(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記載置維持機構が、前記準備姿勢及び前記基準姿勢との間で前記スリーブを回転可能に支持するヒンジ部と、前記ヒンジ部の動作中に亘って常に前記ガイドの前記下面を前記載置面に当接させ得る当接維持部とを有している請求項1記載のパッチ貼着具。
前記本体が、前記パッチを補充すべく前記パッチを保持し得る状態を解除するための解除ボタンを有するものでありこの解除ボタンが、前記本体の動作位置に拘わらず操作可能に構成されている請求項1、2、3、4、5、6又は7記載のパッチ貼着具。
【背景技術】
【0002】
紙葉類に穿たれた綴じ穴の周縁部を補強するパッチ(通常、円環状のシール)を貼着する器具が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
上記特許文献に開示された技術により現状のパッチ貼着具は、紙葉類に対し正確な位置にパッチを貼着し得るとともに、複数の綴じ穴や複数の紙葉類に対しパッチを連続して貼着する作業においても安定して正確にパッチを貼着し得るものとなっている。
【0004】
ところで、近年では特に上記パッチ貼着具の普及が進むに際し、オフィスにおいては特に綴じ穴を用いて綴じられた紙葉類のうち、頻繁に閲覧される等により綴じ穴に掛かる綴じ具からの負担が大きいと予め分かっているものについては、綴じ穴を穿った直後に複数枚の紙葉類の綴じ穴に対しまとめてパッチを貼着しておくという連続的な貼着作業も行われるようになった。
【0005】
そして、上記のような連続的な貼着作業をより効率良く且つ確実に行うためには単にパッチを貼着する作業自体が効率良く行えるのみではない。すなわち紙葉類にパッチを貼着する作業においては、特に一のパッチを貼着する作業の後、パッチを貼着した紙葉類をパッチ貼着具から退避させ、次なる紙葉類或いは綴じ穴に対してパッチを貼着するまでの作業に対しても効率よく行う必要が求められることが分かった。また複数枚の紙葉類に対してパッチを貼着していく作業を行う際に使用者は、何れか一方の手によって複数枚の紙葉類を扱っていく必要が作業上不可欠であることから、パッチ貼着具による連続したパッチ貼着作業は、複数の紙葉類を取り扱わない何れか他方の手のみで行い得るものとすることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような不具合に着目したものであり、連続してパッチを貼着する作業を容易且つ確実になし得るパッチ貼着具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0009】
すなわち本発明に係るパッチ貼着具は、紙葉類に穿たれた綴じ穴の縁部にパッチを貼着可能に保持する本体と、下面を載置面上に載置させた状態で前記本体に対し前記紙葉類を前記パッチを装着し得る位置に位置決めするガイドと、前記本体が前記パッチ及び前記紙葉類を離間させた退避位置から前記パッチを前記紙葉類に貼着し得る貼着位置までの間で動作可能に前記本体を支持するスリーブと、前記本体を動作させるための操作力を受け付けるハンドルと、前記スリーブを前記ガイドに対し前記
紙葉類を取り付け前記本体による前記パッチの貼着動作を受け入れる準備姿勢から前記パッチを前記紙葉類に貼着する基準姿勢に至る動作を可能に支持するとともに当該動作中に亘って前記ガイドが前記載置面上に載置された載置状態を維持し得る載置維持機構とを具備することを特徴とする。
【0010】
すなわち本願発明者らは、従前のパッチ貼着具においては、連続してパッチを貼着する際にガイドが載置された状態を維持するためには、ハンドルを操作しないもう片方の手によってガイドを支えていなくてはいけない構造であったため片手による連続した操作がなし得なかった点に初めて着目してなされたものである。
【0011】
