【実施例】
【0035】
以下に、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の技術思想を逸脱しない限り、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、以下「重量部」を単に「部」、「重量%」を単に「%」と記載する。
【0036】
以下の実施例及び比較例で用いた組成物の原料成分を示す。
【0037】
1.炭酸マグネシウム粒子
A1:合成無水炭酸マグネシウム粒子(平均一次粒径:1μm)
A2:合成無水炭酸マグネシウム粒子(平均一次粒径:4μm)
A3:合成無水炭酸マグネシウム粒子(平均一次粒径:10μm)
A4:合成無水炭酸マグネシウム粒子(平均一次粒径:20μm)
A5:合成無水炭酸マグネシウム粒子(平均一次粒径:28μm)
A6:合成無水炭酸マグネシウム粒子(平均一次粒径:40μm)
【0038】
2.アルコキシシリル基およびアルキル基を有する表面処理剤
B1:エチルトリメトキシシラン
B2:n−ヘキシルトリメトキシシラン
B3:n−オクチルトリメトキシシラン
B4:n−デシルトリメトキシシラン
B5:n−ドデシルトリメトキシシラン
B6:n−オクタデシルトリメトキシシラン
B7:3−アミノプロピルトリメトキシシラン
B8:ビニルトリメトキシシラン
B9:ジメチルシリコーンオイル
【0039】
3.熱可塑性樹脂
C1:直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE、MFR=10g/10min)
C2:ポリカーボネート樹脂(PC、MFR=15g/10min)
【0040】
4.窒化物
D1:窒化ホウ素粒子(六方晶構造、平均粒径18μm)
【0041】
〔炭酸マグネシウム粒子の表面処理〕
炭酸マグネシウム粒子A1 100部を、ヘンシェルミキサーで混合撹拌しながら、表面処理剤として、B1:エチルトリメトキシシランを1部、噴霧することで、炭酸マグネシウム粒子A1の表面処理(被着処理)を行った。これにより、炭酸マグネシウム粒子A1を被覆する被膜層を形成して熱伝導性粒子を得た。電子顕微鏡を用いて、得られた熱伝導性粒子30個から求めた平均一次粒子径は、1.1μmであった。
また、同様の方法を用いて、表1に記載の配合で、炭酸マグネシウム粒子100部を、表面処理剤で表面処理を行い、熱伝導性粒子を得た。電子顕微鏡を用いて、得られた熱伝導性粒子30個から平均一次粒子径を測定した。その結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
[実施例1]
〔熱伝導性樹脂組成物の製造〕
炭酸マグネシウム粒子A1 100部を、表面処理剤B1 1部で表面処理して得られた熱伝導性粒子80部と、熱可塑性樹脂C1 20部とを、ヘンシェルミキサーに投入し、温度20℃、時間3分の条件でプレミックスして混合物を得た。その後、この混合物をスクリュー直径30mm、L/D(スクリュー径/スクリュー長さ)=38〜42の押出機に供給し、回転数250rpm、設定温度220℃の条件で溶融混練しつつ、押し出した混練物を、ペレタイザーを使用してペレット状に成形した。これにより、熱伝導性樹脂組成物を得た。
【0044】
〔評価方法〕
得られた熱伝動性樹脂組成物を使用して、下記の評価項目について試験を行った。その結果を表2に示す。
【0045】
〔溶融粘度〕
熱伝導性樹脂組成物の溶融粘度(メルトフローレイト:MFR)を、温度190℃、2.16kg荷重の条件で、JIS K−7210に準じて測定した。MFR(g/10分)が高い程、熱伝導性樹脂組成物の溶融時の流動性が良好である。
【0046】
〔熱伝導率〕
熱伝導性樹脂組成物を熱プレスシート成形機に投入し、200℃に加熱して、縦30mm×横30mm×厚み3mmのシートを2枚作成した。各シートの熱伝導率(単位:W/m・K)を、ホットディスク法熱物性測定装置(TPS−500 京都電子工業製)を使用し、直径7mmφのセンサーを用いて測定した。熱伝導率が高い程、シートの放熱性が良好である。
【0047】
〔引張破壊点伸び率〕
熱伝導性樹脂組成物を熱プレスシート成形機に投入し、200℃に加熱して、厚み1mmのプレスシートを作成した後、5号ダンベル型に打抜いて試験片とした。試験片の引張破壊点伸び率を、引張り速度100mm/分の条件で、JIS K−7127に準じて測定した。別途、熱可塑性樹脂C1を用いて前記と同様に試験片を作成し、この試験片の引張破壊点伸び率を前記と同様の方法により測定した。
