(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0016】
===価格決定装置の構成===
以下、
図1および
図2を参照して、本発明の一実施形態における価格決定装置の構成について説明する。
【0017】
ここで、まず、以下の説明で用いられる価格、価格変化、需要、および需要変化の関係を
図3に示す。価格変化dPは、価格Pの現在値P0からの変化であり、dP=P−P0となる。一方、需要変化dEは、需要Eの現在値E0からの変化であり、dE=E−E0となる。
【0018】
図1に示されている価格決定装置1は、取引対象の取引価格を決定するための装置であり、一例として、抑制したい電力需要に対して適正な電力価格を決定し、電力価格を上げることで電力需要を減少させる価格型デマンドレスポンスに用いられる。また、価格決定装置1は、モデル生成部101、変化予測部102、必要価格変化算出部103、価格変化データベース108a、および需要変化データベース108bを含んで構成されている。
【0019】
価格変化データベース108aには、過去の価格変化(電力価格の変化)の履歴が価格変化履歴として格納されている。一方、需要変化データベース108bには、需要家ごとの過去の需要変化(電力需要の変化)の履歴が需要変化履歴として格納されている。また、モデル生成部101には、価格変化履歴および需要変化履歴が入力され、モデル生成部101は、価格弾力性モデルを出力する。
【0020】
変化予測部102は、パラメータ設定部1021、数式群生成部1022、一階述語論理式生成部1023、および限定記号消去部1024を含んで構成されている。パラメータ設定部1021には、価格弾力性モデルが入力され、パラメータ設定部1021は、需要変化限界値および価格変化限界値を出力する。また、数式群生成部1022には、需要変化限界値および価格変化限界値が入力され、数式群生成部1022は、数式群を出力する。さらに、一階述語論理式生成部1023には、数式群が入力され、一階述語論理式生成部1023は、一階述語論理式を出力する。そして、限定記号消去部1024には、一階述語論理式が入力され、限定記号消去部1024は、変化予測論理式を出力する。
【0021】
必要価格変化算出部103には、変化予測部102の限定記号消去部1024から変化予測論理式が入力されるとともに、外部から必要需要変化が入力される。そして、必要価格変化算出部103は、必要価格変化を出力する。また、当該必要価格変化は、価格変化データベース108aに格納される。
【0022】
図1に示した価格決定装置1は、
図2に示すようなコンピュータシステム上に構築することができる。
図2に示されている価格決定装置1は、バス109を介して互いに接続された、モデル生成部101、変化予測部102、必要価格変化算出部103、入力部106、出力部107、および記憶装置108を含んで構成されている。そして、価格決定装置1の機能は、入力部106、出力部107、記憶部108、およびバス109を備えるコンピュータ100によって実現することができる。なお、記憶部108には、
図1の価格変化データベース108aおよび需要変化データベース108bに相当するデータベースが格納されている。
【0023】
===価格決定装置の動作===
以下、
図4ないし
図12を適宜参照して、本実施形態における価格決定装置の動作について説明する。
【0024】
価格決定装置1による取引価格の決定は、モデル生成部101によるモデル生成処理、変化予測部102による変化予測処理、および必要価格変化算出部103による必要価格変化算出処理からなる。なお、前述したように、価格決定装置1の機能は、コンピュータ100によって実現することができる。例えば、コンピュータ100に価格決定プログラムを実行させることによって、モデル生成処理、変化予測処理、および必要価格変化算出処理を実行することができる。
【0025】
モデル生成処理では、価格変化履歴と需要変化履歴とに基づいて、需要家ごとに価格変化に応じた需要変化を表す価格弾力性モデルを生成する。価格弾力性モデルは、需要変化の限界値を有し、需要変化が0から限界値に達するまでは価格変化が増加するほど需要変化が減少し、需要変化が限界値で一定となる。ここで、本実施形態の価格決定装置1で用いられる価格弾力性モデルの例を