このようなものであれば、連続してパッチを装着する作業においてハンドルを操作しているときガイドが常に載置面上に載置された状態を維持しているので、使用者はハンドルを持っていないもう片方の手をガイドに触れる必要が無く紙葉類を取り扱う用途に使うことができる。その結果、連続してパッチを貼着する作業を容易且つ確実になし得るパッチ貼着具を提供することができる。
【0012】
載置維持機構を実現するためにガイドに設ける構成は、例えばガイドの自重を、ガイド以外の構成要素の動作に拘わらず載置状態が維持されるまでに重く設定したり、ガイドの下面側に載置面に係り合うか吸着する別異の要素を設ける等、種々の構成が考えられる。そこで、より簡素な構成により当該載置維持機構を実現するためには、前記載置維持機構を、前記準備姿勢及び前記基準姿勢との間で前記スリーブを回転可能に支持するヒンジ部と、前記ヒンジ部の動作中に亘って常にガイドの下面を前記載置面に当接させ得る当接維持部とを有する構成とすることが望ましい。
【0013】
特に、ガイドに別異の要素を追加することなく形状の変更のみで載置維持機構を実現するためには、前記当接維持部を、前記ガイドにおいて前記紙葉類を支持する紙葉類受けから前記ヒンジ部を隔てた後方且つ外側に位置付けられていることが好ましい。
【0014】
また、複数の紙葉類に対し順次パッチを貼着していく作業をより効率良く行うためには、前記ガイドに積層させた複数の前記紙葉類を位置決めすべく前記綴じ穴を挿通する突起を設けておくことが望ましい。
【0015】
また、突起がパッチ貼着時に本体側へ干渉することを回避させて円滑な貼着動作を担保するためには、ガイドに、前記突起を前記綴じ穴に対し挿脱可能に支持すべく弾性変形する弾性変形部を設けておくことが望ましい。
【0016】
特に使用者に対し紙葉類の位置決めをスムーズに行わせることにより紙葉類を取り扱う作業をより迅速に行い得るようにするためには、前記突起の先端を、当該突起における他の部位とは異なる色を呈するようにしておくことが望ましい。
【0017】
そして、パッチを貼着する必要がある殆どの場合において綴じ穴は一の紙葉類に対し所定寸法離間させた状態で複数穿たれている点から、前記本体が、複数の前記パッチを平面視所定寸法離間させた状態で支持している態様であれば、パッチを貼着する作業のさらなる効率化に資する。
【0018】
また、前記本体が、前記パッチを補充すべく前記パッチを保持し得る状態を解除するための解除ボタンを有するものである場合ではこの解除ボタンが、前記本体の動作位置に拘わらず操作可能に構成されているようにすれば、パッチを補充する作業をも使用者の所望の姿勢により迅速に行うことができ、複数のパッチを連続して貼着していく作業のより一層の効率化に資する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、連続してパッチを貼着する作業を容易且つ確実になし得るパッチ貼着具を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施の形態について
図1〜
図17を参照して説明する。
【0022】
本実施形態に係るパッチ貼着具は、例えば図示しない二穴パンチによって紙葉類たる用紙Sに穿たれた対をなす綴じ穴Hの周囲に同時にパッチPを貼着するためのものである。このパッチ貼着具は、ガイド4に回転可能に支持された筒状をなすスリーブ2に上下動作可能にパッチPを保持した本体1を支持させてなる。そしてこの本体1に対し上方から被覆するように固定されたハンドル3を使用者が片手で操作することにより載置面F上に下面43が載置されたガイド4に対しスリーブ2を傾倒させた
図12及び
図13に示す準備姿勢(Y2)として用紙Sをガイド4に固定し、しかる後にスリーブ2を
図1に示す基準姿勢(Y1)へと戻し、そして
図11に示すようにハンドル3を押し下げることによって本体1を退避位置(X1)から貼着位置(X2)へ移動させる。これにより、
