載のパン類。
<96>
パン類の乾燥質量当たりのアセチル基の含有量が好ましくは0.5〜0.7質量%である、前記<90>に記載のパン類。
<97>
パン類の乾燥質量当たりのタンパク質の含有量が好ましくは9.6質量%以上であり、より好ましくは10.0質量%以上である、前記<90>〜<96>のいずれか1つに記載のパン類。
<98>
パン類の乾燥質量当たりのタンパク質の含有量が好ましくは11.5質量%以下であり、より好ましくは11.3質量%以下であり、さらに好ましくは10.8質量%以下である、前記<90>〜<97>のいずれか1つに記載のパン類。
<99>
パン類の乾燥質量当たりのタンパク質の含有量が好ましくは9.6〜11.5質量%であり、より好ましくは10.0〜10.8質量%である、前記<90>〜<96>のいずれか1つに記載のパン類。
<100>
パン生地由来部分において、乾燥質量当たりの糖類の含有量が、好ましくは0.1〜10質量%であり、より好ましくは0.2〜8質量%であり、さらに好ましくは0.3〜7質量%である、前記<90>〜<99>のいずれか1つに記載のパン類。
【0074】
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0075】
[調製例1] パンの調製
下記手法により食パンを製造した。
【0076】
(中種生地調製条件)
縦型ミキサー(関東ミキサー 10コート)、フックを用い、下記表1に示す中種配合材料をミキサーに入れ、捏上温度を23℃とし、低速3分、中高速2分で混捏して中種生地とした。次にこの中種生地を発酵(中種発酵)させた。この時の条件を下記に示す。
【0077】
中種発酵温度 26℃
中種発酵相対湿度 80%
中種発酵時間 4時間30分
中種発酵終了温度 29.5℃
【0078】
(本捏生地調製条件)
縦型ミキサー(関東ミキサー 10コート)に中種発酵生地を入れたところへ下記表1に示す本捏配合材料(ショートニングを除く全材料)を添加し、低速3分、中高速3分で混捏した。その後、ショートニングを添加し、低速3分、中低速2分、高速2分で混捏し、本捏生地とした。本捏生地の捏上温度は26.5℃であった。
次に、混捏でダメージを受けた生地を回復させるために27.0℃にてフロアータイムを30分とり、この後に225gの生地に分割した。分割での生地ダメージを回復させるためにベンチタイムを27.0℃で20分とり、モルダーで成型した。成型物6個を角食のパン型に入れ発酵(ホイロ)を行なった。ホイロの条件を以下に示す。
【0079】
ホイロ温度 38℃
相対湿度 80%RH
ホイロ時間 50分
【0080】
上記条件において調製したパン生地を210℃のオーブンで40分間焼成した。焼成後、得られた食パンを20℃において90分間冷却後、ビニール袋に入れ、密閉化し、更に20℃において保存を行った。焼成から1日後のパンの体積を下記表1に示す。また、焼成から1日後、及び4日後にスライサーを用いて厚み20mmにカットしたものを食パンサンプルとした。
【0081】
[試験例1] パンの官能評価
上記食パンサンプルについて、パンを喫食した際の柔らかさ(ソフト感)、しっとり感、口どけ感、風味について4名のパネラーにより評価を行った。評価結果は、4人のパネラーの協議により決定した。以下に評価基準を示し、結果を下記表1に示す。
【0082】
(柔らかさの評価基準)
7:参考例よりも格段に柔らかい。
6:参考例よりも柔らかい。
5:参考例よりもやや柔らかい。
4:参考例と同等の柔らかさである。
3:参考例よりもやや硬い。
2:参考例よりも硬い。
1:参考例よりもかなり硬い。
【0083】
(しっとり感の評価基準)
7:参考例よりも格段にしっとりしている。
6:参考例よりもしっとりしている。