図4ないし
図7に示す。
【0026】
図4に示す価格弾力性モデルAでは、需要変化dEが0から限界値dELに達するまでは需要変化dEが価格変化dPに比例し、需要変化dEが限界値dELで一定となる。価格弾力性モデルAでは、価格変化境界値dPLおよび需要変化限界値dELが固定され、一定値となっている。これに対して、
図5ないし
図7に示す価格弾力性モデルでは、価格弾力性がその時々の状況によって一定の範囲で変化し得ることを考慮して、価格変化境界値dPLや需要変化限界値dELが一定の幅を有している。
【0027】
図5に示す価格弾力性モデルBでは、価格変化境界値dPLが固定され、需要変化限界値dELが上限値UELおよび下限値LELを有する範囲で示されている。また、
図6に示す価格弾力性モデルCでは、価格変化境界値dPLが上限値UPLおよび下限値LPLを有する範囲で示され、需要変化限界値dELが固定されている。さらに、
図7に示す価格弾力性モデルDでは、価格変化境界値dPLが上限値UPLおよび下限値LPLを有する範囲で示され、需要変化限界値dELが上限値UELおよび下限値LELを有する範囲で示されている。
【0028】
変化予測処理では、需要家ごとの価格弾力性モデルに基づいて、価格変化に応じた総需要変化(需要家ごとの需要変化の総和)を予測する。変化予測処理は、パラメータ設定部1021によるパラメータ設定処理、数式群生成部1022による数式群生成処理、一階述語論理式生成部1023による一階述語論理式生成処理、および限定記号消去部1024による限定記号消去処理からなる。
【0029】
パラメータ設定処理では、需要家ごとの価格弾力性モデルから価格変化および需要変化のパラメータを抽出して設定する。ここで、
図8に示すように、需要家i(i=1,2,…,n)の価格弾力性モデルiがいずれも
図5に示した価格弾力性モデルBであるものとすると、価格変化境界値、需要変化限界値の上限値および下限値がパラメータとして設定される。また、これらのパラメータの設定例を
図8の短破線領域内に示す。この例では、需要家i(1≦i≦n=4)ごとに、価格変化境界値dPLi、需要変化限界値dELiの上限値UELiおよび下限値LELiが設定されている。
【0030】
数式群生成処理では、
図9に示すように、各価格弾力性モデルiから抽出・設定したパラメータに基づいて、第1の数式Obj、第2の数式RstAi、および第3の数式RstBiを生成する。
【0031】
第1の数式Objは、需要家ごとの需要変化と総需要変化との関係を示す等式であり、目的関数に相当する。ここで、需要家iの需要変化をdEiとし、総需要変化をdEtとすると、第1の数式Objは、以下の式(1)のように表される。
【数1】
これは、総需要変化dEtが各需要変化dEiの総和であることを示している。ここで、
図8に示したパラメータの設定例に基づく第1の数式Objの例を
図9の短破線領域内に示す。
【0032】
第2の数式RstAiは、需要家ごとに価格変化に応じた需要変化を表す等式であり、各需要変化dEiの制約条件に相当する。前述したように、需要変化dEiは、0から限界値dELiに達するまでは価格変化dPに比例するため、dEi・dPLi=dP・dELiとなる。また、需要変化dEiは、限界値dELiで一定となるため、dEi=dELiとなる。これらをまとめると、第2の数式RstAiは、以下の式(2)のように表される。
【数2】
なお、「⇒」は含意(implication)を表す記号であり、「A⇒B」は「AならばB」を意味する。ここで、
図8に示したパラメータの設定例に基づく第2の数式RstAiの例を
図9の短破線領域内に示す。
【0033】
第3の数式RstBiは、需要家ごとに需要変化限界値の制約条件を表す不等式であり、価格弾力性モデルBにおいて需要変化限界値dELiが上限値UELiおよび下限値LELiを有する範囲で示されることに由来する。したがって、第3の数式RstBiは、以下の式(3)のように表される。
【数3】
ここで、