図1に示すように用紙Sに2つのパッチPを同時に貼着してなる。つまり本実施形態に係るパッチ貼着具は上述したパッチPを貼着する一連の作業を、使用者が片手でハンドル3を持ちながら行い、もう片方の手は、常に用紙Sを取り扱うことができる。
【0023】
そしてパッチPは、本実施形態ではパンチに穿たれた所定の規格に応じた径を有した綴じ穴Hと略同じか或いは若干寸法大きな内径を有した円環状をなすものとしている。このパッチPは、例えばポリエチレンテレフタレート製フィルムからなる基材の一面側にアクリル系粘着剤が塗布されるとともに他面側では当該粘着剤に対する良好な剥離が促されるべくシリコン加工等による剥離処理が施されてなる。本実施形態ではこのパッチPが厚み方向に所定枚数積層された状態でパッチ貼着具に対する詰め替え可能な円筒形状のリフィルを構成する。そしてリフィルを構成するパッチPが用紙Sやシートを含む紙葉類へ押しつけられ貼着される際には、前記剥離処理が施された基材の他面側と粘着剤に対してよりも紙葉類に対して強く接着されるため、積層されたパッチPは貼着時に一枚ずつ積層状態から剥がれて用紙Sを含む紙葉類へ安定して貼着される。
【0024】
ここで、本実施形態に係るパッチPを貼着可能に保持する本体1と、この本体1に対し用紙SをパッチPを装着し得る位置に位置決めするガイド4と、本体1がパッチP及び用紙Sを離間させた退避位置(X1)からパッチPを用紙Sに貼着し得る貼着位置(X2)までの間で動作可能に本体1を支持するスリーブ2と、本体1を動作させるための操作力を受け付けるハンドル3と、スリーブ2をガイド4に対し用紙Sを取り付け本体1によるパッチPの貼着動作を受け入れる準備姿勢(Y2)からパッチPを用紙Sに貼着する基準姿勢(Y1)に至る動作を可能に支持するとともに当該動作中に亘ってガイド4が載置面F上に載置された載置状態を維持し得る載置維持機構5とを具備するものである。
【0025】
以下、パッチ貼着具における各部の具体的な構成について
図1〜
図17に示して説明する。なお
図6はパッチ貼着具の右側面を示すが、パッチ貼着具の左側面は
図6に対し対称に現れるため、図示を省略する。
【0026】
本体1は、スリーブ2に対してパッチP及び用紙Sを離間させた退避位置(X1)からパッチPを用紙Sに貼着し得る貼着位置(X2)までの間で動作可能に支持されてなる。この本体1は、厚み方向すなわち平面視方向に積層されてなるパッチPを直接保持している支持軸13と、この支持軸13を介して平面視対をなした異なる位置でパッチPを支持するボディ11と、このボディ11とともに支持軸13を挟持してなる保持部12とを有している。
【0027】
ボディ11は、例えば正面側並びに背面側において概略半割構造をなした例えば透明の2つの樹脂成形品を筒状のスリーブ2内に組み合わせて収容させることによって構成されてなる。このボディ11は、平面視所定寸法、具体的には80mm離間させた状態で対をなす支持軸13を支持するために支持軸13に摺接する摺接面11aと、支持軸13に支持されたパッチPの最上面に密着することでパッチP貼着時にパッチPを押圧するパッチ押圧面11bと、対をなす支持軸13の巾方向中間において単一のコイルバネSPの上端に接続してなるバネ押さえ11cと、このバネ押さえ11cによって付勢された動作上端位置でスリーブ2側と係りあうことによって本体1を退避位置(X1)に保持するための止め爪11dとを有している。そして本実施形態では、上記バネ押さえ11cが複数のパッチPの動作を同期させ得る動作同期部としての役割をコイルバネSP及びスリーブ2とともに担っている。すなわち、当該ボディ11が対をなす支持軸13を2穴パンチに関するJIS規格に準拠した80mm間隔で支持しているということは、すなわち当該2穴パンチにて綴じ穴Hを設けた用紙Sに対して何ら調整を行うことなく綴じ穴HのパッチPによる補強を行い得ることを意味する。
【0028】