5:参考例よりもややしっとりしている。
4:参考例と同等のしっとり感である。
3:参考例よりもややしっとり感に劣る。
2:参考例よりもしっとり感に劣り、パサつき感がある。
1:参考例よりもしっとり感におとり、パサつき感を強く感じる。
【0084】
(口溶け感の評価基準)
7:参考例よりも格段に口溶けがよい。
6:参考例よりも口溶けが良い。
5:参考例よりもやや口溶けがよい。
4:参考例と同等の口溶け感である。
3:参考例よりもややしっとり感に劣る。
2:参考例よりもしっとり感に劣り、パサつき感がある。
1:参考例よりもしっとり感におとり、パサつき感を強く感じる。
【0085】
(風味の評価基準)
7:グルテンに由来する風味と味が参考例よりも格段に少ない。
6:グルテンに由来する風味と味が参考例よりも少ない。
5:グルテンに由来する風味と味が参考例よりもやや少ない。
4:グルテンに由来する風味と味が参考例と同等である。
3:グルテンに由来する風味と味が参考例よりもわずかに強い。
2:グルテンに由来する風味と味が参考例よりも強い。
1:グルテンに由来する風味と味が参考例よりも格段に強い。
【0086】
[試験例2] ヒドロキシプロピル基、アセチル基、タンパク質含有量の測定
上記食パンサンプルについて、乾燥質量当たりのヒドロキシプロピル基、アセチル基の含有量、並びに、乾燥質量当たりのタンパク質の含有量を下記方法により測定した。結果を下記表1に示す。
【0087】
(パン乾燥質量当たりのヒドロキシプロピル基の分析方法)
上記食パンサンプルのクラム部分(白色部分)を凍結乾燥後、ミル粉砕機を用いて、粒径500μm以下の粉末を得た。本乾燥粉末を用いて、加工澱粉由来のヒドロキシプロピル基の測定を行った。本分析方法は厚生労働省が開示している食品添加物としての加工デンプンの純度試験方法(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/07/dl/s0704-15l.pdf)に準拠した。具体的には下記方法で測定した。
【0088】
(1)食パンの上記凍結乾燥粉末サンプル約0.1gを量り取り、硫酸(0.5mol/L)25mLを加え、水浴中で加熱して粉末サンプルを溶解させた。
(2)冷後、イオン交換水にて100mLとした。必要に応じてヒドロキシプロピル基が4mg/100mL以上とならないように希釈し、試料液とした。
(3)試料液1mLを量り、25mLの目盛り付試験管に入れ、冷水で冷却しながら硫酸8mLを滴下した。
(4)よく攪拌した後、水浴中にて3分間加熱し、直ちに氷水中で冷却した後、加工デンプン用ニンヒドリン試液0.6mLを管壁にそって加えた。
(5)直ちに振り混ぜ、25℃の水浴中に100分間放置した。
(6)硫酸を加えて25mLにし、栓をして、静かに数回上下を反転させ、これを検液とした。
(7)検液を直ちに吸光度測定用セルに移し、5分後に、590nmの吸光度を測定した。
(8)後述する検量線から、検液中のプロピレングリコール濃度(μg/mL)を求め、下記の式より、ヒドロキシプロピル基の含有量(質量%)を算出した。
{検液中のプロピレングリコール濃度(μg/mL)×0.7763×希釈倍率}/{乾燥物換算した試料の採取量(g)×100}
【0089】
−検量線の作成−
(1)プロピレングリコール約0.025gを量りとり、水を加えて100mLとし、ここから2、4、6、8及び10mLを量りとった。
(2)それぞれに水を加え、正確に50mLとし、そのうち1mLずつを量り、25mLの目盛り付試験管に入れ、冷水中で硫酸8mLを滴下した。
(3)よく攪拌した後、水浴中にて3分間加熱し、直ちに氷水中で冷却した。
(4)冷後、加工デンプン用ニンヒドリン試液0.6mLを管壁にそって加えた。
(5)直ちに振り混ぜ、25℃の水浴中に100分間放置した。