図8に示したパラメータの設定例に基づく第3の数式RstBiの例を
図9の短破線領域内に示す。
【0034】
一階述語論理式生成処理では、第1の数式Obj、第2の数式RstAi、および第3の数式RstBiの論理積をとり、価格変化dPおよび総需要変化dEt以外の変数に限定記号を付けて一階述語論理式ψを生成する。具体的には、
図10に示すように、まず、第1ないし第3の数式を結合記号(∧)で結合して、論理積(Obj∧RstA1∧RstA2∧…∧RstAn∧RstB1∧RstB2∧…∧RstBn)を得る。次に、当該論理積において、変数dE1,dE2,…,dEn,dEL1,dEL2,…,dELnに存在記号(∃)を付けて、以下の式(4)のように表される一階述語論理式ψを得る。
【数4】
なお、一階述語論理式ψにおける存在記号(∃)が付いた変数の順序は、論理的意味を変えない限りにおいて変更可能である。例えば、以下の式(5)のように、明示的に順序を固定しても構わない。
【数5】
ここで、
図9に示した第1の数式Obj、第2の数式RstAi、および第3の数式RstBiの例に基づく式(5)による一階述語論理式ψの例を
図10の短破線領域内に示す。
【0035】
限定記号消去処理では、一階述語論理式ψにおける存在記号(∃)が付いた変数を消去して、論理的に等価である変化予測論理式を生成する。具体的には、
図11に示すように、価格変化dPと総需要変化dEtとの関係を示す変化予測論理式φ(dP,dEt)を生成する。なお、限定記号消去処理には、例えば非特許文献1のQE(Quantifier Elimination)アルゴリズムなど、公知のアルゴリズムを用いることができる。ここで、
図10に示した一階述語論理式ψの例に基づく変化予測論理式φ(dP,dEt)の例(の一部)を
図11の短破線領域内に示す。
【0036】
このようにして、パラメータ設定処理、数式群生成処理、一階述語論理式生成処理、および限定記号消去処理からなる変化予測処理により、価格変化dPに応じた総需要変化dEtを予測する変化予測論理式φ(dP,dEt)が得られる。
【0037】
必要価格変化算出処理では、変化予測論理式φ(dP,dEt)に基づいて、必要な需要変化(抑制したい電力需要)をもたらすのに必要な価格変化(上げるべき電力価格)を算出する。具体的には、変化予測論理式φ(dP,dEt)において、必要需要変化を総需要変化dEtとして代入し、変化予測論理式φ(dP,dEt)を満たす価格変化dPを必要価格変化として算出する。
【0038】
ここで、
図11に示した変化予測論理式φ(dP,dEt)の例に基づいて、価格変化dPを横軸、総需要変化dEtを縦軸とする直交座標系に変化予測論理式φ(dP,dEt)を満たす領域をプロットすると、
図12のようになる。そして、一例として、総需要変化dEt=−7kWhとすると、変化予測論理式φ(dP,dEt)を満たす価格変化dPは約¥18.4から¥30までの範囲となる。すなわち、この例では、電力需要を現在よりも7kWhだけ抑制したい場合には、電力価格を現在よりも¥18.4〜¥30だけ上げる必要がある。なお、必要価格変化は、このように範囲として求めてもよいし、この範囲に含まれる1つの値(平均値や最大値、最小値など)として求めてもよい。
【0039】
このようにして、本実施形態の価格決定装置1は、各価格弾力性モデルiに基づいて変化予測論理式φ(dP,dEt)を生成し、この変化予測論理式φ(dP,dEt)に基づいて、入力された必要需要変化に対する必要価格変化を出力する。これにより、必要な需要変化をもたらす適正な取引価格を決定することができる。また、価格変化境界値dPLおよび需要変化限界値dELを有する価格弾力性モデルを用いることにより、例えば、最低限確保しなければならない電力が存在する需要家に過度の負担を強いることなく適正な電力価格を決定することができる。
【0040】
===変化予測部の他の動作===
以下、
図13ないし
図16を適宜参照して、各価格弾力性モデルiとして、
図6に示した価格弾力性モデルCを用いる場合の変化予測部102の動作について説明する。
【0041】
この場合、パラメータ設定部1021によるパラメータ設定処理では、