保持部12は、ボディ11とともに支持軸13を挟持する挟持面12aと、外方からの操作力によって一時的に弾性変形させることにより支持軸13への挟持を解除するための解除ボタン12cと、挟持面12aにより支持軸13を挟持しているときに支持軸13に対し凹凸係合するラック面12bとを有する。すなわち解除ボタン12cが押圧されていないときにはボディ11と共に支持軸13を挟持するとともに、解除ボタン12cが解除されると支持軸13から離間する、支持軸13をボディ11から取り外し得るようにしたものである。そして本実施形態ではこの解除ボタン12cが、本体1の動作位置に拘わらず外方へ露出した状態が維持されることにより、操作可能に構成されている。
【0029】
支持軸13は、例えば一体に成形されてなる棒状の樹脂からなるものであり、積層された複数のパッチPの内径にがたつきなく保持面13cが嵌りつつ下端を拡開させた拡開面13dとすることによりパッチPを落下させずに保持し得るものである。また支持軸13は、円筒面状をなした被挟持面12aによって保持部12とボディ11に挟持されながら鋸状面がラック面12bに凹凸係合することにより、上記保持部12の解除ボタン12cが押圧されていない状態ではボディ11に対して落下することが禁止されてなる。また本実施形態ではこの支持軸13に形成された鋸状面と保持部12に形成されたラック面12bとが係合する相対位置が、パッチPの貼着により適宜ずれることによりクラッチを構成している。このクラッチにより、パッチPが連続して貼着されることによって積層される枚数が減少しても支持軸13が適宜上方へずれ上がりながらパッチ押圧面11bと拡開面13dとの間で上下方向に隙間なく積層されたパッチPが保持される。
【0030】
スリーブ2は、概略筒状に構成された透明の樹脂からなるものであり、筒体21の内側において本体1を本体1がパッチP及び用紙Sを離間させた退避位置(X1)からパッチPを用紙Sに貼着し得る貼着位置(X2)までの間で動作可能に本体1を支持するとともに、下端部ではガイド4に支持されることにより、ガイド4に対し用紙Sを取り付け本体1によるパッチPの貼着動作を受け入れる準備姿勢(Y2)からパッチPを用紙Sに貼着する基準姿勢(Y1)に至るまで動作可能に支持されている。またこのスリーブ2は、筒体21の内側下端側においてコイルバネSPを下方から支持するバネ受け23が形成されるとともに、下方に向けてパッチPを通過させるためのパッチ通過口22と、下端においてガイド4に位置決めされた用紙Sを押さえ得る用紙押さえ24と、本体1のボディ11に形成された止め爪11dに係り合うことでコイルスプリングにより退避位置(X1)まで弾性付勢された本体1を退避位置(X1)に位置決めするための止め凸部25と、ガイド4を基準姿勢(Y1)とした状態でガイド4側に係り合うことでパッチ貼着具が持ち上げられてもガイド4が垂れ下がることを禁止するための係止凸部26(
図10)とを有している。
【0031】
そしてこのスリーブ2の下端且つ背面側には、ガイド4に対し回転可能に係り合う載置維持機構5におけるヒンジ部を構成する軸受け51が形成されてなる。
【0032】
ハンドル3は、本実施形態では本体1の上端に組み付けられた単一の樹脂素材からなり、本体1及びスリーブ2の上側の一部を被覆した被覆体31を主体としながら本体1に対する操作力を受け付けるとともに、本体1がスリーブ2に対して退避位置(X1)から貼着位置(X2)までの何れの位置であってもボタン露出穴32から解除ボタン12cを露出させることにより解除ボタン12cへのアクセスを可能としたものである。本実施形態ではハンドル3は本体1とともに一体に動作する態様を適用したが勿論、本体1の動作とは別異の動作をし得る態様としても良い。
【0033】
ガイド4は、本体1に対し用紙SをパッチPを装着し得る位置に位置決めするためのものである。このガイド4は、用紙Sを取り付け本体1によるパッチPの貼着動作を受け入れる準備姿勢(Y2)からパッチPを用紙Sに貼着する基準姿勢(Y1)に至るまで動作可能に支持し得る。そしてガイド4は、用紙Sを載置させるための用紙受け41と、基準姿勢(Y1)でスリーブ2側の係止凸部26と係り合うことによりパッチ貼着具が載置面Fから持ち上げられた場合でもガイド4が垂れ下がらずにスリーブ2が基準姿勢(Y1)となるように位置決めする係止突条42(