(6)硫酸を加えて25mLにした。
(7)栓をして、静かに数回上下を反転させ、これを標準液とした。
(8)直ちに吸光度測定用セルに移し、5分間後に、590nmの吸光度を測定し、これからブランク(上記(1)においてプロピレングリコール溶液に代えて水を用いたもの)の590nmの吸光度を差し引いて検量線を作成した。
【0090】
−乾燥物換算法−
規格で定めた乾燥減量の測定方法で求めた値を用いて乾燥物換算した。具体的には、下記の方法で乾燥物量を求めた。
(1)食パン凍結乾燥粉末サンプルを秤量し、120℃、13.3Pa以下で4時間加熱した。
(2)加熱後の食パン凍結乾燥粉末サンプルの質量を秤量した。
(3)100×(加熱前乾燥粉末サンプル質量−加熱後乾燥粉末サンプル質量)/(加熱前乾燥粉末サンプル質量)の値が水分率(%)となり、100から水分率を引いた値が乾燥物の量(%)となる。
上記の乾燥物の量に基づき、上記で求めた加工澱粉由来のヒドロキシプロピル基の含有量を、パン類の乾燥質量当たりのヒドロキシプロピル基の含有量に換算することができる。
【0091】
(パン乾燥質量当たりのアセチル基の分析方法)
測定に用いるパンのクラム部分(白色部分)を凍結乾燥後、ミル粉砕機を用いて、50μm以下の粉末を得た。本乾燥粉末を用いて、乾燥粉末質量当たりのアセチル基の測定を行った。本分析方法は厚生労働省が開示している食品添加物としての加工デンプンの純度試験方法(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/07/dl/s0704-15l.pdf)に準拠した。
【0092】
(1)サンプル5.0gを量り取り、水50mLに懸濁し、ここにフェノールフタレイン試薬を数滴加えた。
(2)液が微紅色を呈するまで、0.1M水酸化ナトリウム溶液を滴下した。
(3)0.45M水酸化ナトリウム溶液25mLを加えた。
(4)温度が30℃以上にならないように注意しながら栓をし、30分間激しく振り混ぜた。
(5)0.2M塩酸で過量の水酸化ナトリウムを滴定した。(終点は液の微紅色が消えたときとした。)
(6)別に空試験を行い、値を補正した。
(7)下記指標に基づき遊離アセチル基含量を求め、更に上記と同様に乾燥物換算を行なった。
0.45M水酸化ナトリウム 1mL=CH
3CO 19.370mg
【0093】
(パン乾燥質量当たりのタンパク質の分析方法)
本発明で用いた小麦粉(強力粉)及び小麦蛋白に由来するタンパク質量は、ケルダール法にて、6.25の窒素−タンパク質換算係数を用いて算出した。
結果として、小麦粉100質量部に含まれる蛋白は11.7質量部、小麦蛋白のうち、活性グルテン1 100質量部に含まれる蛋白は80.1質量部、活性グルテン2 100質量部に含まれる蛋白は75.0質量部であった。
上記、測定結果を用い、各配合におけるパン乾燥質量当たりのタンパク質の総含有量(質量%)を算出した。
【0094】
【表1】
【0095】
表1中、成分の配合量の単位は質量部である。実施例で用いた各成分の商品名と入手先を以下に示す。
強力粉:
カメリア、日清製粉社製(粗蛋白質含有率 11.7質量%)
粉末乳化剤:
エマルジーMM−100、理研ビタミン社製
イーストフード:
Cオリエンタルフード、オリエンタル酵母工業社製
ヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカ:
ピュリティ87、ヒドロキシプロピル基含有量 4.4質量%、ナショナルスターチ社製
ヒドロキシプロピル化タピオカ:
ナショナル7、ヒドロキシプロピル基含有量 3.3質量%、ナショナルスターチ社製
ヒドロキシプロピル化リン酸架橋ワキシーコーン:
サームフロ、ヒドロキシプロピル基含有量 7.0質量%、ナショナルスターチ社製