図13に示すように、価格変化境界値の上限値および下限値、需要変化限界値がパラメータとして設定される。また、これらのパラメータの設定例を
図13の短破線領域内に示す。この例では、需要家i(1≦i≦n=4)ごとに、価格変化境界値dPLiの上限値UPLiおよび下限値LPLi、需要変化限界値dELiが設定されている。
【0042】
数式群生成部1022による数式群生成処理では、
図14に示すように、第1の数式Objおよび第2の数式RstAiを生成するとともに、第3の数式RstBiに代えて、第4の数式RstCiを生成する。第4の数式RstCiは、需要家ごとに価格変化境界値の制約条件を表す不等式であり、価格弾力性モデルCにおいて価格変化境界値dPLiが上限値UPLiおよび下限値LPLiを有する範囲で示されることに由来する。したがって、第4の数式RstCiは、以下の式(6)のように表される。
【数6】
ここで、
図13に示したパラメータの設定例に基づく第1の数式Obj、第2の数式RstAi、および第4の数式RstCiの例を
図14の短破線領域内に示す。
【0043】
一階述語論理式生成部1023による一階述語論理式生成処理では、第1の数式Obj、第2の数式RstAi、および第4の数式RstCiの論理積をとり、価格変化dPおよび総需要変化dEt以外の変数に限定記号を付けて一階述語論理式ψを生成する。具体的には、
図15に示すように、まず、第1、第2、および第4の数式を結合記号(∧)で結合して、論理積(Obj∧RstA1∧RstA2∧…∧RstAn∧RstC1∧RstC2∧…∧RstCn)を得る。次に、当該論理積において、変数dE1,dE2,…,dEn,dPL1,dPL2,…,dEPnに存在記号(∃)を付けて、以下の式(7)のように表される一階述語論理式ψを得る。
【数7】
なお、例えば、以下の式(8)のように、一階述語論理式ψにおける存在記号(∃)が付いた変数の順序を明示的に固定しても構わない。
【数8】
ここで、
図14に示した第1の数式Obj、第2の数式RstAi、および第4の数式RstCiの例に基づく式(8)による一階述語論理式ψの例を
図15の短破線領域内に示す。
【0044】
限定記号消去部1024による限定記号消去処理では、一階述語論理式ψにおける存在記号(∃)が付いた変数を消去して、価格変化dPと総需要変化dEtとの関係を示す変化予測論理式φ(dP,dEt)を生成する。ここで、
図15に示した一階述語論理式ψの例に基づく変化予測論理式φ(dP,dEt)を満たす領域を直交座標系にプロットすると、
図16のようになる。そして、一例として、総需要変化dEt=−8kWhとすると、変化予測論理式φ(dP,dEt)を満たす価格変化dPは約¥7.8から約¥14.2までの範囲となる。すなわち、この例では、電力需要を現在よりも8kWhだけ抑制したい場合には、電力価格を現在よりも¥7.8〜¥14.2だけ上げる必要がある。
【0045】
このようにして、本実施形態の価格決定装置1は、各価格弾力性モデルiとして価格弾力性モデルCを用いた場合も、変化予測論理式φ(dP,dEt)を生成して、入力された必要需要変化に対する必要価格変化を出力する。
【0046】
なお、各価格弾力性モデルiとして、
図4に示した価格弾力性モデルAを用いる場合には、一階述語論理式生成処理において、第1の数式Objおよび第2の数式RstAiのみを用いて一階述語論理式ψを生成する。また、各価格弾力性モデルiとして、
図7に示した価格弾力性モデルDを用いる場合には、一階述語論理式生成処理において、第1の数式Obj、第2の数式RstAi、第3の数式RstBi、および第4の数式RstCiを用いて一階述語論理式ψを生成する。さらに、需要家ごとに、
図4ないし
図7にそれぞれ示した異なる種類の価格弾力性モデルAないしDが混在していてもよい。
【0047】
===価格決定支援装置の構成===
上記実施形態の価格決定装置1では、入力された必要需要変化に対する必要価格変化を出力しているが、変化予測論理式φ(dP,dEt)に基づいて必要価格変化を求める工程を、電力会社などの取引価格を決定する主体が行ってもよい。
図17および