そして、熱可塑性樹脂C1を用いて作成した試験片の引張破壊点伸び率を100としたときの、熱伝導性樹脂組成物を用いて作成した試験片の引張破壊点伸び率の割合を保持率として求めた。引張破壊点伸び率の保持率が高い程、試験片の伸長性が良好である。
【0048】
〔射出成形性〕
熱伝導性樹脂組成物を射出成形機(東芝機械製)に投入し、射出温度220℃、射出圧力50MPa、金型温度40℃にて、縦250mm×横200mm(面積50000mm
2)で、厚みが5mmおよび1mmの2種類の金型を用いて、プレート状の2種類の成形体を作成した。
得られた2種類の成形体について、それぞれの面積を測定した後、金型の面積100に対する保持率を算出し、以下の基準で射出成形性を評価した。なお、評価基準AおよびBが実用レベルである。
A:プレート状の成形体の面積の保持率が、95%以上である。
B:プレート状の成形体の面積の保持率が、90%〜95%未満である。
C:プレート状の成形体の面積の保持率が、90%未満である。
【0049】
〔押出成形性〕
熱伝導性樹脂組成物をT−ダイフィルム成形機(東洋精機製)に投入し、成形温度220℃、スクリュー回転数80rpmで溶融し押出成形することで、幅100mm×厚さ300μmのフィルム状の成形体を得た。
得られたフィルム1mについて、押出方向(長さ方向)100mmの領域毎に、各領域の両端から各10mmとなる位置、および両端からの距離が均等となる位置(中心点)の3ヶ所において、300μmからの厚みの変化量を測定し、以下の基準で押出成形性を評価した。なお、評価基準AおよびBが実用レベルである。
A:フィルムの厚みの最大変化量が、15μm未満である。
B:フィルムの厚みの最大変化量が、15μm〜30μm未満である。
C:フィルムの厚みの最大変化量が、30μm以上である。
上記の結果を表2に示す。
【0050】
[実施例2〜25、比較例1〜3]
表2に記載の熱伝導性樹脂組成物の配合で、実施例1と同様にペレットを作製し、上記と同様の方法で評価した。その結果を表2に示す。
ただし、実施例23は参考例である。
【0051】
[比較例4]
表面処理をしていない炭酸マグネシウム粒子A1を用いた他は、実施例1と同様にペレットを作製し、上記と同様の方法で評価した。その結果を表2に示す。
【0052】
[比較例5〜7]
表2に記載の熱伝導性樹脂組成物の配合で、比較例4と同様にペレットを作製し、上記と同様の方法で評価した。その結果を表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
[実施例26]
炭酸マグネシウム粒子A1 100部を、表面処理剤B1 1部で表面処理して得られた熱伝導性粒子40部と、炭酸マグネシウム粒子A4 100部を、表面処理剤B1 1部で表面処理して得られた熱伝導性粒子40部と、熱可塑性樹脂C1 20部とを用いた他は、実施例1と同様にペレットを作製し、上記と同様の方法で評価した。その結果を表3に示す。
【0055】
[実施例27〜29]
表3に記載の熱伝導性樹脂組成物の配合で、実施例26と同様にペレットを作製し、上記と同様の方法で評価した。その結果を表3に示す。
【0056】
【表3】
【0057】
[実施例30]
〔熱伝導性樹脂組成物の製造〕
上記と同様の方法で、炭酸マグネシウム粒子A1 100部を、表面処理剤B1 1部で表面処理して得られた熱伝導性粒子60部と、熱可塑性樹脂C2 40部とを、ヘンシェルミキサーに投入し、温度20℃、時間3分の条件でプレミックスして混合物を得た。その後、この混合物をスクリュー直径30mm、L/D(スクリュー径/スクリュー長さ)=38〜42の押出機に供給し、回転数250rpm、設定温度260℃の条件で溶融混練しつつ、押し出した混練物を、ペレタイザーを使用してペレット状に成形した。これにより、熱伝導性樹脂組成物を得た。
【0058】
〔評価方法〕
得られた熱伝動性樹脂組成物を使用して、実施例1と同様に試験を行った。その結果を表4に示す。
【0059】
〔溶融粘度〕
熱伝導性樹脂組成物の溶融粘度(メルトフローレイト:MFR)を、温度300℃、2.16kg荷重の条件で、JIS K−7210に準じて測定した。MFR(g/10分)が高い程、熱伝導性樹脂組成物の溶融時の流動性が良好である。
【0060】
〔熱伝導率〕