アセチル化アジピン酸架橋ワキシーコーン:
コルフロ67、アセチル基含有量 1.9質量%、ナショナルスターチ社製
リン酸架橋タピオカ:
ピュリティD、ナショナルスターチ社製
活性グルテン1:
エマソフトEX−100、理研ビタミン社製(粗蛋白質含有率 80質量%)
活性グルテン2:
A−グルG、グリコ栄養食品社製(粗蛋白質含有率 75質量%)
ショートニング:
ニューエコナV、花王社製
【0096】
表1中、比較品1は、加工澱粉の配合量が本発明で規定する範囲内であるが、小麦蛋白の配合量に対する加工澱粉の配合比率が本発明で規定するよりも低い例である。比較品1は、官能評価のいずれの評価項目にも劣る結果となり、保存により品質の低下も著しかった。
【0097】
比較品2及び3は、加工澱粉の配合量が本発明で規定するよりも低く、小麦蛋白の配合量に対する加工澱粉の配合比率も本発明で規定するよりも低い例である。比較品2及び3は、比較品1よりも小麦粉の配合量が多く、評価結果も参考例1に近いものとなったが、若干、しっとり感ないし風味に劣る結果となった。また、保存による品質低下の度合いも参考例より大きかった。
【0098】
比較品4は、小麦蛋白を配合していない例である。比較品4はグルテン含量が少ないので、風味は良好であったが、焼成によりパン生地の膨らみが小さく、柔らかさと口溶けに劣る結果となった。
【0099】
これに対し、本発明品1〜11は、焼成によりパン生地の膨らみが大きく、食感が柔らかく、しっとり感、口溶け感及び風味のいずれも良好であった。
【0100】
[調製例2] パンの調製
穀粉組成物を用いて、下記手法により食パンを製造した。
【0101】
(穀粉組成物)
小麦粉、加工澱粉、小麦蛋白、イースト、イーストフード、粉末乳化剤、砂糖、食塩、脱脂粉乳を表2に示す配合量で混合して穀粉組成物を調製した。この穀粉組成物と水を表2に記載の比率で縦型ミキサー(関東ミキサー 10コート)に入れ、捏上温度を27℃とし、低速2分、中高速2分、高速4分で混捏した。その後、ショートニングを表2に示す量添加し、低速2分、中高速2分、高速4分で混捏し、生地を得た。
【0102】
次に、混捏でダメージを受けた生地を回復させるために27.0℃にてフロアータイムを90分とり、この後に225gの生地に分割した。分割での生地ダメージを回復させるためにベンチタイムを27.0℃で20分とり、モルダーで成型した。成型物6個を角食のパン型に入れ発酵(ホイロ)を行なった。ホイロの条件を以下に示す。
【0103】
ホイロ温度 38℃
相対湿度 80%RH
ホイロ時間 50分
【0104】
上記条件において調製したパン生地を210℃のオーブンで40分間焼成した。焼成後、得られた食パンを20℃において90分間冷却後、ビニール袋に入れ、密閉化し、更に20℃において保存を行った。焼成から1日後のパンの体積を下記表1に示す。また、焼成から1日後、及び4日後にスライサーを用いて厚み20mmにカットしたものを食パンサンプルとした。
【0105】
[試験例3] 官能評価
上記試験例1と同様に食パンサンプルを官能評価した。結果を下記表2に示す。
【0106】
[試験例4] ヒドロキシプロピル基、アセチル基、タンパク質の測定
上記試験例2と同様に、パンの乾燥質量当たりのヒドロキシプロピル基、パンの乾燥質量当たりのアセチル基、パンの乾燥質量当たりのタンパク質の量を測定した。結果を下記表2に示す。
【0107】
【表2】
【0108】
表2中、比較品5は、比較品1と同様に加工澱粉の配合量が本発明で規定する範囲内であるが、小麦蛋白の配合量に対する加工澱粉の配合比率が本発明で規定するよりも低い例である。比較品5は、官能評価のいずれの評価項目にも劣る結果となり、保存により品質の低下も著しかった。