図10)と、載置面F上に載置される下面43と、用紙Sの綴じ穴Hに挿通することにより用紙Sを位置決めする用紙止め44とを有している。載置面F上に載置される下面43は、ガイド4において用紙Sを支持する用紙受け41の下方において接地する前方支持面43aを主体としてなる。用紙止め44は、複数枚の用紙Sを挿通する突起たる挿通突部44aと、この挿通突部44aを綴じ穴Hに対し挿脱可能となるよう上下に突没可能に支持すべく弾性変形する弾性変形部44bと、この弾性変形部44bを下方に弾性変形させるべく開口した退避穴44cとを有している。そして突起たる挿通突部44aは、下方から積層された複数の用紙Sの綴じ穴Hを挿通する挿通面44dと、用紙Sを挿通面44dへスムーズに案内するために上側の径が小さくなるよう傾斜させて形成したテーパ面44eと、上端において他の部位よりも色彩を異ならせて使用者に対し綴じ穴Hを好適に案内し得る頂部目印44fとを有している。ここで、用紙止め44は上記ボディ11が支持軸13を支持している位置に対応して80mm間隔で一対巾方向に対称に設けられている。これによりJIS規格に準拠した2穴パンチにより綴じ穴Hを設けた用紙Sはそのまま用紙止め44の位置を綴じ穴Hに合わせて自然に載置することができる。換言すれば用紙Sを置くだけで、簡単にパッチPを貼着する作業を行うことができるようになっている。
【0034】
また本実施形態ではガイド4には、軸受け51とともに載置維持機構5であるヒンジ部を構成しスリーブ2を回転可能に保持するための回転軸52が設けられてなる。そして本実施形態では前方支持面43aから後方に連続する部位に載置維持機構5を構成してなる。つまり換言すれば、用紙受け41からヒンジ部つまり軸受け51並びに回転軸52を隔てた位置で載置面Fに当接する後方延出面53を有している。換言すれば、当該後方延出面は軸受け51並びに回転軸52を設けた位置よりも後方且つ外方に位置付けられている。
【0035】
しかして本実施形態に係るパッチ貼着具は、上述した通り、スリーブ2を準備姿勢(Y2)から基準姿勢(Y1)に至る動作を可能に支持するとともに当該動作中に亘ってガイド4が載置面F上に載置された載置状態を維持し得る載置維持機構5を具備してなる。この載置維持機構5は、本実施形態では上述したスリーブ2側の軸受け51と、ガイド4側の回転軸52と、そしてガイド4に設けられた当接維持部たる後方延出面53とによって構成されている。
【0036】
以下、載置維持機構5を利用した一連のパッチP貼着作業について説明する。
【0037】
パッチ貼着具は用紙Sの綴じ穴HにパッチPを貼着するにあたり、
図1〜
図9に示したスリーブ2が基準位置となっている状態から
図12及び
図13に示すような準備姿勢(Y2)へとスリーブ2を動作させなければならない。つまり使用者は片手でハンドル3を把持し、スリーブ2及び本体1ごとハンドル3を背面側へ傾倒させる動作を行う。このときスリーブ2はヒンジ部である軸受け51及び回転軸52を中心に背面側へ傾倒するが、軸受け51及び回転軸52よりもさらに背面側に後方延出面53が形成されている。このため、スリーブ2が傾倒してもガイド4は下面43たる前方支持面43aが後方延出面53とともに載置面F上に当接した状態が維持されるためガイド4が背面側へ転倒或いは傾倒することが回避されている。すなわちこの後方延出面53が、ヒンジ部の動作中つまり軸受け51を中心としたスリーブ2の動作中に亘って常にガイド4の下面43を載置面Fに当接させ得る当接維持部としての役割を担っている。
【0038】
そして
図14に示すようにガイド4が載置面F上から動作することなくガイド4上に用紙Sを装着することができる。しかる後、
図11及び