熱伝導性樹脂組成物を熱プレスシート成形機に投入し、280℃に加熱して、縦30mm×横30mm×厚み3mmのシートを2枚作成した。各シートの熱伝導率(単位:W/m・K)を、ホットディスク法熱物性測定装置(TPS−500 京都電子工業製)を使用し、直径7mmφのセンサーを用いて測定した。熱伝導率が高い程、シートの放熱性が良好である。
【0061】
〔引張破壊点伸び率〕
熱伝導性樹脂組成物を熱プレスシート成形機に投入し、280℃に加熱して、厚み1mmのプレスシートを作成した後、5号ダンベル型に打抜いて試験片とした。試験片の引張破壊点伸び率を、引張り速度100mm/分の条件で、JIS K−7127に準じて測定した。別途、熱可塑性樹脂C2を用いて前記と同様に試験片を作成し、この試験片の引張破壊点伸び率を前記と同様の方法により測定した。
そして、熱可塑性樹脂C2を用いて作成した試験片の引張破壊点伸び率を100としたときの、熱伝導性樹脂組成物を用いて作成した試験片の引張破壊点伸び率の割合を保持率として求めた。引張破壊点伸び率の保持率が高い程、試験片の伸長性が良好である。
【0062】
〔射出成形性〕
熱伝導性樹脂組成物を射出成形機(東芝機械製)に投入し、射出温度260℃、射出圧力50MPa、金型温度80℃にて、縦250mm×横200mm(面積50000mm
2)で、厚みが5mmおよび1mmの2種類の金型を用いて、プレート状の2種類の成形体を作成した。
得られた2種類の成形体について、それぞれの面積を測定した後、金型の面積100に対する保持率を算出し、以下の基準で射出成形性を評価した。なお、評価基準AおよびBが実用レベルである。
A:プレート状の成形体の面積の保持率が、95%以上である。
B:プレート状の成形体の面積の保持率が、90%〜95%未満である。
C:プレート状の成形体の面積の保持率が、90%未満である。
【0063】
〔押出成形性〕
熱伝導性樹脂組成物をT−ダイフィルム成形機(東洋精機製)に投入し、成形温度280、スクリュー回転数80rpmで溶融し押出成形することで、幅100mm×厚さ300μmのフィルム状の成形体を得た。
得られたフィルム1mについて、押出方向(長さ方向)100mmの領域毎に、各領域の両端から各10mmとなる位置、および両端からの距離が均等となる位置(中心点)の3ヶ所において、300μmからの厚みの変化量を測定し、以下の基準で押出成形性を評価した。なお、評価基準AおよびBが実用レベルである。
A:フィルムの厚みの最大変化量が、15μm未満である。
B:フィルムの厚みの最大変化量が、15μm〜30μm未満である。
C:フィルムの厚みの最大変化量が、30μm以上である。
【0064】
上記の結果を表4に示す。
【0065】
[実施例31〜44、比較例8〜10]
表4に記載の熱伝導性樹脂組成物の配合で、実施例30と同様にペレットを作製し、上記と同様の方法で評価した。その結果を表4に示した。
ただし、実施例43は参考例である。
【0066】
[比較例11]
表面処理をしていない炭酸マグネシウム粒子A1を用いた他は、実施例30と同様にペレットを作製し、上記と同様の方法で評価した。その結果を表4に示す。
【0067】
[比較例12、13]
表4に記載の熱伝導性樹脂組成物の配合で、比較例11と同様にペレットを作製し、上記と同様の方法で評価した。その結果を表4に示した。
【0068】
【表4】
【0069】
[実施例45]
炭酸マグネシウム粒子A1 100部を、表面処理剤B1 1部で処理して得られた熱伝導性粒子30部と、炭酸マグネシウム粒子A4 100部を、表面処理剤B1 1部で処理して得られた熱伝導性粒子30部と、熱可塑性樹脂C2 40部とを用いた他は、実施例30と同様にペレットを作製し、上記と同様の方法で評価した。その結果を表5に示す。
【0070】
[実施例46〜48]
表5に記載の熱伝導性樹脂組成物の配合で、比較例45と同様にペレットを作製し、上記と同様の方法で評価した。その結果を表5に示す。
【0071】
【表5】
【0072】
表2〜表5から明らかなように、実施例1〜48の本発明の熱伝導性樹脂組成物は、多量の熱伝導性粒子を含む場合でも、成形加工性に優れるので、寸法安定性、平滑性、形状変化に対応可能な伸長性を有する成形体が得られた。一方、比較例1〜13の熱伝導性樹脂組成物を使用した成形体では、寸法安定性、平滑性、伸長性の低下が顕著であり、実施例1〜48の成形体に劣ることが分った。