図18は、そのような取引価格の決定を支援する価格決定支援装置の構成を示している。
【0048】
図17に示されている価格決定支援装置2は、価格決定装置1に対して、必要価格変化算出部103の代わりに、表示部107にて構成されている。そして、表示部107は、限定記号消去部1024によって生成された変化予測論理式φ(dP,dEt)を、
図12や
図16に示したようなグラフ上に表示する。また、価格決定支援装置2をコンピュータシステム上に構築する場合には、
図18に示すように、液晶ディスプレイなどの出力部107が表示部として機能する。
【0049】
前述したように、価格決定装置1において、需要家ごとに価格変化境界値dPLおよび需要変化限界値dELを有する価格弾力性モデルに基づいて、価格変化dPに応じた総需要変化dEtを予測し、当該予測結果に基づいて、入力された必要需要変化に対する必要価格変化を算出することによって、需要家に過度の負担を強いることなく必要な需要変化をもたらす適正な取引価格を決定することができる。このような価格弾力性モデルでは、需要変化dEが0から限界値dELに達するまでは需要変化dEが価格変化dPに比例し、需要変化dEが限界値dELで一定となる。さらに、価格弾力性がその時々の状況によって一定の範囲で変化し得ることを考慮して、価格変化境界値dPLや需要変化限界値dELが一定の幅を有する価格弾力性モデルを用いることもできる。
【0050】
また、需要家ごとの価格弾力性モデルiに基づいて生成された第1の数式Objおよび第2の数式RstAiの論理積をとり、価格変化dPおよび総需要変化dEt以外の変数に限定記号を付けて一階述語論理式ψを生成することによって、限定記号消去処理により価格変化dPと総需要変化dEtとの関係を示す変化予測論理式φ(dP,dEt)を生成することができる。なお、需要変化限界値dELiが一定の幅を有する価格弾力性モデルに対しては、需要変化限界値dELiの制約条件を表す第3の数式RstBiを生成し、一階述語論理式ψを生成する際にさらに第3の数式RstBiの論理積をとればよい。一方、価格変化境界値dPLiが一定の幅を有する価格弾力性モデルに対しては、価格変化境界値dPLiの制約条件を表す第4の数式RstCiを生成し、一階述語論理式ψを生成する際にさらに第4の数式RstCiの論理積をとればよい。
【0051】
また、価格変化dPの履歴を格納する価格変化データベース108aと、需要家ごとの需要変化dEiの履歴を格納する需要変化データベース108bとをさらに備えることによって、これらの履歴に基づいて、需要家ごとの価格弾力性モデルiを生成することができる。なお、価格変化データベース108aは、必要価格変化算出部103から出力される必要価格変化により追加・更新される。
【0052】
また、コンピュータに、価格決定装置1の変化予測部102および必要価格変化算出部103に相当する処理を実行させるためのプログラムにおいて、需要家ごとに価格変化境界値dPLおよび需要変化限界値dELを有する価格弾力性モデルに基づいて、価格変化dPに応じた総需要変化dEtを予測し、当該予測結果に基づいて、入力された必要需要変化に対する必要価格変化を算出することによって、需要家に過度の負担を強いることなく必要な需要変化をもたらす適正な取引価格を決定することができる。
【0053】
また、需要家ごとに価格変化境界値dPLおよび需要変化限界値dELを有する価格弾力性モデルに基づいて、価格変化dPに応じた総需要変化dEtを予測し、当該予測結果に基づいて、入力された必要需要変化に対する必要価格変化を算出することによって、需要家に過度の負担を強いることなく必要な需要変化をもたらす適正な取引価格を決定することができる。
【0054】
また、前述したように、価格決定支援装置2において、需要家ごとに価格変化境界値dPLおよび需要変化限界値dELを有する価格弾力性モデルに基づいて、価格変化dPに応じた総需要変化dEtを予測し、当該予測結果に基づいて、価格変化dPと総需要変化dEtとの関係を示すグラフを表示することによって、電力会社などの取引価格を決定する主体は、このグラフを用いて、過度の負担を強いることなく必要な需要変化をもたらす適正な取引価格を決定することができる。