図15に示すようにハンドル3を押し下げて本体1を貼着位置(X2)として用紙SにパッチPを貼着する。また本実施形態ではパッチPの貼着時では挿通突部44aが本体1の動作に干渉する事を回避するべく、弾性変形部44bが退避穴44cを利用して弾性変形する。これにより挿通突部44aは一時的に下方へ下がることとなる。その後ハンドル3への下方の操作力を解除すればコイルバネSPの弾性復帰力により本体1はハンドル3とともに再度退避位置(X1)に位置決めされる。また挿通突部44aは弾性変形部44bの弾性復帰により上方へ復帰動作を行う。そして
図16及び
図17に示すように再びスリーブ2を背面側へ傾倒させても、上記同様にヒンジ部よりも背面側に位置する後方延出面53が、所謂「つっかえる」ようにして載置面F上に載置された状態が維持される。つまり、
図11〜
図17に示されるようなパッチPを貼着する一連の動作において使用者は例えば片手によりハンドル3のみを把持した状態を維持することができる。これにより、本実施形態ではガイド4側の突起たる挿通突部44aに用紙Sを複数積層して配置しているので、パッチPを貼着した用紙Sを一枚ずつ取り外しながら、再び
図17に示した状態から再び片手のみでハンドル3を基準位置として、再び同様のパッチPの貼着動作を行うことができる。
【0039】
すなわち本実施形態に係るパッチ貼着具では、当該パッチ貼着具を片手のみで操作しつつ、もう片方の手で用紙Sを扱いながら迅速にパッチPの貼着を連続して行うことができる。
【0040】
以上のような構成とすることにより、本実施形態に係るパッチ貼着具は、連続してパッチPを装着する作業においてハンドル3を操作しているときガイド4が常に載置面F上に載置された状態を維持しているので、使用者はハンドル3を持っていないもう片方の手をガイド4に触れる必要が無く用紙Sを取り扱う用途に使うことができる。その結果、連続してパッチPを貼着する作業を容易且つ確実になし得るパッチ貼着具が実現されている。
【0041】
より簡素な構成により当該載置維持機構5を実現するために本実施形態では、載置維持機構5を、準備姿勢(Y2)及び基準姿勢(Y1)との間でスリーブ2を回転可能に支持するヒンジ部たる軸受け51並びに回転軸52と、ヒンジ部の動作中に亘って常にガイド4の下面43を載置面Fに当接させ得る当接維持部たる後方延出面53とを有する構成としている。
【0042】
特に、ガイド4に重りや吸盤といった別異の要素を追加することなく形状の変更のみで載置維持機構5を実現するために本実施形態では、ガイド4の形状を変更するのみで当接維持部を構成している。すなわち当接維持部として、ガイド4において用紙Sを支持する用紙受け41からヒンジ部たる軸受け51並びに回転軸52を隔てた位置、すなわちヒンジ部よりも後方且つ外方に位置付けられている後方延出面53としている。
【0043】
また、複数の用紙Sに対し順次パッチPを貼着していく作業をより効率良く行うために本実施形態では、ガイド4に積層させた複数の用紙Sを位置決めすべく綴じ穴Hを挿通する突起たる挿通突条44aを設けている。
【0044】
そして本実施形態では、突起たる挿通突条44aがパッチP貼着時に本体1の支持軸13へ干渉することを回避させて積層させた複数の用紙Sに対して連続して円滑な貼着動作を担保するために、ガイド4に、挿通突条44aを綴じ穴Hに対し挿脱可能に支持すべく弾性変形する弾性変形部44bを設けている。
【0045】
特に本実施形態では、使用者に対し用紙Sの位置決めをスムーズに行わせることにより用紙Sを取り扱う作業をより迅速に行い得るようにすべく、挿通突条44aの先端を、挿通突条44aにおける他の部位とは異なる色を呈するように頂部目印44fを設けている。
【0046】
そして、本実施形態では通常の2穴パンチや綴じ具等に対して規定されているJIS規格と同様の位置でパッチPを貼着できる。具体的には対をなすパッチPを例えば80mm離間させて2つ同時に貼着するようにすることで、パッチPを貼着する作業のさらなる効率化に寄与している。つまり、一枚の用紙Sに複数回パッチPを貼着する作業を行わずに用紙Sあたり一回の操作のみで挿通突条44aに挿通させた複数の用紙Sに対しパッチPを順次貼着していくことができる。