【0055】
また、コンピュータに、価格決定支援装置2の変化予測部102および表示部107に相当する処理を実行させるためのプログラムにおいて、需要家ごとに価格変化境界値dPLおよび需要変化限界値dELを有する価格弾力性モデルに基づいて、価格変化dPに応じた総需要変化dEtを予測し、当該予測結果に基づいて、価格変化dPと総需要変化dEtとの関係を示すグラフを表示部107に表示させることによって、このグラフを用いて、過度の負担を強いることなく必要な需要変化をもたらす適正な取引価格を決定することができる。
【0056】
また、需要家ごとに価格変化境界値dPLおよび需要変化限界値dELを有する価格弾力性モデルに基づいて、価格変化dPに応じた総需要変化dEtを予測し、当該予測結果に基づいて、価格変化dPと総需要変化dEtとの関係を示すグラフを表示することによって、このグラフを用いて、過度の負担を強いることなく必要な需要変化をもたらす適正な取引価格を決定することができる。
【0057】
なお、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【0058】
上記実施形態では、電力価格を上げることで電力需要を減少させる価格型デマンドレスポンスに用いる価格決定(支援)装置について説明したが、これに限定されるものではない。上記実施形態の価格決定(支援)装置は、価格に応じて需要が変化する取引対象における取引価格の決定に広く適用することができ、特に、電力以外にもガスなどの公共料金における適正価格を決定するのに適している。
【0059】
また、価格を上げることで需要を減少させるのとは反対に、価格を下げることで需要を増大させるのに用いることもでき、その場合には、価格変化dP≦0かつ需要変化dE≧0の領域における両者の関係を示す価格弾力性モデルを用いることとなる。この場合の価格弾力性モデルは、
図4ないし
図7に示した第4象限のグラフを、原点を中心として180°回転させ、第2象限に移動させたようなモデルとなる。
【0060】
また、上記実施形態の価格決定(支援)装置は、価格型デマンドレスポンスだけでなく、インセンティブ型デマンドレスポンスに用いることもできる。この場合、価格型デマンドレスポンスにおける必要価格変化(電力価格の値上げ)をインセンティブの強さ(電力需要の削減に対するポイントの付与幅)に変更することにより、インセンティブ型デマンドレスポンスにおけるインセンティブの大きさの決定に利用することができる。
【0061】
また、上記実施形態では、モデル生成処理によって、需要家ごとに価格変化に応じた需要変化を表す価格弾力性モデルが生成されるものとして説明したが、これに限定されるものではない。モデル生成処理は、複数の需要家を含む地域ごとに価格変化に応じた需要変化を表す価格弾力性モデルを生成してもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、変化予測処理は、一階述語論理式生成処理および限定記号消去処理を行って、価格変化dPに応じた総需要変化dEtを予測する変化予測論理式φ(dP,dEt)を生成しているが、これに限定されるものではない。必要需要変化に対する必要価格変化を範囲として求めるのではなく、1つの値として求めるだけの場合には、数式群生成処理によって生成された数式群を、制約充足問題として数値解法により直接解くこともできる。
【0063】
また、需要家ごとに価格変化に応じた需要変化を表す等式であり、各需要変化dEiの制約条件に相当する第2の数式RstAiは、式(2)で示した形式のほか、一般の非線形関数を適用することもできる。前述したように、需要変化dEiは、0から限界値dELiに達するまでは価格変化dPに応じて増減し、限界値dELiで一定となるため、dEi=dELiとなる。これらをまとめると、第2の数式RstAiは、非線形関数f(x)を適用して、以下の式(9)のように表すことができる。
【数9】
非線形関数f(x)は、x=0のとき0となる任意の関数で構わない。例えば、2次関数の場合には、以下の式(10)を一例として適用することができる。
【数10】