【0047】
すなわち、本実施形態に係るパッチ貼着具を用いて用紙SにパッチPを貼着していく作業はまず、片方の手でハンドル3を把持してスリーブ2を準備姿勢(Y2)とし、もう片方の手で複数枚の用紙Sを綴じ穴Hが連通した状態で用紙止め44にまとめて挿通させておく。そしてハンドル3を操作させることにより本体1を退避位置(X1)、貼着位置(X2)とする動作を繰り返しながら同時にパッチPを貼着した用紙Sを一枚ずつ用紙止め44から外していくことにより、容易且つ迅速なパッチPの貼着を行うことができる。従来ではパッチPの貼着作業は一枚ずつ用紙Sを単一の綴じ穴Hごとに用紙Sを扱う側の手を適宜用紙から放してガイド4をつかんで位置決めして行っていた。それに対して本実施形態のパッチ貼着具では用紙Sを扱う手を用紙から放すことなく継続した作業が実現されるので、頻繁にパッチPを貼着する使用者にとっては作業の多大な効率化に資する。
【0048】
また複数のパッチPを一の動作で貼着する際に、より正確に貼着し得るようにするために本実施形態では、本体1に、複数のパッチPの動作を同期させ得る動作同期部として、巾方向中央にコイルバネSPを設けておく構成としている。
【0049】
そして上記動作同期部の具体的な構成として、複数のパッチPを支持する単一のケース体と、このケース体に設けられスリーブ2に対し弾性付勢する単一の弾性体とを有する態様を適用することにより、簡素な構成にて複数のパッチP貼着動作の同期を実現している。
【0050】
また、本体1が、パッチPを補充すべくパッチPを保持し得る状態を解除するための解除ボタン12cを有する本実施形態において、ではこの解除ボタン12cが、本体1の動作位置に拘わらず操作可能に構成されているようにすることにより、パッチPを補充する作業をも使用者の所望の姿勢により迅速に行うことができ、複数のパッチPを連続して貼着していく作業のより一層の効率化に寄与している。
【0051】
<変形例>
以下に、本実施形態の変形例について説明する。当該変形例において、上記実施形態の構成要素に相当するものに対しては同じ符号を付すとともに、その詳細な説明を省略するものとする。
【0052】
上記実施形態ではスリーブ2をガイド4に対し回転可能に支持される載置維持機構5を開示したが勿論、載置維持機構5はスリーブ2を回転可能に支持される態様に限られない。
【0053】
すなわち
図18及び
図19に示すように、本体1を支持しているスリーブ2をガイド4に対し上下方向にスライド可能に構成することにより、載置維持機構5を構成しても良い。同図では、載置維持機構5を、スリーブ2を上下昇降可能に支持する昇降支持部と、スリーブ2を準備姿勢(Y2)へ付勢する付勢部たるコイルスプリングとを有している態様を示している。
【0054】
このようなものであれば、コイルスプリングSP2がスリーブ2を上方へ付勢するためスリーブ2が予め準備姿勢(Y2)で維持された状態となる。これにより、使用者はガイド4に対する速やかな用紙Sの位置決めを行い得る。加えてパッチPの貼着動作はハンドル3への押圧動作のみによって実現されるため、迅速なパッチPの貼着動作を上記実施形態同様、連続して行うことができる。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0056】
例えば、上記実施形態ではパッチを同時に2つ貼着するタイプのパッチ貼着具を開示したが勿論、一度に単一のパッチを貼着する態様としても、3つ以上のパッチを同時に貼着する態様としてもよい。またガイドやハンドルの形状等の具体的な態様は上記実施形態のものに限定されることはなく、既存のものを含め、種々の態様のものを適用することができる。
【0057】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。